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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012448
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/70 20060101AFI20220107BHJP
   F04D 29/42 20060101ALI20220107BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F04D29/70 N
F04D29/42 H
F04D29/42 M
B60H1/00 102F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114279
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】512025676
【氏名又は名称】マーレベーアサーマルシステムズジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】清水 巧実
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 充紀
【テーマコード(参考)】
3H130
3L211
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB07
3H130AB13
3H130AB26
3H130AB45
3H130AC11
3H130AC13
3H130BA32A
3H130BA33G
3H130BA46A
3H130BA46G
3H130BA88A
3H130BA88G
3H130CA01
3H130CA06
3H130CA27
3H130DA02Z
3H130DD01X
3H130DG02X
3H130DG03X
3H130EB01A
3H130EB02A
3L211BA23
3L211DA03
(57)【要約】
【課題】送風機において、ケーシングの外部に付着した水の冷却用通路への浸入を確実に防止する。
【解決手段】送風機10において、ケーシング16は、ファン14の軸方向に分割自在な上部ケース部30及び下部ケース部32からなり、前記上部ケース部30には、送風通路34の内周側の一部を構成する第1通路部42と、前記吸入口38の外周側に隣接し下部ケース部32側へと窪んで水を貯留可能な貯留部50と、前記送風通路34とを連通する排水口58とを備えている。一方、下部ケース部32は、送風通路34の内周側の一部を構成する第2通路部62を有し、該第2通路部62に第1及び第2冷却通路84、86へ空気を取り込むための空気取入口72が開口すると共に、前記第2通路部62の内周壁62aが前記第1通路部42の内周壁42cに対して前記送風通路34から離間する方向へオフセットして凹部70が形成される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングの内部に収納され軸方向に吸入した空気を径方向へ送風するファンと、前記ケーシングに収納され前記ファンを駆動させる駆動源とを備え、前記ケーシングに、前記ファンの外周側に形成される渦巻状の通路と、前記通路の巻き終わり側端部に開口する吐出部と、前記通路と連通し前記空気の一部を取り込んで前記駆動源側へと供給するための冷却用通路とを有し、前記通路側に開口した取り込み口を通じて前記冷却用通路内に前記空気が導入される送風機において、
前記ケーシングは、前記ファンの軸方向に分割自在な第1及び第2ケース部からなり、軸方向一方側となる前記第1ケース部に前記空気を外部から内部へと取り込む吸入開口が形成され、軸方向他方側となる前記第2ケース部に前記冷却用通路が形成されると共に、
前記第1ケース部は、前記通路の内周側の一部を構成する第1通路壁と、前記吸入開口の外周側に設けられ軸方向他方側へと窪んだ空間部と前記通路とを連通する排水口とを備え、
前記第2ケース部は、前記通路の内周側の一部を構成する第2通路壁を有し、該第2通路壁に前記取り込み口が開口すると共に、前記第2通路壁の少なくとも一部が前記第1通路壁に対して前記通路から離間する方向へオフセットして形成される、送風機。
【請求項2】
請求項1記載の送風機において、
前記排水口は、前記空間部の重力方向下方となる底壁及び前記第1通路壁の少なくともいずれか一方に開口している、送風機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の送風機において、
前記排水口は、前記第1ケース部の軸方向端部と前記第2ケース部の軸方向端部とが接続される前記ケーシングの接続部に対して前記軸方向一方側へ離間して配置される、送風機。
