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特開2022-124614ストリッパブルペイント及びその塗膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124614
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】ストリッパブルペイント及びその塗膜
(51)【国際特許分類】
   C09D 129/04 20060101AFI20220819BHJP
   C09D 109/06 20060101ALI20220819BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C09D129/04
C09D109/06
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022346
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】久我 敬之
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CC041
4J038CC042
4J038CE021
4J038CE022
4J038MA06
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA05
4J038NA10
4J038NA11
4J038PB06
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本開示は、可塑剤を含有しなくとも伸びがあり、部品表面を汚染することなく剥離性が良好なストリッパブルペイント及びその塗膜を提供することを目的とする。
【解決手段】本開示に係るストリッパブルペイントは、ポリビニルアルコールと、スチレンブタジエンゴムと、アルコール系溶媒と、水と、を含有し、ポリビニルアルコールは、ケン化度が90mol%以下であり、かつ、重合度が500以上2000未満であり、ポリビニルアルコールとスチレンブタジエンゴムとの質量比率が、30/70を超え60/40以下であり、アルコール系溶媒の含有量が5~15wt%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールと、スチレンブタジエンゴムと、アルコール系溶媒と、水と、を含有し、
前記ポリビニルアルコールは、ケン化度が90mol%以下であり、かつ、重合度が500以上2000未満であり、
前記ポリビニルアルコールと前記スチレンブタジエンゴムとの質量比率が、30/70を超え60/40以下であり、
前記アルコール系溶媒の含有量が5~15wt%であることを特徴とするストリッパブルペイント。
【請求項2】
前記アルコール系溶媒は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載のストリッパブルペイント。
【請求項3】
可塑剤を含有しないことを特徴とする請求項1又は2に記載のストリッパブルペイント。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載のストリッパブルペイントの硬化物からなることを特徴とする塗膜。
【請求項5】
前記塗膜は、JIS K 7161‐1:2014「プラスチック‐引張特性の求め方‐第1部:通則」に準じて測定した破断強度が0.1MPa以上であり、かつ、雰囲気温度25℃、引張速度20mm/minで測定した伸び率が200%以上であることを特徴とする請求項4に記載の塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラスチック基材またはアクリル樹脂系塗料を塗装したプラスチック基材上に塗工でき、乾燥成膜後は跡残りなく得られた塗膜を剥がすことができるストリッパブルペイント及びその塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業製品のプラスチック部品は保護のため出荷時にPVC等のフィルムの貼り付けが施されることがあるが、部品が複雑な形状の場合、フィルムの貼り付けは困難であり、作業に時間がかかる。塗工後乾燥させ成膜させたフィルムでプラスチック部品の保護が可能なストリッパブルペイントもあるが、熱や有機溶剤などの影響で剥離性が低下する傾向がある。なお、例えば、PVAを用いたストリッパブルペイントが提案されている(例えば、特許文献1又は2を参照。)。例えば、特許文献1又は特許文献2には、PVAと可塑剤とを用いたストリッパブルペイントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57-098571号公報
【特許文献2】特開昭56-049764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示されたストリッパブルペイントは、可塑剤を使用しているため、剥離後の部品表面に移行物が残り、部品表面を汚染してしまう。また、上記事情を勘案し、塗工後乾燥させたフィルムが熱や有機溶剤などの影響を受けないストリッパブルペイントの開発が望まれている。しかし、特許文献2に開示されたストリッパブルペイントは、メタノールおよびエタノールの使用も含まれるため、プラスチック基材の表面を侵してしまう。
