(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124551
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】鋼板の位置決め装置、位置決め方法及び鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65H 9/04 20060101AFI20220819BHJP
B65H 9/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B65H9/04
B65H9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022261
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】河合 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 健
【テーマコード(参考)】
3F102
【Fターム(参考)】
3F102AA20
3F102AB06
3F102BA01
3F102BB04
3F102DA03
3F102EC00
3F102FA03
(57)【要約】
【課題】 厚鋼板などの鋼板を搬送装置の所定位置に載せるにあたり、迅速に精度良く、更に人手を要することなく、安全に鋼板の位置決めを行うことができ、且つ高い衝撃吸収性能を有する鋼板の位置決め装置を提案する。
【解決手段】 本発明に係る鋼板の位置決め装置は、鋼板を搬送装置の所定位置に載せる鋼板の位置決め装置1であって、鋼板の端面に当接するストッパー2と、該ストッパーを前記搬送装置の鋼板搬送方向に交差する方向に前進及び後進させる駆動装置8と、鋼板が前記ストッパーに当接した際の衝撃を吸収する緩衝装置13と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を搬送装置の所定位置に載せる鋼板の位置決め装置であって、
鋼板の端面に当接するストッパーと、
該ストッパーを前記搬送装置の鋼板搬送方向に交差する方向に前進及び後進させる駆動装置と、
鋼板が前記ストッパーに当接した際の衝撃を吸収する緩衝装置と、
を有する、鋼板の位置決め装置。
【請求項2】
前記ストッパーの荷重を支え、且つ、前記ストッパーの前進及び後進の移動をガイドするガイド装置を更に有する、請求項1に記載の鋼板の位置決め装置。
【請求項3】
前記ガイド装置は、該ガイド装置を保持するガイド装置ハウジングまたは前記ストッパーの一方に取り付けられた軸受ブッシュと、前記ガイド装置ハウジングまたは前記ストッパーの他方に取り付けられ、前記軸受ブッシュに対して相対移動が可能なガイドロッドと、を有する、請求項2に記載の鋼板の位置決め装置。
【請求項4】
前記ストッパーと前記ガイド装置とは、前記ストッパーの長手方向には固定されておらず、前記ストッパーは、該ストッパーの熱膨張に応じて前記ガイド装置に対して移動するように構成されている、請求項2または請求項3に記載の鋼板の位置決め装置。
【請求項5】
前記駆動装置は、エアーシリンダーである、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の鋼板の位置決め装置。
【請求項6】
前記駆動装置は、基礎の上に設けられており、前記緩衝装置は前記駆動装置と前記基礎との間に設置されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の鋼板の位置決め装置。
【請求項7】