【請求項4】
請求項2又は3記載の送風機において、
前記第1ケース部には、前記排水口に臨み、少なくとも該排水口から前記第2ケース部側に向かって延在する案内壁を備える、送風機。
【請求項5】
請求項4記載の送風機において、
前記案内壁は、前記第1通路壁と略同一面となるように軸方向に沿って延在し、且つ、前記軸方向他方側の端部が前記接続部よりも重力方向下方となるように形成される、送風機。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の送風機において、
前記排水口は、前記取り込み口に対して前記通路の上流側に離間して配置されると共に、前記取り込み口が、前記通路において前記吐出部の近傍に設けられる、送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は送風機に関し、一層詳細には、車両に搭載される空調装置に使用される送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置には、内気又は外気を取り込むファンと、前記ファンを回転させるモータと、前記ファンの収納されるケーシングとから構成される遠心式の送風機が採用されている。
【0003】
このような送風機は、例えば、特許文献1に開示されるように、内部に空気の流れる通風路を有したケーシングと、該ケーシングの内部に収納されるファンと、該ファンを回転駆動させるモータとを備え、前記ケーシングがモータの回転軸方向に分割自在な上部ケーシングと下部ケーシングとからなり、前記送風機は、上部ケーシングにおいて上側ベルマウス部の外側に落下した水を前記通風路へと導く排水経路と、前記モータを冷却するための空気を導く冷却風経路とを有している。
【0004】
そして、排水経路は、上部ケーシングと下部ケーシングとに跨るように通風路の側壁に開口し、冷却風経路は、前記通風路の側壁において前記排水経路の上流側に所定距離だけ離れるように開口している。このように、冷却風経路を、通風路において排水経路よりも上流側に配置することで、該排水経路から排出された水が前記冷却風経路へと浸入してしまうことを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-200806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した送風機では、排水経路が上部ケーシングと下部ケーシングとに跨るように側壁に開口しているため、該排水経路から通風路へと水が排出される際、毛細管現象によって前記上部ケーシングと前記下部ケーシングとの合わせ面に生じた隙間へと水が吸い込まれ、該隙間を伝って移動することで隣接配置された冷却風経路の開口部位から内部へと吸い込まれてしまうことがある。このように、冷却風経路から内部へと吸い込まれた水がモータ側へと移動することで、該モータが被水して動作不良等を引き起こすことが懸念される。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、ケーシングの外部に付着した水の冷却用通路への浸入を確実に防止することが可能な送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、ケーシングと、ケーシングの内部に収納され軸方向に吸入した空気を径方向へ送風するファンと、ケーシングに収納されファンを駆動させる駆動源とを備え、ケーシングに、ファンの外周側に形成される渦巻状の通路と、通路の巻き終わり側端部に開口する吐出部と、通路と連通し空気の一部を取り込んで駆動源側へと供給するための冷却用通路とを有し、通路側に開口した取り込み口を通じて冷却用通路内に空気が導入される送風機において、
ケーシングは、ファンの軸方向に分割自在な第1及び第2ケース部からなり、軸方向一方側となる第1ケース部に空気を外部から内部へと取り込む吸入開口が形成され、軸方向他方側となる第2ケース部に冷却用通路が形成されると共に、
第1ケース部は、通路の内周側の一部を構成する第1通路壁と、吸入開口の外周側に設けられ軸方向他方側へと窪んだ空間部と通路とを連通する排水口とを備え、
第2ケース部は、通路の内周側の一部を構成する第2通路壁を有し、第2通路壁に取り込み口が開口すると共に、第2通路壁の少なくとも一部が第1通路壁に対して通路から離間する方向へオフセットして形成される。
【0009】
