(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124413
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】制御装置、制御プログラムおよび調理システム
(51)【国際特許分類】
F24C 1/00 20060101AFI20220818BHJP
F24C 13/00 20060101ALI20220818BHJP
F24C 7/04 20210101ALI20220818BHJP
F24C 7/00 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
F24C1/00 A
F24C13/00 B
F24C7/04 301Z
F24C7/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022161
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】518106124
【氏名又は名称】コネクテッドロボティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】沢登 哲也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 成光
【テーマコード(参考)】
3L087
【Fターム(参考)】
3L087AA08
3L087AB20
3L087BB05
3L087BB20
3L087BC13
3L087DA05
(57)【要約】
【課題】エネルギ消費を抑制しつつ、調理対象を効率的に調理する。
【解決手段】容器部内の媒体により調理可能な調理対象に係る注文の発生に関連する所定イベントを検出する所定イベント検出部と、熱エネルギ供給部及び媒体供給部を制御することで容器部内の媒体の状態を制御する媒体状態制御部であって、容器部内の媒体の状態を、容器部内に投入された調理対象を媒体により調理可能な第1状態と、第1状態よりも単位時間あたりの容器部内の媒体への熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量が小さい第2状態との間で切り替える媒体状態制御部と、を備え、媒体状態制御部は、容器部内の媒体の状態が第2状態である状況下で所定イベント検出部により所定イベントが検出された場合に、容器部内の媒体の状態を第2状態から第1状態に切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器部内の媒体に熱エネルギを供給する熱エネルギ供給部と、前記容器部内に新鮮な前記媒体を供給する媒体供給部とを制御する制御装置であって、
前記熱エネルギ供給部及び前記媒体供給部を制御することで前記容器部内の前記媒体の状態を制御する媒体状態制御部であって、前記容器部内の前記媒体の状態を、前記容器部内に投入された前記調理対象を前記媒体により調理可能な第1状態と、前記第1状態よりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量と前記媒体供給部が供給する媒体の供給量とがともに小さい第2状態との間で切り替える媒体状態制御部を備える、制御装置。
【請求項2】
前記容器部内の前記媒体により調理可能な調理対象に係る注文の発生に関連する所定イベントを検出する所定イベント検出部を備え、
前記媒体状態制御部は、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第2状態である状況下で前記所定イベント検出部により前記所定イベントが検出された場合に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替える、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記所定イベントは、来客を検出するイベント、店舗のドアの開閉イベント、食券機で注文を受け付けるイベント、及び、店舗スタッフからの所定入力を受けるイベントのうちの、少なくともいずれか1つを含む、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
ロボットを制御するロボット制御部を更に備え、
前記ロボット制御部は、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第1状態である状況下で前記容器部内に前記ロボットに前記調理対象を投入させ
前記所定イベントは、前記ロボット制御部による、蕎麦を茹でる前に実行される前記ロボットの動作または当該動作の指令の発出であり、
前記媒体状態制御部は、前記所定イベントが検出されてから、前記ロボットに前記調理対象を投入させるまでの間に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替える請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記媒体状態制御部は、前記ロボット制御部による、前記ロボットの所定の動作または当該動作の指令の発出をトリガとして、または、当該動作または当該指令から所定時間が経過したことをトリガとして、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第1状態から前記第2状態に切り替える、請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
前記媒体状態制御部は、
前記第1状態における前記熱エネルギの供給量、および、前記媒体の供給量が、前記容器部内へ同時に調理可能な最大数の前記調理対象が投入されたときに、前記媒体の温度低下が発生せず、かつ、前記媒体の量が低下しない前記熱エネルギの供給量、および、前記媒体の供給量となるように制御し、
前記第2状態における前記熱エネルギの供給量、および、前記媒体の供給量が、前記容器部内へ前記調理対象が投入されていないときに、前記媒体の温度低下が発生せず、かつ、前記媒体の量が低下しない前記熱エネルギの供給量、および、前記媒体の供給量であって、前記第1状態の前記エネルギの供給量、および、前記媒体の前記容器部内への供給量よりも小さい前記エネルギの供給量、および、前記媒体の供給量となるように制御する、請求項1~5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記媒体は、水であり、
前記媒体状態制御部は、前記容器部内への水の流入量と前記熱エネルギ供給部の消費電力との関係を第1関係とすることで、前記第1状態を形成し、前記関係を第2関係とすることで、前記第2状態を形成する、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
前記第1状態では、前記容器部内に投入された前記調理対象を調理しているときに前記媒体が沸騰した状態にあり、
前記第2状態では、前記調理対象を調理していないときに前記媒体が沸騰した状態にある、請求項1~7のうちのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記調理対象は、麺類であり、
前記熱エネルギ供給部は、前記媒体を所定温度で保温する保温モードを有するゆで麺機に内蔵され、
前記媒体状態制御部は、前記ゆで麺機が前記保温モードのときよりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量が大きくなる態様で、前記第2状態を形成する、請求項1~6のうちのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項10】
前記熱エネルギ供給部は、前記媒体に熱エネルギを最大限に供給するオン状態と、前記媒体に熱エネルギを供給しないオフ状態とを切替可能であり、
前記媒体状態制御部は、前記オン状態と前記オフ状態とを切り替えることで、単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量を制御する、請求項1~9のうちのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項11】
前記媒体状態制御部は、温度センサによる前記媒体の温度の計測結果を利用することなく、前記第1状態と前記第2状態とを切り替える、請求項1~10のうちのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項12】
容器部内の媒体に熱エネルギを供給する熱エネルギ供給部と、前記容器部内に新鮮な前記媒体を供給する媒体供給部とを制御する制御プログラムであって、
前記熱エネルギ供給部及び前記媒体供給部を制御することで前記容器部内の前記媒体の状態を制御する媒体状態制御処理であって、前記容器部内の前記媒体の状態を、前記容器部内に投入された前記調理対象を前記媒体により調理可能な第1状態と、前記第1状態よりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量と前記媒体供給部が供給する媒体の供給量とがともに小さい第2状態との間で切り替える媒体状態制御処理をコンピュータに実行させる、制御プログラム。
【請求項13】
