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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124511
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】電池ホルダ装置及び装置モジュール
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20220819BHJP
   H01M 6/50 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H01M6/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022202
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】517091447
【氏名又は名称】株式会社ハイテックシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151161
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 彩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 彰
【テーマコード(参考)】
5G503
5H025
【Fターム(参考)】
5G503BA01
5G503BB02
5G503DA12
5G503FA07
5G503GD03
5H025AA00
5H025BB17
5H025CC21
5H025CC22
5H025MM02
5H025MM06
(57)【要約】
【課題】簡単な回路構成で塩化リチウム膜の除去を容易に行うことができる電池ホルダ装置及び装置モジュールを提供する。
【解決手段】電池ホルダ装置12は電池ホルダ21と放電回路24とを備える。電池ホルダ21は、電池17が装填され、正極接点部31と負極接点部32とを有する。電池ホルダ21は、電池17により作動させる作動対象回路装置14に正極接点部31と負極接点部32とが接続する。放電回路24は、電池17が装填されたときに、電池17を放電させて放電電流を流す放電用抵抗22と、放電用抵抗22と直列に接続されているヒューズとを有し、正極接点部31と負極接点部32との間に接続されている。ヒューズは、電池17の出力電圧が略規格電圧であるときに放電用抵抗22によって決まる放電電流が所定の時間流れた場合に溶断する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化チオニルリチウム電池が装填され、前記塩化チオニルリチウム電池の正極端子に接続する正極接点部と負極端子に接続する負極接点部とを有し、前記塩化チオニルリチウム電池により作動させる作動対象回路装置に前記正極接点部と前記負極接点部とが接続した電池ホルダと、
前記塩化チオニルリチウム電池が装填されたときに、前記塩化チオニルリチウム電池を放電させて放電電流を流す放電用抵抗と、前記放電用抵抗と直列に接続され、前記塩化チオニルリチウム電池の出力電圧が略規格電圧であるときに前記放電用抵抗によって決まる前記放電電流が所定の時間流れた場合に溶断するヒューズとを有し、前記正極接点部と前記負極接点部との間に接続された放電回路と
を備える電池ホルダ装置。
【請求項2】
前記電池ホルダと前記放電回路とは回路基板に組付けられてユニット化されている請求項1に記載の電池ホルダ装置。
【請求項3】
前記ヒューズを介して流れる前記塩化チオニルリチウム電池からの電流によって点灯する発光素子を有する表示回路をさらに備える請求項1または2に記載の電池ホルダ装置。
【請求項4】
前記表示回路は、前記回路基板に組み付けられて前記電池ホルダ及び前記放電回路とユニット化されており、
前記発光素子は、前記回路基板の前記電池ホルダが配されている基板面に設けられる請求項2を引用する請求項3に記載の電池ホルダ装置。
【請求項5】
前記発光素子は発光ダイオードであり、
前記表示回路は、前記発光ダイオードと、前記発光ダイオードに流れる電流を制限する電流制限抵抗とが直列に接続された直列回路であり、
