(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124642
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】作業機械のブーム制御システム
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20220819BHJP
E02F 9/22 20060101ALI20220819BHJP
F15B 11/044 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
E02F3/43 C
E02F9/22 E
F15B11/044
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022390
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山越 洋祐
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AC06
2D003BA01
2D003BB02
2D003CA02
2D003CA10
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB05
2D003FA02
3H089AA23
3H089BB15
3H089CC01
3H089DA03
3H089DA13
3H089DB45
3H089DB49
3H089DB54
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】用途に応じてブームフロート機能を調整可能な作業機械のブーム制御システムを提供する。
【解決手段】ブームシリンダ10は、ブーム6を駆動し、ヘッド側油室10hおよびボトム側油室10bを有する。第1バルブ21は、ヘッド側油室10hの油を油タンク25へ排出する第1開口部21cを有し、油圧ポンプ20からの油をヘッド側油室10hに供給する。第2バルブ22は、ボトム側油室10bの油を油タンク25へ排出する第2開口部22cを有し、油圧ポンプ20からの油をボトム側油室10bに供給する。コントローラ30は、ブーム6の操作を含む作業の際に、第1開口部21cの開口度合いD1と、第2開口部22cの開口度合いD2とを個別に制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームと、
前記ブームを駆動し、ヘッド側油室およびボトム側油室を有するブームシリンダと、
油圧ポンプと、
油タンクと、
前記油圧ポンプからの油を前記ヘッド側油室に供給し、前記油タンクへ排出する第1バルブと、
前記油圧ポンプからの油を前記ボトム側油室に供給し、前記油タンクへ排出する第2バルブと、を備えた作業機械のブーム制御システムにおいて、
前記第1バルブは前記ヘッド側油室の油を前記油タンクへ排出する第1開口部を有し、
前記第2バルブは前記ボトム側油室の油を前記油タンクへ排出する第2開口部を有し、
前記ブームの操作を含む作業の際に、前記第1開口部の開口度合いと、前記第2開口部の開口度合いとを個別に制御するコントローラをさらに備えることを特徴とする、作業機械のブーム制御システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記ブームおよび前記ブームシリンダを有する作業機の作業モードに基づいて前記第1開口部の開口度合いと、前記第2開口部の開口度合いとを個別に制御する、請求項1に記載の作業機械のブーム制御システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記作業モードがすきとりモードであるとの判定結果に基づいて前記第1開口部および前記第2開口部の双方を開くよう制御する、請求項2に記載の作業機械のブーム制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記作業モードがブレーカモードであるとの判定結果に基づいて前記第1開口部の開口度合いを前記第2開口部の開口度合いよりも小さくするよう制御する、請求項2に記載の作業機械のブーム制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記作業モードが掘削アシストモードであるとの判定結果に基づいて前記第2開口部の開口度合いを前記第1開口部の開口度合いよりも小さくするよう制御する、請求項2に記載の作業機械のブーム制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械のブーム制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特開平3-66838号公報(特許文献1)には、油圧ショベルなどの作業機械において、ブームフロート機能を搭載したものが開示されている。ブームフロート機能とは、油圧ポンプからブームシリンダへ作動油を吐出せずにブームシリンダのヘッド側油室およびボトム側油室を油タンクと連通することでブームの自由な揺動を可能とする機能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械は、様々な用途に利用される。このため近年、様々な用途に適用できるブームフロート機能が求められている。
