(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124589
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】ブラシレスモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 1/28 20060101AFI20220819BHJP
H02K 1/18 20060101ALI20220819BHJP
H02K 1/27 20220101ALI20220819BHJP
【FI】
H02K1/28 Z
H02K1/18 B
H02K1/27 501A
H02K1/27 501M
H02K1/27 501K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022320
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早田 聖基
【テーマコード(参考)】
5H601
5H622
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601AA30
5H601CC01
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD22
5H601EE03
5H601EE18
5H601EE19
5H601EE20
5H601GA02
5H601GA24
5H601GA25
5H601GB05
5H601GC02
5H601GC12
5H601GC23
5H601GC25
5H601JJ10
5H601KK08
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA07
5H622CA10
5H622CA13
5H622CB03
5H622CB04
5H622CB05
5H622PP19
(57)【要約】
【課題】ブラシレスモータの組立てコストの低減化を図りつつ性能を向上させる。
【解決手段】ステータコアを有するステータと、環状のロータコア22および複数のマグネット23を有するロータ24と、を備えたブラシレスモータであり、前記ステータコアは、該ステータコアの径方向内側に向かう複数のティースを有し、ロータ24は、複数の前記ティースの径方向内側で回転軸に設けられている。ロータコア22は、前記回転軸に設けられる本体部22bと、本体部22bと一体であり、かつマグネット23の外周面23eを支持可能なブリッジ部22eと、を備えた複数のロータコアシート22aからなり、複数のロータコアシート22aは、積層方向35に隣り合うロータコアシート22aのブリッジ部22eがロータコア22の周方向34において重ならないように積層されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアおよび該ステータコアに巻装された巻線を有するステータと、環状のロータコアおよび該ロータコアに埋設された複数のマグネットを有するロータと、を備えたブラシレスモータであって、
前記ステータコアは、該ステータコアの径方向内側に向かって延びる複数のティースを有し、
前記ロータは、複数の前記ティースの前記径方向内側で回転軸に設けられ、
前記ロータコアは、前記回転軸に設けられる本体部と、該本体部と一体であり、かつ、前記マグネットの外周面を支持可能なブリッジ部と、を備えた複数の板状部材からなり、
複数の前記板状部材は、積層方向に隣り合う前記板状部材の前記ブリッジ部が前記ロータコアの周方向において重ならないように積層されていることを特徴とするブラシレスモータ。
【請求項2】
複数の前記板状部材の前記ブリッジ部は、積層された複数の前記板状部材の1枚おきに前記ロータコアの周方向において重なるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のブラシレスモータ。
【請求項3】
複数の前記板状部材は、偶数枚積層されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブラシレスモータ。
【請求項4】
複数の前記板状部材のそれぞれは、前記本体部の外側に設けられた2つの前記ブリッジ部を備え、前記2つのブリッジ部は、前記本体部を挟んで互いに対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のブラシレスモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラシレスモータに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータの一例として、コイルが巻回されたティースを有するステータと、該ステータの径方向内側に回転自在に設けられたロータと、を備えたブラシレスモータが知られている。このようなブラシレスモータには、一般的にSPM(Surface Permanent Magnet)とIPM(Interior Permanent Magnet)の2種類のタイプがある。
【0003】
