(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124620
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】ミシンフレーム及びその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
D05B 73/00 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
D05B73/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022358
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003399
【氏名又は名称】JUKI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】飯島 隆彰
(72)【発明者】
【氏名】グエン タン ドン
【テーマコード(参考)】
3B150
【Fターム(参考)】
3B150CE25
3B150GA01
3B150GA02
(57)【要約】
【課題】ミシンフレームの軽量化と強度向上を図る。
【解決手段】ミシンフレーム10が、板金部材とブロック部材とを有する構成とする。ミシンフレームに、板金部材を使用すると軽量化を図ることができ、板金部材による剛性の低下をブロック部材で補うことにより、軽量化と高剛性の両方を実現する。
また、このようなミシンフレームは、部材間を熱硬化性の接着剤で仮止めし、部材同士を位置決め後に、加熱して接着剤の接着部を硬化させて固定することで、組立後の調整を容易に行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板金部材とブロック部材とを有することを特徴とするミシンフレーム。
【請求項2】
前記ブロック部材は、前記板金部材が備える対向する二平面の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のミシンフレーム。
【請求項3】
二つの前記板金部材が、筒状構造を構成することを特徴とする請求項1又は2に記載のミシンフレーム。
【請求項4】
ミシンアーム部に、上軸を内側に通さない配置で二つの前記板金部材からなる筒状構造を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のミシンフレーム。
【請求項5】
ミシンベッド部が、上面の両端部が折曲されて対向する二平面を有する前記板金部材を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のミシンフレーム。
【請求項6】
ミシンアーム部とミシンベッド部との間に、相互の位置合わせをする調節構造を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のミシンフレーム。
【請求項7】
前記調節構造は、長穴とネジからなることを特徴とする請求項6に記載のミシンフレーム。
【請求項8】
部材間に接着部を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のミシンフレーム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のミシンフレームの組立方法において、
部材間を熱硬化性の接着剤で仮止めし、
前記部材同士を位置決め後に、加熱して前記接着剤の接着部を硬化させて固定することを特徴とするミシンフレームの組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミシンフレーム及びその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のミシンは、縫製を行うための各種の構成を支持するミシンフレームの軽量化を図るために、鋳物からの形成をやめて、板金部材を組み合わせて構成していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のミシンフレームは、板金部材にたわみが生じやすく、十分な剛性を得ることができなかった。
【0005】
本発明は、軽量で強度が高いミシンフレーム及びその組み立て方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ミシンフレームにおいて、
板金部材とブロック部材とを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記ミシンフレームの組立方法において、
部材間を熱硬化性の接着剤で仮止めし、
前記部材同士を位置決め後に、加熱して前記接着剤の接着部を硬化させて固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、軽量化を図りつつ強度の高いミシンフレーム及びその組み立て方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態たるミシンのミシンフレームの斜視図である。
【
図2】ミシンのミシンアーム部モジュールの斜視図である。
【
図5】ミシンアーム部モジュールの分解斜視図である。
【
図6】ミシンベッド部モジュールの底部を上に向けた状態の斜視図である。
【
図7】ミシンベッド部モジュールの分解斜視図である。
【
図9】ミシンアーム部モジュールとミシンベッド部モジュールの相対的な位置決めを行うための治具を示す斜視図である。
【
図11】ミシンフレームにおける周波数とイナータンスの関係を示した線図である。
【
図12】ミシンフレームにおける上軸回転数と振動レベルの関係を示した線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[発明の実施形態の全体構成]
