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特開2022-124612下水処理システムおよび下水処理制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124612
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】下水処理システムおよび下水処理制御方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20220819BHJP
   B01D 21/00 20060101ALI20220819BHJP
   B01D 21/08 20060101ALI20220819BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B01D21/30 E
B01D21/00 D
B01D21/08 A
B01D21/30 A
C02F1/50 520P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022344
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】397028016
【氏名又は名称】株式会社日水コン
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】野田 慎治
(57)【要約】      (修正有)
【課題】下水処理施設において、雨天時の流入水量増加時にその時点の活性汚泥界面沈降速度に応じた適切な高級処理能力を把握し、沈殿放流水量を抑制する運転を行う、下水処理システムを提供する。
【解決手段】最初沈殿池と反応タンクと最終沈殿池と消毒槽とを順に直列に接続し、放流装置50と第1流量計12と第2流量計22と制御装置60とを備え、制御装置60は、沈降速度測定装置62と、沈降速度に基づき最終沈殿池の沈殿処理可能な最大流量を演算により求める演算部73と、流量受信部74と、判別部75と、処理部77と、を含み、処理部77は、判別部75の判別によって最初沈殿池に流入する下水の流量の方が最大流量よりも多い場合に最終沈殿池の処理能力範囲内での下水処理を実行する一方、最初沈殿池に流入する下水の流量が最大流量以下の場合に処理を停止させる下水処理システム、および下水処理制御方法である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水を最初に沈殿処理するための最初沈殿池と、
前記最初沈殿池で処理された第1処理水に対して、微生物を含む活性汚泥を利用してバイオ処理を行うための反応タンクと、
前記反応タンクで処理された第2処理水中の前記活性汚泥を沈殿させるための最終沈殿池と、
前記最終沈殿池からの処理水を消毒する消毒槽と、
を順に直列に接続し、
前記第1処理水の一部を、前記反応タンクを迂回させて放流可能な放流装置と、
前記最初沈殿池に流入する下水の流量を測定する第1流量計と、
前記反応タンクに流入する前記第1処理水の流量、前記反応タンクを迂回した前記第1処理水の一部の流量、または前記最終沈殿池から流出する処理水の流量の少なくともいずれか1種の流量を測定する第2流量計と、
前記反応タンクおよび前記最終沈殿池を経て処理される高級処理水の流量を増やすための制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記最終沈殿池に流入する前記第2処理水の一部を抜き出して、前記最終沈殿池の沈殿処理を模擬的に実施して前記活性汚泥の沈降速度を測定する沈降速度測定装置と、
前記沈降速度に基づき前記最終沈殿池の沈殿処理可能な最大流量を演算により求める演算部と、
前記第1流量計および前記第2流量計から各流量のデータを定期的に受け取る流量受信部と、
前記流量受信部にて受信されたデータに基づく前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する判別部と、
前記第1処理水の一部の放流および前記反応タンクへの凝集剤の注入の内の少なくとも一方の処理を行って前記最終沈殿池の処理能力範囲内での下水処理を実行し、かつ当該処理を停止可能な処理部と、
を含み、
前記処理部は、前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に前記最終沈殿池の処理能力範囲内での下水処理を実行する一方、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に前記処理を停止させることを特徴とする下水処理システム。
【請求項2】
前記処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流と当該放流の停止とを行わせる放流処理部であって、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせ、
前記放流処理部によって放流した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流後の前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせることを特徴とする請求項1に記載の下水処理システム。
【請求項3】
前記反応タンクに凝集剤を注入した条件下で、
前記沈降速度測定装置、前記演算部、前記流量受信部、前記判別部および前記放流処理部の各処理を実行することを特徴とする請求項2に記載の下水処理システム。
【請求項4】
前記反応タンクに凝集剤を入れるための凝集剤注入装置を、さらに備え、
前記処理部は、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入させ、および注入停止を行わせる凝集剤注入処理部であって、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入し、
前記凝集剤注入処理部によって凝集剤を注入した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることを特徴とする請求項1に記載の下水処理システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流と当該放流の停止とを行わせる放流処理部を、さらに備え、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入処理部が前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入した後に、
前記演算部は、凝集剤を注入した条件下での前記最大流量を演算により求め、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせ、
前記放流処理部によって放流した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流後の前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量以下の場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせ、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流停止後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることを特徴とする請求項4に記載の下水処理システム。
【請求項6】
前記制御装置は、凝集剤の注入率と、凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから、前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を演算する係数演算部を、さらに備え、
前記凝集剤注入処理部は、前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入し、
凝集剤を前記反応タンクに注入後に、次の前記判別部による判別と併行して、前記沈降速度測定装置は、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定し、
前記係数演算部は、凝集剤を注入した条件下での前記沈降速度を用いて前記係数を演算により求め、
前記凝集剤注入処理部は、前記係数演算部により求めた前記係数を用いて、凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入し、
前記凝集剤注入処理部によって凝集剤を注入した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることを特徴とする請求項4に記載の下水処理システム。
【請求項7】
前記制御装置は、凝集剤の注入率と、凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから、前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を演算する係数演算部を、さらに備え、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入処理部が前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して凝集剤を前記反応タンクに注入した後に、次の前記第2演算部による演算と併行して、、前記沈降速度測定装置は、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定し、
前記係数演算部は、凝集剤を注入した条件下での前記沈降速度を用いて前記係数を演算により求め、
前記演算部は、前記係数の演算結果をも考慮に入れて、凝集剤を注入した条件下での前記最大流量を演算により求めることを可能とし、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせ、
前記放流処理部によって放流した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流後の前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量以下の場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせ、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流停止後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることを特徴とする請求項5に記載の下水処理システム。
【請求項8】
下水を最初に沈殿処理するための最初沈殿池と、
前記最初沈殿池で処理された第1処理水に対して、微生物を含む活性汚泥を利用してバイオ処理を行うための反応タンクと、
前記反応タンクで処理された第2処理水中の前記活性汚泥を沈殿させるための最終沈殿池と、
前記最終沈殿池からの処理水を消毒する消毒槽と、
を順に直列に接続し、
前記第1処理水の一部を、前記反応タンクを迂回させて放流可能な放流装置と、
前記最初沈殿池に流入する下水の流量を測定する第1流量計と、
前記反応タンクに流入する前記第1処理水の流量、前記反応タンクを迂回した前記第1処理水の一部の流量、または前記最終沈殿池から流出する処理水の流量の少なくともいずれか1種の流量を測定する第2流量計と、
前記反応タンクおよび前記最終沈殿池を経て処理される高級処理水の流量を増やすための制御を行う制御装置と、
を備える下水処理システムにおける下水処理制御方法であって、
前記制御装置によって、
前記最終沈殿池に流入する前記第2処理水の一部を抜き出して、前記最終沈殿池の沈殿処理を模擬的に実施して前記活性汚泥の沈降速度を測定する第1沈降速度測定ステップと、
前記沈降速度に基づき前記最終沈殿池の沈殿処理可能な最大流量を演算により求める第1演算ステップと、
前記第1流量計および前記第2流量計から各流量のデータを定期的に受け取る流量受信ステップと、
前記流量受信ステップにて受信されたデータに基づく前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第1判別ステップと、
前記第1判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に、前記放流装置による前記第1処理水の一部の放流および前記反応タンクへの凝集剤の注入の内の少なくとも一方の処理を行って、前記最終沈殿池の処理能力範囲内での下水処理を実行させる第1処理ステップと、
前記第1処理ステップの後、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第2判別ステップと、
前記第2判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に、前記第1処理ステップによる処理を停止させる第1処理停止ステップと、
を含むことを特徴とする下水処理制御方法。
【請求項9】
前記制御装置によって、
前記第1判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に、前記第1処理ステップとして、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部を放流させる第1放流ステップと、
前記第1放流ステップの後、前記第2判別ステップと、
前記第2判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に、前記第1処理停止ステップとして、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせる第1放流停止ステップと、
を実行することを特徴とする請求項8に記載の下水処理制御方法。
【請求項10】
前記反応タンクに凝集剤を注入した条件下で、
前記制御装置によって、前記第1沈降速度測定ステップ、前記第1演算ステップ、前記流量受信ステップ、前記第1判別ステップ、前記第1放流ステップ、前記第2判別ステップおよび前記第1放流停止ステップの各処理を実行することを特徴とする請求項9に記載の下水処理制御方法。