前記直列回路が前記放電用抵抗と並列に接続されている請求項3または4に記載の電池ホルダ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の電池ホルダ装置と、
前記電池ホルダ及び前記放電回路が組付けられた回路基板と、
前記電池ホルダに装填された前記塩化チオニルリチウム電池からの作動電流が流れて作動する作動対象回路装置と
を備え、
前記作動対象回路装置は、
所定の無線信号を受信する無線回路と、
前記無線回路が前記無線信号を受信することに応答して、前記作動電流を増大させる作動電流増大回路と
を有する装置モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池ホルダ装置及び装置モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
塩化チオニルリチウム電池は、自然放電しにくく、そのため、例えば20年以上の長期保存が可能とされ、長寿命であるのでメリットがある電池である。自然放電のしにくさの理由としては、負極のリチウムの表面に不働態(不動態)である塩化リチウムが生成し、これが膜状になって塩化リチウム膜ができることが挙げられる。
【0003】
塩化リチウム膜は、一方で、長期保存後の使用開始(起動)の際に、内部抵抗の増大による出力電圧の降下を生じさせる。その結果、塩化チオニルリチウム電池で作動させる作動対象の装置(機器)の仕様によっては、その装置の起動電圧に達することができずに、装置が作動しない場合もある。
【0004】
この塩化リチウム膜は、ある程度電流を流すことで除去されるので、装填対象箇所へ装填する前の電池に、例えば数秒間100mA程度の電流を流す対策が知られている。この場合、電池ホルダにダミー抵抗を接続した放電用の器具を用い、その電池ホルダに装填した塩化チオニルリチウム電池の出力電圧をテスタで測定しながら電池を放電させている。
【0005】
また、上記のようにある程度の電流を流すことで塩化リチウム膜を除去するものとして、例えば塩化チオニルリチウム電池等の電池で駆動する電池駆動型のワイヤレス送信器が特許文献1に記載されている。このワイヤレス送信器は、電源が投入されると上記の電池にダミー電流を流させる手段を備えるとともに、電圧検出器と、コントロール回路とを備える。電圧検出器は、ダミー電流流出時の上記電池の電圧値を検出する。コントロール回路は、電圧検出器が上記電池の正常な電圧値を検出するまで、上記ダミー電流を流させると共に、本体のワイヤレス送信器に実動作をさせない。特許文献1には、さらに、上記電池を微小電流にて常時放電させる放電回路と、この放電回路と本体のワイヤレス送信器回路の上記電池との接続を切り替える切り替えスイッチとを備えるワイヤレス送信器も記載されている。
【0006】
特許文献2には、動作電源を使用して信号発生とデータの記憶とを行うユニットを有する装置が記載される。上記ユニットは、その動作電源として通常時には商用交流電力を利用した直流電源装置を用いる一方、該直流電源装置の電源電圧低下時にはリチウム電池を用いる。この装置は、リチウム電池に対して接続可能な所定の抵抗値のダミー負荷と、上記ユニットの直流電源装置を用いた使用時間を計時するタイマと、タイマの計時結果が所定の使用時間に達したときにリチウム電池にダミー負荷を接続して放電を所定の放電時間だけ行う制御スイッチとを有する。
【0007】
また、特許文献3には、電圧情報取得部と、検知部とを備え、1以上の電池セルと過電流による電池セルなどの破壊を防止するためのヒューズとを直列に接続した電池アームを複数並列に接続して構成される電池パックが記載されている。電圧情報取得部は、複数の電池アームの各々から電圧情報を取得し、検知部は、電圧情報取得部により取得された電圧情報に基づいてヒューズの溶断を検知する。電圧情報取得部は、電圧情報として複数の電池アームの各々が有する1以上の電池セルの各々の電圧を測定し、検知部は、電圧情報取得部により測定された電圧間に所定値以上の差が生じた場合にヒューズの溶断が生じたと判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7-015359号公報
【特許文献2】特開2001-197673号公報
