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特開2022-124395カチオン電着塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124395
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】カチオン電着塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20220818BHJP
   C09D 5/44 20060101ALI20220818BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20220818BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220818BHJP
   C09D 7/43 20180101ALI20220818BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220818BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220818BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20220818BHJP
【FI】
C09D163/00
C09D5/44 A
C09D133/14
C09D7/63
C09D7/43
C09D7/61
C09D5/02
C09D7/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022137
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 祐子
(72)【発明者】
【氏名】上杉 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 まみ
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG002
4J038CG141
4J038CH121
4J038CH171
4J038CH201
4J038DB152
4J038DB162
4J038DB391
4J038DB392
4J038DG302
4J038HA216
4J038KA03
4J038KA04
4J038KA07
4J038KA20
4J038MA10
4J038NA03
4J038PA04
4J038PB07
4J038PC02
(57)【要約】
【課題】硬化触媒としてビスマス化合物を用いても、優れた耐食性と耐候性を発揮し得るカチオン電着塗料組成物を提供すること。
【解決手段】アミン化エポキシ樹脂Aと、アミン化アクリル樹脂Bと、ブロックイソシアネート硬化剤Cと、ビスマス触媒Dと、粘性剤Eおよび金属元素化合物Fからなる群より選択される1種以上とを含み、A成分とB成分の合計固形分100質量部に対して、B成分の量が50~85質量部であり、E成分を含む場合、A成分、B成分、C成分およびE成分の合計固形分質量に対して、E成分の質量が0.1~20%であり、F成分を含む場合、A成分、B成分およびC成分の合計固形分質量に対して、F成分の質量が金属元素換算で0.1~2.0%であり、F成分がLa、Nd、Y、Pr、YbおよびCeからなる群より選択される1種以上を含む、カチオン電着塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化エポキシ樹脂(A)と、
アミン化アクリル樹脂(B)と、
ブロックイソシアネート硬化剤(C)と、
ビスマス触媒(D)と、
粘性剤(E)および金属元素化合物(F)からなる群より選択される1種以上と、
を含むカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)の合計固形分100質量部に対して、前記アミン化アクリル樹脂(B)の量が、50~85質量部であり、
前記カチオン電着塗料組成物が前記粘性剤(E)を含む場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)、前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)および前記粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、前記粘性剤(E)の質量が、0.1~20%であり、
前記カチオン電着塗料組成物が前記金属元素化合物(F)を含む場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)および前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)の合計固形分質量に対して、前記金属元素化合物(F)の質量が、金属元素換算で0.1~2.0%であり、
前記金属元素化合物(F)が、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む、カチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
前記アミン化エポキシ樹脂(A)および前記アミン化アクリル樹脂(B)が一緒に乳化されている、請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤およびアクリルマイクロゲルからなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
前記アミン化エポキシ樹脂(A)が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)の数平均分子量が、100,000以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
前記アミン化アクリル樹脂(B)が、ヒドロキシ基またはグリシジル基を側鎖に有する共重合体と、アミン化合物との付加生成物であり、
合体と、アミン化合物との付加生成物であり、
前記共重合体が、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ヒドロキシ基またはグリシジル基含有モノマーとの共重合体である、請求項1~4のいずれか一項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項6】
前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤であり、
前記エポキシ粘性剤が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記エポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記エポキシ粘性剤の数平均分子量が、100,000より大きい、請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項7】
前記粘性剤(E)が、アクリルマイクロゲルであり、
前記アクリルマイクロゲルが、アクリル樹脂粒子であり、
前記アクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5質量%以上含む、請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項8】
顔料分散樹脂をさらに含み、
前記顔料分散樹脂が、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である、請求項1~7のいずれか一項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項9】
カチオン電着塗料組成物の製造方法であって、
アミン化エポキシ樹脂(A)と、アミン化アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート硬化剤(C)と、ビスマス触媒(D)と、粘性剤(E)および金属元素化合物(F)からなる群より選択される1種以上とを準備する工程(I)、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)と前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)とを混合して、樹脂エマルションを調製する工程(II)と、
前記ビスマス触媒(D)の水溶液を調製する工程(III)と、
前記樹脂エマルションおよび前記水溶液を混合して、混合物(M)を調製する工程(IV)と、
を含み、
前記工程(I)で前記金属元素化合物(F)を準備した場合、前記工程(III)の前記水溶液は、前記金属元素化合物(F)をさらに含み、
前記工程(I)で前記粘性剤(E)を準備した場合、前記混合物(M)および前記粘性剤(E)を混合する工程(V)をさらに含み、
前記工程(II)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記アミン化アクリル樹脂(B)の量が、50~85質量部であり、
前記工程(V)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)、前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)および前記粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、前記粘性剤(E)の質量が、0.1~20%であり、
前記工程(I)で前記金属元素化合物(F)を準備した場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)および前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)の合計固形分質量に対して、前記金属元素化合物(F)の質量が、金属元素換算で0.1~2.0%であり、
前記金属元素化合物(F)が、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む、カチオン電着塗料組成物の製造方法。
【請求項10】
前記工程(II)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)および前記アミン化アクリル樹脂(B)を一緒に乳化する、請求項9に記載のカチオン電着塗料組成物の製造方法。
【請求項11】
前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤およびアクリルマイクロゲルからなる群より選択される1種以上である、請求項9に記載のカチオン電着塗料組成物の製造方法。
【請求項12】
前記アミン化エポキシ樹脂(A)が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)の数平均分子量が、100,000以下である、請求項9~11のいずれか一項に記載のカチオン電着塗料組成物の製造方法。
【請求項13】
前記アミン化アクリル樹脂(B)が、ヒドロキシ基またはグリシジル基を側鎖に有する共重合体と、アミン化合物との付加生成物であり、
前記共重合体が、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ヒドロキシ基またはグリシジル基含有モノマーとの共重合体である、請求項9~12のいずれか一項に記載のカチオン電着塗料組成物の製造方法。
【請求項14】
前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤であり、
前記エポキシ粘性剤が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記エポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記エポキシ粘性剤の数平均分子量が、100,000より大きい、請求項9に記載のカチオン電着塗料組成物の製造方法。
【請求項15】
前記粘性剤(E)が、アクリルマイクロゲルであり、
前記アクリルマイクロゲルが、アクリル樹脂粒子であり、
前記アクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5質量%以上含む、請求項9に記載のカチオン電着塗料組成物の製造方法。
【請求項16】
前記工程(I)で顔料分散樹脂をさらに準備し、
前記工程(III)の前記水溶液は、前記顔料分散樹脂をさらに含み、
前記顔料分散樹脂が、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である、請求項9~15のいずれか一項に記載のカチオン電着塗料組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン電着塗料組成物およびカチオン電着塗料組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の表面には、複数の塗膜が形成される。これら複数の塗膜は、例えば、車体側から順に、下塗り塗膜、中塗り塗膜および上塗り塗膜が挙げられる。下塗り塗膜は、一般的に、カチオン電着塗料を用いて形成される。これらの塗膜のうち、下塗り塗膜は、通常、耐食性を担い、下塗り塗膜の表面に形成される中塗り塗膜などが耐候性を担うことが多い(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-025905号公報
【特許文献2】特開2017-061640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、自動車の部位または部品によっては、下塗り塗膜のみが形成され、中塗り塗膜および上塗り塗膜が形成されない部位または部品もある。このような部位または部品では、下塗り塗膜が耐食性と耐候性の両方を担う必要がある。
【0005】
特許文献1では、中塗り塗膜がない多層塗膜においても優れた耐食性と耐候性を有する硬化電着塗膜を開示しているが、硬化触媒として有機スズ化合物を用いている。
【0006】
近年、スズなどの重金属を含まない塗料が求められており、有機スズ化合物の代替として、ビスマス化合物を用いたカチオン電着塗料組成物も開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、本発明者が検討したところ、カチオン電着塗料において、硬化触媒として有機スズ化合物に替えてビスマス化合物を用いると、耐食性と耐候性が低下してしまうことがわかった。