本発明によれば、内部にファンが回転自在に収納されるケーシングを有した送風機において、ケーシングが、ファンの軸方向に分割可能な第1及び第2ケース部からなり、この第1ケース部には、空気を内部に取り込むための吸入開口と、空気の流れる通路における内周側の一部を構成する第1通路壁と、吸入開口の外周側に設けられ軸方向他方側へと窪んだ空間部と通路とを連通する排水口とを備えている。一方、第2ケース部には、空気の流れる通路と連通し空気の一部を取り込んで駆動源側へと供給するための冷却用通路が形成され、通路の内周側の一部を構成する第2通路壁には、冷却用通路と連通した取り込み口が開口している。そして、第2通路壁の少なくとも一部が、第1通路壁に対して通路から離間する方向へオフセットして形成されている。
【0010】
従って、第2ケース部における第2通路壁の少なくとも一部を、第1ケース部における第1通路壁に対して通路から離間する方向へとオフセットさせることで、ケーシングの空間部を第2ケース部に対して相対的に通路側となるように配置することができる。そのため、通路側に突出した第1ケース部における空間部の底部を切り欠くことで、ケーシングの外側に付着して空間部に貯留された水を通路側へと排出するための排水口を形成することができる。
【0011】
その結果、取り込み口の開口した第2通路壁を第1通路壁に対してオフセットさせ、排水口よりも取り込み口を通路に対して窪ませることで、排水口から排出された水が取り込み口から冷却用通路へと浸入してしまうことが防止され、水の浸入に起因した駆動源の被水を確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0013】
すなわち、ファンの軸方向に分割自在な第1及び第2ケース部からなるケーシングを有した送風機において、冷却用通路と連通する取り込み口を有した第2ケース部の第2通路壁を、第1ケース部の空間部と連通する排水口が開口した第1ケース部の第1通路壁に対し、通路から離間する方向へとオフセットさせている。
【0014】
そのため、第2ケース部に対して通路側へと相対的に突出した第1ケース部の空間部の一部を切り欠くことで、ケーシングの外側に付着して空間部に貯留された水を通路側へと排出するための排水口を形成することができると共に、排水口から排出された水の取り込み口から冷却用通路への浸入を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係る送風機の全体平面図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】ケーシングの吐出口近傍における送風通路の内周壁を示す拡大側面図である。
図6図5に示す吐出口近傍の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る送風機について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
この送風機10は、図1図3に示されるように、モータ等からなる駆動源12と、該駆動源12の駆動作用下に回転するファン14と、該ファン14を収納すると共に渦巻状の送風通路(通路)34を有したケーシング16と、該ケーシング16の下部に設けられ前記駆動源12を保持するハウジング18とを含む。なお、ここでは、送風機10が車両に搭載された状態において、ファン14の軸線が上下方向(図2中、矢印A、B方向)となり、前記ファン14が上方(矢印A方向)に配置され、駆動源12が前記ファン14に対して下方(矢印B方向)に配置されて用いられる場合について説明する。
【0018】
駆動源12は、例えば、ケーシング16の略中央下部に設けられ、その回転軸20が軸方向(図2中、矢印A方向)に沿って延在し、前記ケーシング16内へ突出してナット22を介してファン14の中央部に連結される。
【0019】
ファン14は、ケーシング16の略中央に収納され、周方向に沿って等間隔離間した複数のブレード24と、該ブレード24の上端部に設けられた環状のシュラウド26と、前記ブレード24の下端部に設けられたボス部28とを備える。ボス部28は、図2に示されるように、ブレード24に接続された外縁部から径方向内側に向かって上方(矢印A方向)へ向けて傾斜するように形成され、その軸中心には、駆動源12の回転軸20がナット22によって連結される。すなわち、ファン14が駆動源12の回転軸20と同軸となるように連結される。
【0020】
そして、図2に示されるように、駆動源12の駆動作用下にファン14が回転することで上方に開口したシュラウド26から内側に取り込まれた空気がボス部28に沿って下方且つ外周側へと導かれた後、各ブレード24の間を通じて外周側へと送出される。
【0021】
ケーシング16は、例えば、樹脂製材料からなり上下方向(矢印A、B方向)に分割自在な上部ケース部(第1ケース部)30及び下部ケース部(第2ケース部)32から構成され、該下部ケース部32の下部中央には、駆動源12を保持可能なハウジング18が接続される。換言すれば、ケーシング16は、ファン14における回転軸20の軸方向に分割自在に形成される。