【請求項11】
前記下水処理システムは、前記反応タンクに凝集剤を入れるための凝集剤注入装置を、さらに備え、
前記制御装置によって、
前記第1判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記第1処理ステップとして、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入する凝集剤注入ステップと、
前記凝集剤注入ステップ後に、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する前記第2判別ステップと、
前記第2判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記第1処理停止ステップとして、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させる凝集剤注入停止ステップと、
を実行することを特徴とする請求項8に記載の下水処理制御方法。
【請求項12】
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記制御装置によって、
凝集剤を注入した条件下での前記最大流量を演算により求める第2演算ステップと、
前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第3判別ステップと、
前記第3判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量よりも多い場合に、第2処理ステップとして、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせる第2放流ステップと、
前記第2放流ステップの後、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第4判別ステップと、
前記第4判別ステップによって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量以下の場合に、第2処理停止ステップとして、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせる第2放流停止ステップと、
前記第2放流停止ステップの後に、
前記第2判別ステップと、
前記第1処理停止ステップとして、前記凝集剤注入停止ステップと、
を実行することを特徴とする請求項11に記載の下水処理制御方法。
【請求項13】
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記制御装置によって、
前記第2判別ステップの実行と併行して、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定する第2沈降速度測定ステップと、
凝集剤の注入率と凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから算出される前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を、前記第2沈降速度測定ステップにより得られた前記沈降速度から求める係数演算ステップと、
を実行して、再び前記凝集剤注入ステップに戻り、
前記凝集剤注入ステップの後に、前記第2判別ステップおよび前記凝集剤注入停止ステップを実行することを特徴とする請求項11に記載の下水処理制御方法。
【請求項14】
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記制御装置によって、
前記第2演算ステップの実行と併行して、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定する第2沈降速度測定ステップと、
凝集剤の注入率と凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから算出される前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を、前記第2沈降速度測定ステップにより得られた前記沈降速度から求める係数演算ステップと、
を実行して、再び前記凝集剤注入ステップに戻り、
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記係数演算ステップの結果も考慮に入れることを可能とする前記第2演算ステップと、
前記第3判別ステップと、
前記第2放流ステップと、
前記第4判別ステップと、
前記第2放流停止ステップと、
前記第2判別ステップと、
前記凝集剤注入停止ステップと、
を実行することを特徴とする請求項12に記載の下水処理制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理システムおよび当該システムにより行われる下水処理制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な下水処理場では、晴天時には最初沈殿池で固形物の一部を沈殿除去した水を反応タンクに流入させ、活性汚泥による処理を行った後、最終沈殿池で活性汚泥を沈殿させ、その時得られた高級処理水を消毒した後に放流するようにしている。一方、雨天時に流入水量が大幅に増加し、1時間あたりの晴天時計画最大汚水量を超過したときには、活性汚泥の最終沈殿池からの流出を防止する必要から、反応タンクおよび最終沈殿池の流入水量を抑制する運転が行われる。具体的には、最初沈殿池流出水路に設置している沈殿放流のための可動堰を下げ、最初沈殿池で沈殿処理した水を高級処理水量と合わせて消毒した後、放流している。反応タンクと最終沈殿池を通過した高級処理水と比較すると、沈殿放流水の水質は高濃度であるため、放流先水域の環境保全のために沈殿放流水量をできるだけ減らすことが望ましい。
【0003】
上記晴天時計画最大汚水量は、安全を考慮して設定されているため、流入下水量が上記晴天時計画最大汚水量の条件でも反応タンクと最終沈殿池の処理能力に余裕があると考えられる。しかし、その余裕を定量化できていないため、雨天時に流入水量が大幅に増加し、上記晴天時計画最大汚水量を超過した時に沈殿放流を開始するという安全側の運転管理を余儀なくされている。雨天時には流入水質が低下するため反応タンクの処理能力には余裕が生じる。一方、最終沈殿池の処理能力(固液分離能力)は活性汚泥性状(濃度や沈降性など)に影響を受けるため、雨天時に余裕が生じるわけではない。そのため、雨天時の高級処理水量は最終沈殿池の固液分離能力に依存することになる。
【0004】
このような状況に鑑みて、最終沈殿池の固液分離能力を活性汚泥界面沈降速度と最終沈殿池の面積を乗じることで把握する方法が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。また、活性汚泥界面沈降速度を計測し、最終沈殿池での汚泥界面レベルを把握する方法も知られている(例えば、特許文献1を参照)。加えて、汚泥界面沈降速度およびその測定については、特許文献2,3にも言及がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】下水道施設計画・設計指針と解説(2019年版)後編p95
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55-137095号公報
【特許文献2】特開2001-149934号公報
【特許文献3】特開2015-188850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記非特許文献1の方法を用いる場合、一般的な運転管理では、活性汚泥界面沈降速度を日常的に測定できていない。また、特許文献1には、活性汚泥界面沈降速度を計測し、最終沈殿池での汚泥界面レベルを把握する方法が示されているが、沈殿放流水量を制御する方法は確立されていない。特許文献2,3に開示の技術も、汚泥界面沈降速度の測定を行ってはいても、その測定結果を、活性汚泥を用いた処理の運転に活用することには至っていない。このように、現在の下水処理場の運転管理においては、雨天時の流入水量増加時に、その時点の活性汚泥界面沈降速度に応じた適切な高級処理能力を把握し、沈殿放流水量を抑制する運転ができていない、という課題がある。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、下水処理施設において、雨天時の流入水量増加時に、その時点の活性汚泥界面沈降速度に応じた適切な高級処理能力を把握し、沈殿放流水量を抑制する運転を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る下水処理システムは、
下水を最初に沈殿処理するための最初沈殿池と、
前記最初沈殿池で処理された第1処理水に対して、微生物を含む活性汚泥を利用してバイオ処理を行うための反応タンクと、
前記反応タンクで処理された第2処理水中の前記活性汚泥を沈殿させるための最終沈殿池と、
前記最終沈殿池からの処理水を消毒する消毒槽と、
を順に直列に接続し、
前記第1処理水の一部を、前記反応タンクを迂回させて放流可能な放流装置と、
前記最初沈殿池に流入する下水の流量を測定する第1流量計と、
前記反応タンクに流入する前記第1処理水の流量、前記反応タンクを迂回した前記第1処理水の一部の流量、または前記最終沈殿池から流出する処理水の流量の少なくともいずれか1種の流量を測定する第2流量計と、
前記反応タンクおよび前記最終沈殿池を経て処理される高級処理水の流量を増やすための制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記最終沈殿池に流入する前記第2処理水の一部を抜き出して、前記最終沈殿池の沈殿処理を模擬的に実施して前記活性汚泥の沈降速度を測定する沈降速度測定装置と、
前記沈降速度に基づき前記最終沈殿池の沈殿処理可能な最大流量を演算により求める演算部と、
前記第1流量計および前記第2流量計から各流量のデータを定期的に受け取る流量受信部と、
前記流量受信部にて受信されたデータに基づく前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する判別部と、
前記第1処理水の一部の放流および前記反応タンクへの凝集剤の注入の内の少なくとも一方の処理を行って前記最終沈殿池の処理能力範囲内での下水処理を実行し、かつ当該処理を停止可能な処理部と、
を含み、
前記処理部は、前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に前記最終沈殿池の処理能力範囲内での下水処理を実行する一方、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に前記処理を停止させる。
(2)別の実施形態に係る下水処理システムにおいて、好ましくは、
前記処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流と当該放流の停止とを行わせる放流処理部であって、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせ、
前記放流処理部によって放流した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流後の前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせることができる。
(3)別の実施形態に係る下水処理システムは、好ましくは、前記反応タンクに凝集剤を注入した条件下で、前記沈降速度測定装置、前記演算部、前記流量受信部、前記判別部および前記放流処理部の各処理を実行することができる。
(4)別の実施形態に係る下水処理システムは、好ましくは、
前記反応タンクに凝集剤を入れるための凝集剤注入装置を、さらに備え、
前記処理部は、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入させ、および注入停止を行わせる凝集剤注入処理部であって、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入し、
前記凝集剤注入処理部によって凝集剤を注入した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることができる。
(5)別の実施形態に係る下水処理システムにおいて、好ましくは、
前記制御装置は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流と当該放流の停止とを行わせる放流処理部を、さらに備え、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入処理部が前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入した後に、
前記演算部は、凝集剤を注入した条件下での前記最大流量を演算により求め、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせ、
前記放流処理部によって放流した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流後の前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量以下の場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせ、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流停止後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることができる。
(6)別の実施形態に係る下水処理システムにおいて、好ましくは、
前記制御装置は、凝集剤の注入率と、凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから、前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を演算する係数演算部を、さらに備え、
