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特開2022-124539高圧噴射ノズル、切削装置および打込み工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124539
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】高圧噴射ノズル、切削装置および打込み工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/24 20060101AFI20220819BHJP
   E02D 7/26 20060101ALI20220819BHJP
   E02D 5/32 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
E02D7/24
E02D7/26
E02D5/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022240
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510181909
【氏名又は名称】株式会社久野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】中村 広規
(72)【発明者】
【氏名】清水 剛
(72)【発明者】
【氏名】久野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一広
【テーマコード(参考)】
2D041
2D050
【Fターム(参考)】
2D041BA11
2D041BA21
2D041DB02
2D041FA05
2D050AA11
2D050CA01
2D050CA05
2D050CB21
2D050CB42
(57)【要約】
【課題】施工時の手間および費用を低減しつつ、岩盤への鋼管杭や鋼矢板の打設を可能とした高圧噴射ノズル、切削装置および打込み工法を提案する。
【解決手段】先端に複数の噴射口46が形成されたヘッド部41と、ヘッド部41の基端部に設けられた基流路42と、基流路42の先端から噴射口46に至る複数の分岐流路43とを備える高圧噴射ノズルと、これを使用する打込み工法である。複数の分岐流路43の内空面積の合計は、基流路42の内空面積以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に複数の噴射口が形成されたヘッド部と、
前記ヘッド部の基端部に設けられた基流路と、
前記基流路の先端から前記噴射口に至る複数の分岐流路と、を備える高圧噴射ノズルであって、
複数の前記分岐流路の内空面積の合計は、前記基流路の内空面積以下であることを特徴とする、高圧噴射ノズル。
【請求項2】
前記分岐流路は、前記ヘッド部内において屈曲していて、
前記分岐流路の先端部は、前記基流路の軸方向に対して傾斜しており、
複数の前記分岐流路の先端部同士は、互いに異なる方向を向いていることを特徴とする、請求項1に記載の高圧噴射ノズル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高圧噴射ノズルと、前記高圧噴射ノズルよりも噴射水圧が低くかつ噴射水の最大吐出量が大きい高水量ノズルと、が並設されてなる切削装置。
【請求項4】
鋼材を岩盤に打設する打設工程と、
所定の深度に達した前記鋼材の先端部周囲に固化材を注入する根固め工程と、を備える打込み工法であって、
前記鋼材の先端には、請求項1または請求項2に記載の高圧噴射ノズルを複数備えた切削装置が設けられており、
前記打設工程では、前記高圧噴射ノズルから高圧水を噴射するとともに前記鋼材を岩盤に圧入し、
前記根固め工程では、前記高圧噴射ノズルから固化材を噴射することを特徴とする打込み工法。
【請求項5】
鋼材を岩盤に打設する打設工程と、
所定の深度に達した前記鋼材の先端部周囲に固化材を注入する根固め工程と、を備える打込み工法であって、
前記鋼材の先端には、請求項3に記載の切削装置が設けられており、
前記打設工程では、前記高圧噴射ノズルおよび前記高水量ノズルから高圧水を噴射するとともに前記鋼材を岩盤に挿入し、