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態たるミシンのミシンフレーム10の正面図、
図2はミシンのミシンアーム部モジュール20の斜視図、
図3は立胴部モジュール30の斜視図、
図4はミシンベッド部モジュール40の斜視図である。
【0011】
ミシンフレーム10は、ミシン下部に位置するミシンベッド部のフレームとなるミシンベッド部モジュール40と、ミシンベッド部モジュール40の一端部から立設された立胴部のフレームとなる立胴部モジュール30と、立胴部モジュール30の上端部からミシンベッド部モジュール40と同方向に延出されたミシンアーム部のフレームとなるミシンアーム部モジュール20とを備えている。
ミシンフレーム10は、ミシンアーム部モジュール20と立胴部モジュール30とミシンベッド部モジュール40との組み立てにより構成されている
【0012】
なお、各図において、ミシンフレーム10のミシンアーム部モジュール20及びミシンベッド部モジュール40の長手方向をY軸方向とし、水平かつY軸方向に直交する方向をX軸方向とし、X軸及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向における一方の方向で上側を「上」、下側を「下」、X軸方向における一方の方向でミシンに対してオペレータが位置する方向を「前」、その逆側を「後」、Y軸方向における一方の方向でオペレータ側から見て左側を「左」、右側を「右」というものとする。
【0013】
[ミシンアーム部モジュール:全体構成]
図5はミシンアーム部モジュール20の分解斜視図である。
ミシンアーム部モジュール20は、
図1,
図2及び
図5に示すように、本体フレーム21と、補強フレーム22と、モーターブラケット23と、上軸ブラケット24と、第一面部ブロック25と、第二面部ブロック26と、天板27とを備えている。
【0014】
これらの内、本体フレーム21、補強フレーム22、モーターブラケット23、上軸ブラケット24及び天板27は、板金部材であり、第一面部ブロック25及び第二面部ブロック26は、ブロック部材である。
ここでいう板金部材とは、板金加工により形成された部材であり、本実施形態では、いずれも、鋼板、一例として、冷間圧延鋼板からなり、亜鉛メッキ又はニッケルメッキ等の表面処理が行われている。
また、ブロック部材とは、切削、鋳造、鍛造等の加工法によって形成された、板金加工よりも各部の厚みを有し、可撓性が非常に小さい部材をいう。ブロック部材は、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼材等からなる。
上記「板金部材」と「ブロック部材」については、他のモジュール30,40の場合も同様の構成を意味するものとする。
【0015】
[ミシンアーム部モジュール:本体フレーム]
本体フレーム21は、いわゆるU曲げ板金であり、Y軸方向に延在する底面部211と、底面部211の前端部から立ち上げられた左前面部212及び右前面部213と、底面部211の後端部から立ち上げられた後面部214とが折曲により一体的に形成されている。
【0016】
底面部211は、X-Y平面に平行(水平)に配置され、ミシンアーム部(ミシンアーム部モジュール20に図示しないカバーが取り付けられた状態)のX軸方向幅とほぼ等しく、ミシンアーム部のY軸方向長さよりも僅かに短い。
さらに、底面部211の後縁部の全長と前縁部の右半分がY軸方向に平行に形成され、前縁部の左半分は、左後方に緩やかに傾斜している。
また、底面部211の右半分領域には、矩形の貫通孔215が形成されている。
また、底面部211の上面において、第二面部ブロック26、後フランジ部244、後フランジ部234と接する位置には、他の部分よりも平面度が高い平面加工部217、218、219が形成されている。
【0017】
後面部214は、ミシンアーム部のY軸方向長さとほぼ等しく、ミシンアーム部のZ軸方向高さとほぼ等しい。そして、その前縁部が、底面部211の前縁部よりも僅かに前方まで延出されている。
後面部214の上縁部近傍には、当該上縁部のY軸方向全長に渡って、僅かに内側(前側)に折り曲げられたフランジ部216が形成され、剛性が高められている。
【0018】
左前面部212及び右前面部213は、いずれも、後面部214よりも十分に低い高さで底面部211の前縁部から立ち上げられている。これら左前面部212及び右前面部213は、他の部材の取付けフランジ部として機能する。
【0019】
[ミシンアーム部モジュール:補強フレーム]
補強フレーム22は、いわゆるZ曲げ板金であり、Y軸方向に延在する主平面部221と、主平面部221の前端部から垂下された左前面部222及び右前面部223と、主平面部221の後端部から立ち上げられた後面部224とが折曲により一体的に形成されている。
【0020】
主平面部221は、X-Y平面に平行(水平)に配置され、平面視形状及び寸法が、本体フレーム21の底面部211の左側部分と略一致している。
左前面部222及び右前面部223は、本体フレーム21の左前面部212及び右前面部213とほぼ等しい高さで立ち上げられている。
そして、左前面部222の前面が本体フレーム21の左前面部212の後面に密接した状態で、当該左前面部222が左前面部212に、Y軸方向に沿った複数箇所でネジにより連結される。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
また、右前面部223の前面が本体フレーム21の右前面部213の左端部の後面に密接した状態で、当該右前面部223が右前面部213にネジにより連結される。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0021】
後面部224は、その後面部が本体フレーム21の後面部214の前面部に密接した状態で、当該後面部224が後面部214に、複数箇所でネジにより連結される。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