【0005】
そこで本開示は、用途に応じてブームフロート機能を調整可能な作業機械のブーム制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の作業機械のブーム制御システムは、ブームと、ブームシリンダと、油圧ポンプと、油タンクと、第1バルブと、第2バルブとを備える作業機械のブーム制御システムである。ブームシリンダは、ブームを駆動し、ヘッド側油室およびボトム側油室を有する。第1バルブは、油圧ポンプからの油をヘッド側油室に供給し、油タンクへ排出する。第2バルブは、油圧ポンプからの油をボトム側油室に供給し、油タンクへ排出する。第1バルブは、ヘッド側油室の油を油タンクへ排出する第1開口部を有する。第2バルブは、ボトム側油室の油を油タンクへ排出する第2開口部を有する。作業機械のブーム制御システムは、ブームの操作を含む作業の際に、第1開口部の開口度合いと、第2開口部の開口度合いとを個別に制御するコントローラをさらに備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、用途に応じてブームフロート機能を調整可能な作業機械を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態における作業機械の構成を概略的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す作業機械のブーム制御システムの構成を示す図である。
【
図3】
図2に示すブーム制御システムの機能ブロックの一例を示す図である。
【
図4】本開示の一実施形態における作業機械のブーム制御方法の一例を示すフロー図である。
【
図5】すきとりモードにおける第1バルブおよび第2バルブの状態を示す図である。
【
図6】ブレーカモードにおける第1バルブおよび第2バルブの状態を示す図である。
【
図7】掘削アシストモードにおける第1バルブおよび第2バルブの状態を示す図である。
【
図8】すきとりモードにおけるブーム下げ操作量と第1バルブの開口度合いとの関係(A)と、ブーム下げ操作量と第2バルブの開口度合いとの関係(B)とを示す図である。
【
図9】ブレーカモードにおけるブーム下げ操作量と第1バルブの開口度合いとの関係(A)と、ブーム下げ操作量と第2バルブの開口度合いとの関係(B)とを示す図である。
【
図10】掘削アシストモードにおけるブーム上げ操作量と第1バルブの開口度合いとの関係(A)と、ブーム上げ操作量と第2バルブの開口度合いとの関係(B)とを示す図である。
【
図11】アタッチメントとしてブレーカを有する作業機械の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について図に基づいて説明する。
【0010】
明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。また、実施の形態と各変形例との少なくとも一部は、互いに任意に組み合わされてもよい。
【0011】
本開示は、油圧ショベル以外に、ブームとブームを駆動するブームシリンダとを有する作業機械であれば適用可能であり、ホイールローダなどのブーム操作を行う作業機械に適用可能である。以下の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」とは、
図1に示す運転室4内の運転席4Sに着座したオペレータを基準とした方向である。
【0012】
<作業機械の構成>
まず本実施形態の作業機械の構成を
図1を用いて説明する。
【0013】
図1は、本開示の一実施形態における作業機械の構成を概略的に示す斜視図である。
図1に示されるように、油圧ショベル100は、本体1と、油圧により作動する作業機2とを有している。本体1は、旋回体3と、走行体5とを有している。走行体5は、一対の履帯5Crと、走行モータ5Mとを有している。油圧ショベル100は、履帯5Crの回転により走行可能である。走行モータ5Mは、走行体5の駆動源として設けられている。走行モータ5Mは、油圧により作動する油圧モータである。なお、走行体5が車輪(タイヤ)を有していてもよい。
【0014】
旋回体3は、走行体5の上に配置され、かつ走行体5により支持されている。旋回体3は、旋回軸RXを中心として走行体5に対して旋回可能である。旋回体3は、運転室4(キャブ)を有している。運転室4内には、オペレータが着座する運転席4Sが設けられている。オペレータ(乗員)は、運転室4に搭乗して、作業機2の操作が可能であり、走行体5に対する旋回体3の旋回操作が可能であり、また走行体5による油圧ショベル100の走行操作が可能である。