前記根固め工程では、前記高水量ノズルから固化材を噴射することを特徴とする打込み工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射ノズル、切削装置および打込み工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤に杭や矢板を打設する場合に、ウォータージェットにより地盤を切削しながら、杭や矢板を圧入する場合がある。例えば、特許文献1には、コンクリート矢板に設けられた導水孔を利用して、コンクリート矢板の下端から高圧水を噴出させて地盤を切削しながら矢板を打ち込む矢板の打込み工法が開示されている。ところが、特許文献1の矢板の打込み工法は、導水孔が形成されたコンクリート矢板を使用するものであるため、鋼管杭や鋼矢板に採用することはできなかった。
また、特許文献2には、杭の外面に設けられた配管材を利用して、杭の先端の地盤に向けて水を噴射しながら杭を建て込む杭の打込み工法が開示されている。ところが、特許文献2の杭の打込み工法は、軟弱地盤を対象としており、岩盤などに鋼管杭や鋼矢板を打設する場合には採用することはできなかった。
そのため、岩盤に鋼管杭を打設する方法として、先端にビットが形成されたケーシングを回転させながら圧入する全旋回オールケーシング工法が採用される場合がある。全旋回オールケーシング工法は、先端に内面カッタ、内歯カッタ、外歯カッタ等を備えた特殊なケーシングチューブを利用して岩盤を切削し、ケーシングチューブ内のズリをハンマクラブなどで取り除いてから鋼管杭を打設する。そのため、作業に手間がかかり工期短縮化の妨げになるとともに、費用も高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07-238544号公報
【特許文献2】特開2001-193068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、施工時の手間および費用を低減しつつ、岩盤への鋼管杭や鋼矢板の打設を可能とした高圧噴射ノズル、切削装置および打込み工法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明の高圧噴射ノズルは、先端に複数の噴射口が形成されたヘッド部と、前記ヘッド部の基端部に設けられた基流路と、前記基流路の先端から前記噴射口に至る複数の分岐流路とを備えている。高圧噴射ノズルの複数の前記分岐流路の内空面積の合計は前記基流路の内空面積以下である。
かかる高圧噴射ノズルによれば、基流路よりも内空面積が小さい分岐流路から液体が噴射されるため高圧の液体を噴射することが可能となる。そのため、岩盤等の切削も可能である。また、当該高圧噴射ノズルを使用すれば、全旋回オールケーシング工法で使用されるような特殊なケーシングチューブや特殊な機械を使用する必要がないため、施工時の手間および費用の低減化を図ることができる。
また、前記分岐流路は、前記ヘッド部内において屈曲していて、前記分岐流路の先端部は、前記基流路の軸方向に対して傾斜しており、複数の前記分岐流路の先端部同士は互いに異なる方向を向いているのが望ましい。
かかる高圧噴射ノズルによれば、各噴射口が異なる方向に高圧水を噴射するため、噴射口を一つとする場合よりも切削溝の幅または切削孔の内径を大きくすることができる。そのため、鋼管杭や鋼矢板を打設するために必要な大きさで岩盤を切削することができる。
【0006】
また、本発明の切削装置は、前記高圧噴射ノズルと、前記高圧噴射ノズルよりも噴射水圧が低くかつ噴射水の最大吐出量が大きい高水量ノズルとが並設されてなる。かかる切削装置によれば、高圧噴射ノズルから噴射した高圧水により岩盤を破砕し、高水量ノズルから噴射した水(高圧噴射ノズルよりも多くの水)により切削孔の底部に溜まったズリを除去することが可能となるので、岩盤の切削を効率的に実施できる。
【0007】
また、本発明の打込み工法は、鋼材(鋼管や鋼矢板など)を岩盤に打設する打設工程と、所定の深度に達した前記鋼材の先端部周囲に固化材を注入する根固め工程とを備えている。
複数の高圧噴射ノズルを備えた切削装置を前記鋼材の先端に設けた場合には、前記打設工程では前記高圧ノズルから高圧水を噴射するとともに前記鋼材を岩盤に挿入し、前記根固め工程では前記高圧ノズルから固化材を噴射する。
一方、高圧噴射ノズルと高水量ノズルを備えた掘削装置を前記鋼材の先端に設けた場合には、前記打設工程では前記高圧ノズルおよび前記高水量ノズルから水を噴射するとともに前記鋼材を岩盤に挿入し、前記根固め工程では前記高水量ノズルから固化材を噴射する。