【0005】
本開示は、可塑剤を含有しなくとも伸びがあり、部品表面を汚染することなく剥離性が良好なストリッパブルペイント及びその塗膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るストリッパブルペイントは、ポリビニルアルコールと、スチレンブタジエンゴムと、アルコール系溶媒と、水と、を含有し、前記ポリビニルアルコールは、ケン化度が90mol%以下であり、かつ、重合度が500以上2000未満であり、前記ポリビニルアルコールと前記スチレンブタジエンゴムとの質量比率が、30/70を超え60/40以下であり、前記アルコール系溶媒の含有量が5~15wt%であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るストリッパブルペイントでは、前記アルコール系溶媒は、イソプロピルアルコールである形態を包含する。
【0008】
本発明に係るストリッパブルペイントは、可塑剤を含有しないことが好ましい。このようなストリッパブルペイントの塗膜は、剥離後の被塗物表面に移行物が残らず、剥離後の被塗物表面を汚染することがない。
【0009】
本発明に係る塗膜は、本発明に係るストリッパブルペイントの硬化物からなることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る前記塗膜は、JIS K 7161‐1:2014「プラスチック‐引張特性の求め方‐第1部:通則」に準じて測定した破断強度が0.1MPa以上であり、かつ、雰囲気温度25℃、引張速度20mm/minで測定した伸び率が200%以上であることが好ましい。より確実に剥離することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、可塑剤を含有しなくとも伸びがあり、部品表面を汚染することなく剥離性が良好なストリッパブルペイント及びその塗膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一態様を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。本発明の効果を奏する限り、種々の形態変更をしてもよい。
【0013】
本実施形態に係るストリッパブルペイントは、ポリビニルアルコールと、スチレンブタジエンゴムと、アルコール系溶媒と、水と、を含有し、ポリビニルアルコールは、ケン化度が90mol%以下であり、かつ、重合度が500以上2000未満であり、ポリビニルアルコールとスチレンブタジエンゴムとの質量比率が、30/70を超え60/40以下であり、アルコール系溶媒の含有量が5~15wt%である。
【0014】
ストリッパブルペイントは、被塗物の汚染防止又は傷つき防止などを目的として、被塗物の表面に塗布される塗料組成物である。ストリッパブルペイントの硬化物からなる塗膜は、被塗物の表面を保護し、任意のタイミングで塗膜を剥がすことができる。ここで、被塗物には、プラスチックなどの基材表面及び基材の表面上に形成された塗膜表面が包含される。
【0015】
ポリビニルアルコールは、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル及び安息香酸ビニルなどのビニルエステルの1種または2種以上を重合して得られるポリビニルエステルのケン化物である。
【0016】
ポリビニルアルコールのケン化度は、90mol%以下である。ケン化度が90mol%を超えると、溶媒への溶解性が下がり、放置安定性が低下する。ポリビニルアルコールのケン化度の下限値は、特に限定されないが、70mol%以上であることが好ましい。
【0017】
ポリビニルアルコールの重合度は、500以上である。重合度が500未満では、塗膜の強度が低下し、剥離作業性が低下する。ポリビニルアルコールの重合度の上限値は、2000未満である。重合度が2000以上であると、得られる塗膜の靭性が低下し、さらに溶液粘度が著しく高くなるため、作業性が低下する。
【0018】
スチレンブタジエンゴムは、スチレンとブタジエンとを用いた乳化重合によって得られた共重合体である。
【0019】
本実施形態に係るストリッパブルペイントでは、アルコール系溶媒は、イソプロピルアルコールである形態を包含する。アルコール系溶媒は、イソプロピルアルコールの他、n‐ブタノール又はi‐ブタノールなどのブタノールであってもよい。アルコール系溶媒は、乾燥性の観点から、イソプロピルアルコールであることがより好ましい。
【0020】
水は、ポリビニルアルコールの溶媒及びスチレンブタジエンゴムの分散媒として配合される。また、水は、粘度調整のために配合されてもよい。
【0021】
ポリビニルアルコールとスチレンブタジエンゴムとの合計質量100wt%(質量%)に対して、ポリビニルアルコールの質量比率は30.0wt%を超え60.0wt%以下であり、34.0wt%以上60.0wt%以下であることがより好ましく、49.0wt%以上60.0wt%以下であることが更に好ましい。ポリビニルアルコールの質量比率を49.0wt%以上60.0wt%以下とすることで、耐有機溶剤性及び耐熱性がより良好となる。ポリビニルアルコールの質量比率が30.0wt%以下では、耐有機溶剤性及び耐熱性が低下し、マスキングとして使用した場合、剥離性が悪くなる。ポリビニルアルコールの質量比率が60wt%を超えると、得られる塗膜の伸びが小さくなり、マスキングとして使用した場合、剥離性が悪くなる。