前記凝集剤注入処理部は、前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入し、
凝集剤を前記反応タンクに注入後に、次の前記判別部による判別と併行して、前記沈降速度測定装置は、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定し、
前記係数演算部は、凝集剤を注入した条件下での前記沈降速度を用いて前記係数を演算により求め、
前記凝集剤注入処理部は、前記係数演算部により求めた前記係数を用いて、凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入し、
前記凝集剤注入処理部によって凝集剤を注入した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることができる。
(7)別の実施形態に係る下水処理システムにおいて、好ましくは、
前記制御装置は、凝集剤の注入率と、凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから、前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を演算する係数演算部を、さらに備え、
前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記凝集剤注入処理部が前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して凝集剤を前記反応タンクに注入した後に、次の前記第2演算部による演算と併行して、前記沈降速度測定装置は、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定し、
前記係数演算部は、凝集剤を注入した条件下での前記沈降速度を用いて前記係数を演算により求め、
前記演算部は、前記係数の演算結果をも考慮に入れて、凝集剤を注入した条件下での前記最大流量を演算により求めることを可能とし、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
凝集剤を注入後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせ、
前記放流処理部によって放流した後、前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流後の前記判別部の判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量以下の場合に、前記放流処理部は、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせ、
前記判別部は、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別し、
放流停止後の前記判別部による判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記凝集剤注入処理部は、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させることができる。
(8)上記目的を達成するための一実施形態に係る下水処理制御方法は、
下水を最初に沈殿処理するための最初沈殿池と、
前記最初沈殿池で処理された第1処理水に対して、微生物を含む活性汚泥を利用してバイオ処理を行うための反応タンクと、
前記反応タンクで処理された第2処理水中の前記活性汚泥を沈殿させるための最終沈殿池と、
前記最終沈殿池からの処理水を消毒する消毒槽と、
を順に直列に接続し、
前記第1処理水の一部を、前記反応タンクを迂回させて放流可能な放流装置と、
前記最初沈殿池に流入する下水の流量を測定する第1流量計と、
前記反応タンクに流入する前記第1処理水の流量、前記反応タンクを迂回した前記第1処理水の一部の流量、または前記最終沈殿池から流出する処理水の流量の少なくともいずれか1種の流量を測定する第2流量計と、
前記反応タンクおよび前記最終沈殿池を経て処理される高級処理水の流量を増やすための制御を行う制御装置と、
を備える下水処理システムにおける下水処理制御方法であって、
前記制御装置によって、
前記最終沈殿池に流入する前記第2処理水の一部を抜き出して、前記最終沈殿池の沈殿処理を模擬的に実施して前記活性汚泥の沈降速度を測定する第1沈降速度測定ステップと、
前記沈降速度に基づき前記最終沈殿池の沈殿処理可能な最大流量を演算により求める第1演算ステップと、
前記第1流量計および前記第2流量計から各流量のデータを定期的に受け取る流量受信ステップと、
前記流量受信ステップにて受信されたデータに基づく前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第1判別ステップと、
前記第1判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に、前記放流装置による前記第1処理水の一部の放流および前記反応タンクへの凝集剤の注入の内の少なくとも一方の処理を行って、前記最終沈殿池の処理能力範囲内での下水処理を実行させる第1処理ステップと、
前記第1処理ステップの後、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第2判別ステップと、
前記第2判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に、前記第1処理ステップによる処理を停止させる第1処理停止ステップと、
を含む。
(9)別の実施形態に係る下水処理制御方法は、好ましくは、
前記制御装置によって、
前記第1判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が前記最大流量よりも多い場合に、前記第1処理ステップとして、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部を放流させる第1放流ステップと、
前記第1放流ステップの後、前記第2判別ステップと、
前記第2判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が前記最大流量以下の場合に、前記第1処理停止ステップとして、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせる第1放流停止ステップと、
を実行することができる。
(10)別の実施形態に係る下水処理制御方法は、好ましくは、前記反応タンクに凝集剤を注入した条件下で、前記制御装置によって、前記第1沈降速度測定ステップ、前記第1演算ステップ、前記流量受信ステップ、前記第1判別ステップ、前記第1放流ステップ、前記第2判別ステップおよび前記第1放流停止ステップの各処理を実行することができる。
(11)別の実施形態に係る下水処理制御方法において、好ましくは、
前記下水処理システムは、前記反応タンクに凝集剤を入れるための凝集剤注入装置を、さらに備え、
前記制御装置によって、
前記第1判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量の方が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量よりも多い場合に、前記第1処理ステップとして、前記凝集剤注入装置による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を前記反応タンクに注入する凝集剤注入ステップと、
前記凝集剤注入ステップ後に、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する前記第2判別ステップと、
前記第2判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入していない条件下での前記最大流量以下の場合に、前記第1処理停止ステップとして、前記凝集剤注入装置に対して凝集剤の注入を停止させる凝集剤注入停止ステップと、
を実行することができる。
(12)別の実施形態に係る下水処理制御方法は、好ましくは、
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記制御装置によって、
凝集剤を注入した条件下での前記最大流量を演算により求める第2演算ステップと、
前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第3判別ステップと、
前記第3判別ステップの判別によって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量よりも多い場合に、第2処理ステップとして、前記放流装置に対して前記第1処理水の一部の放流を行わせる第2放流ステップと、
前記第2放流ステップの後、前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量と凝集剤を注入した条件下での前記最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第4判別ステップと、
前記第4判別ステップによって前記最初沈殿池に流入する前記下水の流量が凝集剤を注入した条件下での前記最大流量以下の場合に、第2処理停止ステップとして、前記放流装置に対して、前記第1処理水の一部の放流の停止を行わせる第2放流停止ステップと、
前記第2放流停止ステップの後に、
前記第2判別ステップと、
前記第1処理停止ステップとして、前記凝集剤注入停止ステップと、
を実行することができる。
(13)別の実施形態に係る下水処理制御方法は、好ましくは、
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記制御装置によって、
前記第2判別ステップの実行と併行して、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定する第2沈降速度測定ステップと、
凝集剤の注入率と凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから算出される前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を、前記第2沈降速度測定ステップにより得られた前記沈降速度から求める係数演算ステップと、
を実行して、再び前記凝集剤注入ステップに戻り、
前記凝集剤注入ステップの後に、前記第2判別ステップおよび前記凝集剤注入停止ステップを実行することができる。
(14)別の実施形態に係る下水処理制御方法は、好ましくは、
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記制御装置によって、
前記第2演算ステップの実行と併行して、凝集剤を注入した条件下で前記活性汚泥の沈降速度を測定する第2沈降速度測定ステップと、
凝集剤の注入率と凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから算出される前記注入率の増大に伴う前記沈降速度の上昇度合を示す係数を、前記第2沈降速度測定ステップにより得られた前記沈降速度から求める係数演算ステップと、
を実行して、再び前記凝集剤注入ステップに戻り、
前記凝集剤注入ステップの後に、
前記係数演算ステップの結果も考慮に入れることを可能とする前記第2演算ステップと、
前記第3判別ステップと、
前記第2放流ステップと、
前記第4判別ステップと、
前記第2放流停止ステップと、
前記第2判別ステップと、
前記凝集剤注入停止ステップと、
を実行することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、下水処理施設において、雨天時の流入水量増加時に、その時点の活性汚泥界面沈降速度に応じた適切な高級処理能力を把握し、沈殿放流水量を抑制する運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る下水処理システムの概略図を示す。
図2図2は、図1の下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
図3図3は、第1実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
図4図4は、第2実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
図5図5は、第3実施形態および第5実施形態に係る下水処理システムの概略図を示す。
図6図6は、図5の第3実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
図7図7は、第3実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
図8図8は、第4実施形態および第6実施形態に係る下水処理システムの概略図を示す。
図9図9は、図8の第3実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
図10図10は、第4実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
図11図11は、図5の第5実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
図12図12は、第5実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
図13図13は、図8の第6実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
図14図14は、第6実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る下水処理システムについて図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、第1実施形態に係る下水処理システムの概略図を示す。図2は、図1の下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