かかる打込み工法によれば、鋼材(鋼管や鋼矢板など)を岩盤に打ち込む際に、鋼材の先端に設けられた高圧ノズル噴射または切削装置を利用して岩盤の切削を行いつつ鋼材を打設するため、作業性に優れており、また、安価に施工できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の高圧噴射ノズル、切削装置および打込み工法によれば、施工時の手間および費用を低減しつつ、岩盤への鋼管杭や鋼矢板の打設が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第一実施形態の鋼材を示す図であって、(a)は先端部を示す斜視図、(b)はX-X断面図である。
図2】第一実施形態および第二実施形態の高圧噴射ノズルを示す図であって、(a)は断面図、(b)は先端面図である。
図3】第一実施形態および第二実施形態の打込み工法を示すフローチャートである。
図4】第一実施形態の打込み工法の作業状況を示す断面図であって、(a)、(b)は打設工程、(c)は根固め工程である。
図5】第二実施形態の鋼材を示す図であって、(a)は正面図、(b)は先端面図、(c)は分岐ジェット管の設置状況を示す拡大断面図である。
図6】第二実施形態の打込み工法の作業状況を示す断面図であって、(a)、(b)は打設工程、(c)は根固め工程である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
第一実施形態では、硬質地盤(中硬岩~硬岩)に鋼管杭(鋼材)1を打設する場合について説明する。図1に鋼管杭1の先端部を示す。図1(a)に示すように、鋼管杭1の先端には高圧噴射ノズル4および高水量ノズル5(切削装置)が設けられている。また、鋼管杭1の外面には高圧ホース2が添接されている。本実施形態では、2本の高圧ホース2,2が鋼管杭1を挟んで対向する位置に配管されている(図1では、一方の高圧ホース2のみを示している)。高圧ホース2は、ウォータージェットカッタ21(図4参照)またはポンプ(図示せず)から延設されており、ウォータージェットカッタ21を介して圧送された高圧水や固化材用ポンプを介して圧送された固化材を鋼管杭1の先端部に輸送する。各高圧ホース2の先端には、それぞれ分岐ジェット管3が接続されている。
【0011】
図1(a)に示すように、分岐ジェット管3は、高圧ホース2に接続される1本の管路からなる基部31と、基部31の先端部において複数(本実施形態では6本)の管路に分岐された分岐部32とを備えている。分岐部32を構成する各管路の先端は、鋼管杭1の先端に固定された高圧噴射ノズル4または高水量ノズル5に接続されている。本実施形態では、一方の高圧ホース2から延設された分岐ジェット管3が高圧噴射ノズル4に接続されており、他方の高圧ホース2から延設された分岐ジェット管3は高水量ノズル5に接続されている。図1(b)に示すように、高圧噴射ノズル4と高水量ノズル5は、鋼管杭1の周方向に対して等間隔で交互に並設されている。
【0012】
高圧噴射ノズル4は、高圧ホース2を介して送水された高圧水を噴射して、地盤を切削するノズルである。図2に高圧噴射ノズル4を示す。
高圧噴射ノズル4は、図2(a)に示すように、ヘッド部41と、本管(基流路)42と、複数(本実施形態では2本)の分岐管(分岐流路)43,43とを備えている。
ヘッド部41は、分岐ジェット管3の先端部に固定された筒状体44と筒状体44の先端(分岐ジェット管3と反対側の端部)を遮蔽するヘッドカバー45とを備えている。筒状体44は、ロックナットを介して分岐ジェット管3の先端に固定されている。また、ヘッドカバー45は、先端に向かうにしたがって縮径する円錐状を呈している。さらに、図2(b)に示すように、ヘッド部41の先端には、複数(本実施形態では2カ所)の噴射口46,46が形成されている。
【0013】
本管42は、図2(a)に示すように、ヘッド部41の基端部に設けられている。本管42は、分岐ジェット管3に接続されていて、高圧ホース2および分岐ジェット管3を介して輸送された液体(水または固化材)を先端側に送液する。本管42の先端は、分岐管43により分岐されている。
