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2022-124416プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品
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  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図1
  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図2
  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図3
  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図4
  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図5
  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図6
  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図7
  • -プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124416
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品
(51)【国際特許分類】
   B28B 11/24 20060101AFI20220818BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20220818BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20220818BHJP
【FI】
B28B11/24
C04B40/02
C04B28/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022164
(22)【出願日】2021-02-15
(71)【出願人】
【識別番号】515277300
【氏名又は名称】ジャパンパイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100193286
【弁理士】
【氏名又は名称】圷 正夫
(72)【発明者】
【氏名】大越 正彦
【テーマコード(参考)】
4G055
4G112
【Fターム(参考)】
4G055AA01
4G055BA02
4G112PE06
4G112RA02
4G112RA03
4G112RC01
(57)【要約】
【課題】プレキャストコンクリート製品の製造現場からの二酸化炭素の排出が抑制されるプレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品を提供する。
【解決手段】プレキャストコンクリート製品の製造方法は、コンクリートが打設されたプレキャストコンクリート製品の型枠を養生槽内に配置して養生槽内に水蒸気を供給しながらコンクリートを加熱する養生工程と、コンクリート又はコンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給工程とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートが打設された型枠を養生槽内に配置して前記養生槽内に水蒸気を供給しながら前記コンクリートを加熱する養生工程と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給工程と
を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート製品の製造方法。
【請求項2】
セメント、骨材及び水を混合して前記コンクリートを調製する混合工程を備え、
前記排ガス供給工程において、前記混合工程の前に、前記排ガスを前記水に溶解させる
ことを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法。
【請求項3】
コンクリートが打設された型枠を収容して水蒸気により前記型枠を加熱可能な養生槽と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給手段と
を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート製品の製造装置。
【請求項4】
前記排ガス供給手段は、セメント及び骨材と混合して前記コンクリートを調製するための水に、前記排ガスを溶解させるように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載のプレキャストコンクリート製品の製造装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温室効果ガスである二酸化炭素の排出抑制のための技術開発が行われている。例えば、土木建築分野では、特許文献1が開示するように、コンクリート構造物に二酸化炭素を吸収させる技術や、特許文献2が開示するように、二酸化炭素とγビーライトを反応させて炭酸化コンクリートを製造する技術が開発されている。前者は、空気中の二酸化炭素をコンクリート構造物に吸収させるものであり、後者は、火力発電所の排ガスに含まれる二酸化炭素をγビーライトと反応させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4829017号公報