【0015】
下水処理システム1は、最初沈殿池10、反応タンク20、最終沈殿池30、消毒槽40を、順に直列に備える。最初沈殿池10は、流入してきた下水に対して最初に沈殿処理を行う沈殿槽である。反応タンク20は、最初沈殿池10で処理された第1処理水に対して、微生物を含む活性汚泥を利用してバイオ処理を行うためのタンクである。最終沈殿池30は、反応タンク20で処理された第2処理水中の活性汚泥を沈殿させるための沈殿槽である。消毒槽40は、最終沈殿池30からの処理水を消毒する槽である。
【0016】
最初沈殿池10は、その上流側に、下水を最初沈殿池10に流入可能な配管11を備える。配管11は、下水の流量を測定する第1流量計12を備える。最初沈殿池10と反応タンク20との間には、最初沈殿池10にて処理された第1処理水の全部もしくは一部を反応タンク20に流入可能な配管21を備える。配管21には、反応タンク20を迂回して、第1処理水の一部を最終沈殿池30に入れないようにする迂回用の配管51が接続されている。配管51は、その経路中を流れる第1処理水の放流量を調節可能な放流装置としての一例である可動堰50を備える。可動堰50は、第1処理水の一部を、反応タンク20を迂回させて放流可能である。可動堰50は、一例として、モータ等の駆動源に接続されたゲートの開閉および開状態を制御され、配管51を流れる第1処理水の流量を調節可能である。放流装置は、可動堰50以外の装置でも良い。
【0017】
配管21は、配管51との接続位置よりも反応タンク20側に、反応タンク20に流入する第1処理水の流量を測定する第2流量計22を備える。なお、この実施形態では、第2流量計22は、反応タンク20に流入する第1処理水の流量を直接測定する流量計である。しかし、第2流量計は、反応タンク20を迂回した第1処理水の一部、または最終沈殿池30から流出する処理水の流量の少なくともいずれか1種の流量を測定する流量計とし、反応タンク20に流入する第1処理水の流量を間接的に算出できる位置に備えても良い。
【0018】
反応タンク20と最終沈殿池30との間には、反応タンク20にて処理された第2処理水を最終沈殿池30に流入可能な配管31を備える。配管31は、その経路中に第2処理水の一部を取水するための配管61を接続している。配管61は、配管31の接続部分から先にて制御装置60と接続されている。制御装置60は、反応タンク20および最終沈殿池30を経て処理される高級処理水の流量を増やすための制御を行う装置である。この実施形態では、制御装置60は、放流装置の一例である可動堰50により放流する第1処理水の流量を制御可能である。制御装置60は、第1流量計12および第2流量計22からの各流量のデータを受信可能である。また、制御装置60は、可動堰50の開閉の他、開状態のレベルを制御可能である。
【0019】
最終沈殿池30と消毒槽40との間には、最終沈殿池30にて処理された処理水を消毒槽40に流入可能な配管41を備える。配管51は、配管41の途中に接続されている。消毒槽40の下流側には、消毒槽40にて処理された処理水を外部に流すための配管42が備えられている。
【0020】
下水処理システム1では、下水は、図中の矢印Aに示す方向に流れていき、最初沈殿池10、反応タンク20、最終沈殿池30、消毒槽40にて処理される。また、最初沈殿池10で処理された第1処理水の一部は、可動堰50を開けることによって、図中の矢印Bに示すように、配管51を経由して配管41へと流れ込み、消毒槽40にて消毒される。
【0021】
次に、制御装置60の構成およびその動作について説明する。
【0022】
制御装置60は、沈降速度測定装置62と、制御部70と、ユーザインターフェイス70aと、を備える。沈降速度測定装置62は、最終沈殿池30に流入する第2処理水の一部を抜き出して、最終沈殿池30の沈殿処理を模擬的に実施して活性汚泥の沈降速度を測定する装置である。沈降速度測定装置62は、一例として、配管61から第2処理水を抜き出するための水中ポンプ63と、水中ポンプ63を通じて抜き出した第2処理水を流入する透明容器64と、水中ポンプ63から透明容器64に第2処理水を送る配管65と、透明容器64内の第2処理水に向けて発光可能な発光装置67(発光方向:C方向)と、発光装置67を透明容器64の水面から底に向かって移動可能なレール66と、透明容器64を挟んで発光装置67と反対側に配置される受光装置68と、を備える。
【0023】
沈降速度測定装置62は、制御部70による制御下で、水中ポンプ63によって、反応タンク20から最終沈殿池30に流れ込む第2処理水を抜き出す。抜き出された第2処理水は、配管61、水中ポンプ63、配管65を順に経由して、透明容器64に入る。ここで、透明容器64の底部には、好ましくは、図2の矢印Eに示すように、空気を水中に散気させて第2処理水を掻き混ぜる構成部が備えられている。第2処理水は、透明容器64内への流入を完了した後に静置される。その後、第2処理水中の活性汚泥は沈降していく。発光装置67は、レール66を移動して、複数回発光を行う。受光装置68は、発光装置67から発光された光を、第2処理水を通して受光する。活性汚泥の沈降速度に応じて上澄みの高さが異なるため、発光装置67を第2処理水の水面から透明容器64の底に向かって移動する過程で複数回の発光と受光を実行することにより、第2処理水の静置から沈降速度の測定までの時間と活性汚泥の沈降距離とから、活性汚泥の沈降速度を求めることができる。透明容器64内の第2処理水は、不要となった時点で、透明容器64から外部に流出することができる(矢印Dを参照)。外部は、例えば、反応タンク20でも良い。
【0024】
沈降速度測定装置62は、上記構成の装置に限定されない。例えば、発光装置67と受光装置68を用いた透過型の測定装置に代えて、反射式にて発光と受光とを行う装置を用いても良い。また、発光装置67がレール66を移動する方法に代え、レール66の高さ方向に複数個の発光装置67と受光装置68とを配置する方法を採用しても良い。また、発光装置67および受光装置68を用いずに、活性汚泥の沈降状況を画像処理することによって、沈降高さを特定するようにしても良い。
【0025】
制御部70は、ポンプ駆動部71と、沈降速度測定部72と、演算部73と、流量受信部74と、判別部75と、記憶部76と、処理部の一例としての放流処理部77と、を備える。処理部は、第1処理水の一部の放流および反応タンク20への凝集剤の注入の内の少なくとも一方の処理を行って最終沈殿池30の処理能力範囲内での下水処理を実行し、かつ当該処理を停止可能な構成部である。この実施形態では、放流処理部77は、処理部として、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流と当該放流の停止とを行わせることが可能である。ユーザインターフェイス70aは、制御部70と操作者(ユーザ)との間を媒介する入出力部である。操作者がユーザインターフェイス70aを通じて操作することによって、制御部70内の各構成部および沈降速度測定装置62の動作および停止を実行可能である。ユーザインターフェイス70aとしては、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネルなどを例示できる。以後の実施形態でも同様である。
【0026】
記憶部76を除き、ポンプ駆動部71、沈降速度測定部72、演算部73、流量受信部74、判別部75および放流処理部77は、中央処理装置(CPU)というハードウェアと、記憶部76に格納されているプログラムとの協働によって各種処理を実行可能である。制御部70は、ポンプ駆動部71、沈降速度測定部72、演算部73、流量受信部74、判別部75および放流処理部77の各処理以外に、CPUというハードウェアとプログラムとの協働によって、上記各構成部の制御処理を実行可能である。記憶部76は、読み出しのみを可能とするROMでも良いが、好ましくは、読み出しと書き込みを可能とするRAMの他、EEPROMなどの他のタイプのメモリでも良い。制御部70内の各構成部のデータは、好ましくは、当該各構成部から記憶部76に送られる。また、各構成部は、必要に応じて、記憶部76からデータまたはプログラムを受けとることができる。これは、以後の各実施形態でも同様である。
【0027】
ポンプ駆動部71は、水中ポンプ63を駆動するように指示を発することのできる構成部である。沈降速度測定部72は、発光装置67による発光、受光装置68による受光、発光装置67の移動・停止、および受光装置68からの受光データと、沈降開始から測定までの時間とに基づき、活性汚泥の沈降速度を算出する構成部である。沈降速度を求めるために要する式は、記憶部76に格納されている。沈降速度測定部72は、記憶部76にアクセスして受け取った式を用いて沈降速度を算出する。
【0028】
演算部73は、最終沈殿池30の沈殿処理可能な最大流量を演算により求める構成部である。演算に必要な式は、記憶部76に格納されている。演算部73は、記憶部76にアクセスして受け取った式を用いて上記最大流量を算出する。
【0029】
凝集剤を注入しない条件下での活性汚泥界面沈降速度(「活性汚泥界面沈降速度」を、以後、単に「沈降速度」という。)LV(0)を計測すると、下記の式1を利用して、その計測値LV(0)と、最終沈殿池水面積Aと、安全率δとを乗じることで最終沈殿池処理能力QMAXsed(0)を算出できる。最終沈殿池処理能力は、最終沈殿池30の処理可能な単位時間当たりの処理量を意味することから、「最大流量」と称することができる。なお、第2処理水の上限値QMAXtank(0)は、最終沈殿池処理能力QMAXsed(0)と同値である(式2を参照)。したがたって、下記の式3により、第2処理水の上限値QMAXtank(0)は、沈降速度LV(0)と、最終沈殿池30の水面の面積Aと、安全率δとを乗じることで算出できる。QMAXtank(0)は、凝集剤を注入しない条件での最終沈殿池30に沈殿処理可能な最大流量を意味する。安全率δは、1未満の正の数値であれば特に制約はないが、設計上、好ましくは0.7~0.99の範囲で設定可能な数値である。安全率δは、最終沈殿池30の処理能力をLV(0)×Aで算出し、これにδを乗じることにより、余裕をもって第2処理水を受け入れるようにするための係数である。この実施形態では、例えば、δ=0.8に設定するのが好ましい。式3は、記憶部76に格納されている。したがって、演算部73は、記憶部76から式3を読み出し、沈降速度測定部72から受け取った沈降速度LV(0)を代入して、QMAXtank(0)を演算により求めることができる。
【0030】
QMAXsed(0)=LV(0)×A×δ・・式1
QMAXtank(0)=QMAXsed(0)・・式2
QMAXtank(0)=LV(0)×A×δ・・式3
【0031】
流量受信部74は、第1流量計12および第2流量計22から各流量のデータを定期的に受け取る構成部である。この実施形態では、第2流量計22は、反応タンク20に流入する第1処理水の流量を直接計測している。このため、流量受信部74は、第2流量計22からの流量データに対して何らの計算を行わない。また、第2流量計を、配管51が合流する前の配管41に備えた場合には、反応タンク20に入る流量を、最終沈殿池30から出てくる流量とみなすことができる。このため、流量受信部74は、第2流量計からの流量データに対して何らの計算を行わない。一方、第2流量計を配管51に備えた場合には、迂回させた第1処理水の流量を第2流量計で計測している。このため、反応タンク20に流入する第1処理水の流量は、第1流量計12の計測値から、配管51の第2流量計の計測値を差し引いた値となる。流量受信部74は、かかる計算を行うことになる。なお、流量受信部74を備えず、第1流量計12および第2流量計22からの各流量データが記憶部76に、定期的に(例えば、1分毎に)、直接、格納されるようにしても良い。その場合、演算部73および判別部75などの構成部は、記憶部76から各流量データを取得可能である。
【0032】
判別部75は、流量受信部74にて受信されたデータに基づく最初沈殿池10に流入する下水の流量と最大流量とを比較して両流量の大小を判別する。放流処理部77は、第1処理水の一部の放流を行って最終沈殿池30の処理能力範囲内での下水処理を実行し、かつ当該処理を停止可能である。この実施形態では、判別部75の判別によって最初沈殿池10に流入する下水の流量の方が最大流量よりも多い場合に、放流処理部77は、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流を行わせる。放流処理部77によって放流した後、判別部75は、あらためて、最初沈殿池10に流入する下水の流量と最大流量とを比較して両流量の大小を判別する。放流後の判別部75による判別によって最初沈殿池10に流入する下水の流量が最大流量以下の場合に、放流処理部77は、可動堰50に対して、第1処理水の一部の放流の停止を行わせる。
【0033】
上記の判別部75と放流処理部77との動作をより詳細に説明すると、次の通りとなる。判別部75は、流量受信部74にて受信されたデータに基づく最初沈殿池10に流入する下水の流量Qin(t)と、上記最大流量QMAXtank(0)とを比較して、両流量の大小を判別する。放流処理部77は、判別部75の判別によってQin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合(すなわち、Qin(t)>QMAXtank(0)の場合)に、好ましくは、反応タンク20に流入する第1処理水の流量Qtank(t)がQMAXtank(0)以下になることを目標に、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流を行わせる。すなわち、放流処理部77は、可動堰50のゲートの上下動を通じて、Qtank(t)≦QMAXtank(0)となるように放流を行うことができる。記憶部76には、好ましくは、可動堰50のゲートの開き程度と放流する流量との関係式が格納されている。放流処理部77は、当該関係式を参照しながら、可動堰50を駆動する。ただし、可動堰50を経験則で動かし、反応タンク20への流入量の変化を見て、Qtank(t)≦QMAXtank(0)となるように放流を行っても良い。一方、判別部75の判別によって最初沈殿池10に流入する下水の流量Qin(t)が上記最大流量QMAXtank(0)以下の場合(すなわち、Qin(t)≦QMAXtank(0)の場合)には、放流は行われず、判別部75の判別が繰り返して実行される。なお、上記判別のQin(t)>QMAXtank(0)を、Qin(t)≧QMAXtank(0)とし、その後の放流を行った後の判別のQin(t)≦QMAXtank(0)を、Qin(t)<QMAXtank(0)としても良い。これは、他の実施形態でも同様である。