【0022】
アルコール系溶媒の含有量は、ストリッパブルペイント全体100wt%(質量%)に対して、5~15wt%であり、8~15wt%であることがより好ましい。アルコール系溶媒の含有量が5wt%未満では、指触乾燥性が劣る。アルコール系溶媒の含有量が15wt%を超えると、放置安定性が低下する。
【0023】
本実施形態に係るストリッパブルペイントは、可塑剤を含有しないことが好ましい。このようなストリッパブルペイントの塗膜は、剥離後の被塗物表面に移行物が残らず、剥離後の被塗物表面を汚染することがない。可塑剤は、例えば、エチレングリコール、グリセリン又はポリエチレングリコールである。本実施形態に係るストリッパブルペイントは、スチレンブタジエンゴムを所定量含有することで、可塑剤を含有しなくとも伸びがあり、部品表面を汚染することなく剥離性が良好なマスキング用途としても使用できる。
【0024】
本実施形態に係るストリッパブルペイントには、必要に応じて、公知の体質顔料、着色顔料、金属顔料、染料を配合してもよい。
【0025】
本実施形態に係る塗膜は、本発明に係るストリッパブルペイントの硬化物からなる。塗膜の膜厚は、特に限定されないが、例えば、10~100μmであることが好ましく、20~50μmであることがより好ましい。
【0026】
本実施形態に係る前記塗膜は、JIS K 7161‐1:2014「プラスチック‐引張特性の求め方‐第1部:通則」に準じて測定した破断強度が0.1MPa以上であり、かつ、雰囲気温度25℃、引張速度20mm/minで測定した伸び率が200%以上であることが好ましい。より確実に剥離することができる。破断強度が0.1MPa未満では、マスキングとして使用した場合、剥離性が悪くなる場合がある。伸び率が200%未満では、マスキングとして使用した場合、剥離性が悪くなる。
【実施例0027】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例に何ら限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」、「質量%」を示す。なお、添加部数は、固形分換算の値である。
【0028】
(実施例1)
温度計、冷却管、撹拌装置を備えた1リットルの丸底3つ口フラスコに、純水を850g仕込んだ後、撹拌を行いながらフラスコ内の温度を90℃に保ち、ポリビニルアルコール(以降、PVAと表記することもある。)粉末(ケン化度87mol%、重合度500)を150g加え、溶解を行い、PVA水溶液を得た。作成したPVA水溶液65gと、スチレンブタジエンゴム(以降、SBRと表記することもある。)水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)20gと、イソプロピルアルコール8gと、純水7gとを、撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比(PVA/SBRの質量比)は49.37/50.63であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は8質量%であった。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液55gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)32gと、イソプロピルアルコール8gと、純水5gとを、撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は34.02/65.98であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は8質量%であった。
【0030】
(実施例3)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液75gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)15gと、イソプロピルアルコール8gと、純水2gとを、撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は60.00/40.00であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は8質量%であった。
【0031】
(実施例4)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液65gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)20gと、イソプロピルアルコール15gとを撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は49.37/50.63であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は15質量%であった。
【0032】
