(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124470
(43)【公開日】2022-08-25
(54)【発明の名称】レーダ試験システムの受信アンテナ及び送信アンテナの分離
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20220818BHJP
【FI】
G01S7/40 173
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022017087
(22)【出願日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】17/175,761
(32)【優先日】2021-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514046574
【氏名又は名称】キーサイト テクノロジーズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ダグラス・ファンヴィッヘレン
(72)【発明者】
【氏名】トッド・スティーヴン・マーシャル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・エス・リー
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・キリーン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ブールド
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB24
5J070AD02
5J070AF03
5J070AK28
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS106)と複数のMRTS106を備えるシステム100とが記載される。MRTS106及びシステム100は、低減された干渉でレーダのDUT102のエコー信号をエミュレートするのに有用である。
【効果】例示的なレーダ試験システムは、望ましくは、意図された(エミュレートされた)レーダターゲットを生成し、「ゴーストターゲット」をもたらす可能性がある不所望の(「ゴースト」)信号と、既知の再照射器及びそれを含むシステムの性能及び信頼性を低下させる迷走電磁放射/周囲の電磁放射とを低減する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信アンテナと、
可変利得増幅器(202)(VGA)と、
同相・直交(IQ)ミキサ(203)と、
可変減衰器(204)と、
送信アンテナと、
前記受信アンテナと前記送信アンテナとの間のクロストークを低減するようになっているアイソレーション構造と
を備える、電磁波を受信するとともに応答信号を送信するようになっている小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS(106))。
【請求項2】
可変利得増幅器、同相・直交ミキサ(203)及び可変減衰器(204)が集積回路(306)パッケージ内に配置され、前記アイソレーション構造は、前記集積回路(306)パッケージと前記送信アンテナ及び前記受信アンテナのそれぞれとの間に配置された要素を含む、請求項1に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項3】
前記要素は、
前記集積回路(306)と前記送信アンテナとの間に送信ビアフィールドを提供する第1の複数のビア(312)と、
前記集積回路(306)と前記送信アンテナとの間に配置された第1のモート(314)と、
前記集積回路(306)と前記受信アンテナとの間に受信ビアフィールドを提供する第2の複数のビア(312)と、
前記集積回路(306)と前記受信アンテナとの間に配置された第2のモート(315)と
を含む、請求項2に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項4】
前記第1の複数のビア(312)及び前記第2の複数のビア(312)のそれぞれは、電気接地に接続されている、請求項3に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項5】
前記第1の複数のビア(312)のうちの少なくともいくつかは、前記小型レーダターゲットシミュレータ(106)に誘導される電磁波の1/4波長(λ/4)~1/2波長(λ/2)だけ間隔があいている、請求項3に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項6】
前記送信アンテナ及び前記受信アンテナは、それぞれ、パッチアンテナアレイを備える、請求項1に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項7】
前記送信アンテナの上に配置された送信区画(401)と、
前記受信アンテナの上に配置された受信区画(401)と、
前記集積回路(306)の上に且つ前記送信区画と前記受信区画との間に配置された集積回路区画(405)と
を備え、蓋(400)を更に備える請求項2に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項8】
前記蓋(400)は、前記送信区画(401)と前記集積回路区画(405)との間、及び前記受信区画(401)と前記集積回路区画(405)との間に壁を備え、該壁は、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間のクロストークを低減するように電磁波を屈折させ且つ反射するようになっている、請求項7に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項9】
前記集積回路区画(405)内に配置されるとともに、前記送信アンテナと前記受信アンテナとの間のクロストークを低減するようになっている電磁波吸収材(514)を更に備える、請求項7に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【請求項10】
前記電磁波吸収材(514)はポリアイアンを含む、請求項9に記載の小型レーダターゲットシミュレータ(106)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
先進運転支援システム(ADAS:Advanced driver-assistance system)及び車両用の自律運転システム(autonomous driving system)は、例えば、ミリメートル波レーダ信号を含む検出及びレンジング(ranging:測距)電磁信号を使用する検出及び測距システムを頼みにしている。レーダ信号は、前方衝突及び後方衝突を警告するために、例えば適応クルーズコントロール(adaptive cruise control)及び自律駐車(autonomous parking)を実施するために、そして究極的には、街路及び幹線道路上で自律運転を実行するために使用される。ADASは、低コスト、及び夜間又は厳しい天候条件(例えば、霧、降雨、降雪、粉塵)において動作する能力のおかげで有望である。
【0002】