【0008】
そこで、本発明は、硬化触媒としてビスマス化合物を用いても、優れた耐食性と耐候性を発揮し得るカチオン電着塗料組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、そのようなカチオン電着塗料組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物は、
アミン化エポキシ樹脂(A)と、
アミン化アクリル樹脂(B)と、
ブロックイソシアネート硬化剤(C)と、
ビスマス触媒(D)と、
粘性剤(E)および金属元素化合物(F)からなる群より選択される1種以上と、
を含むカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)の合計固形分100質量部に対して、前記アミン化アクリル樹脂(B)の量が、50~85質量部であり、
前記カチオン電着塗料組成物が前記粘性剤(E)を含む場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)、前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)および前記粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、前記粘性剤(E)の質量が、0.1~20%であり、
前記カチオン電着塗料組成物が前記金属元素化合物(F)を含む場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)および前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)の合計固形分質量に対して、前記金属元素化合物(F)の質量が、金属元素換算で0.1~2.0%であり、
前記金属元素化合物(F)が、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む、カチオン電着塗料組成物である。これによって、硬化触媒としてビスマス化合物を用いても、優れた耐食性と耐候性を発揮し得る電着塗膜が得られる。
【0010】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)および前記アミン化アクリル樹脂(B)が一緒に乳化されている。
【0011】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤およびアクリルマイクロゲルからなる群より選択される1種以上である。
【0012】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)の数平均分子量が、100,000以下である。
【0013】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記アミン化アクリル樹脂(B)が、ヒドロキシ基またはグリシジル基を側鎖に有する共重合体と、アミン化合物との付加生成物であり、
前記共重合体が、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ヒドロキシ基またはグリシジル基含有モノマーとの共重合体である。
【0014】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤であり、
前記エポキシ粘性剤が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記エポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記エポキシ粘性剤の数平均分子量が、100,000より大きい。
【0015】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、アクリルマイクロゲルであり、
前記アクリルマイクロゲルが、アクリル樹脂粒子であり、
前記アクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5質量%以上含む。
【0016】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、顔料分散樹脂をさらに含み、
前記顔料分散樹脂が、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である。
【0017】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法は、
アミン化エポキシ樹脂(A)と、アミン化アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート硬化剤(C)と、ビスマス触媒(D)と、粘性剤(E)および金属元素化合物(F)からなる群より選択される1種以上とを準備する工程(I)、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)と前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)とを混合して、樹脂エマルションを調製する工程(II)と、
前記ビスマス触媒(D)の水溶液を調製する工程(III)と、
前記樹脂エマルションおよび前記水溶液を混合して、混合物(M)を調製する工程(IV)と、
を含み、
前記工程(I)で前記金属元素化合物(F)を準備した場合、前記工程(III)の前記水溶液は、前記金属元素化合物(F)をさらに含み、
前記工程(I)で前記粘性剤(E)を準備した場合、前記混合物(M)および前記粘性剤(E)を混合する工程(V)をさらに含み、
前記工程(II)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記アミン化アクリル樹脂(B)の量が、50~85質量部であり、
前記工程(V)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)、前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)および前記粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、前記粘性剤(E)の質量が、0.1~20%であり、
前記工程(I)で前記金属元素化合物(F)を準備した場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)および前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)の合計固形分質量に対して、前記金属元素化合物(F)の質量が、金属元素換算で0.1~2.0%であり、
前記金属元素化合物(F)が、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む、カチオン電着塗料組成物の製造方法である。これによって、硬化触媒としてビスマス化合物を用いても、優れた耐食性と耐候性を発揮し得る電着塗料組成物が得られる。
【0018】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記工程(II)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)および前記アミン化アクリル樹脂(B)を一緒に乳化する。
【0019】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤およびアクリルマイクロゲルからなる群より選択される1種以上である。
【0020】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)の数平均分子量が、100,000以下である。
【0021】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記アミン化アクリル樹脂(B)が、ヒドロキシ基またはグリシジル基を側鎖に有する共重合体と、アミン化合物との付加生成物であり、
前記共重合体が、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ヒドロキシ基またはグリシジル基含有モノマーとの共重合体である。
【0022】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤であり、
前記エポキシ粘性剤が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記エポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記エポキシ粘性剤の数平均分子量が、100,000より大きい。
【0023】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、アクリルマイクロゲルであり、
前記アクリルマイクロゲルが、アクリル樹脂粒子であり、
前記アクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5質量%以上含む。
【0024】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記工程(I)で顔料分散樹脂をさらに準備し、
前記工程(III)の前記水溶液は、前記顔料分散樹脂をさらに含み、
前記顔料分散樹脂が、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、硬化触媒としてビスマス化合物を用いても、優れた耐食性と耐候性を発揮し得るカチオン電着塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのようなカチオン電着塗料組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について説明する。これらの記載は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0027】
本発明において、2以上の実施形態を任意に組み合わせることができる。
【0028】
本発明において、塗料と塗料組成物は相互互換的に用いることができる。
【0029】
数値範囲は、別段の記載がない限り、その範囲の上限値および下限値を含むことを意図している。例えば、50~85質量部は、50質量部以上85質量部以下の範囲を意味する。
【0030】
本明細書において、別段の記載がない限り、各成分および各材料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本発明において、アクリル樹脂は、アクリルモノマー、メタクリルモノマーおよびこれらの組合せからなる群より選択される1種以上のモノマーを任意に他のモノマーと共に重合または共重合して得られる樹脂をいう。本発明において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよびこれらの組合せからなる群より選択される1種以上を意味する。本明細書において、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびこれらの組合せからなる群より選択される1種以上を意味する。本明細書において、(メタ)アクリロニトリルは、アクリロニトリル、メタクリロニトリルおよびこれらの組合せからなる群より選択される1種以上を意味する。
【0032】
本明細書において、不揮発分を「固形分」ということがある。
【0033】
本発明において、(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(I)、(II)、(III)、(IV)、(IVA)、(V)などの符号は、ある要素を他の要素と区別するための符号に過ぎず、符号それ自体は、順序を限定しない。
【0034】
本明細書において、アミン化エポキシ樹脂(A)、アミン化アクリル樹脂(B)、ブロックイソシアネート硬化剤(C)、ビスマス触媒(D)、粘性剤(E)および金属元素化合物(F)をそれぞれ、単に(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分ということがある。
【0035】
(カチオン電着塗料組成物)
本発明に係るカチオン電着塗料組成物は、
アミン化エポキシ樹脂(A)と、
アミン化アクリル樹脂(B)と、
ブロックイソシアネート硬化剤(C)と、
ビスマス触媒(D)と、
粘性剤(E)および金属元素化合物(F)からなる群より選択される1種以上と、
を含むカチオン電着塗料組成物であって、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)の合計固形分100質量部に対して、前記アミン化アクリル樹脂(B)の量が、50~85質量部であり、
前記カチオン電着塗料組成物が前記粘性剤(E)を含む場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)、前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)および前記粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、前記粘性剤(E)の質量が、0.1~20%であり、
前記カチオン電着塗料組成物が前記金属元素化合物(F)を含む場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)および前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)の合計固形分質量に対して、前記金属元素化合物(F)の質量が、金属元素換算で0.1~2.0%であり、
前記金属元素化合物(F)が、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む、カチオン電着塗料組成物である。
【0036】
以下、本発明に係るカチオン電着塗料組成物の必須成分である(A)~(D)成分と、任意成分である(E)成分および(F)成分について説明する。
【0037】
・(A)成分
