(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124411
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】ロボット用ハンドおよびロボット用ハンドの制御システム
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022159
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 俊昭
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707BS10
3C707CY40
3C707ES06
3C707ET08
3C707EW01
3C707KS09
3C707KT01
3C707MS14
(57)【要約】
【課題】調理対象を効率的に調理する。
【解決手段】本開示は、動作状態として、開状態と閉状態との間を往復可能であり、動作状態に応じて移動する爪を備え、動作状態が閉状態のとき、爪が、ばらける可能性がある調理対象を一纏りごとに掴み、動作状態が開状態のとき、爪が、調理対象をリリースする態様での第1開閉動作と、動作状態が閉状態のとき、爪が、調理対象を一纏りごとに区画して収容する容器を掴み、動作状態が開状態のとき、爪が、容器をリリースする態様での第2開閉動作とを、選択的に実行可能である、ロボット用ハンドを開示する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット用ハンドであって、
動作状態として、開状態と閉状態との間を往復可能であり、
前記動作状態に応じて移動する可動部材を備え、
前記動作状態が閉状態のとき、前記可動部材が、ばらける可能性がある調理対象を一纏りごとに掴み、前記動作状態が開状態のとき、前記可動部材が、前記調理対象をリリースする態様での第1開閉動作と、
前記動作状態が閉状態のとき、前記可動部材が、前記調理対象を一纏りごとに収容する容器を掴み、前記動作状態が開状態のとき、前記可動部材が、前記容器をリリースする態様での第2開閉動作とを、選択的に実行可能である、ロボット用ハンド。
【請求項2】
前記可動部材は爪として構成されている、請求項1に記載のロボット用ハンド。
【請求項3】
前記容器には、係合部が設けられており、
前記可動部材は、前記係合部を介して前記容器を掴む、請求項1または2に記載のロボット用ハンド。
【請求項4】
前記係合部は前記容器の中央部にある、請求項3に記載のロボット用ハンド。
【請求項5】
前記容器は、容器本体と、前記容器本体の内部を前記調理対象の一纏めごとに区画する仕切りを備え、
前記係合部は前記仕切りを構成する立壁に形成された係合孔である、請求項3または4に記載のロボット用ハンド。
【請求項6】
前記係合孔が形成された前記立壁は対で設けられ、前記対で設けられた前記立壁間の間隔は、前記調理対象が収容される前記仕切りの立壁間の間隔よりも小さい、請求項5に記載のロボット用ハンド。
【請求項7】
複数の前記爪の対を備え、
前記爪の対は、前記対の立壁に形成された前記係合孔の対にそれぞれ係合する、請求項5または6に記載のロボット用ハンド。
【請求項8】
前記爪の対のそれぞれは、前記動作状態が開状態のとき、前記調理対象を下方から支持するように配置された先端部を有する、請求項7に記載のロボット用ハンド。
【請求項9】
前記第1開閉動作では、前記調理対象は、ロボットにより搬送可能なトレイにより支持された調理器具に対してリリースされ、
前記トレイは、前記トレイにより支持された前記調理器具の上方に前記ロボット用ハンドの作業空間が確保される形状を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載のロボット用ハンド。
【請求項10】
前記トレイは、
前記ロボットにより支持される被支持部と、
前記被支持部より下方に位置し、前記調理器具を支持するトレイ部と、
前記被支持部と前記トレイ部とを接続する脚部と、
を備え、
前記被支持部および前記脚部は、前記作業空間から回避した位置に設けられる、請求項9に記載のロボット用ハンド。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のロボット用ハンドと、
前記容器に収容されている前記調理対象の有無を検出するセンサと、
前記センサによる検出結果に応じて、前記第1開閉動作または前記第2開閉動作を選択して前記ロボット用ハンドに実行させる処理装置と、
を備える、ロボット用ハンドの制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はロボット用ハンドおよびロボット用ハンドの制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術としては、麺を搬送するためのバケットを有する調理システムを例示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、調理対象を効率的に調理することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、調理対象を効率的に調理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、ロボット用ハンドであって、動作状態として、開状態と閉状態との間を往復可能であり、前記動作状態に応じて移動する可動部材を備え、前記動作状態が閉状態のとき、前記可動部材が、ばらける可能性がある調理対象を一纏りごとに掴み、前記動作状態が開状態のとき、前記可動部材が、前記調理対象をリリースする態様での第1開閉動作と、前記動作状態が閉状態のとき、前記可動部材が、前記調理対象を一纏りごとに収容する容器を掴み、前記動作状態が開状態のとき、前記可動部材が、前記容器をリリースする態様での第2開閉動作とを、選択的に実行可能である、ロボット用ハンドを提供する。
【0007】
上記の態様において、好ましくは、前記可動部材は爪として構成されている。
【0008】