ミリメートル波は、30ギガヘルツ(GHz)~300ギガヘルツの周波数スペクトルにおける周波数での振動からもたらされる。ミリメートル波(mm波)の自動車用レーダは、既存の先進運転支援システム(ADAS)のための且つ計画された自律運転システムのための重要な技術である。ミリメートル波自動車用レーダの採用により、比較的長い波長(低い周波数)のシステムよりも優れた角度分解能が提供されることに加えて、ミリメートル波自動車用レーダを今では大量に配備することができる程度までコストが削減された。その結果、ミリメートル波自動車用レーダは、今では、先進運転支援システムにおいて長距離、中距離及び短距離の環境検知に広く使用されている。さらに、ミリメートル波自動車用レーダは、現時点で展開されている自律運転システムにおいて広く使用される可能性が高い。
【0003】
自動車用レーダが配備され得る実際の運転環境は大きく変動する可能性があり、多くのそのような運転環境は、複雑である場合がある。例えば、実際の運転環境は、多数の物体を内包する場合があり、実際の運転環境において遭遇する物体の中には、エコー信号に影響を及ぼす複雑な反射及び回折特性を有するものもある。エコー信号を誤って検知及び/又は解釈する直接の結果として、誤警告若しくは不適切な反応がトリガされるか、又はトリガされるべき警告若しくは反応がトリガされない場合があり、これにより、ひいては事故に至る可能性がある。
【0004】
したがって、自動車製造業者及び自動車用レーダ製造業者は、自動車用レーダシステムに最適に正確な性能を提供するように運転状態を電子的にエミュレートすることに意欲的である。
【0005】
単一ターゲットレーダエミュレータ(single-target radar emulator)が知られている。しかしながら、実際の運転シナリオをエミュレートするには、複数のターゲットをエミュレートする必要がある。これは、複数の再照射器(re-illuminator)の配置を通して行うことができ、それら再照射器のそれぞれが、被試験デバイス(DUT)から或る一定の距離にあるターゲットを表す。不都合なことに、或る特定の既知の再照射器は、再照射器の送信部と再照射器の受信部との間の信号の「リーク(leakage:漏洩)」によってもたらされるエラーを受けやすい。最終的に、これらのリーク信号が、DUTに誤った(「ゴースト(ghost)」)信号をもたらす可能性があり、最終的に、試験されたDUTの精度を損なう可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、必要なものは、少なくとも、上記で説明された既知のレーダエミュレータの欠点を克服する、レーダシステムが遭遇するターゲットをエミュレートする再照射器である。
【0007】
例示的な実施形態は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最も深く理解される。様々な特徴は必ずしも縮尺通りに描かれていないことを強調したい。実際には、検討を明確にするために、寸法が任意に拡大又は縮小される場合がある。適用可能で、実用的な場合にはいつでも、同じ参照番号が同じ要素を指している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】代表的な実施形態による、反射からの低減された干渉でレーダ被試験デバイス(DUT)のエコー信号をエミュレートするシステムを示す簡略ブロック図である。
【
図2】代表的な実施形態による、レーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムにおけるレーダターゲットシミュレータ(RTS:radar target simulator)のパッチアレイアンテナ(patch array antenna)の簡略ブロック図である。
【
図3】代表的な実施形態による、小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS:miniature radar target simulator)に含まれる回路基板の上面図である。
【
図4A】代表的な実施形態による、MRTSの蓋の下側の斜視図である。
【
図4B】代表的な実施形態による、上に回路基板が配置されている基部に隣接して配置された、
図4Aに示す蓋の斜視図である。
【
図4C】代表的な実施形態による、MRTSの部分断面図である。
【
図5】代表的な実施形態による、MRTSの蓋の下側の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の詳細な説明では、説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を十分に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する代表的な実施形態が記述される。代表的な実施形態の説明を不明瞭にするのを避けるために、既知のシステム、デバイス、材料、動作方法及び製造方法の説明は省略される場合がある。それにもかかわらず、当業者の理解の範囲内にあるシステム、デバイス、材料及び方法は、本教示の範囲内にあり、代表的な実施形態に従って使用される場合がある。本明細書において使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図するものでないことは理解されたい。定義される用語は、定義された用語の科学技術的な意味に加えて、本教示の技術分野において一般に理解され、受け入れられるような意味を有する。
【0010】
様々な要素又は構成要素を説明するために、本明細書において第1の、第2の、第3の等の用語が使用される場合があるが、これらの要素又は構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことは理解されたい。これらの用語は、或る要素又は構成要素を別の要素又は構成要素から区別するためにのみ使用される。したがって、以下に論じられる第1の要素又は構成要素は、本開示の教示から逸脱することなく、第2の要素又は構成要素と呼ぶことができる。
【0011】
本明細書において使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することを意図するものではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、「一つの(a、an)」及び「その(the)」という単数形の用語は、文脈上、他の意味として明確に指示される場合を除いて、単数形及び複数形の両方を含むことを意図している。さらに、「備える(comprises、comprising)」という用語及び/又は類似の用語は、本明細書において使用されるときに、言及される特徴、要素及び/又は構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、要素、構成要素及び/又はそのグループの存在又は追加を除外しない。本明細書において使用される場合、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連して列挙される項目のうちの1つ以上の項目のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0012】
別段の言及がない限り、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「接続される」、「結合される」又は「隣接する」と言われるとき、その要素又は構成要素を当該別の要素又は構成要素に直接接続又は結合することができるか、又は介在する要素又は構成要素が存在する場合があることは理解されよう。すなわち、これらの用語及び類似の用語は、2つの要素又は構成要素を接続するために、1つ以上の中間にある要素又は構成要素が利用される場合がある事例を含む。しかしながら、或る要素又は構成要素が、別の要素又は構成要素に「直接接続される」と言われるとき、これは、2つの要素又は構成要素が、任意の中間にある又は介在する要素又は構成要素を用いることなく、互いに接続される事例のみを含む。