(実施例5)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液65gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)20gと、イソプロピルアルコール5gと、純水10gとを、撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムの重量比は49.37/50.63であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は5質量%であった。
【0033】
(実施例6)
PVA粉末(ケン化度87mol%、重合度500)を、PVA粉末(ケン化度79mol%、重合度500)に変更した以外は、実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液65gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)20gと、イソプロピルアルコール8gと、純水7gとを、撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は49.37/50.63であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は8質量%であった。
【0034】
(比較例1)
PVA粉末(ケン化度87mol%、重合度500)を、PVA粉末(ケン化度97mol%、重合度500)に変更した以外は、実施例1と同様にしてストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は49.37/50.63であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は8質量%であった。
【0035】
(比較例2)
PVA粉末(ケン化度87mol%、重合度500)を、PVA粉末(ケン化度87mol%、重合度2,000)に変更した以外は、実施例1と同様にしてストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は49.37/50.63であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は8質量%であった。
【0036】
(比較例3)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液50gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)35gと、イソプロピルアルコール8gと、純水7gとを、撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は30.00/70.00であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は8質量%であった。
【0037】
(比較例4)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液74gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)12gと、イソプロピルアルコール7gと、純水7gとを撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムの重量比は64.91/35.09であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は7質量%であった。
【0038】
(比較例5)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液65gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)20gと、純水15gとを撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は49.37/50.63であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は0質量%であった。
【0039】
(比較例6)
実施例1と同様にしてPVA水溶液を作成した。作成したPVA水溶液61gと、スチレンブタジエンゴム水分散液としてNipol LX426(日本ゼオン社製、固形分50wt%)19gと、イソプロピルアルコール20gとを、撹拌器を用いて十分混合し、ストリッパブルペイントを得た。なお、PVAとスチレンブタジエンゴムとの質量比は49.06/50.94であった。イソプロピルアルコール(アルコール系溶媒)の含有量は20質量%であった。
【0040】
(試験片の作成)
各実施例及び各比較例のストリッパブルペイントをABS樹脂基材(横50mm、縦150mm、厚さ1mm)に乾燥時の塗膜の厚さが20μmとなる様に刷毛塗りを行った。塗工終了後室温で24時間放置して、基材上にストリッパブルペイントの硬化物(塗膜)が形成された物品を得た。この物品を初期評価用試験片とした。初期評価用試験片の塗膜上に有機溶剤系2液型塗料(オリジン社製、エコネットEY)を乾燥後の塗膜の厚さが20μmとなるようにスプレー塗装を行い、70℃×30min.で強制乾燥したものを2次評価用試験片とした。
【0041】