【特許文献3】特開2010-067536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように放電用の器具を用いる手法は、当該器具の準備や、その器具を用いた塩化リチウム膜の除去作業が必要となり、電池の装填までの作業が煩雑であるのに加え、その作業には電気的な一定の知識が必要であった。特許文献1に記載されるワイヤレス送信機は、電圧検出器やこれの検出結果に基づいて塩化チオニルリチウム電池の放電を制御する回路が必要であり、また特許文献2に記載される装置は、タイマや、このタイマの計時結果に基づいて塩化チオニルリチウム電池とダミー抵抗との接続を制御する制御スイッチ等が必要である。このように、回路構成が複雑である。なお、特許文献3に記載される電池パックは、生成した塩化リチウム膜を除去するものではない。
【0010】
そこで、本発明は、簡単な回路構成で塩化リチウム膜の除去を容易に行うことができる電池ホルダ装置及び装置モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電池ホルダ装置は、電池ホルダと放電回路とを備える。電池ホルダは、塩化チオニルリチウム電池が装填され、塩化チオニルリチウム電池の正極端子に接続する正極接点部と負極端子に接続する負極接点部とを有する。電池ホルダは、塩化チオニルリチウム電池により作動させる作動対象回路装置に正極接点部と負極接点部とが接続している。放電回路は、塩化チオニルリチウム電池が装填されたときに、塩化チオニルリチウム電池を放電させて放電電流を流す放電用抵抗と、放電用抵抗と直列に接続されたヒューズとを有し、正極接点部と負極接点部との間に接続されている。ヒューズは、塩化チオニルリチウム電池の出力電圧が略規格電圧であるときに前記放電用抵抗によって決まる放電電流が所定の時間流れた場合に溶断する。
【0012】
電池ホルダと放電回路とは回路基板に組付けられてユニット化されていることが好ましい。
【0013】
ヒューズを介して流れる前記塩化チオニルリチウム電池からの電流によって点灯する発光素子を有する表示回路を備えることが好ましい。
【0014】
表示回路は、回路基板に組み付けられて電池ホルダ及び放電回路とユニット化されており、発光素子は、回路基板の電池ホルダが配されている基板面に設けられることが好ましい。
【0015】
発光素子は発光ダイオードであり、表示回路は、発光ダイオードと、発光ダイオードに流れる電流を制限する電流制限抵抗とが直列に接続された直列回路であり、直列回路が前記放電用抵抗と並列に接続されていることが好ましい。
【0016】
本発明の装置モジュールは、上記の電池ホルダ装置と、回路基板と、作動対象回路装置とを備える。回路基板には、電池ホルダ及び放電回路が組付けられている。作動対象回路装置は、電池ホルダに装填された塩化チオニルリチウム電池からの作動電流が流れて作動する。作動対象回路装置は、所定の無線信号を受信する無線回路と、無線回路が無線信号を受信することに応答して、作動電流を増大させる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単な回路構成で、塩化リチウム膜が容易に除去される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】装置モジュールの一部断面概略図である。
図2】装置モジュールの断面概略図である。
図3】装置モジュールの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示す装置モジュール10は、本発明の一実施形態であり、モジュールケース11内に収容された、電池ホルダ装置12と、回路基板13と、作動対象回路装置14とを備える。電池ホルダ装置12には、装置モジュール10の使用開始時に、塩化チオニルリチウム電池(以下、単に「電池」と称する)17が装填される。作動対象回路装置14は、電池17により作動する装置の一例であり、回路基板13に設けられた配線(図示無し)等を介して、装填された電池17から電力が供給されることにより作動する。
【0020】
