(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124450
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】死後処置用品
(51)【国際特許分類】
A61G 17/06 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
A61G17/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021166523
(22)【出願日】2021-10-08
【基礎とした実用新案登録】
【原出願日】2019-10-31
(71)【出願人】
【識別番号】519389960
【氏名又は名称】酒井 健次朗
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 健次朗
(57)【要約】
【課題】遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液を確実に封止でき、処置痕も目立たない死後処置用品を提供する。
【解決手段】パッド132に人体の肌の色を発色する染料を配合している瞬間接着剤12が含浸された絆創膏13からなり、瞬間接着剤12によって遺体の開口部を封止する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドに接着剤が含浸された絆創膏からなり、前記接着剤によって遺体の開口部を封止する死後処置用品。
【請求項2】
請求項1に記載の死後処置用品であって、
前記接着剤が瞬間接着剤であることを特徴とする死後処置用品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の死後処置用品であって、
前記接着剤は、人体の肌の色を発色する染料を配合していることを特徴とする死後処置用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺体を、死によって起こる外観の変化を目立たないようにし、清潔に美しく保ち、その人らしい姿に整えるために使用する死後処置用品に関する。
【背景技術】
【0002】
長い闘病の末に家族が亡くなった場合などに、外見を少しでも美しくし、きれいな姿で送ってあげたいと考える人は多い。それに伴い、死後の処置は、遺族の気持ちを反映する形で発展し、エンゼルケアとして一般的になりつつある(例えば非特許文献1)。
【0003】
このエンゼルケアは、体液の漏出を防ぐこと、その人らしい姿に整えることを主な目的として、一般的には、(1)医療器具を外した後の手当、(2)治療でできた傷の手当、(3)身体の清拭、(4)鼻・口・耳への脱脂綿詰め、(5)着替え、(6)死化粧、の流れで処置が行われる。
【0004】
前述の(1)、(2)、(4)において、漏出体液が多い場合には、絆創膏や、ガーゼ、脱脂綿等では不十分であって、体液が体外に漏れ出すことがある。この漏出体液の処理時や、新しいガーゼ、脱脂綿等に交換する際には、漏出体液を介して病原菌に感染する虞があり、また周辺に漏出体液の悪臭が残るなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社ユニクエスト、[令和元年10月9日検索]、インターネット<https://www.osohshiki.jp/column/article/259/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液を確実に封止でき、処置痕も目立たない死後処置用品を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面に係る死後処置用品は、瞬間接着剤に人体の色を発色する染料を配合するように構成する。前記構成により、瞬間接着剤が作用することで、遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液を確実に封止できると共に、人体の色を発色する染料を配合しているので、処置痕も目立たなくすることができる。
【0008】
本発明の第2の側面に係る死後処置用品は、瞬間接着剤と、前記瞬間接着剤を含浸できるパッドが設けられた絆創膏と、を一揃いにパッケージ化するように構成する。前記構成により、遺体の傷口や治療痕等の開口部を封止する際に、パッドに瞬間接着剤を塗布した後、当該絆創膏を用いて、遺体の開口部を封止することができる。
【0009】
本発明の第3の側面に係る死後処置用品は、絆創膏のパッドに接着剤が含浸されるよう構成する。前記構成により、遺体の傷口や治療痕等の開口部を封止する際に、パッドに接着剤を塗布しなくても使用できる。
【0010】