容器部内の媒体に熱エネルギを供給する熱エネルギ供給部と、前記容器部内に新鮮な前記媒体を供給する媒体供給部とを有する調理場用の調理システムであって、
媒体状態制御プログラムと
ロボットと、
ロボット制御プログラムとを含み、
前記媒体状態制御プログラムは、
前記容器部内の前記媒体により調理可能な調理対象に係る注文の発生に関連する所定イベントを検出する所定イベント検出処理と、
前記熱エネルギ供給部及び前記媒体供給部を制御することで前記容器部内の前記媒体の状態を制御する媒体状態制御処理であって、前記容器部内の前記媒体の状態を、前記容器部内に投入された前記調理対象を前記媒体により調理可能な第1状態と、前記第1状態よりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量が小さい第2状態との間で切り替える媒体状態制御処理と、をコンピュータに実行させ、
前記媒体状態制御処理は、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第2状態である状況下で前記所定イベント検出処理により前記所定イベントが検出された場合に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替え、
前記ロボット制御プログラムは、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第2状態である状況下で前記所定イベント検出処理により前記所定イベントが検出された場合に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替える前記媒体状態制御処理が実行された後に、前記ロボットに前記容器部内へ前記調理対象を投入させる、調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御プログラムおよび調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、湯水を収容する調理容器を加熱する加熱部と、調理容器の温度を計測する温度センサとを備える加熱調理器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、エネルギ消費を抑制しつつ、調理対象を効率的に調理することが難しい。
【0005】
そこで、1つの側面では、本開示は、エネルギ消費を抑制しつつ、調理対象を効率的に調理することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、容器部内の媒体に熱エネルギを供給する熱エネルギ供給部と、前記容器部内に新鮮な前記媒体を供給する媒体供給部とを制御する制御装置であって、前記容器部内の前記媒体により調理可能な調理対象に係る注文の発生に関連する所定イベントを検出する所定イベント検出部と、前記熱エネルギ供給部及び前記媒体供給部を制御することで前記容器部内の前記媒体の状態を制御する媒体状態制御部であって、前記容器部内の前記媒体の状態を、前記容器部内に投入された前記調理対象を前記媒体により調理可能な第1状態と、前記第1状態よりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量が小さい第2状態との間で切り替える媒体状態制御部と、を備え、前記媒体状態制御部は、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第2状態である状況下で前記所定イベント検出部により前記所定イベントが検出された場合に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替える、制御装置を提供する。
【0007】
上記の態様において、前記所定イベントは、来客を検出するイベント、店舗のドアの開閉イベント、食券機で注文を受け付けるイベント、及び、店舗スタッフからの所定入力を受けるイベントのうちの、少なくともいずれか1つを含んでもよい。
【0008】
上記の態様において、前記媒体は、水であり、前記媒体状態制御部は、前記容器部内への水の流入量と前記熱エネルギ供給部の消費電力との関係を第1関係とすることで、前記第1状態を形成し、前記関係を第2関係とすることで、前記第2状態を形成してもよい。
【0009】
上記の態様において、前記第1状態では、前記容器部内に投入された前記調理対象を調理しているときに前記媒体は沸騰した状態にあり、前記第2状態では、前記調理対象を調理していないときに前記媒体は沸騰した状態にあってもよい。
【0010】
上記の態様において、前記調理対象は、麺類であり、前記熱エネルギ供給部は、前記媒体を所定温度で保温する保温モードを有するゆで麺機に内蔵され、前記媒体状態制御部は、前記ゆで麺機が前記保温モードのときよりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量が大きくなる態様で、前記第2状態を形成してもよい。
【0011】
上記の態様において、前記熱エネルギ供給部は、前記媒体に熱エネルギを最大限に供給するオン状態と、前記媒体に熱エネルギを供給しないオフ状態とを切替可能であり、前記媒体状態制御部は、前記オン状態と前記オフ状態とを切り替えることで、単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量を制御してもよい。
【0012】
上記の態様において、ロボットを制御するロボット制御部を更に備え、前記ロボット制御部は、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第1状態である状況下で前記容器部内に前記ロボットに前記調理対象を投入させてもよい。
【0013】
上記の態様において、前記所定イベントは、前記ロボット制御部による、蕎麦を茹でる前に実行される前記ロボットの動作または当該動作の指令の発出であってもよい。
【0014】
上記の態様において、媒体状態制御部は、前記ロボット制御部による、ロボットの所定の動作または当該動作の指令の発出をトリガとして、または、当該動作または当該指令から所定時間が経過したことをトリガとして、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第1状態から前記第2状態に切り替えてもよい。
【0015】
上記の態様において、前記媒体状態制御部は、温度センサによる前記媒体の温度の計測結果を利用することなく、前記第1状態と前記第2状態とを切り替えてもよい。
【0016】
本開示の一態様によれば、容器部内の媒体に熱エネルギを供給する熱エネルギ供給部と、前記容器部内に新鮮な前記媒体を供給する媒体供給部とを制御する制御プログラムであって、前記容器部内の前記媒体により調理可能な調理対象に係る注文の発生に関連する所定イベントを検出する所定イベント検出処理と、前記熱エネルギ供給部及び前記媒体供給部を制御することで前記容器部内の前記媒体の状態を制御する媒体状態制御処理であって、前記容器部内の前記媒体の状態を、前記容器部内に投入された前記調理対象を前記媒体により調理可能な第1状態と、前記第1状態よりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量が小さい第2状態との間で切り替える媒体状態制御処理と、をコンピュータに実行させ、前記媒体状態制御処理は、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第2状態である状況下で前記所定イベント検出処理により前記所定イベントが検出された場合に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替える、制御プログラムを提供する。
【0017】
本開示の一態様によれば、容器部内の媒体に熱エネルギを供給する熱エネルギ供給部と、前記容器部内に新鮮な前記媒体を供給する媒体供給部とを有する調理場用の調理システムであって、媒体状態制御プログラムとロボットと、ロボット制御プログラムとを含み、前記媒体状態制御プログラムは、前記容器部内の前記媒体により調理可能な調理対象に係る注文の発生に関連する所定イベントを検出する所定イベント検出処理と、前記熱エネルギ供給部及び前記媒体供給部を制御することで前記容器部内の前記媒体の状態を制御する媒体状態制御処理であって、前記容器部内の前記媒体の状態を、前記容器部内に投入された前記調理対象を前記媒体により調理可能な第1状態と、前記第1状態よりも単位時間あたりの前記容器部内の前記媒体への前記熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量が小さい第2状態との間で切り替える媒体状態制御処理と、をコンピュータに実行させ、前記媒体状態制御処理は、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第2状態である状況下で前記所定イベント検出処理により前記所定イベントが検出された場合に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替え、前記ロボット制御プログラムは、前記容器部内の前記媒体の状態が前記第2状態である状況下で前記所定イベント検出処理により前記所定イベントが検出された場合に、前記容器部内の前記媒体の状態を前記第2状態から前記第1状態に切り替える前記媒体状態制御処理が実行された後に、前記ロボットに前記容器部内へと前記調理対象を投入させる、調理システムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