【0034】
放流後、判別部75は、好ましくは、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別することができる。放流後の判別部75の判別によってQin(t)がQMAXtank(0)以下の場合には、放流処理部77は、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流の停止を行わせることができる。放流の停止後、制御装置60は、判別部75に、あらためて、放流前の判別を行わせることができる。一方、Qin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合には、制御装置60は、放流処理部77に対して、可動堰50を用いた放流を継続させ、あらためて、判別部75に判別させることができる。
【0035】
以上のように、第1実施形態に係る下水処理システム1は、最初沈殿池10と、反応タンク20と、最終沈殿池30と、消毒槽40とを順に直列に接続し、放流装置の一例としての可動堰50と、第1流量計12と、第2流量計22と、制御装置60とを備える。制御装置60は、沈降速度測定装置62と、演算部73と、流量受信部74と、判別部75と、第1処理水の一部の放流および反応タンク20への凝集剤の注入の内の少なくとも一方の処理を行って最終沈殿池30の処理能力範囲内での下水処理を実行し、かつ当該処理を停止可能な処理部と、を含む。処理部は、判別部75の判別によって最初沈殿池10に流入する下水の流量の方が最終沈殿池30の処理可能な最大流量よりも多い場合に、最終沈殿池30の処理能力範囲内での下水処理を実行する一方、最初沈殿池10に流入する下水の流量が上記最大流量以下の場合に処理を停止させる。以後の各下水処理システム1a,1b,1c,1dも同様の構成を有する。
【0036】
次に、本発明の第1実施形態に係る下水処理制御方法について図面を参照しながら説明する。
【0037】
本発明の各実施形態に係る下水処理制御方法は、最初沈殿池10と、反応タンク20と、最終沈殿池30と、消毒槽40とを順に直列に接続し、可動堰50と、第1流量計12と、第2流量計22と、制御装置60とを備える下水処理システムにおける下水処理制御方法である。下水処理制御方法は、制御装置60によって、最終沈殿池10に流入する第2処理水の一部を抜き出して、最終沈殿池30の沈殿処理を模擬的に実施して活性汚泥の沈降速度を測定する第1沈降速度測定ステップと、最終沈殿池30の沈殿処理可能な最大流量を演算により求める第1演算ステップと、第1流量計および第2流量計から各流量のデータを定期的に受け取る流量受信ステップと、流量受信ステップにて受信されたデータに基づく最初沈殿池10に流入する下水の流量と最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第1判別ステップと、第1判別ステップの判別によって最初沈殿池10に流入する下水の流量の方が最大流量よりも多い場合に、可動堰50による第1処理水の一部の放流および反応タンク20への凝集剤の注入の内の少なくとも一方の処理を行って、最終沈殿池30の処理能力範囲内での下水処理を実行させる第1処理ステップと、第1処理ステップの後、あらためて、最初沈殿池10に流入する下水の流量と最大流量とを比較して両流量の大小を判別する第2判別ステップと、第2判別ステップの判別によって最初沈殿池10に流入する下水の流量が最大流量以下の場合に、第1処理ステップによる処理を停止させる第1処理停止ステップと、を含む。以後の各下水処理制御方法も同様のステップを含む。
【0038】
制御装置60は、ユーザインターフェイス70aを介して操作者の操作によって動作可能である。以後の各ステップは、ユーザインターフェイス70aからの操作以後、自動的に進行しても良く、あるいは特定のステップとステップとの間でユーザの操作を介して進行するようにしても良い。これは、以後の実施形態でも同様である。
【0039】
図3は、第1実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
【0040】
第1実施形態に係る下水処理制御方法は、第1沈降速度測定ステップと、第1演算ステップと、流量受信開始ステップと、第1判別ステップと、第1処理ステップの一例である第1放流ステップと、第2判別ステップと、第1処理停止ステップの一例である第1放流停止ステップと、を実行する。以下、各ステップについて詳述する。
【0041】
(1)第1沈降速度測定ステップ(S101)
制御装置60は、最終沈殿池30に流入する第2処理水の一部を抜き出して、最終沈殿池30の沈殿処理を模擬的に実施して活性汚泥の沈降速度LV(0)を測定する。沈降速度LV(0)は、凝集剤を注入していない条件下での沈降速度である。このステップは、より具体的には、沈降速度測定装置62および沈降速度測定部72によって行われる。第1沈降速度測定ステップを行う沈降速度測定部72を、第1沈降速度測定手段もしくは第1沈降速度測定部と称しても良い。
【0042】
(2)第1演算ステップ(S102)
制御装置60は、S101により測定された沈降速度LV(0)に基づいて最終沈殿池30の沈殿処理可能な最大流量QMAXtank(0)を演算により求める。このステップは、より具体的には、演算部73によって行われる。第1演算ステップを行う演算部73を、第1演算手段もしくは第1演算部と称しても良い。
【0043】
(3)流量受信開始ステップ(S103)
制御装置60は、第1流量計12および第2流量計22から各流量のデータを定期的に受け取ることを開始する。このステップは、より具体的には、流量受信部74によって行われる。このステップは、次のS104より前であれば、S102よりも前のいずれの位置でも良い。これは、以後の各実施形態でも同様である。
【0044】
(4)第1判別ステップ(S104)
制御装置60は、S103にて受信されたデータに基づくQin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別する。このステップは、より具体的には、判別部75によって行われる。第1判別ステップを行う判別部75を、第1判別手段もしくは第1判別部と称しても良い。
【0045】
(5)第1放流ステップ(S105)
制御装置60は、S104の判別によってQin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合に、好ましくは、反応タンク20に流入する第1処理水の流量Qtank(t)がQMAXtank(0)以下になることを目標に、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流を行わせる。このステップは、より具体的には、放流処理部77によって行われる。第1放流ステップを行う放流処理部77を、第1放流処理手段もしくは第1放流処理部と称しても良い。
【0046】
一方、S104の判別によって、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合には、制御装置60は、S104に戻って、判別を継続する。これは、より具体的には、判別部75によって行われる。
【0047】
(6)第2判別ステップ(S106)
制御装置60は、S105の後、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別する。このステップは、より具体的には、判別部75によって行われる。第2判別ステップを行う判別部75を、第2判別手段もしくは第2判別部と称しても良い。一方、S106の判別によってQin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合には、制御装置60は、S105に戻って放流を継続し、続いてS106を行う。これは、より具体的には、判別部75によって行われる。
【0048】
(7)第1放流停止ステップ(S107)
制御装置60は、S106の判別によってQin(t)がQMAXtank(0)以下の場合に、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流の停止を行わせる。このステップは、より具体的には、放流処理部77によって行われる。第1放流停止ステップを行う放流処理部77を、第1放流停止手段もしくは第1放流停止部と称しても良い。制御装置60は、放流の停止後、判別部75にS104を行わせる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る下水処理システムについて図面を参照しながら説明する。第2実施形態において、第1実施形態と共通する部分については、第1実施形態における説明を代用し、重複した説明を省略する。
【0050】
第2実施形態に係る下水処理システム1は、反応タンク20に凝集剤を注入した条件下で、沈降速度測定装置62、演算部73、流量受信部74、判別部75および放流処理部77の各処理を実行可能である。凝集剤は、その種類を問わないが、好ましくは液状であって、アルミニウム系や鉄系の無機凝集剤、高分子凝集剤、または有機凝結剤などを例示できる。この実施形態に係る下水処理システム1の構成は、第1実施形態と共通する。ただし、記憶部76には、第1実施形態と異なり、式3に代えて、以下の式4が格納されている。式4の「LV(p)」は、一定の凝集剤を注入した際の沈降速度であって、沈降速度測定装置62と沈降速度測定部72によって測定可能である。式4の「QMAXtank(p)」は、後述の実施形態における「QMAXtankpolymer」とは異なる。「QMAXtank(p)」は、一定の凝集剤を注入した際の最終沈殿池30の最大処理能力を意味する。「QMAXtankpolymer」は、下水処理システムの凝集剤注入流量を最大にした際の最終沈殿池30の最大処理能力を意味する。これは、以後の各実施形態でも同様である。
【0051】
QMAXtank(p)=LV(p)×A×δ・・式4
【0052】
以下、第2実施形態に係る下水処理制御方法について説明する。
【0053】
図4は、第2実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
【0054】
当該下水処理制御方法は、凝集剤注入ステップと、第1沈降速度測定ステップと、第1演算ステップと、流量受信開始ステップと、第1判別ステップと、第1処理ステップの一例である第1放流ステップと、第2判別ステップと、第1処理停止ステップの一例である第1放流停止ステップとを実行する。以下、各ステップについて詳述する。
【0055】
(1)凝集剤注入ステップ(100)
このステップは、反応タンク20内に凝集剤を注入するステップである。凝集剤の注入は、人手によるか、機器を用いるかを問わず、注入流量の制御を行わずに実行される。
【0056】
(2)第1沈降速度測定ステップ(S101)
このステップは、第1実施形態のS101と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。ただし、沈降速度は、一定流量の凝集剤を注入した条件下での沈降速度LV(p)である。
【0057】
(3)第1演算ステップ(S102)
このステップは、第1実施形態のS102と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。ただし、一定流量の凝集剤を注入した条件下での最大流量QMAXtank(p)は、上記沈降速度LV(p)に基づく演算により求められる。演算部73は、記憶部76から式4を読み出し、先に求められた沈降速度LV(p)を代入してQMAXtank(p)を算出する。
【0058】
(4)流量受信開始ステップ(S103)
このステップは、第1実施形態のS103と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0059】
(5)第1判別ステップ(S104)
このステップは、第1実施形態のS104と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。ただし、制御装置60は、流量受信開始ステップ(S103)にて受信されたデータに基づくQin(t)とQMAXtank(p)とを比較して両流量の大小を判別する。
【0060】
(6)第1放流ステップ(S105)
このステップは、第1実施形態のS105と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。ただし、制御装置60は、S104の判別によってQin(t)の方がQMAXtank(p)よりも多い場合に、好ましくは、反応タンク20に流入する第1処理水の流量Qtank(t)がQMAXtank(p)以下になることを目標に、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流を行わせる。
【0061】
一方、S104の判別によってQin(t)がQMAXtank(p)以下の場合には、制御装置60は、判別部75によるS104を継続する。
【0062】
(7)第2判別ステップ(S106)
このステップは、第1実施形態のS106と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。ただし、制御装置60は、S105の後、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(p)とを比較して両流量の大小を判別する。この判別によって、Qin(t)の方がQMAXtank(p)よりも多い場合には、制御装置60は、S105に戻って放流を継続する。これは、より具体的には、放流処理部77によって行われる。
【0063】
(8)第1放流停止ステップ(S107)
