(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124664
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
G09G 3/20 20060101AFI20220819BHJP
G09G 3/36 20060101ALI20220819BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
G09G3/20 670N
G09G3/36
G09G3/20 680B
G02B27/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022429
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋塚 義弘
【テーマコード(参考)】
2H199
5C006
5C080
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA26
2H199DA35
5C006AA22
5C006AF63
5C006EC11
5C006FA19
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD20
5C080JJ02
5C080JJ05
5C080JJ06
5C080JJ07
5C080KK20
5C080KK23
(57)【要約】
【課題】スクリーンに向かうレーザ光の光量を減らすことなく、レーザ光の波長を精度良く検出して画質を改善できる表示装置を提供する。
【解決手段】レーザ光を出射する光源部2と、光源部2が出射するレーザ光の光路上に配置され、スクリーンに画像を描画するために、レーザ光の空間的な分布を変調させる変調パターンを可変可能な空間光変調器4と、入力画像データに基づいて空間光変調器4に変調パターン信号を出力する制御部6と、を備える表示装置1であって、空間光変調器4の0次光に非点収差を付与する非点収差光学系7と、0次光の非点収差を検出する4分割光検出器8と、を備え、制御部6は、4分割光検出器8の検出値に基づいてレーザ光の波長を演算する波長演算手段と、演算した波長に基づいて変調パターン信号を補正する変調パターン補正手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源部と、
前記光源部が出射するレーザ光の光路上に配置され、スクリーンに画像を描画するために、レーザ光の空間的な分布を変調させる変調パターンを可変可能な空間変調器と、
入力画像データに基づいて前記空間光変調器に変調パターン信号を出力する制御部と、を備える表示装置であって、
前記空間光変調器の0次光に非点収差を付与する非点収差光学系と、
0次光の非点収差を検出する4分割光検出器と、を備え、
前記制御部は、
前記4分割光検出器の検出値に基づいてレーザ光の波長を演算する波長演算手段と、
演算した前記波長に基づいて前記変調パターン信号を補正する変調パターン補正手段と、を備える、表示装置。
【請求項2】
前記光源部は、赤色レーザ発光部、緑色レーザ発光部、及び青色レーザ発光部を含み、
前記変調パターン信号は、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号を含み、
前記制御部は、前記赤色レーザ発光部、前記緑色レーザ発光部、及び前記青色レーザ発光部を時分割で順次駆動させつつ、それに同期して前記赤色用変調パターン信号、前記緑色用変調パターン信号、及び前記青色用変調パターン信号を前記空間光変調器に順次出力することで、1つの前記空間光変調器で前記スクリーンに画像を描画させ、
前記非点収差光学系及び前記4分割光検出器は、1つの前記空間光変調器に対応して1組が設けられ、
前記波長演算手段は、前記赤色レーザ発光部、前記緑色レーザ発光部、及び前記青色レーザ発光部の順次駆動に同期して前記4分割光検出器の検出値を取得し、取得した検出値に基づいて、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の波長を演算し、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記波長に基づいて、前記赤色用変調パターン信号、前記緑色用変調パターン信号、及び前記青色用変調パターン信号をそれぞれ補正する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記光源部は、赤色レーザ発光部、緑色レーザ発光部、及び青色レーザ発光部を含み、
前記空間光変調器は、赤色用空間光変調器、緑色用空間光変調器、及び青色用空間光変調器を含み、
前記変調パターン信号は、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号を含み、
前記制御部は、前記赤色レーザ発光部、前記緑色レーザ発光部、及び前記青色レーザ発光部を同時に駆動させつつ、前記赤色用変調パターン信号を前記赤色用空間光変調器に、前記緑色用変調パターン信号を前記緑色用空間光変調器に、前記青色用変調パターン信号を前記青色用空間光変調器にそれぞれ出力することで、前記スクリーンに画像を描画させ、
前記非点収差光学系及び前記4分割光検出器は、前記赤色用空間光変調器、前記緑色用空間光変調器、及び前記青色用空間光変調器に対応して3組が設けられ、
前記波長演算手段は、3つの前記4分割光検出器の検出値に基づいて、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の波長を演算し、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記波長に基づいて、前記赤色用変調パターン信号、前記緑色用変調パターン信号、及び前記青色用変調パターン信号をそれぞれ補正する、請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記4分割光検出器は、前記空間光変調器から前記スクリーンまでの距離と、前記空間光変調器から前記4分割光検出器までの距離とが同じになるように配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記4分割光検出器の検出値に基づいてレーザ光の光軸ずれを演算する光軸ずれ演算手段をさらに備え、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記光軸ずれに基づいて前記変調パターン信号を補正する、請求項1~4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記4分割光検出器の検出値に基づいてレーザ光の光強度を演算する光強度演算手段をさらに備え、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記光強度に基づいて前記変調パターン信号を補正する、請求項1~5のいずれか1項に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドアップディスプレイなどの表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を光源とする表示装置では、温度変動に応じてレーザ光源の波長がシフトし、画質が低下する可能性がある。