分岐管43は、本管42の先端から噴射口46に至る。すなわち、分岐管43は、本管42から送られた液体を噴射口46に輸送する。分岐管43の先端は、噴射口46において開口しており、噴射口46に輸送された液体は、噴射口46を介してヘッド部41の先端から噴射される。複数の分岐管43,43の内空面積の合計は、本管42の内空面積以下である。すなわち、本管42を介して輸送された液体は、内空面積が小さい分岐管43に送り込まれることによって、圧力が高められる。分岐管43は、ヘッド部41内において屈曲していて、分岐管43の先端部は本管42の軸方向に対して傾斜している。また、分岐管43の先端部同士は、互いに異なる方向を向いている。すなわち、各噴射口46から噴射する液体は、互いに異なる方向に噴射される。
【0014】
高水量ノズル5は、高圧噴射ノズル4よりも噴射水圧が低くかつ噴射水の最大吐出量が大きいノズルである。高圧ホース2および分岐ジェット管3を介して送水された高水量の水を噴射することで、高圧噴射ノズル4により切削されたズリを鋼管杭1の先端から除去する。
【0015】
次に、本実施形態の鋼管杭1の打込み工法について説明する。図3および図4に打込み工法を示す。図3に示すように、本実施形態の打込み工法は、注入量算出工程S1と、準備工程S2と、打設工程S3と、根固め工程S4とを備えている。
注入量算出工程S1は、試験施工を行い、固化材の計画注入量を算出する工程である。固化材は、地盤を切削することにより形成された切削孔と鋼管杭1のとの空隙に充填するため、地盤条件や施工条件により変化する。そのため、本実施形態では、試験施工を行うことで、現場条件に応じた固化材の計画注入量を算出する。なお、本実施形態では、固化材としてセメントミルクを使用するが、固化材を構成する材料は、比重が水より重いものであれば限定されない。試験施工は、実際の施工要領に基づいて、鋼管杭1を打設し、固化材の充填長を計測することにより行う。
準備工程S2では、鋼管杭1の外面に沿って高圧ホース2を配管する。鋼管杭1には、分岐ジェット管3、高圧噴射ノズル4および高水量ノズル5が予め固定されている。高圧ホース2の先端は、分岐ジェット管3に接続する。なお、高圧ホース2は、図4(a)に示すように、ウォータージェットカッタ21から延設されている。
【0016】
打設工程S3は、鋼管杭1を地盤(岩盤)Gに打設する工程である。図4(a)および(b)に打設工程S3を示す。図4(a)および(b)に示すように、打設工程S3では、高圧噴射ノズル4および高水量ノズル5から水(高圧水W)を噴射するとともにバイブロハンマ6により振動を与えながら鋼管杭1を地盤Gに圧入する。高圧水Wは、ウォータージェットカッタ21から供給される。高圧水Wは、水槽22からくみ上げられた水がウォータージェットカッタ21によって高圧水Wに変換されたものである。ウォータージェットカッタ21を操作することで、高圧水Wの圧力の調整が可能である。バイブロハンマ6は、発動発電機61から供給された電力により駆動する。高圧噴射ノズル4から噴射された高圧水Wにより地盤Gが切削されて、切削孔7が形成されるため、この切削孔7に鋼管杭1を挿入(圧入)する。このとき、高水量ノズル5から噴射された高水量の水により、切削孔7の孔底71に落下したズリを除去する。孔底71のズリを除去することで、高圧噴射ノズル4から噴射された高圧水Wを直接孔底71に当てることが可能となる。なお、孔底71にズリが多く残っていると、ズリがクッションとなって、高圧噴射ノズル4による地盤Gの切削が阻害される(ズリによって高圧噴射ノズル4から噴射された高圧水の威力が吸収される)虞がある。鋼管杭1の先端が所定の位置に到達したら、バイブロハンマ6および水(高圧水Wを含む)の噴射を停止する。
【0017】
根固め工程S4は、所定の深度に達した鋼管杭1の先端を地盤(岩盤)Gに固定する工程である。図4(c)に根固め工程を示す。根固め工程S4では、図4(c)に示すように、高水量ノズル5から固化材8を噴射することで、鋼管杭1の先端部周囲に固化材8を注入する。本実施形態では、高圧ホース2に、切替弁(図示せず)を介してウォータージェットカッタ21または固化材用ポンプ81が接続されている。固化材用ポンプ81は、ミキサー82内の固化材を圧送する。根固め工程S4では、切替弁を操作することにより高圧ホース2への接続をウォータージェットカッタ21から固化材用ポンプ81に切り替えて、固化材用ポンプ81を介して圧送された固化材8を高水量ノズル5から噴射する。高水量ノズル5から吐出した固化材8は、鋼管杭1の外周と切削孔7の孔壁72と間および鋼管杭1の内部を通り、切削孔7内の水を下から上に追い出しながら充填される。鋼管杭1の外周と孔壁72との間隙は鋼管杭1の周長にわたって略均一の大きさとなる。また、水よりも比重の重い固化材8を使用しているため、鋼管杭1に作用する浮力も略均一となる。固化材8の注入量は、注入量算出工程S1において算出した量とする。
