(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124499
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】水中航走体妨害装置および水中航走体妨害方法
(51)【国際特許分類】
B63G 9/04 20060101AFI20220819BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20220819BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20220819BHJP
F41H 11/02 20060101ALI20220819BHJP
F41G 7/22 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B63G9/04
B63C11/00 B
B63C11/48 D
F41H11/02
F41G7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022182
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】599161890
【氏名又は名称】NECネットワーク・センサ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】奥屋 大樹
(72)【発明者】
【氏名】島津 定生
【テーマコード(参考)】
2C014
【Fターム(参考)】
2C014DA04
2C014DB04
2C014DC05
(57)【要約】
【課題】迎撃用水中航走体を用いて、最接近時の爆発によらずに水中航走体の航走を妨害する水中航走体妨害装置を提供する。
【解決手段】水中航走体妨害装置は、水中航走体3を捕獲する捕獲網11と、捕獲網11を曳航しながら、水中航走体3の前方から、水中航走体3に向かって航走する迎撃用水中航走体10と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中航走体を捕獲する捕獲網と、
前記捕獲網を曳航しながら、前記水中航走体の前方から、前記水中航走体に向かって航走する迎撃用水中航走体と、
を備える、水中航走体妨害装置。
【請求項2】
前記迎撃用水中航走体は、
前記捕獲網を収納する捕獲網収納手段と、
船舶からの誘導により、前記捕獲網を水中で展開させる制御手段と、を備える、
請求項1に記載の水中航走体妨害装置。
【請求項3】
前記迎撃用水中航走体は、前記迎撃用水中航走体の後部に展開し、前記捕獲網を曳航する捕獲網ガイドレールをさらに備える
請求項2に記載の水中航走体妨害装置。
【請求項4】
前記迎撃用水中航走体は、水中制動パラシュートを収納するパラシュート収納手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記水中航走体を捕獲後、前記水中制動パラシュートを展開させる、
請求項2または3に記載の水中航走体妨害装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記迎撃用水中航走体の減速を検知することで前記水中航走体の捕獲を検知する
請求項4に記載の水中航走体妨害装置。
【請求項6】
前記迎撃用水中航走体は、前記水中航走体の航走音を受信するパッシブソナーをさらに備え、受信した前記航走音に向かってホーミング航走する
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水中航走体妨害装置。
【請求項7】
前記水中航走体へ前記迎撃用水中航走体を誘導する、船舶からの誘導指示を伝送する誘導ワイヤーをさらに備える、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の水中航走体妨害装置。
【請求項8】
迎撃用水中航走体と連結する連結手段と、
貫通孔を有する捕獲網本体と、
前記貫通孔を挟む少なくとも2箇所で前記捕獲網本体に固定される貫通孔補助網と、を備え、
前記迎撃用水中航走体内に収納され、水中で展開されると、航走する前記迎撃用水中航走体に前記貫通孔を通過させ、
前記迎撃用水中航走体に曳航されると前記貫通孔補助網は前記貫通孔をふさぐ、
水中航走体捕獲網。
【請求項9】
水中で捕獲網を曳航しながら、水中航走体の前方から、前記水中航走体に向かって迎撃用水中航走体が航走し、
