(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124415
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】既製杭の製造方法、既製杭の製造装置、及び、該方法を用いて製造された既製杭
(51)【国際特許分類】
E02D 5/30 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
E02D5/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022163
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193286
【弁理士】
【氏名又は名称】圷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】大越 正彦
【テーマコード(参考)】
2D041
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041CB01
2D041CB06
2D041DB03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】既製杭製造現場からの二酸化炭素の排出が抑制される既製杭の製造方法、既製杭の製造装置、及び、該方法を用いて製造された既製杭を提供する。
【解決手段】既製杭の製造方法は、コンクリートが打設された杭の型枠を養生槽内に配置して養生槽内に水蒸気を供給しながらコンクリートを加熱する養生工程S15,S17と、コンクリート又はコンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給工程S20とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートが打設された杭の型枠を養生槽内に配置して前記養生槽内に水蒸気を供給しながら前記コンクリートを加熱する養生工程と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給工程と
を備えることを特徴とする既製杭の製造方法。
【請求項2】
セメント、骨材及び水を混合して前記コンクリートを調製する混合工程を備え、
前記排ガス供給工程において、前記混合工程の前に、前記排ガスを前記水に溶解させる
ことを特徴とする請求項1に記載の既製杭の製造方法。
【請求項3】
コンクリートが打設された杭の型枠を収容して水蒸気により前記杭の型枠を加熱可能な養生槽と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給手段と
を備えることを特徴とする既製杭の製造装置。
【請求項4】
前記排ガス供給手段は、セメント及び骨材と混合して前記コンクリートを調製するための水に、前記排ガスを溶解させるように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の既製杭の製造装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の既製杭の製造方法を用いて製造された既製杭。
【請求項6】
前記コンクリートによって構成される円筒形状のコンクリート部を備え、
前記コンクリート部では、径方向にて前記排ガスの含有量が段階的に変化しており、内周側の方が外周側よりも前記排ガスの含有量が多い
ことを特徴とする請求項5に記載の既製杭。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、既製杭の製造方法、既製杭の製造装置、及び、該方法を用いて製造された既製杭に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温室効果ガスである二酸化炭素の排出抑制のための技術開発が行われている。例えば、土木建築分野では、特許文献1が開示するように、コンクリート構造物に二酸化炭素を吸収させる技術や、特許文献2が開示するように、二酸化炭素とγビーライトを反応させて炭酸化コンクリートを製造する技術が開発されている。前者は、空気中の二酸化炭素をコンクリート構造物に吸収させるものであり、後者は、火力発電所の排ガスに含まれる二酸化炭素をγビーライトと反応させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4829017号公報
【特許文献2】特許第4822373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、国連で採択されたSDGs(Sustanable Development Goals(持続可能な開発目標))の社会的な広がりもあって、二酸化炭素の排出抑制の必要性が益々高まってきている。特に、土木建築分野では、セメントの原材料であるクリンカの製造過程で大量の二酸化炭素が排出されることから、二酸化炭素の排出抑制のための技術開発を行うことの意義は大きい。
上述した事情に鑑みて、本発明の目的は、既製杭製造現場からの二酸化炭素の排出が抑制される既製杭の製造方法、既製杭の製造装置、及び、該方法を用いて製造された既製杭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る既製杭の製造方法は、
コンクリートが打設された杭の型枠を養生槽内に配置して前記養生槽内に水蒸気を供給しながら前記コンクリートを加熱する養生工程と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給工程と
を備える。
【0006】
上記構成(1)によれば、二酸化炭素を含む排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素が既製杭に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