後面部224は、その上端部が、本体フレーム21のフランジ部216よりも僅かに低くなる位置で、後面部214に連結される。
【0022】
補強フレーム22の左前面部222、右前面部223及び後面部224が、本体フレーム21の左前面部212、右前面部213及び後面部214に連結されることにより、補強フレーム22の主平面部221と本体フレーム21の底面部211との間に、矩形の筒状構造225が形成される。
これにより、ミシンアーム部モジュール20は、前後方向の撓み、上下方向の撓み、Y軸方向の捻れに対して高い剛性を得ることができる。
【0023】
また、ミシンアーム部モジュール20が後述する上軸123を支持した状態において、補強フレーム22の主平面部221は、上軸123の下方に位置するようにその高さが設定されている。これにより、筒状構造225の内側に上軸123が通されないように避けた配置となっている。
これにより、ミシンアーム部モジュール20の前方及び上方に上軸123が露出した状態で配置され、上軸123と当該上軸123の周囲の構成にアクセスすることが容易となり、組み付け、調整、メンテナンス等の作業が容易となっている。
【0024】
[ミシンアーム部モジュール:モーターブラケット]
モーターブラケット23は、いわゆるU曲げ板金であり、X-Z平面に沿った略正方形状の支持面部231と、支持面部231の下縁部から左方に直角に折曲されてなる下フランジ部232と、支持面部231の前縁部から左方に直角に折曲されてなる前フランジ部233と、支持面部231の後縁部から左方に直角に折曲されてなる後フランジ部234とが一体的に形成されている。
【0025】
支持面部231は、中央が大きく円形に開口しており、当該開口部に出力軸を遊挿させた状態で、右面側にミシンモーター121がネジ止めにより固定される。
下フランジ部232は、本体フレーム21の底面部211であって、前述した矩形の貫通孔215の右側の平面加工部219に前後二箇所でネジにより連結される。
前フランジ部233は、その下端部前面が本体フレーム21の右前面部213の後面に密接し、ネジにより連結される。
後フランジ部234は、その後面が本体フレーム21の後面部214の前面に密接し、上下二箇所でネジにより連結される。
【0026】
[ミシンアーム部モジュール:上軸ブラケット]
上軸ブラケット24は、いわゆるU曲げ板金であり、X-Z平面に沿った略正方形状の支持面部241と、支持面部241の下縁部から右方に直角に折曲されてなる下フランジ部242と、支持面部241の前縁部から右方に直角に折曲されてなる前フランジ部243と、支持面部241の後縁部から右方に直角に折曲されてなる後フランジ部244とが一体的に形成されている。
【0027】
支持面部241は、中央が大きく円形に開口しており、右面側には上軸123を回転可能に支持する軸受128がネジ止めにより固定される(
図2及び
図9参照)。中央の開口部には、軸受128を介して上軸123が回転可能に支持される。
下フランジ部242は、本体フレーム21の底面部211であって、前述した矩形の貫通孔215の左側の平面加工部218に前後二箇所でネジにより連結される。
前フランジ部243は、その下端部前面が本体フレーム21の右前面部213の後面に密接し、ネジにより連結される。
後フランジ部244は、その後面が本体フレーム21の後面部214の前面に密接し、上下二箇所でネジにより連結される。
【0028】
[ミシンアーム部モジュール:第一面部ブロック]
第一面部ブロック25は、ミシンの面部をY軸方向視で見た外形を形取った枠体である。即ち、第一面部ブロック25は、上面部251、前面部252、底面部253及び後面部254が一体的となって、枠状をなしている。これらは板金部材と違って肉厚であり、上面部251、前面部252、底面部253及び後面部254のそれぞれが板金部材に比べて大きな剛性を有している。
【0029】
上面部251と底面部253には、平面視で同位置に上下に貫通した二つの貫通孔を有し、これらにはそれぞれ針棒127と布押さえ棒(図示略)を支持するメタルが取り付けられる。
後面部254は、その後面が、前述した本体フレーム21の後面部214の前縁部の前面に密接した状態で複数のネジにより連結される。なお、第一面部ブロック25の上面部251と後面部254との間には、面取り部255が形成されている。この面取り部255は、第一面部ブロック25の後面部254と本体フレーム21の後面部214との連結時において、本体フレーム21の後面部214のフランジ部216を避けてその内側面と当たらないようにするために形成されている。
【0030】
[ミシンアーム部モジュール:第二面部ブロック]
第二面部ブロック26は、ミシンアーム部の面部の手前(右側)部分のX-Z平面に沿った断面形状を形取った厚板状のブロックからなる本体部261と、本体部261の左面下部から下方に延出された延出部262とが一体的に形成されている。
【0031】
本体部261は、中央部が円形に大きく開口し、その内側には軸受125(
図2参照)を介して上軸の左端部が回転可能に支持される。
本体部261の前面下部の前面、底面部の平面加工部217、後面下部の後面が、それぞれ、本体フレーム21の左前面部212の後面、底面部211の上面、後面部214の前面に密接して、ネジにより連結されている。これにより、本体部261が、本体フレーム21の三面を内側から支えた状態となるので、本体フレーム21の三面の角度が変化するような撓み変形を抑えることができ、本体フレーム21の剛性を高めることができる。
【0032】
延出部262は、本体部261の左面からさらに左方に突出しており、当該延出部262の下端部の左面は、第一面部ブロック25の底面部253の右面に密接し、ネジにより連結される。
延出部262の左面には、上下方向に沿ったガイド溝が形成されている。このガイド溝は、針上下動機構における針棒抱きを介して針棒127の上下動をガイドする。
【0033】
[ミシンアーム部モジュール:天板]