前記捕獲網で前記水中航走体を捕獲する
水中航走体妨害方法。
【請求項10】
前記捕獲網により前記水中航走体を捕獲後、前記迎撃用水中航走体が水中制動パラシュートを展開する、
請求項9に記載の水中航走体妨害方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中航走体妨害装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶に衝突または近接し、爆薬等を爆発させる水中航走体は、船舶にとって非常に脅威である。
【0003】
水中航走体はレーダーや光学センサにより検出することができないため、ソナーにより水中音波を利用して検出する。しかし、水中航走体が小型である場合、アクティブソナーにより水中航走体からの反響音を検出することは非常に難しい。パッシブソナーにより水中航走体の航走音を検出することはできる。しかし、パッシブソナーでは水中航走体までの距離を検出することができないので、水中航走体の位置を正確に把握することができない。
【0004】
特許文献1には、船舶に接近するウェーキホーミング方式の水中航走体を捕獲網に絡めて航走を妨害する水中航走体無力化装置が開示されている。
【0005】
一方、水中航走体に対して船舶から迎撃用水中航走体を射出し、迎撃用水中航走体を水中航走体に向かって航走させて、水中航走体を無力化する迎撃用水中航走体がある。迎撃用水中航走体は、例えば、水中航走体の至近距離まで接近し、迎撃用水中航走体の弾頭として搭載された爆薬を爆発させる。
【0006】
水中物体が放射する推進器音等の航走音を数100mの距離で検出する方法としては、迎撃用水中航走体にパッシブソナーを搭載することが有望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、パッシブソナーでは水中航走体から放射された航走音の到来方向を検出できるが、水中航走体までの距離を検出できない。従って、パッシブソナーにより検出した航走音の到来方向の情報では、迎撃用水中航走体と水中航走体が最接近したタイミングを検出することは難しい。
【0009】
本開示は、迎撃用水中航走体を用いて、最接近時の爆発によらずに水中航走体の航走を妨害できる、水中航走体妨害装置等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る水中航走体妨害装置は、水中航走体を捕獲する捕獲網と、前記捕獲網を曳航しながら、前記水中航走体の前方から、前記水中航走体に向かって航走する迎撃用水中航走体と、を備える。
【0011】
本開示に係る水中航走体捕獲網は、迎撃用水中航走体と連結する連結部と、貫通孔を有する捕獲網本体と、前記貫通孔を挟む少なくとも2箇所で前記捕獲網本体に固定される貫通孔補助網と、を備え、前記迎撃用水中航走体内に収納され、水中で展開されると、航走する前記迎撃用水中航走体に前記貫通孔を通過させ、前記迎撃用水中航走体に曳航されると前記貫通孔補助網は前記貫通孔をふさぐ。
【0012】
本開示に係る水中航走体妨害方法は、水中で捕獲網を曳航しながら、水中航走体の前方から、前記水中航走体に向かって迎撃用水中航走体が航走し、前記捕獲網で前記水中航走体を捕獲する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、迎撃用水中航走体を用いて、最接近時の爆発によらずに水中航走体の航走を妨害することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】水中航走体3が検出された状態を示す図である。
【
図2】迎撃用水中航走体10の射出直後の状態を示す図である。
【
図3】迎撃用水中航走体10の誘導中の状態を示す図である。
【
図4】捕獲網11が展開された後の状態を示す図である。
【
図5】水中航走体3が捕獲される様子を示す図である。
【
図6】水中航走体3が完全に捕獲された様子を示す図である。
【
図7】水中制動パラシュート12が展開された状態を示す図である。
【
図8】迎撃用水中航走体10の構成及び内部構造を示す図である。
【
図9】迎撃用水中航走体10の構造を示す図である。
【
図11】水中航走体妨害システムの全体の概要を示すブロック図である。
【
図13】垂直受波指向性26及び水平受波指向性27を示す。
【
図14】水中航走体妨害システムの動作例を示すフローチャートである。
【
図15】捕獲網11を展開させる方法の一例の説明図である。
