(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124587
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】負極板、非水電解質二次電池、および負極板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20220819BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220819BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20220819BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20220819BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20220819BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20220819BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220819BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220819BHJP
H01M 4/1393 20100101ALI20220819BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20220819BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/139
H01M4/1393
H01M4/1395
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022314
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新田 巖
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA11
5H050GA03
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA07
(57)【要約】
【課題】合金系負極活物質と炭素材料とを含む負極板において、負極板の反りを軽減しつつ、サイクル耐久性を改善すること。
【解決手段】負極板は非水電解質二次電池用である。負極板は負極活物質層を含む。負極活物質層は第1領域と第2領域と第3領域とを含む。第1領域は、第2領域と第3領域との間に介在している。第1領域は第1炭素材料を含む。第2領域は第2炭素材料を含む。第3領域は合金系負極活物質を含む。第1領域は、第2領域に比して大きいR値を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水電解質二次電池用の負極板であって、
負極活物質層を含み、
前記負極活物質層は第1領域と第2領域と第3領域とを含み、
前記第1領域は、前記第2領域と前記第3領域との間に介在しており、
前記第1領域は第1炭素材料を含み、
前記第2領域は第2炭素材料を含み、
前記第3領域は合金系負極活物質を含み、
前記第1領域は、前記第2領域に比して大きいR値を有し、
前記R値は式(1):
R=I1360/I1580 …(1)
によって求まり、
前記式(1)中、
Rは前記R値を示し、
I1360は、ラマンスペクトルにおける1360cm-1付近のピークの強度を示し、
I1580は、前記ラマンスペクトルにおける1580cm-1付近のピークの強度を示す、
負極板。
【請求項2】
前記第1領域は0.38以上の前記R値を有し、
前記第2領域は0.38未満の前記R値を有する、
請求項1に記載の負極板。
【請求項3】
前記第1領域は第1バインダをさらに含む、
請求項1または請求項2に記載の負極板。
【請求項4】
前記第2領域は第2バインダをさらに含む、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の負極板。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の負極板を含む、
非水電解質二次電池。
【請求項6】
非水電解質二次電池用の負極板の製造方法であって、
第1炭素材料と第2炭素材料と合金系負極活物質とを混合することにより、混合組成物を調製すること、
前記混合組成物を含む負極活物質層を形成すること、
および、
前記負極活物質層を圧縮することにより、負極板を製造すること、
を含み、
前記負極活物質層は第1領域と第2領域と第3領域とを含むように形成され、
前記第1領域は、前記第2領域と前記第3領域との間に配置され、
前記第1領域は前記第1炭素材料を含み、
前記第2領域は前記第2炭素材料を含み、
前記第3領域は前記合金系負極活物質を含み、
前記第1領域は、前記第2領域に比して大きいR値を有するように形成され、
前記R値は式(1):
R=I1360/I1580 …(1)
によって求まり、
前記式(1)中、
Rは前記R値を示し、
I1360は、ラマンスペクトルにおける1360cm-1付近のピークの強度を示し、
I1580は、前記ラマンスペクトルにおける1580cm-1付近のピークの強度を示す、
負極板の製造方法。
【請求項7】
前記第1炭素材料は2m2/g以下のBET比表面積を有し、
前記第2炭素材料は3.5m2/g以上のBET比表面積を有する、
請求項6に記載の負極板の製造方法。
【請求項8】
前記第1炭素材料と前記合金系負極活物質と第1バインダとを含む第1組成物を調製すること、
前記第2炭素材料を含む第2組成物を調製すること、
および、
前記第1組成物と前記第2組成物とを混合することにより、前記混合組成物を調製すること、
を含む、
請求項6または請求項7に記載の負極板の製造方法。
【請求項9】
前記第2組成物は第2バインダをさらに含む、