【特許文献2】特許第4822373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、国連で採択されたSDGs(Sustanable Development Goals(持続可能な開発目標))の社会的な広がりもあって、二酸化炭素の排出抑制の必要性が益々高まってきている。特に、土木建築分野では、セメントの原材料であるクリンカの製造過程で大量の二酸化炭素が排出されることから、二酸化炭素の排出抑制のための技術開発を行うことの意義は大きい。
上述した事情に鑑みて、本発明の目的は、プレキャストコンクリート製品の製造現場からの二酸化炭素の排出が抑制されるプレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法は、
コンクリートが打設された型枠を養生槽内に配置して前記養生槽内に水蒸気を供給しながら前記コンクリートを加熱する養生工程と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給工程と
を備える。
【0006】
上記構成(1)によれば、排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素がプレキャストコンクリート製品に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0007】
(2)幾つかの実施形態では、上記構成(1)において、
セメント、骨材及び水を混合して前記コンクリートを調製する混合工程を備え、
前記排ガス供給工程において、前記混合工程の前に、前記排ガスを前記水に溶解させる。
【0008】
上記構成(2)によれば、排ガスを水に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントとも反応してコンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0009】
(3)本発明の少なくとも一実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の製造装置は、
コンクリートが打設された型枠を収容して水蒸気により前記型枠を加熱可能な養生槽と、
前記コンクリート又は前記コンクリートの原材料に二酸化炭素を含む排ガスを供給する排ガス供給手段と
を備えることを特徴とするプレキャストコンクリート製品の製造装置。
【0010】
上記構成(3)によれば、排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素がプレキャストコンクリート製品に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0011】
(4)幾つかの実施形態では、上記構成(3)において、
前記排ガス供給手段は、セメント及び骨材と混合して前記コンクリートを調製するための水に、前記排ガスを溶解させるように構成されている。
【0012】
上記構成(4)によれば、排ガスを水に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントにも反応し、コンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0013】
(5)本発明の少なくとも一実施形態に係るプレキャストコンクリート製品は、
上記構成(1)又は(2)に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法を用いて製造される。
【0014】
上記構成(5)によれば、プレキャストコンクリート製品が、上記構成(1)又は(2)に記載のプレキャストコンクリート製品の製造方法を使用して構築されており、コンクリートが二酸化炭素を吸収している。このように二酸化炭素を吸収して炭酸化したコンクリートは、炭酸化していない従来のコンクリートよりも強度が高くなり、プレキャストコンクリート製品の性能が向上する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、プレキャストコンクリート製品の製造現場からの二酸化炭素の排出が抑制されるプレキャストコンクリート製品の製造方法、プレキャストコンクリート製品の製造装置、及び、該方法を用いて製造されたプレキャストコンクリート製品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。
図2】混合工程を説明するための概略的な図である。
図3】コンクリ打設工程を説明するための概略的な図である。
図4】蒸気養生工程を説明するための概略的な図である。
図5】オートクレーブ養生工程を説明するための概略的な図である。
図6】排ガス供給手段の一例を説明するための概略的な図である。
図7】排ガス供給手段の一例を説明するための概略的な図である。
図8】排ガス供給手段の一例を説明するための概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の製造方法(以下、単に製造方法ともいう)の概略的な手順を説明するためのフローチャートである。図1に示したように、製造方法は、計量工程S1、混合工程S3、鉄筋組立工程S5、型枠配置工程S7、コンクリ打設工程S9、蒸気養生工程S11、脱型工程S12、オートクレーブ養生工程S13、及び、排ガス供給工程S15を備えている。