【
図16】捕獲網11を展開させる方法の一例の続きの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を説明するが、本開示は本実施形態に限定されるものではない。なお、以下で説明する図面で、同機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略することもある。
【0016】
(概要)
図1~
図7を用いて、本発明の一実施形態としての水中航走体妨害装置の概要を説明する。水中航走体妨害装置は、捕獲網と、水中航走体に向かって船舶から射出される迎撃用水中航走体とを含む。迎撃用水中航走体は爆薬を積んでいなくてもよい。
【0017】
図1は、水中航走体3が検出された状態を示す図である。船舶1に装備されたソナー2は、水中航走体3が水中を航走する際に発生させる推進器音等の水中音波を検出する。
【0018】
船舶1は、水中航走体3がホーミング航走する際の目標物である。ソナー2は、船舶1に搭載されたソナーである。ソナー2は、一般的にアクティブソナーの機能とパッシブソナーの機能を有する。アクティブソナーは、水中で探信音波を送信し、水中の物体からの反響音を検出する方式のソナーである。パッシブソナーは、水中航走体などの推進器音などを検出する方式のソナーである。本開示に係るソナー2は、少なくともパッシブソナーの機能を有していればよい。
【0019】
水中航走体3は、船舶1を目標物としてホーミング航走する。水中航走体3の直径は、一般的に0.3~0.6mである。
【0020】
船首方位4は、水中航走体の検出方向5の基準となる。
【0021】
水中航走体の検出方向5は、船首方位4を基準とした方向である。水中航走体の検出方向5は、ソナー2により検出した水中航走体3から放射された推進器音等の航走音の到来方向を示す。
【0022】
図2は、迎撃用水中航走体10の射出直後の状態を示す図である。船舶1は、迎撃用水中航走体10を射出し、迎撃用水中航走体10を海中に投下する。
図2は、迎撃用水中航走体10が、誘導ワイヤー8により船舶1からの誘導を受ける前の状態を示す。
【0023】
誘導ワイヤー8は、船舶1が迎撃用水中航走体10の針路、及び、深度及びを制御する信号を伝送する電線または光ファイバーケーブルである。船舶1は、水中航走体3の到来方向に進行するよう、誘導ワイヤー8を介して迎撃用水中航走体10を有線誘導する。
【0024】
図3は、迎撃用水中航走体10の誘導中の状態を示す図である。迎撃用水中航走体の検出方向9は、船首方位4を基準とした方向である。迎撃用水中航走体の検出方向9は、ソナー2が検出した迎撃用水中航走体10が放射する推進器音等の航走音の検出方向を示す。迎撃用水中航走体10は、誘導ワイヤー8を介して船舶1からの誘導を受けて、水中航走体3と、船舶1の間に誘導される。
【0025】
船舶1のソナー2は、迎撃用水中航走体10の推進器音と、水中航走体3の推進器音の方向を検出する。またソナー2は、迎撃用水中航走体10の推進器音と、水中航走体3の推進器音が同一方向から到来することを検出する。さらに、ソナー2は、迎撃用水中航走体10の進行方向の延長線と水中航走体3の到来方向の延長線が一致することを検出してもよい。
【0026】
誘導ワイヤー8は、さらに、捕獲網11の展開タイミングを制御する信号を伝送してもよい。迎撃用水中航走体10の航走方向の誘導ができたら、誘導ワイヤー8を用いた遠隔制御により、迎撃用水中航走体10から捕獲網11が展開される。捕獲網11は、迎撃用水中航走体10と連結する連結部を備える。捕獲網11の大きさは特に限られないが、好適には直径30~50mである。なお、捕獲網11の直径は30m以下であっても、50m以上であってもよい。また、捕獲網11の形状は特に限られない。捕獲網11の網目の大きさは、水中航走体3を捕獲できるように適宜設計される。迎撃用水中航走体10は、捕獲網11を曳航する。
【0027】
図4は、捕獲網11が展開された後の状態を示す図である。
図4は、迎撃用水中航走体10の後部から捕獲網11を展開して曳航する様子を示す。
図5は、水中航走体3が、迎撃用水中航走体10が曳航する捕獲網11に捕獲される様子を示す。
図6は、迎撃用水中航走体10が曳航する捕獲網11に水中航走体3が完全に捕獲された様子を示す。水中航走体3は、完全に捕獲されると、迎撃用水中航走体10を引きずる。この段階で、水中航走体3のホーミング航走を妨害することができる。
【0028】