上記の態様において、好ましくは、前記容器には、係合部が設けられており、前記可動部材は、前記係合部を介して前記容器を掴む。
【0009】
上記の態様において、好ましくは、前記係合部は前記容器の中央部にある。
【0010】
上記の態様において、好ましくは、前記容器は、容器本体と、前記容器本体の内部を前記調理対象の一纏めごとに区画する仕切りを備え、前記係合部は前記仕切りを構成する立壁に形成された係合孔である。
【0011】
上記の態様において、好ましくは、前記係合孔が形成された前記立壁は対で設けられ、前記対で設けられた前記立壁間の間隔は、前記調理対象が収容される前記仕切りの立壁間の間隔よりも小さい。
【0012】
上記の態様において、好ましくは、複数の前記爪の対を備え、前記爪の対は、前記対の立壁に形成された前記係合孔の対にそれぞれ係合する。
【0013】
上記の態様において、好ましくは、前記爪の対のそれぞれは、前記動作状態が開状態のとき、前記調理対象を下方から支持するように配置された先端部を有する。
【0014】
上記の態様において、好ましくは、前記第1開閉動作では、前記調理対象は、ロボットにより搬送可能なトレイにより支持された調理器具に対してリリースされ、前記トレイは、前記トレイにより支持された前記調理器具の上方に前記ロボット用ハンドの作業空間が確保される形状を有する。
【0015】
上記の態様において、好ましくは、前記トレイは、前記ロボットにより支持される被支持部と、前記被支持部より下方に位置し、前記調理器具を支持するトレイ部と、前記被支持部と前記トレイ部とを接続する脚部と、を備え、前記被支持部および前記脚部は、前記作業空間から回避した位置に設けられる。
【0016】
上記の態様において、好ましくは、ロボット用ハンドと、前記容器に収容されている前記調理対象の有無を検出するセンサと、前記センサによる検出結果に応じて、前記第1開閉動作または前記第2開閉動作を選択して前記ロボット用ハンドに実行させる処理装置と、を備える、ロボット用ハンドの制御システムを提供する。
【発明の効果】
【0017】
1つの側面では、本開示によれば、調理対象を効率的に調理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】調理システム用制御装置の構成を示す図である。
【
図2】複数のセクションを備える調理場を示す図である。
【
図3】第1セクションに配置されるレール511を示す斜視図である。
【
図9】プレート部材を取り外した状態のハンド本体部を示す斜視図である。
【
図10】ハンド本体部とトレイとの係合状態を示す斜視図である。
【
図11A】てぼ(ザル)を保持した状態のトレイを示す斜視図である。
【
図12】ロボット用ハンド30を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0020】
図1は、調理システム200の構成を示す図である。調理システム200は、制御装置1を含む。なお、制御装置1は、1つ以上のコンピュータにより実現されてもよい。この場合、1つ以上のコンピュータは、サーバコンピュータを含んでもよい。
【0021】
図1に示すように、本実施例の制御装置1は、作業装置としてのロボット21A(第1ロボット)およびロボット21B(第2ロボット)の動作を制御する処理装置11と、調理場150を撮像するカメラ74aの画像を処理する画像処理装置12と、主制御部13と、処理装置11における処理を規定するプログラム及び処理装置11における制御に必要なデータを格納する記憶部14と、主制御部13における処理を規定するプログラム及び主制御部13における制御に必要なデータを格納する記憶部15と、を備える。以下で説明する制御装置1の機能は、記憶部14及び/又は記憶部15内に記憶される1つ以上のプログラムを処理装置11及び/又は主制御部13が実行することで実現できる。なお、記憶部14及び記憶部15は共通の記憶装置により実現されてもよい。また、画像処理装置12は、例えばGPU(Graphics Processing Unit)単体であるが、処理装置11とは別の処理装置(GPUを含む処理装置)により実現されてもよい。
【0022】
また、主制御部13には、制御装置1の動作状態等を表示する表示部16と、作業者等の操作を受け付ける操作受付部17と、警報出力部18とが接続されている。主制御部13は、表示部16や警報出力部18を介して、ユーザ(作業者)にアドバイスや警報を出力してよい。例えば、主制御部13は、複数のセンサ74、カメラ74a、各種センサ74bからのセンサ情報と、後述するロボット21に設けられる複数のセンサからのセンサ情報とに基づいて、所定の異常を検出した場合に、異常情報を発生させる処理を実行する。なお、検出対象の所定の異常は、任意であり、異常情報は、異常内容を指示や示唆するメッセージであってもよいし、単なる警報音等であってもよい。 また、処理装置11は、係合強化手段56を制御する。係合強化手段56は、例えば電磁石であるが、吸引力(負圧)を発生させる負圧発生装置等であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0023】
また、処理装置11は、信号発生部41からの情報に基づいて、係合強化手段56を制御する。信号発生部41は、例えば近接センサであってよいし、感圧センサや画像センサ等であってもよい。
【0024】
また、処理装置11は、調理場150に配置される複数のセンサ74に接続される。複数のセンサ74は、カメラ74a(画像センサ)や、他の各種センサ74bを含み、調理場150の状態を検出する機能を有する。なお、カメラ74aは、2台以上設けられてもよい。
【0025】
主制御部13と処理装置11は、協働して調理に必要な処理を順次、実行する。
【0026】
次に、
図2以降を参照して、調理システム200が機能するのに好適な調理場150を詳説する。以下では、主に、蕎麦を調理することを例に説明するが、調理対象は、蕎麦以外の麺類(例えばうどん、ラーメン、パスタ)であってもよいし、麺類以外の任意の食材(何らかの調理が必要な食材)であってもよい。
【0027】
図2は、複数のセクションを備える調理場150を示す図である。