本発明の第4の側面に係る死後処置用品は、接着剤と、前記接着剤を塗布後に延ばすためのヘラと、前記接着剤が塗布された箇所を覆い隠すための肌色のテープと、を一揃いにパッケージ化するように構成する。前記構成により、遺体の傷口や治療痕等の開口部に接着剤を塗布後に、ヘラで接着剤を延ばした後に、傷口や開口部を肌色のテープを貼付して、処置痕を目立たないようにする作業を迅速に行うことができる。
【0011】
本発明の第5の側面に係る死後処置用品は、人体の色を発色する染料を配合している水性の接着剤と、キャップに刷毛が設けられ、該刷毛が前記水性の接着剤に浸漬された状態で該水性の接着剤を収容可能な刷毛付き容器と、を備えるように構成する。前記構成により、刷毛が設けられたキャップを用いて遺体の傷口や治療痕等の開口部に接着剤を迅速に塗布することができる。また、接着剤が人体の色と見分けがつきにくい色をしているので、塗布後に、処置痕を目立たなくすることができる。
【0012】
本発明の第6の側面に係る死後処置用品は、粉末状の接着剤からなり、前記該接着剤は、死後の人体から漏出する体液と反応して接着作用を発現するよう構成する。前記構成により、遺体の傷口や治療痕等の開口部に、接着剤を直接振り掛けることにより、遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液と接着剤とが反応し、接着剤が硬化することによって、遺体の傷口や治療痕等の開口部を接着することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液を確実に封止でき、処置痕も目立たない死後処置用品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第2の実施形態に係る死後処置用品の模式図である。
【
図2】本発明の第4の実施形態に係る死後処置用品の模式図である。
【
図3】本発明の第5の実施形態に係る死後処置用品の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態
は、本発明の技術思想を具体化するための死後処置用品を例示するものであって、本発明はそれらを以下のものに特定しない。また、本明細書は実用新案登録請求の範囲に示される部材を、実施の形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
(死後処置用品1)
【0016】
第1の実施形態に係る死後処置用品1は、瞬間接着剤2に人体の色を発色する染料3が配合されている。瞬間接着剤2には、例えば、代表的な瞬間接着剤である有機化合物のシアノアクリレート(cyanoacrylate)を主成分としたシアノアクリレート系瞬間接着剤を用いることができる。シアノアクリレート系瞬間接着剤は、対象物の片面に付け、もう片方の対象物に押し付け広げられるとすぐに、空気中などの水分に瞬間的に反応して硬化し接着する。なお、瞬間接着剤2は、水状又はゼリー状のいずれを使用してもよい。
【0017】
瞬間接着剤2に配合する染料3は、人体の色を発色する染料が用いられる。人体の色とは、例えば絆創膏の基材の色のように、人体の皮膚の色と同色か、それと近い色(肌色等)であり、塗布状態を目立たなくすることができる。
【0018】
死後処置用品1の使用方法は、遺体の傷口や治療痕等の開口端部に直接塗布し、開口端部を貼着する。点状に塗布した後、貼着時に死後処置用品1が広がるようにしてもよいし、開口端部に沿って線状に塗布してもよい。また傷口が小さい場合には、開口を塞ぐように開口部に死後処置用品1を充填してもよい。
(死後処置用品11)
【0019】
第2の実施形態に係る死後処置用品11は、
図1に示すように、瞬間接着剤12と、瞬間接着剤12を含浸できるパッドが設けられた絆創膏13と、が一揃いにパッケージ化されている。ここで、一揃いにパッケージ化されているとは、一つのパッケージに対象物品が同梱されていることを意味する(死後処置用品31も同じ。)。なお、このパッケージには、瞬間接着剤12及び絆創膏13以外のものが含まれていてもよい。瞬間接着剤12は、死後処置用品1を用いてもよいし、通常のシアノアクリレート系瞬間接着剤を用いてもよい。絆創膏13は、肌色の基材131と、瞬間接着剤12を含浸可能な素材からなるパッド132と、基材に塗布された粘着剤133とからなる。
【0020】
死後処置用品11の使用方法は、まず、パッド132に瞬間接着剤12を含浸させ、次いで、傷口にパッド132の部分が当たるように、絆創膏13を貼付する。開口が大きい場合には、開口部に瞬間接着剤12を充填させた後、瞬間接着剤12を含浸させていない絆創膏13を貼付するようにしてもよい。
(死後処置用品21)
【0021】