図7は、水中制動パラシュート12が展開された状態を示す図である。水中航走体3のホーミング航走の妨害を徹底するため、迎撃用水中航走体10は、前部から水中制動パラシュート12を展開する。水中制動パラシュート12を展開することにより、水中航走体3の水中抵抗を増大させ、速度を低下させる。従って、船舶1は、水中航走体3の追尾を回避することができる。
【0029】
(構成)
次に、
図8~
図13、
図15、
図16を用いて、本実施形態に係る水中航走体妨害システムの構成例を説明する。水中航走体妨害システムは、迎撃用水中航走体10と、捕獲網11と、誘導ワイヤー8と、船舶1を含む。
【0030】
図8は、迎撃用水中航走体10の構成及び内部構造の例を示す図である。迎撃用水中航走体10の直径は適宜設計されうるが、好ましくは、直径0.3~0.5mの範囲で設計される。迎撃用水中航走体10の直径は0.3m以下であっても、0.5m以上であってもよい。
【0031】
以下の図面において、x軸正側は迎撃用水中航走体10の航走方向である。y軸正側は、航走方向に対して上側である。z軸方向正側は、航走方向に対して右側である。
【0032】
迎撃用水中航走体10は、自律航走が可能であってもよい。この場合、迎撃用水中航走体10の前部には、パッシブソナー13が装備される。パッシブソナー13は、水中航走体3が放射する推進器音等の航走音を受信し、航走音の到来俯仰角及び到来水平方向を検出する。パッシブソナー13は、一般的に迎撃用水中航走体10の最前部に搭載される。
【0033】
迎撃用水中航走体10は、水中制動パラシュート12を備えてもよい。この場合、水中制動パラシュート収納部14は、迎撃用水中航走体10の中に水中制動パラシュート12を収納する。水中制動パラシュート収納部14は、水中制動パラシュート12を展開させる機構を有する。水中制動パラシュート収納部14は、例えば、水中制動パラシュート収納部14の外郭を分離させ、水中制動パラシュート12を展開させる。
【0034】
迎撃用水中航走体10は、捕獲網収納部15、燃料タンク部16、機関部17、プロペラシャフト18、スクリュープロペラ19、舵20、制御部21、誘導ワイヤー収納部22、及び、誘導ワイヤーガイドレール23を備える。
【0035】
捕獲網収納部15は、迎撃用水中航走体10の中に捕獲網11を収納する。捕獲網収納部15は、捕獲網11を展開させる機構を有する。捕獲網収納部15は、例えば、捕獲網収納部15の外郭を分離させ、捕獲網11を展開させる。
【0036】
なお、水中制動パラシュート収納部14及び捕獲網収納部15の外郭部分を分離させる技術は、水中航走体の分野において知られているので、説明を省略する。本実施の形態では、水中制動パラシュート収納部14及び捕獲網収納部15の外郭部分の分離以外の機構に特徴がある。
【0037】
燃料タンク部16は、迎撃用水中航走体10の機関部17が使用する燃料を収納する。機関部17が電動モーターである場合、燃料タンク部16は電池である。
【0038】
機関部17は、迎撃用水中航走体10のスクリュープロペラ19を回転させる動力源であり、燃料タンク部16から供給される燃料を燃焼させる内燃機関または電動モーターである。機関部17が内燃機関である場合、機関部17は発電機を内蔵してパッシブソナー13等が使用する電力を供給する。
【0039】
プロペラシャフト18は、機関部17とスクリュープロペラ19を連結する軸機構である。
【0040】
スクリュープロペラ19は、水中で回転することにより推進力を発生させる推進器である。迎撃用水中航走体10に装備されるスクリュープロペラ19は、2重反転プロペラであり、前後のプロペラを反対方向に回転させる。これは、プロペラが水中で回転することにより反作用が発生して本体が回転することを防止するためである。一般的に水中航走体3も、スクリュープロペラ19と同様のプロペラを備える。
【0041】
舵20は、航走方向を制御する。舵20は、例えば、水平舵及び垂直舵を有する。舵20は、水平舵及び垂直舵により、迎撃用水中航走体10の水平方向及び俯仰角を制御する。一般的に水中航走体3も、舵20と同様の舵を備える。
【0042】
制御部21は、パッシブソナー13から水中航走体3の航走音の到来水平方向及び俯仰角の入力を受ける。また、制御部21は誘導ワイヤー収納部22から船舶1の誘導情報の入力を受ける。制御部21は、舵20の水平舵及び垂直舵並びに水中制動パラシュート収納部14及び捕獲網収納部15に対して制御信号を出力する。制御部21は、舵20を制御するから、舵制御部とも呼ばれる。