請求項8に記載の負極板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、負極板、非水電解質二次電池、および負極板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2019-508355号公報(特許文献1)は、低スプリングバック炭素質材料を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非水電解質二次電池(以下「電池」と略記され得る。)の負極活物質として、炭素材料が普及している。従来、合金系負極活物質も検討されている。合金系負極活物質は、炭素材料に比して大きい比容量を有し得る。合金系負極活物質の採用により、電池の高容量化が期待される。ただし合金系負極活物質は、充放電に伴う体積変化が非常に大きい傾向がある。そこで、例えば合金系負極活物質と炭素材料との混合系が提案されている。
【0005】
混合系においては、合金系負極活物質と炭素材料との電子的接点が喪失しやすい傾向がある。合金系負極活物質の大きな体積変化に、炭素材料が追随できないためと考えられる。電子的接点の喪失により、電極反応が不均一になり、サイクル耐久性が低下し得る。
【0006】
電子的接点の喪失を軽減するために、例えば、復元性炭素材料を使用することが考えられる。復元性炭素材料は、圧縮変形に対して高い復元性を示す。炭素材料の復元性が高いことにより、炭素材料が合金系負極活物質の体積変化に追随することが期待される。
【0007】
通常、電池の負極板は、その製造過程において圧縮加工を受ける。負極板が復元性炭素材料を含む場合、圧縮後の負極板が反りやすい傾向がある。負極板の反りにより、生産性が低下し得る。
【0008】
本技術の目的は、合金系負極活物質と炭素材料とを含む負極板において、負極板の反りを軽減しつつ、サイクル耐久性を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本技術の構成および作用効果が説明される。ただし本明細書の作用メカニズムは推定を含んでいる。作用メカニズムは本技術の範囲を限定しない。
【0010】
〔1〕負極板は非水電解質二次電池用である。負極板は負極活物質層を含む。
負極活物質層は第1領域と第2領域と第3領域とを含む。第1領域は、第2領域と第3領域との間に介在している。第1領域は第1炭素材料を含む。第2領域は第2炭素材料を含む。第3領域は合金系負極活物質を含む。第1領域は、第2領域に比して大きいR値を有する。R値は下記式(1):
R=I1360/I1580 …(1)
によって求まる。上記式(1)中、「R」はR値を示す。「I1360」は、ラマンスペクトルにおける1360cm-1付近のピークの強度を示す。「I1580」は、ラマンスペクトルにおける1580cm-1付近のピークの強度を示す。
【0011】
一般に、炭素材料のR値は黒鉛化の指標として知られている。すなわちR値が小さくなる程、炭素材料が黒鉛結晶に近似すると考えられる。理想的な黒鉛結晶のR値はゼロであり得る。R値が大きくなる程、炭素材料が非晶質に近似すると考えられる。例えば無定形炭素のR値は1超であり得る。
【0012】
本技術の新知見によると、R値は炭素材料の復元性の指標ともなり得る。圧縮変形に対する復元性と、結晶構造との間に相関関係があるためと考えられる。R値が小さい程、炭素材料の復元性が低くなる傾向がある。R値が大きい程、炭素材料の復元性が高くなる傾向がある。
【0013】
本技術の負極板においては、第3領域と第2領域との間に、第1領域が介在している。第3領域は合金系負極活物質を含む。第1領域および第2領域は炭素材料を含む。充放電中、第3領域の体積変化率は、第1領域および第2領域の体積変化率に比して、高くなり得る。第1領域は、第2領域に比して大きいR値を有する。すなわち第1領域は、第2領域に比して高い復元性を有し得る。第1領域が第3領域の体積変化に追随することにより、電子的接点が喪失し難くなることが期待される。すなわちサイクル耐久性の改善が期待される。
【0014】
第2領域は、第1領域に比して低い復元性を有し得る。負極板が第2領域を含むことにより、圧縮後の負極板の反りが軽減されることが期待される。
【0015】
〔2〕第1領域は、例えば0.38以上のR値を有していてもよい。第2領域は、例えば0.38未満のR値を有していてもよい。
【0016】
〔3〕第1領域は、例えば第1バインダをさらに含んでいてもよい。
【0017】
第1バインダは、第1炭素材料と合金系負極活物質との間に配置され得る。第1バインダが第1炭素材料と合金系負極活物質とを結合することにより、例えばサイクル耐久性の向上が期待される。
【0018】
〔4〕第2領域は、例えば第2バインダをさらに含んでいてもよい。
【0019】
第2バインダは、第1炭素材料と第2炭素材料との間に配置され得る。第2バインダが第1炭素材料と第2炭素材料とを結合することにより、例えばサイクル耐久性の向上が期待される。
【0020】
〔5〕非水電解質二次電池は、上記〔1〕から〔4〕のいずれか1つの負極板を含む。
【0021】
〔6〕負極板の製造方法は、下記(A)から(C)を含む。
(A)第1炭素材料と第2炭素材料と合金系負極活物質とを混合することにより、混合組成物を調製する。
(B)混合組成物を含む負極活物質層を形成する。
(C)負極活物質層を圧縮することにより、負極板を製造する。
負極活物質層は第1領域と第2領域と第3領域とを含むように形成される。第1領域は第2領域と第3領域との間に配置される。第1領域は第1炭素材料を含む。第2領域は第2炭素材料を含む。第3領域は合金系負極活物質を含む。
第1領域は、第2領域に比して大きいR値を有するように形成される。
R値は下記式(1):
R=I1360/I1580 …(1)
によって求まる。上記式(1)中、「R」はR値を示す。「I1360」は、ラマンスペクトルにおける1360cm-1付近のピークの強度を示す。「I1580」は、ラマンスペクトルにおける1580cm-1付近のピークの強度を示す。