【0018】
以上、本実施形態の鋼管杭1の打込み工法によれば、鋼管杭1を地盤(岩盤)Gに打ち込む際に、鋼管杭1の先端に設けられた高圧噴射ノズル4および高水量ノズル5(掘削装置)を利用して地盤の切削を行いつつ鋼管杭1を打設するため、作業性に優れており、また、安価に施工できる。
また、高圧噴射ノズル4は、本管42の内空面積よりも内空面積の合計が小さい分岐管43,43から水が噴射するため、水圧を高めた状態で水(高圧水)を噴射することが可能となる。そのため、80~150N/mm級の硬岩の切削も可能である。また、高圧噴射ノズル4を使用すれば、全旋回オールケーシング工法で使用されるような特殊なケーシングチューブや特殊な機械を複数使用する必要がないため、施工時の手間および費用の低減化を図ることができる。
【0019】
また、分岐管43,43は、ヘッド部41内において屈曲していて、分岐管43,43の先端部同士は互いに異なる方向を向いているため、各噴射口46から異なる方向に高圧水が噴射されて、噴射口46を一つとする場合よりも切削孔7の内径を大きくすることができる。そのため、鋼管杭1を打設するために必要な大きさ(内径)で岩盤を切削できる。
また、高圧噴射ノズル4に高水量ノズル5が並設されているため、高圧噴射ノズル4から噴射した高圧水により岩盤を破砕し、高水量ノズル5から噴射した水(高圧噴射ノズル4よりも多くの水)により切削孔7の底部(孔底71)に溜まったズリを除去することでき、岩盤の切削が効率的になる。
【0020】
<第二実施形態>
第二実施形態では、鋼矢板(鋼材)10を地盤に打設する場合について説明する。図5に鋼矢板10を示す。図5(a)に示すように、鋼矢板10には、軸方向に沿って分岐ジェット管3が添接されている。分岐ジェット管3は、高圧ホース2(図6参照)が接続される1本の管路からなる基部31と、基部31の先端部において複数(本実施形態では3本)の管路に分岐された分岐部32とを備えている。分岐部32を構成する各管路の先端は、鋼管杭1の先端に固定された高圧噴射ノズル4に接続されている。図5(b)に示すように、分岐ジェット管3および高圧噴射ノズル4,4,4は、U字状の鋼矢板10の凹部(3片に囲まれている側の面)に設けられている。
図5(c)に分岐ジェット管3の設置状況を示す。図5(c)に示すように、本実施形態では、分岐ジェット管3と鋼矢板10との当接面に沿って、一対の取付部材11が添接されている。取付部材11は、所定の長さの鉄筋であって、鋼矢板10の表面に溶接されている。一対の取付部材11,11は、分岐ジェット管3を挟むように、配設されていて、分岐ジェット管3のずれを抑制する。取付部材11は、分岐ジェット管3の軸方向に沿って、間隔をあけて複数設けられている。
【0021】
高圧噴射ノズル4は、高圧ホース2および分岐ジェット管3を介して送水された高圧水を噴射して、地盤を切削する。高圧噴射ノズル4は、先端に複数の噴射口46が形成されたヘッド部41と、ヘッド部41の基端部に設けられた本管(基流路)42と、本管42の先端から噴射口46に至る複数の分岐管(分岐流路)43,43とを備えている。複数の高圧噴射ノズル4,4,…は、本実施形態の切削装置を構成している。
本管42は、分岐ジェット管3の先端に接続されていて、分岐ジェット管3を介して輸送された液体を先端側(分岐管43,43)に送液する。
この他の高圧噴射ノズル4の詳細は、第一実施形態の高圧噴射ノズル4と同様なため、詳細な説明は省略する。
【0022】
本実施形態の鋼矢板10の打込み工法は、図3に示すように、注入量算出工程S1と、準備工程S2と、打設工程S3と、根固め工程S4とを備えている。
注入量算出工程S1は、試験施工を行い、固化材の計画注入量を算出する工程である。固化材は、地盤を切削することにより形成された切削孔と鋼矢板10のとの空隙に充填するため、地盤条件や施工条件により変化する。そのため、本実施形態では、試験施工を行うことで、現場条件に応じた固化材の計画注入量を算出する。
準備工程S2では、分岐ジェット管3に高圧ホース2を接続する。鋼矢板10には、分岐ジェット管3高圧噴射ノズル4が予め固定されている。高圧ホース2は、ウォータージェットカッタ21(図6参照)から延設されている。
【0023】