計量工程S1では、コンクリートの原材料となる、水、セメント及び骨材を計量する。なお、原材料は混和材等を含んでいてもよい。
混合工程S3では、図2に示したようにミキサ1を用いてコンクリートの原材料を混合し、コンクリート(生コンクリート)を調製する。
【0019】
鉄筋組立工程S5では、鉄筋を所定の形状の鉄筋組立体に組み立てる。なお鉄筋組立体の原材料は、異形鉄筋等を含んでいてもよい。
型枠配置工程S7では、鉄筋組立体を型枠内に配置する。
【0020】
コンクリ打設工程S9では、図3に示したように、鉄筋組立体が配置された型枠3内に混合工程S3で調製されたコンクリートを打設する。本実施形態のプレキャストコンクリート製品は、ボックスカルバートである。
蒸気養生工程S11では、図4に示したように、コンクリートが打設された型枠3を養生槽5に配置する。そして、養生槽5にボイラ7で発生させた蒸気を供給し、型枠3内のコンクリートを所定強度まで硬化させる。ボイラ7は、燃料を燃焼させた熱を利用した蒸気を生成するが、燃料は特に限定されることはなく、軽油、重油及び石炭等を用いることができる。
脱型工程S12では、蒸気養生工程S11後、コンクリートが所定の強度を有するか確認し、型枠3からプレキャストコンクリート製品の中間体の脱型を行う。なお、プレキャストコンクリート製品の中間体とは、蒸気養生工程S11を経た鉄筋組立体とコンクリートによって構成されるものであり、蒸気養生工程S11を経た型枠3の中味である。
【0021】
オートクレーブ養生工程S13では、図5に示したように、オートクレーブ(耐圧容器)9内にプレキャストコンクリート製品の中間体11を配置する。プレキャストコンクリート製品の中間体11とは、蒸気養生工程S11を経た鉄筋組立体とコンクリートによって構成されるものであり、蒸気養生工程S11を経た型枠3の中味である。そして、オートクレーブ9内にボイラ7からの蒸気を供給し、プレキャストコンクリート製品の中間体11を蒸気養生工程S11よりも高温高圧で養生する。これによりプレキャストコンクリート製品の中間体11のコンクリートを所定強度まで硬化させ、最終製品としてのプレキャストコンクリート製品が得られる。
【0022】
排ガス供給工程S15では、上述した計量工程S1、混合工程S3、コンクリ打設工程S9、蒸気養生工程S11及びオートクレーブ養生工程S13の間に、図2図5に示したようにプレキャストコンクリート製品を構成することとなるコンクリート又はコンクリートの原材料にボイラ7の排ガスを供給する。
【0023】
上記構成によれば、ボイラ7から排出された排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素がプレキャストコンクリート製品に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0024】
幾つかの実施形態では、排ガス供給工程S15において、混合工程S3の前に、ボイラ7の排ガスをコンクリートの原材料である水に溶解させる。
上記構成によれば、ボイラ7から排出された排ガスを水に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントにも反応してコンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0025】
なお、コンクリート及びコンクリートの原材料による二酸化炭素の吸収は以下の概略的な反応式によって表されると考えられる。ただし、式中のxCaO・ySiOは珪酸三カルシウムや珪酸二カルシウム(ビーライト、γCS)等の珪酸カルシウムを表しており、式の左右でのモル数の整合性については無視している。式に示したように、珪酸カルシウム、水及び二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムが生成される。
xCaO・ySiO+HO→vCaO・wSiO・HO+Ca(OH)
Ca(OH)+CO→CaCO+H
また、水による二酸化炭素の吸収は以下の概略的な反応式によって表される。式に示したように、二酸化炭素と水が反応して炭酸が生成される。
CO+HO→HCO
【0026】
以下、本発明の一実施形態に係るプレキャストコンクリート製品の製造装置(以下、単に製造装置ともいう)について説明する。
製造装置は、養生槽5及び排ガス供給手段を備えている。図4に示したように、養生槽5は、コンクリートが打設されたプレキャストコンクリート製品の型枠3を収容してボイラ7からの水蒸気によりプレキャストコンクリート製品の型枠3を加熱可能に構成されている。
そして、排ガス供給手段は、プレキャストコンクリート製品を構成することとなるコンクリート又はコンクリートの原材料にボイラ7の排ガスを供給するように構成されている
【0027】
上記構成によれば、ボイラ7から排出された排ガスをコンクリート又はコンクリートの原材料に供給することにより、排ガス中の二酸化炭素がコンクリート又はコンクリートの原材料に溶解・反応して吸収される。従って、二酸化炭素がプレキャストコンクリート製品に吸収され、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
なお、本実施形態では、ボイラ9から排出された排ガスを用いた場合について説明したが、ボイラ9に限定されるものではなく、二酸化炭素を含む排気ガスを排出する装置であれば良い。
【0028】
幾つかの実施形態では、図2に示したように、排ガス供給手段は、コンクリートを調製するミキサ1にボイラ7の排ガスを供給可能なポンプ13を含んでいる。