【0022】
上部ケース部30は、下部ケース部32側(矢印B方向)に向かって開口し、送風通路34の一部を構成しファン14の収納される本体部36と、該本体部36の上部に設けられ吸入口(吸入開口)38を有した開口部40とを備える。
【0023】
本体部36は、送風通路34の一部を構成する第1通路部42を有し、該第1通路部42は、例えば、断面矩形状に形成され、その外周壁が巻き始めC1から巻き終わりC2に向かって徐々に径方向外側へ離れるように螺旋状に形成される(図3参照)。そして、第1通路部42の巻き終わりC2には、該巻き終わりC2から接線方向に向かって直線状に延在し端部が開口した第1吐出部44が形成される。
【0024】
また、本体部36の内部には、第1通路部42の内周側となる位置にファン14が回転自在に収納されている。
【0025】
開口部40は、図1及び図2に示されるように、例えば、送風機10の搭載される車両において、外気を取り込むためのダクト等に接続され、図1に示されるケーシング16の分割方向から見て4枚の外壁46によって囲まれた断面略矩形状に形成され、隔壁54によって本体部36に対して上方(矢印A方向)に分離される。そして、隔壁54の中央には吸入口38が開口し、該吸入口38は、例えば、略円形状に開口し、開口部40と本体部36の内部とを連通させると共に、その外縁部には内側に向かって折り返されたベルマウス48が形成される。
【0026】
また、上部ケース部30には、ベルマウス48の外周側となり、且つ、第1通路部42における巻き始めC1の外周側と第1吐出部44の内側との間となる位置に貯留部(空間部)50が設けられる(図3参照)。
【0027】
この貯留部50は、図1図6に示されるように、上部ケース部30においてベルマウス48の外側に落下する水W(図4参照)を一時的に貯留する目的で設けられ、図1及び図3に示される前記上部ケース部30を上方から見て、開口部40の外壁46、第1通路部42の巻き始め外周壁42a、巻き終わり内周壁42b、前記巻き始め外周壁42aと前記巻き終わり内周壁42bとを接続する舌部51、前記外壁46に対して略直交して前記巻き始め外周壁42aまで延在する接続壁53によって囲まれており、上方(矢印A方向)に向かって開放されている(図2参照)。
【0028】
また、貯留部50の底部(底壁)50aは、図2図4図6に示されるように、隔壁54に対して本体部36側(矢印B方向)となるようにオフセットし、該隔壁54よりも深くなるように凹状に形成されると共に、下部ケース部32に接続される上部ケース部30の第1接続端52よりも所定距離だけ上方(矢印A方向)となるように形成されている。
【0029】
そして、貯留部50の底部50aには、下部ケース部32側(矢印B方向)に向かって開口した第1排水孔55が形成され、該第1排水孔55に臨む第1通路部42の内周壁(第1通路壁)42cには第2排水孔56が開口している。第1及び第2排水孔55、56は、貯留部50に貯留された水Wを排出するための排水口58となり、送風通路34と連通すると共に上部ケース部30の第1接続端52に対して上方(矢印A方向)となる位置にそれぞれ開口している。第1排水孔55は、図3に示されるように、例えば、送風通路34から離間する方向に向かって断面略半円状に切り欠かれて形成され、第2排水孔56は、図5に示される送風通路34側から見て、断面略矩形状に切り欠かれて形成される。
【0030】
また、図3図6に示されるように、本体部36における第1通路部42の内周壁42cには、第1及び第2排水孔55、56に臨んで上流側(図5及び図6中、矢印C方向)に隣接する位置に案内板(案内壁)60が形成される。案内板60は、内周壁42cと一体に形成され、下方(矢印B方向)に向かって延在している。すなわち、案内板60は、第1通路部42の内周壁42cに沿って形成されている。
【0031】
この案内板60の下端60aは、図5及び図6に示されるように、上部ケース部30の第1接続端52よりも重力方向下方(矢印B方向)となるように形成されると共に、排水口58側、すなわち、第1通路部42の下流側(図5及び図6中、矢印D方向)がより下方(矢印B方向)となるように斜めに形成されている。
【0032】
下部ケース部32は、図1図6に示されるように、上部ケース部30側(矢印A方向)に向かって開口し、送風通路34の一部を構成しファン14の収納される第2通路部62と、下方中央に開口してハウジング18が接続される保持孔64とを備えている。
【0033】
第2通路部62は、第1通路部42と同様に、例えば、断面矩形状に形成され、その外周壁が巻き始めC1から巻き終わりC2に向かって徐々に径方向外側へ離れるように螺旋状に形成される(図3参照)。この第2通路部62の巻き終わりC2には、該巻き終わりC2から接線方向に向かって直線状に延在し端部が開口した第2吐出部66が形成される。