打設工程S3は、鋼矢板10を地盤(岩盤)Gに打設する工程である。図6(a)および(b)に打設工程S3を示す。打設工程S3では、図6(a)および(b)に示すように、ウォータージェットカッタ21から圧送された高圧水を高圧噴射ノズル4から噴射するとともにバイブロハンマ6(図示せず)により振動を与えつつ鋼矢板10を地盤Gに圧入する。並設された複数の高圧噴射ノズル4から噴射された高圧水により地盤Gを切削して切削溝70を形成し、この切削溝70にバイブロハンマ6により振動を与えながら鋼矢板10を挿入(圧入)する。鋼矢板10の先端が所定の位置に到達したら、バイブロハンマ6および高圧水の噴射を停止する。
【0024】
根固め工程S4は、所定の深度に達した鋼矢板10の先端を地盤(岩盤)Gに固定する工程である。図6(c)に根固め工程S4を示す。根固め工程S4では、固化材用ポンプ81を介して圧送された固化材8を高圧噴射ノズル4から噴射することで、鋼矢板10の先端部周囲に固化材8を注入する。高圧噴射ノズル4から吐出した固化材8は、鋼矢板10と切削溝70の溝壁73との間を通り、切削溝70内の水を下から上に追い出しながら充填される。固化材8の注入量は、注入量算出工程S1において算出した量とする。
【0025】
以上、本実施形態の鋼矢板10の打込み工法によれば、鋼矢板10を地盤に打ち込む際に、鋼矢板10の先端に設けられた高圧噴射ノズル4を利用して地盤の切削を行いつつ鋼矢板10を圧入するため、作業性に優れており、また、安価に施工できる。
また、高圧噴射ノズル4は、本管42の内空面積よりも内空面積の合計が小さい分岐管43,43から水が噴射されるため水圧を高めた状態で噴射することが可能となる。
また、分岐管43,43は、ヘッド部41内において屈曲していて、分岐管43,43の先端部同士は互いに異なる方向を向いているため、各噴射口46から異なる方向に高圧水が噴射されて、噴射口46を一つとする場合よりも切削幅を大きくすることができる。そのため、鋼矢板10を打設するために必要な幅の切削溝70を形成できる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、鋼材の施工箇所は限定されるものではなく、例えば、水上から水底に鋼管杭1を打設する場合や、地下構造物の施工か所の周囲を取り囲む土留壁を鋼矢板10により形成する場合、河川の仮締切工事などに適用可能である。
分岐管33は、必ずしもヘッド部41内で屈曲している必要はなく、直線状に噴射口34に接続されていてもよい。
高圧噴射ノズル4と高水量ノズル5を併設する場合には、根固め工程において、高圧噴射ノズル4と高水量ノズル5の両右方から固化材を噴射してもよい。
前記各実施形態では、ノズル(高圧噴射ノズル4、高水量ノズル5)同士が間隔をあけて配設されている場合について説明したが、ノズル同士は互いに当接していてもよい。
高圧噴射ノズル4と高水量ノズル5を併設する場合には、打設工程において、高圧噴射ノズル4と高水量ノズル5との両方から同時に水を噴射してもよいし、交互に噴射してもよい。
高圧噴射ノズル4と高水量ノズル5とを並設する場合における各ノズルの本数および配置は限定されるものではなく、例えば、高圧噴射ノズル4が2本に対して高水量ノズル5を1本としてもよいし、それぞれの本数を同数として交互に配置してもよい。
取付部材11の構成は、高圧ホース2を係止することが可能であれば限定されるものではなく、例えば、鋼矢板10の表面に固定された溝形鋼、板材、金属棒等であってもよい。また、取付部材11は、鋼矢板10の全長にわたって設けられていてもよい。
根固めは必要に応じて行えばよい。
前記実施形態では、高圧噴射ノズル4が、ヘッド部41と、本管42と、複数(本実施形態では2本)の分岐管43,43とを備えるものとしたが、高圧噴射ノズル4の構成は限定されるものではなく、例えば、密実のヘッド部41に基流路(孔)と複数の分岐流路(孔)が形成されたものであってもよい。なお、高圧噴射ノズル4と高水量ノズル5の配管ルートは別でもよいし、同じでもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 鋼管杭(鋼材)
10 鋼矢板(鋼材)
2 高圧ホース
3 分岐ジェット管
31 基部
32 分岐部
4 高圧噴射ノズル
41 ヘッド部
42 本管(基流路)
43 分岐管(分岐流路)
44 筒状体
45 ヘッドカバー
46 噴射口
5 高水量ノズル
6 バイブロハンマ
7 切削孔
71 孔底
72 孔壁
8 固化材
図1
図2
図3
図4
図5
図6