セメント、骨材及び水を混合して前記コンクリートを調製する混合工程を備え、
前記排ガス供給工程において、前記混合工程の前に、前記排ガスを前記水に溶解させる。
【0008】
上記構成(2)によれば、排ガスを水に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントとも反応してコンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0009】
(3)本発明の少なくとも一実施形態に係る既製杭の製造装置は、
コンクリートが打設された杭の型枠を収容して水蒸気により前記杭の型枠を加熱可能な養生槽と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給手段と
を備えることを特徴とする既製杭の製造装置。
【0010】
上記構成(3)によれば、二酸化炭素を含む排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素が既製杭に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(3)において、
前記排ガス供給手段は、セメント及び骨材と混合して前記コンクリートを調製するための水に、前記排ガスを溶解させるように構成されている。
【0012】
上記構成(4)によれば、排ガスを水に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントにも反応し、コンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0013】
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係る既製杭は、
上記構成(1)又は(2)に記載の既製杭の製造方法を用いて製造される。
【0014】
上記構成(5)によれば、既製杭が、上記構成(1)又は(2)に記載の既製杭の製造方法を使用して構築されており、コンクリートが二酸化炭素を吸収している。このように二酸化炭素を吸収して炭酸化したコンクリートは、炭酸化していない従来のコンクリートよりも強度が高くなり、既製杭の性能が向上する。
【0015】
(6)幾つかの実施形態では、上記構成(5)において、
前記コンクリートによって構成される円筒形状のコンクリート部を備え、
前記コンクリート部では、径方向にて前記排ガスの含有量が段階的に変化しており、内周側の方が外周側よりも前記排ガスの含有量が多い。
【0016】
上記構成(6)によれば、コンクリート部の内周側が炭酸化されて高強度であるため、曲げモーメントが作用したときに内周側の圧壊が防止される。この結果として、上記構成(6)の既製杭は、高い曲げ耐力を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既製杭製造現場からの二酸化炭素の排出が抑制される既製杭の製造方法、既製杭の製造装置、及び、該方法を用いて製造された既製杭が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る既製杭の製造方法の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。
【
図2】混合工程を説明するための概略的な図である。
【
図3】コンクリ打設工程を説明するための概略的な図である。
【
図4】蒸気養生工程を説明するための概略的な図である。
【
図5】オートクレーブ養生工程を説明するための概略的な図である。
【
図6】排ガス供給手段の一例を説明するための概略的な図である。
【
図7】排ガス供給手段の一例を説明するための概略的な図である。
【
図8】排ガス供給手段の一例を説明するための概略的な図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る既製杭の概略的な横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る既製杭の製造方法(以下、単に杭製造方法ともいう)の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。
図1に示したように、杭製造方法は、計量工程S1、混合工程S3、鉄筋かご組立工程S5、型枠配置工程S7、コンクリ打設工程S11、緊張工程S12、遠心成形工程S13、蒸気養生工程S15、脱型工程S16、オートクレーブ養生工程S17、及び、排ガス供給工程S20を備えている。
計量工程S1では、コンクリートの原材料となる、水、セメント及び骨材を計量する。なお、原材料は混和材等を含んでいてもよい。
混合工程S3では、
図2に示したようにミキサ1を用いてコンクリートの原材料を混合し、コンクリート(生コンクリート)を調製する。
【0021】
一方、鉄筋かご組立工程S5では、鉄筋かごの原材料、例えば端板、鉄筋及びPC鋼棒等を用いて鉄筋かごを組み立てる。なお鉄筋かごの原材料は、異形鉄筋や補強筒等を含んでいてもよい。
型枠配置工程S7では、組み立てた鉄筋かごを型枠内に配置する。
【0022】
コンクリ打設工程S11では、
図3に示したように、鉄筋かご3が配置された型枠5内に混合工程S3で調製されたコンクリートを打設する。
緊張工程S12では、コンクリートが打設された鉄筋かご3の端板を引っ張ることによりPC鋼棒を伸ばして緊張させ、この状態で端板を型枠に係止する。
遠心成形工程S13では、コンクリート打設工程S11及び緊張工程S12を経た型枠5を回転させ、遠心力により締め固める。
蒸気養生工程S15では、
図4に示したように、遠心成形工程S13を経た型枠5を養生槽7に配置する。そして、養生槽7にボイラ9で発生させた蒸気を供給し、型枠5内のコンクリートを所定強度まで硬化させる。ボイラ9は、燃料を燃焼させた熱を利用した蒸気を生成するが、燃料は特に限定されることはなく、軽油、重油及び石炭等を用いることができる。