IPMタイプのブラシレスモータにおいては、ロータコアにマグネットが埋設されるため、磁束がマグネット端部に近接する鉄部を通り、該鉄部において磁束漏れが発生しやすい。この磁束漏れを抑制する構造を採用したIPMタイプのブラシレスモータが、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載されたブラシレスモータにおいては、ロータコアにおける磁束漏れを抑制する構造として、形状が異なる2種類のロータコアシートを互い違いに複数積層した構造が採用されている。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のように、2種類のロータコアシートを使用すると、部品の種類が増える上、2種類のロータコアシートを形成するために複数の金型が必要になり、ブラシレスモータの組立てコストが増加する。
【0007】
また、2種類のロータコアシートを積層する際には、それぞれのロータコアシートが別の部材であることを認識させる必要があるため、ブラシレスモータの組立てコストが更に増加することが懸念される。
【0008】
本発明の目的は、組立てコストの低減化を図りつつ性能が向上されたブラシレスモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ステータコアおよび該ステータコアに巻装された巻線を有するステータと、環状のロータコアおよび該ロータコアに埋設された複数のマグネットを有するロータと、を備えたブラシレスモータであって、前記ステータコアは、該ステータコアの径方向内側に向かって延びる複数のティースを有し、前記ロータは、複数の前記ティースの前記径方向内側で回転軸に設けられ、前記ロータコアは、前記回転軸に設けられる本体部と、該本体部と一体であり、かつ、前記マグネットの外周面を支持可能なブリッジ部と、を備えた複数の板状部材からなり、複数の前記板状部材は、積層方向に隣り合う前記板状部材の前記ブリッジ部が前記ロータコアの周方向において重ならないように積層されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ブラシレスモータの組立てコストの低減化を図りつつ性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態のブラシレスモータの斜視図である。
【
図3】
図1に示すブラシレスモータのロータコアを構成するロータコアシートを示す斜視図である。
【
図4】
図3に示すロータコアシートを互い違いに積層したロータコアの図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【
図5】(a)は
図4に示すロータコアに装着されるマグネットの斜視図、(b)はマグネットを装着したロータコアの斜視図である。
【
図6】
図5(b)に示すロータコアをシャフトに固定した構造を示す側面図である。
【
図7】(a)は比較例のロータコアシートを示す斜視図、(b)は(a)のロータコアシートを積層したロータコアの斜視図である。
【
図8】(a)は
図4に示す本実施の形態のロータコア構造における磁束漏れの抑制状態を示す部分平面図、(b)は(a)のロータコア構造における磁束漏れの抑制状態を示す部分斜視図である。
【
図9】(a)は
図7に示す比較例のロータコア構造における磁束漏れの発生状態を示す部分平面図、(b)は(a)のロータコア構造における磁束漏れの発生状態を示す部分斜視図である。
【
図10】
図4に示す本実施の形態のロータコア構造と
図7に示す比較例のロータコア構造における有効磁束の比較図である。
【
図11】(a)は
図4に示す本実施の形態のロータコア構造におけるd軸とq軸を示す部分平面図、(b)は
図4に示す本実施の形態のロータコア構造と
図7に示す比較例のロータコア構造におけるリラクタンストルクの比較図である。
【
図12】(a)は
図4に示す本実施の形態のロータコアシートの歩留まり状態を示す平面図、(b)は
図7に示す比較例のロータコアシートの歩留まり状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
本実施の形態のブラシレスモータの構造について説明する。本実施の形態のブラシレスモータ21は、
図1および
図2に示すように、環状のステータコア25と、ステータコア25に巻装されたコイル(巻線)28と、を備えたステータ29を有している。そして、ステータコア25は、径方向内側に向かって延びる複数のティース30を有している。
【0014】
また、ブラシレスモータ21は、ティース30の内側においてシャフト(回転軸)27に設けられたロータ24を有している。つまり、ロータ24は、複数のティース30の径方向内側において回転自在に配置されている。また、ロータ24は、環状のロータコア22と、ロータコア22に埋設された4つのマグネット(磁石)23a,23b,23c,23dと、を有している。すなわち、本実施の形態のブラシレスモータ21は、ロータコア22にマグネット23(23a,23b,23c,23d)が埋設されたIPMタイプのブラシレスモータ21である。
【0015】
また、ブラシレスモータ21は、ステータコア25の径方向内側に設けられ、かつ、回転可能なシャフト27を有している。そして、ロータコア22は、上述のようにシャフト27に固定されており、シャフト27は、
