(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124646
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】車両用主電動機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20220819BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K9/06 G
H02K9/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022394
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓弥
【テーマコード(参考)】
5H609
5H611
【Fターム(参考)】
5H609BB02
5H609BB19
5H609PP02
5H609QQ02
5H609QQ10
5H609RR06
5H609RR37
5H609RR38
5H611AA01
5H611BB01
5H611BB05
5H611PP07
5H611QQ03
5H611RR02
5H611UA07
(57)【要約】
【課題】軸方向のサイズが短縮した車両用主電動機Aを提供する。
【解決手段】車両用主電動機Aでは、電動機ケース4内の空間Sで回転軸1に固定して配置される冷却ファン3は、回転軸1に固定された主板31と、主板31の外周寄りの部分に空隙cを存して対向する環状で磁性材料製の整流板32と、主板31と整流板32との間の空隙cに周方向に間隔を存して設けられた多数の羽根33とを有すると共に、冷却ファン3は、主板31と羽根33とが一体成型されたファン本体34及びファン本体34に締結される整流板32との2部材で構成され、整流板32の外周面に多数の歯を形成することで、整流板32が、回転検出器11の磁性材料製のパルサギヤ111を兼用する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機ケースと、この電動機ケース内に軸受を介して軸支される回転軸と、この回転軸に固定される回転子と、この回転子を囲うように電動機ケース内に固定される固定子と、電動機ケース内の空間で回転軸に固定して配置される冷却ファンと、回転軸の回転速度を検出する回転検出器とを備える車両用主電動機であって、
冷却ファンは、回転軸に固定された主板と、主板の外周寄りの部分に空隙を存して対向する環状の整流板と、主板と整流板との間の空隙に周方向に間隔を存して設けられた多数の羽根とを有し、
回転検出器は、冷却ファンに固定された磁性材料製のパルサギヤと、このパルサギヤと対向するように電動機ケースに設置された磁気センサとで構成されるものにおいて、
冷却ファンは、主板と羽根が一体成型されたファン本体と、このファン本体に締結される磁性材料製の整流板との2部材で構成され、整流板の外周面に多数の歯が形成されることで、整流板がパルサギヤを兼用することを特徴とする車両用主電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機ケースと、この電動機ケース内に軸受を介して軸支される回転軸と、この回転軸に固定される回転子と、回転軸の回転速度を検出する回転検出器とを備える車両用主電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用主電動機として、回転子を囲うように電動機ケース内に固定される固定子と、電動機ケース内の空間に回転軸に固定して配置される冷却ファンとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、冷却ファンは、回転軸に固定された主板と、固定子及び回転子の配置部側を向く主板の面の外周寄りの部分に空隙を存して対向する環状の整流板と、主板と整流板との間の空隙に周方向に間隔を存して設けられた多数の羽根とを有し、主板、整流板及び羽根は、砂型で一体成型されている。
【0003】
ところで、車両用主電動機には、回転軸の回転速度を測定するために回転検出器を設けたものもある。この回転検出器は、一般に、冷却ファンに固定された磁性材料製のパルサギヤと、このパルサギヤに対向するように電動機ケースに設置された磁気センサとで構成される。
【0004】
然し、既存の車両用主電動機では、パルサギヤを冷却ファンの整流板とは反対側に位置する側面に固定している。このため、電動機ケースの、回転軸の軸方向のサイズが、パルサギヤに要するスペース分大きくなっていた。車両用主電動機の小型化を推進するためには、車両用主電動機の回転軸の軸方向のサイズを短縮することが要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、回転軸の軸方向のサイズが短縮した車両用主電動機を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、電動機ケースと、この電動機ケース内に軸受を介して軸支される回転軸と、この回転軸に固定される回転子と、この回転子を囲うように電動機ケース内に固定される固定子と、電動機ケース内の空間で回転軸に固定して配置される冷却ファンと、回転軸の回転速度を検出する回転検出器とを備える車両用主電動機であって、冷却ファンは、回転軸に固定された主板と、主板の外周寄りの部分に空隙を存して対向する環状の整流板と、主板と整流板との間の空隙に周方向に間隔を存して設けられた多数の羽根とを有し、回転検出器は、冷却ファンに固定された磁性材料製のパルサギヤと、このパルサギヤと対向するように電動機ケースに設置された磁気センサとで構成されるものにおいて、冷却ファンは、主板と羽根が一体成型されたファン本体と、このファン本体に締結される磁性材料製の整流板との2部材で構成され、整流板の外周面に多数の歯が形成されることで、整流板がパルサギヤを兼用することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、整流板がパルサギヤを兼用するため、電動機ケース内のパルサギヤを固定するスペースが不要になる。従って、電動機ケースの、回転軸の軸方向のサイズが短縮して、回転軸の軸方向のサイズが短縮した車両用主電動機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の車両用主電動機の一実施形態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照して、本実施形態の車両用主電動機Aについて説明する。車両用主電動機Aは、例えば、歯車装置等に連結される回転軸1が設けられ、回転子2、冷却ファン3等を内蔵する中空の電動機ケース4内の空間に、冷却ファン3の回転によって外気を取り込んで回転軸1、回転子2等を冷却する開放型の車両用主電動機である。