【0015】
旋回体3は、エンジンカバー9と、旋回体3の後部に設けられるカウンタウェイトとを有している。エンジンカバー9は、エンジンルームを覆っている。エンジンルームには、エンジンユニット(エンジン、排気処理構造体など)が配置されている。
【0016】
作業機2は、旋回体3に支持されている。作業機2は、ブーム6と、アーム7と、バケット8とを有している。作業機2は、ブームシリンダ10と、アームシリンダ11と、バケットシリンダ12とをさらに有している。
【0017】
ブーム6は、本体1(走行体5および旋回体3)に回動可能に接続されている。具体的にはブーム6の基端部は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に回動可能に接続されている。
【0018】
アーム7は、ブーム6に回動可能に接続されている。具体的にはアーム7の基端部は、ブームトップピン14を支点としてブーム6の先端部に回動可能に接続されている。バケット8は、アーム7に回転可能に接続されている。具体的にはバケット8の基端部は、アームトップピン15を支点としてアーム7の先端部に回動可能に接続されている。
【0019】
ブームシリンダ10の一端は旋回体3に接続され、他端はブーム6に接続されている。ブーム6は、ブームシリンダ10により本体1に対して駆動可能である。この駆動により、ブーム6は、ブームフートピン13を支点として旋回体3に対して上下方向に回動可能である。
【0020】
アームシリンダ11の一端はブーム6に接続され、他端はアーム7に接続されている。アーム7は、アームシリンダ11によりブーム6に対して駆動可能である。この駆動により、アーム7は、ブームトップピン14を支点としてブーム6に対して上下方向または前後方向に回動可能である。
【0021】
バケットシリンダ12の一端はアーム7に接続され、他端はバケットリンクに接続されている。バケット8は、バケットシリンダ12によりアーム7に対して駆動可能である。この駆動により、バケット8は、アームトップピン15を支点としてアーム7に対して上下方向に回動可能である。
【0022】
<ブーム制御システムの構成>
次に、本実施形態のブーム制御システムの構成について
図2を用いて説明する。
【0023】
図2は、
図1に示す作業機械のブーム制御システムの構成を示す図である。
図2に示されるように、作業機械100におけるブーム6の制御システムは、ブームシリンダ10と、油圧ポンプ20と、第1バルブ21と、第2バルブ22と、チェックバルブ23、24と、油タンク25と、コントローラ(制御部)30と、操作装置16a~16cと、作業モード設定部17と、フロート切替部18とを有している。
【0024】
ブームシリンダ10は、ヘッド側油室10hと、ボトム側油室10bとを有している。油圧ポンプ20は、ブームシリンダ10のヘッド側油室10hおよびボトム側油室10bの各々に作動油を供給する。
【0025】
第1バルブ21は、開口部21a、21bと、第1開口部21cとを有している。開口部21aは、油圧ポンプ20に接続されるポートである。開口部21bは、ヘッド側油室10hに接続されるポートである。第1開口部21cは、油タンク25に接続されることにより、ヘッド側油室10hの作動油を油タンク25へ排出するためのポートである。
【0026】
第2バルブ22は、開口部22a、22bと、第2開口部22cとを有している。開口部22aは、油圧ポンプ20に接続されるポートである。開口部22bは、ボトム側油室10bに接続されるポートである。第2開口部22cは、油タンク25に接続されることにより、ボトム側油室10bの作動油を油タンク25へ排出するためのポートである。
【0027】
第1バルブ21および第2バルブ22の各々は、スプールを有している。第1バルブ21のスプールと第2バルブ22のスプールとは互いに同じ寸法で設計されている。
【0028】
ヘッド側油室10hと油圧ポンプ20との間には、第1バルブ21が接続されている。これにより作動油が、油圧ポンプ20から第1バルブ21を通じてヘッド側油室10hへ供給可能である。
【0029】
ヘッド側油室10hには、第1バルブ21を通じて油タンク25が接続されている。これによりヘッド側油室10h内の作動油は、第1バルブ21を通じて油タンク25へ排出可能である。
【0030】
ヘッド側油室10hは、チェックバルブ23を介在して油タンク25に接続されている。これにより油タンク25内の油は、チェックバルブ23を通じてヘッド側油室10h内に供給可能である。
【0031】
ボトム側油室10bと油圧ポンプ20との間には、第2バルブ22が接続されている。これにより作動油が、油圧ポンプ20から第2バルブ22を通じてボトム側油室10bへ供給可能である。