(A)成分は、アミン化エポキシ樹脂である。(A)成分は、塗膜形成樹脂としての機能と、電着塗膜に主に耐食性を付与する機能を有する。(A)成分としては、従来公知の電着塗料組成物のアミン化エポキシ樹脂を用いることができる。(A)成分としては、例えば、エポキシ基を1分子中に2個以上有するエポキシ樹脂中のエポキシ基(オキシラン環)を、アミン化合物で開環して得られるアミン変性エポキシ樹脂が挙げられる。
【0038】
エポキシ基を1分子中に2個以上有する変性前のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;特開2012-236928号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0039】
変性前のエポキシ樹脂のエポキシ基の数は、例えば、2個以上である。一実施形態では、変性前のエポキシ樹脂のエポキシ基の数は、2個である。
【0040】
変性前のエポキシ樹脂は、主鎖延長剤で主鎖を延長してもよい。主鎖延長剤としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、末端カルボキシ基含有ブタジエン-アクリルニトリル共重合体、長鎖二塩基酸、ポリアミンなどが挙げられる。
【0041】
変性前のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の一部のエポキシ基と、ヒドロキシ基を1個有する化合物のヒドロキシ基とを反応させて、エーテル化してもよい。ヒドロキシ基を1個有する化合物としては、例えば、2-エチル-1-ヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、2-ブトキシエタノール(別名:エチレングリコールモノブチルエーテル)、プロピレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルなどが挙げられる。
【0042】
変性前のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の一部のエポキシ基と、モノカルボン酸のカルボキシ基とを反応させて、エステル化してもよい。モノカルボン酸としては、例えば、2-エチルヘキサン酸、オクタン酸(別名:オクチル酸)などが挙げられる。
【0043】
変性に用いるアミン化合物としては、例えば、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第三級アミンの酸塩などが挙げられる。
【0044】
第一級アミンとしては、例えば、ブチルアミン、オクチルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン(別名:モノエタノールアミン)などが挙げられる。
【0045】
第二級アミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、ジ(2-ヒドロキシエチル)アミン(別名:ジエタノールアミン)、メチル(2-ヒドロキシエチル)アミン(別名:N-メチルエタノールアミン)、ケチミンブロック化第二級アミンなどが挙げられる。
【0046】
ケチミンブロック化第二級アミンとしては、例えば、ビス(2-アミノエチル)アミン(別名:ジエチレントリアミン)(構造式:HN-CHCH-NH-CHCH-NH)の両末端のアミノ基をケトンでケチミン化してブロックしたRC=N-CHCH-NH-CHCH-N=CRなどが挙げられる(式中、Rは、独立して、ケトン由来のアルキル基またはアリール基である)。
【0047】
第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジエチルベンジルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチル-2-ヒドロキシエチルアミン(別名:N,N-ジメチルエタノールアミン)、ジフェネチルメチルアミン、ジメチル(フェニル)アミン、4-メチルモルホリンなどが挙げられる。第三級アミンの酸塩としては、例えば、上記第三級アミンの塩酸塩、酢酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、乳酸塩などが挙げられる。
【0048】
アミン化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
ケチミンブロック化第二級アミンは、第二級アミン部分をエポキシ樹脂のエポキシ基と反応させた後、水希釈することで脱ブロック化して、ケチミン(R’-N=CR)から第一級アミン(R’-NH)を生ずることができる。
【0050】
一実施形態では、アミン化エポキシ樹脂(A)は、少なくとも一部のグリシジル基(エポキシ基)がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、そのアミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さない。別の実施形態では、アミン化エポキシ樹脂(A)は、全てのグリシジル基(エポキシ基)がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、そのアミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さない。
【0051】
(A)成分の分子量は、適宜調節すればよい。例えば、(A)成分の数平均分子量は、100,000以下または1,000~100,000である。一実施形態では、(A)成分の数平均分子量は、1,000以上、2,000以上、3,000以上、4,000以上、5,000以上、6,000以上、7,000以上、8,000以上、9,000以上、10,000以上、30,000以上、50,000以上、70,000以上または90,000以上である。別の実施形態では、(A)成分の数平均分子量は、100,000以下、80,000以下、60,000以下、40,000以下、20,000以下、10,000以下、9,000以下、8,000以下、7,000以下、6,000以下、5,000以下、4,000以下、3,000以下または2,000以下である。
【0052】
本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0053】
一実施形態では、(A)成分の数平均分子量は、100,000以下である。
【0054】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)の数平均分子量が、100,000以下である。
【0055】
(A)成分のアミン価は、適宜調節すればよいが、例えば、20~100である。一実施形態では、(A)成分のアミン価は、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上または90以上である。別の実施形態では、(A)成分のアミン価は、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下または30以下である。(A)成分のアミン価は、JIS K 7237に準拠して電位差滴定法により測定することができる。
【0056】
(A)成分の水酸基価は、適宜調節すればよいが、例えば、150~650mgKOH/gである。一実施形態では、(A)成分の水酸基価は、150mgKOH/g以上、180mgKOH/g以上、200mgKOH/g以上、250mgKOH/g以上、300mgKOH/g以上、350mgKOH/g以上、400mgKOH/g以上、450mgKOH/g以上、500mgKOH/g以上、550mgKOH/g以上または600mgKOH/g以上である。別の実施形態では、(A)成分の水酸基価は、650mgKOH/g以下、600mgKOH/g以下、550mgKOH/g以下、500mgKOH/g以下、450mgKOH/g以下、400mgKOH/g以下、350mgKOH/g以下、300mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下または200mgKOH/g以下である。さらに別の実施形態では、(A)成分の水酸基価は、180~300mgKOH/gである。(A)成分の水酸基価は、JIS K 0070に準拠した方法で測定することができる。
【0057】
(A)成分として、2種以上の異なるアミン価、水酸基価の(A)成分を併用する場合は、使用する(A)成分の質量比に基づいて算出する平均アミン価および平均水酸基価が、上記の数値範囲内であることが好ましい。
【0058】
上記の他、(A)成分としては、例えば、特許文献1に記載のカチオン性エポキシ樹脂(A);特許文献2に記載のアミン化樹脂(A);特開2017-061641号公報および特開2018-184489号公報に記載のカチオン変性エポキシ樹脂であるアミン化樹脂(A);特開2006-199948号公報に記載のエポキシ樹脂をアミンでカチオン変性したカチオン性樹脂;特開2011-020085号公報に記載のエポキシ樹脂をアミンでカチオン変性した樹脂成分(b)などを用いてもよい。
【0059】
(A)成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)および前記アミン化アクリル樹脂(B)が一緒に乳化されている。これによって、より高度に優れた耐食性と耐候性を発揮し得る。
【0061】
カチオン電着塗料組成物における(A)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、15~50質量部である。(A)成分の量が、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、15質量部以上であることによって、電着塗膜の優れた耐食性が発揮される。また、(A)成分の量が、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、50質量部より多い場合、電着塗膜の優れた耐候性を発揮することができない。
【0062】
・(B)成分
(B)成分は、アミン化アクリル樹脂である。(B)成分は、塗膜形成樹脂としての機能と、電着塗膜に主に耐候性を付与する機能を有する。
【0063】
(B)成分としては、従来公知の電着塗料組成物のアミン化アクリル樹脂を用いることができる。(B)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、アミン部分を含むモノマー(以下、「アミン系モノマー」ということがある)との共重合体;(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、グリシジル基を含むモノマー(以下、「グリシジル基含有モノマー」ということがある)との共重合体のグリシジル基をアミン化合物と付加反応させて、アミン化した共重合体などが挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニルなどが挙げられる。
【0065】
アミン系モノマーとしては、例えば、アリルアミン、メタリルアミン、アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(N,N-ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル、メタクリル酸2-(tert-ブチルアミノ)エチル、アクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピル、メタクリル酸3-(ジメチルアミノ)プロピル、アクリル酸3-(ジエチルアミノ)プロピル、メタクリル酸3-(ジエチルアミノ)プロピル、N-(ジメチルアミノメチル)アクリルアミド、N-(ジメチルアミノメチル)メタクリルアミド、N-(ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミドなどが挙げられる。
【0066】
グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、グリシジルビニルエーテル、4-ビニルベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらのグリシジル基含有モノマーを共重合することによって、側鎖にグリシジル基を有する共重合体が得られる。
【0067】
アミン化合物としては、(A)成分で例示したものが挙げられる。
【0068】
(B)成分の共重合体には、他のモノマーも用いてもよい。このような他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシプロピル、アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3-ヒドロキシプロピル、アクリル酸4-ヒドロキシブチル、メタクリル酸4-ヒドロキシブチルなどのヒドロキシ基含有モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニルモノマー;アクリルアミド、メタクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミドモノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの(メタ)アクリロニトリルモノマー;酢酸ビニルなどが挙げられる。ヒドロキシ基含有モノマーを共重合することによって、側鎖にヒドロキシ基を有する共重合体が得られる。
【0069】
一実施形態では、(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アミン系モノマー、グリシジル基含有モノマー、アミン化合物および上記他のモノマーは、それぞれ、エチレン性不飽和結合を1つのみ有する。
【0070】
(メタ)アクリル酸エステルモノマー、アミン系モノマー、グリシジル基含有モノマー、アミン化合物および上記他のモノマーは、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(B)成分は、任意に、ハーフブロック化ジイソシアネート化合物との付加反応によってブロックイソシアネート基を導入し、自己架橋型アミン化アクリル樹脂としてもよい。この手法として、例えば、特開平8-333528号公報の手法などが挙げられる。
【0072】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記アミン化アクリル樹脂(B)が、ヒドロキシ基またはグリシジル基を側鎖に有する共重合体と、アミン化合物との付加生成物であり、
前記共重合体が、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ヒドロキシ基またはグリシジル基含有モノマーとの共重合体である。