【0013】
本開示は、それゆえ、その様々な態様、実施形態及び/又は具体的な特徴若しくはサブ構成要素のうちの1つ以上を通して、以下に具体的に言及されるような利点のうちの1つ以上を明らかにすることを意図している。説明のためであり、限定はしないが、本教示による一実施形態を十分に理解してもらうために、具体的な詳細を開示する例示的な実施形態が記述される。しかしながら、本明細書において開示される具体的な詳細から逸脱するが、本開示と矛盾しない他の実施形態も依然として、添付の特許請求の範囲内にある。さらに、例示的な実施形態の説明を不明瞭にしないように、既知の装置及び方法の説明は省略される場合がある。そのような方法及び装置は、本開示の範囲内にある。
【0014】
概して、本教示は、低減された干渉をもってレーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムにおいて有用な、小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS:miniature radar target simulator)と複数のMRTSを備えるシステムとに関する。このために、本教示のレーダ試験システムは、望ましくは、エミュレートされたレーダターゲットを生成し、「ゴーストターゲット」からの不所望の(「ゴースト」)信号と、既知の再照射器及びそれを含むシステムの性能及び信頼性を低下させる迷走(errant)電磁放射/周囲の電磁放射とを低減する。これらのゴーストターゲットは、送信アンテナと受信アンテナとの間のリーク電流と、MRTSを構成するハードウェアからの反射とを含む複数の原因からの余分なRF信号から来る可能性がある。したがって、MRTSの回路内に、入来信号が入力回路から出力回路に「リークする」多くの可能性のある経路がある。これは、各構成要素が、システムの他の部分に対する何らかの非ゼロ結合を有することになるためである。この結合は、空気を通り、基板を通り、又は電子デバイス自体を通る可能性がある。本教示のMRTS及びシステムによって実現される干渉の低減は、MRTSの送信アンテナと受信アンテナとの間のクロストーク及びリークを低減することによって実現される。有益には、このクロストークの低減により、レーダのDUTを試験するシステムの精度に最終的に影響を与える可能性がある誤ったシミュレーションの発生が低減される(例えば、「ゴースト」ターゲットの低減)。
【0015】
代表的な実施形態によれば、MRTSは電磁波を受信し応答信号を送信するようになっている。MRTSは、受信アンテナと、可変利得増幅器(VGA)と、同相・直交(IQ)ミキサと、可変減衰器と、送信アンテナと、受信アンテナと送信アンテナとの間のクロストークを低減するようになっているアイソレーション構造(isolation structure)とを備える。
【0016】
別の代表的な実施形態によれば、レーダのDUTによって送信されるレーダ信号を受信するとともに、そのレーダ信号に応答して、エミュレートされたターゲットから反射されたエミュレートされたエコー信号をレーダのDUTに送信するシステムが開示される。このシステムは、複数の小型レーダターゲットシミュレータ(MRTS)を備え、MRTSのそれぞれが、受信アンテナと、可変利得増幅器(VGA)と、同相・直交(IQ)ミキサと、可変減衰器と、送信アンテナと、受信アンテナと送信アンテナとの間のクロストークを低減するようになっているアイソレーション構造とを備える。
【0017】
図1は、代表的な実施形態による、低減された干渉(例えば、ゴーストターゲットの除去)でレーダのDUTのエコー信号をエミュレートするシステムを示す簡略ブロック図である。
【0018】
図1は、代表的な実施形態による、車両レーダを試験するシステム100を示す簡略ブロック図である。本開示の利益を享受した当業者であれば理解するように、1つのありそうな(likely)車両用レーダは、現行の及び来たるべき自動車応用において様々な能力で使用される自動車用レーダである。しかしながら、ここで説明される車両レーダを試験するシステム100は、自動車用レーダシステムに限定されず、バス、バイク、原動機付き自転車(例えば、スクータ)、及び車両用レーダシステムを利用することができる他の車両を含む、他のタイプの車両に適用することができることが強調される。
【0019】
代表的な実施形態によれば、システム100は、レーダの被試験デバイス(DUT)102を試験するように構成されている。システム100は、MRTS106のアレイを備える再照射器101を備える。
図1におけるMRTS106のアレイは、2次元であり、
図1の座標系に従ってx-y方向に延在する。さらに、再照射器101のMRTS106のアレイは、比較的平坦である場合があり、単一行アレイとして弧状に湾曲している場合があり、又は2次元で複数の列及び行のアレイで湾曲している場合がある。
【0020】
アレイのMRTS106は、
図1に示すように、横間隔p
x及び縦間隔p
yを有する。
【0021】
図2に関連して以下で説明されるように、MRTS106のそれぞれは、送信アンテナ(
図1には示されていない)と受信アンテナ(
図1には示されていない)とを備える。本明細書においてより十分に説明されるように、各エミュレートされたターゲットに対して1つのMRTS106がある。システム100は、コンピュータ112も備える。コンピュータ112は、例示的に、本明細書において説明されるコントローラ114を備える。本明細書において説明されるコントローラ114は、プロセッサ116と命令を記憶するメモリ118との組み合わせを含むことができる。プロセッサ116は、本明細書において記載されるプロセスを実施するために命令を実行する。このために、代表的な実施形態によれば、コンピュータ112は、レーダのDUT102の機能を制御することに加えて、再照射器101を制御するようになっている。より十分に以下で説明されるように、メモリ118に記憶された命令は、選択されたMRTS106の信号強度(及びそれゆえ、べき乗(power))を、コンピュータ112からMRTS106に対する駆動信号を調整することによって変更するように、プロセッサ116によって実行され、本教示により、駆動信号が弱いほど、比較的弱い応答エミュレーション信号が提供され、駆動信号が強いほど、比較的強い応答エミュレーション信号が提供される。しかしながら、とりわけ、或る特定の実施形態において、MRTS106のIQミキサへの比較的高振幅の駆動信号と、エミュレーション強度(及びそれによりエミュレートされたRCS)とは、VGAによって調整される。この手法は、(後述されるように)搬送波周波数を強化し、望ましくないゴースト信号をもたらす、IQミキサへの駆動信号を低下させることにより、所望の刺激信号の大きさを低下させるために好ましい。
【0022】