図2に示す例では、複数のセクションは、第1セクション51、第2セクション52、第3セクション53および第4セクション54を含む。なお、セクションの数は、任意であり、更なるセクションが追加されてもよい。
【0028】
図3は、第1セクションに配置されるレール511を示す斜視図である。第1セクション51では、レール511により複数のレーン511A、511B、511Cが規定される。1つ以上の“てぼ(ザル)”を保持するトレイ60(以下、単に「トレイ60」とも称する)は、レーンのいずれかに載置されて、Y方向Y1側へと搬送される。なお、この搬送は、作業者による手作業で実現されてもよいし、ロボット21A、21B以外のロボットや駆動機構で実現されてもよい。なお、レール511は、Y1側が下方になるように傾斜が付けられてもよい。この場合、トレイ60は、重力の作用により、Y方向Y1側へと移動できる。トレイ60は、調理システム200を構成する要素である。
【0029】
例えば、第1セクション51のレーンの最もY方向Y1側に、“てぼ(ザル)”を保持するトレイ60が位置すると、調理準備開始状態となる。
【0030】
図4は、レール511の支持台512を示す斜視図である。支持台512は、レール511を取り外し可能に支持できる。これにより、レール511のメンテナンスが容易となる。
【0031】
図2に示すように、第2セクション52は、サブセクション521と、サブセクション522とを有する。サブセクション521には、蕎麦を茹でるための工程が割り当てられる。サブセクション522は、トレイ60を一時的に載置するための置台として機能する。なお、サブセクション522の構成は任意であるが、例えば、第1セクション51に配置されるレール511またはこれに類似した構造物を配置し、トレイ60を載置するための第1セクション51と同様のレーンを構成してもよい。
【0032】
図5は、第3セクション53の設備を示す斜視図である。
図5では、第3セクション53は、サブセクション531、532を有する。サブセクション531、532に割り当てられる作業は任意であるが、例えば水切り作業や、ぬめりを取る作業である。サブセクション521において茹でられた蕎麦を、サブセクション531、サブセクション532の順で、後処理することができる。例えば、サブセクション531において、蕎麦のぬめりを取る作業を中心に行い、さらに、サブセクション532において水で蕎麦をしめる(冷却する)作業を行うことができる。この場合、サブセクション532における水の温度を極力低下させることが要求される一方、サブセクション531における水の温度は極端に低くなくてもよい。このため、低温の冷水をサブセクション532のみに供給してもよい。この場合、サブセクション531における水位を、サブセクション532における水位よりも低く設定し、サブセクション532の水位を超えてサブセクション532から溢れた水が、自然にサブセクション531に供給されるようにしてもよい。これにより、サブセクション532に供給された冷水を、サブセクション531においても有効に利用できる。また、サブセクション531に対して、直接、水を供給する必要がなくなる。
【0033】
本実施例では、
図2に示すように、第3セクション53に、ロボット21Aが配置される。すなわち、第3セクション53を構成する設備の壁体W(
図5参照)にロボット21Aの基端21aが取り付けられる。
【0034】
図6は、調理場150を示す上面図である。
図6に示すように、本実施例では、第4セクション54にロボット21Bが配置される。すなわち、第4セクション54を構成する設備の壁体W1(
図6参照)にロボット21Bの基端21aが取り付けられる。これにより、ロボット21Bによる後述の動作を容易に実行することが可能となる。なお、ロボット21Bを第2セクション52など、他の場所に配置してもよい。
【0035】
上記のように、第2セクション52には、蕎麦を茹でる作業が割り当てられ、サブセクション521には、湯をためるシンクが形成される。
【0036】
図2に示す第4セクション54は、蕎麦を入れる容器90(ばんじゅう)を載置する置台として機能する。容器90は、調理システム200を構成する要素である。
【0037】
図7は、ロボット21Aおよびロボット21Bの本体を示す斜視図である。なお、
図7では、ロボット21Aおよびロボット21Bは、ロボット用ハンド40などが取り付けられていない状態で示される(
図2も同様)。
【0038】
ロボット21A、21Bは、複数の回転関節を有する多関節ロボットであり、基端21aが壁体Wに取り付けられる。なお、ロボット21A、21Bとして、回転関節だけでなく直動関節を有するロボットを用いることもできる。ロボット21A、21Bには、各関節を駆動するためのアクチュエータ(不図示)が関節ごとに設けられ、これらのアクチュエータが処理装置11に接続されて制御される。本実施例では、ロボット21Aの先端21bには、ロボット用ハンド40が取り付けられる。また、ロボット21Bの先端21bには、ロボット用ハンド30が取り付けられる。ロボット用ハンド40およびロボット用ハンド30は、調理システム200を構成する要素である。
【0039】
本実施例ではロボット21A、21Bは、多関節ロボットであり、壁体W、W1側に退避させることができるので、例えば、サブセクション531、532の上方の作業スペースを効果的に確保できる。この場合、例えば
図2に示す領域付近に立ちながら作業者が作業することも可能となり、ロボット21A、21Bの非稼働時にも設備を有効に利用できる。
【0040】
図8は、ロボット用ハンド40のハンド本体部42を示す斜視図である。
図9は、上面420を構成する部材を取り外した状態のハンド本体部42を示す斜視図である。
図10は、ハンド本体部42とトレイ60との係合状態を示す斜視図である。
図11は、トレイ60の単品状態を示す斜視図、
図11Aは、トレイ60に“てぼ(ザル)”が挿入された状態を示す斜視図である。
図8には、互いに直交する2つの方向としてX方向とY方向とが、ハンド本体部42の上面420を基準として定義されている。また、
図10、
図11および