前記駆動装置と前記基礎とはピンを介して接続されており、鋼板がストッパーに衝突した際の水平方向の衝撃力を前記ピンによって鉛直方向の力に変化させ、鉛直方向に変化させた衝撃力を前記緩衝装置により吸収する、請求項6に記載の鋼板の位置決め装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の鋼板の位置決め装置を用い、吊り上げた鋼板の端面を前記ストッパーに当接させて前記鋼板の位置決めを行う、鋼板の位置決め方法。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の鋼板の位置決め装置を用い、吊り上げた鋼板の端面を前記ストッパーに当接させて前記鋼板の位置決めを行い、その後、前記鋼板を降下させて前記搬送装置の所定位置に載せ、前記搬送装置で鋼板を搬送する、鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚鋼板などの鋼板を搬送装置の所定位置に載せる鋼板の位置決め装置に関し、また、前記位置決め装置を用いた鋼板の位置決め方法及び鋼板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧延して得た厚鋼板などの素材鋼板を搬送装置上の切断装置で切断して製品鋼板を製造する場合には、前記素材鋼板を搬送装置に載せることが必要である。
【0003】
従来、鋼板置き場などに置かれた鋼板を搬送装置に載せる場合には、リフティングマグネット式(電磁石吸着式)クレーンなどで鋼板をほぼ水平姿勢で吊り上げ、吊り上げた鋼板の端面と搬送装置側面との距離を目測測定し、人手で位置決めし、その後、吊り上げた鋼板を搬送装置上に降ろす方法が用いられてきた。
【0004】
また、鋼板を搬送装置の所定位置に載せる場合に、人手を介さずに行うことを目的として、特許文献1には、鋼板を架台上の所定位置に載置する位置決め装置であって、架台の横に垂直に立設された2以上の支柱と、その支柱に嵌合される、内部空間の大きさが支柱断面より大きい筒状のストッパーと、支柱の反架台側から前記ストッパーを支柱に押し付ける固定装置とからなる鋼板の位置決め装置が提案されている。特許文献1は、リフティングマグネット式(電磁石吸着式)クレーンなどで吊り上げた鋼板の端面を前記ストッパーの側面に当接させて、鋼板の位置決めを行うという装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術には以下の問題点がある。
【0007】
即ち、従来の人手を介する方法では、位置決めに長時間を要する上、載置精度が悪く、更に安全上の問題点もあった。
【0008】
また、特許文献1に提案される支柱とストッパーとからなる位置決め装置では、鋼板端面をストッパーに当接させた際に、ストッパーを支柱方向に移動させることで衝撃を緩和させているが、つまり、ストッパーに緩衝機能を持たせているが、ストッパーによる衝撃緩衝だけでは不十分であるために、鋼板衝突時の衝撃吸収性能が弱く、ストッパーが変形する場合が発生し、その場合には、ストッパーを交換する必要があるという問題点があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、厚鋼板などの鋼板を搬送装置の所定位置に載せるにあたり、迅速に精度良く、更に人手を要することなく、安全に鋼板の位置決めを行うことができ、且つ高い衝撃吸収性能を有する鋼板の位置決め装置を提供することである。また、前記鋼板の位置決め装置を用いた鋼板の位置決め方法及び鋼板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
【0011】
[1]鋼板を搬送装置の所定位置に載せる鋼板の位置決め装置であって、
鋼板の端面に当接するストッパーと、
該ストッパーを前記搬送装置の鋼板搬送方向に交差する方向に前進及び後進させる駆動装置と、
鋼板が前記ストッパーに当接した際の衝撃を吸収する緩衝装置と、
を有する、鋼板の位置決め装置。
【0012】
[2]前記ストッパーの荷重を支え、且つ、前記ストッパーの前進及び後進の移動をガイドするガイド装置を更に有する、上記[1]に記載の鋼板の位置決め装置。
【0013】
[3]前記ガイド装置は、該ガイド装置を保持するガイド装置ハウジングまたは前記ストッパーの一方に取り付けられた軸受ブッシュと、前記ガイド装置ハウジングまたは前記ストッパーの他方に取り付けられ、前記軸受ブッシュに対して相対移動が可能なガイドロッドと、を有する、上記[2]に記載の鋼板の位置決め装置。
【0014】
[4]前記ストッパーと前記ガイド装置とは、前記ストッパーの長手方向には固定されておらず、前記ストッパーは、該ストッパーの熱膨張に応じて前記ガイド装置に対して移動するように構成されている、上記[2]または上記[3]に記載の鋼板の位置決め装置。