このステップは、第1実施形態のS107と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。ただし、制御装置60は、S106の判別によって、Qin(t)がQMAXtank(p)以下の場合に、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流の停止を行わせる。これは、より具体的には、放流処理部77によって行われる。
【0064】
なお、上記判別のQin(t)>QMAXtank(p)を、Qin(t)≧QMAXtank(p)とし、その後の放流を行った後の判別のQin(t)≦QMAXtank(p)を、Qin(t)<QMAXtank(p)としても良い。
【0065】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る下水処理システムについて図面を参照しながら説明する。第3実施形態において、前述の各実施形態と共通する部分については、前述の各実施形態における説明を代用し、重複した説明を省略する。
【0066】
図5は、第3実施形態および第5実施形態(後述)に係る下水処理システムの概略図を示す。図6は、図5の第3実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
【0067】
第3実施形態に係る下水処理システム1aは、第1実施形態および第2実施形態と異なり、放流処理部77による可動堰50の開閉および開状態のレベルの制御を行わない。下水処理システム1aは、放流せずに、凝集剤の注入率の制御だけを行うシステムである。このため、下水処理システム1aにおいて、可動堰50および配管51を必ずしも要しないが、凝集剤の注入制御のみで対応できない場合に備えるという安全上の見地から、可動堰50および配管51を備えるのが好ましい。
【0068】
この実施形態に係る下水処理システム1aは、第1実施形態と共通する各構成に加え、凝集剤注入装置90と、配管91と、ポンプ92と、を備える。凝集剤注入装置90は、反応タンク20に凝集剤を入れるための装置である。配管91は、凝集剤注入装置90と反応タンク20とをつなぐ配管である。ポンプ92は、配管91の途中に接続され、凝集剤注入装置90から反応タンク20への凝集剤の注入流量を制御して供給可能とする機器である。また、第3実施形態に係る下水処理システム1aは、第1実施形態における制御装置60に代えて、制御装置60aを備える。制御装置60aは、処理部として、放流処理部77に代えて、凝集剤注入処理部78を備える。凝集剤注入処理部78は、反応タンク20内への凝集剤の注入率(時間当たりの注入量)を制御するための構成部である。凝集剤注入処理部78は、より具体的には、ポンプ92を制御して、凝集剤の注入率(注入流量ともいう)を制御する。凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90による凝集剤の注入率を制御して凝集剤を反応タンク20に注入させる機能に加え、凝集剤の注入停止を実行可能な構成部である。凝集剤注入処理部78は、CPUと、記憶部76内のプログラムとの協働によって、ポンプ92の送り出しの量を制御する。この実施形態に係る下水処理システム1aにおける上述した構成以外については、第1実施形態と共通する。
【0069】
この実施形態に係る下水処理システム1aは、第1実施形態に係る下水処理システム1と同様、凝集剤を注入していない条件下での沈降速度測定装置62と沈降速度測定部72による沈降速度LV(0)の測定、凝集剤の注入していない条件下での演算部73による最大流量QMAXtank(0)の演算、流量受信部74による第1流量計12および第2流量計22からの流量データの受信、および判別部75による当該流量データに基づくQin(t)とQMAXtank(0)との大小判別を実行する。その後、下水処理システム1aは、次の処理を実行する。
【0070】
判別部75の上記判別によってQin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合に、凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を反応タンク20に注入する。当該凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(下記の式5を参照)とQin(t)とが等しくなることを目標に制御される。Qcaltank(t)は、ある凝集剤注入率Rpolymer(t)に依存する沈降速度に基づいて算出される最終沈殿池30の計算上の処理能力を意味する。式5は、記憶部76に格納されている。凝集剤注入処理部78は、記憶部76から式5を読み出して、上記目標に注入率の制御を行うことができる。
【0071】
Qcaltank(t)=(LV(0)+a×Rpolymer(t))×A×δ・・式5
【0072】
式5において、aは、係数(比例係数ともいう)であり、ゼロおよびマイナスにならない正の数値である。aは、凝集剤注入率に対する沈降速度の増加率を意味する。凝集剤を増加させても、常に同じ沈降速度が期待できるわけではない。下水の水質、温度などの因子によって、aは変動する。この実施形態では、係数aを実績からの固定値としている。なお、後述の第5実施形態および第6実施形態では、aを変動させて制御する方法を説明する。RMAXpolymer(t)は、凝集剤の最大供給流量であり、凝集剤注入装置90のキャパシティに応じて決まる固定値である。安全率δも固定値である。このため、LV(0)を測定すると、Qcaltank(t)は自動的に算出できる。
【0073】
凝集剤の注入後、判別部75は、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別する。凝集剤の注入後の判別によって、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合には、凝集剤注入処理部78は、ポンプ92に信号を送って、凝集剤の注入を停止させる。その後、判別部75は、Qin(t)とQMAXtank(0)との大小判別を継続する。一方、Qin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合には、凝集剤注入処理部78は、凝集剤の注入制御に戻って、凝集剤の注入率を増やすように変更する。
【0074】
以下、第3実施形態に係る下水処理制御方法について説明する。
【0075】
図7は、第3実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
【0076】
当該下水処理制御方法は、第1沈降速度測定ステップと、第1演算ステップと、流量受信開始ステップと、第1判別ステップと、第1処理ステップの一例である凝集剤注入ステップと、第2判別ステップと、第1処理停止ステップの一例である凝集剤注入停止ステップとを実行する。以下、各ステップについて詳述する。
【0077】
(1)第1沈降速度測定ステップ(S101)
このステップは、第1実施形態のS101と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0078】
(2)第1演算ステップ(S102)
このステップは、第1実施形態のS102と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0079】
(3)流量受信開始ステップ(S103)
このステップは、第1実施形態のS103と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0080】
(4)第1判別ステップ(S104)
このステップは、第1実施形態のS104と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0081】
(5)凝集剤注入ステップ(S301)
制御装置60aは、S104の判別によって、Qin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合に、第1処理ステップとして、凝集剤注入装置90による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を反応タンク20に注入する。このステップは、具体的には、凝集剤注入処理部78により実行される。凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(上記の式5を参照)とQin(t)とが等しくなることを目標に制御される。
【0082】
(6)第2判別ステップ(S302)
制御装置60aは、S301の後に、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別する。このステップは、具体的には、判別部75により実行される。第2判別ステップを行う判別部75を、第2判別手段もしくは第2判別部と称しても良い。
【0083】
(7)凝集剤注入停止ステップ(S303)
制御装置60aは、S302の判別によって、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合に、第1処理停止ステップとして、凝集剤注入装置90に対して凝集剤の注入を停止させる。このステップは、具体的には、凝集剤注入処理部78により実行される。その後、制御装置60aは、S104に戻って、判別部75による判別処理を行わせる。
【0084】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る下水処理システムについて図面を参照しながら説明する。第4実施形態において、前述の各実施形態と共通する部分については、前述の各実施形態における説明を代用し、重複した説明を省略する。
【0085】
図8は、第4実施形態および第6実施形態(後述)に係る下水処理システムの概略図を示す。図9は、図8の第3実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
【0086】
第4実施形態に係る下水処理システム1bは、放流処理部77による可動堰50の開閉および開状態のレベルの制御と、凝集剤の注入率の制御とを行うシステムである。
【0087】
この実施形態に係る下水処理システム1bは、第3実施形態と共通する各構成を備える。ただし、第4実施形態に係る下水処理システム1bは、第3実施形態における制御装置60aに代えて、制御装置60bを備える。制御装置60bは、処理部として、放流処理部77と凝集剤注入処理部78の両方を備える。放流処理部77は、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流と当該放流の停止とを行わせる。凝集剤注入処理部78は、ポンプ92を制御して、凝集剤注入装置90からの凝集剤の注入率を制御する。
【0088】
この実施形態に係る下水処理システム1bでは、判別部75の判別によってQin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合に、凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を反応タンク20に注入する。当該凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(上記の式5を参照)とQin(t)とが等しくなることを目標に制御される。当該凝集剤の注入後、演算部73は、凝集剤を注入した条件下での最大流量QMAXtankpolymerを演算により求める。記憶部76は、以下の式6および式7を格納している。式6は、凝集剤注入の条件下での最大沈降速度LVMAXpolymerと、LV(0)、前述の比例係数a、凝集剤注入装置90の注入能力によって決まる凝集剤最大注入率RMAXpolymerとの関係式である。LVMAXpolymerは、LV(0)よりも凝集剤の注入率に比例して大きくなる。この実施形態では、RMAXpolymerと係数aは定数である。このため、LVMAXpolymerは、実測したLV(0)が決まると、おのずと求められる。式7は、式6のLVMAXpolymerと、Aと、δとを乗じて最終沈殿池30の最大処理能力QMAXtankpolymerを求める式である。QtankMAXpolymerは、沈降速度LV(0)を実測すると求められる。演算部73は、記憶部76から式6および式7を読み出して、先に実測したLV(0)に基づきQMAXtankpolymerを求める。
【0089】
LVMAXpolymer=LV(0)+a×RMAXpolymer・・式6
QMAXtankpolymer=LVMAXpolymer×A×δ・・式7
【0090】
判別部75は、Qin(t)とQMAXpolymerとを比較して両流量の大小を判別する。凝集剤を注入後における判別部75による上記判別によって、Qin(t)がQMAXpolymerよりも多い場合に、放流処理部77は、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流を行わせる。当該放流は、好ましくは、Qtank(t)がQMAXtankpolymer以下になることを目標に行われる。
【0091】
放流処理部77によって放流した後、判別部75は、あらためて、Qin(t)とQMAXpolymerとを比較して両流量の大小を判別する。放流後の判別部75の上記判別によって、Qin(t)がQMAXpolymer以下の場合に、放流処理部77は、可動堰50に対して、第1処理水の一部の放流の停止を行わせる。判別部75は、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別する。放流停止後の判別部75による上記判別によって、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合に、凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90に対して凝集剤の注入を停止させる。
【0092】
以下、第4実施形態に係る下水処理制御方法について説明する。
【0093】
図10は、第4実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
【0094】