【0032】
ボトム側油室10bには、第2バルブ22を通じて油タンク25が接続されている。これによりボトム側油室10b内の作動油は、第2バルブ22を通じて油タンク25へ排出可能である。
【0033】
ボトム側油室10bは、チェックバルブ24を介在して油タンク25に接続されている。これにより油タンク25内の油は、チェックバルブ24を通じてボトム側油室10b内に供給可能である。
【0034】
操作装置16aは、たとえばオペレータがブーム6の動作を操作するための操作レバーである。操作装置16bは、たとえばオペレータがアーム7の動作を操作するための操作レバーである。操作装置16cは、たとえばオペレータがバケット8の動作を操作するための操作レバーである。操作装置16a~16cの各々における操作量は、たとえばポテンショメータ、ホールIC(Integrated Circuit)などによって検出され、制御信号としてコントローラ30に入力される。
【0035】
作業モード設定部17は、たとえばオペレータによって入力操作される入力装置である。作業モード設定部17は、たとえばタッチパネルよりなる表示装置であってもよい。この場合、作業モード設定部17に作業機2の複数の作業モードが表示される。作業機2の作業モードは、たとえばすきとりモード、ブレーカモード、掘削アシストモードなどである。オペレータは、作業モード設定部17に表示された複数の作業モードから1つを選択してタッチする。オペレータが選択した作業モードを示す信号が制御信号としてコントローラ30に入力される。
【0036】
すきとり作業とは、地面の表面を削って整地する作業である。ブレーカ作業とは、岩石または硬い地層を砕く作業である。
【0037】
フロート切替部18は、たとえば切替スイッチである。オペレータがフロート切替部18を操作することによって、ブームフロート機能の実行と非実行とが選択的に切り替え可能である。オペレータによって選択された実行または非実行の切替信号が制御信号としてコントローラ30に入力される。
【0038】
コントローラ30は、操作装置16a~16c、作業モード設定部17およびフロート切替部18の各々の制御信号を入力される。コントローラ30は、ブーム6の操作を含む作業の際に、入力された制御信号に基づいて、第1バルブ21および第2バルブ22の各々におけるスプールの動作を個別に制御する。これによりブーム6の操作を含む作業の際に、第1開口部21cにおける開口度合いと、第2開口部22cにおける開口度合いとがコントローラ30により個別に制御される。コントローラ30は、第1開口部21cおよび第2開口部22cの各々の開口度合いを、作業モード設定部17で選択された作業モードに基づいて個別に制御する。
【0039】
<ブーム制御システムの機能ブロックの構成>
次に、
図2に示すブーム制御システムの機能ブロックの構成について
図3を用いて説明する。
【0040】
図3は、
図2に示すブーム制御システムの機能ブロックの一例を示す図である。
図3に示されるように、コントローラ30は、作業モード判定部31と、フロート切替判定部32と、フロート動作開始判定部33と、第1バルブ制御部34と、第2バルブ制御部35とを有している。
【0041】
作業モード判定部31は、作業モード設定部17からの作業モードを示す制御信号を受ける。作業モード判定部31は、作業モード設定部17から入力された制御信号に基づいてオペレータが選択した作業モードを判定する。
【0042】
この作業モードには、たとえばすきとりモード、ブレーカモード、掘削アシストモードなどがある。すきとりモードは、すきとり作業時にバケット8が地面の凹凸に沿って動くようにブーム6をフロート状態にする設定である。ブレーカモードとは、
図11に示されるようにアタッチメントとしてブレーカ8aが用いられた場合に、ブレーカ8aによる作業機の振動を軽減する設定である。掘削アシストモードとは、掘削時にバケット8に掛かる負荷を逃すようにブーム6をフロート状態にする設定である。
【0043】
作業モード判定部31は、オペレータが選択した作業モードが、たとえばすきとりモード、ブレーカモードおよび掘削アシストモードのいずれなのかを判定する。作業モード判定部31は、判定信号をフロート切替判定部32へ出力する。
【0044】
フロート切替判定部32は、フロート切替部18からのブームフロート機能の実行または非実行の切替信号を受ける。フロート切替判定部32は、作業モード判定部31からの判定信号を受けると、フロート切替部18から入力された切替信号に基づいてブームフロート機能の実行および非実行のいずれが選択されたのかを判定する。フロート切替判定部32は、判定信号をフロート動作開始判定部33へ出力する。
【0045】