【0015】
[5]前記駆動装置は、エアーシリンダーである、上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の鋼板の位置決め装置。
【0016】
[6]前記駆動装置は、基礎の上に設けられており、前記緩衝装置は前記駆動装置と前記基礎との間に設置されている、上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の鋼板の位置決め装置。
【0017】
[7]前記駆動装置と前記基礎とはピンを介して接続されており、鋼板がストッパーに衝突した際の水平方向の衝撃力を前記ピンによって鉛直方向の力に変化させ、鉛直方向に変化させた衝撃力を前記緩衝装置により吸収する、上記[6]に記載の鋼板の位置決め装置。
【0018】
[8]上記[1]から上記[7]のいずれかに記載の鋼板の位置決め装置を用い、吊り上げた鋼板の端面を前記ストッパーに当接させて前記鋼板の位置決めを行う、鋼板の位置決め方法。
【0019】
[9]上記[1]から上記[7]のいずれかに記載の鋼板の位置決め装置を用い、吊り上げた鋼板の端面を前記ストッパーに当接させて前記鋼板の位置決めを行い、その後、前記鋼板を降下させて前記搬送装置の所定位置に載せ、前記搬送装置で鋼板を搬送する、鋼板の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る鋼板の位置決め装置によれば、厚鋼板などの鋼板を搬送装置の所定位置に載せる際に、迅速に精度良く、更に人手を要することなく、安全に鋼板の位置決めを行うことが実現される。また、本発明に係る鋼板の位置決め装置は高い衝撃吸収性能を有するので、鋼板の当接時に衝撃力を受けても、損傷を防止し、交換不要で長期間の使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係る鋼板の位置決め装置の実施形態の一例を示す図であり、鋼板の位置決め装置の概略平面図である。
【
図2】本発明に係る鋼板の位置決め装置の実施形態の一例を示す図であり、
図1のX-X’矢視による概略図である。
【
図3】本発明に係る鋼板の位置決め装置の実施形態の一例を示す図であり、
図2のY-Y’矢視による一部断面概略図である。
【
図4】本発明に係る鋼板の位置決め装置の実施形態の一例を示す図であり、
図2のZ-Z’矢視による一部断面概略図である。
【
図5】平板状ストッパーとガイド装置のガイドロッドとの連結関係を示す一部断面概略図である。
【
図6】駆動装置の作動により平板状ストッパーを駆動装置ハウジングに対して前進させた状態を示す一部断面概略図である。
【
図7】駆動装置の作動に伴い、ガイドロッドが軸受ブッシュに対して移動する状態を示す一部断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態例を具体的に説明する。
【0023】
本発明に係る鋼板の位置決め装置は、鋼板置き場などに置かれた鋼板を搬送装置に載せる場合に使用する装置であり、鋼板を搬送するための搬送装置に近接して設けられている。具体的には、鋼板置き場などに置かれた鋼板を、吊り上げ装置(リフティングマグネット式クレーンなど)を用いて水平姿勢で吊り上げ、本発明に係る鋼板の位置決め装置が近接して設置されている搬送装置の上方に運び、この鋼板の端面を、本発明に係る鋼板の位置決め装置によって位置決めし、位置が決められた状態で鋼板を吊り下げて、搬送装置の所定位置に載せる。搬送装置に載せられた鋼板は、搬送装置によって次工程(例えば、鋼板端面の切断工程など)に搬送される。
【0024】
本発明に係る鋼板の位置決め装置の実施形態の一例を、
図1~
図4に示す。
図1は、鋼板の位置決め装置の実施形態の一例の概略平面図、
図2は、
図1のX-X’矢視による概略図、
図3は、
図2のY-Y’矢視による一部断面概略図、
図4は、
図2のZ-Z’矢視による一部断面概略図である。
【0025】
図1~