図1に示すように、ボールベアリング36によって回転自在に支持されている。
【0016】
また、
図2に示すように、ステータコア25は、該ステータコア25の内周面からステータコア25の径方向内側に向かって突出する複数のティース30を備えており、複数のティース30のそれぞれに絶縁膜33を介してコイル28が巻回されている。
【0017】
また、複数のティース30の内側に配置されたロータコア22は、シャフト27に設けられた本体部22bと、該本体部22bの外側に配置され、かつ、本体部22bと一体に形成されたブリッジ部22eと、を有している。そして、ロータコア22の本体部22bとブリッジ部22eとによって形成される領域に、マグネット23a,23b,23c,23dが分散して埋設されている。言い換えると、ロータコア22において、4つのマグネット23a,23b,23c,23dが本体部22bを囲むようにロータコア22の外周部近傍に埋設されている。
【0018】
ここで、
図3を用いて、ロータコア22を構成するロータコアシート(板状部材)22aの詳細形状について説明する。本実施の形態のロータコアシート22aは、薄い板状の部材である。そして、ロータコアシート22aは、
図2に示すシャフト27に設けられる本体部22bと、該本体部22bと一体であり、かつ、マグネット23の外周面23e(後述する
図5(a)参照)を支持可能なブリッジ部22eと、を有している。
【0019】
ロータコアシート22aの本体部22bは、平面視が略四角形であり、本体部22bの中央部にシャフト27が配置される貫通孔22iを有している。また、略四角形の本体部22bの4つの角部には、2つの角部突出部22cと2つの角部突出部22dが設けられている。具体的には、略四角形の本体部22bの一方の対角線上に2つの角部突出部22cが設けられ、さらに他方の対角線上に2つの角部突出部22dが設けられている。つまり、略四角形の本体部22bの4つの角部には、角部突出部22cと角部突出部22dとが隣り合ってそれぞれ2つずつ設けられている。そして、角部突出部22cと角部突出部22dとを繋ぐ2つの円弧状のブリッジ部22eが本体部22bの外側に設けられている。なお、2つの円弧状のブリッジ部22eは、本体部22bの外側において対向する位置に設けられている。つまり、複数のロータコアシート22aのそれぞれは、本体部22bの外側に設けられた2つのブリッジ部22eを備え、2つのブリッジ部22eは、本体部22bを挟んで互いに対向する位置に設けられている。
【0020】
また、本体部22bとブリッジ部22eと角部突出部22cと角部突出部22dとによって囲われる領域は、収容部22gとなっており、2つの収容部22gがブリッジ部22eと同様に本体部22bの外側において対向する位置に設けられている。収容部22gには、
図5(a)に示すマグネット23が収容される。
【0021】
なお、ブリッジ部22eは、細長い円弧状に形成されており、ブリッジ部22eの幅と、本体部22bにおける貫通孔22iの縁から収容部22gの縁までの距離の最短距離とを比較してもブリッジ部22eの幅の方が遥かに狭い。
【0022】
また、ロータコアシート22aを構成する本体部22b、2つの角部突出部22c、2つの角部突出部22dおよび2つのブリッジ部22eは、一体に形成されている。そして、ロータコアシート22aは、例えば、鉄等からなる。
【0023】
次に、
図4(a)に示すロータコア22の形状について説明する。ロータコア22は、複数の同一形状のロータコアシート22aを積層してなるものである。つまり、本実施の形態のロータコア22は、一種類の形状の複数のロータコアシート22aを積層してなるものである。そして、複数のロータコアシート22aを積層する際に、積層方向35に隣り合うロータコアシート22aのブリッジ部22eがロータコア22の周方向34において重ならないように積層されている。別の言い方をすると、複数のロータコアシート22aのブリッジ部22eは、積層された複数のロータコアシート22aの1枚おきにロータコア22の周方向34において重なるように配置されている。具体的には、複数のロータコアシート22aが1枚おきに周方向34において90°向きを変えて互い違いに積層されている。つまり、周方向34において極数に合わせた角度に回転させながらロータコアシート22aを積層することで、積層方向35においてブリッジ部22eの有る部分と無い部分とが互い違いになる構造としている。
【0024】
これにより、略四角形の本体部22bの4つの辺それぞれの外側において円弧状のブリッジ部22eが積層方向35に互い違いに並んで配置される。そして、略四角形の本体部22bの周りに4つの収容部22gが配置される。
【0025】
また、ロータコアシート22aが90°向きを変えて互い違いに積層されるため、
図4(b)に示すように、複数のブリッジ部22eが、積層方向35において1枚おきに隙間部22jを設けた状態で配置される。言い換えると、ロータコア22について、積層方向35においては、ブリッジ部22eと隙間部22jとが1枚おきに並んでおり、また、周方向34においては、ブリッジ部22eの隣に隙間部22jが配置された状態となっている。
【0026】