【0011】
回転軸1は、電動機ケース4に軸方向に一対として設けた軸受5a,5bを介して軸支されている。軸受5aは、回転軸1が連結される歯車装置等の駆動側に位置し、軸受5bは、歯車装置等とは反対側の反駆動側に位置している。電動機ケース4は、軸受5a側に位置する中空なブラケット41と、ブラケット41にフランジ等を介して締結される、中空なフレーム42とを備えている。回転子2は、図示省略の複数枚の電磁鋼板を軸方向に積層して構成され、これらの電磁鋼板が、一対の回転子押え21a,21bによって回転軸1の軸方向の一方側(
図1の左側)及び他方側(
図1の右側)の両側から挟み付けられて、回転軸1上に固定されている。電動機ケース4内には、回転子2を囲うように固定子6が配置され、電動機ケース4の周壁を形成するフレーム42の部分の内周面に固定されている。冷却ファン3は、電動機ケース4内の空間Sで回転軸1の駆動側の部分に固定されて配置されている。
【0012】
冷却ファン3は、回転軸1の駆動側の部分に固定され、ブラケット41の空間S側の内面に沿ってのびる主板31と、回転子2及び固定子6の配置部側を向く主板31の面(
図1の右側の面)の外周寄りの部分に空隙cを存して対向する環状で磁性材料製の整流板32と、主板31と整流板32との間の空隙cに周方向に間隔を存して設けられた多数の羽根33とを有している。主板31と羽根33とは一体成型され、ファン本体34を構成している。即ち、冷却ファン3は、ファン本体34と、ファン本体34に主板31側から螺入されるボルトBで締結される整流板32との2部材で構成されている。
【0013】
電動機ケース4には、その周壁を形成するフレーム42の部分の反駆動側に、入気口421と、フレーム42の、電動機ケース4の周壁を形成する部分の駆動側に、図示省略の排気口とが開設され、入気口421及び上記排気口は共に電動機ケース4の内外を連通する。回転子2と共に回転軸1が回転する時、冷却ファン3が回転し、入気口421から外気が電動機ケース4内に導入され、空間Sを反駆動側から駆動側に向かって外気が流通し、この時、回転軸1、回転子2及びその周辺の部分が冷却される。冷却した外気は上記排気口から排気される。
【0014】
尚、車両用主電動機Aでは、軸受5aの外輪の駆動側の端面に、回転軸1に固定の油切り部材7を介して取り付けられる第1軸受押え8aが当接し、軸受5aが抜け止めされている。また、軸受5bの外輪の反駆動側の端面に、回転軸1に固定の第2軸受押え8bが当接し、軸受5bが抜け止めされている。更に、第1軸受押え8a及び第2軸受押え8bの夫々には、軸受5a,5bに臨むようにグリス等の潤滑剤を収納する収納部9a,9bが形成されている。そして、軸受5a,5b付近の電動機ケース4内にはラビリンスシール10a,10bが設けられ、軸受5a,5bの潤滑に用いられる潤滑剤の電動機ケース4内への浸入を防止している。
【0015】
また、車両用主電動機Aは、回転軸1の回転速度を検出する回転検出器11を備えている。回転検出器11は、電動機ケース4内の空間Sのブラケット41側に収納された磁性材料製のパルサギヤ111と、パルサギヤ111と対向するように電動機ケース4のブラケット41に設置された磁気センサ112とで構成されている。尚、車両用主電動機Aでは、冷却ファン3の整流板32の外周面に多数の歯を形成することで、整流板32がパルサギヤ111を兼用している。このため、車両用主電動機Aでは、電動機ケース4内のパルサギヤ111を固定するスペースが不要であり、電動機ケース4の、回転軸1の軸方向のサイズが既存の車両用主電動機に比べて短縮している。従って、車両用主電動機Aは、回転軸1の軸方向のサイズが短縮したものになっている。
【0016】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、車両用主電動機Aは、冷却ファン3の回転に伴って電動機ケース4内に外気を取り込み、空間Sを流通させて回転軸1、回転子2等を冷却する開放型の車両用主電動機であるが、密閉型の車両用主電動機に本発明を適用することもできる。この場合、電動機ケース4のフレーム42の入気口421及び排気口を省略する。密閉型の車両用主電動機では、回転軸1が回転すると同時に冷却ファン3が回転することによって、電動機ケース4内の空気が循環し、回転軸1、回転子2等を冷却することができる。このような密閉型の車両用主電動機も、車両用主電動機Aと同様に、整流板32がパルサギヤ111を兼用するため、回転軸1の軸方向のサイズが短縮する。
【0017】
また、冷却ファン3及び冷却ファン3を構成し、パルサギヤ111を兼用する整流板32は、回転軸1の駆動側の部分ではなく、反駆動側の部分にも同様に設けることができる。更に、パルサギヤ111を兼用する整流板32は、ブラケット41の空間S側の内面に対向する部分で、主板31との間に空隙cを存して設けることができる。この場合も、磁気センサ112は、パルサギヤ111を兼用する整流板32と対向するように電動機ケース4のブラケット41に設置する。そして、冷却ファン3及び整流板32が回転軸1の反駆動側の部分に設けられる場合、整流板32は、回転子2及び固定子6の配置部側を向く主板31の面又はブラケット41の空間S側の内面に対向する部分で、主板31との間に空隙cを存して設けることができる。
【符号の説明】
【0018】
A…車両用主電動機、1…回転軸、2…回転子、3…冷却ファン、31…主板、32…整流板、33…ファン本体、4…電動機ケース、5a,5b…軸受、6…固定子、11…回転検出器、111…パルサギヤ、112…磁気センサ、S…空間、c…空隙。