【0043】
誘導ワイヤー収納部22は、誘導ワイヤー8を収納するドラムである。
【0044】
誘導ワイヤーガイドレール23は、誘導ワイヤー8がスクリュープロペラ19に絡まることを防止するため、誘導ワイヤー8の繰り出し口をスクリュープロペラ19の後ろに位置するよう調整する機構である。
【0045】
迎撃用水中航走体10は、さらに、捕獲網ガイドレール28及び捕獲網ガイドレール29を備えてもよい。捕獲網ガイドレール28、29は進行方向の左右に設けられてもよい。x軸負側から見た場合に、捕獲網ガイドレール28は、左側捕獲網ガイドレールとも呼ばれ、捕獲網ガイドレール29は、右側捕獲網ガイドレールとも呼ばれる。
【0046】
図9は、迎撃用水中航走体10が捕獲網11を展開する前及び展開した後の迎撃用水中航走体10の構造を示す。
図9は、迎撃用水中航走体10を
図8の状態から、長軸方向に90度回転させた状態を示す。従って、誘導ワイヤーガイドレール23が迎撃用水中航走体10の下部ではなく中部に図示されている。
【0047】
捕獲網ガイドレール28、29は、捕獲網11の収納時には迎撃用水中航走体10の内部に格納されている。捕獲網ガイドレール28、29は、捕獲網11の展開時にはy軸の周りに回転する回転軸30を軸として外側に180度回転し、
図9の下側の図に示すように捕獲網11を迎撃用水中航走体10の後部に曳航する。ただし、
図9の下側の図では、捕獲網ガイドレール28、29の回転軸30と反対側の他端に固定され展開している捕獲網11は省略されている。
【0048】
回転軸30は、捕獲網ガイドレール28及び捕獲網ガイドレール29が回転する際の軸である。捕獲網ガイドレール28、29の一端は、回転軸30に連結している。舵20によって迎撃用水中航走体10を長軸(図面上x軸)を中心として回転させることで、捕獲網ガイドレール28、29は外側に展開されてもよい。
【0049】
中央構造物31は、捕獲網11を展開後に迎撃用水中航走体10の構造を維持するため、捕獲網収納部15の外郭を分離後に水中制動パラシュート収納部14と燃料タンク部16を支持する機械構造である。
【0050】
図10は、迎撃用水中航走体10が捕獲網11を展開する時及び曳航する時のx軸負側から見た捕獲網11の構造の例を示す。捕獲網11は、例えば、捕獲網貫通孔32を有する(捕獲網貫通孔は貫通孔とも呼ばれる)。捕獲網貫通孔32は、捕獲網11を展開する際に迎撃用水中航走体10の後部(燃料タンク16が収納されている部分より進行方向の後ろ側)を捕獲網11がすり抜けるための穴である。
【0051】
捕獲網11には、例えば、捕獲網貫通孔補助網33が固定される(捕獲網貫通孔補助網は貫通孔補助網とも呼ばれる)。捕獲網貫通孔補助網33は、捕獲網11の展開後に捕獲網貫通孔32を塞ぐための二重の網である。捕獲網貫通孔補助網33は、捕獲網11が水流の抵抗により展開した後、捕獲網貫通孔32を塞ぐよう、捕獲網11に固定される。捕獲網貫通孔補助網33は、捕獲網貫通孔32を挟む少なくとも2箇所で固定される。例えば、
図10において、捕獲網貫通孔補助網33は、左右の両端のみ捕獲網11に固定される。
【0052】
迎撃用水中航走体10の後部を捕獲網11がすり抜けることを妨害しなければ、捕獲網貫通孔補助網33は、捕獲網貫通孔32を囲う3箇所以上で固定されてもよい。
【0053】
図15及び
図16は、捕獲網11を展開させる方法の一例の説明図である。
図15に示すように、迎撃用水中航走体10の捕獲網収納部15の外郭部分が外れ、捕獲網ガイドレール28、29が回転軸30を中心にそれぞれ追撃用水中航走体10の外側に回転する。捕獲網11は、捕獲網ガイドレール28、29の回転軸30と反対側の他端に曳航ロープで連結される。捕獲網11は、捕獲網ガイドレール28、29の回転とともに、収容されていた捕獲網収納部15から引き出される。
図16は、迎撃用水中航走体10が捕獲網11の捕獲網貫通孔32を通り抜ける状態を示している。さらに、通り抜けが進み、迎撃用水中航走体10の後部を捕獲網11の捕獲網貫通孔32が完全に通り抜けると、
図9の下側の図及び
図4に示すとおり、捕獲網11を開きながら曳航状態となる。このとき、
図10に示すように捕獲網貫通孔補助網33が捕獲網貫通孔32を塞ぐので、捕獲網11によって捕獲される水中航走体3は、捕獲網貫通孔32を潜り抜けない。
【0054】
図11は、本開示に係る水中航走体妨害システムの全体の概要例を示すブロック図である。