脱型工程S16では、蒸気養生工程S15後、コンクリートが所定の強度を有するか確認し、型枠5から既製杭の中間体の脱型を行う、同時に既製杭の中間体に圧縮力が導入される。なお、既製杭の中間体とは、蒸気養生工程S15を経た鉄筋かご3とコンクリートによって構成されるものであり、蒸気養生工程S15を経た型枠5の中味である。
【0023】
オートクレーブ養生工程S17では、
図5に示したように、オートクレーブ(耐圧容器)11内に既製杭の中間体13を配置する。そして、オートクレーブ11内にボイラ9からの蒸気を供給し、既製杭の中間体13を蒸気養生工程S15よりも高温高圧で養生する。これにより既製杭の中間体13のコンクリートを所定強度まで硬化させ、最終製品としての既製杭が得られる。
【0024】
排ガス供給工程S20では、上述した計量工程S1、混合工程S3、コンクリ打設工程S11、緊張工程S12、遠心成形工程S13、脱型工程S16、蒸気養生工程S15及びオートクレーブ養生工程S17の間に、
図2~
図5に示したように既製杭を構成することとなるコンクリート又はコンクリートの原材料にボイラ9の排ガスを供給する。
【0025】
上記構成によれば、ボイラ9から排出された二酸化炭素を含む排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素が既製杭に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
なお、本実施形態では、ボイラ9から排出された排ガスを用いた場合について説明したが、ボイラ9に限定されるものではなく、二酸化炭素を含む排気ガスを排出する装置であれば良い。
【0026】
幾つかの実施形態では、排ガス供給工程S20において、混合工程S3の前に、ボイラ9の排ガスをコンクリートの原材料である水に溶解させる。
上記構成によれば、ボイラ9から排出された排ガスを水に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントにも反応してコンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0027】
なお、コンクリート及びコンクリートの原材料による二酸化炭素の吸収は以下の概略的な反応式によって表されると考えられる。ただし、式中のxCaO・ySiO2は珪酸三カルシウムや珪酸二カルシウム(ビーライト、γC2S)等の珪酸カルシウムを表しており、式の左右でのモル数の整合性については無視している。式に示したように、珪酸カルシウム、水及び二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムが生成される。
xCaO・ySiO2+H2O→vCaO・wSiO2・H2O+Ca(OH)2
Ca(OH)2+CO2→CaCO3+H2O
また、水による二酸化炭素の吸収は以下の概略的な反応式によって表される。式に示したように、二酸化炭素と水が反応して炭酸が生成される。
CO2+H2O→H2CO3
【0028】
以下、本発明の一実施形態に係る既製杭の製造装置(以下、単に杭製造装置ともいう)について説明する。
杭製造装置は、養生槽7及び排ガス供給手段を備えている。
図4に示したように、養生槽7は、コンクリートが打設された杭の型枠5を収容してボイラ9からの水蒸気により杭の型枠5を加熱可能に構成されている。
そして、排ガス供給手段は、既製杭を構成することとなるコンクリート又はコンクリートの原材料にボイラ9の排ガスを供給するように構成されている
【0029】
上記構成によれば、ボイラ9から排出された排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素が既製杭に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、
図2に示したように、排ガス供給手段は、コンクリートを調製するミキサ1にボイラ9の排ガスを供給可能なポンプ15を含んでいる。
幾つかの実施形態では、
図3に示したように、排ガス供給手段は、型枠5に打設されるコンクリートの供給管17にボイラ9の排ガスを供給するポンプ19を含んでいる。
【0031】
幾つかの実施形態では、
図4に示したように、排ガス供給手段は、養生槽7内にボイラ9の排ガスを供給するポンプ20を含んでいる。
上記構成によれば、排ガスを養生槽7内に供給することにより、蒸気の熱に加え、排ガスの熱、及び、コンクリートと二酸化炭素の反応により、コンクリートを高温で養生することができ、早期に所定強度を得ることができる。
更に、水分量が多いほど二酸化炭素の吸収量は多くなるため、蒸気と共に排ガスを養生槽7に供給すれば、より多くの二酸化炭素を既製杭に吸収させることができる。
幾つかの実施形態では、
図4に二点鎖線で示したように、養生槽7に収容された型枠5内に排ガスを供給するように構成されていてもよい。この場合、中空円筒形状の既製杭の内周側のコンクリートに排ガス若しくは二酸化炭素を集中的に吸収させることができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、
図5に示したように、排ガス供給手段はオートクレーブ11内にボイラ9の排ガスを供給するポンプ21を含んでいる。
上記構成によれば、排ガスをオートクレーブ11内に供給することにより、蒸気の熱及び圧力に加え、排ガスの熱及び圧力、並びに、コンクリートと二酸化炭素の反応により、コンクリートを高温・高圧で養生することができ、早期に所定強度を得ることができる。
更に、水分量が多いほど二酸化炭素の吸収量は多くなるため、蒸気と共に排ガスをオートクレーブ11に供給すれば、より多くの二酸化炭素を既製杭に吸収させることができる。
幾つかの実施形態では、