【0073】
(B)成分の分子量は、適宜調節すればよい。例えば、(B)成分の数平均分子量は、5,000~6,000である。
【0074】
(B)成分のアミン価は、適宜調節すればよいが、例えば、20~100である。一実施形態では、(B)成分のアミン価は、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上または90以上である。別の実施形態では、(B)成分のアミン価は、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下、40以下または30以下である。
【0075】
(B)成分の水酸基価は、適宜調節すればよいが、例えば、20~250mgKOH/gである。一実施形態では、(B)成分の水酸基価は、20以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、110以上、120以上、130以上、140以上、150以上または200以上である。別の実施形態では、(B)成分の水酸基価は、250以下、200以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、100以下、90以下、80以下、70以下、60以下または50以下である。
【0076】
(B)成分のガラス転移温度(Tg)は、適宜調節すればよいが、例えば、20~100℃である。一実施形態では、(B)成分のTgは、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上または90℃以上である。別の実施形態では、(B)成分のTgは、100℃以下、90℃以下、80℃以下、70℃以下、60℃以下、50℃以下、40℃以下または30℃以下である。
【0077】
上記の他、(B)成分としては、例えば、特許文献1に記載のカチオン性アクリル樹脂(B);特開2011-020085号公報に記載のカチオン変性アクリル樹脂である樹脂成分(a)などを用いてもよい。
【0078】
(B)成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(B)成分の共重合体は、例えば、上述したモノマーを用いて、有機溶媒中で溶液重合によって得ることができる。この他、例えば、服部ら、「アクリル樹脂」、色材協会誌、64(7)、471-477,1991に記載の方法を用いてもよい。
【0080】
カチオン電着塗料組成物における(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、50~85質量部である。(B)成分の量が、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、50~85質量部であることによって、電着塗膜の優れた耐食性が発揮される。一実施形態では、(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、50質量部以上、55質量部以上、60質量部以上、65質量部以上、70質量部以上、75質量部以上または80質量部以上である。別の実施形態では、(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、85質量部以下、80質量部以下、75質量部以下、70質量部以下、65質量部以下、60質量部以下または55質量部以下である。さらに別の実施形態では、(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、60~80質量部である。
【0081】
・(C)成分
(C)成分は、ブロックイソシアネート硬化剤である。(C)成分は、硬化剤としての機能と、塗膜形成樹脂としての機能を有する。
【0082】
(C)成分としては、従来公知の電着塗料組成物のブロックイソシアネート硬化剤を用いることができる。(C)成分としては、例えば、ポリイソシアネートが封止剤でブロックされたブロックイソシアネート硬化剤が挙げられる。
【0083】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)などの脂環式ポリイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0084】
封止剤としては、例えば、n-ブタノール、1-ヘキサノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの一価のアルキルアルコール類または芳香族アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテルなどのセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノールなどのポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオールなどのジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸などのジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ-t-ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム類;ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクタムなどのラクタム類などが挙げられる。
【0085】
(C)成分として、脂肪族ジイソシアネートが封止剤でブロックされた硬化剤と、芳香族ジイソシアネートが封止剤でブロックされた硬化剤とを併用してもよい。
【0086】
上記の他、(C)成分としては、例えば、特許文献1に記載のブロック化イソシアネート硬化剤(C);特開2006-199948号公報に記載のブロックイソシアネート硬化剤;特開2011-020085号公報に記載のブロックドポリイソシアネート;特開2017-061641号公報および特開2018-184489号公報に記載のブロックイソシアネート硬化剤(B)などを用いてもよい。
【0087】
(C)成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
カチオン電着塗料組成物における(C)成分の量は、例えば、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計固形分100質量部に対して、10~50質量部である。一実施形態では、(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計固形分100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上または40質量部以上である。別の実施形態では、(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計固形分100質量部に対して、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下または20質量部以下である。さらに別の実施形態では、(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計固形分100質量部に対して、20~50質量部である。
【0089】
・(D)成分
(D)成分は、ビスマス触媒である。(D)成分は、カチオン電着塗料組成物の硬化触媒としての機能を有する。
【0090】
(D)成分としては、従来公知のビスマスを含有する化合物を用いることができる。(D)成分としては、例えば、酸化ビスマス(酸化数3、Bi)、酸化ビスマス(酸化数5)、水酸化ビスマス(Bi(OH))、硝酸ビスマスなどが挙げられる。一実施形態では、(D)成分は、酸化ビスマス(酸化数3、Bi)、酸化ビスマス(酸化数5)、水酸化ビスマス(Bi(OH))および硝酸ビスマスからなる群より選択される1種以上である。
【0091】
(D)成分として、粉体形態のビスマス化合物を用いてもよい。粉体形態の(D)成分の平均粒子径は、例えば、0.5~20μmである。一実施形態では、粉体形態の(D)成分の平均粒子径は、1μm以上、3μm以上、5μm以上、10μm以上または15μm以上である。別の実施形態では、粉体形態の(D)成分の平均粒子径は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、5μm以下、3μm以下または1μm以下である。
【0092】
(D)成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
カチオン電着塗料組成物における(D)成分の量は、例えば、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(E)成分の合計固形分100質量部に対して、ビスマス元素換算で0.05~2.0質量部である。
【0094】
・(E)成分
(E)成分は、粘性剤である。(E)成分は、カチオン電着塗料組成物にエッジ部防錆などの防錆性を付与する働きを有する。(E)成分は任意成分であるが、本発明のカチオン電着塗料組成物は、(E)成分および後述する(F)成分からなる群より選択される1種以上を含む。本発明のカチオン電着塗料組成物は、(E)成分および(F)成分の両方を含んでいてよい。
【0095】
(E)成分としては、従来公知の粘性剤を用いることができる。(E)成分としては、例えば、エポキシ粘性剤、アクリルマイクロゲルなどが挙げられる。
【0096】
・エポキシ粘性剤
(E)成分のエポキシ粘性剤としては、例えば、上記(A)成分を用いることができる。
【0097】
(E)成分のエポキシ粘性剤の分子量は、適宜調節すればよい。例えば、(E)成分のエポキシ粘性剤の数平均分子量は、100,000より大きい。一実施形態では、(E)成分のエポキシ粘性剤の数平均分子量は、100,000より大きく、10,000,000以下である。別の実施形態では、(E)成分のエポキシ粘性剤の数平均分子量は、500,000以上、600,000以上、700,000以上、800,000以上、900,000以上、1,000,000以上、5,000,000以上または9,000,000以上である。さらに別の実施形態では、(E)成分のエポキシ粘性剤の数平均分子量は、10,000,000以下、5,000,000以下、1,000,000以下、900,000以下、800,000以下、700,000以下、600,000以下または500,000以下である。
【0098】
上記の他、エポキシ粘性剤としては、例えば、特開2018-159032号公報に記載のエポキシ粘性剤(A)などを用いてもよい。
【0099】
一実施形態では、(E)成分のエポキシ粘性剤は、少なくとも一部のグリシジル基(エポキシ基)がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、そのエポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さない。
【0100】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤であり、
前記エポキシ粘性剤が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記エポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記エポキシ粘性剤の数平均分子量が、100,000より大きい。
【0101】
エポキシ粘性剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
・アクリルマイクロゲル
(E)成分のアクリルマイクロゲルとしては、例えば、エチレン性不飽和結合を1個有するモノマーと、架橋性モノマーとの乳化重合による共重合体などが挙げられる。
【0103】
エチレン性不飽和結合を1個有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などのカルボキシル基含有モノマー;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどのアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル;2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコールなどのヒドロキシ基含有モノマー;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミドなどが挙げられる。エチレン性不飽和結合を有するモノマーは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
架橋性モノマーとしては、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマー;相互に反応し得る基(エチレン性不飽和基以外の基をいう)をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和基含有モノマーを含む。
【0105】
分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、
テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、グリセロールアリロキシジアクリレート、グリセロールアリロキシジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタンジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリアクリレ-ト、1,1,1-トリスヒドロキシメチルエタントリメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパンジアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパンジメタクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリアクリレート、1,1,1-トリスヒドロキシメチルプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリメリット酸トリアリル、ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレートおよびジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0106】