1つの側面では、本開示によれば、エネルギ消費を抑制しつつ、調理対象を効率的に調理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】調理システム用制御装置の構成を示す図である。
【
図1A】熱エネルギ供給部および媒体供給部を介して、熱エネルギの供給量と水の供給量を制御する方法の一例を示す図である。
【
図2】複数のセクションを備える調理場を示す図である。
【
図3】第1セクションに配置されるレール511を示す斜視図である。
【
図9】プレート部材を取り外した状態のハンド本体部を示す斜視図である。
【
図10】ハンド本体部とトレイとの係合状態を示す斜視図である。
【
図11A】てぼ(ザル)を保持した状態のトレイを示す斜視図である。
【
図12】ロボット用ハンド30を示す斜視図である。
【
図15】第1の実施例における媒体状態制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図15A】熱エネルギ供給部による熱エネルギの供給量と、媒体供給部による水道水の供給量との関係を示す図である。
【
図16】媒体状態制御部による制御を、ロボットの動作と無関係に実行する場合の構成を示す図である。
【
図17】第2の実施例における媒体状態制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図18】熱エネルギ供給部が保温モードを有するゆで麺機に内蔵される構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら実施例について詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施例)
図1は、調理システム200の構成を示す図である。調理システム200は、制御装置1を含む。なお、制御装置1は、1つ以上のコンピュータにより実現されてもよい。この場合、1つ以上のコンピュータは、サーバコンピュータを含んでもよい。
【0022】
図1に示すように、本実施例の制御装置1は、作業装置としてのロボット21Aおよびロボット21Bの動作を制御する処理装置11と、調理場150を撮像するカメラ74aの画像を処理する画像処理装置12と、主制御部13と、処理装置11における処理を規定するプログラム及び処理装置11における制御に必要なデータを格納する記憶部14と、主制御部13における処理を規定するプログラム及び主制御部13における制御に必要なデータを格納する記憶部15と、を備える。以下で説明する制御装置1の機能は、記憶部14及び/又は記憶部15内に記憶される1つ以上のプログラムを処理装置11及び/又は主制御部13が実行することで実現できる。なお、記憶部14及び記憶部15は共通の記憶装置により実現されてもよい。また、画像処理装置12は、例えばGPU(Graphics Processing Unit)単体であるが、処理装置11とは別の処理装置(GPUを含む処理装置)により実現されてもよい。
【0023】
また、主制御部13には、制御装置1の動作状態等を表示する表示部16と、作業者等の操作を受け付ける操作受付部17と、警報出力部18とが接続されている。主制御部13は、表示部16や警報出力部18を介して、ユーザ(作業者)にアドバイスや警報を出力してよい。
【0024】
また、処理装置11は、係合強化手段56を制御する。係合強化手段56は、例えば電磁石であるが、吸引力(負圧)を発生させる負圧発生装置等であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
【0025】
また、処理装置11は、信号発生部41からの情報に基づいて、係合強化手段56を制御する。信号発生部41は、例えば近接センサであってよいし、感圧センサや画像センサ等であってもよい。
【0026】
また、処理装置11は、調理場150に配置される複数のセンサ74に接続される。複数のセンサ74は、カメラ74a(画像センサ)や、他の各種センサ74bを含み、調理場150の状態を検出する機能を有する。なお、カメラ74aは、2台以上設けられてもよい。
【0027】
本実施例では、処理装置11は、調理対象に係る注文の発生に関連する所定イベントを検出する所定イベント検出部として機能する。
【0028】
図1に示すように、処理装置11には、媒体状態制御部80が接続される。また、媒体状態制御部80には、熱エネルギ供給部81および媒体供給部82が接続される。媒体状態制御部80は、処理装置11からの指令に基づいて、熱エネルギ供給部81による熱エネルギの供給量と、媒体供給部82による媒体としての水(水道水)の供給量とを制御する。後述するように、媒体供給部82を介して水道水がサブセクション521のシンクS(
図2、
図6)に供給され、熱エネルギ供給部81を介してシンクS内の水(湯)に対する熱エネルギの供給量が制御される。
【0029】
図1Aは、熱エネルギ供給部81および媒体供給部82を介して、熱エネルギの供給量と水の供給量を制御する方法の一例を示す図である。
【0030】
図1Aの例では、媒体供給部82は、定電流弁82aと、電磁弁82bとを備える。定電流弁82aおよび電磁弁82bは、水道水の供給経路に沿って直列に配置されており、水道水の供給量が、電磁弁82bが開弁している時間に応じて決まる。電磁弁82bのソレノイドへの電流は、媒体状態制御部80によりスイッチ82cを介して制御される。媒体状態制御部80によりスイッチ82cの開閉のデューティー比を制御することにより、サブセクション521のシンクSに供給される新鮮な水道水の量を調整することができる。
【0031】
また、
図1Aの例では、熱エネルギ供給部81は、熱エネルギを発生するヒータHを備える。ヒータHへの電流は、媒体状態制御部80によりスイッチ81cを介して制御される。スイッチ81cがオンすることにより、ヒータHからシンクS内の水(湯)に供給される熱エネルギは最大限となり、スイッチ81cがオフすることにより、ヒータHからシンクS内の水(湯)に供給される熱エネルギはゼロとなる。媒体状態制御部80によりスイッチ81cの開閉のデューティー比を制御することにより、サブセクション521のシンクS内の水(湯)に供給される熱エネルギ量を調整することができる。
【0032】
図1Aでは、熱エネルギ供給部81として、電力により熱エネルギを供給する例を示しているが、エネルギ源は電力に限定されず任意である。例えば、ガスを燃焼させることにより熱エネルギを供給してもよい。
【0033】
主制御部13と処理装置11は、協働して調理に必要な処理を順次、実行する。
【0034】
次に、
図2以降を参照して、調理システム200が機能するのに好適な調理場150を詳説する。以下では、主に、蕎麦を調理することを例に説明するが、調理対象は、蕎麦以外の麺類(例えばうどん、ラーメン、パスタ)であってもよいし、麺類以外の任意の食材(何らかの調理が必要な食材)であってもよい。
【0035】
図2は、複数のセクションを備える調理場150を示す図である。
図2に示す例では、複数のセクションは、第1セクション51、第2セクション52、第3セクション53および第4セクション54を含む。なお、セクションの数は、任意であり、更なるセクションが追加されてもよい。
【0036】
図3は、第1セクション51に配置されるレール511を示す斜視図である。第1セクション51では、レール511により複数のレーン511A、511B、511Cが規定される。1つ以上の“てぼ(ザル)”を保持するトレイ60(以下、単に「トレイ60」とも称する)は、レーン511A、511B、511Cのいずれかに載置されて、Y方向Y1側へと搬送される。なお、この搬送は、作業者による手作業で実現されてもよいし、ロボット21A、21B以外のロボットや駆動機構で実現されてもよい。なお、レール511は、Y1側が下方になるように傾斜が付けられてもよい。この場合、トレイ60は、重力の作用により、Y方向Y1側へと移動できる。
【0037】
例えば、第1セクション51のレーン511A、511B、511Cの最もY方向Y1側に、“てぼ(ザル)”を保持するトレイ60が位置すると、調理準備開始状態となる。
【0038】
図4は、レール511の支持台512を示す斜視図である。支持台512は、レール511を取り外し可能に支持できる。これにより、レール511のメンテナンスが容易となる。
【0039】
図2に示すように、第2セクション52は、サブセクション521と、サブセクション522とを有する。サブセクション521には、蕎麦を茹でるための工程が割り当てられる。サブセクション522は、トレイ60を一時的に載置するための置台として機能する。なお、サブセクション522の構成は任意であるが、例えば、第1セクション51に配置されるレール511またはこれに類似した構造物を配置し、トレイ60を載置するための第1セクション51と同様のレーンを構成してもよい。
【0040】
図5は、第3セクション53の設備を示す斜視図である。