図11Aには、Z方向が定義されている。Z方向は、トレイ60のトレイ部61における支持面に垂直な方向であり、以下では、Z方向Z1側を、「上側」とし、Z方向Z2側を、「下側」として、上下方向に関連する用語(例えば上面や、下面等)を用いる場合がある。
【0041】
ロボット用ハンド40は、トレイ60をピックアップし、所定位置(第1セクション51、サブセクション522等)に載置するのが好適な形状に形成される。ロボット用ハンド40は、トレイ60に係合するハンド本体部42を有する。
【0042】
ハンド本体部42は、係合する際にトレイ60の一対の被支持部62の下面と面接触する上面420を有する。
図8では、上面420は、ロボット21Aの先端21bに取り付けられる取付面400Aを有するプレート部材400により支持される。上面420は、トレイ60の重力を受け持つ。すなわち、ハンド本体部42は、トレイ60の被支持部62をすくい上げる態様でピックアップする。これにより、ハンド本体部42を介してトレイ60を持ち上げている最中に、電源の異常等により、係合強化手段56が機能しなくなった場合でも、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合を維持できる(すなわちトレイ60の落下を防止できる)。
【0043】
ハンド本体部42には、ピン421が設けられる。ピン421は、例えば上面420から上側に突出する態様で設けられる。ピン421の数は任意であるが、
図8では、2つであり、一対の被支持部62のそれぞれに対応して設けられる。ピン421は、トレイ60における対応する孔621に挿入されることで、ハンド本体部42がトレイ60に係合する際の位置決め機能を果たす。なお、変形例では、トレイ60側にピン(例えば下向きのピン)が形成され、ハンド本体部42側に対応する孔が形成されてもよい。
【0044】
ピン421は、任意の断面形状であってもよいが、好ましくは、断面が円形であり、先端が細くなるテーパ状の形態である。これにより、係合直前にトレイ60とハンド本体部42との間に僅かなズレがある場合でも、当該ズレを矯正しつつ互いの係合状態を実現できる。
【0045】
ハンド本体部42には、係合強化手段56(
図8には概略的に図示)が設けられる。係合強化手段56は、好ましくは、Y方向でピン721の間に設けられる。なお、上面420には、係合強化手段56用の穴561が形成されてよい。これにより、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合度合いを効果的に高めることができる。係合強化手段56の数は任意であるが、
図8では、2つであり、一対の被支持部62のそれぞれに対応して設けられる。本実施例では、係合強化手段56は、電磁石であり、被支持部62は、磁性体により形成される。これにより、電磁石がオン状態となると、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合度合いが高くなる。これにより、外乱等により大きな振動等が生じた場合でも、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合を維持できる可能性を高めることができる。
【0046】
ハンド本体部42には、信号発生部41(
図9には概略的に図示)が設けられる。信号発生部41は、上面420におけるトレイ60の被支持部62の下面と面接触する領域内に設けられる。なお、上面420には、信号発生部41用の穴(不図示)が形成されてよい。信号発生部41は、ハンド本体部42に対する被支持部62の近接状態を検出する。本実施例では、信号発生部41は、ハンド本体部42の上面420とトレイ60の被支持部62の下面との間のZ方向の距離が閾値以下となった場合に、近接状態を表す所定信号を発生する。信号発生部41は、例えば近接センサであってよい。なお、センサは、被支持部62に対応して対で設けられてもよいし、一方の被支持部62にのみ対応して設けられてもよい。
【0047】
なお、ハンド本体部42は、
図9に示すように、好ましくは、上面420よりも下方に搭載スペース450を有する。なお、
図9では、上面420を形成する部材を取り外した状態で、ロボット用ハンド40が示される。搭載スペース450内には、ピン421の下部や、係合強化手段56、信号発生部41、配線等が配置されてよい。
【0048】
本実施例では、ハンド本体部42にトレイ60が係合された状態が第1係合状態(
図10参照)である。このとき、係合強化手段56は機能していないか、あるいは微弱である。なお、「微弱」とは、係合強化手段56が電磁石の場合、第2係合状態を実現するときの通電電流(又は磁力)を100とした場合、100よりも有意に小さいことを意味し、例えば50以下であり、好ましくは、10以下である。そして、係合強化手段56が機能すると、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合度合いが高くなる第2係合状態が実現されてもよい。第1係合状態から第2係合状態への遷移(切り替え)は、処理装置11により実現される。具体的には、上述したように、信号発生部41が例えば近接センサである場合、近接センサは、トレイ60の、ハンド本体部42に対する第1係合状態が検出された場合に、所定信号を発生する。処理装置11は、この所定信号の発生をトリガとして、第1係合状態から第2係合状態への遷移(切り替え)を実現する。なお、信号発生部41は、好ましくは、ピン421を介して位置決めされていない係合状態では、所定信号を発生しないように構成される。すなわち、信号発生部41は、好ましくは、ピン421を介して位置決めされた係合状態を検出した場合のみ、所定信号を発生する。
【0049】
なお、第1係合状態と第2係合状態は、ロボット用ハンド40とトレイ60との位置関係は、同じであり、ともに
図10に示す状態である。
【0050】
なお、第1係合状態から第2係合状態への遷移(切り替え)は、ハンド本体部42の上面420にトレイ60の重力が作用している状態で実現されてもよい。なお、この場合、信号発生部41は、かかる重力の作用状態を検出するセンサ等であってもよい。