【0022】
〔7〕第1炭素材料は、例えば2m2/g以下のBET比表面積を有していてもよい。第2炭素材料は、例えば3.5m2/g以上のBET比表面積を有していてもよい。
【0023】
第1炭素材料が2m2/g以下のBET比表面積を有し、かつ第2炭素材料が3.5m2/g以上のBET比表面積を有する時、上記〔6〕におけるR値の大小関係が実現されやすい傾向がある。
【0024】
〔8〕上記〔6〕または〔7〕の負極板の製造方法は、例えば下記(a1)から(a3)を含んでいてもよい。
(a1)第1炭素材料と合金系負極活物質と第1バインダとを含む第1組成物を調製する。
(a2)第2炭素材料を含む第2組成物を調製する。
(a3)第1組成物と第2組成物とを混合することにより、混合組成物を調製する。
【0025】
上記〔8〕の製造方法によれば、上記〔3〕の負極板が製造され得る。
【0026】
〔9〕上記〔8〕の負極板の製造方法において、例えば第2組成物は第2バインダを含んでいてもよい。
【0027】
上記〔9〕の製造方法によれば、上記〔4〕の負極板が製造され得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における負極板の製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本技術の実施形態(本明細書においては「本実施形態」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。例えば本明細書における作用効果についての言及は、当該作用効果を全て奏する範囲内に、本技術の範囲を限定しない。
【0030】
本明細書において、「備える、含む(comprise, include)」、「有する(have)」およびこれらの変形〔例えば「から構成される(be composed of)」、「包含する(encompass,involve)」、「含有する(contain)」、「担持する(carry, support)」、「保持する(hold)」等〕の記載は、オープンエンド形式である。オープンエンド形式は必須要素に加えて、追加要素をさらに含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。「からなる(consist of)」との記載はクローズド形式である。「実質的に…からなる(consist essentially of)」との記載はセミクローズド形式である。セミクローズド形式は、本技術の目的を阻害しない範囲で、必須要素に加えて追加要素をさらに含んでいてもよい。例えば、本技術の属する分野において通常想定される要素(例えば不可避不純物等)が、追加要素として含まれていてもよい。
【0031】
本明細書において、「…してもよい(may)、…し得る(can)」という単語は、義務的な意味「…しなければならない(must)の意味」ではなく、許容的な意味「…する可能性を有するの意味」で使用されている。
【0032】
本明細書において、単数形(「a」、「an」および「the」)は、特に断りの無い限り、複数形も含む。例えば「粒子」は「1つの粒子」のみならず、「粒子の集合体(粉体、粉末、粒子群)」も含み得る。
【0033】
本明細書において、方法に含まれる2個以上のステップ、動作および操作等は、特に断りのない限り、その記載された順序に限定されない。例えば、2個以上のステップが同時進行することもあり得る。
【0034】
本明細書において、例えば「LiCoO2」等の化学量論的組成式によって化合物が表現されている場合、該化学量論的組成式は代表例に過ぎない。組成比は非化学量論的であってもよい。例えば、コバルト酸リチウムが「LiCoO2」と表現されている時、特に断りのない限り、コバルト酸リチウムは「Li/Co/O=1/1/2」の組成比に限定されず、任意の組成比でLi、CoおよびOを含み得る。
【0035】
本明細書において、例えば「1m2/gから2m2/g」および「1~2m2/g」等の数値範囲は、特に断りのない限り、上限値および下限値を含む。すなわち「1m2/gから2m2/g」および「1~2m2/g」は、「1m2/g以上2m2/g以下」の数値範囲を示す。また、数値範囲内から任意に選択された数値が、新たな上限値および下限値とされてもよい。例えば、数値範囲内の数値と、本明細書中の別の部分に記載された数値とが任意に組み合わされることにより、新たな数値範囲が設定されてもよい。
【0036】
本明細書における幾何学的な用語(例えば「平行」等)は、厳密な意味に解されるべきではない。例えば「平行」は、厳密な意味での「平行」から多少ずれていてもよい。本明細書における幾何学的な用語は、例えば、設計上、作業上、製造上等の公差、誤差等を含み得る。各図中の寸法関係は、実際の寸法関係と一致しない場合がある。本技術の理解を助けるために、各図中の寸法関係(長さ、幅、厚さ等)が変更されている場合がある。さらに一部の構成が省略されている場合もある。
【0037】
<非水電解質二次電池>
図1は、本実施形態における非水電解質二次電池の構成の一例を示す概略図である。
電池100は、任意の用途で使用され得る。電池100は、例えば電動車両において、主電源または動力アシスト用電源として使用されてもよい。複数個の電池100が連結されることにより、電池モジュールまたは組電池が形成されてもよい。
【0038】
電池100は外装体90を含む。外装体90は、角形(扁平直方体状)である。ただし角形は一例である。外装体90は任意の形態を有し得る。外装体90は、例えば円筒形であってもよいし、パウチ形であってもよい。外装体90は、例えばアルミニウム(Al)合金製であってもよい。外装体90は、電極体50と電解質(不図示)とを収納している。外装体90は、例えば封口板91と外装缶92とを含んでいてもよい。封口板91は、外装缶92の開口部を塞いでいる。例えばレーザ溶接により、封口板91と外装缶92とが接合されていてもよい。
【0039】