図5では、第3セクション53は、サブセクション531、532を有する。サブセクション531、532に割り当てられる作業は任意であるが、例えば水切り作業や、ぬめりを取る作業である。サブセクション521において茹でられた蕎麦を、サブセクション531、サブセクション532の順で、後処理することができる。例えば、サブセクション531において、蕎麦のぬめりを取る作業を中心に行い、さらに、サブセクション532において水で蕎麦をしめる(冷却する)作業を行うことができる。この場合、サブセクション532における水の温度を極力低下させることが要求される一方、サブセクション531における水の温度は極端に低くなくてもよい。このため、低温の冷水をサブセクション532のみに供給してもよい。この場合、サブセクション531における水位を、サブセクション532における水位よりも低く設定し、サブセクション532の水位を超えてサブセクション532から溢れた水が、自然にサブセクション531に供給されるようにしてもよい。これにより、サブセクション532に供給された冷水を、サブセクション531においても有効に利用できる。また、サブセクション531に対して、直接、水を供給する必要がなくなる。
【0041】
本実施例では、
図2に示すように、第3セクション53に、ロボット21Aが配置される。すなわち、第3セクション53を構成する設備の壁体W(
図5参照)にロボット21Aの基端21aが取り付けられる。
【0042】
図6は、調理場150を示す上面図である。
図6に示すように、本実施例では、第4セクション54にロボット21Bが配置される。すなわち、第4セクション54を構成する設備の壁体W1(
図6参照)にロボット21Bの基端21aが取り付けられる。これにより、ロボット21Bによる後述の動作を容易に実行することが可能となる。なお、ロボット21Bを第2セクション52など、他の場所に配置してもよい。
【0043】
上記のように、第2セクション52には、蕎麦を茹でる作業が割り当てられ、サブセクション521には、湯をためるシンクS(
図2、
図6)が配置される。シンクSは、媒体としての水(湯)をためる容器として機能する。
図2および
図6に示すように、シンクSの下部には、シンクS内の水(湯)を加熱する上記の熱エネルギ供給部81と、シンクSに水(水道水)を供給する上記の媒体供給部82とが設けられる。なお、熱エネルギ供給部81および媒体供給部82は、任意の位置に設けることができる。例えば、媒体供給部82をシンクSの上部に設けてもよい。また、熱エネルギ供給部81または媒体供給部82をシンクSと別体で設けてもよい。
【0044】
図2に示す第4セクション54は、蕎麦を入れる容器90(ばんじゅう)を載置する置台として機能する。
【0045】
図7は、ロボット21Aおよびロボット21Bの本体を示す斜視図である。なお、
図7では、ロボット21Aおよびロボット21Bは、ロボット用ハンド40などが取り付けられていない状態で示される(
図2も同様)。
【0046】
ロボット21A、21Bは、複数の回転関節を有する多関節ロボットであり、基端21aが壁体Wに取り付けられる。なお、ロボット21A、21Bとして、回転関節だけでなく直動関節を有するロボットを用いることもできる。ロボット21A、21Bには、各関節を駆動するためのアクチュエータ(不図示)が関節ごとに設けられ、これらのアクチュエータが処理装置11に接続されて制御される。本実施例では、ロボット21Aの先端21bには、ロボット用ハンド40が取り付けられる。また、ロボット21Bの先端21bには、ロボット用ハンド30が取り付けられる。
【0047】
本実施例ではロボット21A、21Bは、多関節ロボットであり、壁体W、W1側に退避させることができるので、例えば、サブセクション531、532の上方の作業スペースを効果的に確保できる。この場合、例えば
図2に示す領域付近に立ちながら作業者が作業することも可能となり、ロボット21A、21Bの非稼働時にも設備を有効に利用できる。ただし、変形例では、ロボット21A及び/又は21Bは、2軸ロボットのような、他の形態のロボットであってもよい。
【0048】
図8は、ロボット用ハンド40のハンド本体部42を示す斜視図である。
図9は、上面420を構成する部材を取り外した状態のハンド本体部42を示す斜視図である。
図10は、ハンド本体部42とトレイ60との係合状態を示す斜視図である。
図11は、トレイ60の単品状態を示す斜視図、
図11Aは、トレイ60に“てぼ(ザル)”が挿入された状態を示す斜視図である。
図8には、互いに直交する2つの方向としてX方向とY方向とが、ハンド本体部42の上面420を基準として定義されている。また、
図10、
図11および
図11Aには、Z方向が定義されている。Z方向は、トレイ60のトレイ部61における支持面に垂直な方向であり、以下では、Z方向Z1側を、「上側」とし、Z方向Z2側を、「下側」として、上下方向に関連する用語(例えば上面や、下面等)を用いる場合がある。
【0049】
ロボット用ハンド40は、トレイ60をピックアップし、所定位置(第1セクション51、サブセクション522等)に載置するのが好適な形状に形成される。ロボット用ハンド40は、トレイ60に係合するハンド本体部42を有する。
【0050】
ハンド本体部42は、係合する際にトレイ60の一対の被支持部62の下面と面接触する上面420を有する。
図8では、上面420は、ロボット21Aの先端21bに取り付けられる取付面400Aを有するプレート部材400により支持される。上面420は、トレイ60の重力を受け持つ。すなわち、ハンド本体部42は、トレイ60の被支持部62をすくい上げる態様でピックアップする。これにより、ハンド本体部42を介してトレイ60を持ち上げている最中に、電源の異常等により、係合強化手段56が機能しなくなった場合でも、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合を維持できる(すなわちトレイ60の落下を防止できる)。
【0051】
ハンド本体部42には、ピン421が設けられる。ピン421は、例えば上面420から上側に突出する態様で設けられる。ピン421の数は任意であるが、
図8では、2つであり、一対の被支持部62のそれぞれに対応して設けられる。ピン421は、トレイ60における対応する孔621に挿入されることで、ハンド本体部42がトレイ60に係合する際の位置決め機能を果たす。なお、変形例では、トレイ60側にピン(例えば下向きのピン)が形成され、ハンド本体部42側に対応する孔が形成されてもよい。
【0052】
ピン421は、任意の断面形状であってもよいが、好ましくは、断面が円形であり、先端が細くなるテーパ状の形態である。これにより、係合直前にトレイ60とハンド本体部42との間に僅かなズレがある場合でも、当該ズレを矯正しつつ互いの係合状態を実現できる。
【0053】
ハンド本体部42には、係合強化手段56(
図8には概略的に図示)が設けられる。係合強化手段56は、好ましくは、Y方向でピン421の間に設けられる。なお、上面420には、係合強化手段56用の穴561が形成されてよい。これにより、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合度合いを効果的に高めることができる。係合強化手段56の数は任意であるが、
図8では、2つであり、一対の被支持部62のそれぞれに対応して設けられる。本実施例では、係合強化手段56は、電磁石であり、被支持部62は、磁性体により形成される。これにより、電磁石がオン状態となると、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合度合いが高くなる。これにより、外乱等により大きな振動等が生じた場合でも、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合を維持できる可能性を高めることができる。
【0054】
ハンド本体部42には、信号発生部41(
図9には概略的に図示)が設けられる。信号発生部41は、上面420におけるトレイ60の被支持部62の下面と面接触する領域内に設けられる。なお、上面420には、信号発生部41用の穴(不図示)が形成されてよい。信号発生部41は、ハンド本体部42に対する被支持部62の近接状態を検出する。本実施例では、信号発生部41は、ハンド本体部42の上面420とトレイ60の被支持部62の下面との間のZ方向の距離が閾値以下となった場合に、近接状態を表す所定信号を発生する。信号発生部41は、例えば近接センサであってよい。なお、センサは、被支持部62に対応して対で設けられてもよいし、一方の被支持部62にのみ対応して設けられてもよい。
【0055】
なお、ハンド本体部42は、
図9に示すように、好ましくは、上面420よりも下方に搭載スペース450を有する。なお、
図9では、上面420を形成する部材を取り外した状態で、ロボット用ハンド40が示される。搭載スペース450内には、ピン421の下部や、係合強化手段56、信号発生部41、配線等が配置されてよい。
【0056】
本実施例では、ハンド本体部42にトレイ60が係合された状態が第1係合状態(