コントローラ114は、コンピュータ112又は1つ以上のコンピューティングデバイスの別のアセンブリ等のワークステーション、ディスプレイ/モニタ、及びスタンドアロンコンピューティングシステムの形態の1つ以上の入力デバイス(例えば、キーボード、ジョイスティック及びマウス)、サーバシステムのクライアントコンピュータ、デスクトップ又はタブレット内に収容又はリンクさせることができる。「コントローラ」という用語は、本開示の当該技術分野において理解されるように、及び本開示において例示的に説明されるように、本開示において説明されるような様々な原理のアプリケーションを制御する特定用途向けメインボード又は特定用途向け集積回路の全ての構造的構成を広く包含する。コントローラの構造的構成は、プロセッサ(複数の場合もある)、コンピュータ使用可能/コンピュータ可読記憶媒体(複数の場合もある)、オペレーティングシステム、アプリケーションモジュール(複数の場合もある)、周辺デバイスコントローラ(複数の場合もある)、スロット(複数の場合もある)、及びポート(複数の場合もある)を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
さらに、コンピュータ112は、合わせてネットワーク接続された構成要素を示すが、2つのこうした構成要素は、単一のシステムに統合することができる。例えば、コンピュータ112は、ディスプレイ(図示せず)及び/又はシステム100と統合することができる。すなわち、いくつかの実施形態において、コンピュータ112に帰する機能は、システム100によって実施(例えば、実行)することができる。他方、コンピュータ112のネットワーク接続される構成要素は、異なる部屋又は異なる建物に分散させること等によって空間的に分散させることができ、この場合、ネットワーク接続される構成要素は、データ接続を介して接続することができる。また別の実施形態において、コンピュータ112の構成要素のうちの1つ以上は、データ接続を介して他の構成要素に接続されず、代わりに、メモリスティック又は他の形式のメモリ等によって手動で入力及び/又は出力が与えられる。更に別の実施形態において、本明細書において説明される機能は、コンピュータ112の要素の機能に基づきながらも、システム100の外部で実行することができる。
【0024】
システム100の様々な構成要素は、以下代表的な実施形態に関連してより詳細に説明されるが、ここでは、システム100の機能の簡単な説明が提示される。
【0025】
動作時、
図1を参照すると、レーダのDUT102は、MRTS106のアレイに入射する信号(例示的に、mm波信号)を放射する。本明細書においてより十分に説明されるように、レーダのDUT102からの信号は、各MRTS106とレーダのDUT102との間の方位角(azimuth)(
図1の座標系において±x方向)と仰角(elevation)(
図1の座標系において±y方向)との両方において、距離をエミュレートするようになっているべき乗レベルで、選択的に反射される。とりわけ、受信アンテナ(図示せず)のうちの各1つにおけるそれぞれの集束点(focal point)(代替的に、焦点(foci))は、システム100によってエミュレートされるターゲットを表す。
【0026】
レーダのDUT102から信号を受信するMRTS106からの再照射された信号は、MRTS106によって選択的に変更され、レーダのDUT102に戻るように送信される。より十分に以下で説明されるように、再照射器101の特定のMRTS106からの再照射された信号は、ターゲットからのエミュレートされた反射信号としてレーダのDUT102において受信される。コンピュータ112は、レーダのDUT102の精度を更に分析するために、レーダのDUT102から信号を受信する。
図2は、代表的な実施形態による、
図1のMRTS106の簡略回路図である。代表的な実施形態に関連して説明されるMRTS106の態様は、上記で説明されたMRTS106及び遅延電子回路と共通しているものとすることができるが、それらは繰り返されない場合がある。さらに、(MRD、CMT及びピクセルと称される場合がある)MRTS106の様々な態様は、2021年1月25日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国特許出願第17/157,160号に記載されているものと同様とすることができる。米国特許出願第17/157,160号の開示全体は、特に、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。とりわけ、MRTS106のいくつかの態様は、2019年10月9日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国仮特許出願第62/912,442号、2020年5月20日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国特許出願第16/867,804号、2020年6月30日に出願された、本願と同一出願人が所有する米国仮特許出願第63/046,301号、2021年1月29日に出願された、本願と同一出願人が所有する国際出願PCU/US21/15483号に記載されているものとも同様とすることができる。米国仮特許出願第62/912,442号、米国特許出願第16/867,804号、米国仮特許出願第63/046,301号及び本願と同一出願人が所有する国際出願PCU/US21/15483号の開示全体は、特に、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。本説明を続けるうちにより明らかとなるように、サーキュレータの使用及び機能に関連する上記で援用した特許出願の態様と、MRTSにおける(信号の受信及び送信の両方のための)単一のアンテナとは、本教示に直接関係しない。
【0027】
MRTS106は、例示的に、ミキサ203の出力に接続された可変利得増幅器(VGA)である増幅器202を備えるが、増幅器202をミキサ203の入力に接続することも考えられる。ミキサ203は、同相(in-phase)(I)・直交(quadrature)(Q)ミキサ(IQミキサ)又はIQ変調器であり、これは、下記で説明される理由で、有利には、RF信号の標準的な90度の移相(phasing)を伴う単側波帯IQミキサであり、その結果、下側波帯(LSB:lower sideband)を除去した上側波帯(USB:upper sideband)、又はUSBを除去したLSBのいずれかの出力がもたらされる。代替的に、ミキサ203は、二値位相変調(BPM:binary phase modulation)、四値位相変調(QPM:quaternary phase modulation)、8位相変調、16-QAM等に適合することができる。後述するように、変調は、異なる位相シンボルの所望の程度の近似を提供するように選択される。とりわけ、振幅の近似は、当業者の知識の範囲内にある技術を使用して、ミキサ203によって行うことができる。
【0028】
代表的な実施形態の増幅器202は、2つの例示的な有益な機能を提供する。IQミキサは、変換損があることが知られており、そのため、比較的大きいレーダ反射断面積(RCS:radar cross section)を有するターゲットをエミュレートするために、増幅が必要である。さらに、VGAは、RCSを選択的に変更するのに有用である。単にI駆動及びQ駆動の強度を低下させることは望ましくなく、なぜならば、これにより強力なシフトされていない搬送波周波数信号が渡され、不所望のゴースト信号がもたらされる可能性があるためである。
【0029】
ミキサ203の出力は可変減衰器204に提供され、可変減衰器204は、ミキサ203から提供される出力信号を選択的に変更して、所望の戻り信号をレーダのDUT102に提供する。具体的には、可変減衰器204によるミキサ203からの信号の減衰は、有益には、ターゲットの所望のエミュレートされたレーダ反射断面積(RCS)を提供する。とりわけ、可変減衰器204は、任意であり、要求に応じてRCSをエミュレートするように増幅器202の寄与を越えて必要な追加の減衰を提供するために含めることができる。