封口板91に、正極端子81と負極端子82とが設けられている。封口板91にガス排出弁等がさらに設けられていてもよい。電極体50は、正極集電部材71によって正極端子81に接続されている。正極集電部材71は、例えばAl板等であってもよい。電極体50は、負極集電部材72によって負極端子82に接続されている。負極集電部材72は、例えば銅(Cu)板等であってもよい。
【0040】
図2は、本実施形態における電極体の構成の一例を示す概略図である。
電極体50は巻回型である。電極体50は、正極板10、セパレータ30および負極板20を含む。すなわち電池100は、正極板10と負極板20と電解質とを含む。正極板10、セパレータ30および負極板20は、いずれも帯状のシートである。電極体50は複数枚のセパレータ30を含んでいてもよい。電極体50は、正極板10、セパレータ30および負極板20がこの順序で積層され、渦巻状に巻回されることにより形成されている。正極板10または負極板20の一方がセパレータ30に挟まれていてもよい。正極板10および負極板20の両方がセパレータ30に挟まれていてもよい。電極体50は、巻回後に扁平状に成形されていてもよい。なお巻回型は一例である。電極体50は、例えば積層(スタック)型であってもよい。
【0041】
《負極板》
負極板20は負極活物質層22を含む。負極板20は、実質的に負極活物質層22からなっていてもよい。負極板20は、例えば負極基材21をさらに含んでいてもよい。負極基材21は導電性シートである。負極基材21は、例えばCu合金箔等であってもよい。負極基材21は、例えば5μmから30μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22は、例えば負極基材21の表面に配置されていてもよい。負極活物質層22は、例えば負極基材21の片面のみに配置されていてもよい。負極活物質層22は、例えば負極基材21の表裏両面に配置されていてもよい。負極板20の幅方向(
図2のX軸方向)において、一方の端部に負極基材21が露出していてもよい。負極基材21が露出した部分には、負極集電部材72が接合され得る。
【0042】
負極活物質層22は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよいし、50μmから100μmの厚さを有していてもよい。負極活物質層22の密度が高くなる程、負極板20が反りやすい傾向がある。本実施形態においては、負極活物質層22が高密度を有する場合でも、負極板20の反りが軽減され得る。負極活物質層22は、例えば0.5g/cm3から2.0g/cm3の密度を有していてもよいし、0.8g/cm3から1.5g/cm3の密度を有していてもよいし、1.0g/cm3から1.2g/cm3の密度を有していてもよい。本明細書において、負極活物質層22の密度は見かけ密度を示す。
【0043】
《第1領域、第2領域》
負極活物質層22は第1領域と第2領域と第3領域とを含む。第1領域および第2領域は、それぞれ独立に炭素材料を含む。第3領域は合金系負極活物質を含む。第1領域は、第2領域と第3領域との間に介在している。第1領域は第3領域と接触していてもよい。第1領域は第3領域の周囲を取り囲んでいてもよい。第2領域は第1領域と接触していてもよい。第2領域は第1領域の周囲を取り囲んでいてもよい。
【0044】
〈R値の測定方法〉
第1領域は、第2領域に比して大きいR値を有する。R値は、各領域の組成により変化し得る。R値は次の手順により測定される。
【0045】
負極活物質層22から断面試料が採取される。断面試料は分析対象面を含む。分析対象面は、負極活物質層22の厚さ方向と平行である。顕微ラマン分光装置により、分析対象面が分析される。顕微鏡画像において、第3領域(合金系負極活物質)が特定される。顕微鏡画像は、例えばSEM(scanning electron microscope)画像であってもよい。
【0046】
図3は、SEM画像の一例である。
第3領域22cを中心とする矩形領域において、ラマンイメージングが実施される。矩形領域は、例えば、第3領域22cの輪郭線から外側に3μm離れた範囲を含むように設定され得る。ラマンスペクトルの測定には、アルゴンイオンレーザが使用される。波数範囲は110cm
-1から1730cm
-1である。ラマンイメージングにより、第3領域22cの周囲の組成変化が可視化される。これにより第1領域22aと第2領域22bとが特定される。
【0047】
第1領域22aおよび第2領域22bのラマンスペクトルにおいて、1360cm-1付近に現れるピークの高さ(I1360)と、1580cm-1付近に現れるピークの高さ(I1580)とが測定される。「1360cm-1付近」は、1360±10cm-1の波数帯域を示す。「1580cm-1付近」は、1580±10cm-1の波数帯域を示す。1580cm-1付近に現れるピークは「Gバンド」とも称されている。Gバンドは黒鉛結晶に由来すると考えられる。1360cm-1付近に現れるピークは「Dバンド」とも称されている。Dバンドは非晶質炭素に由来すると考えられる。Dバンドは、黒鉛結晶の構造欠陥(乱れ)により生じると考えられる。「I1360」と「I1580」とが下記式(1)に代入されることにより、各領域のR値が求まる。
【0048】
R=I1360/I1580 …(1)
【0049】
各領域のR値は、それぞれ5箇所以上で測定される。5箇所以上の測定結果の算術平均が、各領域のR値とみなされる。R値は小数第2位まで有効である。小数第3位以下は四捨五入される。
【0050】
第1領域は、例えば0.38以上のR値を有していてもよい。第1領域は、例えば0.38から1.40のR値を有していてもよいし、0.39から1.20のR値を有していてもよいし、0.40から1.00のR値を有していてもよいし、0.40から0.80のR値を有していてもよい。
【0051】
第2領域は、例えば0.38未満のR値を有していてもよい。第2領域は、例えば0から0.37のR値を有していてもよいし、0.01から0.30のR値を有していてもよいし、0.10から0.25のR値を有していてもよいし、0.15から0.20のR値を有していてもよい。