【0034】
そして、第2通路部62は、図2に示されるように、下部ケース部32と上部ケース部30とが上下方向(矢印A、B方向)に接続されることで、第1通路部42に臨むように配置されて送風通路34を構成する。また、第2吐出部66は、上部ケース部30の第1吐出部44と合わさることで上下方向(矢印A、B方向)に長尺な断面長方形状に開口した吐出口68となる。
【0035】
また、第2通路部62は、第2吐出部66近傍となる内周壁(第2通路壁)62aが第1通路部42の内周壁42cに対して径方向内側、すなわち後述するチャンバー76側(図4及び図6中、矢印E方向)に窪んだ凹部70を備える。凹部70は、図4図6に示されるように、第2通路部62の内周壁62aと略平行で、送風通路34から離間する方向に所定距離だけ第1通路部42の内周壁42cに対してオフセットして形成されると共に、上下方向(矢印A、B方向)に所定高さとなるように断面略長方形状に形成されている。
【0036】
そして、第2通路部62の内周壁62aには、図3図6に示されるように、凹部70において第2吐出部66近傍となる位置に空気取入口(取り込み口)72が開口し、後述するチャンバー76と送風通路34とを連通させている。空気取入口72は、上下方向(矢印A、B方向)に長尺なスリット状に形成され、下部ケース部32の第2接続端74に対して下方(矢印B方向)へと延在すると共に、上部ケース部30の排水口58よりも下流側(図5及び図6中、矢印D方向)で開口している。
【0037】
換言すれば、図4に示されるように、第2通路部62の内周壁62aに対し、第1通路部42の内周壁42cを含む貯留部50が送風通路34側へ突出するように設けられ、該貯留部50における前記送風通路34側、且つ、第2通路部62側(矢印B方向)となる底部50aの角部を切り欠くことで、第1及び第2排水孔55、56からなる排水口58が形成されている。
【0038】
また、下部ケース部32には、図3に示されるように、第2通路部62における巻き始めC1の外周側と第2吐出部66の内側との間にチャンバー76が設けられ、該チャンバー76は、例えば、所定容積を有した空間であり、空気取入口72を介して該送風通路34と連通すると共に、下方(矢印B方向)が底部76aによって覆われている(図2及び図4参照)。
【0039】
そして、チャンバー76には、図2及び図4に示されるように、その底部76aに対して上下方向(矢印A、B方向)に立設するように筒状の空気導入管78が形成され、該チャンバー76と該チャンバー76の下部に設けられるハウジング18の後述する第1及び第2冷却通路84、86とを連通する。
【0040】
ハウジング18は、例えば、有底円筒状に形成されたホルダ部80と、該ホルダ部80の径方向外側に設けられたキャップ部82とからなり、ケーシング16側となる上方(矢印A方向)が開口し、下部ケース部32の保持孔64へと挿入されキャップ部82の外縁部が保持されることで該保持孔64を閉塞した状態で接続される。
【0041】
ホルダ部80は、その内部に駆動源12が軸方向(矢印A、B方向)に沿って収納され保持されると共に、その一部が前記駆動源12から外周側へと離間するように膨出した第1冷却通路(冷却用通路)84を備えている。これにより、ホルダ部80において、駆動源12の外周面が第1冷却通路84に対して露出している。
【0042】
キャップ部82は、ファン14における外縁部近傍の下端に臨み、下部ケース部32における下方の一部を覆うように配置され、チャンバー76の下方となる位置に径方向に延在する第2冷却通路(冷却用通路)86を備えている。
【0043】
第2冷却通路86は、第1冷却通路84に対して外周側に形成されて互いに連通すると共に、下部ケース部32の空気導入管78が上方から挿入されることでチャンバー76とも連通している。これにより、第1及び第2冷却通路84、86は、空気導入管78を介してチャンバー76と連通すると共に、該チャンバー76及び空気取入口72を通じて送風通路34と連通している。
【0044】
本発明の実施の形態に係る送風機10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0045】
先ず、図示しないコントローラからの制御信号に基づいた駆動源12の駆動作用下にファン14が回転することで、図示しないダクトを通じてケーシング16の開口部40へと流れる空気が、上部ケース部30の上方(矢印A方向)に開口した吸入口38を通じて前記ファン14の内側へと空気が吸い込まれる。そして、シュラウド26を通じてファン14の内側へと取り込まれた空気がボス部28に沿って下方且つ外周側へと導かれた後、複数のブレード24の間を通過して外周側となる送風通路34へと送出される。
【0046】