【0030】
上記で示唆されたように、増幅器202及び可変減衰器204は、コンピュータ112に接続されている。メモリ118内の命令に基づき、プロセッサ116は、コンピュータ112によって可変減衰器204に提供される制御信号を実行して、受信アンテナ208においてレーダのDUT102から受信されるとともに、再照射アンテナ209からレーダのDUT102に戻される再照射された信号の所望のレベルのエミュレーションを可能にする。
【0031】
或る特定の代表的な実施形態において、受信アンテナ208及び再照射アンテナ209は、レーダのDUT102から受信される信号及びレーダのDUT102に戻される信号の波長に対して選択された、パッチアンテナ(patch antenna)又はパッチアンテナアレイである。受信アンテナ208は、可変利得を有することができ、レーダのDUT102からの到来角(AoA:angle of arrival)の自由度を調整するレンズ等のビームシェーピング要素に結合することができる。受信アンテナ208及び再照射アンテナ209に対して、ホーンアンテナ又は同様のアンテナは必須ではなく、本教示の範囲から逸脱することなく、プリントダイポールアンテナ及びキャビティ付きスロットアンテナ等の他のタイプのアンテナを組み込むことができる。
【0032】
とりわけ、一貫したレーダ反射断面積(RCS)をエミュレートするためにべき乗が使用される。RCSは、例えば、メモリ118内のテーブル内のルックアップに記憶することができる。このために、所与の距離rについて、戻り信号はRCSに比例し、1/r4として減少することが知られている。車両は、典型的には、10dBsmであるものとして引用され、当該10dBsmは測定面積に関するレーダ用語(radar speak)であり、1平方メートル(s.m.:square meter)に対して10dBであり、又は平易な表現では、10平方メートルを意味する。多くの物体が表にまとめられており(人、自転車に乗る人、建物等)、表にまとめられていない物体は、最近はレイトレーシング(ray tracing)技術によって計算することができる。本教示によって、特定の物体についての距離r(既知の1/r4レーダ減衰則に従う)及びRCSの許容値に相当するレーダのDUT102までの戻り信号強度を提供することに強調が置かれている。代表的な実施形態によれば、信号強度(及びそれゆえべき乗)は、コンピュータ112から様々な実施形態のMRTS106へのIQ駆動信号の強度を調整することによって調整され、IQ駆動信号が弱くなるほど、比較的弱いエミュレーション信号が提供される。とりわけ、或る特定の代表的な実施形態においては、コンピュータ112は、レーダのDUT102において単一の焦点に提供される一貫した戻り信号を事前計算し、コントローラ114は、その後、I駆動及びQ駆動の強度を調整して、このSSB強度を達成する。代替的に、有益には、増幅器202の利得、又は可変減衰器204による減衰、又は両方は、戻りSSB強度を制御するようにコントローラ114の作用によって調整することがきる。
【0033】
図3は、代表的な実施形態による、MRTSに含まれる回路基板300の上面図である。より十分に以下で説明されるように、回路基板300は、信号伝送線路及び接地面/接続部が選択的に配置されている多層(マルチレベル(multi-level))プリント回路基板である。
【0034】
回路基板300は、送信側301と、受信側302と、IC部305とを備える。送信側301において回路基板300の上層の上に、送信パッチアンテナアレイ303が配置されている。同様に、受信側302において回路基板300の上層の上に、受信パッチアンテナアレイ304が配置されている。上記で示唆されたように、代表的な実施形態によれば、送信アンテナはパッチアンテナアレイ303を備え、受信アンテナは受信パッチアンテナアレイ304を備える。
【0035】
回路基板300は、本教示によるMRTS106に使用される、増幅器202(
図3には示されていない)と、ミキサ203(
図3には示されていない)と、可変減衰器204(
図3には示されていない)と、他の電子構成要素(
図3には示されていない)とを備えるIC306を備える。IC306は、受信側302からの信号の受信を実施するとともに、送信側によって再送信されるように信号を提供するために必要な、回路接続部を含む。
【0036】
集積回路(IC)は、第1の接続部308により送信側301に、且つ第2の接続部310により受信側302に接続されている。第1の接続部308は、例示的に、送信パッチアンテナアレイ303に差動出力を提供し、一方、第2の接続部は、受信パッチアンテナアレイ304からICに単一の入力接続部を提供する。より十分に以下で説明されるように、第1の接続部308及び第2の接続部310は、接地面の上に配置された信号伝送線路を備える薄膜回路を備えることができる(例えば、以下、
図4Cを参照)。ICと送信パッチアンテナアレイ303との接続部、及びICと受信パッチアンテナアレイ304との接続部は、薄膜回路とワイヤボンドとの組み合わせ(例えば、以下、
図4Cを参照)を含む、複数の既知の技術のうちの1つによって作製することができる。本説明を続けるうちに理解されるように、IC306と送信パッチアンテナアレイ303との接続部、及びIC306と受信パッチアンテナアレイ304との接続部(例えば、第1の接続部308及び第2の接続部310)は、有益に、送信側301及び受信側302の物理的分離を可能にするとともに、接地(ground)に電気的に接続されているビア(via)及びモート(moat:堀)(以下で論述される)のための空間を提供することができる。代替的に、IC306と送信パッチアンテナアレイ303との接続部及びICと受信パッチアンテナアレイ304との接続部を提供する、上述した分離及び空間を提供するワイヤボンドのみの使用又は他の既知の接続技術もまた考えることができる。
【0037】
回路基板300は、(受信パッチアンテナアレイ304を備える)受信アンテナと(送信パッチアンテナアレイ303を備える)送信アンテナとの間、したがって、受信側302と送信側301との間のクロストークを低減するようになっているアイソレーション構造も備える。アイソレーション構造は、複数のビア312と、IC306と送信パッチアンテナアレイ303との間に配置された第1のモート314と、IC306と受信パッチアンテナアレイ304との間に配置された第2のモート315とを備える。さらに、第1の接続部308及び第2の接続部310が薄膜回路を備える場合、ICと送信側301との間、及びICと受信側302との間で信号を伝送する伝送線路の周囲に、第1のビア316及び第2のビア317が設けられる。最後に、送信アンテナ及び受信アンテナの周囲に、送信側ビア318及び受信側ビア320が配置されている。送信側ビア318及び受信側ビア320もまた、接地に接続され、MRTSによる信号の受信及び送信と干渉する可能性がある周囲及び他の電磁放射からの送信アンテナ及び受信アンテナのアイソレーションを促進する。
【0038】