【0052】
第1領域のR値と、第2領域とのR値の差は、例えば0.1から1であってもよいし、0.1から0.5であってもよいし、0.1から0.3であってもよい。
【0053】
例えばラマンイメージングにより、第1領域、第2領域および第3領域の面積分率が特定されてもよい。例えば負極活物質層22は、面積分率で、30~49%の第1領域と、30~49%の第2領域と、残部の第3領域とからなっていてもよい。
【0054】
〈第1炭素材料、第2炭素材料〉
第1領域は第1炭素材料を含む。第1領域は、実質的に第1炭素材料からなっていてもよい。第1領域のR値は、主に第1炭素材料の黒鉛化の程度を反映していると考えられる。第2領域は第2炭素材料を含む。第2領域は、実質的に第2炭素材料からなっていてもよい。第2領域のR値は、主に第2炭素材料の黒鉛化の程度を反映していると考えられる。
【0055】
第1領域が第2領域に比して大きいR値を有する限り、第1炭素材料および第2炭素材料は、それぞれ独立に、任意の成分を含み得る。第1炭素材料および第2炭素材料は、それぞれ独立に、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン、および非晶質炭素からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0056】
第1領域が第2領域に比して大きいR値を有する限り、第1炭素材料および第2炭素材料は、それぞれ独立に、任意の形態を有し得る。第1炭素材料および第2炭素材料は、それぞれ独立に、例えば、球状粒子、鱗片状粒子等であってもよい。例えば、鱗片状粒子に対して球形化処理が施されることにより、球状粒子が形成されてもよい。
【0057】
第1炭素材料および第2炭素材料は、それぞれ独立に、任意の粒子サイズを有し得る。第1炭素材料および第2炭素材料は、それぞれ独立に、例えば1μmから30μmのD50を有していてもよいし、15μmから25μmのD50を有していてもよい。本明細書の「D50」は、体積基準の粒度分布において、粒子径が小さい方からの頻度の累積が50%になる粒子径を示す。体積基準の粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置により測定され得る。
【0058】
〈R値の調整方法〉
R値は、例えば結晶質(黒鉛結晶)と非晶質との量的バランスにより調整され得る。例えば、人造黒鉛粒子の表面に皮膜が形成されてもよい。皮膜は非晶質炭素を含む。例えば皮膜量により、R値が調整されてもよい。皮膜量が多くなる程、R値が大きくなる傾向がある。また皮膜量が多くなる程、BET比表面積が小さくなる傾向もある。
【0059】
例えば、パルスCVD(chemical vapor deposition)法により、基材(例えば人造黒鉛粒子等)の表面に皮膜が形成されてもよい。CVD装置において、チャンバ内の温度は例えば1000℃程度であってもよい。チャンバ内に原料ガスが導入される。原料ガスは、例えば体積分率で30%程度のプロパン(C3H8)と、70%程度の水素(H2)とを含んでいてもよい。原料ガスの導入時間は、例えば0.1秒間程度であってもよい。基材の表面に熱分解炭素が堆積した後、反応管が真空引きされる。熱分解炭素の堆積と、真空引きとが繰り返されることにより、皮膜の厚さが調整され得る。
【0060】
〈第1バインダ、第2バインダ〉
第1領域が第2領域に比して大きいR値を有する限り、第1領域は追加成分を含んでいてもよい。第1領域は、例えば、質量分率で、0~5%の第1バインダと、0~40%の第2炭素材料と、残部の第1炭素材料とからなっていてもよい。第1領域は、例えば、質量分率で、0.5~2%の第1バインダと、0~10%の第2炭素材料と、残部の第1炭素材料とからなっていてもよい。第1領域は、例えば、質量分率で、0.5~2%の第1バインダと、残部の第1炭素材料とからなっていてもよい。
【0061】
第1領域が第1バインダを含むことにより、第1バインダが第1炭素材料と合金系負極活物質との間に配置され得る。第1バインダは第1炭素材料と合金系負極活物質とを結合していてもよい。これにより、例えばサイクル耐久性の向上が期待される。
【0062】
第1領域が第2領域に比して大きいR値を有する限り、第2領域は追加成分を含んでいてもよい。第2領域は、例えば、質量分率で、0~5%の第2バインダと、0~40%の第1炭素材料と、残部の第2炭素材料とからなっていてもよい。第2領域は、例えば、質量分率で、0.5~2%の第2バインダと、0~10%の第1炭素材料と、残部の第2炭素材料とからなっていてもよい。第2領域は、例えば、質量分率で、0.5~2%の第2バインダと、残部の第2炭素材料とからなっていてもよい。
【0063】
第2領域が第2バインダを含むことにより、第2バインダが第1炭素材料と第2炭素材料との間に配置され得る。第2バインダは第1炭素材料と第2炭素材料とを結合していてもよい。これにより、例えばサイクル耐久性の向上が期待される。
【0064】
第1バインダおよび第2バインダは、それぞれ独立に、任意の成分を含み得る。第1バインダおよび第2バインダは、それぞれ独立に、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンオキシド(PEO)、およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。第1バインダおよび第2バインダは、それぞれ独立に、例えばCMCおよびSBRからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0065】
《第3領域》
第3領域は合金系負極活物質を含む。第3領域は実質的に合金系負極活物質からなっていてもよい。本明細書の「合金系負極活物質」は、リチウム(Li)との可逆的な合金化反応を起こし得る。合金系負極活物質は、炭素材料に比して大きい比容量(mAh/g)を有し得る。