相互に反応し得る基をそれぞれ担持する2種のエチレン性不飽和結合を有するモノマーの組合せとしては、例えば、グリシジル基およびエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、カルボキシ基およびエチレン性不飽和結合を有するモノマーとの組合せ;ヒドロキシ基およびエチレン性不飽和結合を有するモノマーと、イソシアナート基およびエチレン性不飽和結合を有するモノマーとの組合せなどが挙げられる。
【0107】
グリシジル基およびエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどが挙げられる。カルボキシル基およびエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ヒドロキシル基およびエチレン性不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコールなどが挙げられる。
【0108】
アクリルマイクロゲルの調製方法は、特に限定されない。例えば、アクリロマイクロゲルは、エチレン性不飽和結合を有するモノマーおよび架橋性モノマーを、公知の方法で水性媒体中で乳化重合することで得られる。
【0109】
水性媒体としては、例えば、水;メチルアルコール、n-ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、2-メチル-1-プロパノール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、2-エチルエチレングリコールモノヘキシルエーテルなどのエーテルなどが挙げられる。
【0110】
エマルションから水性媒体を除去する方法としては、例えば、水性媒体の溶剤置換、共沸、遠心分離、ろ過、加熱乾燥、噴霧乾燥などが挙げられる。
【0111】
上記の他、アクリルマイクロゲルとしては、例えば、特開2006-342303号公報に記載の架橋樹脂粒子、特開2008-024893号公報、特開2004-002558号公報に記載のマイクロゲルなどを用いてもよい。
【0112】
アクリルマイクロゲルは、アクリル樹脂粒子であってもよい。アクリル樹脂粒子としては、例えば、特開2006-342303号公報に記載の架橋樹脂粒子などが挙げられる。アクリル樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和結合を有するモノマーと、架橋性モノマー(例えば、分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマー)とを水性媒体中で乳化剤を用いて、公知の方法で乳化重合させて得ることができる。
【0113】
乳化剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0114】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコールソルビタンモノステアレート、ポリプロピレングリコールポリエチレングリコールエーテルなどが挙げられる。
【0115】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルビコリニウムクロライドなどが挙げられる。
【0116】
また、乳化剤として、例えば、後述する第三級スルホニウム塩の官能基を有する顔料分散樹脂などのカチオン性重合体を用いることで、架橋樹脂粒子にカチオン性基を導入することができる。
【0117】
乳化剤の量は、適宜調節すればよい。例えば、乳化剤の量は、エチレン性不飽和結合を有するモノマー、架橋性モノマーおよび乳化剤の合計100質量部に対して、3~70質量部である。
【0118】
架橋樹脂粒子の平均粒子径は、例えば、10nm~1000nmである。一実施形態では、架橋樹脂粒子の平均粒子径は、10nm以上、20nm以上、50nm以上、100nm以上または500nm以上である。別の実施形態では、架橋樹脂粒子の平均粒子径は、1000nm以下、500nm以下、100nm以下、50nm以下または20nm以下である。
【0119】
一実施形態では、アクリルマイクロゲルは、アクリル樹脂粒子であり、そのアクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5質量%以上含む。別の実施形態では、アクリルマイクロゲルは、アクリル樹脂粒子であり、そのアクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5~20質量%含む。さらに別の実施形態では、アクリルマイクロゲルは、アクリル樹脂粒子であり、そのアクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5~20質量%含み、(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の単量体単位を70~95質量%含む。
【0120】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、アクリルマイクロゲルであり、
前記アクリルマイクロゲルが、アクリル樹脂粒子であり、
前記アクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5質量%以上含む。
【0121】
アクリルマイクロゲルは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0122】
(E)成分は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0123】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤およびアクリルマイクロゲルからなる群より選択される1種以上である。
【0124】
カチオン電着塗料組成物が、(E)成分を含む場合、粘性剤(E)の質量は、アミン化エポキシ樹脂(A)、アミン化アクリル樹脂(B)、ブロックイソシアネート硬化剤(C)および粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、0.1~20%である。一実施形態では、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、0.1%以上、0.5%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、8.0%以上、9.0%以上、10.0%以上、11.0%以上、12.0%以上、13.0%以上、14.0%以上、15.0%以上、16.0%以上、17.0%以上、18.0%以上または19.0%以上である。別の実施形態では、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、20.0%以下、19.0%以下、18.0%以下、17.0%以下、16.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下または1.0%以下である。
【0125】
一実施形態では、粘性剤(E)がエポキシ粘性剤である場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、5.0%以下である。これにより、優れた耐食性と耐候性を発揮しながら、本発明のカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗膜の厚膜外観を向上させることができる。電着塗膜の硬化後の膜厚は、通常、20μm程度であるが、電着塗装対象の部品又は部位によっては30μmなどの膜厚が厚い電着塗膜を形成することもある。従来のカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗膜では、膜厚が厚くなると、塗膜表面に凹凸が発生し、塗膜の外観が低下することがあった。これに対して、粘性剤(E)がエポキシ粘性剤である場合、(E)成分の質量を、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、5.0%以下とすることによって、優れた耐食性と耐候性を発揮しながら、電着塗膜の厚膜外観を向上させることができる。本発明では膜厚が厚い電着塗膜の外観を厚膜外観といい、厚膜は、電着塗膜の硬化後の膜厚が30μm以上の電着塗膜を指す。電着塗膜を厚膜とする場合の膜厚は、50μm以下であることが好ましい。別の実施形態では、粘性剤(E)がエポキシ粘性剤である場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、2.0~5.0%である。
【0126】
一実施形態では、粘性剤(E)がアクリルマイクロゲルである場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、10.0%以下である。これにより、優れた耐食性と耐候性を発揮しながら、本発明のカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗膜の厚膜外観を向上させることができる。別の実施形態では、粘性剤(E)がアクリルマイクロゲルである場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、5.0~10.0%である。
【0127】
・(F)成分
(F)成分は、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む金属元素化合物である。(F)成分は、カチオン電着塗料組成物にエッジ部防錆などの防錆性を付与する働きを有する。(F)成分は任意成分であるが、本発明のカチオン電着塗料組成物は、(E)成分および(F)成分からなる群より選択される1種以上を含む。
【0128】
(F)成分としては、従来公知のランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む金属元素化合物を用いることができる。(F)成分としては、例えば、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む金属酸化物、金属水酸化物などが挙げられる。(F)成分としては、例えば、酸化ランタンLa、水酸化ランタンLa(OH)、酸化ネオジムNd、水酸化ネオジムNd(OH)、酸化イットリウムY、水酸化イットリウムY(OH)、酸化プラセオジムPr、水酸化プラセオジムPr(OH)、酸化イッテルビウムYb、水酸化イッテルビウムYb(OH)、酸化セリウムCeO、水酸化セリウムCeO・nHOなどが挙げられる。一実施形態では、(F)成分は、酸化ランタンLaおよび水酸化ランタンLa(OH)からなる群より選択される1種以上である。別の実施形態では、(F)成分は、酸化ランタンLaである。
【0129】
一実施形態では、(F)成分は、粒子である。(F)成分が粒子である場合、その平均粒子径は、例えば、0.5~20μmである。一実施形態では、(F)成分は、粒子であり、その平均粒子径は、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、10μm以上または15μm以上である。別の実施形態では、(F)成分は、粒子であり、その平均粒子径は、20μm以下、15μm以下、10μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下または1μm以下である。
【0130】
カチオン電着塗料組成物が、金属元素化合物(F)を含む場合、金属元素化合物(F)の質量は、アミン化エポキシ樹脂(A)、アミン化アクリル樹脂(B)およびブロックイソシアネート硬化剤(C)の合計固形分質量に対して、金属元素換算で0.1~2.0%である。一実施形態では、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上または1.9%以上である。別の実施形態では、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下または0.2%以下である。
【0131】
一実施形態では、カチオン電着塗料組成物が、(E)成分および(F)成分を含む場合、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で0.1~2.0%である。一実施形態では、カチオン電着塗料組成物が、(E)成分および(F)成分を含む場合、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上または1.9%以上である。別の実施形態では、カチオン電着塗料組成物が、(E)成分および(F)成分を含む場合、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下または0.2%以下である。
【0132】
・その他の成分
本発明のカチオン電着塗料組成物は、(A)成分から(F)成分に加えて、従来公知のカチオン電着塗料組成物に含まれる成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、有機酸、溶媒、顔料分散樹脂、多価酸、顔料、界面活性剤、粘度調整剤、はじき防止剤、無機防錆剤、補助錯化剤、緩衝剤、平滑剤、応力緩和剤、光沢剤、半光沢剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。また、(A)~(C)成分以外の塗膜形成樹脂、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン系樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などを含んでいてもよい。
【0133】
・有機酸
有機酸としては、例えば、ヒドロキシモノカルボン酸、スルホン酸などが挙げられる。有機酸は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸などの全炭素原子数2、3、4または5のモノヒドロキシモノカルボン酸;ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、グリセリン酸などの全炭素原子数3、4、5、6または7のジヒドロキシモノカルボン酸などが挙げられる。
【0135】
スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などの全炭素原子数1、2、3、4または5のアルカンスルホン酸などが挙げられる。
【0136】
一実施形態では、有機酸は、乳酸、ジメチロールプロピオン酸およびメタンスルホン酸からなる群より選択される1種以上である。
【0137】
有機酸の形態は特に限定されず、例えば、固体形態、液体形態、溶液形態(例えば、水溶液形態)が挙げられる。水溶液形態の場合、水に加えて有機溶媒を含んでいてもよい。
【0138】
(F)成分中のランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)の金属元素のモル数と、有機酸のモル数との比は、例えば、(F)成分中の金属元素のモル数:有機酸のモル数=1:0.3~1:2.7であることが好ましい。一実施形態では、(F)成分中の金属元素のモル数:有機酸のモル数=1:0.6~1:2.4、または1:0.9~1:2.1である。
【0139】
・溶媒
溶媒としては、例えば、水、有機溶媒が挙げられる。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、1-ブタノールなどのアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、1、3-オクチレングリコールなどのグリコール類;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ミネラルスピリット、灯油などの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメチレンなどのハロゲン系溶媒などが挙げられる。溶媒は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0140】
・顔料分散樹脂
顔料分散樹脂としては、例えば、上記(A)成分のうち、アミン化合物としてケチミンブロック化第二級アミンを用いて、脱ブロック化して第一級アミンを導入したアミン化エポキシ樹脂;上記(A)成分のうち、アミン化合物として第三級アミンで変性して、第四級アンモニウム塩の官能基を導入したアミン化エポキシ樹脂;(A)成分の変性前のポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂をスルフィドで変性して、第三級スルホニウム塩の官能基を導入したカチオン性エポキシ樹脂;特許文献1、特許文献2に記載の顔料分散樹脂などを用いることができる。
【0141】
第三級スルホニウム塩の官能基を導入するためのスルフィドとしては、例えば、ジエチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、ジブチルスルフィド、ジヘキシルスルフィド、ジフェニルスルフィド、エチルフェニルスルフィド、テトラメチレンスルフィド、ペンタメチレンスルフィド、チオジエタノール、チオジプロパノール、チオジブタノール、1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール、1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-ブタノール、1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-3-ブトキシ-1-プロパノールなどが挙げられる。
【0142】
酸として、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、プロピオン酸、ホウ酸、酪酸、ジメチロールプロピオン酸、塩酸、硫酸、リン酸、N-アセチルグリシン、N-アセチル-β-アラニン、スルファミン酸などが挙げられる。
【0143】
顔料分散樹脂では、(A)成分の変性前のポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、例えば、エピ-ビス型エポキシ樹脂のヒドロキシ基を、ジイソシアネート化合物の1つのイソシアネート基をブロックしたハーフブロック化イソシアネートのブロックされていないイソシアネート基と反応させて、ブロック化イソシアネート基をポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂に導入してもよい。ジイソシアネート化合物としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4’-メチレンビスフェニルジイソシアネート(MDI)、m-キシリレンジイソシアネート(XDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)などが挙げられる。
【0144】
一実施形態では、顔料分散樹脂は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂、すなわち、(A)成分のうち、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である。
【0145】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の一実施形態では、顔料分散樹脂をさらに含み、
前記顔料分散樹脂が、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である。
【0146】
顔料分散樹脂の量は、顔料の量に応じて適宜調節すればよいが、例えば、顔料の固形分の質量に対して、顔料分散樹脂の固形分の質量が、10~150%である。
【0147】
上記の他、顔料分散樹脂としては、例えば、特許文献1に記載の顔料分散樹脂を用いてもよい。
【0148】
・多価酸
多価酸は、ビスマス触媒(D)の分散安定性を高める働きを有する。本明細書において「多価酸」とは、1価の酸基を2以上有する化合物もしくは2価以上の酸基を有する化合物をいう。多価酸は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0149】
多価酸としては、2以上のカルボン酸基を有する化合物、2以上のリン酸基を有する化合物などが挙げられる。
【0150】
2以上のカルボン酸基を有する化合物としては、例えば、酒石酸、ブドウ酸、クエン酸、リンゴ酸、ヒドロキシマロン酸、マロン酸、コハク酸、グルタン酸、アジピン酸、ポリアクリル酸などが挙げられる。
【0151】
2以上のリン酸基を有する化合物としては、例えば、リン酸;二リン酸、三リン酸、ポリリン酸、シクロリン酸などの縮合リン酸などが挙げられる。本明細書において、縮合リン酸は、2以上のリン酸基を有する無機化合物を意味する。縮合リン酸は、例えば、オルトリン酸(HPO)の脱水反応などによって調製することができる。
【0152】
一実施形態では、多価酸は、酒石酸、クエン酸、リン酸、縮合リン酸、リンゴ酸およびポリアクリル酸からなる群より選択される1種以上である。
【0153】
上記の他、多価酸としては、例えば、特許文献2に記載の多価酸を用いてもよい。
【0154】
多価酸の量は、例えば、顔料分散樹脂の樹脂固形分100質量部に対して0.01~10質量部である。
【0155】
・顔料
顔料としては、例えば、従来公知のカチオン電着塗料組成物の顔料を用いることができる。顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料などが挙げられる。顔料は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0156】
着色顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラなどが挙げられる。体質顔料としては、例えば、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレーなどが挙げられる。防錆顔料としては、例えば、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、トリポリリン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛などが挙げられる。
【0157】
顔料の量は、適宜調節すればよいが、例えば、カチオン電着塗料組成物の(A)成分、(B)成分および(C)成分ならびに含まれる場合は、顔料分散樹脂も含む、樹脂の合計固形分に対して1~30質量%である。
【0158】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、上述したように、所定量の(A)成分と(B)成分を含むため、ビスマス触媒(D)を用いても、優れた耐食性と耐候性を発揮し得る。そのため、本発明のカチオン電着塗料組成物は、硬化触媒としてのスズ化合物または鉛化合物を含まないことも可能である。一実施形態では、本発明のカチオン電着塗料組成物は、硬化触媒としてのスズ化合物および鉛化合物を実質的に含まない。一実施形態では、本発明のカチオン電着塗料組成物は、硬化触媒としてのスズ化合物および鉛化合物を含まない。さらに別の実施形態では、本発明のカチオン電着塗料組成物は、不可避不純物以外のスズ化合物および鉛化合物を含まない。さらに別の実施形態では、本発明のカチオン電着塗料組成物は、スズ化合物および鉛化合物の濃度がそれぞれ、50ppm以下である。
【0159】
・カチオン電着塗料組成物の用途
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の用途は、電着塗装用途であれば特に限定されず、自動車などの車体;自動車などの車両の部品などの電着塗装が挙げられる。
【0160】
(カチオン電着塗料組成物の製造方法)
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法は、
アミン化エポキシ樹脂(A)と、アミン化アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート硬化剤(C)と、ビスマス触媒(D)と、粘性剤(E)および金属元素化合物(F)からなる群より選択される1種以上とを準備する工程(I)、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)と前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)とを混合して、樹脂エマルションを調製する工程(II)と、
前記ビスマス触媒(D)の水溶液を調製する工程(III)と、
前記樹脂エマルションおよび前記水溶液を混合して、混合物(M)を調製する工程(IV)と、
を含み、
前記工程(I)で前記金属元素化合物(F)を準備した場合、前記工程(III)の前記水溶液は、前記金属元素化合物(F)をさらに含み、
前記工程(I)で前記粘性剤(E)を準備した場合、前記混合物(M)および前記粘性剤(E)を混合する工程(V)をさらに含み、
前記工程(II)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記アミン化アクリル樹脂(B)の量が、50~85質量部であり、
前記工程(V)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)、前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)および前記粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、前記粘性剤(E)の質量が、0.1~20%であり、
前記工程(I)で前記金属元素化合物(F)を準備した場合、前記アミン化エポキシ樹脂(A)、前記アミン化アクリル樹脂(B)および前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)の合計固形分質量に対して、前記金属元素化合物(F)の質量が、金属元素換算で0.1~2.0%であり、
前記金属元素化合物(F)が、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、イットリウム(Y)、プラセオジム(Pr)、イッテルビウム(Yb)およびセリウム(Ce)からなる群より選択される1種以上を含む、カチオン電着塗料組成物の製造方法である。
【0161】
以下、カチオン電着塗料組成物の製造方法の各工程を説明する。各工程で用いる各成分は、特段の記載のない限り、カチオン電着塗料組成物で説明したとおりである。
【0162】
・工程(I)
工程(I)では、アミン化エポキシ樹脂(A)と、アミン化アクリル樹脂(B)と、ブロックイソシアネート硬化剤(C)と、ビスマス触媒(D)と、粘性剤(E)および金属元素化合物(F)からなる群より選択される1種以上とを準備する。(A)~(F)成分は上述したとおりである。(A)~(F)成分は、それぞれ、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0163】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記アミン化エポキシ樹脂(A)の数平均分子量が、100,000以下である。
【0164】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記アミン化アクリル樹脂(B)が、ヒドロキシ基またはグリシジル基を側鎖に有する共重合体と、アミン化合物との付加生成物であり、
前記共重合体が、(メタ)アクリル酸エステルモノマーと、ヒドロキシ基またはグリシジル基含有モノマーとの共重合体である。
【0165】
(E)成分と(F)成分は、一方のみを準備してもよいし、両方を準備してもよい。一実施形態では、(E)成分を準備する。別の実施形態では、(F)成分を準備する。さらに別の実施形態では、(E)成分と(F)成分の両方を準備する。
【0166】
工程(I)では、(A)~(F)成分に加えて、上述した有機酸、溶媒、顔料分散樹脂、多価酸、顔料などを準備してもよい。
【0167】
一実施形態では、工程(I)で、(A)成分~(D)成分と、(E)成分および(F)成分からなる群より選択される1種以上とに加えて、顔料分散樹脂をさらに準備する。別の実施形態では、工程(I)で、(A)成分~(D)成分と、(E)成分および(F)成分からなる群より選択される1種以上とに加えて、顔料分散樹脂をさらに準備し、その顔料分散樹脂は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である。