なお、ロータコア22においては、複数のロータコアシート22aは、偶数枚積層されていることが好ましい。
【0027】
次に、本実施の形態の
図5(b)に示すロータ24について説明する。ロータ24は、本体部22bの周りに4つの収容部22gが配置されたロータコア22に、
図5(a)に示すような4つのマグネット23を埋設することで形成される。具体的には、
図4(a)に示すロータコア22の4つの収容部22gに、マグネット23a,23b,23c,23dを装着する。その際、
図5(a)に示すように予めマグネット23の背面に接着剤37を塗布した状態で、マグネット23を収容部22gに装着することが好ましい。なお、マグネット23a,23b,23c,23dは、それぞれの外周面23eが、各収容部22gにおいてブリッジ部22eによって支持される。
【0028】
また、ロータコアシート22aにおいて、円弧状のブリッジ部22eの幅と、本体部22bにおける貫通孔22iの縁から収容部22gの縁までの距離の最短距離とを比較するとブリッジ部22eの幅の方が遥かに狭い。すなわち、ロータコア22において、4つの収容部22gのそれぞれは、ロータコア22の外周部近傍に形成されている。つまり、
図5(b)に示すロータ24において、4つのマグネット23a,23b,23c,23dは、ロータコア22の外周部近傍に埋設されている。
【0029】
以上のように形成された
図5(b)に示すロータ24は、4極のロータ24である。そして、ロータコア22の貫通孔22iに、
図6に示すように回転軸であるシャフト27を装着した構造体がロータコアユニット26となる。
【0030】
次に、
図7を用いて、比較例のロータコアシート22kとロータコア32について説明する。
図7(a)に示す比較例のロータコアシート22kは、略四角形の本体部22bの4つの角部として、2つの角部突出部22cと2つの角部突出部22dが設けられており、さらに、隣り合う角部突出部22cと角部突出部22dとを繋ぐ4つの円弧状のブリッジ部22fが設けられている。したがって、略四角形の本体部22bの周囲には本体部22bの各辺に沿って4つの円弧状のブリッジ部22fが設けられている。言い換えると、ロータコアシート22kには、全周に亘ってブリッジ部22fが設けられている。
【0031】
また、本体部22bとブリッジ部22fと角部突出部22cと角部突出部22dとによって囲われる領域は、収容部22hとなっており、略四角形の本体部22bの周囲には本体部22bの各辺に対応して4つの収容部22hが設けられている。収容部22hには、
図9に示すマグネット23が収容される。なお、ロータコアシート22kを構成する本体部22b、2つの角部突出部22c、2つの角部突出部22dおよび4つのブリッジ部22fは、一体に形成されている。そして、ロータコアシート22kは、例えば、鉄等からなる。
【0032】
図7(b)に示す比較例のロータコア32は、複数の同一形状のロータコアシート22kを積層してなるものである。ロータコア32では、複数の同一形状のロータコアシート22kが周方向34において4つの収容部22hの位置が揃うように積層されている。これにより、略四角形の本体部22bの4つの辺それぞれの外側において円弧状のブリッジ部22fが積層方向35に並んで配置される。その際、略四角形の本体部22bの周りに4つの収容部22hが配置される。そして、複数のロータコアシート22kのそれぞれが全周に亘ってブリッジ部22fが設けられた構造であるため、複数のブリッジ部22fが、
図4(b)に示すような隙間部22jを有することなく、積層方向35において並んで配置されている。
【0033】
ここで、
図8と
図9を用いて、
図4に示す本実施の形態のロータコア22と、
図7(b)に示す比較例のロータコア32とにおいて、それぞれで発生する磁束漏れを比較する。
【0034】
図8(a)は、
図4に示す本実施の形態のロータコア22を用いたロータ24である。ロータ24においては、
図4(b)のロータコア22の構造に示すように、複数のロータコアシート22aが、その積層方向35において1枚おきに隙間部22jを設けた状態となるように積層されている。したがって、
図8(b)に示すように、ロータ24において、ブリッジ部22eにおけるマグネット端部鉄部22m(ブリッジ部22eにおけるマグネット端部に近接する鉄部)が積層方向に連続して配置されていない(1枚おきに配置されている)ため、
図9(a)に示す磁束38のループの発生を抑えることができ、ロータ24における磁束漏れ39(ドット部分)の発生を抑制することができる。
【0035】
一方、
図9(a)は、
図7(b)に示す比較例のロータコア32を用いたロータ31である。ロータ31は、
図7(b)のロータコア32の構造に示すように、複数のロータコアシート22kのそれぞれが、全周に亘ってブリッジ部22fが設けられた構造である。したがって、ロータ31では、
図9(a)に示すマグネット端部鉄部22m(ブリッジ部22fにおけるマグネット端部に近接する鉄部)が積層方向に連続して配置されるため、ロータコア32のブリッジ部22fのマグネット端部鉄部22mにおいて磁束38がループする。その結果、
図9(b)に示すように、ロータ31において磁束漏れ39(ドット部分)の発生する割合がロータ24の場合より大きい。