天板27は、上面部271と、上面部271の左端部から下方に折曲された左面部272と、上面部271の右端部から一段下がって右方に延びる右方延出部273とが一体的に形成されている。
天板27の左面部272の右面と上面部271の下面左端部とが、それぞれ第一面部ブロック25の上面部251の左面と上面とに密接した状態でネジにより連結される。
また、天板27の右方延出部273の下面が第二面部ブロック26の本体部261の上面に密接した状態でネジにより連結される。
天板27は、第一面部ブロック25の上端部と第二面部ブロック26の上端部とを連結し、これらのY軸方向における相互間距離を一定に維持する。なお、第一面部ブロック25の下端部は、第二面部ブロック26の延出部262と密接して連結されるので、第一面部ブロック25と第二面部ブロック26とは、上端部と下端部とで相互間が一定の間隔を維持するように連結された状態となる。
【0034】
[ミシンアーム部モジュールの内部構成]
ミシンアーム部モジュール20は、
図2に示すように、ミシンアーム部における内部構成部品が取り付けられて構成されている。ミシンアーム部モジュール20の内部構成部品は、主に、針上下動機構を構成する部品からなる。
【0035】
即ち、モーターブラケット23の支持面部231の右面には、前述したようにミシンモーター121が取り付けられている。
ミシンモーター121は、その出力軸が左方に水平に向けられており、カップリング122を介して上軸123の右端部に連結されている。
【0036】
上軸123は、その右端部に図示しない主動ベルトプーリが固定装備されており、当該主動ベルトプーリには、タイミングベルト124の一端部が巻回装備されている。タイミングベルト124は上下に長い長円状を呈しており、本体フレーム21の貫通孔215を通ってその下端部がミシンアーム部モジュール20の外部下方に延びている。このタイミングベルトの下端部は、立胴部モジュール30内を通過してミシンベッド部モジュール40内の上下送り軸141(
図4参照)に固定装備された従動ベルトプーリに巻回される。
【0037】
上軸123は、その右端部近傍において、軸受128を介して上軸ブラケット24により回転可能に支持されている。上軸123は、ミシンアーム部モジュール20内において、補強フレーム22の主平面部221の上方を通って、Y軸方向に平行に配設されている。
そして、上軸123の左端部は、第二面部ブロック26により軸受125を介して回転可能に支持されている。
【0038】
第一面部ブロック25と第二面部ブロック26との間のスペースには、針棒クランク機構126が支持配置されている。針棒クランク機構126は、上軸123の回転を上下の往復動作に変換して、第一面部ブロック25に上下動可能に支持された針棒127に伝達する。
第一面部ブロック25と第二面部ブロック26との間のスペースには、天秤機構が支持配置されており、針棒クランク機構を通じて、天秤の往復動作が付与される。
さらに、第一面部ブロック25と第二面部ブロック26との間のスペース及び第一面部ブロック25の枠内のスペースには、針板上面において、被縫製物を上から押さえる布押さえ機構の押さえ棒に下方の押圧力を付与するバネ、さらに、押さえ圧を解放する押さえ上げ機構等も配置されている。
【0039】
[ミシンベッド部モジュール:全体構成]
図6はミシンベッド部モジュール40の底部を上に向けた状態の斜視図、
図7はミシンベッド部モジュール40の分解斜視図である。
ミシンベッド部モジュール40は、
図1、
図4、
図6及び
図7に示すように、本体フレーム41と、上面板42と、第一~第三ベッド部ブロック43~45と、上ブラケット46と、下ブラケット47とを備えている。
これらの内、本体フレーム41及び上面板42は、板金部材であり、第一~第三ベッド部ブロック43~45、上ブラケット46及び下ブラケット47は、ブロック部材である。
【0040】
[ミシンベッド部モジュール:本体フレーム]
本体フレーム41は、いわゆるU曲げ板金であり、X-Y平面に沿った主平面部411と、主平面部411の前端部から下方に垂下する前面部412と、主平面部411の後端部から下方に垂下する後面部413とが折曲により一体的に形成されている。
【0041】
主平面部411は、平面視でY軸方向に長尺な矩形であって、そのY軸方向長さは、ミシンのほぼ全長に相当する。主平面部411の左端部中央は、針落ち位置に対応してU字状の切り欠き414が形成されている。また、主平面部411の右端部後方及び右端部前方には、それぞれ上下に貫通する開口部415,416が形成されている。
また、主平面部411の下面には、第一~第三ベッド部ブロック43~45と接する位置に平面加工部418、419、410が形成されている。
【0042】
主平面部411の上面右側は、立胴部モジュール30が結合され、上面左側は、縫製作業エリアとなる。この主平面部411の平面精度を高めるために、第一~第三ベッド部ブロック43~45が平面加工部418、419、410を介して下面側にねじ締めで固定されている。
前面部412と後面部413は、いずれも主平面部411から直角に折曲されて下方に向けられており、これらはY-Z平面に沿っており、互いに対向している。そして、前面部412と後面部413は、いずれも、左端部が主平面部411から右斜め下方向に沿って傾斜した形状であり、右端部が主平面部411から左斜め下方向に沿って傾斜した形状となっている。
【0043】
[ミシンベッド部モジュール:上面板]
上面板42は、矩形の平滑板金であり、X-Y平面に沿った主平面部411のX軸方向幅より僅かに広く、主平面部411のY軸方向長さの半分程度の長さとなっている。
この上面板42は、左端部の位置を合わせた状態で、主平面部411の上面にネジ止めにより取り付けられている。
主平面部411に対する上面板42の取り付け位置は、前述した縫製作業エリアであり、縫製時には、この上面板42の上面で被縫製物の送りが行われる。従って、この上面板42は、他の板金部材と異なり、ステンレス鋼で形成されている。また、上面は平滑度が高くなるよう処理が行われている。