図10参照)である。このとき、係合強化手段56は機能していないか、あるいは微弱である。なお、「微弱」とは、係合強化手段56が電磁石の場合、第2係合状態を実現するときの通電電流(又は磁力)を100とした場合、100よりも有意に小さいことを意味し、例えば50以下であり、好ましくは、10以下である。そして、係合強化手段56が機能すると、ハンド本体部42とトレイ60との間の係合度合いが高くなる第2係合状態が実現されてもよい。第1係合状態から第2係合状態への遷移(切り替え)は、処理装置11により実現される。具体的には、上述したように、信号発生部41が例えば近接センサである場合、近接センサは、トレイ60の、ハンド本体部42に対する第1係合状態が検出された場合に、所定信号を発生する。処理装置11は、この所定信号の発生をトリガとして、第1係合状態から第2係合状態への遷移(切り替え)を実現する。なお、信号発生部41は、好ましくは、ピン421を介して位置決めされていない係合状態では、所定信号を発生しないように構成される。すなわち、信号発生部41は、好ましくは、ピン421を介して位置決めされた係合状態を検出した場合のみ、所定信号を発生する。
【0057】
なお、第1係合状態と第2係合状態は、ロボット用ハンド40とトレイ60との位置関係は、同じであり、ともに
図10に示す状態である。
【0058】
なお、第1係合状態から第2係合状態への遷移(切り替え)は、ハンド本体部42の上面420にトレイ60の重力が作用している状態で実現されてもよい。なお、この場合、信号発生部41は、かかる重力の作用状態を検出するセンサ等であってもよい。
【0059】
図11に示すように、トレイ60は、トレイ部61と、一対の被支持部62と、トレイ部61と被支持部62とを接続する脚部63とを含む。
【0060】
トレイ部61は、調理器具としての“てぼ(ザル)”が挿入される貫通孔610を有する。貫通孔610の個数は任意であるが、
図11では、3つ設けられる。貫通孔610に挿入される“てぼ(ザル)”は、貫通孔610まわりの縁部により支持される。
図11Aにおいて、貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”のざる65の部分を示している。実際には、3つの貫通孔610のそれぞれに対して、“てぼ(ザル)”を挿入することができる。
【0061】
被支持部62は、上述したように、ハンド本体部42に係合される部分である。被支持部62は、ハンド本体部42の上面420に面接触する下面を形成する。被支持部62は、ハンド本体部42のピン421が挿入(嵌入)される孔621を有する。
【0062】
脚部63は、被支持部62をトレイ部61よりも上方に位置するように支持する。脚部63は、被支持部62に対応して対で設けられ、それぞれの上端部が、対応する被支持部62の縁部に接続される。また、脚部63は、下端部がトレイ部61の上面に固定される。このような脚部63を設けることで、被支持部62の下方に、ハンド本体部42の上面420を形成する部分が位置できるように、被支持部62をトレイ部61に対して上方に支持できる。
【0063】
また、本実施例では、脚部63を、上方から視て、隣り合う貫通孔610の中間の位置に設けている。さらに、一対の被支持部62のそれぞれを一対の脚部63のそれぞれに対応させるとともに、上方から視たときの被支持部62の面積を抑制している。このため、貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”の上方をロボット21Bによる作業空間として広く確保することができ、“てぼ(ザル)”への蕎麦の投入が容易に行える。すなわち、脚部63および被支持部62が貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”の上方から回避した位置にあるため、蕎麦を投入する際の障害となることがなく、貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に蕎麦を投入することができる。例えば、3つ並んだ貫通孔610のうち、中央に位置する貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に対しても、一対の被支持部62および一対の脚部63の間から、容易に蕎麦を投入することができる。
【0064】
図12は、ロボット用ハンド30を示す斜視図である。
【0065】
ロボット用ハンド30は、茹でる前の蕎麦を把持するとともに、把持された蕎麦を所定の位置で解放するのに適した形態に構成される。
【0066】
図12に示すように、ロボット用ハンド30は、ロボット21Bの先端21bに固定される固定部31と、固定部31に対して矢印35の方向に、それぞれスライド可能に取り付けられる可動部32および可動部33と、を備える。可動部32には4本の爪32a~32dが、可動部33には4本の爪33a~33dが、それぞれ設けられている。可動部32および可動部33は、処理装置11の制御に従い、同時に、矢印35に沿った方向であって、互いに反対方向に移動する。ロボット用ハンド30は、可動部32および可動部33の間の距離が最短になる閉状態と、当該距離が最長になる開状態との間で、繰り返し状態を切り替えることが可能とされている。爪32a~32dおよび爪33a~33dは、それぞれ、
図12に示すA方向(矢印35と直交する方向)に沿って配列されている。
【0067】
爪32a~32dは、それぞれ、可動部32から直線状に延びる基部321(
図12では、爪32aのみに表示)と、基部321から折り曲げて形成された先端部322(
図12では、爪32aのみに表示)とを有する。同様に、爪33a~33dは、それぞれ、可動部33から直線状に延びる基部331(
図12では、爪33aのみに表示)と、基部331から折り曲げて形成された先端部332(
図12では、爪33aのみに表示)とを有する。
図12の例では、基部321および基部331は、互いに平行に延びている。
【0068】
爪32aと爪33a、爪32bと爪33b、爪32cと爪33c、および、爪32dと爪33dは、それぞれ対をなしており、対をなす爪の先端部322と先端部332が互いに爪の先に向かって接近する方向に延びている。
【0069】
ロボット用ハンド30が閉状態にあるとき、爪32a~32dの先端が、それぞれ爪33a~33dの先端に接近し、茹でる前の蕎麦を、爪32a~32dと爪33a~33dの間に挟み込むようにして保持可能とされる。このとき、対を成す爪の先端部332と先端部322が互いに接近する方向に延びているので、基部321および基部331が蕎麦を挟み込むように蕎麦の両側の側部を覆うと同時に、先端部322と先端部332が蕎麦を下方から支持する。このため、蕎麦が落下することを効果的に防止できる。
【0070】
ロボット用ハンド30が閉状態から開状態に遷移すると、爪32a~32dと爪33a~33dの間に挟み込まれて保持されていた蕎麦が、先端部322と先端部332の間を滑り落ちるように自重により落下することで、ロボット用ハンド30からリリースされる。
【0071】
図13は、蕎麦を入れる容器90を示す斜視図、
図14は、仕切り92を示す斜視図である。
【0072】
容器90は、有底形状の容器本体91と、容器本体91の内部を区画する仕切り92とからなる。容器本体91の矩形状の内部は、立壁92Aおよび立壁92Bなどの複数の立壁を有する仕切り92によってマトリクス状に区画されている。例えば、
図14における領域95は、仕切り92によって区画された領域の一つを示している。仕切り92によって区画された領域ごとに、一纏りの蕎麦が入れられる。
【0073】
なお、仕切りの形状は任意であり、例えば、複数のサイズの領域が形成されるように、仕切りの間隔に変化を与えてもよい。これにより異なる蕎麦の分量、例えば、大盛り、少量盛りなどにも対応することが可能となる。
【0074】
仕切り92によって区画された領域のそれぞれには、茹でる前の蕎麦が既定量、例えば、一人分の量が入れられる。仕切り92によって区画された領域に、茹でる前の蕎麦をあらかじめセットしておくことにより、ロボット用ハンド30によって、当該領域に入れられている蕎麦の全量を確実に掴むことが可能となる。すなわち、開状態にあるロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dを当該領域内に差し込み、ロボット用ハンド30を閉状態に遷移させると、当該領域に入れられている蕎麦が爪32a~32dと爪33a~33dの間に挟み込まれて、当該領域に入れられていた蕎麦の全量が保持される。ロボット用ハンド30によって、ばらける可能性のある蕎麦などの調理対象を一纏めごとに掴むことができる。
【0075】
ロボット用ハンド30を所定の位置に移動させ、ロボット用ハンド30を開状態に遷移させると、その位置において蕎麦がリリースされる。
【0076】
図14に示すように、仕切り92を構成する一対の立壁92Cには、ロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合可能な係合部としての係合孔93が形成されている。
図14に示すA方向における係合孔93のピッチは、
図12に示すA方向の爪32a~32dおよび爪33a~33dのピッチに一致している。係合孔93は、ロボット用ハンド30の爪の対に対応する対を構成している。また、立壁92Cには、容器本体91に対して、仕切り92を係合させるための係合爪94が5つずつ形成されている。
【0077】
図12および