【0066】
合金系負極活物質は、例えば、実質的に金属からなっていてもよい。本明細書の金属は半金属も包含する。合金系負極活物質は、例えば、珪素(Si)、砒素(As)、錫(Sn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、およびリン(P)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。合金系負極活物質は、例えばSi、Sn、InおよびAlからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。合金系負極活物質は、金属、半金属に加えて、非金属をさらに含んでいてもよい。合金系負極活物質は、例えば実質的に金属化合物からなっていてもよい。合金系負極活物質は、例えば酸化珪素(SiO)および酸化錫(SnO)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0067】
合金系負極活物質は、例えば粒子であってもよい。粒子形状は任意である。合金系負極活物質は、例えば板状粒子、棒状粒子、球状粒子等であってもよい。合金系負極活物質は任意の粒子サイズを有し得る。合金系負極活物質は、例えば1μmから30μmのD50を有していてもよいし、1μmから10μmのD50を有していてもよい。
【0068】
第3領域は、合金系負極活物質を含む限り、追加成分を含んでいてもよい。例えば合金系負極活物質(粒子)の表面に皮膜が形成されていてもよい。皮膜は、例えば非晶質炭素等を含んでいてもよい。皮膜は、例えばCVD法等により形成されてもよい。
【0069】
《正極板》
正極板10は、例えば正極基材11と正極活物質層12とを含んでいてもよい。正極基材11は導電性シートである。正極基材11は、例えばAl合金箔等であってもよい。正極基材11は、例えば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は、正極基材11の表面に配置されている。正極活物質層12は、例えば正極基材11の片面のみに配置されていてもよい。正極活物質層12は、例えば正極基材11の表裏両面に配置されていてもよい。正極板10の幅方向(
図2のX軸方向)において、一方の端部に正極基材11が露出していてもよい。正極基材11が露出した部分には、正極集電部材71が接合され得る。
【0070】
正極活物質層12は、例えば10μmから200μmの厚さを有していてもよい。正極活物質層12は正極活物質を含む。正極活物質は任意の成分を含み得る。正極活物質は、例えばLiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiMn2O4、Li(NiCoMn)O2、Li(NiCoAl)O2、およびLiFePO4からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。ここで、例えば「Li(NiCoMn)O2」等の組成式においては、括弧内(NiCoAl)の組成比の合計が1である。組成比の合計が1である限り、各元素(Ni、Co、Mn)の組成比は任意である。
【0071】
正極活物質層12は正極活物質に加えて、例えば導電材およびバインダ等をさらに含んでいてもよい。正極活物質層12は、例えば質量分率で、1~10%の導電材と、1~10%のバインダと、残部の正極活物質とからなっていてもよい。導電材およびバインダは、それぞれ任意の成分を含み得る。導電材は例えばカーボンブラック等を含んでいてもよい。バインダは例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を含んでいてもよい。
【0072】
《セパレータ》
セパレータ30の少なくとも一部は、正極板10と負極板20との間に介在している。セパレータ30は、正極板10と負極板20とを分離している。セパレータ30は、例えば10μmから30μmの厚さを有していてもよい。
【0073】
セパレータ30は多孔質シートである。セパレータ30は電解液を透過する。セパレータ30は、例えば100s/100mLから400s/100mLの透気度を有していてもよい。本明細書における「透気度」は、「JIS P 8117:2009」に規定される「透気抵抗度(air resistance)」を示す。透気度はガーレー試験法により測定され得る。
【0074】
セパレータ30は電気絶縁性である。セパレータ30は、例えばポリオレフィン系樹脂等を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にポリオレフィン系樹脂からなっていてもよい。ポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。セパレータ30は、例えば単層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えば、実質的にPE層からなっていてもよい。セパレータ30は、例えば多層構造を有していてもよい。セパレータ30は、例えばPP層とPE層とPP層とがこの順序で積層されることにより形成されていてもよい。セパレータ30の表面に、例えば耐熱層等が形成されていてもよい。
【0075】
《電解質》
電池100は、例えば液体電解質を含んでいてもよいし、ゲル電解質を含んでいてもよいし、固体電解質を含んでいてもよい。例えば固体電解質が正極板10と負極板20とを分離していてもよい。
【0076】
液体電解質は、例えば電解液、イオン液体等を含んでいてもよい。電解液は溶媒と支持電解質とを含む。溶媒は非プロトン性である。溶媒は任意の成分を含み得る。溶媒は、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、1,2-ジメトキシエタン(DME)、メチルホルメート(MF)、メチルアセテート(MA)、メチルプロピオネート(MP)、およびγ-ブチロラクトン(GBL)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0077】