電池ホルダ装置12は、装填された電池17を保持し、また、使用開始時に電池17の出力電圧を規格電圧(公称電圧,初期電圧)に回復させるためのものであり、電池ホルダ21と、放電用抵抗22及びヒューズ23を有する放電回路24とを備える。電池ホルダ装置12には、チップ型の発光ダイオード(light emitting diode,以下、LEDと称する)27が設けられており、このLED27は、電池ホルダ装置12の動作状態を表示する表示回路28を構成する。表示回路28は省略することが可能であるが、この例のように設けることが好ましい。
【0021】
電池ホルダ21は、電池17が装填され、装填された電池17を保持するためのものであり、回路基板13の一方の基板面(以下、第1基板面と称する)13A上に配される。電池ホルダ21は、電池17の正極端子17aに接続する正極接点部31と、正極接点部31と対面するように設けられ、電池17の負極端子17bに接続する負極接点部32とを有する。正極接点部31と負極接点部32とは、回路基板13に設けられた配線を介して作動対象回路装置14に接続されている。
【0022】
電池ホルダ21は、一面が開放された箱状の収容部33を備え、この収容部33に電池17が収容される。正極接点部31と負極接点部32とは、収容部33の内壁に設けられており、収容部33は、正極接点部31と負極接点部32とを支持する支持部材として機能する。支持部材は、正極接点部31及び負極接点部32を支持する機能を有していれば、有底の箱状に形成された収容部33に限定されない。支持部材は、例えば、底板が無い枠状に形成されたフレーム(図示無し)や、回路基板13に対して起立した姿勢で設けられ、正極接点部31を支持する板状の第1支持板(図示無し)と負極接点部32を支持する板状の第2支持板(図示無し)とで構成される一対の支持板などでもよい。収容部33は、また、収容された電池17の正極接点部31及び負極接点部32に対する接触を維持するように電池17の移動を規制する規制部材としても機能しており、前述のフレームも同様に規制部材として機能するので好ましい。
【0023】
電池ホルダ21は、電池17の形状、正極端子17a及び負極単位17bとの接続形式に応じたものを用いればよい。また、電池ホルダ21は、電池17の筐体を直接に保持しなくてもよく、回路基板13上に電池を載せて、電池からのコネクタを回路基板のコネクタピンに接続するものでもよい。この場合、モジュールケース11が収容部33を兼ねたものとなる。
【0024】
電池ホルダ21と放電回路24とはユニット化されて回路基板13に組付けられていることが好ましく、さらに表示回路28も加えてユニット化されて回路基板13に組付けられていることが好ましく、本例でもそのようにしている。ヒューズ23とLED27とは電池ホルダ21と同様に第1基板面13A上に配される。
【0025】
放電回路24は、装填された電池17の負極に生成している塩化リチウム膜を除去するためのものである。放電回路24は、電池17が装填されたときに電池17を放電用抵抗22を介して放電させて放電電流を流すことで塩化リチウム膜を溶解し、ヒューズ23の溶断によって放電を終了する。なお、ヒューズ23は着脱自在であり、交換できるようにしてある。
【0026】
LED27は、電池17の放電と、放電の終了、すなわち放電回路24の断線とを表示するためのものである。LED27を備える表示回路28は、放電回路24に接続されており、LED27の点灯により電池17が放電状態にあることを表示し、消灯により放電の終了を表示する。放電回路24及び表示回路28の詳細は、別の図面を用いて後述する。
【0027】
作動対象回路装置14は、この例では回路基板13の他方の基板面(以下、第2基板面と称する)13B上に配されている。作動対象回路装置14は、電池ホルダ21に電池17が装填された場合に、電池17からの作動電流が流れて作動する作動対象装置の一例である。作動対象回路装置14は、無線回路36と、CPU(Central Processing Unit)37と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)センサ38とを有する。無線回路36は、例えば所定の無線信号を送受電する送受電部材としてのアンテナ41と、アンテナ41と電気的に接続され、アンテナ41とCPU37との間で信号の伝達を行う無線回路部42とを有し、所定の無線信号を受信する。アンテナ41と無線回路部42とは、回路基板13に設けられた配線を介して電気的に接続してもよいし、回路基板13を介さずに直接接続してもよい。