図5に二点鎖線で示したように、オートクレーブ11に収容された既製杭の中間体13の中空部に排ガスを供給するように構成されていてもよい。この場合、中空円筒形状の既製杭の内周側のコンクリートに排ガス若しくは二酸化炭素を集中的に吸収させることができる。
【0033】
幾つかの実施形態では、排ガス供給手段は、セメント及び骨材と混合してコンクリートを調製するための水に、ボイラ9の排ガスを溶解させるように構成されている。
上記構成によれば、ボイラ9から排出された排ガスを水に供給することにより、二酸化炭素が水と混合され、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントとも反応し、コンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0034】
図6は、本発明の一実施形態に係る排ガス供給手段の構成を概略的に示す図である。
幾つかの実施形態では、
図6に示したように、排ガス供給手段は、超音波振動子を有する超音波ノズル23を有し、超音波ノズル23を介して水又はコンクリートの供給管17に排ガスを供給する。超音波ノズル23を用いることにより、マイクロバブル状にて排ガスを供給することができ、これにより、水又はコンクリートと排ガスを効率よく混合して反応させることができる。
【0035】
図7は、本発明の一実施形態に係る排ガス供給手段の構成を概略的に示す図である。
幾つかの実施形態では、
図7に示したように、排ガス供給手段は、超音波振動子を有する超音波ノズル25を有し、超音波ノズル25を介して水が貯留されたタンク27に排ガスを供給する。超音波ノズル25を用いることにより、マイクロバブル状にて排ガスを供給することができ、これにより、水と排ガスを効率よく混合して反応させることができる。
【0036】
図8は、本発明の更に他の一実施形態に係る排ガス供給手段の構成を概略的に示す図である。
幾つかの実施形態では、
図8に示したように、排ガス供給手段は、高圧タンク29及びスプレー31を有する。この場合、排ガスで満たされた常圧よりも高圧の高圧タンク29内にスプレー31を介して水を噴霧して水と排ガスを混合する。常圧よりも高圧下で水を噴霧することにより、水と排ガスを効率よく混合し、反応させることができる。
【0037】
本発明の少なくとも一実施形態に係る既製杭は、上記構成の杭製造方法を用いて製造される。
この場合、既製杭が、上記した既製杭の製造方法を使用して製造されており、コンクリートが二酸化炭素を吸収している。このように二酸化炭素を吸収して炭酸化したコンクリートは、炭酸化していない従来のコンクリートよりも強度が高くなり、既製杭の性能が向上する。
この一方で、既製杭を構成する原材料、例えば端板や鉄筋には、耐酸化性能が高いステンレスからなるものか、防錆処理を施したものを用いるのが好ましい。コンクリートが炭酸化することにより、既製杭のアルカリ性が低下し、耐酸化性が低下するためである。防錆処理としては、エポキシ等の樹脂被覆や亜鉛メッキ等のメッキ処理を用いることができる。
【0038】
図9は、本発明の一実施形態に係る既製杭32の概略的な横断面図である。
図9を参照すると、既製杭32はPC杭であり、円筒形状のコンクリート部33、コンクリート部33を貫通するPC鋼棒35、コンクリート部33内に配置された鉄筋(図示せず)、及び、コンクリート部33の両端に配置される端板(図示せず)を備えている。PC鋼棒35は、既製杭32の両端に配置される端板を介してコンクリート部33を圧縮するように構成されている。
【0039】
そして、コンクリート部33は、円筒形状の内周部33a、及び、内周部33aを囲むように設けられた円筒形状の外周部33bを備えている。本実施形態では、内周部33aは排ガス若しくは二酸化炭素を含むコンクリートによって構成され、外周部33bが排ガス若しくは二酸化炭素を含まない、若しくは、二酸化炭素の含有量が内周部33aよりも少ないコンクリートによって構成されている。つまり、コンクリート部33においては、径方向にて排ガス若しくは二酸化炭素の含有量が段階的に変化しており、内周側は外周側よりも排ガス又は二酸化炭素の含有量が多い。そして、PC鋼棒35及び鉄筋は、外周部33b内に配置されている。
【0040】
上記構成によれば、PC鋼棒35及び鉄筋が、排ガス又は二酸化炭素の含有量が少ないコンクリートによって構成されている外周部33b内に配置されているので、PC鋼棒35や鉄筋の酸化を防止することができる。一方、内周部33aが排ガス又は二酸化炭素を含むコンクリートによって構成されており、内周部33aは炭酸化されて外周部33bよりも高強度である。このため、内周部33aは曲げモーメントが作用したとしても圧壊しづらく、既製杭32は高い曲げ耐力を有する。
なお、上述した既製杭32は、コンクリートを2回に分けて打設することにより製造可能である。
一方、
図4及び
図5に示すように、排ガス中で型枠5又は既製杭の中間体13を養生した場合も、既製杭の内周側の排ガス濃度が高くなるが、この場合、排ガス濃度は径方向にて連続的に変化する。
【0041】
最後に、本発明は上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、既製杭32の種類はPC杭に限定されることはなく、例えば、SC杭(外殻鋼板付きコンクリート杭)、PHC杭(プレストレスト高強度コンクリート杭)、及びPRC杭(プレストレスト鉄筋コンクリート杭)等であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 ミキサ
3 鉄筋かご
5 型枠
7 養生槽
9 ボイラ
11 オートクレーブ
13 既製杭の中間体
15,19,20,21 ポンプ
17 供給管
23,25 超音波ノズル
27 タンク
29 高圧タンク
31 スプレー
32 既製杭
33 コンクリート部
33a 内周部
33b 外周部
35 PC鋼棒