図14におけるA方向を合致させた状態において、開状態にあるロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dを容器本体91内の所定位置に下向きに差し込み、ロボット用ハンド30を閉状態に遷移させると、係合孔93に爪32a~32dおよび爪33a~33dが挿入される。このとき、爪の対のそれぞれは、係合孔93の対のそれぞれに係合する。その状態からロボット用ハンド30を上昇させると、爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合孔93に係合した状態で、仕切り92とともに、係合爪94を介して仕切り92に係合した容器本体91が、すなわち容器90の全体が持ち上がる。その後、ロボット用ハンド30を移動させて、容器90を所定位置に載置し、ロボット用ハンド30を開状態に遷移させると、爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合孔93から外れる。このようにして、容器90を所定位置に移動することができる。
【0078】
このように、仕切り92に、ロボット用ハンド30の爪32a~32dおよび爪33a~33dが係合可能な係合孔93が形成されているので、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30を介して、茹でる前の蕎麦を掴んで搬送するだけでなく、容器90を掴んで搬送する機能を発揮する。例えば、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30を介して、空になった容器90を第4セクション54から、第5セクション55(
図2)に移動することができる。第4セクション54に、あらかじめ、蕎麦の入った容器90を積み上げるようにしておけば、空になった容器90を上から順に、ロボット21Bによって、適時、例えば、第5セクション55の床に置かれたテーブルや台車などの上に移動することが可能となる。
【0079】
次に、本実施例における蕎麦を茹でる際の動作例について説明する。
【0080】
本実施例では、第1セクション51で準備されたトレイ60は、空の“てぼ(ザル)”を保持する(
図11A)。ロボット21Aは、ロボット用ハンド40を介して第1セクション51上のトレイ60をピックアップして、第2セクション52まで搬送し(空中を移動させ)、第2セクション52内のサブセクション522にトレイ60を載置する。
【0081】
一方、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30によって第4セクション54上の容器90に入れられている茹でる前の蕎麦を掴む。上記のように、ここでは、ロボット用ハンド30を開状態から閉状態に遷移させることにより、仕切り92により区画された領域の1つから、茹でる前の蕎麦を、爪32a~32dおよび爪33a~33dによって掴むことができる。
【0082】
次に、ロボット21Bは、ロボット用ハンド30によって、茹でる前の蕎麦を第2セクション52まで搬送し(空中を移動させ)、第2セクション52内のサブセクション522まで移動し、トレイ60に挿入された、対応する“てぼ(ザル)”に茹でる前の蕎麦を投入する。上記のように、蕎麦の投入時には、対応する“てぼ(ザル)”の内部または上方まで蕎麦を移動させる。次に、ロボット用ハンド30を閉状態から開状態に遷移させることにより、掴んでいた蕎麦を落下させ、対応する“てぼ(ザル)”に蕎麦を投入することができる。
【0083】
このとき、上記のように、トレイ60の脚部63を、上方から視て、隣り合う貫通孔610の中間の位置に設け、さらに、一対の被支持部62のそれぞれを一対の脚部63のそれぞれに対応して設けている(
図11)。このため、3つの貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”のそれぞれの上方にロボット21Bの作業空間が確保され、脚部63や被支持部62がロボット用ハンド30や、搬送される蕎麦と干渉しない。このため、容易に貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に蕎麦を投入することができる。3つ並んだ貫通孔610のうち、中央に位置する貫通孔610に挿入された“てぼ(ザル)”に対しては、一対の脚部63の間から蕎麦を投入することができる。
【0084】
このような、ロボット用ハンド30によって第4セクション54上の容器90に入れられている蕎麦を搬送し、対応する“てぼ(ザル)”に投入するという一連の動作を3回繰り返すことにより、トレイ60に挿入されている3つの“てぼ(ザル)”のすべてに蕎麦を投入することができる。なお、蕎麦を投入するまでの一連の動作は、カメラ74aの撮影画像などに基づいて適切に変更され得る。例えば、トレイ60に1つまたは2つの“てぼ(ザル)”が挿入されている場合には、“てぼ(ザル)”の個数に応じた回数だけ、一連の動作を繰り返すことができる。また、容器90に入れられている蕎麦の状況、例えば、蕎麦が入っている領域の個数に応じて、動作が変更され得る。
【0085】
ロボット21Bがロボット用ハンド30を第2セクション52から退去させた後、ロボット21Aは、ロボット用ハンド40を介してサブセクション522上のトレイ60をピックアップして、第2セクション52のサブセクション521に用意された湯内に、トレイ60ごと漬ける。これにより、茹で作業を実行できる。茹で作業が開始されると、ロボット21Aは、一旦、トレイ60との係合を解消してもよい。この場合、茹で作業が終了するまで、他の作業を実行することも可能である。
【0086】
ついで、茹で作業が開始されてから所定時間が経過すると、ロボット21Aは、第2セクション52内のトレイ60をピックアップして、第3セクション53にて後処理を行う。すなわち、ロボット21Aは、まず、サブセクション531内に溜まった冷水に、トレイ60を浸して蕎麦のぬめりを除去する。なお、この際、ロボット21Aは、トレイ60を動かす等して作業効率を高めてもよい。また、調理場150は、サブセクション531内のトレイ60を検出すると、冷水が注入されるように構成されてもよい。
【0087】
ついで、ロボット21Aは、サブセクション532上にトレイ60を運び、水切り作業を行う。この際、トレイ60を傾斜させて上下に振動させることで、水切りが効果的に実現されるようにしてもよい。ロボット21Aは、水切り作業を終了すると、第1セクション51にトレイ60を搬送し、第1セクション51上のレール511上にトレイ60を載置する。なお、この際、載置するレーンは、規定されてもよい。このようにして、一連の調理作業が実現される。
【0088】
次に、媒体状態制御部80の動作について説明する。
【0089】
媒体状態制御部80は、熱エネルギ供給部81および媒体供給部82を制御することでシンクS内の水(湯)の状態を、茹でモード(第1状態)と、待機モード(第2状態)との間で切り換える。
【0090】
図15は、媒体状態制御部80の動作を示すフローチャートである。
【0091】
図15のステップS1では、媒体状態制御部80は、シンクS内の水(湯)の状態を待機モード(第2状態)とする。第2状態は、シンクS内に蕎麦が投入されていないときに、シンクS内の水(湯)が弱い沸騰を継続する状態である。第2状態では、蕎麦を茹でることが可能な茹でモード(第1状態)よりも、熱エネルギ供給部81による熱エネルギの供給量を低下させる。また、第2状態では、第1状態よりも、媒体供給部82による水道水の供給量を低下させる。仮に、第2状態において、シンクS内に蕎麦を投入すると、蕎麦によりシンクS内の水(湯)の温度が低下し、適切に蕎麦を茹でることができない。しかし、待機モード(第2状態)を備えることにより、茹でモード(第1状態)を常時、継続する場合と比較して、効果的に、熱エネルギの供給量および水道水の使用量を抑制することができる。
【0092】
図15Aは、熱エネルギ供給部81による熱エネルギの供給量と、媒体供給部82による水道水の供給量との関係を示す図である。
【0093】
図15Aにおいて、縦方向は水道水の時間あたり供給量を、領域A1は、熱エネルギの時間あたり供給量を、それぞれ示している。
【0094】
図15Aにおいて、領域A1は、水道水の供給量に対して熱エネルギの供給量が不足するため、シンクS内の水(湯)の温度が時間経過とともに低下する領域である。領域A2は、水道水の供給量が不足しているため、蒸発によりシンクS内の水(湯)の水位が時間経過とともに低下する領域である。また、矢印85で示す幅は、シンクSに投入された蕎麦により流出するシンクS内の水(湯)の量に相当する。矢印86で示す幅は、シンクSに投入された蕎麦により失われる熱エネルギに相当する。
【0095】
領域A1および領域A2は、蕎麦を茹でるために適当でない領域である。さらに、蕎麦の投入によるシンクS内の水(湯)の減少と、熱エネルギの消費とを考慮すると、蕎麦を茹でることが可能な状態(第1状態)に適用できるのは領域A3となる。すなわち、第1状態に相当する茹でモードでは、領域A3が選択される。領域A3は、水道水の供給量と熱エネルギ供給部81の消費電力との関係が、蕎麦を同時調理可能な最大数投入した場合でも水位と温度が低下しない第1関係となる領域に相当する。なお、領域A1~A3は、実験または計算に基づいて求めることができる。例えば、領域A3は、所定玉数の蕎麦を茹でた場合でも沸騰状態が維持できるように適合されてよい。所定玉数は、同時に茹でる可能性がある蕎麦の個数(玉数)の最大数以上であってよい。ここでは、同時にゆでる可能性がある蕎麦を最大数投入した際に減少する水位と熱エネルギの消費を予め算出しておくことで、A3の領域を特定している。