この送風通路34へと送出された空気は、該送風通路34に沿って巻き始めC1から巻き終わりC2側へと時計回りに流れ、該巻き終わりC2側まで到達した後、第1及び第2吐出部44、66からなる吐出口68を通じて外部(例えば、図示しない車両用空調装置)へと導出される。
【0047】
また、送風通路34を流れる空気の一部が、該送風通路34の吐出口68近傍に開口した空気取入口72からチャンバー76の内部へと取り込まれ、空気導入管78を通じて下方となるハウジング18の第2冷却通路86から第1冷却通路84へと流れる。そして、第1冷却通路84に臨むように露出した駆動源12が取り込まれた空気によって好適に冷却される。
【0048】
次に、例えば、送風機10の搭載される車両において、図示しないダクトを通じて外気と共に水が前記送風機10側へと取り込まれた場合について説明する。
【0049】
先ず、図示しないダクトを通じて上部ケース部30の開口部40へと空気と共に取り込まれた水は、その大部分が前記空気と共に吸入口38へと吸い込まれ、該送風通路34に沿って前記空気と共に移動して吐出口68から外部へと導出される。
【0050】
一方、上部ケース部30の開口部40において、吸入口38に吸い込まれずに該吸入口38の外側でケーシング16(上部ケース部30)へと付着した水Wは、その重力作用下に前記上部ケース部30の表面に沿って下方へと移動していった後に貯留部50へと溜まっていく(図4参照)。
【0051】
この貯留部50において、図4に示されるように、水Wは、底部50aから溜まっていくと共に第1及び第2排水孔55、56からなる排水口58を通じて送風通路34側へと排出される。そして、排水口58から排出された水は、該排水口58に隣接する案内板60に沿って重力方向下方(矢印B方向)へと移動し、該案内板60の下端60aから送風通路34内へと滴下する。そして、送風通路34に沿って流れる空気と共に下流側へと移動して吐出口68から外部へと導出される。
【0052】
この際、排水口58は、図4図6に示されるように、上部ケース部30と下部ケース部32との接続部88に対して上方(矢印A方向)となる位置に開口しているため、前記排水口58から排出された水が前記接続部88に生じた隙間に対して毛細管現象によって吸い込まれてしまうことが防止され、しかも、案内板60の下端60aが前記接続部88よりも重力方向下方まで延在しているため、前記下端60aから滴下する水が前記接続部88に生じた隙間へと流入してしまうことも防止される。
【0053】
その結果、排水口58から排出された水は、上部ケース部30と下部ケース部32との接続部88へと流入してしまうことがなく送風通路34に沿って好適に排出することができ、該接続部88の隙間に水が流入して該隙間を伝って空気取入口72まで移動して吸い込まれてしまうことが防止されるため、該空気取入口72から浸入した水による駆動源12の被水が確実に防止される。
【0054】
また、駆動源12の駆動作用下にファン14が回転した送風機10の運転状態において、ケーシング16における送風通路34内の圧力が上昇し始めると吐出口68近傍における空気の流速が低下し、排水口58から前記送風通路34内に排出された水が粘性によって第1及び第2通路部42、62の内周壁42c、62aを伝って下流側(図5及び図6中、矢印D方向)へと移動して圧力の低い空気取入口72へ流れ込むことがある。このような場合であっても、内周壁42c、62aに付着した水が、上部ケース部30と下部ケース部32との接続部88へと向かうことがないよう案内板60で送風通路34側へと導いて空気と共に前記水を吐出口68から排出することが可能である。
【0055】
以上のように、本実施の形態では、送風機10を構成するケーシング16が、上下方向(矢印A、B方向)に分割可能な上部ケース部30及び下部ケース部32からなり、前記上部ケース部30には、上方に配置され内部に空気を取り込むための吸入口38と、ケーシング16における送風通路34の一部を構成する第1通路部42と、前記吸入口38の外周側に隣接し下部ケース部32側(矢印B方向)へと窪んで水Wを貯留可能な貯留部50と、該貯留部50と前記送風通路34とを連通する排水口58とを備えている。
【0056】
また、下部ケース部32には、第1通路部42と共に送風通路34の一部を構成する第2通路部62を有し、該第2通路部62の内周壁62aには送風通路34の空気をハウジング18の第1及び第2冷却通路84、86へと取り込むための空気取入口72が開口すると共に、前記第2通路部62には、前記第1通路部42の内周壁42cに対して前記送風通路34から離間する方向へ窪んだ凹部70が形成されている。
【0057】