フロート動作開始判定部33は、オペレータによる操作装置16aの操作に基づいてブームフロート動作を開始するか否かを判定する。たとえば作業モードがすきとりモードまたはブレーカモードである場合には、フロート動作開始判定部33はブーム下げの操作信号に基づいてブームフロート動作開始の判定をする。また、たとえば作業モードが掘削アシストモードである場合には、フロート動作開始判定部33はブーム上げの操作信号に基づいてブームフロート動作開始の判定をする。
【0046】
フロート動作開始判定部33は、ブームフロート動作を開始するとの判定をした場合、操作装置16aの操作量に基づく制御信号を第1バルブ制御部34および第2バルブ制御部35の各々へ出力する。これにより操作装置16aからフロート動作開始判定部33へ操作信号が入力されたことをトリガーとしてブームフロート動作が開始される。
【0047】
第1バルブ制御部34は、フロート動作開始判定部33からの制御信号に基づいて第1バルブ21の動作を制御する。また第2バルブ制御部35は、フロート動作開始判定部33からの制御信号に基づいて第2バルブ22の動作を制御する。
【0048】
<ブーム制御方法>
次に、上記ブーム制御システムによるブーム制御方法について
図2~
図10を用いて説明する。
【0049】
図4は、本開示の一実施形態における作業機械のブーム制御方法の一例を示すフロー図である。
図5、
図6および
図7のそれぞれは、すきとりモード、ブレーカモードおよび掘削アシストモードにおける第1バルブおよび第2バルブの状態を示す図である。
図8、
図9および
図10のそれぞれは、すきとりモード、ブレーカモードおよび掘削アシストモードにおけるブーム操作量と第1バルブの開口度合いとの関係(A)と、ブーム操作量と第2バルブの開口度合いとの関係(B)とを示す図である。
【0050】
図3および
図4に示されるように、オペレータは、作業モード設定部17にて作業モードの入力操作を行う。この際、オペレータは、たとえば作業モード設定部17に表示された複数の作業モードのいずれか1つをタッチ操作する。これにより作業モード設定部17において1つの作業モードが選択される。
【0051】
複数の作業モードは、上記のとおり、たとえばすきとりモードと、ブレーカモードと、掘削アシストモードとを含む。オペレータの上記入力操作により、たとえばすきとりモード、ブレーカモードおよび掘削アシストモードのいずれか1つが選択される。オペレータが選択した作業モードを示す信号が制御信号としてコントローラ30の作業モード判定部31に入力される(ステップS1:
図4)。
【0052】
作業モード判定部31は、作業モード設定部17から作業モードを示す制御信号を受けると、その制御信号に基づいてオペレータが選択した作業モードを判定する(ステップS2)。たとえば、作業モード判定部31は、オペレータが選択した作業モードがすきとりモード、ブレーカモードおよび掘削アシストモードのいずれであるのかを判定する。
【0053】
(すきとりモード)
作業モード判定部31により判定された作業モードがすきとりモードである場合、フロート切替判定部32は、フロート切替部18からの切替信号に基づいて、ブームフロート機能が有効か否かを判定する(ステップS3a:
図4)。
【0054】
フロート切替判定部32がブームフロート機能が無効であると判定した場合、通常制御が行われる(ステップS4a:
図4)。通常制御においては、操作装置16a~16c(
図2)の操作量に応じてブーム6、アーム7およびバケット8(
図1)が駆動する。
【0055】
フロート切替判定部32がブームフロート機能が有効であると判定した場合、フロート動作開始判定部33は、フロート動作を開始するか否かの判定を行う。フロート動作を開始するか否かの判定は、オペレータによるブーム下げ操作が行われたか否かにより行われる(ステップS5a:
図4)。フロート動作開始判定部33は、オペレータによるブーム下げ操作が行われたか否かを、操作装置16aから入力される操作信号に基づいて判定する。
【0056】
ブーム下げ操作が行われていないとフロート動作開始判定部33が判定した場合、通常制御が行われる(ステップS4a:
図4)。
【0057】
ブーム下げ操作が行われたとフロート動作開始判定部33が判定した場合、第1バルブ制御部34が第1バルブ21の動作を制御し、第2バルブ制御部35が第2バルブ22の動作を制御する。これにより
図5に示されるように、第1バルブ21の第1開口部21cと第2バルブ22の第2開口部22cとが開くように第1バルブ21および第2バルブ22の各々の動作が制御される(ステップS6a:
図4)。
【0058】
第1バルブ21は、開口部21a、21bおよび第1開口部21cの各々の開閉を制御するスプール21sを有している。第2バルブ22は、開口部22a、22bおよび第2開口部22cの各々の開閉を制御するスプール22sを有している。第1バルブ21および第2バルブ22の各々は、たとえばソレノイド(図示せず)を有している。
【0059】