図4に示すように、本実施形態の鋼板の位置決め装置1は、吊り上げ装置によって水平姿勢で吊り上げられた鋼板(図示せず)の端面に当接する、鋼板の搬送方向に延びる平板状のストッパー2(以下、「平板状ストッパー2」と記す)と、平板状ストッパー2を保持する駆動装置8と、駆動装置8を保持する駆動装置ハウジング3とを有する。吊り上げられた鋼板の端面は、平板状ストッパー2の搬送装置側の鉛直方向の側面2aに当接する。平板状ストッパー2の側面2aは、鋼板を搬送するための搬送装置の複数のロール40の端面を結ぶ方向と並行している。平板状ストッパー2の厚みは、例えば10~20mm程度とする。
【0026】
図1は、駆動装置8のシリンダーロッド9を収縮させた状態であり、平板状ストッパー2はロール40から離れているが、駆動装置8のシリンダーロッド9を伸長させることで、平板状ストッパー2は、搬送装置の鋼板搬送方向に対して直交方向に前進し、ロール40の上方まで前進する。駆動装置8は、例えば、エアーシリンダー、油圧シリンダー、電動シリンダーなどで構成する。
【0027】
駆動装置8の作動により、平板状ストッパー2は搬送装置の鋼板搬送方向に対して直交方向に前進及び後進する。つまり、駆動装置8の作動により、平板状ストッパー2は駆動装置ハウジング3に対して前進及び後進するように構成されている。本実施の形態では、油漏れなどがなくメンテンナンス性が優れることから、駆動装置8としてエアーシリンダーを使用した例で説明する。
【0028】
尚、平板状ストッパー2は、搬送装置のロール40の端面を結ぶ方向に対して側面2aが並行を保った状態で前進及び後進する構成であればよい。このため、平板状ストッパー2は、必ずしも搬送装置の鋼板搬送方向に対して直交方向に移動する構成である必要はなく、搬送装置の鋼板搬送方向に交差する方向、即ち、前記鋼板搬送方向に対して斜め前方及び斜め後方に移動する構成であってもよい。
【0029】
駆動装置8は、ボルト(図示せず)及びナット(図示せず)などによって駆動装置ハウジング3に固定して保持されており、駆動装置8から伸縮するシリンダーロッド9が、平板状ストッパー2に溶接などによって取り付けられた基板7と接続している。基板7とシリンダーロッド9との連結方法は、本実施の形態では、基板7にシリンダーロッド9の先端部と嵌合する中空軸7aを取り付け、中空軸7a及びシリンダーロッド9を貫通するピン(図示せず)によって連結しているが、この方法に限らず、例えば、基板7とシリンダーロッド9とを溶接によって連結する方法などを用いることができる。基板7は平板状ストッパー2の強度を補充する部材である。ここで、駆動装置ハウジング3は基板7とは連結(接続)していない。
【0030】
駆動装置ハウジング3の下方には、
図3に示すように、架台11が設けられており、駆動装置ハウジング3は、ピン12を介して架台11と接続されている。つまり、駆動装置ハウジング3は、ピン12を回転軸として架台11に対して回転可能に設置されている。また、駆動装置ハウジング3と架台11との間には、駆動装置ハウジング3の搬送装置から遠い側の後端部に、緩衝装置13が設置されている。即ち、駆動装置ハウジング3は、ピン12と緩衝装置13とで架台11に支持されており、緩衝装置13によって駆動装置ハウジング3のピン12を回転軸とする回転が抑制されている。
【0031】
架台11の下方にはベース架台10が設けられており、架台11は、ボルト(図示せず)及びナット(図示せず)によってベース架台10と固定して設置されている。また、ベース架台10の下方には基礎6が設けられており、ベース架台10は埋め込みボルト(図示せず)などによって基礎6と固定して設置されている。
図2、
図3、
図4のGLはグランドレベルを示す。
【0032】
本実施の形態では、緩衝装置13は、一例として鉛直方向に延びるタケノコバネによって構成されており、駆動装置ハウジング3は、ピン12とタケノコバネからなる緩衝装置13とで支持されることにより、鋼板が平板状ストッパー2の側面2aに当接した際に平板状ストッパー2に掛かる水平方向の衝撃力を、ピン12で回転させて鉛直方向の力に変化させ、鉛直方向の力に変化させた衝撃力をタケノコバネからなる緩衝装置13で吸収し、且つ、架台11、ベース架台10及び基礎6へ伝播させるように構成されている。
【0033】
また、本実施の形態の鋼板の位置決め装置1には、鋼板の搬送方向(平板状ストッパー2の長手方向)において、駆動装置ハウジング3の両側にガイド装置ハウジング4及びガイド装置ハウジング5の2つのガイド装置ハウジングが設けられている。