領域A3において、シンクS内への水道水の供給量が大きければ、必要となる熱エネルギ量は増大するが、湯のオーバーフローにより蕎麦から出るグルテンなどが迅速に除去される。また、シンクS内への一定の水道水の供給量に対して、供給する熱エネルギ量を増大させればシンクS内の水(湯)の沸騰が強まり、蕎麦を湯掻く作用が強くなる。このため、茹でモードにおけるシンクS内への水道水の供給量と、シンクS内の水(湯)に供給される熱エネルギ量は、蕎麦を茹でる際に要求される条件に応じて規定すればよい。
【0096】
例えば、茹でモード(第1状態)では、領域A3のうち、熱エネルギ供給部81による熱エネルギの供給量が最大となる領域A31を選択することができる。領域A31を選択することで、湯の水位を維持するのに必要な水道水の供給量よりも高い供給量となるため、単にシンクS内の湯の水位が維持されるだけでなく、シンクS内の湯がオーバーフローする状態を維持でき、ぬめりの少ない湯を循環させるが可能となる。なお、
図15Aにおいて、領域A31の上部に向かうほど水(湯)の循環量が増大し、領域A31の下部に向かうほど、水(湯)の沸騰が強くなる。
【0097】
茹でモード(第1状態)において選択される水道水供給量と熱エネルギ供給量との組み合わせは、年間を通して(気候等の相違に影響を受けることなく)、蕎麦を茹でるのに適した条件を選択することができる。例えば、調理場150の室温および水道水の温度が最も低くなる時期でも、蕎麦を茹でることが可能な組み合わせを選択できる。また、茹でモード(第1状態)での水道水供給量と熱エネルギ供給量との組み合わせを、調理場150の室温や水道水の温度に応じて変更してもよい。
【0098】
一方、待機モード(第2状態)においては、蕎麦をシンクSに投入しないときに、シンクS内の水(湯)が弱く沸騰を続ける状態が選択される。第2状態では、シンクS内の水(湯)が弱く沸騰を続ける状態が維持されるため、第1状態に移行した直後から蕎麦を茹で始めることが可能となる。仮に、待機モード(第2状態)で領域A1または領域A2を選択すると、シンクS内の水(湯)の量を維持しつつ、沸騰を継続させることができないため、領域A1および領域A2を第2状態に適用することはできない。したがって、第2状態に相当する待機モードでは、例えば、
図15Aに示す領域A4が選択される。領域A4は、水道水の供給量と熱エネルギ供給部81の消費電力との関係が、蕎麦を投入していない場合でも水位と温度が低下せず、かつ第1関係よりも水道水の供給量と消費電力が小さい第2関係となる領域に相当する。第2状態に相当する待機モードでは、領域4のように、領域A2に隣接する領域を使用して水道水の供給量を抑制することで、必要な熱エネルギ供給量を最小限に抑えている。待機モード(第2状態)において、年間を通じてシンクS内の水(湯)が弱く沸騰を続ける状態が維持されるように、水道水供給量と熱エネルギ供給量との組み合わせが選択されるべきこと、および、調理場150の室温および水道水の温度が考慮されるべきことは、茹でモード(第1状態)と同様である。例えば、領域A4は、好ましくは、領域A31に対して消費電力が35%から65%の範囲内であり、水道流入量が20%から40%の範囲内で適合されてもよく、より好ましくは、領域A31に対して消費電力が40%から60%の範囲内であり、水道流入量が25%から35%の範囲内で適合されてもよい。
【0099】
なお、待機モード(第2状態)においても、水道水の供給量を抑制しつつも、単にシンクS内の湯の水位を維持するだけでなく、オーバーフローするような水道水の供給量とすることがより好ましい。これによって、待機モード中にもぬめりのある湯を循環させることが可能となるとともに、蕎麦湯の提供などによって待機モード中であっても一時的に湯の水位が低下する場合にも調理者による操作がなくても自動的に水位を戻すことが可能となる。
【0100】
シンクS内の湯の水位が上昇し、または、オーバーフローするような状態は、
図15AのラインL2よりも上方の領域に該当する。したがって、例えば領域A4として選択される領域は、ラインL2よりも上方とすることが好ましい。仮に、ラインL2上の点(水道料供給量と熱エネルギ供給量との組み合わせ)を選択した場合には、計算上、シンクS内の湯の水位は一定となり、待機モード(第2状態)において、シンクS内の湯のオーバーフローを継続させることができなくなる。なお、待機モード(第2状態)において、シンクS内の湯をオーバーフローさせることなく、温度のみを維持できる状態は、原理的には、
図15AにおけるラインL1とラインL2との交点Pに対応する。しかし、待機モード(第2状態)において、シンクS内の湯をオーバーフローさせ、かつ弱い沸騰を継続させるために、例えば、ラインL1およびラインL2からある程度、離れた領域A4を選択することが望ましい。
【0101】
また、
図15AにおけるラインL1~L4は、特定の条件下で得られるラインであり、調理場150の室温および水道水の温度などにより移動する。例えば、水道水の温度が低下すれば、ラインL1およびラインL3は右方にシフトする。このため、待機モード(第2状態)において選択される領域としては、例えば領域A4に示すように、ラインL1およびラインL2からある程度、領域A3の方向に離れた領域が望ましい。選択される領域は、領域A3の一部が含まれるような領域であってもよい。
【0102】
一方、調理場150の室温や水道水の温度をリアルタイムで検出する場合には、その時点における交点Pの位置などが把握できる。このため、検出結果に応じて、水道水の供給量または熱エネルギ供給量を変化させる制御を行うことで、常時、交点Pに接近した領域を選択し続けることも可能となり、結果として、さらに、効率的にエネルギ消費を抑制できる。
【0103】
次に、
図15のステップS2では、媒体状態制御部80は、処理装置11からの通知に基づいて、処理装置11において所定イベントが検出されたか否か判断する。
【0104】
本実施例において、所定イベントとは、蕎麦の注文の発生に関連するイベントであって、蕎麦を茹でる工程を開始すべき旨、またはその開始の蓋然性が高い旨を示すイベントである。
【0105】
所定イベントとして、任意のイベントを採用することができるが、本実施例では、ロボット21Aまたはロボット21Bによる、蕎麦を茹でる前に実行される動作または当該動作の指令の発出を所定イベントとすることができる。上記の本実施例における蕎麦を茹でる際の動作例においては、ロボット21Bにより、容器90に入れられていた茹でる前の蕎麦を、トレイ60に挿入された“てぼ(ザル)”に投入するまでの一連の動作に含まれる特定の動作、またはその動作に対する指令の発出が所定のイベントに含まれ得る。例えば、この一連の動作のうち、ロボット21Bにより、“てぼ(ザル)”に茹でる前の蕎麦を投入する動作または当該動作に対する指令の発出を所定イベントとすることができる。所定イベントは、蕎麦を茹でる工程の開始前に発生するイベントであることが望ましい。これにより、蕎麦の茹で工程を開始する前に、シンクS内の水(湯)の状態が第1状態に移行するので、蕎麦を適切な条件下で茹ではじめることが可能となる。所定イベントの発生は、処理装置11から媒体状態制御部80に通知され、媒体状態制御部80の動作に反映される。
【0106】
また、所定イベントとして、来客を検出するイベント、店舗のドアの開閉イベント、食券機で注文を受け付けるイベント、および、店舗スタッフからの所定入力を受けるイベントのうちの、少なくともいずれかを用いることができる。来客を検出するイベントは、例えばカメラにより撮影された店内の画像を解析することで検出してもよい。
【0107】
これらのイベントには、店舗のドアの開閉動作の通知、来客が店舗内の所定の位置に到来したことの通知、食券機により蕎麦が注文されたことの通知、店舗のテーブルに備える端末により蕎麦が注文されたことの通知、店舗スタッフが所持する端末により蕎麦の注文を受けたことの通知、蕎麦の注文を受けたスタッフまたは調理担当者が所定の操作を行ったことの通知、カメラにより撮影された画像の解析結果の通知などが含まれる。これらの通知は、処理装置11に入力されたイベント検出信号(
図1)に基づいて、媒体状態制御部80に与えられ、媒体状態制御部80の動作に反映される。イベント検出信号は、例えば、店舗のドアの開閉動作時、来客が店舗内の所定の位置に到来したとき、食券機により蕎麦が注文されたとき、店舗のテーブルに備える端末により蕎麦が注文されたとき、店舗スタッフが所持する端末により蕎麦の注文を受けたとき、蕎麦の注文を受けたスタッフまたは調理担当者が所定の操作を行ったとき、カメラにより撮影された画像の解析結果が来客を示すときなどに、それぞれ処理装置11に与えられる信号である。
【0108】
ステップS2の判断が肯定された場合、媒体状態制御部80はステップS3へ処理を進め、判断が否定された場合、媒体状態制御部80はステップS1へ処理を進める。
【0109】
次に、ステップS3では、媒体状態制御部80は、シンクS内の水(湯)の状態を茹でモード(第1状態)とする。
【0110】
なお、本実施例では、ロボット21Aおよびロボット21Bを用いて蕎麦を調理しているため、シンクS内の水(湯)に同時に投入される蕎麦の数量は、処理装置11において把握することができる。このため、茹でモード(第1状態)における水道水供給量と熱エネルギ供給量との組み合わせを、シンクS内の水(湯)に投入される蕎麦の数量に応じて変化させてもよい。例えば、同時に投入される蕎麦の数量が大きい場合には、水道水供給量と熱エネルギ供給量とを増大させるようにしてもよい。この場合、処理装置11から媒体状態制御部80に対して蕎麦の数量を通知し、媒体状態制御部80は、通知された数量に応じた値となるように、水道水供給量および熱エネルギ供給量を制御すればよい。