送信側301における複数のビア312は、送信ビアフィールドを形成し、受信側302における複数のビア312は、受信ビアフィールドを形成している。複数のビア312、第1のモート314及び第2のモート315、並びに第1のビア316及び第2のビア317は、接地に電気的に接続されている。より十分に以下で説明されるように、複数のビア312、第1のモート314及び第2のモート315、並びに第1のビア316及び第2のビア317は、送信側301と受信側302との間のリーク電流(leakage current)を低減するとともに、空気、又は回路基板を通って伝送されている周囲からの迷走信号(errant signal)の伝送を低減する。様々な原因からの、回路基板300を備えるMRTSにおける不所望の信号の低減により、サーキュレータと送信及び受信用の単一のアンテナとを使用する再照射器等、既知の再照射器と比較した場合、送信側301と受信側302とのアイソレーションを著しく改善する。これは、自動車用レーダに使用されることが多い周波数(例えば、77GHz~100GHz)で特に当てはまる。
【0039】
図4Aは、代表的な実施形態による、MRTS(
図4には示されていない)の蓋400の斜視図である。
図1~
図3に関連して上記で説明された代表的な実施形態の或る特定の態様は、蓋の説明に直接関係する可能性があり、ここで説明される代表的な実施形態を不明瞭にしないために繰り返されていない場合がある。
【0040】
蓋400は、送信区画(transmit compartment)401と、受信区画(receive compartment)402と、送信区画401と受信区画402との間に配置されたIC区画又は集積回路区画(integrated circuit compartment)405とを備える。図示されるように、示されている代表的な実施形態において、IC区画405は、例示的に同じ深さを有する送信区画401又は受信区画402のいずれよりも深い(より凹みが大きい)。
【0041】
蓋400は、送信区画401とIC区画405との間、及び受信区画402とIC区画405との間に、第1の壁408を備える。蓋400は、送信区画401の外周の周囲の第2の壁410と、受信区画402の外周の周囲の第3の壁412とを備える。より十分に以下で説明されるように、第1の壁408は、有益には、代表的な実施形態のMRTSの送信側と受信側とのアイソレーションを促進するように、蓋400を備えるMRTS内の電磁波/信号の屈折及び反射のための面を提供する。第2の壁410及び第3の壁412により、電磁波が屈折するとともに反射されて、隣接するMRTS(例えば、
図1のMRTS106)の間のクロストークが低減されることになる。
【0042】
より十分に以下で説明される別の代表的な実施形態によれば、(送信区画401の真下に配置された)送信アンテナと(受信区画402の真下に配置された)受信アンテナとの間のクロストークを低減するとともに、(例えば、周囲からの)他の放射源が送信アンテナ及び受信アンテナに伝送されるのを防止するために、IC区画405内に電磁波吸収材を配置することができる。とりわけ、電磁波吸収材は任意選択的である。電磁波吸収材が設けられていない場合、IC区画405における第1の壁408が、蓋400を備えるMRTS内のクロストークの低減に役立つように、電磁波の反射及び屈折のための面を提供する。しかしながら、電磁波吸収材が設けられているか否かに関わらず、IC区画405が設けられ、第1の壁408は有益に、蓋400を備えるMRTS内に不所望の放射の反射及び屈折のための面を提供する。対照的に、IC区画405が設けられていない場合、第1の壁は存在せず、不所望の放射は蓋400の(上面の内側の)底部から反射し、MRTSのIC427、薄膜接続部、アンテナ及び他の構成要素まで放射する。これらの反射/屈折により、MRTS内の不所望の干渉/クロストークが増大し、性能に対して不所望の影響が及ぼされる可能性がある。本教示によれば、IC区画405の第1の壁408により、蓋400を備えるMRTS内において異なる入射角で電磁信号が反射され且つ屈折することになり、送信区画401のアンテナと受信区画402のアンテナとが更にアイソレーションされ、したがって、蓋400を備えるMRTSパッケージ内のTX/RXアイソレーションが改善される。蓋400は、回路基板300(
図4Aには示されていない)及びIC(
図4Aには示されていない)を備える基板(
図4Aには示されていない)又は基部(
図4Aには示されていない)に接続されるようになっている。蓋400は、基板に接合され、送信区画401、受信区画402及びIC区画405内に配置されたMRTSの様々な構成要素を保護する密封シール(hermetic seal)を提供する。
【0043】
代表的な実施形態によれば、蓋400に企図されている材料は、有益に、関心周波数における比較的低い損失正接(loss tangent)と、比較的低い比誘電率(例えば、εr<4)とを有する。同様に、蓋400の厚さは、送信信号及び受信信号の誘電体波長の1/2(λr/2)に実質的に等しいように選択され、誘電体波長は、自由空間波長を比誘電率の平方根で割った値である(すなわち、λr=λ/√εr)。有益には、蓋400の厚さは、信号が蓋400を通って放射する際に、送信アンテナ及び受信アンテナの放射特性(利得/方向)を保存するように有益に選択される。半分の誘電体波長は、蓋400の誘電体を通る実質的に最大の信号伝播を提供する。とりわけ、DUTとMRTSとの間で信号が伝播する、空気εr=1と蓋(例えば、εr=3)界面との間に比誘電率(εr)境界(barrier)がある。空気及び蓋の比誘電率の差が大きいほど(例えば、1:10対1:3)、蓋/空気界面における反射の度合いが大きくなる。
【0044】
図4Bは、代表的な実施形態による、上に回路基板420が配置されている基部440に隣接して配置された、
図4Aに示されている蓋400の斜視図である。
図1~
図4Aに関連して上記で説明された代表的な実施形態の或る特定の態様は、蓋、基部440及び回路基板の様々な態様の説明と密接に関係することができ、ここに記載されている代表的な実施形態を不明瞭にしないために繰り返されていない場合がある。
【0045】
回路基板420は、送信側421と、受信側422と、IC部425とを備える。送信側421において回路基板420の上層の上に、送信パッチアンテナアレイ423が配置されている。同様に、受信側4222において回路基板420の上層の上に、受信パッチアンテナアレイ424が配置されている。上述されたように、代表的な実施形態によれば、送信アンテナはパッチアンテナアレイ423を備え、受信アンテナは受信パッチアンテナアレイ424を備える。
【0046】
上記で示唆されたように、IC427が、IC427を受容するようになっている回路基板420の部分の上に配置されており、IC427は、本教示によるMRTS106で使用される、増幅器と、ミキサと、可変減衰器と、他の電子構成要素とを備える。上記部分は、受信側422からの信号の受信を実施するとともに、送信側421による再送信のために信号を提供するために必要な、回路接続部を含む。
【0047】
IC427は、第1の接続部428によって送信側421に、且つ第2の接続部430によって受信側422に接続されている。第1の接続部428は、例示的に、送信パッチアンテナアレイ423に差動出力を提供し、一方、第2の接続部430は、受信パッチアンテナアレイ424からIC427への単一の入力接続部を提供する。上述されたように、且つより十分に以下で説明されるように、第1の接続部428及び第2の接続部430は、接地面の上に配置された信号線を有する信号伝送線路を備える薄膜回路を備えることができる(例えば、以下、
図5を参照)。上述されたように、IC427と送信パッチアンテナアレイ423との間の接続部、及びIC427と受信パッチアンテナアレイ424との間の接続部は、薄膜接続部とともにワイヤボンドを含む(例えば、以下、