図1において、紙面の左側のガイド装置ハウジングをガイド装置ハウジング4と記し、紙面の右側のガイド装置ハウジングをガイド装置ハウジング5と記し、両者を区別して示しているが両者の構造は同一である。駆動装置ハウジング3とガイド装置ハウジング4との間隔(中心間距離)、及び、駆動装置ハウジング3とガイド装置ハウジング5との間隔(中心間距離)は1~2mとすることが好ましい。
【0034】
ガイド装置ハウジング4には、ガイド装置16が設けられ、ガイド装置ハウジング5には、ガイド装置25が設けられている。ガイド装置16及びガイド装置25は、同一構造であり、ここでは、ガイド装置ハウジング4に設けられたガイド装置16を例として説明する(以下、ガイド装置ハウジング5に設けられた各部材の符号をカッコ内に示す)。
【0035】
ガイド装置16(25)は、ガイド装置ハウジング4(5)に固定して設置された軸受ブッシュ18(27)と、軸受ブッシュ18(27)の内部を貫通するガイドロッド17(26)とで構成されている。ガイドロッド17(26)は軸受ブッシュ18(27)に対して相対移動が可能となっている。
【0036】
軸受ブッシュ18(27)の内部にはガイドロッド17(26)を通す内孔が設けられており、ガイドロッド17(26)は、軸受ブッシュ18(27)の内孔と密着していて、ガイドロッド17(26)は、軸受ブッシュ18(27)に対してガイドロッド17(26)の軸方向では移動可能であるが、ガイドロッド17(26)が軸受ブッシュ18(27)の内孔で上下左右に移動することが防止されている。即ち、ガイドロッド17(26)はその軸方向にのみ移動するように構成されている。このガイド装置16(25)は、平板状ストッパー2の荷重を支えるとともに、駆動装置8の作動に伴う平板状ストッパー2の前進及び後進をガイドする。
【0037】
ガイドロッド17(26)の先端部は、ガイドロッド17(26)の他の部位よりも直径が大きくなっていて、この先端部が、平板状ストッパー2に設置されたロッド保持部15(24)に収容されている。ガイドロッド17(26)の先端部は、平板状ストッパー2と密着しているが、ガイドロッド17(26)の先端部と平板状ストッパー2とは固定されてはいない。つまり、ガイドロッド17(26)の先端部と平板状ストッパー2との間に隙間(ガタ)が無いように、ガイドロッド17(26)の先端部は、ロッド保持部15(24)内で平板状ストッパー2の長手方向に移動可能に収容されている。但し、ガイドロッド17(26)の先端部は、ロッド保持部15(24)内で平板状ストッパー2の長手方向と直交する方向では移動しないように収容されている。ガイドロッド17(26)の直径は、例えば60~120mmとする。
【0038】
上記説明は、ガイドロッド17(26)が平板状ストッパー2に取り付けられ、軸受ブッシュ18(27)がガイド装置ハウジング4(5)に取り付けられた構造であるが、ガイドロッド17(26)がガイド装置ハウジング4(5)に取り付けられ、軸受ブッシュ18(27)が平板状ストッパー2に取り付けられた構造とすることもできる。つまり、軸受ブッシュ18(27)は、ガイド装置ハウジング4(5)または平板状ストッパー2の一方に取り付けられ、ガイドロッド17(26)は、ガイド装置ハウジング4(5)または平板状ストッパー2の他方に取り付けられている。
【0039】
ガイド装置ハウジング4(5)の下方には、
図4に示すように、架台20(29)が設けられており、ガイド装置ハウジング4(5)は、ピン21(30)を介して架台20(29)と接続されている。つまり、ガイド装置ハウジング4(5)は、ピン21(30)を回転軸として架台20(29)に対して回転可能に設置されている。また、ガイド装置ハウジング4(5)と架台20(29)との間には、ガイド装置ハウジング4(5)の搬送装置から遠い側の後端部に、緩衝装置22(31)が設置されている。即ち、ガイド装置ハウジング4(5)は、ピン21(30)と緩衝装置22(31)とで架台20(29)に支持されており、緩衝装置22(31)によってガイド装置ハウジング4(5)のピン21(30)を回転軸とする回転が抑制されている。
図1及び