【0051】
図11に示すように、トレイ60は、トレイ部61と、一対の被支持部62と、トレイ部61と被支持部62とを接続する脚部63とを含む。
【0052】
トレイ部61は、調理器具としての“てぼ(ザル)”が挿入される貫通孔610を有する。貫通孔610の個数は任意であるが、
図11では、3つ設けられる。貫通孔610に挿入される“てぼ(ザル)”は、貫通孔610まわりの縁部により支持される。
図11Aにおいて、貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”のざる65の部分を示している。実際には、3つの貫通孔610のそれぞれに対して、“てぼ(ザル)”を挿入することができる。
【0053】
被支持部62は、上述したように、ハンド本体部42に係合される部分である。被支持部62は、ハンド本体部42の上面420に面接触する下面を形成する。被支持部62は、ハンド本体部42のピン421が挿入(嵌入)される孔621を有する。
【0054】
脚部63は、被支持部62をトレイ部61よりも上方に位置するように支持する。脚部63は、被支持部62に対応して対で設けられ、それぞれの上端部が、対応する被支持部62の縁部に接続される。また、脚部63は、下端部がトレイ部61の上面に固定される。このような脚部63を設けることで、被支持部62の下方に、ハンド本体部42の上面420を形成する部分が位置できるように、被支持部62をトレイ部61に対して上方に支持できる。
【0055】
また、本実施例では、脚部63を、上方から視て、隣り合う貫通孔610の中間の位置に設けている。さらに、一対の被支持部62のそれぞれを一対の脚部63のそれぞれに対応させるとともに、上方から視たときの被支持部62の面積を抑制している。このため、貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”の上方をロボット21Bによる作業空間として広く確保することができ、“てぼ(ザル)”への蕎麦の投入が容易に行える。すなわち、脚部63および被支持部62が貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”の上方から回避した位置にあるため、蕎麦を投入する際の障害となることがなく、貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に蕎麦を投入することができる。例えば、3つ並んだ貫通孔610のうち、中央に位置する貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に対しても、一対の被支持部62および一対の脚部63の間から、容易に蕎麦を投入することができる。
【0056】
図12は、ロボット用ハンド30を示す斜視図である。
【0057】
ロボット用ハンド30は、茹でる前の蕎麦を把持するとともに、把持された蕎麦を所定の位置で解放するのに適した形態に構成される。
【0058】
図12に示すように、ロボット用ハンド30は、ロボット21Bの先端21bに固定される固定部31と、固定部31に対して矢印35の方向に、それぞれスライド可能に取り付けられる可動部32および可動部33と、を備える。可動部32には可動部材としての4本の爪32a~32dが、可動部33には可動部材としての4本の爪33a~33dが、それぞれ設けられている。可動部32および可動部33は、処理装置11の制御に従い、同時に、矢印35に沿った方向であって、互いに反対方向に移動する。ロボット用ハンド30は、可動部32および可動部33の間の距離が最短になる閉状態と、当該距離が最長になる開状態との間で、繰り返し状態を切り替えることが可能とされている。爪32a~32dおよび爪33a~33dは、それぞれ、
図12に示すA方向(矢印35と直交する方向)に沿って配列されている。
【0059】
爪32a~32dは、それぞれ、直線状に延びる基部321(
図12では、爪32aのみに表示)と、基部321から折り曲げて形成された先端部322(
図12では、爪32aのみに表示)とを有する。同様に、爪33a~33dは、それぞれ、直線状に延びる基部331(
図12では、爪33aのみに表示)と、基部331から折り曲げて形成された先端部332(
図12では、爪33aのみに表示)とを有する。
図12の例では、基部321および基部331は、互いに平行に延びている。
【0060】
爪32aと爪33a、爪32bと爪33b、爪32cと爪33c、および、爪32dと爪33dは、それぞれ対をなしており、対をなす爪の先端部322と先端部332が互いに爪の先に向かって接近する方向に延びている。
【0061】
ロボット用ハンド30が閉状態にあるとき、爪32a~32dの先端が、それぞれ爪33a~33dの先端に接近し、茹でる前の蕎麦を、爪32a~32dと爪33a~33dの間に挟み込むようにして保持可能とされる。このとき、対を成す爪の先端部332と先端部322が互いに接近する方向に延びているので、基部321および基部331が蕎麦を挟み込むように蕎麦の両側の側部を覆うと同時に、先端部322と先端部332が蕎麦を下方から支持する。このため、蕎麦が落下することを効果的に防止できる。なお、ロボット用ハンド30が閉状態にあるとき、対をなす爪の先端部322と先端部332が互いに接触してもよく、あるいは、わずかの間隔をあけて互いに離れていてもよい。先端部322と先端部332の位置関係は、把持する対象物の特性に応じて、適宜、設定することができる。
【0062】
ロボット用ハンド30が閉状態から開状態に遷移すると、爪32a~32dと爪33a~33dの間に挟み込まれて保持されていた蕎麦が、先端部322と先端部332の間を滑り落ちるように自重により落下することで、ロボット用ハンド30からリリースされる。
【0063】
図12に示すように、爪を対で設ける場合には、爪の総数は偶数(
図12では、8つ)となる。またこのとき、爪によって掴まれた蕎麦の落下を防止する観点から、爪の対の数を2以上とすることが望ましい。すなわち、爪の数を4つ以上とすることが望ましい。