図11には、船舶1と迎撃用水中航走体10が示されている。船舶1と迎撃用水中航走体10は、誘導ワイヤー8により接続される。
【0055】
水中音波34は、水中航走体3が放射する推進器音等の航走音を含む水中音波である。船舶1のソナー2と、迎撃用水中航走体10のパッシブソナー13は、それぞれ、水中音波34を検出する。
【0056】
図12は、パッシブソナー13をx軸正側から見た平面図である。パッシブソナー13は、垂直受波アレイ24及び水平受波アレイ25を備える。垂直受波アレイ24は、水中航走体3が放射する航走音を受信し、航走音の到来俯仰角を検出する。水平受波アレイ25は、水中航走体3が放射する航走音を受信し、航走音の到来水平方向の検出を可能にする。
【0057】
図13は、垂直受波アレイ24により得られる垂直受波指向性26、及び、水平受波アレイ25により得られる水平受波指向性27を示す。
図13において、上側は、y軸正側、下側はy軸負側である。また、右側は、z軸正側、左側はz軸負側である。垂直受波アレイ24は、垂直方向の指向性を有する。垂直受波アレイ24が備える複数の電歪振動子35が受信した水中音波34について、位相のずれを利用して、水中航走体3が放射する航走音の到来俯仰角が算出される。水平受波アレイ25は、水平方向の指向性を有する。水平受波アレイ25が備える複数の電歪振動子35が受信した水中音波34について、位相のずれを利用して、水中航走体3が放射する航走音の到来方向角が算出される。
【0058】
電歪振動子35は、ソナー2並びにパッシブソナー13の垂直受波アレイ24及び水平受波アレイ25に装備され、水中音波34を電気信号に変換する。
【0059】
プリアンプ36は、ソナー2及びパッシブソナー13に装備されており、電気信号を増幅する。
【0060】
アナログデジタル(A/D(Analog/Digital))変換部37は、ソナー2及びパッシブソナー13に装備され、アナログ電気信号をデジタル信号に変換する。
【0061】
水平指向性合成処理部38は、ソナー2及びパッシブソナー13に装備され、ソナー2及び水平受波アレイ25の電歪振動子35により受波した音波の位相差により信号を水平方向の受波信号レベルに変換する。
【0062】
高速フーリエ変換(FFT(Fast Fourier Transform))処理部39は、ソナー2に装備され、水平方向毎の受波信号レベルについて、周波数成分毎の受波信号レベルに変換する。FFT処理部39は、水平方向毎かつ周波数成分毎の受波信号レベルを誘導制御部40へ送信する。
【0063】
誘導制御部40は、ソナー2に装備され、水平方向毎かつ周波数成分毎の受波信号レベルから、水中航走体の検出方向5及び迎撃用水中航走体の検出方向9を算出する。誘導制御部40は、水中航走体の検出方向5及び迎撃用水中航走体の検出方向9が一致するよう、誘導ワイヤー8を介して迎撃用水中航走体10の針路を制御する。また、誘導制御部40は、水中航走体の検出方向5及び迎撃用水中航走体の検出方向9が一致した場合は、迎撃用水中航走体10に対して捕獲網11の展開タイミングを指示する。
【0064】
垂直指向性合成処理部41は、ソナー2及びパッシブソナー13に装備され、垂直受波アレイ24の電歪振動子35により受波した音波の位相差により信号を垂直方向の受波信号レベルに変換する。
【0065】
水中では、深度によって水温、塩分濃度及び密度が異なるため、水中の音速が変化する。音波は特に垂直方向(水面方向および海底方向)に直進しない特性があるので、船舶1に装備されたソナー2では水中航走体3の深度を正確に検出することができない。迎撃用水中航走体10が捕獲網11により水中航走体3を捕獲するために、迎撃用水中航走体10が備えるパッシブソナー13を用いて、水中航走体3の航走音に向かって迎撃用水中航走体10の深度を調整することが好ましい。
【0066】
具体的には、迎撃用水中航走体10の先端部に装備されたパッシブソナー13の垂直受波アレイ24を用いる。垂直指向性合成処理部41は、垂直受波アレイ24の垂直受波指向性26を用いて、水中航走体3の航走音が到来する俯仰角を算出し、その俯仰角の方向に深度が変更される。
【0067】
また、船舶1に装備されたソナー2により水中航走体3の航走音を検出することができるが、捕獲網11により水中航走体3を捕獲するためには、迎撃用水中航走体10を、より精度よく水中航走体3の方向へ針路を制御することが好ましい。従って、迎撃用水中航走体10が備えるパッシブソナー13を用いて、水中航走体3の航走音に向かって針路が制御される。