【0168】
・工程(II)
工程(II)では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)と前記ブロックイソシアネート硬化剤(C)とを混合して、樹脂エマルションを調製する。また、工程(II)では、前記アミン化エポキシ樹脂(A)と前記アミン化アクリル樹脂(B)の合計100質量部に対して、前記アミン化アクリル樹脂(B)の量が、50~85質量部である。
【0169】
工程(II)では、(A)成分、(B)成分および(C)成分を一緒に混合して、その3成分の混合物を乳化して樹脂エマルションを調製してもよいし、(A)成分および(B)成分を混合して、次いで(C)成分を混合して、その3成分の混合物を乳化して樹脂エマルションを調製してもよい。
【0170】
工程(II)では、(A)成分と(B)成分を一緒に乳化して樹脂エマルションを調製してもよいし、(A)成分と(B)成分をそれぞれ別個に乳化して、乳化後に混合して樹脂エマルションを調製してもよい。(A)成分と(B)成分を一緒に乳化すると、より高度に優れた耐食性と耐候性を発揮し得るため好ましい。
【0171】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記工程(II)において、前記アミン化エポキシ樹脂(A)および前記アミン化アクリル樹脂(B)を一緒に乳化する。
【0172】
工程(II)における(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、50~85質量部である。言い換えると、(A)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、15~50質量部である。(B)成分の量が、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、50質量部未満または85質量部より多い場合、優れた耐食性と耐候性を発揮することができない。一実施形態では、(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、50質量部以上、55質量部以上、60質量部以上、65質量部以上、70質量部以上、75質量部以上または80質量部以上である。別の実施形態では、(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、85質量部以下、80質量部以下、75質量部以下、70質量部以下、65質量部以下、60質量部以下または55質量部以下である。さらに別の実施形態では、(B)成分の量は、(A)成分と(B)成分の合計固形分100質量部に対して、60~80質量部である。
【0173】
上記以外の工程(II)で樹脂エマルションを調製する方法と条件は、従来公知のカチオン電着塗料組成物の調製における樹脂エマルションの調製の方法と条件を用いることができる。例えば、所定の量の(A)成分、(B)成分および(C)成分をそれぞれ、特許文献2に記載のように、有機溶媒に溶解し、溶液とし、これらの溶液を混合して任意に水を加えて、上述した有機酸を用いて中和して、樹脂エマルションを調製してもよい。
【0174】
工程(II)での(C)成分の量は、例えば、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計固形分100質量部に対して、10~50質量部である。一実施形態では、(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計固形分100質量部に対して、10質量部以上、20質量部以上、30質量部以上または40質量部以上である。別の実施形態では、(C)成分の量は、(A)成分と(B)成分と(C)成分の合計固形分100質量部に対して、50質量部以下、40質量部以下、30質量部以下または20質量部以下である。
【0175】
有機酸の量は、適宜調節すればよい。例えば、(A)成分と(B)成分のアミノ基のモル数に対して、有機酸の酸基のモル数は、10~100%または20~70%である。
【0176】
・工程(III)
工程(III)では、ビスマス触媒(D)の水溶液を調製する。
【0177】
(D)成分の量は、例えば、(A)成分と(B)成分と(C)成分と(E)成分の合計固形分100質量部に対して、ビスマス元素換算で0.05~2.0質量部である。
【0178】
水溶液に用いられる水は、特に限定されず、例えば、イオン交換水、蒸留水、水道水、純水などが挙げられる。
【0179】
水溶液は、水以外のアルコール、エステル、ケトンなどの有機溶媒を含んでいてもよい。
【0180】
工程(I)で金属元素化合物(F)を準備した場合、工程(III)の(D)成分の水溶液は、金属元素化合物(F)をさらに含む。すなわち、(D)成分の水溶液に(F)成分を添加する、または(D)成分と(F)成分に水を添加して、(D)成分と(F)成分を含む水溶液を調製する。
【0181】
(F)成分を用いる場合、すなわち、工程(I)で前記金属元素化合物(F)を準備した場合、金属元素化合物(F)の質量は、アミン化エポキシ樹脂(A)、アミン化アクリル樹脂(B)およびブロックイソシアネート硬化剤(C)および粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、0.1~2.0%である。一実施形態では、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上または1.9%以上である。別の実施形態では、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分および(C)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下または0.2%以下である。
【0182】
一実施形態では、工程(I)で(E)成分および(F)成分を準備した場合、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、0.1~2.0%である。一実施形態では、工程(I)で(E)成分および(F)成分を準備した場合、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.6%以上、0.7%以上、0.8%以上、0.9%以上、1.0%以上、1.1%以上、1.2%以上、1.3%以上、1.4%以上、1.5%以上、1.6%以上、1.7%以上、1.8%以上または1.9%以上である。別の実施形態では、工程(I)で(E)成分および(F)成分を準備した場合、(F)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、金属元素換算で、2.0%以下、1.9%以下、1.8%以下、1.7%以下、1.6%以下、1.5%以下、1.4%以下、1.3%以下、1.2%以下、1.1%以下、1.0%以下、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.4%以下、0.3%以下または0.2%以下である。
【0183】
工程(III)では、(D)成分の水溶液を調製すればよく、(D)成分の水溶液に上述した顔料分散樹脂、有機酸が含まれていてもよい。すなわち、(D)成分の水溶液に、顔料分散樹脂および有機酸を添加してもよいし、顔料分散樹脂と有機酸の存在下で(D)成分の水溶液を調製してもよい。また、(D)成分と顔料分散樹脂と有機酸とを含む水溶液に顔料を添加して、顔料分散ペーストとしてもよい。
【0184】
工程(I)で顔料分散樹脂を準備した場合、工程(III)の(D)成分の水溶液は、顔料分散樹脂をさらに含む。すなわち、(D)成分の水溶液に顔料分散樹脂を添加する、または水と顔料分散樹脂と有機酸の混合物に、(D)成分を添加して、(D)成分と顔料分散樹脂を含む水溶液を調製する。一実施形態では、顔料分散樹脂は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である。
【0185】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記工程(I)で顔料分散樹脂をさらに準備し、
前記工程(III)の前記水溶液は、前記顔料分散樹脂をさらに含み、
前記顔料分散樹脂が、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有するエポキシ樹脂である。
【0186】
工程(I)で(F)成分と顔料分散樹脂を準備した場合、工程(III)の(D)成分の水溶液は、(F)成分と顔料分散樹脂をさらに含む。例えば、水と顔料分散樹脂と有機酸との存在下で、(D)成分と(F)成分を混合して、(D)成分と(F)成分と顔料分散樹脂とを含む水溶液を調製する。
【0187】
顔料を添加して、顔料分散ペーストとする場合、適宜、サンドミルなどの公知の分散手段を用いて顔料を分散させてもよい。
【0188】
あるいは、工程(III)では、例えば、(D)成分と有機酸と水を混合して混合液を調製して、次いで、その混合液と顔料分散樹脂と多価酸を混合して(D)成分の水溶液を調製してもよい。この場合、多価酸の量は、例えば、顔料分散樹脂の樹脂固形分100質量部に対して0.01~10質量部である。
【0189】
・工程(IV)
工程(IV)では、樹脂エマルションおよび(D)成分の水溶液を混合して、混合物(M)を調製する。
【0190】
樹脂エマルションと(D)成分の水溶液の量は、適宜調節すればよいが、例えば、樹脂エマルションの固形分の質量に対して、(D)成分の水溶液の固形分の質量が、10~40%である。一実施形態では、樹脂エマルションの固形分の質量に対して、(D)成分の水溶液の固形分の質量が、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上または35%以上である。別の実施形態では、樹脂エマルションの固形分の質量に対して、(D)成分の水溶液の固形分の質量が、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下または15%以下である。
【0191】
工程(IV)では、(D)成分の水溶液として顔料分散ペーストを樹脂エマルションと混合してもよい。樹脂エマルションと顔料分散ペーストの量は、適宜調節すればよいが、例えば、樹脂エマルションの固形分の質量に対して、顔料分散ペーストの固形分の質量が、10~40%である。一実施形態では、樹脂エマルションの固形分の質量に対して、顔料分散ペーストの固形分の質量が、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上または35%以上である。別の実施形態では、樹脂エマルションの固形分の質量に対して、顔料分散ペーストの固形分の質量が、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下または15%以下である。
【0192】
工程(I)で(E)成分を準備しなかった場合、混合物(M)を本発明のカチオン電着塗料組成物として得ることもできる。この場合、混合物(M)にさらに水を添加して本発明のカチオン電着塗料組成物として得てもよい。
【0193】
・工程(V)
工程(V)は、工程(I)で(E)成分を準備した場合に行う工程であり、混合物(M)および粘性剤(E)を混合する。
【0194】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤およびアクリルマイクロゲルからなる群より選択される1種以上である。
【0195】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、エポキシ粘性剤であり、
前記エポキシ粘性剤が、少なくとも一部のグリシジル基がアミン変性されているエポキシ樹脂であり、
前記エポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さず、
前記エポキシ粘性剤の数平均分子量が、100,000より大きい。
【0196】
本発明に係るカチオン電着塗料組成物の製造方法の一実施形態では、前記粘性剤(E)が、アクリルマイクロゲルであり、
前記アクリルマイクロゲルが、アクリル樹脂粒子であり、
前記アクリル樹脂粒子は、当該アクリル樹脂粒子の総質量に対して、架橋性モノマー由来の単量体単位を5質量%以上含む。
【0197】
工程(V)において、粘性剤(E)の質量は、アミン化エポキシ樹脂(A)、アミン化アクリル樹脂(B)、ブロックイソシアネート硬化剤(C)および粘性剤(E)の合計固形分質量に対して、0.1~20%である。一実施形態では、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、0.1%以上、0.5%以上、1.0%以上、2.0%以上、3.0%以上、4.0%以上、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、8.0%以上、9.0%以上、10.0%以上、11.0%以上、12.0%以上、13.0%以上、14.0%以上、15.0%以上、16.0%以上、17.0%以上、18.0%以上または19.0%以上である。別の実施形態では、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、20.0%以下、19.0%以下、18.0%以下、17.0%以下、16.0%以下、15.0%以下、14.0%以下、13.0%以下、12.0%以下、11.0%以下、10.0%以下、9.0%以下、8.0%以下、7.0%以下、6.0%以下、5.0%以下、4.0%以下、3.0%以下、2.0%以下または1.0%以下である。
【0198】
一実施形態では、粘性剤(E)がエポキシ粘性剤である場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、5.0%以下である。別の実施形態では、粘性剤(E)がエポキシ粘性剤である場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、2.0~5.0%である。
【0199】
一実施形態では、粘性剤(E)がアクリルマイクロゲルである場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、10.0%以下である。別の実施形態では、粘性剤(E)がアクリルマイクロゲルである場合、(E)成分の質量は、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(E)成分の合計固形分質量に対して、5.0~10.0%である。