第3の本実施形態に係る死後処置用品21は、絆創膏のパッドに予め接着剤が含浸されている。これにより、遺体の傷口や治療痕等の開口部を封止する際にそのまま使用できる。
(死後処置用品31)
【0022】
第4の実施形態に係る死後処置用品31は、
図2に示すように、接着剤32と、接着剤32を塗布後に延ばすための例えば舌圧子の形状をしたヘラ33と、接着剤32が塗布された箇所を覆い隠すための肌色のテープ34と、が一揃いにパッケージ化されている。なお、このパッケージには、接着剤32及びヘラ33並びに肌色のテープ34以外のものが
含まれていてもよい。
【0023】
死後処置用品31の使用方法は、まず、遺体の傷口や治療痕等の開口部に接着剤32を塗布する。その後、ヘラ33を用いて、接着剤32を傷口や開口部が封止できるように広げる。次いで、傷口や開口部を肌色のテープ34を貼付して、処置痕を目立たないようにする。
(死後処置用品41)
【0024】
第5の実施形態に係る死後処置用品41は、
図3に示すように、人体の色を発色する染料を配合している水性の接着剤42と、キャップ431に刷毛432が設けられ、刷毛432が水性の接着剤42に浸漬された状態で水性の接着剤42を収容可能な刷毛付き容器43と、を備えている。
【0025】
死後処置用品41の使用方法は、まず、刷毛付き容器43から、キャップ431を取り外し、接着剤42が含浸されている刷毛432によって、遺体の傷口や治療痕等の開口部に、接着剤42を塗布する。刷毛432が接着剤42に浸漬されていない場合や、十分に浸漬されていない場合には、接着剤42を補充して、刷毛432を十分に浸漬させてから使用する。
(死後処置用品51)
【0026】
第6の実施形態に係る死後処置用品51は、死後の人体から漏出する体液と反応して接着作用を発現する、粉末状の接着剤52からなる。粉末の接着剤52は、水分と反応して固化するため、大気中の水分となるべく反応しないように容器に収容されている。容器は、例えばプラスチックからなり、容器の主面を押さえることで、収容された粉末の接着剤52が吐出口から吐出される。
【0027】
死後処置用品51の使用方法は、遺体の傷口や治療痕等の開口部に、接着剤52を直接振り掛ける。遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液と接着剤52とが反応し、接着剤52が硬化することによって、遺体の傷口や治療痕等の開口部を接着することができる。
【0028】
以上説明したように、第1の実施形態に係る死後処置用品1によれば、瞬間接着剤が作用することで、遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液を確実に封止できると共に、人体の色を発色する染料を配合しているので、処置痕も目立たなくすることができる。また、第2の実施形態に係る死後処置用品11によれば、体の傷口や治療痕等の開口部を封止する際に、パッドに瞬間接着剤を塗布した後、当該絆創膏を用いて、遺体の開口部を封止することができる。また、第3の実施形態に係る死後処置用品21によれば、遺体の傷口や治療痕等の開口部を封止する際に、パッドに接着剤を塗布しなくても使用できる。さらに、第4の実施形態に係る死後処置用品31によれば、遺体の傷口や治療痕等の開口部に接着剤32を塗布後に、ヘラ33で接着剤32を延ばした後に、傷口や開口部を肌色のテープ34を貼付して、処置痕を目立たないようにする作業を迅速に行うことができる。さらにまた、第5の実施形態に係る死後処置用品41によれば、刷毛432が設けられたキャップ431を用いて遺体の傷口や治療痕等の開口部に接着剤42を迅速に塗布することができる。また、接着剤42が人体の色と見分けがつきにくい色をしているので、塗布後に、処置痕を目立たなくすることができる。さらにまた、第6の実施形態に係る死後処置用品51によれば、遺体の傷口や治療痕等の開口部に、接着剤52を直接振り掛けることにより、遺体の傷口や治療痕等の開口部から漏出する体液と接着剤52とが反応し、接着剤52が硬化することによって、遺体の傷口や治療痕等の開口部を接着することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本実施形態に係る死後処置用品は、遺体を、死によって起こる外観の変化を目立たないようにし、清潔に美しく保ち、その人らしい姿に整える用途に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0030】
11…死後処置用品
12…瞬間接着剤
13…絆創膏;131…基材;132…パッド;133…粘着剤
31…死後処置用品
32…接着剤
33…ヘラ33
34…肌色のテープ
41…死後処置用品
42…水性の接着剤
43…刷毛付き容器;431…キャップ;432…刷毛