上記条件で作成した各実施例及び各比較例のストリッパブルペイントについて、評価を行った。評価の試験方法及び評価基準は以下の通りである。評価結果を表1に示す。
【0042】
(破断強度)
前記「試験片の作成」の初期評価用試験片の作成工程において、ストリッパブルペイントの塗布方法を刷毛塗りからスプレー塗装に変更して初期評価用試験片を作成し、この初期評価用試験片において基材からストリッパブルペイントの硬化物(塗膜)を手で剥離した。このようにして得られたストリッパブルペイントの塗膜について、破断強度を、JIS K 7161-1:2014「プラスチック‐引張特性の求め方‐第1部:通則」に準じて測定した。0.1MPa以上を実用レベル、0.1MPa未満を実用不適レベルと判断した。
【0043】
(伸び率)
前記「試験片の作成」の初期評価用試験片の作成工程において、ストリッパブルペイントの塗布方法を刷毛塗りからスプレー塗装に変更して初期評価用試験片を作成し、この初期評価用試験片において基材からストリッパブルペイントの硬化物(塗膜)を手で剥離した。このようにして得られたストリッパブルペイントの塗膜について、小型卓上試験機(SHIMADZU EZ-S、島津製作所社製)を用いて、雰囲気温度25℃、引張速度20mm/minで塗膜の伸び率を測定した。伸び率が200%以上を実用レベル、200%未満を実用不適レベルと判断した。
【0044】
(初期剥離評価)
初期評価用試験片を用いて剥離評価を行った。剥離評価の試験は、初期評価用試験片においてABS樹脂基材からストリッパブルペイントを手で剥離することによって行った。評価基準は次のとおりである。
◎:剥離途中でのストリッパブルペイント塗膜の破断がなく、剥離性が良好である(実用レベル)。
〇:剥離途中でのストリッパブルペイント塗膜の破断が一部あるが、剥離可能である(実用下限レベル)。
×:剥離途中でのストリッパブルペイント塗膜が破断して、剥離できない(実用不適レベル)。
【0045】
(2次剥離評価)
2次評価用試験片を用いて2次剥離評価を行った。2次剥離評価の試験は、初期評価用試験片においてABS樹脂基材からストリッパブルペイントを手で剥離することによって行った。評価基準は次のとおりである。
◎:上塗り溶剤系塗料中の有機溶媒に対する耐性が良好であり、ストリッパブルペイントが軟化せず、基材へ有機溶媒が染み出て移行することがない。その結果、剥離途中でのストリッパブルペイント塗膜の破断がなく、剥離性が良好である(実用レベル)。
〇:上塗り溶剤系塗料中の有機溶媒に対する耐性が若干劣り、ストリッパブルペイントが若干軟化し、基材へ有機溶媒が若干染み出て移行する。その結果、剥離途中でのストリッパブルペイント塗膜の破断が一部あるが、剥離可能であるため実用上問題がない(実用下限レベル)。
×:上塗り溶剤系塗料中の有機溶媒に対する耐性が劣り、ストリッパブルペイントが軟化し、基材へ有機溶媒が染み出て移行する。その結果、剥離途中でのストリッパブルペイント塗膜が破断して、剥離できないため実用上問題がある(実用不適レベル)。
【0046】
(作業性評価)
作業性評価は次のとおり行った。各実施例及び各比較例のストリッパブルペイントをABS樹脂基材(横50mm、縦150mm、厚さ1mm)に乾燥時の塗膜の厚さが20μmとなる様に刷毛塗り又はスプレー塗布を行い、室温で放置した。その後、塗布面を指で触って乾燥状態を確認した。評価基準は次のとおりである。
〇:スプレー塗布、刷毛塗りが可能で、指触乾燥時間が30分以内である(実用レベル)
×:スプレー塗布が不可もしくは指触乾燥時間が2時間以上である(実用不適レベル)
【0047】
(放置安定性評価)
各実施例及び各比較例のストリッパブルペイントを、室温に7日間放置後の分離、白濁の有無を評価した。評価基準は次のとおりである。
〇:分離、凝集なし(実用レベル)
×:分離、凝集あり(実用不適レベル)
【0048】
【表1】
【0049】
各実施例のストリッパブルペイントは、いずれの評価も実用レベルであり、可塑剤を含有しなくとも伸びがあり、部品表面を汚染することなく剥離性が良好であった。比較例1は、PVAのケン化度が95mol%であり、ケン化度が90mol%を超えていたため、放置安定性が実用不適レベルであった。このため、その他の評価を実施しなかった。比較例2は、PVAの重合度が2000であり、重合度が2000以上であったため、2次剥離性及び作業性が実用不適レベルであった。また、比較例2は、伸び率が41%であり、伸び率が200%未満であった。比較例3は、ポリビニルアルコールとスチレンブタジエンゴムとの質量比率が、30/70であり、質量比率30/70以上であったため、耐有機溶剤性が劣り、2次剥離性が実用不適レベルであった。また、比較例3は、破断強度が0.08MPaであり、破断強度が0.1MPa未満であった。比較例4は、ポリビニルアルコールとスチレンブタジエンゴムとの質量比率が、64.91/35.09であり、質量比率が60/40を超えていたため、塗膜の伸びが小さくなり、2次剥離性が実用不適レベルであった。また、比較例4は、伸び率が172%であり、伸び率が200%未満であった。比較例5は、アルコール系溶媒の含有量が0質量%であり、含有量が5質量%未満であったため、作業性が実用不適レベルであった。比較例6は、アルコール系溶媒の含有量が20質量%であり、含有量が15質量%を超えていたため、放置安定性が実用不適レベルであった。このため、その他の評価を実施しなかった。