爪32a~32dと爪33a~33dは、容器本体91の深さ以上の長さを有することが望ましい。これにより、ロボット用ハンド30が容器90と干渉せずに、容器90に入れられた蕎麦を容器本体91の底まで差し込んだ爪32a~32dおよび爪33a~33dにより把持することができる。このため、確実に一纏めの蕎麦を掴み取ることが可能となる。また、爪32a~32dと爪33a~33dにある程度の長さを与えることにより、貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に蕎麦を投入する際に、爪32a~32dおよび爪33a~33dを“てぼ(ザル)”に深く差し込むことができるので、“てぼ(ザル)”の底に蕎麦を安定して投入することができる。しかし、爪32a~32dおよび爪33a~33dに、“てぼ(ザル)”の深さに相当するまでの長さは不要である。
【0064】
爪(可動部材)の形状や大きさは任意であるが、先端部322および先端部332のように、先端がテーパー状に尖った形状が望ましい。しかし、一方で、蕎麦に損傷を与えにくいように、爪(可動部材)は丸みを帯びた形状、例えば、円柱形状や円錐形状を用いた形状に形成されることが望ましい。
【0065】
また、可動部材として、柔軟性のある素材を使用してもよい。この場合には、比較的高い圧力で蕎麦を把持しても、蕎麦に損傷を与えにくく、蕎麦が滑り落ちにくいという利点がある。
【0066】
可動部材として、櫛状の部材を用いてもよい。櫛状の部材を横から、あるいは斜め方向から蕎麦に差し込むようにして、蕎麦をすくい取ることができる。
【0067】
図13は、蕎麦を入れる容器90を示す斜視図、
図14は、仕切り92を示す斜視図である。
【0068】
容器90は、有底形状の容器本体91と、容器本体91の内部を区画する仕切り92とからなる。容器本体91の矩形状の内部は、立壁92Aおよび立壁92Bなどの複数の立壁を有する仕切り92によってマトリクス状に区画されている。例えば、
図14における領域95は、仕切り92によって区画された領域の一つを示している。仕切り92によって区画された領域ごとに、一纏りの蕎麦が入れられる。
【0069】
なお、仕切りの形状は任意であり、例えば、複数のサイズの領域が形成されるように、仕切りの間隔に変化を与えてもよい。これにより異なる蕎麦の分量、例えば、大盛り、少量盛りなどにも対応することが可能となる。
【0070】
仕切り92によって区画された領域のそれぞれには、茹でる前の蕎麦が既定量、例えば、一人分の量が入れられる。仕切り92によって区画された領域に、茹でる前の蕎麦をあらかじめセットしておくことにより、ロボット用ハンド30によって、当該領域に入れられている蕎麦の全量を確実に掴むことが可能となる。すなわち、開状態にあるロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dを当該領域内に差し込み、ロボット用ハンド30を閉状態に遷移させると、当該領域に入れられている蕎麦が爪32a~32dと爪33a~33dの間に挟み込まれて、当該領域に入れられていた蕎麦の全量が保持される。ロボット用ハンド30によって、ばらける可能性のある蕎麦などの調理対象を一纏めごとに掴むことができる。当該領域のすべて、あるいはあらかじめ定められた領域のすべてに一纏めごとの蕎麦を入れておけば、処理装置11は、画像処理等により各領域ごとの蕎麦の有無、および蕎麦の位置を把握しなくても、ロボット用ハンド30の動作履歴に基づいて、各領域ごとの蕎麦の有無を認識できる。ロボット用ハンド30により掴む蕎麦の領域の順序を、あらかじめ定めておけば、その順序に従って、蕎麦を順番に掴むことができる。また、処理装置11は、すべての蕎麦が搬出されて容器90に蕎麦がない状態であることも認識でき、この場合、空になった容器90を搬送する動作などに移行することができる。なお、かかる動作を実行するための条件として、容器90が載置される位置があらかじめ定められ、その位置に正しく容器90が載置される必要がある。これにより、処理装置11では、仕切り92により区画された蕎麦の位置を、あらかじめ設定された座標として把握できる。
【0071】
蕎麦を保持した状態でロボット用ハンド30を所定の位置に移動させ、ロボット用ハンド30を開状態に遷移させると、その位置において蕎麦がリリースされる。
【0072】
図14に示すように、仕切り92を構成する一対の立壁92Cには、ロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合可能な係合部としての係合孔93が形成されている。
図14に示すA方向における係合孔93のピッチは、
図12に示すA方向の爪32a~32dおよび爪33a~33dのピッチに一致している。係合孔93は、ロボット用ハンド30の爪の対に対応する対を構成している。また、立壁92Cには、容器本体91に対して、仕切り92を係合させるための係合爪94が5つずつ形成されている。
【0073】
図12および
図14におけるA方向を合致させた状態において、開状態にあるロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dを容器本体91内の所定位置に下向きに差し込み、ロボット用ハンド30を閉状態に遷移させると、係合孔93に爪32a~32dおよび爪33a~33dが挿入される。このとき、爪の対のそれぞれは、係合孔93の対のそれぞれに係合する。その状態からロボット用ハンド30を上昇させると、爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合孔93に係合した状態で、仕切り92とともに、係合爪94を介して仕切り92に係合した容器本体91が、すなわち容器90の全体が持ち上がる。その後、ロボット用ハンド30を移動させて、容器90を所定位置に載置し、ロボット用ハンド30を開状態に遷移させると、爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合孔93から外れる。このようにして、容器90を所定位置に移動することができる。
【0074】