【0028】
CPU37は無線回路部42及びMEMSセンサ38に電気的に接続され、これらから取得した信号について所定の処理を行う。MEMSセンサ38は、例えば傾斜センサであり、装置モジュール10の姿勢を傾斜角度として検出する。CPU37は、例えば、無線回路36を介して外部機器から受信した無線信号に基づいてMEMSセンサ38を作動させ、MEMSセンサ38から取得した検出結果を無線回路36を介して外部機器に送信する。CPU37は、無線回路36が無線信号を受信することに応答して動作し、これによって、CPU37自体とMEMSセンサ38とに流れる電池17からの作動電流を増大させる。すなわち、この例では、CPU37及びMEMSセンサ38は作動電流増大回路として機能する。MEMSセンサ38はこの例に限られず、例えば温度を検出する温度センサや、超音波を送受信して距離や物体の有無など検出する超音波距離センサなど公知の種々のものでもよい。
【0029】
装置モジュール10は、上述のように電池ホルダ装置12と、回路基板13と、作動対象回路装置14とがモジュールケース11に収容されてパッケージ化されている。電池ホルダ21とヒューズ23とLED27とは第1基板面13A上に配され、作動対象回路装置14は第2基板面13B上に配されていることにより、装置モジュール10は極めて小型なモジュールとなっている。
【0030】
モジュールケース11はケース本体11aと蓋11bとを有し、回路基板13を支持する支持部材13aにより回路基板13がケース本体11a内に配される。回路基板13は、ケース本体11aの蓋11bによって開閉される開口側に第1基板面13Aを向けた姿勢で収容され、これにより、電池17の装填及び取り外しと、ヒューズ23の交換と、LED27の点灯及び消灯を視認することができるようになっている。
【0031】
モジュールケースはこの例に限定されず、電池ホルダ装置12と回路基板13と作動対象回路装置14とを収容することができるものであればよく、使用される場面や設置される場所等に応じて形状及び大きさは適宜決定される。例えば、装置モジュール10を、灯油タンクに設けられ、灯油の残量を検出して報知する灯油残量検出モジュールとする場合には、灯油タンクの灯油の補充口を開閉するタンクキャップをモジュールケースとしてもよい。
【0032】
装置モジュール10の回路構成について、図3を参照しながら説明する。なお、図3は、電池ホルダ21に電池17が装填された状態で描いてある。作動対象回路装置14は、正極接点部31と負極接点部32との間に接続されている。具体的には、正極接点部31と作動対象回路装置14との間にはダイオード51が接続されている。ダイオード51は、そのアノードが正極接点部31側となる向きで接続されている。ダイオード51は、電池17が逆方向に装填された場合に、作動対象回路装置14を保護する。なお、複数の電池17を並列接続するように電池ホルダ21を複数設けてもよい。なお、電池17は一次電池であり充電不可である。そこで、複数の電池17を並列接続する場合には、ダイオード51は、複数の電池ホルダ21の各々の正極接点部31と作動回路装置14との間に設ける。これにより、電池17間に電位差がある場合に電池17間での充電動作が確実に防止される。
【0033】
放電回路24と表示回路28とは初期化部55を構成しており、初期化部55は、電池17の出力電圧の初期化を行うとともに、初期化をしたことをLED27の点灯及び消灯により表示する。放電回路24は、電池17の負極に生成されている塩化リチウム膜を溶解し、これにより、電池17の出力電圧を、規格電圧もしくは規格電圧近くに回復して初期化するためのものである。放電回路24は、直列接続された放電用抵抗22とヒューズ23とを有し、正極接点部31と負極接点部32との間に接続されている。ヒューズ23の一端は、正極接点部31と作動対象回路装置との接続点P1に接続され、正極接点部31と接続されている。ヒューズ23の他端は、放電用抵抗22の一端に接続されている。放電用抵抗22の他端はグランドされて負極接点部32に接続されている。これにより、放電用抵抗22は、電池17が装填されたときに、電池17を放電させて放電電流を流す。ヒューズ23に流れる電流は、放電用抵抗22によって決まる。