当該下水処理制御方法は、第1沈降速度測定ステップと、第1演算ステップと、流量受信開始ステップと、第1判別ステップと、第1処理ステップの一例である凝集剤注入ステップと、第2演算ステップと、第3判別ステップと、第2処理ステップの一例である第2放流ステップと、第4判別ステップと、第2処理停止ステップの一例である第2放流停止ステップと、第2判別ステップと、第1処理停止ステップの一例である凝集剤注入停止ステップとを実行する。以下、各ステップについて詳述する。
【0095】
(1)第1沈降速度測定ステップ(S101)
このステップは、第1実施形態のS101と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0096】
(2)第1演算ステップ(S102)
このステップは、第1実施形態のS102と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0097】
(3)流量受信開始ステップ(S103)
このステップは、第1実施形態のS103と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0098】
(4)第1判別ステップ(S104)
このステップは、第1実施形態のS104と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。S104において、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合には、S104が継続される。一方、Qin(t)がQMAXtank(0)より多い場合には、S301へと進む。
【0099】
(5)凝集剤注入ステップ(S301)
このステップは、制御装置60b(具体的には凝集剤注入処理部78)によって行われる。凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(上記の式5を参照)とQin(t)とが等しくなることを目標に制御される。このステップは、第3実施形態のS301と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第3実施形態の説明をもって代える。
【0100】
(6)第2演算ステップ(S401)
制御装置60b(具体的には演算部73)は、QMAXtankpolymerを演算により求める。QtankMAXpolymerは、演算部73によって記憶部76から上記の式6および式7が読み出され、先に実測したLV(0)に基づき求められる。第2演算ステップを行う演算部73を、第2演算手段もしくは第2演算部と称しても良い。
【0101】
(7)第3判別ステップ(S402)
制御装置60b(具体的には判別部75)は、S401の後に、あらためて、Qin(t)とQMAXtankpolymerとを比較して両流量の大小を判別する。S402において、Qin(t)がQMAXtankpolymer以下の場合には、S301に戻り、凝集剤の注入率を少なくするように制御される。一方、Qin(t)がQMAXtankpolymerより多い場合には、S403へと進む。S402を行う判別部75を、第3判別手段もしくは第3判別部と称しても良い。
【0102】
(8)第2放流ステップ(S403)
S402の判別によって、Qin(t)がQMAXtankpolymerよりも多い場合に、制御装置60b(具体的には放流処理部77)は、第2処理ステップとして、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流を行わせる。第2放流ステップを行う放流処理部77を、第2放流処理手段もしくは第2放流処理部と称しても良い。
【0103】
(9)第4判別ステップ(S404)
制御装置60b(具体的には判別部75)は、S403の後に、あらためて、Qin(t)とQMAXtankpolymerとを比較して両流量の大小を判別する。第4判別ステップにおいて、Qin(t)がQMAXtankpolymerより多い場合には、S403に戻り、放流が継続される。一方、Qin(t)がQMAXtankpolymer以下の場合には、S405へと進む。S404を行う判別部75を、第4判別手段もしくは第4判別部と称しても良い。
【0104】
(10)第2放流停止ステップ(S405)
S404によって、Qin(t)がQMAXtankpolymer以下の場合に、制御装置60b(具体的には放流処理部77)は、第2処理停止ステップとして、可動堰50に対して、第1処理水の一部の放流の停止を行わせる。第2放流停止ステップを行う放流処理部77を、第2放流停止手段もしくは第2放流停止部と称しても良い。
【0105】
(11)第2判別ステップ(S302)
このステップは、第3実施形態のS302と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第3実施形態の説明をもって代える。S302において、Qin(t)がQMAXtank(0)より多い場合には、S301に戻って、凝集剤の注入率をより増やすように変更される。一方、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合には、S303へと進む。
【0106】
(12)凝集剤注入停止ステップ(S303)
このステップは、第3実施形態のS303と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第3実施形態の説明をもって代える。その後、制御装置60bは、S104に戻って、判別部75に判別処理を行わせる。
【0107】
なお、上記判別のQin(t)>QMAXtankpolymerを、Qin(t)≧QMAXtankpolymerとし、その後の放流を行った後の判別のQin(t)≦QMAXtankpolymerを、Qin(t)<QMAXtankpolymerとしても良い。これは、他の実施形態でも同様である。
【0108】
<第5実施形態>
次に、本発明の第5実施形態に係る下水処理システムについて図面を参照しながら説明する。第5実施形態において、前述の各実施形態と共通する部分については、前述の各実施形態における説明を代用し、重複した説明を省略する。
【0109】
図11は、図5の第5実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
【0110】
第5実施形態に係る下水処理システム1c(図5を参照)は、第3実施形態と同様、放流処理部77による可動堰50の開閉および開状態のレベルの制御を行わない。下水処理システム1cは、放流せずに、凝集剤の注入率の制御だけを行うシステムである。このため、下水処理システム1cにおいて、可動堰50および配管51を必ずしも要しないが、凝集剤の注入制御のみで対応できない場合に備えるという安全上の見地から、可動堰50および配管51を備えるのが好ましい。
【0111】
この実施形態に係る下水処理システム1cは、第3実施形態に係る下水処理システム1aと異なり、係数aを変動させて演算を行う。下水処理システム1cは、下水処理システム1aの制御部60aに代えて、制御部60cを備えている。制御部60cは、係数演算部80を備えている。係数は、前述したとおり、凝集剤の注入率と、凝集剤の注入後の活性汚泥の沈降速度とから、注入率の増大に伴う沈降速度の上昇度合を示す。係数演算部80は、CPUと、記憶部76内のプログラムとの協働によって演算を行う。かかる相違点を除き、下水処理システム1cは、下水処理システム1aと同じ構成部を備える。ただし、制御装置60c内の各構成部の処理の一部は、制御部60a内の各構成部の処理と異なる。
【0112】
下水処理システム1cは、下水処理システム1aと同様、判別部75により、最初沈殿池10への下水の流量Qin(t)と凝集剤の注入していない条件下での最大流量QMAXtank(0)との大小判別を行う。
【0113】
判別部75の上記判別によって、Qin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合に、凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を反応タンク20に注入する。凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(上記の式5を参照)とQin(t)とが等しくなることを目標に制御される。一方、Qin(t)≦QMAXtank(0)の場合には、判別部75は、上記判別を繰り返す。
【0114】
凝集剤を反応タンク20に注入後、沈降速度測定装置62および沈降速度測定部72は、あらためて、凝集剤を注入した条件下で活性汚泥の沈降速度LVpolymer(t)を測定する。係数演算部80は、凝集剤を注入した条件下での沈降速度LVpolymer(t)を用いて係数a’を演算により求める。具体的には、係数演算部80は、下記の式8(または式8を変形した式9)を用いて、係数a‘を求める。この実施形態では、前記の各実施形態における固定値としての係数aと区別するために、係数を係数a‘と称する。後述の第6実施形態でも同様である。
【0115】
式8は、式6と類似の式である。凝集剤を注入していないときの沈降速度LV(0)に、凝集剤の注入率Rpolymer(t)に係数a’を乗じた値を加えると、凝集剤を注入した条件下での沈降速度LVpolymer(t)を得ることができる。式9は、式8の係数a’を左辺に移動した式である。沈降速度LVpolymer(t)を実測すると、LV(0)は既に実測されており、凝集剤の注入率Rpolymer(t)も凝集剤の注入時に明確であるから、式9によって、係数a’を計算できる。式8および/または式9は、記憶部76に格納されている。係数演算部80は、式8または式9と、沈降速度LV(0)と、沈降速度LVpolymer(t)とを記憶部76から読み出して、係数a’を計算する。
【0116】
LVpolymer(t)=LV(0)+a’×Rpolymer(t)・・式8
a’=(LVpolymer(t)-LV(0))/Rpolymer(t)・・式9
【0117】
凝集剤注入処理部78は、係数演算部80により求めた係数a’を用いて、凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を反応タンク20に注入する。凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(下記の式10を参照)と最初沈殿池10に流入する下水の流量Qin(t)とが等しくなることを目標に制御される。下記の式10は、前述の式5と同様の式であり、式5の係数aを係数a’に変更した式である。式10は、記憶部76に格納されている。凝集剤注入処理部78は、記憶部76から式10を読み出して、式10の右辺の値を代入して、Qcaltank(t)を算出することができる。この点は、第3実施形態と同様である。
【0118】
Qcaltank(t)=(LV(0)+a’×Rpolymer(t))×A×δ・・式10
【0119】
凝集剤注入処理部78によって凝集剤を注入した後、判別部75は、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別する。凝集剤を注入後の判別部75による上記判別によって、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合に、凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90に対して凝集剤の注入を停止させる。その後、判別部75は、Qin(t)とQMAXtank(0)との大小判別を継続する。一方、Qin(t)がQMAXtank(0)より多い場合には、凝集剤注入処理部78は、凝集剤の注入制御に戻って、凝集剤の注入率を増やすように変更する。
【0120】
以下、第5実施形態に係る下水処理制御方法について説明する。
【0121】
図12は、第5実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
【0122】
当該下水処理制御方法は、第1沈降速度測定ステップと、第1演算ステップと、流量受信開始ステップと、第1判別ステップと、第1処理ステップの一例である凝集剤注入ステップと、第2沈降速度測定ステップと、係数演算ステップと、第2判別ステップと、第1処理停止ステップの一例である凝集剤注入停止ステップとを実行する。第2沈降速度測定ステップと係数演算ステップは、凝集剤注入ステップから分岐して、再び凝集剤注入ステップに戻る副ループ上のステップである。凝集剤注入ステップの後に、第2沈降速度測定ステップと併行して、第2判別ステップおよび凝集剤注入停止ステップが実行される。以下、各ステップについて詳述する。
【0123】
(1)第1沈降速度測定ステップ(S101)
このステップは、第1実施形態のS101と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0124】
(2)第1演算ステップ(S102)
このステップは、第1実施形態のS102と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0125】
(3)流量受信開始ステップ(S103)
このステップは、第1実施形態のS103と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0126】
(4)第1判別ステップ(S104)
このステップは、第1実施形態のS104と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0127】
(5)凝集剤注入ステップ(S301)
このステップは、第3実施形態のS301と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第3実施形態の説明をもって代える。ただし、係数a’の演算以降、このステップは、式10を用いて得られたQcaltank(t)がQin(t)となることを目標に行われる。
【0128】
(6)第2沈降速度測定ステップ(S501)
S301の後、制御装置60c(具体的には沈降速度測定装置62および沈降速度測定部72)は、凝集剤を注入した条件下で活性汚泥の沈降速度LVpolymer(t)を測定する。第2沈降速度測定ステップを行う沈降速度測定部72を、第2沈降速度測定手段もしくは第2沈降速度測定部と称しても良い。