図14に示すように、一対の立壁92C間の間隔は、ロボット用ハンド30の一対の爪の間隔に合わせて、他の立壁間の間隔よりも小さくされ、開状態におけるロボット用ハンド30の一対の爪の先端間の間隔よりも小さい。このため、容器90を容器本体91の外側から掴む必要がなくなり、ロボット用ハンド30によって、容器90を持ち上げることが可能となる。
【0075】
また、係合孔93は容器90の中央部に形成され、爪32a~32dおよび爪33a~33dによって容器90の重心付近が支持される。このため、容器90を安定して搬送することができる。なお、
図14の例では、一対の立壁92Cの間の空間は、蕎麦を入れるための領域としては使用されない。
【0076】
このように、仕切り92に、ロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合可能な係合孔93が形成されているので、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30を介して、茹でる前の蕎麦を掴んで搬送するだけでなく、容器90を掴んで搬送する機能を発揮する。このため、容器90を移動するためにロボットの台数を増やし、あるいはロボット用ハンドを複数種類、用意し、ハンドを付け替える必要がない。例えば、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30を介して、空になった容器90を第4セクション54から、第5セクション55(
図2)に移動することができる。第4セクション54に、あらかじめ、蕎麦の入った容器90を積み上げるようにしておけば、空になった容器90を上から順に、ロボット21Bによって、適時、例えば、第5セクション55の床に置かれたテーブルや台車などの上に移動することが可能となる。容器90を第5セクション55に対してリリースする際に、ロボット用ハンド30に印加される容器90の重量をセンサにより計測し、当該重量が所定値よりも小さくなったタイミングで容器90をリリースしてもよい。これにより、容器90が実質的に第5セクション55に載置された状態で、容器90をリリースすることが可能となり、容器90の落下を防止できる。
【0077】
また、容器90に、センサ74bに含まれる重量センサを設け、重量センサにより容器90に蕎麦が入っているか否かを検出してもよい。容器90内の蕎麦がすべて搬送され、容器90が空になった場合に、この重量センサからの検出情報に基づいて、処理装置11がロボット21Bに対して、容器90を第5セクション55に移動する指令を送出することができる。容器90が空になったことをカメラ74a(画像センサ)による画像に基づいて、画像処理装置12における処理により検出してもよい。また、他のセンサ74b、例えば、第4セクション54に設けられた重量センサにより、これを検出してもよい。容器90に蕎麦が残っていることが検出される間は、蕎麦を搬送する作業が実行される。
【0078】
図14では、係合孔93が全部で10個設けられているが、個数は任意である。爪32a~32dおよび爪33a~33dの数に合わせて8個としてもよい。また、係合孔93として例示した係合部の形状も限定されない。係合部は孔でなくてもよく、爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合可能とされていればよい。
【0079】
なお、蕎麦を掴む場合と、容器90を持ち上げる場合において、ロボット用ハンド30の開状態または閉状態における先端部322と先端部332の間の距離を、それぞれの場合に最適化させ、互いに異なるものとしてもよい。
【0080】
また、ロボット用ハンド30の閉状態において、爪32a~32dおよび爪33a~33dを駆動するモータのトルクをそれぞれの場合に適合させ、互いに異なるものとしてもよい。これにより、蕎麦を掴む場合の力および容器90を掴む場合の力を最適化できる。
上記実施例では、容器90を仕切り92により区画する例を示したが、仕切り92を使用せず、容器本体91に一纏めごとの蕎麦を配列してもよい。この場合、係合孔93に対応する係合部を、容器本体91に形成すればよく、より好ましくは容器本体91の中央部にロボット用ハンド31のサイズに対応した係合穴等の係合部を形成することで、蕎麦と容器本体91を同一のハンドで掴むことを実現できる。また、一纏めごとの蕎麦をあらかじめ定められた正しい位置に配置することができれば、仕切り92を用いる場合と同様、処理装置11は、画像処理等により各領域ごとの蕎麦の有無、および蕎麦の位置を把握しなくても、ロボット用ハンド30の動作履歴に基づいて、各領域ごとの蕎麦の有無を認識できる。また、処理装置11は、蕎麦の位置を座標として把握できる。この場合も、容器90が載置される位置があらかじめ定められ、その位置に正しく容器90が載置される必要がある。
【0081】
次に、本実施例における動作について説明する。
本実施例では、第1セクション51で準備されたトレイ60は、空の “てぼ(ザル)”を保持する(
図11A)。ロボット21Aは、ロボット用ハンド40を介して第1セクション51上のトレイ60をピックアップして、第2セクション52まで搬送し(空中を移動させ)、第2セクション52内のサブセクション522にトレイ60を載置する。
【0082】
一方、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30によって第4セクション54上の容器90に入れられている茹でる前の蕎麦を掴む。上記のように、ここでは、ロボット用ハンド30を開状態から閉状態に遷移させることにより、仕切り92により区画された領域の1つから、茹でる前の蕎麦を、爪32a~32dおよび爪33a~33dによって掴むことができる。
【0083】
次に、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30によって、茹でる前の蕎麦を第2セクション52まで搬送し(空中を移動させ)、第2セクション52内のサブセクション522まで移動し、トレイ60に挿入された、対応する“てぼ(ザル)”に茹でる前の蕎麦を投入する。上記のように、蕎麦の投入時には、対応する“てぼ(ザル)”の内部または上方まで蕎麦を移動させる。次に、ロボット用ハンド30を閉状態から開状態に遷移させることにより、掴んでいた蕎麦を落下させ、対応する“てぼ(ザル)”に蕎麦を投入することができる。