コントローラ30は、第1バルブ21のソレノイドに電気信号を入力することにより第1バルブ21のスプール21sを駆動制御する。これにより第1バルブ21の開口部21bおよび第1開口部21cの各々が開くようにスプール21sの動作が制御される。これによりブームシリンダ10のヘッド側油室10hにおける作動油を開口部21bおよび第1開口部21cを通じて油タンク25へ排出することが可能となる。
【0060】
コントローラ30は、第2バルブ22のソレノイドに電気信号を入力することにより第2バルブ22のスプール22sを駆動制御する。これにより第2バルブ22の開口部22bおよび第2開口部22cの各々が開くようにスプール22sの動作が制御される。これによりブームシリンダ10のボトム側油室10bにおける作動油を開口部22bおよび第2開口部22cを通じて油タンク25へ排出することが可能となる。
【0061】
図5に示されるように、すきとりモードにおいてブームシリンダ10が伸長する場合には、ヘッド側油室10h内の作動油が第1バルブ21を介して油タンク25へ排出され、ボトム側油室10bには油タンク25内の油がチェックバルブ24を通じて供給される。また、すきとりモードにおいてブームシリンダ10が収縮する場合には、ボトム側油室10b内の作動油が第2バルブ22を介して油タンク25へ排出され、ヘッド側油室10hには油タンク25内の油がチェックバルブ23を通じて供給される。
【0062】
すきとりモードにおいては、操作装置16aによるブーム6の下げ操作量に応じて第1開口部21cおよび第2開口部22cの各々の開口度合いD1、D2が制御される。具体的には、
図8(A)に示されるように、コントローラ30は、操作装置16aによるブーム6の下げ操作量が大きくなるほど、第1開口部21cの開口度合いD1が大きくなるように第1バルブ21を制御する。また
図8(B)に示されるように、コントローラ30は、操作装置16aによるブーム6の下げ操作量が大きくなるほど、第2開口部22cの開口度合いD2が大きくなるように第2バルブ22を制御する。
【0063】
図8(A)および
図8(B)に示されるように、ブーム下げ操作量に対する第1開口部21cの開口度合いD1と第2開口部22cの開口度合いD2とは略同一とされてもよい。
【0064】
(ブレーカモード)
図3および
図4に示されるように、作業モード判定部31により判定された作業モードがブレーカモードである場合、フロート切替判定部32がブームフロート機能が有効か否かを判定する(ステップS3b:
図4)。フロート切替判定部32は、フロート切替部18からの切替信号に基づいて、ブームフロート機能が有効か否かの判定を行う。
【0065】
フロート切替判定部32がブームフロート機能が無効であると判定した場合、通常制御が行われる(ステップS4b:
図4)。
【0066】
フロート切替判定部32がブームフロート機能が有効であると判定した場合、フロート動作開始判定部33は、フロート動作を開始するか否かの判定を行う。フロート動作を開始するか否かの判定は、オペレータによるブーム下げ操作が行われたか否かにより行われる(ステップS5b:
図4)。フロート動作開始判定部33は、オペレータによるブーム下げ操作が行われたか否かを、操作装置16aから入力される操作信号に基づいて判定する。
【0067】
ブーム下げ操作が行われていないとフロート動作開始判定部33が判定した場合、通常制御が行われる(ステップS4b:
図4)。
【0068】
またブーム下げ操作が行われたとフロート動作開始判定部33が判定した場合、第1バルブ制御部34が第1バルブ21の動作を制御し、第2バルブ制御部35が第2バルブ22の動作を制御する。これにより
図6に示されるように、第1バルブ21における第1開口部21cの開口度合いD1が第2バルブ22における第2開口部22cの開口度合いD2より小さくなるように第1バルブ21および第2バルブ22の各々の動作が制御される(ステップS6b:
図4)。
【0069】
ブレーカモードにおいては、開口部21aが閉じ、開口部21bと第1開口部21cとが開くようにスプール21sがコントローラ30により制御される。これによりブームシリンダ10のヘッド側油室10hにおける作動油を開口部21bおよび第1開口部21cを通じて油タンク25へ排出することが可能となる。
【0070】
また、ブレーカモードにおいては、開口部22aが閉じ、開口部22bと第2開口部22cとが開くようにスプール22sがコントローラ30により制御される。これによりブームシリンダ10のボトム側油室10bにおける作動油を開口部22bおよび第2開口部22cを通じて油タンク25へ排出することが可能となる。
【0071】
ここでコントローラ30は、第1開口部21cの開口度合いD1が第2開口部22cの開口度合いD2より小さくなるように制御する。このため、
図9(A)および
図9(B)に示されるように、ブーム下げ操作量が大きくなるほど開口度合いD1、D2の双方が大きくなるが、開口度合いD1の増加割合は開口度合いD2の増加割合よりも小さくなる。