【0068】
具体的には、迎撃用水中航走体10の先端部に装備されたパッシブソナー13の水平受波アレイ25を用いる。水平指向性合成処理部38は、水平受波アレイ25の水平受波指向性27を用いて、水中航走体3の航走音が到来する方向を算出し、その方向に針路が変更される。水中航走体3と迎撃用水中航走体10の離隔距離が短くなるほど、高精度で迎撃用水中航走体10が水中航走体3の方向に向かって航走することができる。
【0069】
(動作)
本実施形態に係る、水中航走体妨害システムの動作について説明する。
図14は、水中航走体妨害システムの動作例を示すフローチャートである。
【0070】
船舶1に装備されたソナー2が、水中航走体3が放射する水中音波34を検出し、水中航走体の検出方向5を検出する(ステップS1)。
【0071】
具体的には、水中音波34を船舶1に装備されたソナー2の電歪振動子35が電気信号に変換する。電気信号は、プリアンプ36により増幅され、アナログデジタル変換部37によりデジタルデータ化され、水平指向性合成処理部38により方向毎の音波受信データに変換される。FFT処理部39は、音波受信データに基づいて、周波数特性を分析する。誘導制御部40は水中航走体3の航走音の周波数の特徴を有する水中音波34の到来方向を判定する。
【0072】
次に、迎撃用水中航走体10が船舶1から射出され、誘導ワイヤー8により誘導される(ステップS2)。迎撃用水中航走体10は、船舶1から誘導ワイヤー8により誘導されつつ航走し、水中航走体の検出方向5と迎撃用水中航走体の検出方向9が同じになるよう誘導される。
【0073】
具体的には、水中音波34を船舶1に装備されたソナー2の電歪振動子35が電気信号に変換する。電気信号は、プリアンプ36により増幅され、アナログデジタル変換部37によりデジタルデータ化され、水平指向性合成処理部38により方向毎の音波受信データに変換される。FFT処理部39は音波受信データに基づいて、周波数特性を分析する。誘導制御部40は、水中航走体3の航走音の周波数の特徴を有する水中音波34と、誘導中の迎撃用水中航走体10の周波数の特徴を有する水中音波34が、同じ方向から到来するよう、迎撃用水中航走体10の針路を制御し誘導する。
【0074】
迎撃用水中航走体10から放射された水中音波34の迎撃用水中航走体の検出方向9と水中航走体の検出方向5が一致したことが確認されると、迎撃用水中航走体10は、捕獲網11を展開する(ステップS3)。
【0075】
具体的には、誘導制御部40は、水中航走体3の航走音の周波数の特徴を有する水中音波34及び誘導中の迎撃用水中航走体10の周波数の特徴を有する水中音波34が同じ方向から到来することを判定する。誘導制御部40は、例えば、水中航走体の検出方向5と、迎撃用水中航走体の検出方向9の差が所定の範囲内であるとき、迎撃用水中航走体10の推進器音と、水中航走体3の推進器音が同一方向から到来すると判定する。誘導制御部40は、誘導ワイヤー8を介して迎撃用水中航走体10の制御部21に対して捕獲網11の展開を指示する。制御部21は、捕獲網収納部15の外郭部分を分離させて捕獲網11を展開させる。
【0076】
このとき、捕獲網11が迎撃用水中航走体10のスクリュープロペラ19に絡まないように、
図9に示す捕獲網ガイドレール28及び捕獲網ガイドレール29が、回転軸30を中心に迎撃用水中航走体10の外側に180度回転しながら、捕獲網11が展開される。捕獲網11が展開されるとき、
図15に示す状態から
図16に示すように捕獲網11の捕獲網貫通孔32は迎撃用水中航走体10の後部をくぐり抜ける。
【0077】
迎撃用水中航走体10は、
図4に示すように水中航走体3に向かって自律ホーミング航走する(ステップS4)。
【0078】
具体的には、水中音波34を迎撃用水中航走体10に装備された垂直受波アレイ24及び水平受波アレイ25の電歪振動子35が電気信号へ変換する。電気信号は、プリアンプ36により増幅され、アナログデジタル変換部37によりデジタルデータ化される。垂直指向性合成処理部41は、変換されたデジタルデータを俯仰角毎の音波受信データに変換し、制御部21へ出力する。水平指向性合成処理部38は、変換されたデジタルデータを水平方向毎の音波受信データに変換し、制御部21へ出力する。
【0079】