【0084】
このとき、上記のように、トレイ60の脚部63を、上方から視て、隣り合う貫通孔610の中間の位置に設け、さらに、一対の被支持部62のそれぞれを一対の脚部63のそれぞれに対応して設けている(
図11)。このため、3つの貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”のそれぞれの上方にロボット21Bの作業空間が確保され、脚部63や被支持部62がロボット用ハンド30や、搬送される蕎麦と干渉しない。このため、容易に貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に蕎麦を投入することができる。3つ並んだ貫通孔610のうち、中央に位置する貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に対しては、一対の脚部63の間から蕎麦を投入することができる。
【0085】
このような、ロボット用ハンド30によって第4セクション54上の容器90に入れられている蕎麦を搬送し、対応する“てぼ(ザル)”に投入するという一連の動作を3回繰り返すことにより、トレイ60に挿入されている3つの“てぼ(ザル)”のすべてに蕎麦を投入することができる。なお、蕎麦を投入するまでの一連の動作は、カメラ74aの撮影画像などに基づいて適切に変更され得る。例えば、トレイ60に1つまたは2つの“てぼ(ザル)”が挿入されている場合には、“てぼ(ザル)”の個数に応じた回数だけ、一連の動作を繰り返すことができる。また、容器90に入れられている蕎麦の状況、例えば、蕎麦が入っている領域の個数に応じて、動作が変更され得る。
次に、蕎麦を容器90からてぼに投入する動作を繰り返す過程で、容器90内の蕎麦がなくなった際の処理の一例について、さらに説明する。ロボット21Aは、容器90に予め設けられた重量センサなどの各種センサ74bやカメラ74aの画像から容器90内の蕎麦がなくなったことを検知する。重量センサを用いる場合は容器90と仕切り92を合算した重量以上の重さを検知しなくなれば蕎麦がなくなったことを検知でき、カメラ74aを用いる場合には仕切り内のすべての区画に蕎麦があるかないかを判定することで検知できる。そして、蕎麦がなくなったことを検知した場合には、ロボット用ハンド30によって容器90を把持・搬送する。新たな蕎麦が入った容器90については予め容器90を複数重ねておき、空の容器90を搬送すれば自動的に新たな蕎麦を把持できる状態になるようにしてもよいし、他のセクション(不図示)から新たな蕎麦が入った容器90を搬送することなどとしてもよい。
【0086】
ロボット用ハンド30による容器90の搬送にあたっては、ロボット21Aが容器90の上方までロボット用ハンド30を移動させ、ロボット用ハンド30によって容器90の仕切り92を把持し、搬送させる。また、より詳細には、仕切り92を把持する際に、仕切り92に設けられた係合孔93にロボット用ハンド30の先端部332を挿入し、係合孔93を介して爪331と仕切り92を係合させ容器90を掴む。上記のように、ロボット用ハンド30によって蕎麦だけでなく容器90も搬送することで容器90の入れ替え作業についても追加のシステムを導入することなくロボットによる自動化を実現できる。また、容器90の把持・搬送に際しては、容器90の外側を把持しようとすると蕎麦を把持する場合と比較してより大きな開動作が必要となり共通のロボット用ハンドを利用することが困難になったり、ロボット用ハンド30が大型化してしったりするという懸念があった。そのため、上述のように容器90の内部に設けられた仕切りを把持することで、蕎麦の把持と共通のロボット用ハンド30で容器90を把持することが可能となる。また、仕切り92を把持する際に係合部を介して掴むことで、より安定して容器90を掴むことが可能となる。
【0087】
ロボット21Bがロボット用ハンド30を第2セクション52から退去させた後、ロボット21Aは、ロボット用ハンド40を介してサブセクション522上のトレイ60をピックアップして、第2セクション52のサブセクション521に用意された湯内に、トレイ60ごと漬ける。これにより、茹で作業を実行できる。茹で作業が開始されると、ロボット21Aは、一旦、トレイ60との係合を解消してもよい。この場合、茹で作業が終了するまで、他の作業を実行することも可能である。
【0088】
ついで、茹で作業が開始されてから所定時間が経過すると、ロボット21Aは、第2セクション52内のトレイ60をピックアップして、第3セクション53にて後処理を行う。すなわち、ロボット21Aは、まず、サブセクション531内に溜まった冷水に、トレイ60を浸して蕎麦のぬめりを除去する。なお、この際、ロボット21Aは、トレイ60を動かす等して作業効率を高めてもよい。また、調理場150は、サブセクション531内のトレイ60を検出すると、冷水が注入されるように構成されてもよい。
【0089】
ついで、ロボット21Aは、サブセクション532上にトレイ60を運び、水切り作業を行う。この際、トレイ60を傾斜させて上下に振動させることで、水切りが効果的に実現されるようにしてもよい。ロボット21Aは、水切り作業を終了すると、第1セクション51にトレイ60を搬送し、第1セクション51上のレール511上にトレイ60を載置する。なお、この際、載置するレーンは、規定されてもよい。このようにして、一連の調理作業が実現される。
【0090】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
11 処理装置
21A ロボット(第1ロボット)
21B ロボット(第2ロボット)
30 ロボット用ハンド
32a~32d 爪
33a~33d 爪
40 ロボット用ハンド
41 信号発生部
42 ハンド本体部
60 トレイ
61 トレイ部
62 脚部
74a カメラ
74b センサ
90 容器
91 容器本体
92 仕切り
92A 立壁
92B 立壁
92C 立壁
93 係合孔