【0072】
なおブレーカモードにおいては、第1開口部21cはスプール21sにより完全に閉じられてもよい。
【0073】
図6に示されるように、ブレーカモードにおいてブームシリンダ10が伸長する場合には、ヘッド側油室10h内の作動油が第1バルブ21を介して油タンク25へ排出され、ボトム側油室10bには油タンク25内の油がチェックバルブ24を通じて供給される。また、ブレーカモードにおいてブームシリンダ10が収縮する場合には、ボトム側油室10b内の作動油が第2バルブ22を介して油タンク25へ排出され、ヘッド側油室10hには油タンク25内の油がチェックバルブ23を通じて供給される。
【0074】
(掘削アシストモード)
図3および
図4に示されるように、作業モード判定部31により判定された作業モードが掘削アシストモードである場合、フロート切替判定部32がブームフロート機能が有効か否かを判定する(ステップS3c:
図4)。フロート切替判定部32は、フロート切替部18からの切替信号に基づいて、ブームフロート機能が有効か否かの判定を行う。
【0075】
フロート切替判定部32がブームフロート機能が無効であると判定した場合、通常制御が行われる(ステップS4c:
図4)。
【0076】
フロート切替判定部32がブームフロート機能が有効であると判定した場合、フロート動作開始判定部33は、フロート動作を開始するか否かの判定を行う。フロート動作を開始するか否かの判定は、オペレータによるブーム上げ操作が行われたか否かにより行われる(ステップS5c:
図4)。フロート動作開始判定部33は、オペレータによるブーム上げ操作が行われたか否かを、操作装置16aから入力される操作信号に基づいて判定する。
【0077】
ブーム上げ操作が行われていないとフロート動作開始判定部33が判定した場合、通常制御が行われる(ステップS4c:
図4)。
【0078】
またブーム上げ操作が行われたとフロート動作開始判定部33が判定した場合、第1バルブ制御部34が第1バルブ21の動作を制御し、第2バルブ制御部35が第2バルブ22の動作を制御する。これにより
図7に示されるように、第2開口部22cの開口度合いD2が第1開口部21cの開口度合いD1より小さくなるように制御される(ステップS6c:
図4)。この際、第2開口部22cはたとえば閉じられる。
【0079】
掘削アシストモードにおいては、開口部21bと第1開口部21cとが開くようにスプール21sがコントローラ30により制御される。これによりブームシリンダ10のヘッド側油室10hにおける作動油を開口部21bおよび第1開口部21cを通じて油タンク25へ排出することが可能となる。
【0080】
また、掘削アシストモードにおいては、第2開口部22cの開口度合いD2が第1開口部21cの開口度合いD1より小さくなるか、または0とされる(閉じられる)。好ましくは第2開口部22cは完全に閉じられる。
【0081】
掘削アシストモードにおいては、操作装置16aによるブーム6の上げ操作量に応じて第1開口部21cおよび第2開口部22cの各々の開口度合いが制御される。具体的には、
図10(A)に示されるように、コントローラ30は、操作装置16aによるブーム6の上げ操作量が大きくなるほど、第1開口部21cの開口度合いD1が大きくなるように第1バルブ21を制御する。また
図10(B)に示されるように、操作装置16aによるブーム6の上げ操作量が大きくなっても、第2開口部22cの開口度合いD2はほとんど大きくならないか、または第2開口部22cは閉じたままである。
【0082】
以上説明したように本実施形態においては、コントローラ30は、第1バルブ21における第1開口部21cの開口度合いD1と、第2バルブ22における第2開口部22cの開口度合いD2とを個別に制御する。
【0083】
またコントローラ30は、作業機2の作業モード(たとえばすきとりモード、ブレーカモード、掘削アシストモード)に基づいて開口度合いD1、D2を個別に制御する。
【0084】
コントローラ30は、作業モードがすきとりモードであるとの判定結果に基づいて、
図5および
図8(A)、(B)に示されるように第1開口部21cおよび第2開口部22cの双方を開くよう制御する。コントローラ30は、作業モードがブレーカモードであるとの判定結果に基づいて、
図6および
図9(A)、(B)に示されるように開口度合いD1を開口度合いD2よりも小さくするよう制御する。コントローラ30は、作業モードが掘削アシストモードであるとの判定結果に基づいて、
図7および
図10(A)、(B)に示されるように開口度合いD2を開口度合いD1よりも小さくするよう制御する。
【0085】
<効果>
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0086】
本実施形態においては
図5~