【0044】
また、上面板42の左端部中央にも、針落ち位置に対応してU字状の切り欠き421が形成されている。上面板42のU字状の切り欠き421は、主平面部411のU字状の切り欠き414と重合する位置に形成されており、且つ、上面板42のU字状の切り欠き421の方が僅かにX軸方向幅が広く設定されている。これにより、主平面部411に上面板42を取り付けた場合に、上面板42のU字状の切り欠き421の内側に主平面部411のU字状の切り欠き414の内縁部が上から見える状態となる。従って、主平面部411のU字状の切り欠き414の内縁部に載置するように上面板42のU字状の切り欠き421の内側に図示しない針板を嵌め込むことで容易に取り付けることができるようになっている。
【0045】
[ミシンベッド部モジュール:第一~第三ベッド部ブロック]
第一~第三ベッド部ブロック43~45は、Y軸方向視でいずれも略矩形に形成されており、本体フレーム41の内側に、左から右に向かって第一~第三ベッド部ブロック43~45が順番に嵌め込まれている。
各ベッド部ブロック43~45は、各々の上面が本体フレーム41の主平面部411の下面に密接し、各々の前面が本体フレーム41の前面部412の後面に密接し、各々の後面が本体フレーム41の後面部413の前面に密接した状態でネジにより連結される。
各ベッド部ブロック43~45は、本体フレーム41の内側に取り付けられた状態でその底部が前面部412及び後面部413の底部と高さがほぼ均一となる。
【0046】
さらに、第一~第三ベッド部ブロック43~45は、Y軸方向に貫通した複数の貫通孔が設けられている。これらの貫通孔は、ミシンベッド部モジュール40に支持される内部構成部品であるY軸方向に沿った上下送り軸、水平送り軸、釜軸等を図示しない軸受を介して支持するための貫通孔である。
【0047】
[ミシンベッド部モジュール:上ブラケット及び下ブラケット]
上ブラケット46及び下ブラケット47は、厚板状のブロック部材であり、これらは、本体フレーム41の主平面部411の右端部近傍に取り付けられている。
上ブラケット46は、主平面部411の右端部上面中央にネジにより固定されており、下ブラケット47は、主平面部411の右端部下面後方にネジにより固定されている。
これらのブラケット46,47は、いずれも、Y軸方向に貫通した貫通孔が形成されており、各々が軸部材を支持する。
【0048】
[ミシンベッド部モジュールの内部構成]
ミシンベッド部モジュール40の内部構成部品は、
図4に示すように、主に、被縫製物の送り機構、送り調節機構の一部、釜機構、糸切り装置等を構成する部品からなる。
【0049】
送り機構は、送り歯を支持する送り台と、送り台に上下の往復動作を付与する上下送り機構と、送り台に水平の往復動作を付与する水平送り機構とを備えている。
上下送り機構は、前述した従動ベルトプーリによりミシンモーター121からトルクを付与されて回転を行う上下送り軸141と、上下送り軸の回転を上下の往復動作に変換するカム機構142を備えている。なお、前述したタイミングベルト124は、本体フレーム41の主平面部411の開口部416を通って従動ベルトプーリに巻回される。
水平送り機構は、上下送り軸から往復回動動作を取り出すカムクランク機構と、カムクランク機構により往復回動動作を行う水平送り軸143と、水平送り軸と共に揺動して送り台に水平の往復動作を付与する揺動腕144とを備えている。
【0050】
釜機構は、内釜の外周で回転を行う外釜と、外釜に回転を付与する釜軸と、上下送り軸から釜軸に倍速回転を付与する増速歯車とを備えている。
糸切り装置は、前述した本体フレーム41の主平面部411の下面側であって、切り欠き414の周辺に配置されている。
【0051】
送り調節機構は、水平送り機構のカムクランク機構が水平送り軸に付与する往復回動の振幅を回動動作により変更する送り調節体と、送り調節体と連動して回動動作を行う送り変換軸と、上下動により送り変換軸に回動動作を伝達する送り調節ロッド145と、送り調節ロッド145に上下動を付与するレバー機構と、送り調節ロッド145に上下動を付与するダイヤル調節機構とを備えている。なお、レバー機構とダイヤル調節機構とは、立胴部モジュール30内に装備されている構成である。送り調節ロッド145は、前述した本体フレーム41の主平面部411の開口部415から立胴部モジュール30内に延出されている。
【0052】
上述した送り機構の上下送り軸、水平送り軸、釜機構の釜軸、送り調節機構の送り変換軸は、いずれも、Y軸方向に平行な状態で、本体フレーム41の下側において、第一~第三ベッド部ブロック43~45、下ブラケット47等により軸受を介して回転又は回動可能に支持されている。
【0053】
[立胴部モジュール:全体構成]
図8は立胴部モジュール30の分解斜視図である。
立胴部モジュール30は、
図1,
図3及び
図8に示すように、立設ブロック31と、前板金32と、後板金33と、左板金34と、結合ブラケット35とを備えている。
【0054】
これらの内、前板金32、後板金33、左板金34及び結合ブラケット35は、板金部材であり、立設ブロック31は、ブロック部材である。
【0055】
[立胴部モジュール:立設ブロック]
立設ブロック31は、Y軸方向視で略等脚台形の肉厚板状のブロックである。立胴部モジュール30をミシンベッド部モジュール40に結合する際には、立設ブロック31の下面部が、ミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41の主平面部411の上面に密接した状態でネジ止めされる。その際、主平面部411側には、X軸方向に沿った長穴417が貫通形成されており、長穴417を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