【0111】
次に、ステップS4では、媒体状態制御部80は、処理装置11からの通知などに基づいて、受け付けた注文のすべての蕎麦の茹で工程が終了したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS2へ移行させ、判断が否定されれば処理をステップS3へ移行させる。
【0112】
ステップS4における判断の方法は任意であるが、媒体状態制御部80は、処理装置11による、ロボット21Aおよびロボット21Bの動作または当該動作の指令の発出をトリガとして、あるいは当該動作または当該指令から所定時間が経過したことをトリガとして、処理をステップS2へ移行することができる。この場合、媒体状態制御部80は、蕎麦の茹で工程が終了した後のロボット21Aまたはロボット21Bの動作または当該動作の指令の発出をトリガとして、処理をステップS2へ移行することができる。例えば、処理装置11から第3セクション53における後処理の指令が発出されたことをトリガとして、または、当該指令に基づいて、ロボット21Aが、第2セクション52(サブセクション521のシンクS)内にあるトレイ60をピックアップしたことをトリガとして、ステップS4の判断が肯定されてもよい。また、ロボット21Aが最後のトレイ60をサブセクション521のシンクSに漬けて蕎麦の茹で工程が開始されてから所定時間が経過したことを条件として、ステップS4の判断が肯定されてもよい。ステップS4における媒体状態制御部80の判断は、処理装置11との協働により成立する。
【0113】
このように、本実施例では、シンクS内の水(湯)の状態を茹でモード(第1状態)および待機モード(第2状態)の間で、適切に切り換えることが可能となる。このため、エネルギ消費を抑制しつつ、蕎麦を効率的に茹でることが可能となる。また、水道水の使用量も抑制することができる。
【0114】
上記のように、本実施例では、茹でモード(第1状態)および待機モード(第2状態)における水(湯)の状態は、いずれも沸騰した状態を維持しており、水温はいずれも約100℃である。このため、水(湯)の温度に基づいて、茹でモード(第1状態)および待機モード(第2状態)の間の切替を制御することは困難である。これに対し、本実施例では、茹でモード(第1状態)および待機モード(第2状態)を、水道水供給量と熱エネルギ供給量との組み合わせによって規定している。このため、茹でモード(第1状態)および待機モード(第2状態)における水(湯)の状態を正確に制御することができる。
【0115】
また、本実施例では、ゆで麺機70に内蔵されうる温度センサを用いずに上述した媒体状態制御部80の動作を実現できるので、ゆで麺機70に内蔵されうる温度センサの測定精度が良好でない場合にも、信頼性の高い動作を実現できる。ただし、変形例では、ゆで麺機70に内蔵されうる温度センサ又は別途用意された温度センサを補助的に用いることも可能である。
【0116】
(第2の実施例)
第1の実施例では、媒体状態制御部80が、ロボット21A、21Bを制御する処理装置11により制御する例を示しているが、媒体状態制御部80による制御は、ロボットの動作と無関係に実行され得る。
【0117】
図16は、媒体状態制御部80による制御を、ロボットの動作と無関係に実行する場合の構成を示す図である。
図16の例では、媒体状態制御部80に対して、直接、イベント検出信号が入力される。本実施例では、媒体状態制御部80が所定イベント検出部として機能する。
【0118】
図17は、本実施例における媒体状態制御部80の動作を示すフローチャートである。
【0119】
図17のステップS11では、媒体状態制御部80は、シンクS内の水(湯)の状態を待機モード(第2状態)とする。
【0120】
次に、
図17のステップS12では、媒体状態制御部80は、イベント検出信号が入力されたか否か、すなわち所定イベントが検出されたか否か判断する。
【0121】
所定イベントは任意であるが、所定イベントとして、来客を検出するイベント、店舗のドアの開閉イベント、食券機で注文を受け付けるイベント、および、店舗スタッフからの所定入力を受けるイベントのうちの、少なくともいずれかを用いることができる。来客を検出するイベントは、例えばカメラにより撮影された店内の画像を解析することで検出してもよい。
【0122】
これらのイベントには、店舗のドアの開閉動作の通知、来客が店舗内の所定の位置に到来したことの通知、食券機により蕎麦が注文されたことの通知、店舗のテーブルに備える端末により蕎麦が注文されたことの通知、店舗スタッフが所持する端末により蕎麦の注文を受けたことの通知、蕎麦の注文を受けたスタッフまたは調理担当者が所定の操作を行ったことの通知、などが含まれる。これらの通知は、イベント検出信号(
図16)として媒体状態制御部80に与えられ、媒体状態制御部80の動作に反映される。イベント検出信号は、例えば、店舗のドアの開閉動作時、来客が店舗内の所定の位置に到来したとき、食券機により蕎麦が注文されたとき、店舗のテーブルに備える端末により蕎麦が注文されたとき、店舗スタッフが所持する端末により蕎麦の注文を受けたとき、蕎麦の注文を受けたスタッフまたは調理担当者が所定の操作を行ったとき、カメラにより撮影された画像の解析結果が来客を示すときなどに、それぞれ媒体状態制御部80に与えられる信号である。
【0123】
ステップS12の判断が肯定された場合、媒体状態制御部80はステップS13へ処理を進め、判断が否定された場合、媒体状態制御部80はステップS11へ処理を進める。
【0124】
次に、ステップS13では、媒体状態制御部80は、シンクS内の水(湯)の状態を茹でモード(第1状態)とする。
【0125】
次に、ステップS14では、媒体状態制御部80は、受け付けた注文のすべての蕎麦の茹で工程が終了したか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS12へ移行させ、判断が否定されれば処理をステップS13へ移行させる。
【0126】
ステップS14においては、調理担当者による所定の操作に基づいた判断を行うことができる。例えば、蕎麦の入った“てぼ(ザル)”をシンクSから引き上げた際、またはシンクSから引き上げた“てぼ(ザル)”をサブセクション531内に溜まった冷水に浸して蕎麦のぬめりを除去した際に、調理担当者が所定の操作、例えばボタン操作をするようにし、当該操作があった場合にステップS14の判断が肯定されてもよい。また、シンクSにおいて蕎麦を茹で始める直前に行われる調理担当者の所定の操作から所定時間(蕎麦の茹で時間)が経過した場合に、ステップS14の判断が肯定されてもよい。また、シンクSにおいて蕎麦を茹で始めた後に行われた調理担当者の所定の操作から所定時間が経過した場合に、ステップS14の判断が肯定されてもよい。
【0127】
このように、第2の実施例では、ロボットを使用することなく調理担当者が蕎麦を茹でる場合でも、シンクS内の水(湯)の状態を茹でモード(第1状態)および待機モード(第2状態)の間で、適切に切り換えることが可能となる。このため、エネルギ消費を抑制しつつ、蕎麦を効率的に茹でることが可能となる。また、水道水の使用量も抑制することができる。
【0128】
図18は、熱エネルギ供給部81が保温モードを有するゆで麺機70に内蔵される構成例を示す図である。
【0129】
この例では、ゆで麺機70の動作を保温モードに設定したときには、熱エネルギ供給部81は保温モードに対応する単位時間当たりの熱エネルギを、ゆで麺機70内の水(湯)に供給する。
【0130】
一方、媒体状態制御部80の制御に従って、ゆで麺機70の動作が待機モード(第2状態)に設定された場合には、保温モードのときよりも単位時間あたりのゆで麺機70内の水(湯)への熱エネルギ供給部81による熱エネルギの供給量が大きくなる。これにより、待機モード(第2状態)において、ゆで麺機70内の水(湯)を弱く沸騰した状態に維持できる。ゆで麺機70の動作を茹でモード(第1状態)に設定した場合には、待機モード(第1状態)のときよりも、さらに単位時間あたりのゆで麺機70内の水(湯)への熱エネルギ供給部81による熱エネルギの供給量が大きくなる。
【0131】
媒体供給部82は、ゆで麺機70に供給される水道水の量(単位時間あたりの供給量)を制御する。
【0132】
このように、保温モードを有するゆで麺機70に熱エネルギ供給部81を内蔵させることにより、ゆで麺機70内の水(湯)の状態を第1状態と第2状態の間で切り換えることが可能となる。このため、エネルギ消費を抑制しつつ、調理対象を効率的に調理することが可能となる。また、水道水の使用量も抑制することができる。
【0133】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0134】
11 処理装置
21A ロボット
21B ロボット
30 ロボット用ハンド
40 ロボット用ハンド
60 トレイ
74a カメラ
74b センサ
80 媒体状態制御部
81 熱エネルギ供給部
82 媒体供給部
90 容器
91 容器本体
92 仕切り
H ヒータ