支持電解質は溶媒に溶解している。支持電解質は、例えば、LiPF6、LiBF4、およびLiN(FSO2)2からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。支持電解質は、例えば0.5mоl/Lから2.0mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。支持電解質は、例えば0.8mоl/Lから1.2mоl/Lのモル濃度を有していてもよい。
【0078】
電解液は、溶媒および支持電解質に加えて、任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば電解液は、質量分率で0.01%から5%の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、ビニレンカーボネート(VC)、ジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)、フルオロスルホン酸リチウム(FSO3Li)、およびリチウムビスオキサラトボラート(LiBOB)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0079】
<負極板の製造方法>
図4は、本実施形態における負極板の製造方法の概略フローチャートである。
負極板の製造方法は、「(A)混合組成物の調製」、「(B)負極活物質層の形成」および「(C)圧縮」を含む。
【0080】
《(A)混合組成物の調製》
負極板の製造方法は、第1炭素材料と第2炭素材料と合金系負極活物質とを混合することにより、混合組成物を調製することを含む。
【0081】
各材料の詳細は前述のとおりである。原料段階において、例えば第1炭素材料は、第2炭素材料に比して小さいBET比表面積を有していてもよい。原料段階におけるBET比表面積が小さい程、圧縮後の負極活物質層22におけるR値が大きくなる傾向がある。第1炭素材料は、例えば2m2/g以下のBET比表面積を有していてもよい。第1炭素材料は、例えば0.2m2/gから2m2/gのBET比表面積を有していてもよいし、0.5m2/gから1.5m2/gのBET比表面積を有していてもよいし、1.0m2/gから1.5m2/gのBET比表面積を有していてもよい。第2炭素材料は、例えば3.5m2/g以上のBET比表面積を有していてもよい。第2炭素材料は、例えば3.5m2/gから5m2/gのBET比表面積を有していてもよいし、3.5m2/gから4.5m2/gのBET比表面積を有していてもよいし、3.5m2/gから4.0m2/gのBET比表面積を有していてもよい。本明細書における「BET比表面積」は、ガス吸着法により測定される吸着等温線において、BET多点法により求まる比表面積を示す。吸着質ガスは窒素ガスである。
【0082】
前述の第1領域と第2領域と第3領域とが形成され得る限り、材料の混合方法および混合条件は任意である。例えば混合条件により、炭素材料の結晶性が変化し得る。すなわち混合条件により、各領域のR値が調整されてもよい。
【0083】
混合組成物は、例えばスラリー組成物であってもよい。スラリー組成物は、例えば40%から80%の固形分濃度を有していてもよい。「固形分濃度」は、スラリー組成物における固形成分(分散媒以外の成分)の合計質量分率を示す。スラリー組成物の調製には、例えばプラネタリミキサ等が使用されてもよい。
【0084】
混合組成物は、例えば粉体組成物であってもよい。粉体組成物は、例えば顆粒状であってもよいし、粉末状であってもよい。粉体組成物の調製には、例えば、ホソカワミクロン社製の乾式粒子複合化装置「ノビルタ(登録商標)」等が使用されてもよい。
【0085】
混合組成物は、例えば全材料が一括して混合されることにより調製されてもよい。混合組成物は、例えば各材料が順次混合されることにより調製されてもよい。負極板の製造方法は、例えば「(a1)第1組成物の調製」、「(a2)第2組成物の調製」および「(a3)混合」を含んでいてもよい。各材料が順次混合されることにより、第1領域および第2領域のR値がそれぞれ調整され得る。
【0086】
なお、
図4においては、「(a1)第1組成物の調製」、「(a2)第2組成物の調製」の順序で記載されているが、「(a1)第1組成物の調製」と「(a2)第2組成物の調製」との間における実施順序は任意である。例えば「(a1)第1組成物の調製」と「(a2)第2組成物の調製」とが同時に実施されてもよい。
【0087】
〈(a1)第1組成物の調製〉
負極板の製造方法は、例えば第1炭素材料と合金系負極活物質と第1バインダとを含む第1組成物を調製することを含んでいてもよい。第1バインダの詳細は前述のとおりである。第1組成物は、例えばスラリー組成物であってもよいし、粉体組成物であってもよい。例えば、第1炭素材料と合金系負極活物質と第1バインダと分散媒とが混合されることにより、第1組成物が調製されてもよい。
【0088】
〈(a2)第2組成物の調製〉
負極板の製造方法は、例えば第2炭素材料を含む第2組成物を調製することを含んでいてもよい。第2組成物は、例えばスラリー組成物であってもよいし、粉体組成物であってもよい。例えば第2炭素材料と第2バインダと分散媒とが混合されることにより、第2組成物が調製されてもよい。すなわち、第2組成物は第2バインダをさらに含んでいてもよい。第2バインダの詳細は前述のとおりである。
【0089】
〈(a3)混合〉
負極板の製造方法は、第1組成物と第2組成物とを混合することにより、混合組成物を調製することを含んでいてもよい。第1組成物と第2組成物との混合比は任意である。例えば、第1炭素材料と第2炭素材料との混合比が「第1炭素材料/第2炭素材料=1/9~9/1(質量比)」となるように、第1組成物と第2組成物とが混合されてもよい。例えば、混合組成物がスラリー組成物である場合、分散媒が追加されることにより、粘度が調整されてもよい。
【0090】