【0034】
ヒューズ23は、電池17の出力電圧が略規格電圧である場合に放電用抵抗22によって決まる放電電流が所定時間流れたときに溶断する。これにより、電池17が装填されて放電を開始し、一定の時間が経過すると、ヒューズ23は溶断して放電回路24を断線させ、電池17から放電回路24への放電電流は流れなくなる。
【0035】
この例では電池17の規格電圧は3.6Vであり、抵抗値が6.8Ωである放電用抵抗22を用い、ヒューズ23としては約5秒で溶断するものを用いている。ただし、ヒューズ23が溶断するまでの上記所定時間は本例に限定されない。すなわち、放電回路24は、塩化リチウム膜を溶解して電池17の出力電圧を規格電圧もしくは規格電圧近くに回復させるためのものであるから、ヒューズ23は、電池17の出力電圧が回復するまで溶断せず、回復してから溶断するものを選定するとよい。
【0036】
なお厳密には、ヒューズ23に流れる放電電流は、初期化部55に流れる電流、すなわち放電回路24と表示回路28とに流れる電流の総和である。LED27を用いるこの例の表示回路28に流れる電流は、放電用抵抗22に流れる電流に比べて非常に小さいので、ヒューズ23の溶断に影響がほとんどないものとしてこの例では説明している。表示回路28に流れる電流が大きい場合には、その電流を加味してヒューズ23を選定する。
【0037】
表示回路28は、直列接続されたLED27と、LED27に流れる順方向電流を制限(規定)する電流制限抵抗58とを有する。LED27と電流制限抵抗58との直列回路は、放電用抵抗22と並列に接続されている。電流制限抵抗58の一端は、放電用抵抗22とヒューズ23との接続点P2に接続されており、ヒューズ23を介して正極接点部31に接続されている。電流制限抵抗58の他端は、LED27のアノードに接続されている。LED27のカソードはグランドされて、負極接点部32に接続されている。これにより、電池17が装填されて放電回路24に電流が流れている間にLED27が点灯し、ヒューズ23が溶断して放電回路24が断線するとLED27が消灯する。なお、LED27は、ヒューズ23が切れる前に点灯すればよく、電池17の装填時から点灯してもよいし、装填されてから多少の時間が経過したときに点灯してもよい。
【0038】
LED27は、電池17の放電と放電の終了とを表示する発光素子の一例である。可視光を射出する発光素子であれば目視で確認するための表示の機能をもつので、発光素子はLED27に限定されず、LED27を、例えば有機EL(electro-luminescence)、電球などを用いてもよい。
【0039】
上記構成の作用を説明する。装置モジュール10は、モジュールケース11の蓋11bを開けられたケース本体11aの電池ホルダ21に電池17が装填される。電池17は正極接点部31に正極端子17aが負極接点部32に負極端子17bが接するように装填される。装填された電池17の負極のリチウムに不働態(不動態)の塩化リチウムが生成していない場合もしくは生成していてもごく微量である場合には、電池17は正極接点部31と負極接点部32との間に接続されている作動対象回路装置14を作動させる。一方、電池17に塩化リチウム膜が生成している場合には、内部抵抗の増加により電圧が規格電圧よりも低くなる。
【0040】
放電回路24は、電池17が装填されたときに電池17を放電させて、放電用抵抗22により定められる電流を放電電流として流し、電池17の負極に生成していた塩化リチウム膜を溶解する。このように上記構成によると、簡単な回路構成で塩化リチウム膜が除去され、電池17の出力電圧が、規格電圧もしくは規格電圧近くに回復して初期化される。電池17は装填されると塩化リチウム膜が除去されるから、テスタなどの機器を使用せずとも、また、特段の電気的知識がない作業者であっても、電池17を装填するだけで、その場で容易に塩化リチウム膜が除去され、電池17の出力電圧が回復する。そのため、装填しなければならない電池17の個数が多い場合ほど作業効率がよい。
【0041】