図4の符号14、23は、平板状ストッパー2に取り付けられた座板である。ガイド装置ハウジング4(5)は平板状ストッパー2とは接続されていない。
【0040】
架台20(29)の下方にはベース架台19(28)が設けられており、架台20(29)は、ボルト(図示せず)及びナット(図示せず)によってベース架台19(28)と固定して設置されている。また、ベース架台19(28)の下方には基礎6が設けられており、ベース架台19(28)は埋め込みボルト(図示せず)などによって基礎6と固定して設置されている。
【0041】
本実施の形態では、緩衝装置22(31)は、一例として鉛直方向に延びるタケノコバネによって構成されており、ガイド装置ハウジング4(5)は、ピン21(30)とタケノコバネからなる緩衝装置22(31)とで支持されることにより、鋼板が平板状ストッパー2の側面2aに当接した際に平板状ストッパー2に掛かる水平方向の衝撃力を、ピン21(30)で回転させて鉛直方向の力に変化させ、鉛直方向の力に変化させた衝撃力をタケノコバネからなる緩衝装置22(31)で吸収し、且つ、架台20(29)、ベース架台19(28)及び基礎6へ伝播させるように構成されている。
【0042】
鋼板が圧延されてからの経過時間が少ない場合には、鋼板の温度は常温よりも高く、したがって、このような場合には、平板状ストッパー2は当接する鋼板から熱を受けて熱膨張する。この鋼板の熱膨張によってガイド装置16(25)が損傷しないようにするために、ガイド装置16(25)のガイドロッド17(26)は、平板状ストッパー2が熱膨張しても、平板状ストッパー2の熱膨張に付随して移動しないことが好ましい。
【0043】
本実施形態のガイド装置16(25)では、前述したように、ガイドロッド17(26)の先端部は平板状ストッパー2と固定されておらず、ガイドロッド17(26)の先端部がロッド保持部15(24)に収容された構造であるので、
図5に示すように、平板状ストッパー2が熱膨張しても、ガイドロッド17(26)の設置位置は変わらずに、ロッド保持部15(24)が、つまり、平板状ストッパー2が熱膨張に応じて移動するように構成されている。ここで、
図5は、平板状ストッパー2とガイドロッド17(26)との連結関係を示す概略図である。
【0044】
図5(A)は、平板状ストッパー2が熱膨張していない状態を示し、
図5(B)は、平板状ストッパー2が熱膨張した状態を示している。平板状ストッパー2は、シリンダーロッド9に固定されているので、平板状ストッパー2の長手方向の熱膨張は、シリンダーロッド9の位置を中心として、紙面の左右で起こる。つまり、シリンダーロッド9の位置よりも紙面の左側の平板状ストッパー2は熱膨張によって紙面の左側に伸び、シリンダーロッド9の位置よりも紙面の右側の平板状ストッパー2は熱膨張によって紙面の右側に伸びる。その結果、ガイドロッド17の先端側面とロッド保持部15との膨張方向外側の間隔は、L
1からL
1+ΔX
1に増大し、逆に、膨張方向内側の間隔はΔX
1だけ減少する。同様に、ガイドロッド26の先端側面とロッド保持部24との膨張方向外側の間隔は、L
2からL
2+ΔX
2に増大し、逆に、膨張方向内側の間隔はΔX
2だけ減少する。
【0045】
このように構成される本実施形態の位置決め装置1を用いた、本発明に係る鋼板の位置決め方法の一例を以下に説明する。
【0046】
例えば、鋼板置き場などの任意の場所に置かれた鋼板を搬送装置に載せるタイミングで、平板状ストッパー2を、
図6に示すように、駆動装置ハウジング3に設けられた駆動装置8の作動により前進させて、搬送装置の上方の所定の位置に待機させる。駆動装置8を作動させることにより、ガイド装置ハウジング4(5)に設置されるガイド装置16(25)のガイドロッド17(26)は軸受ブッシュ18(27)の内孔を摺動し、ガイド装置16(25)で支持される平板状ストッパー2も、
図7に示すように、搬送装置の上方の所定の位置に前進する。この場合、平板状ストッパー2の下端と搬送装置のロール40の上面との間隔は、載せられる鋼板の厚み未満とすることが好ましい。例えば、前記間隔を5mm以下とすることが好ましい。また、平板状ストッパー2は、吊り上げ装置で搬送される鋼板が当接する時の衝撃に耐えられるように、30mm程度の厚みを有する平板で裏側を補強することが好ましい。