また、立胴部モジュール30をミシンアーム部モジュール20に結合する際には、立設ブロック31の上面部が、ミシンアーム部モジュール20の本体フレーム21の底面部211の下面に密接した状態となる。これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着が行われる。
【0056】
[立胴部モジュール:左板金]
左板金34は、左方を向いた等脚台形状の壁面部341と、壁面部341の前縁部に設けられた前フランジ部342と、壁面部341の後縁部に設けられた後フランジ部343と、壁面部341の下縁部に設けられた下取付けフランジ部344とが折曲により一体的に形成されている。
【0057】
壁面部341は、X-Z平面に平行となるように立設される。
下取付けフランジ部344は、壁面部341から左方に折曲され、X-Y平面に平行な方向に向けられる。下取付けフランジ部344は、立胴部モジュール30をミシンベッド部モジュール40に結合する際に、その下面がミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41の主平面部411の上面に密接した状態でネジ止めされる。下取付けフランジ部344側には、X軸方向に沿った長穴345が貫通形成されており、長穴345を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0058】
[立胴部モジュール:前板金]
前板金32は、前方を向いた矩形の壁面部321と、壁面部321の上縁部に設けられた上取付けフランジ部322と、壁面部321の下縁部に設けられた下取付けフランジ部323と、壁面部321の左縁部に設けられた左取付けフランジ部324とが折曲により一体的に形成されている。
【0059】
壁面部321は、Y-Z平面よりも僅かに上側後方に傾斜した方向に向けられており、その後面が立設ブロック31の前面に密接した状態でネジにより連結される。
左取付けフランジ部324は、壁面部321から後方に折曲されている。左取付けフランジ部324は、その左面が左板金34の壁面部341の右面に密接した状態でネジにより連結される。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。また、この連結により、左板金34の前フランジ部342の後面が壁面部321の前面に接触又は近接した状態となる。
【0060】
下取付けフランジ部323は、壁面部321から前方に折曲され、X-Y平面に平行な方向に向けられる。下取付けフランジ部323は、立胴部モジュール30をミシンベッド部モジュール40に結合する際に、その下面がミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41の主平面部411の上面に密接した状態でネジ止めされる。下取付けフランジ部323側には、X軸方向に沿った長穴325が貫通形成されており、長穴325を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0061】
上取付けフランジ部322は、壁面部321から上方に僅かに折曲され、Y-Z平面に平行な方向に向けられる。上取付けフランジ部322は、立胴部モジュール30をミシンアーム部モジュール20に結合する際に、その後面がミシンアーム部モジュール20の本体フレーム21の右前面部213の前面に密接した状態でネジ止めされる。上取付けフランジ部322側には、Y軸方向に沿った長穴326が貫通形成されており、長穴326を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0062】
[立胴部モジュール:後板金]
後板金33は、後方を向いた矩形の壁面部331と、壁面部331の上縁部に設けられた上取付けフランジ部332と、壁面部331の下縁部に設けられた下取付けフランジ部333と、壁面部331の左縁部に設けられた左取付けフランジ部334とが折曲により一体的に形成されている。
【0063】
壁面部331は、Y-Z平面よりも僅かに上側前方に傾斜した方向に向けられており、その前面が立設ブロック31の後面に密接した状態でネジにより連結される。
左取付けフランジ部334は、壁面部331から前方に折曲されている。左取付けフランジ部334は、その左面が左板金34の壁面部341の右面に密接した状態でネジにより連結される。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。また、この連結により、左板金34の後フランジ部343の前面が壁面部331の後面に接触又は近接した状態となる。
【0064】
下取付けフランジ部333は、壁面部331から後方に折曲され、X-Y平面に平行な方向に向けられる。下取付けフランジ部333は、立胴部モジュール30をミシンベッド部モジュール40に結合する際に、その下面がミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41の主平面部411の上面に密接した状態でネジ止めされる。下取付けフランジ部333側には、X軸方向に沿った長穴(図示略)が貫通形成されており、長穴を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0065】
上取付けフランジ部332は、壁面部331から上方に僅かに折曲され、Y-Z平面に平行な方向に向けられる。上取付けフランジ部332は、立胴部モジュール30をミシンアーム部モジュール20に結合する際に、その前面がミシンアーム部モジュール20の本体フレーム21の後面部214の後面に密接した状態でネジ止めされる。上取付けフランジ部332側には、Y軸方向に沿った長穴336が貫通形成されており、長穴336を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0066】
[立胴部モジュール:結合ブラケット]
結合ブラケット35は、いわゆるL曲げ板金であり、X-Z平面に沿った第一平面部351とX-Y平面に沿った第二平面部352とが折曲により一体的に形成されている。