幾つかの実施形態では、図3に示したように、排ガス供給手段は、型枠3に打設されるコンクリートの供給管15にボイラ7の排ガスを供給するポンプ17を含んでいる。
【0029】
幾つかの実施形態では、図4に示したように、排ガス供給手段は、養生槽5内にボイラ7の排ガスを供給するポンプ19を含んでいる。
上記構成によれば、排ガスを養生槽5内に供給することにより、蒸気の熱に加え、排ガスの熱、及び、コンクリートと二酸化炭素の反応により、コンクリートを高温で養生することができ、早期に所定強度を得ることができる。
更に、水分量が多いほど二酸化炭素の吸収量は多くなるため、蒸気と共に排ガスを養生槽5に供給すれば、より多くの二酸化炭素をプレキャストコンクリート製品に吸収させることができる。
【0030】
幾つかの実施形態では、図5に示したように、排ガス供給手段はオートクレーブ9内にボイラ7の排ガスを供給するポンプ21を含んでいる。
上記構成によれば、排ガスをオートクレーブ9内に供給することにより、蒸気の熱及び圧力に加え、排ガスの熱及び圧力、並びに、コンクリートと二酸化炭素の反応により、コンクリートを高温・高圧で養生することができ、早期に所定強度を得ることができる。
更に、水分量が多いほど二酸化炭素の吸収量は多くなるため、蒸気と共に排ガスをオートクレーブ9に供給すれば、より多くの二酸化炭素をプレキャストコンクリート製品に吸収させることができる。
【0031】
幾つかの実施形態では、排ガス供給手段は、セメント及び骨材と混合してコンクリートを調製するための水に、ボイラ7の排ガスを溶解させるように構成されている。
上記構成によれば、ボイラ7から排出された排ガスを水に供給することにより、二酸化炭素が水と混合され、排ガス中の二酸化炭素が水に溶解・反応して吸収される。ここで、水に溶解・反応した二酸化炭素は、水とセメントが混合されることにより、セメントとも反応し、コンクリートに吸収される。従って、水と混合された排ガス中の二酸化炭素は、コンクリートと混合された場合と同様に、コンクリートにも溶解・反応して吸収されることになる。この結果として、排ガス中の二酸化炭素が大気中に放出されることを抑制することができる。
【0032】
図6は、本発明の一実施形態に係る排ガス供給手段の構成を概略的に示す図である。
幾つかの実施形態では、図6に示したように、排ガス供給手段は、超音波振動子を有する超音波ノズル23を有し、超音波ノズル23を介して水又はコンクリートの供給管15に排ガスを供給する。超音波ノズル23を用いることにより、マイクロバブル状にて排ガスを供給することができ、これにより、水又はコンクリートと排ガスを効率よく混合して反応させることができる。
【0033】
図7は、本発明の一実施形態に係る排ガス供給手段の構成を概略的に示す図である。
幾つかの実施形態では、図7に示したように、排ガス供給手段は、超音波振動子を有する超音波ノズル25を有し、超音波ノズル25を介して水が貯留されたタンク27に排ガスを供給する。超音波ノズル25を用いることにより、マイクロバブル状にて排ガスを供給することができ、これにより、水と排ガスを効率よく混合して反応させることができる。
【0034】
図8は、本発明の更に他の一実施形態に係る排ガス供給手段の構成を概略的に示す図である。
幾つかの実施形態では、図8に示したように、排ガス供給手段は、高圧タンク29及びスプレー31を有する。この場合、排ガスで満たされた常圧よりも高圧の高圧タンク29内にスプレー31を介して水を噴霧して水と排ガスを混合する。常圧よりも高圧下で水を噴霧することにより、水と排ガスを効率よく混合し、反応させることができる。
【0035】
本発明の少なくとも一実施形態に係るプレキャストコンクリート製品は、上記構成の製造方法を用いて製造される。
この場合、プレキャストコンクリート製品が、上記したプレキャストコンクリート製品の製造方法を使用して製造されており、コンクリートが二酸化炭素を吸収している。このように二酸化炭素を吸収して炭酸化したコンクリートは、炭酸化していない従来のコンクリートよりも強度が高くなり、プレキャストコンクリート製品の性能が向上する。
この一方で、プレキャストコンクリート製品を構成する原材料、例えば鉄筋には、耐酸化性能が高いステンレスからなるものか、防錆処理を施したものを用いるのが好ましい。コンクリートが炭酸化することにより、プレキャストコンクリート製品のアルカリ性が低下し、耐酸化性が低下するためである。防錆処理としては、エポキシ等の樹脂被覆や亜鉛メッキ等のメッキ処理を用いることができる。
【0036】
最後に、本発明は上述した幾つかの実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、プレキャストコンクリート製品はボックスカルバートに限定されることはなく、道路用製品(歩道用平板等)、管類(RC管等)、下水道用及び灌漑排水用製品(畦畔ブロック等)、土止め用及び護岸用製品(RC矢板、擁壁等)、ポール及び杭(PC杭等)、PC製品(PCまくらぎ等)、造園用製品(化粧板等)、その他の土木用製品(消波ブロック等)、並びに、建築用製品(空洞コンクリートブロック等)であってもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 ミキサ
3 型枠
5 養生槽
7 ボイラ
9 オートクレーブ
11 プレキャストコンクリート製品の中間体
13,17,19,21 ポンプ
15 供給管
23,25 超音波ノズル
27 タンク
29 高圧タンク
31 スプレー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8