【0200】
工程(V)において、混合物(M)および(E)成分を混合することで、本発明のカチオン電着塗料組成物を得ることもできる。この場合、混合物(M)および(E)成分を混合し、さらに水を添加して本発明のカチオン電着塗料組成物を得てもよい。
【0201】
本発明のカチオン電着塗料組成物の製造方法では、工程(I)~(V)以外の工程を含んでいてもよい。工程(I)~(V)以外の工程としては、例えば、混合物(M)またはカチオン電着塗料組成物に酸を添加してpHを調節する工程、混合物(M)またはカチオン電着塗料組成物をエージングする工程などが挙げられる。
【0202】
(電着塗膜)
本発明のカチオン電着塗料組成物を用いて電着塗装を行うことで電着塗膜を形成することができる。本発明のカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗膜は、優れた耐食性と耐候性を有する。
【0203】
電着塗装の方法は、特に限定されず、従来公知の電着塗装の方法を用いることができる。例えば、特許文献2に記載の方法を用いて電着塗装を行い、電着塗膜を形成することができる。
【0204】
電着塗膜の硬化後の膜厚は、例えば、5~50μmとすることができる。
【0205】
(車体)
本発明のカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗膜を有する車体は、優れた耐食性と耐候性を有する。
【0206】
(車両部品)
本発明のカチオン電着塗料組成物を用いた電着塗膜を有する車両部品は、優れた耐食性と耐候性を有する。このような車両部品としては、例えば、トラックフレームなどが挙げられる。
【実施例0207】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0208】
実施例で用いたカチオン電着塗料組成物の各成分の詳細は以下のとおりである。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ダウ・ケミカル社製の商品名「DER-331J」
焼成カオリン:BASF社製の商品名「Satinton(登録商標)」
【0209】
実施例で用いた材料および装置の詳細は以下のとおりである。
L型専用替刃:オルファ社製の商品名「LB10K」
脱脂剤:日本ペイント社製の商品名「サーフクリーナーEC90」
表面調整剤:日本ペイント社製の商品名「サーフファインGL-1」
リン酸亜鉛皮膜処理剤:日本ペイント社製の商品名「サーフダインSD-5000」
表面粗さ測定機:ミツトヨ社製の商品名「サーフテスト301」
【0210】
(A)成分は、特開2020-193281号公報の製造例2と同様に調製して固形分約76%のアミン化エポキシ樹脂を得た。得られたアミン化エポキシ樹脂は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有しない。用いた各成分の量と生成物の特徴は以下のとおりである。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:940質量部
ビスフェノールA:382質量部
オクタン酸:63質量部
N,N-ジメチルベンジルアミン:2質量部
ケチミンブロック化第二級アミン:78部(メチルイソブチルケトン溶液、固形分73%)、ビス(2-アミノエチル)アミンの両末端のアミノ基をメチルイソブチルケトンでブロック化した第二級アミン
ジ(2-ヒドロキシエチル)アミン:92質量部
数平均分子量:2560
アミン価:50(うち第一級アミンに由来するアミン価は14)
水酸基価:240mgKOH/g
【0211】
(B)成分は、特開2012-025905号公報の製造例2-1と同様に調製して固形分約76%のアミン化アクリル樹脂を得た。用いた各成分の量と生成物の特徴は以下のとおりである。
メタクリル酸グリシジル:16.0質量部
メタクリル酸ヒドロキシエチル:39.4質量部
メタクリル酸メチル:14.0質量部
メタクリル酸イソボルニル:16.2質量部
アクリル酸ブチル:14.4質量部
tert-ブチル(2-エチルヘキサノイル)ペルオキシド:6.0質量部(5.0質量部と1.0質量部)
メチル(2-ヒドロキシエチル)アミン:8.5質量部
数平均分子量:5500
SP値:11.3
Tg:50℃
【0212】
(C)成分は、特開2012-236928号公報の製造例1と同様に調製して固形分80%のブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0213】
(E)成分のエポキシ粘性剤は以下のとおり調製した。
反応容器にビスフェノールA型エポキシ樹脂940質量部、ビスフェノールA388質量部、ジメチルベンジルアミン5.10質量部、ブチルセロソルブ79質量部、エチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル79質量部を加えた。反応容器内の温度を160℃に保持し、エポキシ当量が1083g/eqになるまで5.5時間反応させた。次いで、反応容器内の温度が120℃になるまで冷却した。次いで、反応容器内に、ケチミンブロック化第二級アミン(ビス(2-アミノエチル)アミンの両末端のアミノ基をメチルイソブチルケトンでケチミン化した第二級アミン、メチルイソブチルケトン溶液、固形分73%)258質量部、N-メチルエタノールアミン21質量部およびジエタノールアミン45質量部のアミン化合物の混合物を添加し、120℃で1時間反応させてアミン変性エポキシ樹脂を得た。次いで、反応容器内の温度を90℃まで冷却した後、イオン交換水および酢酸を、アミン変性エポキシ樹脂の中和率が50%になるように加えて酸中和した。次いで、イオン交換水を加えて、固形分が20%に希釈した。その後、ビスフェノールA型エポキシ樹脂188部(ケチミン誘導体1モルに対して1.4モルとなる量)を加えた。その混合物を90℃で3時間反応させた。減圧下でメチルイソブチルケトンを除去して、数平均分子量1,000,000、固形分20%のエポキシ粘性剤を得た。このエポキシ粘性剤は、第三級スルホニウム塩と第四級アンモニウム塩の官能基を有さない。
【0214】
(E)成分のアクリロマイクロゲルは、特開2006-342303号公報の段落[0081]~[0085]と同様に調製して固形分36%のアクリル樹脂粒子である架橋樹脂粒子を得た。用いた主な成分の量と生成物の特徴は以下のとおりである。
イソホロンジイソシアネート:222.0質量部
ジブチルすずジラウレート:0.2質量部
2-エチルヘキサノール:131.5質量部
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:382.2質量部
ビスフェノールA117.8質量部
2-エチルヘキサノールハーフブロックIPDI:209.8質量部、MIBK溶液、固形分90.0%
ビスフェノールAのエチレンオキサイド6モル付加物:205.0質量部
1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール:408.0質量部
ジメチロールプロピオン酸:134質量部
2,2’-アゾビス-N,N’-ジメチルイソブチルアミジン:0.5質量部
氷酢酸:0.23質量部
メタクリル酸メチル:10質量部
第三級スルホニウム基含有エポキシ樹脂:27.75質量部(固形分30%)
スチレン:12質量部
アクリル酸ブチル:10質量部
メタクリル酸メチル:52.5質量部
メタクリル酸グリシジル:2質量部
ヒドロキシ基含有アクリルモノマー:3.5質量部、ダイセル化学工業社の商品名「FM-1」
ネオペンチルグリコールジメタクリレート:10質量部
平均粒子径:78nm
【0215】
顔料分散樹脂は、特開2006-342303号公報の段落[0082]~[0083]と同様に調製して固形分30%の第三級スルホニウム塩の基を有するエポキシ樹脂を得た。用いた主な成分の量と生成物の特徴は以下のとおりである。
ビスフェノールA型エポキシ樹脂:382.2質量部
ビスフェノールA117.8質量部
2-エチルヘキサノールハーフブロックIPDI:209.8質量部、MIBK溶液、固形分90.0%
ビスフェノールAのエチレンオキサイド6モル付加物:205.0質量部
1-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-プロパノール:408.0質量部
ジメチロールプロピオン酸:134質量部
【0216】
・樹脂エマルションの調製
表1に示す配合で、上記のように調製した固形分76%の(A)成分と、固形分76%の(B)成分の分散体と、固形分80%の(C)成分の分散体と、酢酸100%とを混合して均一に撹拌した。次いで、その混合物を撹拌しながら、表1に示す量のイオン交換水を約15分かけて滴下した。次いで、その混合物を減圧下で不揮発分34%まで濃縮し、樹脂エマルション1~6を調製した。
【0217】
【表1】
【0218】
・(F)成分を含まない(D)成分の水溶液の調製
表2に示す配合で、イオン交換水と、50%の乳酸水溶液と、酸化ビスマス(酸化数3、Bi)とを混合した。その混合物に上記のように調製した固形分30%の顔料分散樹脂を加え、室温で1時間、1000rpmで撹拌した。次いで、その混合物に酒石酸を加えてさらに混合して、(D)成分の水溶液を調製した。
【0219】
上記のように調製した(D)成分の水溶液に、表2に示す配合で2種類の顔料(カーボンブラックおよび焼成カオリン)を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmで撹拌して、顔料分散ペースト1を得た。
【0220】
・(F)成分を含む(D)成分の水溶液の調製
イオン交換水を表2に示す配合に変更したこと以外は、上記と同様に(D)成分の水溶液を調製した。さらに、この(D)成分の水溶液に、50%乳酸水溶液7.4質量部および表2に示す量の酸化ランタンを加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmにて撹拌して、(D)成分の水溶液を調製した。
【0221】
上記のように調製した(D)成分の水溶液に、表2に示す配合で2種類の顔料(カーボンブラックおよび焼成カオリン)を加え、サンドミルを用いて40℃で1時間、2000rpmで撹拌して、固形分52質量%の顔料分散ペースト2~4を得た。
【0222】
【表2】
【0223】
(実施例1~14、比較例1~3)
ステンレス容器に、表3に示す配合で、イオン交換水と、樹脂エマルションと、顔料分散ペーストと、(E)成分とを添加した。その混合物を40℃で16時間エージングして、カチオン電着塗料組成物を調製した。
【0224】
表面粗度0.9~1.0μmのジルコニウム処理鋼板に、各実施例と比較例で得られたカチオン電着塗料組成物を、耐候性および耐食性の評価用塗板では、焼き付け後の膜厚が20μmとなるように、そして、厚膜外観の評価用塗板では、焼き付け後の膜厚が30μmとなるような電圧で電着塗装を行った。その湿潤塗膜を160℃で15分間焼き付けを行い、電着塗膜を有する塗板を得た。
【0225】
エッジ部防錆の評価用サンプルは、以下のように準備した。まず、L型専用替刃を脱脂剤中に50℃で2分間浸漬して脱脂処理した。次いで、その替刃を表面調整剤で表面調整した。次いで、その替刃をリン酸亜鉛皮膜処理剤中に40℃で2分間浸漬して、リン酸亜鉛化成処理を行った替刃を得た。次いで、この替刃に各実施例と比較例で得られたカチオン電着塗料組成物を、焼き付け後の膜厚が20μmとなるような電圧で電着塗装を行った。その湿潤塗膜を160℃で15分間焼き付けを行い、電着塗膜を有するサンプルを得た。
【0226】
(評価)
得られた電着塗膜について、以下のように耐候性、耐食性、厚膜外観およびエッジ部防錆を評価した。結果を表3に合わせて示す。
【0227】
(耐候性)
サンシャインアーク灯式耐光性試験機を用いて、塗板をJIS D 0205に準拠して400時間暴露した。その塗板の試験前後のJIS K 5600-4-7に規定される60度鏡面光沢度を測定した。その試験前後の光沢度から、以下の式で光沢保持率を算出した。そして、以下の基準で電着塗膜の耐候性を評価した。評点Aが最も電着塗膜の耐候性に優れることを示す。
光沢保持率(%)=(試験後の光沢度/試験前の光沢度)×100
評点A:光沢保持率が80%以上
評点B:光沢保持率が70%以上80%未満
評点C:光沢保持率が50%以上70%未満
評点D:光沢保持率が50%未満
【0228】
(耐食性)
塗板の素地に達するように電着塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れた。この塗板に対して、JIS Z-2371に準じて、35℃の塩水噴霧試験を1000時間行った。そして、カット部からの片側でのカット線に対して垂直方向への錆および膨れの最大幅を測定し、以下の基準で電着塗膜の耐食性を評価した。評点Aが最も耐食性に優れることを示す。
評点A:錆および膨れの最大幅がカット部から片側で2.0mm以下
評点B:錆および膨れの最大幅がカット部から片側で2.0mmより大きく、2.5mm以下
評点C:錆および膨れの最大幅がカット部から片側で2.5mmより大きく、3.0mm以下
評点D:錆および膨れの最大幅がカット部から片側で3.0mmより大きい
【0229】
(厚膜外観)
塗板の塗面を表面粗さ測定機を用いて、表面粗度値(Ra)をカットオフ0.8mmで測定した。そして、電着塗膜の厚膜外観を以下の基準で評価した。評点Aが最も厚膜外観に優れることを示し、
評点A:Raが0.3未満
評点B:Raが0.3以上0.4未満
評点C:Raが0.4以上0.5未満
評点D:Raが0.5以上
【0230】
(エッジ部防錆)
得られたサンプルに対して、JIS Z 2371(2000)に準拠して塩水噴霧試験(35℃、168時間)を行った。次いで、サンプルの刃の先端部に発生した錆の個数を測定した。そして、電着塗膜のエッジ部防錆を以下の基準で評価した。評点Aが最もエッジ部防錆に優れることを示す。
評点A:錆の個数が10個未満
評点B:錆の個数が10個以上20個未満
評点C:錆の個数が20個以上50個未満
評点D:錆の個数が50個以上100個未満
評点E:錆の個数が100個以上
【0231】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0232】
本発明によれば、硬化触媒としてビスマス化合物を用いても、優れた耐食性と耐候性を発揮し得るカチオン電着塗料組成物を提供することができる。また、本発明によれば、そのようなカチオン電着塗料組成物の製造方法を提供することができる。