従って、下部ケース部32における第2通路部62の内周壁62aを、上部ケース部30における第1通路部42の内周壁42cに対して送風通路34から離間する方向へとオフセットさせて凹部70を設けることで、吸入口38の外側でケーシング16(上部ケース部30)へと付着した水Wが貯留される貯留部50を下部ケース部32に対して相対的に前記送風通路34側に配置することができる。そのため、送風通路34側に突出した貯留部50における底部50a及び内周壁42cからなる角部を切り欠くことで前記貯留部50に貯留された水Wを送風通路34側へと排出するための排水口58を容易且つ確実に形成することができる。
【0058】
その結果、空気取入口72の開口した第2通路部62の内周壁62aに凹部70を設け、前記空気取入口72を送風通路34に対して排水口58よりも窪ませることで、該排水口58から排出された水が前記空気取入口72から内部へと浸入してしまうことが防止され、第1及び第2冷却通路84、86を通じた駆動源12の被水を確実に防止することができる。
【0059】
また、排水口58を、貯留部50の重力方向下方(矢印B方向)となる底部50aに開口した第1排水孔55と、第1通路部42の内周壁42cに開口した第2排水孔56とから構成することにより、開口方向の異なる第1及び第2排水孔55、56を通じて貯留部50内に貯留した水を容易且つ確実に送風通路34側へと排出することができる。なお、排水口58は、2つの第1及び第2排水孔55、56から構成される場合に限定されるものではなく、いずれか一方のみから構成されていてもよい。
【0060】
さらに、上部ケース部30の第1接続端52と下部ケース部32の第2接続端74とが接続されるケーシング16の接続部88に対し、排水口58が上方(矢印A1方向)へ所定距離だけ離間して配置されている。そのため、例えば、樹脂製材料からなる上部ケース部30及び下部ケース部32の合わせ面となる接続部88に成形ひずみ等に起因したわずかな隙間が存在している場合であっても、前記排水口58から送風通路34側へと排出される水が毛細管現象によって前記隙間へと吸い込まれてしまうことが防止される。
【0061】
換言すれば、従来技術に係る送風機のように、排水口58をケーシング16の合わせ面と同一平面上に設けた場合には、該排水口58から排出される際に水が前記合わせ面に生じた隙間へと毛細管現象によって吸い込まれ、ケーシング16内において圧力の低いモーター通路へ吸い込まれて被水してしまうことが懸念される。
【0062】
さらにまた、上部ケース部30には、排水口58に臨んで該排水口58から下部ケース部32側(矢印B方向)へ向かって延在する案内板60を備え、この案内板60が、第1通路部42の内周壁42cと略同一面となるように下方(矢印B方向)へと延在し、且つ、その重力方向下方となる下端60aが、上部ケース部30と下部ケース部32との接続部88よりも重力方向下方となるように形成されている。
【0063】
例えば、送風機10の運転状態によってケーシング16内の圧力が上昇し始めた際に、吐出口68近傍を流れる空気の流速が低下し、排水口58から前記送風通路34内に排出された水が粘性によって第1及び第2通路部42、62(送風通路34)の内周壁42c、62aを伝って下流側へと移動して圧力の低い空気取入口72へ流れ込むことがある。
【0064】
このような場合であっても、送風通路34の内周壁42c、62aに付着した水を、案内板60に張り付かせて重力方向下方(矢印B方向)へと導くことで、前記水が上部ケース部30と下部ケース部32との接続部88へと向かうことが防止され、送風通路34を流れる空気と共に前記水を吐出口68から外部へと好適に排出することが可能となる。
【0065】
またさらに、排水口58を、空気取入口72に対して送風通路34の上流側(図5及び図6中、矢印C方向)に離間して配置すると共に、前記空気取入口72を、前記送風通路34において前記吐出口68の近傍に設けた場合であっても、前記排水口58から排水された水が下流側に開口した空気取入口72から内部へと浸入してしまうことが確実に防止され、第1及び第2冷却通路84、86を通じた駆動源12の被水を確実に防止することができる。
【0066】
なお、本発明に係る送風機は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0067】
10…送風機 12…駆動源
14…ファン 16…ケーシング
30…上部ケース部 32…下部ケース部
34…送風通路 42…第1通路部
42c、62a…内周壁 50…貯留部
52…第1接続端 55…第1排水孔
56…第2排水孔 58…排水口
60…案内板 62…第2通路部
68…吐出口 70…凹部
72…空気取入口 74…第2接続端
84…第1冷却通路 86…第2冷却通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6