図4Cを参照)、又は上述された他の好適な電気接続部を含む、複数の既知の技術のうちの1つによって作製することができる。この場合もまた、選択された電気接続部は、有益に、上述されたように、好適な電気接続部、送信側及び受信側の分離(separation)、並びにビア及びモートのための空間を提供する。
【0048】
回路基板420は、(受信パッチアンテナアレイ424を備える)受信アンテナと(送信パッチアンテナアレイ423を備える)送信アンテナとの間、したがって、受信側422と送信側4211との間のクロストークを低減するようになっているアイソレーション構造も備える。アイソレーション構造は、複数のビア432と、上にIC427が配置されている部分(
図4Bでは不可視)と送信パッチアンテナアレイ423との間に配置された第1のモート434と、上記部分(及びそれゆえIC427)と受信パッチアンテナアレイ424との間に配置された第2のモート436とを備える。さらに、第1の接続部308及び第2の接続部310が薄膜回路を備える場合、IC427と送信側421との間、及びIC427と受信側4222との間で信号を伝送する伝送線路の周囲に、第1のビア(例えば、第1のビア316)(
図4Bには示されていない)及び第2のビア(例えば、第2のビア317)(
図4Bには示されていない)が設けられる。最後に、送信アンテナ及び受信アンテナの周囲に、送信側ビア(例えば、318)(
図4Bには示されていない)及び受信側ビア(例えば、320)(
図4Bには示されていない)を配置することができる。送信側ビア及び受信側ビアもまた、接地に接続され、MRTSによる信号の受信及び送信と干渉する可能性がある周囲及び他の電磁放射からの送信アンテナ及び受信アンテナのアイソレーションを促進する。
【0049】
送信側420における複数のビア432は、送信側ビアフィールドを形成し、受信側422における複数のビア432は、受信側ビアフィールドを形成している。複数のビア432、第1のモート434及び第2のモート436、並びに第1のビア及び第2のビア(例えば、314、316、
図4Bには示されていない)は、接地に電気的に接続されている。複数のビア432、第1のモート434及び第2のモート436、並びに第1のビア及び第2のビアは、送信側421と受信側422との間のリーク電流を低減するとともに、空気、又は回路基板を通って伝送されている周囲からの迷走信号の伝送を低減する。様々な原因からの、回路基板400を備えるMRTSにおける不所望の信号の低減により、サーキュレータと送信及び受信用の単一のアンテナとを使用する再照射器等、既知の再照射器と比較した場合、送信側421と受信側422とのアイソレーションを著しく改善する。これは、自動車用レーダに使用されることが多い周波数(例えば、77GHz~100GHz)で特に当てはまる。とりわけ、これらの比較的高い周波数では、サーキュレータと送信及び受信用の単一のアンテナとを含む或る特定の既知の再照射器は、受信構成要素と送信構成要素との間におよそ20dBのアイソレーションを、比較的高いコストで提供する。対照的に、これらの比較的高い周波数で、ここに記載されている代表的な実施形態のMRTSは、およそ45dBの送信側421と受信側422との間のアイソレーションを提供する。さらに、上述されたように、第1の壁408、第2の壁410及び第3の壁412は、有益に、代表的な実施形態のMRTSの送信側421と受信側422とのアイソレーションを促進するように、電磁波/信号の屈折及び反射のための面を提供する。
【0050】
図4Cは、代表的な実施形態によるMRTS480の部分断面図である。MRTS480は、代表的な実施形態により、蓋400が、上に回路基板420が配置されている多層基板450の上に配置されているパッケージ化状態で示されている。
図1~
図4Bに関連して上記で説明された代表的な実施形態の或る特定の態様は、MRTS480の様々な態様の説明と密接に関連することができ、ここで記載されている代表的な実施形態を不明瞭にしないために繰り返されていない場合がある。
【0051】
図4Cは、送信区画401が、送信区画401とIC区画405との間、及び受信区画402とIC区画405との間の第1の壁408を備えることを示す。上述されたように、第1の壁408は、有益に、代表的な実施形態のMRTSの送信側と受信側とのアイソレーションを促進するように、電磁波/信号の屈折及び反射のための面を提供する。さらに、より十分に下記で説明される別の代表的な実施形態によれば、IC区画405内に電磁波吸収材(
図4Cには示されていない)を配置することができる。
【0052】
回路基板420は、送信側421と、受信側422と、IC部425とを備える。送信側421において回路基板420の上層の上に、送信パッチアンテナアレイ423(
図4Cには示されていない)が配置されている。同様に、受信側422において回路基板420の上層の上に、受信パッチアンテナアレイ424(
図4Cには示されていない)が配置されている。上述されたように、代表的な実施形態によれば、送信アンテナはパッチアンテナアレイ423(
図4Cには示されていない)を備え、受信アンテナは受信パッチアンテナアレイ424(
図4Cには示されていない)を備える。
【0053】
上記で示唆されたように、IC427が、IC427を受容するようになっている部分の上に配置されており、IC427は、本教示によるMRTS480で使用される、増幅器と、ミキサと、可変減衰器と、他の電子構成要素とを備える。上記部分は、受信側422からの信号の受信を実施するとともに、送信側421による再送信のために信号を提供するために必要な、回路接続部を含む。
【0054】
IC427は、第1の接続部428によって送信側421に、且つ第2の接続部430によって受信側422に接続されている。第1の接続部428は、例示的に、送信パッチアンテナアレイ423に差動出力を提供し、一方、第2の接続部430は、受信パッチアンテナアレイ424からIC427への単一の入力接続部を提供する。上述されたように、第1の接続部428及び第2の接続部430は、接地面の上に(薄膜構成要素の下面側に)配置された信号線466を有する信号伝送線路を備える薄膜回路を備えることができ、薄膜回路は、それぞれ第1のモート434及び第2のモート436への接触を通して接地に電気的に接触する、第1の接続部428及び第2の接続部430を形成する。さらに、第1の接続部428及び第2の接続部430内に、接地に電気的に接続されているビア464(例えば、第1のモート434及び第2のモート436への接続部)を設けることができる。ビア464は、有益に、受信側422及び送信側421それぞれからの電子干渉からの、及び他の原因(例えば、迷走電磁放射及び周囲の電磁放射によってもたらされる電流のリーク(current leakage))からの電磁干渉からの送信パッチアンテナアレイ423及び受信パッチアンテナアレイ424のアイソレーションを更に改善する。
【0055】
さらに、ワイヤボンド467を使用して、上にIC427(
図4Cには示されていない)が配置されている部分への接続部を介して、送信パッチアンテナアレイ423及び受信パッチアンテナアレイ424とIC427との接続を実施することができる。とりわけ、ワイヤボンド接続のみの代わりに、第1の接続部428及び第2の接続部430を先行させることができる。代替的に、第1の接続部428及び第2の接続部430のみを介して、送信パッチアンテナアレイ423及び受信パッチアンテナアレイ424とIC427とを接続することができる。