【0047】
また、例えば長さが15m程度の厚鋼板の位置決めを行う場合、一つの平板状ストッパー2の長さは3~4mとし、搬送装置に沿って複数基の位置決め装置1を設置することが好ましい。この場合、平板状ストッパー2の重量は数百kgに達するので、駆動装置8のシリンダーロッド9にその自重が掛かることは避けなければならず、したがって、
図1に示すように、駆動装置8の両脇にガイド装置16及びガイド装置25を設置し、ガイド装置16及びガイド装置25により、平板状ストッパー2を支える構造とすることが好ましい。
【0048】
また、この場合、平板状ストッパー2とガイド装置16及びガイド装置25との接続は一体物としての剛性を確保し、正確な位置決めを行う観点から、ピン構造などの可動な接続は好ましくない。
【0049】
次いで、吊り上げ装置によりほぼ水平姿勢に吊上げた鋼板を平板状ストッパー2に当てて、鋼板の位置決めを行い、そのまま搬送装置に下す。この時、鋼板が平板状ストッパー2に当接した際の衝撃力は、前述したように、平板状ストッパー2から駆動装置ハウジング3、ガイド装置ハウジング4、ガイド装置ハウジング5に伝播した後、衝撃を吸収する緩衝装置13、22、31で緩衝される。この構造により、衝撃力により平板状ストッパー2、駆動装置ハウジング3、ガイド装置ハウジング4、ガイド装置ハウジング5の変形が防止され、これら部材の取替の必要性が生じることを防いでいる。
【0050】
本発明に係る鋼板の製造方法は、上記の鋼板の位置決め装置1を用い、吊り上げた鋼板の端面を平板状ストッパー2に当接させて鋼板の位置決めを行い、その後、鋼板を降下させて搬送装置の所定位置に載せ、搬送装置で鋼板を次工程に搬送し、次工程で所定の処理を鋼板に対して実施し、決められた規格内の鋼板を製造する。
【0051】
以上説明したように、本発明に係る鋼板の位置決め装置1によれば、厚鋼板などの鋼板を搬送装置の所定位置に載せる際に、迅速に精度良く、更に人手を要することなく、安全に鋼板の位置決めを行うことが実現される。また、本発明に係る鋼板の位置決め装置1は高い衝撃吸収性能を有するので、鋼板当接時に衝撃力を受けても、損傷を防止し、交換不要で長期間の使用が可能となる。
【0052】
上記実施の形態では、軸受ブッシュ18(27)とガイドロッド17(26)とによってガイド装置16(25)を構成している。しかし、ガイド装置は、平板状ストッパー2の荷重を支え、且つ、平板状ストッパー2の前進及び後進の移動をガイドすることができる構成であれば、上記の構成には限らず、例えばレールとレール上を摺動するローラとによってガイド装置を構成してもよい。
【0053】
また、上記実施の形態では、駆動装置ハウジング3と架台11との間、及び、ガイド装置ハウジング4(5)と架台20(29)との間に、タケノコバネからなる緩衝装置13、22、31が設けられている。しかし、緩衝装置は、鋼板が平板状ストッパー2に当接した際の衝撃を吸収することができる位置や構成であれば、上記の位置や構成には限らない。但し、鋼板が平板状ストッパー2に当接した際の衝撃力を基礎6へ伝播させるため、緩衝装置は駆動装置ハウジング3及びガイド装置ハウジング4(5)と基礎6との間に設けることが好ましい。
【実施例0054】
図1に示す鋼板の位置決め装置を厚鋼板の搬送装置に近接して設け、この位置決め装置を用いて鋼板置き場に置かれた厚鋼板をローターテーブルからなる搬送装置の所定位置に載せた(本発明例)。また、比較として、厚鋼板の位置決めを人手で行う方法(比較例1)、及び、特許文献1に記載の方法(油圧ジャッキと円筒状ストッパーからなる位置決め装置を用いた方法、比較例2)で行い、厚鋼板を搬送装置の所定位置に載せるまでの所要時間、位置決め精度、及び、衝撃吸収について比較した。その結果を表1に示す。
【0055】
【0056】
表1に示すように、本発明例では、使用時間及び位置決め精度が比較例1よりも向上し、且つ、衝撃吸収は比較例1及び比較例2よりも向上した。比較例2では、ストッパーを支柱方向に移動させることで衝撃を緩和させているが、鋼板衝突時の衝撃吸収性能が弱く、ストッパーが変形した。本発明例では、平板状ストッパー、駆動装置ハウジング、ガイド装置ハウジングなどの変形は発生しなかった。