【0129】
(7)係数演算ステップ(S502)
続いて、制御装置60c(具体的には係数演算部80)は、S501により得られたLVpolymer(t)から係数a’を求める。また、係数演算部60cは、記憶部76に格納している係数aを係数a’に置き換える。S502は、上述の式8または式9を用いて実行される。このステップの後、再び、S301に戻り、式10を用いて算出されたQcaltank(t)がQin(t)に等しくなるように凝集剤の注入が行われる。S501とS502を経てS301に戻る副ループは、後述のS302の判別にて「YES」になるまで実行される。
【0130】
(8)第2判別ステップ(S302)
制御装置60cは、S301の後に、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別する。このステップは、具体的には、判別部75により実行される。Qin(t)がQMAXtank(0)より多い場合には、S301に戻って、注入率を増やすように変更される。
【0131】
(9)凝集剤注入停止ステップ(S303)
制御装置60cは、S302の判別によって、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合に、第1処理停止ステップとして、凝集剤注入装置90に対して凝集剤の注入を停止させる。このステップは、具体的には、凝集剤注入処理部78により実行される。その後、制御装置60c(具体的には、判別部75)は、S104に戻って、判別部75に判別処理を行わせる。
【0132】
<第6実施形態>
次に、本発明の第6実施形態に係る下水処理システムについて図面を参照しながら説明する。第6実施形態において、前述の各実施形態と共通する部分については、前述の各実施形態における説明を代用し、重複した説明を省略する。
【0133】
図13は、図8の第6実施形態に係る下水処理システムに備えられる制御装置の構成を概略的に示す。
【0134】
第6実施形態に係る下水処理システム1d(図8を参照)は、第4実施形態と同様、放流処理部77による可動堰50の開閉および開状態のレベルの制御と、凝集剤の注入率の制御との両方を行うシステムである。
【0135】
この実施形態に係る下水処理システム1dは、第4実施形態に係る下水処理システム1bに、第5実施形態に係る下水処理システム1cと同様の係数aの演算機能を加えたシステムである。下水処理システム1dは、下水処理システム1bの制御部60bに代えて、制御部60dを備えている。制御部60dは、係数演算部80を備えている。かかる相違点を除き、下水処理システム1dは、下水処理システム1bと同じ構成部を備える。ただし、制御装置60d内の各構成部の処理の一部は、制御部60b内の各構成部の処理と異なる。
【0136】
下水処理システム1dでは、下水処理システム1bと同様、判別部75は、最初沈殿池10への下水の流量Qin(t)と凝集剤の注入していない条件下での最大流量QMAXtank(0)との大小判別を行う。
【0137】
判別部75の判別によって、Qin(t)の方がQMAXtank(0)よりも多い場合に、凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90による凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を反応タンク20に注入する。凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(上記の式5を参照)とQin(t)とが等しくなることを目標に制御される。
【0138】
凝集剤を反応タンク20に注入後、沈降速度測定装置62および沈降速度測定部72は、あらためて、凝集剤を注入した条件下で活性汚泥の沈降速度LVpolymer(t)を測定する。係数演算部80は、LVpolymer(t)を用いて係数a’を演算により求める。具体的には、係数演算部80は、上記の式8(または式8を変形した式9)を用いて、係数a‘を求める。
【0139】
凝集剤注入処理部78は、係数演算部80により求めた係数a’を用いて、凝集剤の注入率を制御して、凝集剤を反応タンク20に注入する。凝集剤の注入率は、好ましくは、Qcaltank(t)(上記の式10を参照)とQin(t)とが等しくなることを目標に制御される。この点は、第5実施形態と同様である。
【0140】
演算部73は、固定した係数aまたは演算により求めた係数a’を考慮して、凝集剤を注入した条件下での最大流量QMAXtankpolymerまたは最大流量QMAXtankpolymer’を演算により求めることができる。かかる演算には、下記の式11および式12を用いることができる。式11および式12は、記憶部76に格納されている。演算部73は、式11および式12を記憶部76から読み出し、係数aまたは先に算出した係数a’を用いて、凝集剤の注入率が最大のときの最大沈降速度LVMAXpolymerを求め、さらに最大沈降速度LVMAXpolymerに基づく最終沈殿域30の最大処理能力を意味する最大流量QMAXtankpolymerを求めることができる。同様に、演算部73は、LVMAXpolymer’を求め、さらに最大沈降速度LVMAXpolymer’に基づく最終沈殿域30の最大処理能力を意味する最大流量QMAXtankpolymer’を求めることができる。なお、式11および式12は、係数a’を用いた式であるため、LVMAXpolymer’およびQMAXtankpolymer’という表記を行っている。しかし、係数aを用いる場合には、式11および式12は、それぞれ、LVMAXpolymer=LV(0)+a×RMAXpolymerおよびQMAXtankpolymer=LVMAXpolymer×A×δとなる。
【0141】
LVMAXpolymer’=LV(0)+a’×RMAXpolymer・・式11
QMAXtankpolymer’=LVMAXpolymer’×A×δ・・式12
【0142】
以下、最大流量QMAXtankpolymerおよび最大流量QMAXtankpolymer’を代表して、「最大流量QMAXtankpolymer」にて説明することがある。
【0143】
判別部75は、Qin(t)とQMAXtankpolymerとを比較して両流量の大小を判別する。凝集剤を注入後の判別部75による上記判別によって、Qin(t)がQMAXtankpolymerよりも多い場合に、放流処理部78は、可動堰50に対して第1処理水の一部の放流を行わせることができる。放流処理部77によって放流した後、判別部75は、あらためて、Qin(t)とQMAXtankpolymerとを比較して両流量の大小を判別する。放流後の判別部75の判別によって、Qin(t)がQMAXtankpolymer以下の場合に、放流処理部77は、可動堰50に対して、第1処理水の一部の放流の停止を行わせることができる。
【0144】
判別部75は、あらためて、Qin(t)とQMAXtank(0)とを比較して両流量の大小を判別することができる。放流停止後の判別部75による判別によって、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合に、凝集剤注入処理部78は、凝集剤注入装置90に対して凝集剤の注入を停止させることができる。
【0145】
以下、第6実施形態に係る下水処理制御方法について説明する。
【0146】
図14は、第6実施形態に係る下水処理制御方法の主な処理のフロー図を示す。
【0147】
当該下水処理制御方法は、第1沈降速度測定ステップと、第1演算ステップと、流量受信開始ステップと、第1判別ステップと、第1処理ステップの一例である凝集剤注入ステップと、第2沈降速度測定ステップと、係数演算ステップと、第2演算ステップと、第3判別ステップと、第2処理ステップの一例である第2放流ステップと、第4判別ステップと、第2処理停止ステップの一例である第2放流停止ステップと、第2判別ステップと、第1処理停止ステップの一例である凝集剤注入停止ステップとを実行する。第2沈降速度測定ステップと係数演算ステップは、凝集剤注入ステップから分岐して、再び凝集剤注入ステップに戻る副ループのステップである。凝集剤注入ステップの後に、第2沈降速度測定ステップと併行して、第2演算ステップ以降のステップが実行される。以下、各ステップについて詳述する。
【0148】
(1)第1沈降速度測定ステップ(S101)
このステップは、第1実施形態のS101と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0149】
(2)第1演算ステップ(S102)
このステップは、第1実施形態のS102と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0150】
(3)流量受信開始ステップ(S103)
このステップは、第1実施形態のS103と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0151】
(4)第1判別ステップ(S104)
このステップは、第1実施形態のS104と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第1実施形態の説明をもって代える。
【0152】
(5)凝集剤注入ステップ(S301)
このステップは、第3実施形態のS301と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第3実施形態の説明をもって代える。ただし、係数a’の演算以降、このステップは、式10を用いて得られたQcaltank(t)がQin(t)となることを目標に行われる。
【0153】
(6)第2沈降速度測定ステップ(S501)
このステップは、第5実施形態のS501と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第5実施形態の説明をもって代える。
【0154】
(7)係数演算ステップ(S502)
このステップは、第5実施形態のS502と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第5実施形態の説明をもって代える。このステップの後、再び、S301に戻り、式10を用いて算出されたQcaltank(t)がQin(t)に等しくなるように凝集剤の注入が行われる。S501とS502を経てS301に戻る副ループは、後述のS302の判別にて「YES」になるまで実行される。
【0155】
(8)第2演算ステップ(S401)
制御装置60d(具体的には演算部73)は、第4実施形態のS401と同様、QMAXtankpolymerを演算により求める。ただし、係数a’の演算後の場合には、QMAXtankpolymer’が演算により求められる。
【0156】
(9)第3判別ステップ(S402)
このステップは、第4実施形態のS402と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第4実施形態の説明をもって代える。なお、係数a’の演算後の場合には、QMAXtankpolymerをQMAXtankpolymer’として判別が行われる。これは、S402以降のステップでも同様である。
【0157】
(10)第2放流ステップ(S403)
このステップは、第4実施形態のS403と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第4実施形態の説明をもって代える。
【0158】
(11)第4判別ステップ(S404)
このステップは、第4実施形態のS404と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第4実施形態の説明をもって代える。
【0159】
(12)第2放流停止ステップ(S405)
このステップは、第4実施形態のS405と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第4実施形態の説明をもって代える。
【0160】
(13)第2判別ステップ(S302)
このステップは、第3実施形態のS302と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第3実施形態の説明をもって代える。S302において、Qin(t)がQMAXtank(0)より多い場合には、S301に戻って、凝集剤の注入率がより多くなるように変更される。一方、Qin(t)がQMAXtank(0)以下の場合には、S303へと進む。
【0161】
(14)凝集剤注入停止ステップ(S303)
このステップは、第3実施形態のS303と同様のステップである。よって、ステップの内容の詳細は、第3実施形態の説明をもって代える。その後、制御装置60dは、S104に戻って、判別部75に判別処理を行わせる。
【0162】
なお、上記判別のQin(t)>QMAXtankpolymerを、Qin(t)≧QMAXtankpolymerとし、その後の放流を行った後の判別のQin(t)≦QMAXtankpolymerを、Qin(t)<QMAXtankpolymerとしても良い。
【0163】
なお、上記の各実施形態に係る下水処理システム1,1a,1b,1c,1dでは、記憶部76中に式1~12の内の必要な式のみを格納しても、あるいは式1~12の全てを格納しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、例えば、下水処理施設にて利用可能である。
【符号の説明】
【0165】
1,1a,1b,1c,1d・・・下水処理システム、10・・・最初沈殿池、12・・・第1流量計、20・・・反応タンク、22・・・第2流量計、30・・・最終沈殿池、40・・・消毒槽、50・・・可動堰(放流装置の一例)、60,60a,60b,60c,60d・・・制御装置、62・・・沈降速度測定装置、70・・・制御部、73・・・演算部、74・・・流量受信部、75・・・判別部、77・・・放流処理部(処理部の一例)、78・・・凝集剤注入処理部(処理部の一例)、80・・・係数演算部、90・・・凝集剤注入装置。
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