【0056】
MRTS480は、複数のビア432と、ビア464と、第1のモート434と、第2のモート436とを備える、アイソレーション構造を更に備える。とりわけ、上記で説明されたビア312と同様に、複数のビア432は、有益に、送信パッチアンテナアレイ423と受信パッチアンテナアレイ424との間の、及びMRTS480による信号の受信及び送信と干渉する可能性がある周囲及び他の電磁放射からの信号の伝送を低減する。
【0057】
多層基板450は、レーダ技術分野における当業者によって既知の構造である多層回路基板である。上記で説明された蓋400と同様に、多層基板は、有益に、関心周波数での低い損失正接と、比較的低い比誘電率とを提供する。多層基板450は、第1の導電層452の上に配置された第1の誘電体層453と、第1の誘電体層453の上に配置された第2の誘電体層454と、第2の誘電体層454の上に配置された第2の導電層455と、第4の誘電体層456の上に配置された第3の導電層457とを備える。
【0058】
さらに、多層基板450は、当業者であれば既知であるように、多層基板の様々な層において信号線と接地面/接続部との間の選択的な電気接続を提供するようになっている、層間ビア458を備える。とりわけ、層間ビア458等の接続部を通して、第1の導電層452、第2の導電層455及び第3の導電層457は、IC427並びに送信パッチアンテナアレイ423及び受信パッチアンテナアレイ424への/からの信号の伝送を実施する、信号伝送線路及び接地面を提供することができる。さらに、第1の導電層452、第2の導電層455及び第3の導電層457は、例えば、ビア432及びビア464に対する接地への経路を提供するように、接地に選択的に接続することができる。
【0059】
図5は、代表的な実施形態によるMRTS(
図5には示されていない)の蓋500の斜視図である。
図1~
図4Cに関連して上記で説明された代表的な実施形態の或る特定の態様は、蓋の説明に密接に関係することができ、ここで記載されている代表的な実施形態を不明瞭にしないために繰り返されていない場合がある。とりわけ、代表的な実施形態によれば、蓋500は、蓋400と同様に実施することができる。
【0060】
蓋500は、送信区画501と、受信区画502と、送信区画501と受信区画502との間に配置されたIC区画(
図5では不可視)とを備える。図示されるように、示されている代表的な実施形態において、IC区画は、例示的に同じ深さを有する送信区画501又は受信区画502のいずれよりも深い(より凹みが大きい)。
【0061】
蓋500は、送信区画501とIC区画との間、及び受信区画502とIC区画との間に、第1の壁508を備える。同様に、蓋500は、送信区画501の外周の周囲の第2の壁510と、受信区画502の外周の周囲の第3の壁512とを備える。上記で説明されたように、第1の壁508は、有益に、代表的な実施形態のMRTSの送信側と受信側とのアイソレーションを促進するように、蓋500を備えるMRTS内の電磁波/信号の屈折及び反射のための面を提供する。第2の壁510及び第3の壁512により、電磁波が屈折するとともに反射されて、隣接するMRTS(例えば、
図1のMRTS106)の間のクロストークが低減されることになる。さらに、より十分に後述される別の実施形態によれば、(送信区画501の真下に配置された)送信アンテナと(受信区画502の真下に配置された)受信アンテナとの間のクロストークを低減するとともに、(例えば、周囲からの)他の放射源が送信アンテナ及び受信アンテナに伝送されるのを防止するために、IC区画内に電磁波吸収材514が配置される。ポリアイアン(polyiron)に加えて、複数の既知の材料が、電磁波吸収材514として使用されることが考えられる。これらには、Cuming Microwave社(マサチューセッツ州、エイヴォン)によって提供されるEccosorb(登録商標)製品、Laird Performance Materials Corporationによる同様の製品が挙げられるが、それらに限定されない。様々な実施形態において、ポリアイアンは、そのコンパクト性及び経時的な使用による組成の完全性に起因して選択される。
【0062】
蓋500は、回路基板300(
図5には示されていない)とIC(
図5には示されていない)とを備える基板(
図5には示されていない)又は基部(
図5には示されていない)に接続されるようになっている。蓋500は、基板に接合され、送信区画501、受信区画502及びIC区画内に配置されたMRTSの様々な構成要素を保護する密封シールを提供する。
【0063】
上述されたように、これらの比較的高い周波数では、サーキュレータと送信及び受信用の単一のアンテナとを含む或る特定の既知の再照射器は、受信構成要素と送信構成要素との間におよそ20dBのアイソレーションを、比較的高いコストで提供する。対照的に、これらの比較的高い周波数で、ここに記載されている代表的な実施形態のMRTSは、およそ60dBの送信側421と受信側422との間のアイソレーションを提供する。さらに、上述されたように、第1の壁508、第2の壁510及び第3の壁512は、有益に、代表的な実施形態のMRTSの送信側421と受信側422とのアイソレーションを促進するように、電磁波/信号の屈折及び反射のための面を提供する。
【0064】
本発明は、図面及び上記説明に詳細に図示及び説明されてきたが、そのような説明図及び説明は、例示又は模範とみなされるべきであり、限定とみなされるべきではなく、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、請求項に係る発明を実施する際に、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討により、開示される実施形態に対する他の変形形態を理解し、それを行うことができる。特許請求の範囲において、「を含む」という単語は他の要素又はステップを排除せず、不定冠詞「一つの("a" or "an")」は複数形を排除しない。或る特定の手段が互いに異なる複数の従属請求項に列挙されているだけであれば、それらの手段を組み合わせて有利に使用することができないことは示されていないものとする。
【0065】
本発明の態様は、装置、方法又はコンピュータプログラム製品として具現化することができる。したがって、本発明の態様は、全体がハードウェアの実施形態、全体がソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)、又はソフトウェアの態様及びハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形を取ることができる。これらは全て、本明細書において、「回路」、「モジュール」又は「システム」と総称される場合がある。さらに、本発明の態様は、コンピュータ実行可能コードが具現化された1つ以上のコンピュータ可読媒体に具現化されるコンピュータプログラム製品の形を取ることができる。
【0066】
代表的な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者であれば、本教示に従った多くの変形形態が可能であり、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることが分かる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを除いて限定されるものではない。
【外国語明細書】