【0067】
第一平面部351は、その右面が左板金34の壁面部341の左面に密接した状態でネジ止めされる。第一平面部351側には、Z軸方向に沿った長穴353が貫通形成されており、長穴353を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0068】
第二平面部352は、立胴部モジュール30をミシンアーム部モジュール20に結合する際に、その上面がミシンアーム部モジュール20の本体フレーム21の底面部211の下面に密接した状態でネジ止めされる。第二平面部352側には、Y軸方向に沿った長穴354が貫通形成されており、長穴354を介してネジ止めが行われる。また、これらの密接部分は、熱硬化型の接着剤による接着も行われる。
【0069】
[立胴部モジュールの内部構成]
立胴部モジュール30は、
図3に示すように、上記立胴部モジュール30に内部構成部品が取り付けられて構成されている。立胴部モジュール30の内部構成部品は、主に、送り調節機構の一部を構成する部品からなる。
立胴部モジュール30の内側には、送り調節機構の送り調節ロッド145(
図4参照)に上下動を付与するレバー機構と、送り調節ロッド145に上下動を付与するダイヤル調節機構とが格納支持されている。
図3の符号131は、ダイヤル調節機構の送り調節ダイヤル(図示略)を支持する支持ブラケットである。
【0070】
[ミシンフレームの組立方法]
ミシンアーム部モジュール20と立胴部モジュール30とミシンベッド部モジュール40とを結合してミシンフレーム10の組立を行う方法を
図1~
図8に基づいて説明する。
図1において、点描部分は、熱硬化性の接着剤の塗布領域を示している。
【0071】
まず、立胴部モジュール30とミシンベッド部モジュール40とを連結する。
立胴部モジュール30の立設ブロック31の下面と左板金34の下取付けフランジ部344の下面と前板金32の下取付けフランジ部323の下面と後板金33の下取付けフランジ部333の下面とに、熱硬化性の接着剤を塗布して、ミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41の主平面部411の上面に密接させる。
このとき、各下取付けフランジ部323,333,343と主平面部411に設けられた長穴325,345,417にネジを通して、固く締め付けないように仮止めを行う。
【0072】
また、ミシンアーム部モジュール20と立胴部モジュール30も同様に連結する。
立胴部モジュール30の前板金32の上取付けフランジ部322の後面と後板金33の上取付けフランジ部332の前面とに、熱硬化性の接着剤を塗布して、ミシンアーム部モジュール20の本体フレーム21の右前面部213の前面と後面部214の後面とに密接させる。
このとき、各上取付けフランジ部322,332に設けられた長穴326,336にネジを通して、固く締め付けないように仮止めを行う。
【0073】
さらに、結合ブラケット35の第一平面部351の右面に熱硬化性の接着剤を塗布して、左板金34の壁面部341の左面に密接させる。
このとき、第一平面部351に設けられた長穴353にネジを通して、固く締め付けないように仮止めを行う。
また、結合ブラケット35の第二平面部352の上面に熱硬化性の接着剤を塗布して、ミシンアーム部モジュール20の本体フレーム21の底面部211の下面に密接させる。
このとき、第二平面部352に設けられた長穴354にネジを通して、固く締め付けないように仮止めを行う。
【0074】
このように、ミシンアーム部モジュール20と立胴部モジュール30とミシンベッド部モジュール40とが仮止めにより連結された状態で、相互の位置調整を行う。
図9及び
図10は、ミシンアーム部モジュール20とミシンベッド部モジュール40の相対的な位置決めを行うための治具150,160を示す斜視図である。
【0075】
治具150は、ミシンアーム部モジュール20のモーターブラケット23の中央貫通孔に挿入する軸151と、ミシンベッド部モジュール40の第三ベッド部ブロック45の貫通孔に挿入する軸152とを備えている。
立胴部モジュール30の前板金32,後板金33,左板金34に設けられた長穴325,345及びミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41に設けられた長穴417とがX軸方向に沿って形成されているので、これらとネジがミシンアーム部モジュール20及びミシンベッド部モジュール40のX軸方向における相互の位置合わせをする調節機構として機能して、これらをX軸方向について適正に位置決めすることができる。
同様に、結合ブラケット35の長穴353がZ軸方向に沿って形成されているので、これらとネジがミシンアーム部モジュール20及びミシンベッド部モジュール40のZ軸方向における相互の位置合わせをする調節機構として機能して、これらをZ軸方向について適正に位置決めすることができる。
【0076】
治具160は、ミシンアーム部モジュール20の第一面部ブロック25における針棒127を支持する貫通孔に挿入可能な軸部161と、軸部161をミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41の上面に対して垂直に向ける定規162と、釜軸を支持する第一ベッド部ブロック43の貫通孔に挿入可能な軸部163とを備えている。
立胴部モジュール30の前板金32,後板金33,左板金34に設けられた長穴325,345及びミシンベッド部モジュール40の本体フレーム41に設けられた長穴417により、ミシンアーム部モジュール20及びミシンベッド部モジュール40のX軸方向における相互の位置合わせが可能である。
そして、結合ブラケット35の長穴353がZ軸方向に沿って形成されているので、ミシンアーム部モジュール20の面部側を上下に揺動させることができる。