図7に示されるように、コントローラ30は、第1バルブ21における第1開口部21cの開口度合いD1と、第2バルブ22における第2開口部22cの開口度合いD2とを個別に制御する。これによりブームシリンダ10のヘッド側油室10hとボトム側油室10bとの作動油を個別に油タンク25へ排出制御することができる。このため、スプールにブームフロート用の開口を設けることなく、またメインバルブとは別にブームフロート機能切替用のバルブを準備することなく、用途に応じてブームフロート機能を調整することが可能となる。
【0087】
また本実施形態においてコントローラ30は、作業機2の作業モード(たとえばすきとりモード、ブレーカモード、掘削アシストモード)に基づいて開口度合いD1、D2を個別に制御する。これにより、すきとりモード、ブレーカモード、掘削アシストモードなどの用途に応じてブームフロート機能を調整可能な作業機械を実現することができる。
【0088】
また本実施形態において
図5および
図8(A)、(B)に示されるように、コントローラ30は、作業モードがすきとりモードであるとの判定結果に基づいて、第1開口部21cおよび第2開口部22cの双方を開くよう制御する。
【0089】
これにより、ブーム6が外力に応じて上下方向に自由に動くことが可能となる。このため、すきとり作業時にバケット8が地面の凹凸に沿って動くことが容易となる。またバケット8が空中に位置する状態でブームフロート機能が実行されることにより、作業機2の自重によってブーム6が地面に接するまでブームを下降させることが可能となる。
【0090】
また
図11に示されるように、アタッチメントとしてブレーカ8aが用いられる場合、チゼル8aaが空打ちを行うと、リテーナピン、チゼル8aaなどの欠け、チゼルホルダの損傷が発生しやすくなる。このためブレーカ8aを動作させる場合には、チゼル8aaの先端が破砕対象物に接している必要がある。
【0091】
本実施形態において
図6および
図9(A)、(B)に示されるように、コントローラ30は、作業モードがブレーカモードであるとの判定結果に基づいて、開口度合いD1を開口度合いD2よりも小さくするよう制御する。
【0092】
これによりブーム6は下げ側(ブームシリンダ10が収縮する側)に動きやすくなるが、上げ側(ブームシリンダ10が伸長する側)に動きにくくなる。このためブレーカモードにおいてはチゼル8aaの先端が破砕対象物から離れることが抑制され、リテーナピン、チゼル8aaなどの欠け、チゼルホルダの損傷などを防止することができる。
【0093】
また解体などの場合、硬い対象物を破砕することがある。この場合、破砕による負荷を逃がさないと、作業機2が破損するおそれがある。
【0094】
本実施形態において
図7および
図10(A)、(B)に示されるように、コントローラ30は、作業モードが掘削アシストモードであるとの判定結果に基づいて、開口度合いD2を開口度合いD1よりも小さくするよう制御する。
【0095】
これによりブーム6は下げ側(ブームシリンダ10が収縮する側)に動きにくいが、上げ側(ブームシリンダ10が伸長する側)に動きやすくなる。このため硬い対象物を掘削する場合に、ブーム6が上げ側に逃げることにより、掘削による負荷を逃がすことができる。よって作業機2の耐久性を向上することが可能となる。
【0096】
なお上記の実施形態において
図2および
図3の各々に示されるコントローラ30は、作業機械100に搭載されていてもよく、作業機械100の外部に離れて配置されていてもよい。コントローラ30が作業機械100の外部に離れて配置されている場合、コントローラ30は、作業モード設定部17、フロート切替部18、操作装置16a~16c、第1バルブ21、第2バルブ22などと無線により接続されていてもよい。コントローラ30は、たとえばプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0098】
1 本体、2 作業機、3 旋回体、4 運転室、4S 運転席、5 走行体、5Cr 履帯、5M 走行モータ、6 ブーム、7 アーム、8 バケット、8a ブレーカ、8aa チゼル、9 エンジンカバー、10 ブームシリンダ、10b ボトム側油室、10h ヘッド側油室、11 アームシリンダ、12 バケットシリンダ、13 ブームフートピン、14 ブームトップピン、15 アームトップピン、16a,16b,16c 操作装置、17 作業モード設定部、18 フロート切替部、20 油圧ポンプ、21 第1バルブ、21a,21b,22a,22b 開口部、21c 第1開口部、21s,22s スプール、22 第2バルブ、22c 第2開口部、23,24 チェックバルブ、25 油タンク、30,50 コントローラ、31 作業モード判定部、32 フロート切替判定部、33 フロート動作開始判定部、34 第1バルブ制御部、35 第2バルブ制御部、50k 記憶部、100 油圧ショベル、D1,D2 開口度合い、RX 旋回軸。