なお、分散媒は、第1バインダおよび第2バインダの種類等に応じて、適宜選択され得る。分散媒は、例えば水等を含んでいてもよい。
【0091】
《(B)負極活物質層の形成》
負極板の製造方法は、混合組成物を含む負極活物質層を形成することを含む。例えば負極基材が準備される。負極基材の詳細は前述のとおりである。例えば、負極基材の表面に、混合組成物が塗布されることにより、負極活物質層が形成され得る。混合組成物の形態に応じて、スラリー塗布装置、粉体塗布装置等が使用され得る。
【0092】
《(C)圧縮》
負極板の製造方法は、負極活物質層を圧縮することにより、負極板を製造することを含む。例えば圧延機により、負極活物質層が圧縮されてもよい。負極活物質層は、所定の密度を有するように圧縮される。混合組成物が粉体組成物である場合、例えば、圧粉成形により、負極活物質層が形成されてもよい。この場合、負極活物質層の形成と圧縮とが実質的に同時に実施されることになる。
【0093】
本実施形態においては、圧縮後の負極板において反りが軽減され得る。負極活物質層の一部が、復元性が低い第2領域によって構成されているためと考えられる。圧縮後の負極板は、電池の仕様に応じて、所定形状に切断され得る。
【実施例0094】
以下、本技術の実施例(本明細書においては「本実施例」とも記される。)が説明される。ただし以下の説明は、本技術の範囲を限定しない。
【0095】
<負極板の製造>
下記材料が準備された。
第1炭素材料:人造黒鉛、非晶質コート、BET比表面積=1.2m2/g
第2炭素材料:人造黒鉛、BET比表面積=3.9m2/g
合金系負極活物質:Si
バインダ:CMC、SBR
分散媒:水
負極基材:Cu箔
【0096】
本実施例の第1炭素材料は、パルスCVD法により、人造黒鉛の表面に熱分解炭素が堆積されることにより調製された。
【0097】
《No.1》
第1炭素材料と合金系負極活物質と第1バインダと分散媒とが混合されることにより、第1組成物が調製された。第1組成物はスラリー組成物であった。
【0098】
第2炭素材料と第2バインダと分散媒とが混合されることにより、第2組成物が調製された。第2組成物はスラリー組成物であった。
【0099】
第1組成物と第2組成物とが混合されることにより、混合組成物が調製された。混合組成物はスラリー組成物であった。
【0100】
混合組成物が負極基材の表面に塗布されることにより、負極活物質層が形成された。圧延機により負極活物質層が圧縮された。以上より負極板が製造された。
【0101】
No.1の負極活物質層は、第1領域と第2領域と第3領域とを含むと考えられる。第1領域は、第2領域と第3領域との間に介在していると考えられる。第1領域は、第1炭素材料と第1バインダとを含むと考えられる。第2領域は、第2炭素材料と第2バインダとを含むと考えられる。第3領域は合金系負極活物質を含むと考えられる。
【0102】
《No.2》
第1炭素材料と合金系負極活物質と分散媒とが混合されることにより、第1組成物が調製された。これを除いては、No.1と同様に負極板が製造された。No.2の負極活物質層は、第1領域が第1バインダを含まない点で、No.1の負極活物質層と異なっている。
【0103】
《No.3》
第2炭素材料と分散媒とが混合されることにより、第2組成物が調製された。これを除いては、No.1と同様に負極板が製造された。No.3の負極活物質層は、第2領域が第2バインダを含まない点で、No.1の負極活物質層と異なっている。
【0104】
《No.4》
合金系負極活物質と第2炭素材料と第2バインダと分散媒とが混合されることにより、混合組成物が調製された。混合組成物が負極基材の表面に塗布されることにより、負極活物質層が形成された。No.4の負極活物質層は、1種の炭素材料を単独で含む点で、No.1の負極活物質層と異なる。
【0105】
《No.5》
合金系負極活物質と第1炭素材料と第1バインダと分散媒とが混合されることにより、混合組成物が調製された。混合組成物が負極基材の表面に塗布されることにより、負極活物質層が形成された。No.5の負極活物質層は、1種の炭素材料を単独で含む点で、No.1の負極活物質層と異なる。
【0106】
<評価>
《R値》
前述の手順により、第1領域および第2領域のR値が測定された。
【0107】
《反り》
圧縮後の負極板において、反りの有無が確認された。
【0108】
《サイクル耐久性》
各負極板を含むテストセル(非水電解質二次電池)がそれぞれ製造された。テストセルにおいて、充放電が100サイクル実施された。100サイクル目の放電容量が1サイクル目の放電容量で除されることにより、容量維持率が求められた。容量維持率が高い程、サイクル耐久性が良好であると考えられる。
【0109】
【0110】
<結果>
上記表1において、第1領域が第2領域に比して大きいR値を有する時、サイクル耐久性が良好であり、なおかつ反りが軽減される傾向がみられる。
【0111】
上記表1において、第1領域が第1バインダを含む時、サイクル耐久性が向上する傾向がみられる。
【0112】
上記表1において、第1領域が第1バインダを含み、かつ第2領域が第2バインダを含む時、サイクル耐久性が向上する傾向がみられる。
【0113】
本実施形態および本実施例は、全ての点で例示である。本実施形態および本実施例は、制限的ではない。本技術の範囲は、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内における全ての変更を包含する。例えば、本実施形態および本実施例から、任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも当初から予定されている。
10 正極板、11 正極基材、12 正極活物質層、20 負極板、21 負極基材、22 負極活物質層、22a 第1領域、22b 第2領域、22c 第3領域、30 セパレータ、50 電極体、71 正極集電部材、72 負極集電部材、81 正極端子、82 負極端子、90 外装体、91 封口板、92 外装缶、100 電池(非水電解質二次電池)。