制御部21は、俯仰角毎の音波受信データについて、レベルが大きい方向に水中航走体3が存在すると仮定し、水中航走体3の方向に迎撃用水中航走体10が航走するよう舵20の水平舵を制御する。また、制御部21は、方向毎の音波受信データについて、レベルが大きい方向に水中航走体3が存在すると仮定し、水中航走体3の方向に迎撃用水中航走体10が航走するよう舵20の垂直舵を制御する。
【0080】
図5、
図6に示すように捕獲網11が水中航走体3を完全に捕獲する(ステップS5)。このとき、制御部21に内蔵される図示しない慣性航法装置は、迎撃用水中航走体10が水中航走体3の運動エネルギーにより急減速したことを検出する。
【0081】
捕獲網11に水中航走体3が完全に捕獲された後、
図7に示すように迎撃用水中航走体10が水中制動パラシュート12を展開する(ステップS6)。水中制動パラシュート12は、水中航走体3の航走速度を減速させる。
【0082】
具体的には、制御部21が、水中制動パラシュート収納部14に対し、外郭部分を分離させて、水中制動パラシュート12を展開させる。水中制動パラシュート12を展開することにより、水中航走体3の航走速度を遅くさせて、水中航走体3と船舶1が近接することを防止することができる。好適には、水中制動パラシュート12は、水中航走体3の航走速度を船舶1の航走速度よりも遅くさせる。
【0083】
上述した実施形態の処理をコンピュータに実行させるプログラムおよび該プログラムを格納した記録媒体も本開示の範囲に含む。記録媒体としては、例えば、磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリ、などを用いることができる。
【0084】
(効果)
<第1の効果>
本実施形態によれば、迎撃用水中航走体と水中航走体が最接近したタイミングが検出できない場合にも、水中航走体を妨害することができる。その理由は、迎撃用水中航走体10が捕獲網11を曳航しながら、水中航走体3の前方から水中航走体3に向かって航走し、捕獲網11で水中航走体3を捕獲するためである。また、その理由は、迎撃用水中航走体10が所定の幅を有する捕獲網11を曳航することにより、所定の範囲まで接近した水中航走体3を捕獲網11により捕獲するためである。さらに、迎撃用水中航走体10が、捕獲網11により水中航走体を捕獲後、水中制動パラシュート12を展開するためである。本実施形態により、水中航走体3の航走速度を遅くするから、水中航走体3が船舶1に接近することを妨害できる。
【0085】
<第2の効果>
本実施形態によれば、より確実に迎撃用水中航走体10と水中航走体3を接近させることができる。その理由は、水中航走体3に向かって迎撃用水中航走体10を誘導し、接近させる技術について、まず、大まかな方向を船舶1に装備されたソナー2により検出するためである。迎撃用水中航走体10は、誘導ワイヤー8により大まかな方向へ有線誘導される。迎撃用水中航走体10と水中航走体3の離隔距離が短くなると、迎撃用水中航走体10のパッシブソナー13は水中航走体3の航走音を検出する。そして、水中航走体3の航走音を検出した後は、迎撃用水中航走体10に装備されたパッシブソナー13を用いて、水中航走体3の航走音が到来する俯仰角及び水平方向へ迎撃用水中航走体10が航走するためである。
【0086】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本開示を説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態には限定されない。即ち、本開示は、本開示のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 船舶
2 ソナー
3 水中航走体
4 船首方位
5 水中航走体の検出方向
8 誘導ワイヤー
9 迎撃用水中航走体の検出方向
10 迎撃用水中航走体
11 捕獲網
12 水中制動パラシュート
13 パッシブソナー
14 水中制動パラシュート収納部
15 捕獲網収納部
16 燃料タンク部
17 機関部
18 プロペラシャフト
19 スクリュープロペラ
20 舵
21 制御部
22 誘導ワイヤー収納部
23 誘導ワイヤーガイドレール
24 垂直受波アレイ
25 水平受波アレイ
26 垂直受波指向性
27 水平受波指向性
28 捕獲網ガイドレール
29 捕獲網ガイドレール
30 回転軸
31 中央構造物
32 捕獲網貫通孔
33 捕獲網貫通孔補助網
34 水中音波
35 電歪振動子
36 プリアンプ
37 アナログデジタル変換部
38 水平指向性合成処理部
39 FFT処理部
40 誘導制御部
41 垂直指向性合成処理部