さらに、前板金32,後板金33に設けられた長穴326,336及び結合ブラケット35の長穴354がY軸方向に沿って形成されているので、これらとネジがミシンアーム部モジュール20及びミシンベッド部モジュール40のY軸方向における相互の位置合わせをする調節機構として機能する。
従って、針棒127が鉛直上下方向、釜軸が水平方向となって、これらが直交するようにミシンアーム部モジュール20及びミシンベッド部モジュール40の相互の位置合わせが可能である。
【0077】
上記のように、ミシンアーム部モジュール20及びミシンベッド部モジュール40を適正に位置合わせした後に、仮止めしていた各ネジを締結し、ミシンフレーム10全体を熱硬化性の接着剤の適正な硬化温度まで加熱する。
これにより、ミシンアーム部モジュール20、立胴部モジュール30及びミシンベッド部モジュール40の接合部は、ネジ止めと接着により固定される。
これによりミシンフレーム10が組み立てられる。
【0078】
[発明の実施形態の技術的効果]
ミシンフレーム10が、ミシンアーム部モジュール20と立胴部モジュール30とミシンベッド部モジュール40との結合により構成されているので、ミシンを各構成のモジュール単位で仕様変更、改造、部品交換等を行うことが可能となり、生産性、組立性を向上させることが可能となる。
【0079】
また、ミシンフレーム10は、板金部材とブロック部材とを有する構成としているので、板金部材による軽量化を図りつつも、板金部材による剛性低下をブロック部材で補うことができ、軽量化と高剛性を両立させることが可能となる。
【0080】
また、ミシンフレーム10は、ブロック部材を板金部材が備える対向する二平面の間に配置している。例えば、ミシンベッド部モジュール40のように、本体フレーム41の前面部412と後面部413との間に第一~第三ベッド部ブロック43~45を配置している。このため、板金部材である本体フレーム41の撓みが抑制され、ミシンフレーム10の剛性をさらに向上させることが可能となる。
【0081】
また、ミシンフレーム10は、二つの板金部材が筒状構造を形成している。例えば、ミシンフレーム10のミシンアーム部モジュール20では、本体フレーム21と補強フレーム22とが筒状構造を形成している。
このため、ミシンアーム部モジュール20は、Y軸方向に直交する方向の撓みの発生を低減することができ、ミシンフレーム10の剛性をさらに向上させることが可能となる。
【0082】
また、上記ミシンアーム部モジュール20の筒状構造は、上軸123を内側に通さない配置で設けられている。
このため、筒状構造に遮られることなく上軸123にアクセスすることが可能となり、ミシンのメンテナンス性を向上させることが可能となる。
【0083】
また、上記ミシンフレーム10は、ミシンアーム部モジュール20とミシンベッド部モジュール40との間に、相互の位置合わせをする調節構造を備えている。
このため、ミシンフレーム10の組立の段階で、ミシンアーム部モジュール20とミシンベッド部モジュール40の相対的な位置関係の適正化を図ることが可能となる。これにより、例えば、釜軸と針棒を適正な相対的な位置に合わせることができ、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
また、上記調節構造が、長穴とネジで構成することにより、調節機構の構成の簡易化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0084】
また、ミシンフレーム10は、各所に部材間の接着部を有している。特に、ミシンアーム部モジュール20と立胴部モジュール30との結合部や立胴部モジュール30とミシンベッド部モジュール40との接合部に接着剤による接着部を設けている。
この接着部の効果を
図11と
図12とに基づいて説明する。
【0085】
図11は、ミシンフレーム10における周波数とイナータンス(固有値)の関係を示した線図である。
図11では、接着部を設けたミシンフレームの結果をNo.2の線図で示し、接着部を設けていないミシンフレームの結果をNo.1の線図で示している。
この結果によれば、接着部を有さないミシンフレームの場合には固有値が148[Hz]となり、接着部を有するミシンフレーム10の場合には固有値が172[Hz]となった。
このことから、接着部を設けることにより、固有値を変動させることができることが分かった。
【0086】
図12は、ミシンフレーム10における上軸回転数と振動レベルの関係を示した線図である。
図12では、接着部を設けたミシンフレームの結果をNo.2の線図で示し、接着部を設けていないミシンフレームの結果をNo.1の線図で示している。
この結果によれば、接着部の有無により振動レベルが変化することが分かった。また、固有振動数が接着部を設けていない場合には2800[sti/min]、接着部を設けている場合には3200[sti/min]と変化することが分かった。
【0087】
このように、ミシンフレーム10に接着部を設けることにより、周波数の固有値や固有振動数を調整することが可能となる。
また、接着部を設けることにより、硬化するまでの間にミシンフレーム10の各部の位置調節を行うことができ、調整を容易に行うことが可能となる。
特に、熱硬化性の接着剤を使用することにより、硬化するタイミングを任意に選択することができ、調整の作業性をさらに向上させることが可能となる。
【0088】
また、ミシンフレーム10の組立方法において、部材間を熱硬化性の接着剤で仮止めし、部材同士の位置決め後に、加熱して接着剤の接着部を硬化させて固定することにより、簡単に正確な位置調節を行うことが可能となる。
【0089】
[その他]
上記各実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0090】
10 ミシンフレーム
20 ミシンアーム部モジュール
21 本体フレーム
22 補強フレーム
30 立胴部モジュール
40 ミシンベッド部モジュール
121 ミシンモーター
123 上軸
150,160 治具
325,326,336,345,353,354,417 長穴