電池17の出力電圧が略規格電圧である場合に放電用抵抗22によって決まる放電電流が所定時間流れたときに溶断するヒューズ23は、電池17の放電が開始してから一定の時間が経過して塩化リチウム膜が溶解して除去された後に溶断し、放電回路24を断線させる。ヒューズ23は、電池17の出力電圧が略規格電圧である場合に放電用抵抗22によって決まる放電電流が所定時間流れたときに溶断するものとしているから、塩化リチウム膜を確実に溶解してから切れる。したがって、電池17は装填されるだけで塩化リチウム膜が確実に除去され、そのため電池17を装填する作業者に特段の電気的知識を要しない。また、放電回路24は、電池17が塩化リチウム膜を除去して出力電圧を初期化すると断線するから、電池17の以降の放電が抑制され、電池17の寿命の短期化が抑えられる。
【0042】
表示回路28は、電池17が電池ホルダ21に装填されると、放電回路24のヒューズ23を介して放電電流が流れ、LED27が点灯する。これにより電池17において塩化リチウム膜の溶解を進行させていることが表示され、目視で確認することができる。したがって、電池17を装填したその場で、作業者は塩化リチウム膜の除去が進んでいること、すなわち出力電圧の回復処理が進んでいることを確認することができる。また、設けてあるヒューズ23が万一切れている場合などには、電池17が電池ホルダ21に装填されてもLED27が点灯しないから、別のヒューズ23へ交換すべきことを把握することができ、新たなヒューズ23を設けることにより、確実に塩化リチウム膜が除去される。このように、LED27が点灯しないことをもって、何らかの異常があることが容易にわかる。
【0043】
また、ヒューズ23が切れるとLED27が消灯する。これにより、塩化リチウム膜が除去されたこと、すなわち電池17が初期化されたことが表示され、目視で確認することができる。したがって、電池17を装填したその場で、作業者は塩化リチウム膜が除去されたこと、すなわち出力電圧が回復したことを確認することができる。また、上記構成によると、仮にヒューズ23の溶断がうまく機能しなかった場合に放電用抵抗22に電流が流れ続けて電池17が継続放電状態になり、本電源を必要とする作動対象回路装置14が起動しない問題が防止される。すなわちヒューズ23が切れない場合にはLED27が消灯しないことをもって異常が検知される。このように、何らかの異常でヒューズ23が切れない場合にはLED27が消灯せずに点灯したままとなるので、異常の検出も容易である。LED27は、放電回路24によって電池17の出力電圧の初期化を行ったことを表示するためのものであるから、電流制限抵抗58は、目視で容易に確認することができる十分な明るさにLED27を点灯させる抵抗値のものとし、ヒューズ23は、LED27の点灯が目視で確認することができる十分な時間、溶断しないものとする。
【0044】
LED27は、電池17が装填される電池ホルダ21と同じく、第1基板面13Aに配されており、これにより、電池17を装填したときにLED27の点灯及び消灯を容易に確認することができる。ヒューズ23も同様に、第1基板面13Aに配されており、これによりヒューズ23の交換が容易であり、電池17の交換時などの際には、新たな電池17が装填される前に、溶断したヒューズの取り外しと新たなヒューズ23の取り付けとが容易である。
【0045】
LED27が消灯した後、モジュールケース11の蓋11bが閉じられ、作動対象回路装置14が使用される。無線回路36が所定の無線信号を受信すると、この受信に応答してCPU37は、CPU37それ自体とMEMSセンサ38とに流れる電池17からの作動電流を、例えば所定の大きさに、一時的に増大させる。これにより、無線信号を受信すると、電池17に塩化リチウムが生成している場合には、その塩化リチウムが溶解される。したがって、作動対象回路装置14に、例えば1週間ごとなどの一定の頻度で無線信号を受信させることにより、生成した塩化リチウムを溶解し、電池17の出力電圧の低下が抑制される。
【符号の説明】
【0046】
10 装置モジュール
12 電池ホルダ装置
13 回路基板
14 作動対象回路装置
17 塩化チオニルリチウム電池
17a 正極端子
17b 負極端子
21 電池ホルダ
23 ヒューズ
24 放電回路
27 LED
28 表示回路
31 正極接点部
32 負極接点部
36 無線回路
37 CPU
38 MEMS
41 アンテナ
42 無線ユニット
56 放電用抵抗
58 電流制限抵抗
60 初期化部
図1
図2
図3