【0036】
なお、
図10は、本実施の形態のロータコア22と比較例のロータコア32とで、シミュレーションによって有効磁束の大きさを算出したものである。比較例のロータコア32の有効磁束が134μWbであるのに対して、本実施の形態のロータコア22の有効磁束は140μWbである。すなわち、上記シミュレーションにおいても、比較例のロータコア32に比べて本実施の形態のロータコア22の方が有効磁束(コイル鎖交磁束)が大きいという結果を得ることができた。
【0037】
また、
図11(a)に示す本実施の形態のロータコア22では、d軸40における磁気抵抗がq軸41における磁気抵抗より大きくなる。つまり、ブリッジ部22eが無い箇所(d軸40)の磁気抵抗が増加する。したがって、ブリッジ部22eが無い箇所では磁気抵抗が増加することで、リラクタンストルクが増加し、リラクタンストルクを有効活用することができる。
【0038】
一方、全周にブリッジ部22fがある場合には、d軸40とq軸41の磁束38の通し易さが近づくため、モータのトルクが低下する。
図11(b)は、本実施の形態のロータコア22と比較例のロータコア32とで、ロータコアの鉄部分のみにおいて、シミュレーションによってリラクタンストルクの大きさを算出したものである。比較例のロータコア32のリラクタンストルクが0.221Nmであるのに対して、本実施の形態のロータコア22のリラクタンストルクは0.237Nmである。すなわち、本実施の形態のロータコア22の方が比較例のロータコア32に比べてリラクタンストルクが大きいという結果が得られた。すなわち、本実施の形態のロータコア22は、活用できるリラクタンストルクが増加するため、ブラシレスモータ21の出力特性をより向上させることができる。
【0039】
以上のことから、ロータ24が組付けられた本実施の形態のブラシレスモータ21は、ブリッジ部22eが隙間部22jと互い違いに配置されることで、ロータ24における磁束漏れ39の発生を抑制することができ、その結果、ブラシレスモータ21の出力特性を向上させてブラシレスモータ21の性能の向上を図ることができる。
【0040】
また、ブラシレスモータ21のロータ24は、そのロータコア22が1種類の形状の複数のロータコアシート22aが積層されて成る部材であるため、部品の種類も減らすことができるとともに、ロータコアシート22aを形成するために必要な金型も1種類で済み、ブラシレスモータ21の組立てコストを低減させることができる。
【0041】
また、本実施の形態のロータコア22の組立てでは、1種類のロータコアシート22aを積層するため、積層する際のロータコアシート22aの認識も容易になり、ブラシレスモータ21の組立てコストをさらに低減させることが可能になる。
【0042】
したがって、本実施の形態のブラシレスモータ21は、組立てコストの低減化を図りつつ性能を向上させることができる。
【0043】
ここで、
図12は、本実施の形態のロータコアシート22aと比較例のロータコアシート22kとで、母材42における取り数を比較したものである。
図12(a)は本実施の形態のロータコアシート22aの取り数を示しており、
図12(b)が比較例のロータコアシート22kの取り数を示している。本実施の形態のロータコアシート22aは、その形状が略長方形となるため、円形の比較例のロータコアシート22kに比べて、同一の母材42から形成可能なロータコアシート22aの取り数を増やすことができ、歩留まりを向上させることができる。言い換えると、本実施の形態のロータコアシート22aを採用することで、ブラシレスモータ21の低コスト化を図ることができる。
【0044】
また、ロータコアシート22aの積層枚数を偶数枚とすることで、ロータコア22におけるN極とS極のバランスを良くすることができる。これにより、ブラシレスモータ21の出力特性を向上させることができる。
【0045】
また、
図4(b)に示すようにロータコア22の積層方向35において、1枚おきに隙間部22jが形成されるため、この隙間部22jにパテ等を埋め込むことにより、
図6に示すロータ24の回転バランスを調整することが可能になる。これにより、ブラシレスモータ21の出力特性を向上させることができる。
【0046】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、ブラシレスモータ21のステータ29の断面形状が、略六角形となっている場合を取り上げたが、ステータ29の断面形状は、円形等であってもよい。
【符号の説明】
【0047】
21:ブラシレスモータ,22:ロータコア,22a:ロータコアシート(板状部材),22b:本体部,22c,22d:角部突出部,22e,22f:ブリッジ部,22g,22h:収容部,22i:貫通孔,22j:隙間部,22k:ロータコアシート,22m:マグネット端部鉄部,23,23a,23b,23c,23d:マグネット,24:ロータ,25:ステータコア,26:ロータコアユニット,27:シャフト(回転軸),28:コイル(巻線),29:ステータ,30:ティース,31:ロータ,32:ロータコア,33:絶縁膜,34:周方向,35:積層方向,36:ボールベアリング,37:接着剤,38:磁束,39:磁束漏れ,40:d軸,41:q軸,42:母材