【0003】
特許文献1、2には、レーザ光の波長を検出し、検出した波長に基づいて、画像の表示位置やカラーバランスを調整することで、波長変化に伴う画質の低下を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2011/132407号
【特許文献2】特開2014-197044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、画像を投影するスクリーン上において、通常描画しないエリアの瞬間的な光量に基づいてレーザ光の波長を推測しているため、精度の高い波長検出が難しい。
【0006】
また、特許文献2では、スクリーンに向かうメインのレーザ光を分光して波長を検出しているため、スクリーンに向かうレーザ光の光量が減り、投影される画像が暗くなる虞がある。
【0007】
そこで、本開示は、スクリーンに向かうレーザ光の光量を減らすことなく、レーザ光の波長を精度良く検出して画質を改善できる表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの側面では、以下のような解決手段を提供する。
【0009】
(1) レーザ光を出射する光源部と、
前記光源部が出射するレーザ光の光路上に配置され、スクリーンに画像を描画するために、レーザ光の空間的な分布を変調させる変調パターンを可変可能な空間変調器と、
入力画像データに基づいて前記空間光変調器に変調パターン信号を出力する制御部と、を備える表示装置であって、
前記空間光変調器の0次光に非点収差を付与する非点収差光学系と、
0次光の非点収差を検出する4分割光検出器と、を備え、
前記制御部は、
前記4分割光検出器の検出値に基づいてレーザ光の波長を演算する波長演算手段と、
演算した前記波長に基づいて前記変調パターン信号を補正する変調パターン補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
(2) (1)の構成において、
前記光源部は、赤色レーザ発光部、緑色レーザ発光部、及び青色レーザ発光部を含み、
前記変調パターン信号は、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号を含み、
前記制御部は、前記赤色レーザ発光部、前記緑色レーザ発光部、及び前記青色レーザ発光部を時分割で順次駆動させつつ、それに同期して前記赤色用変調パターン信号、前記緑色用変調パターン信号、及び前記青色用変調パターン信号を前記空間光変調器に順次出力することで、1つの前記空間光変調器で前記スクリーンに画像を描画させ、
前記非点収差光学系及び前記4分割光検出器は、1つの前記空間光変調器に対応して1組が設けられ、
前記波長演算手段は、前記赤色レーザ発光部、前記緑色レーザ発光部、及び前記青色レーザ発光部の順次駆動に同期して前記4分割光検出器の検出値を取得し、取得した検出値に基づいて、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の波長を演算し、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記波長に基づいて、前記赤色用変調パターン信号、前記緑色用変調パターン信号、及び前記青色用変調パターン信号をそれぞれ補正することを特徴とする。
【0011】
(3) (1)の構成において、
前記光源部は、赤色レーザ発光部、緑色レーザ発光部、及び青色レーザ発光部を含み、
前記空間光変調器は、赤色用空間光変調器、緑色用空間光変調器、及び青色用空間光変調器を含み、
前記変調パターン信号は、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号を含み、
前記制御部は、前記赤色レーザ発光部、前記緑色レーザ発光部、及び前記青色レーザ発光部を同時に駆動させつつ、前記赤色用変調パターン信号を前記赤色用空間光変調器に、前記緑色用変調パターン信号を前記緑色用空間光変調器に、前記青色用変調パターン信号を前記青色用空間光変調器にそれぞれ出力することで、前記スクリーンに画像を描画させ、
前記非点収差光学系及び前記4分割光検出器は、前記赤色用空間光変調器、前記緑色用空間光変調器、及び前記青色用空間光変調器に対応して3組が設けられ、
前記波長演算手段は、3つの前記4分割光検出器の検出値に基づいて、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の波長を演算し、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記波長に基づいて、前記赤色用変調パターン信号、前記緑色用変調パターン信号、及び前記青色用変調パターン信号をそれぞれ補正することを特徴とする。
【0012】
(4) (1)~(3)のいずれかの構成において、
前記4分割光検出器は、前記空間光変調器から前記スクリーンまでの距離と、前記空間光変調器から前記4分割光検出器までの距離とが同じになるように配置されることを特徴とする。
【0013】
(5) (1)~(4)のいずれかの構成において、
前記制御部は、
前記4分割光検出器の検出値に基づいてレーザ光の光軸ずれを演算する光軸ずれ演算手段をさらに備え、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記光軸ずれに基づいて前記変調パターン信号を補正することを特徴とする。
【0014】
(6) (1)~(5)のいずれかの構成において、
前記制御部は、
前記4分割光検出器の検出値に基づいてレーザ光の光強度を演算する光強度演算手段をさらに備え、
前記変調パターン補正手段は、演算した前記光強度に基づいて前記変調パターン信号を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、スクリーンに向かうレーザ光の光量を減らすことなく、レーザ光の波長を精度良く検出して画質を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る表示装置の概略構成を示す図である。
【
図2】4分割光検出器に入射した光の縦横比の変化を示す図である。
【
図3】縦横比とレーザ光の波長との関係を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る表示装置の制御手順を示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る表示装置の概略構成を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る表示装置の制御手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る表示装置1の概略構成を示す図である。なお、
図1において、G100は、入力画像データを表し、G101は、電源を表す。
図1に示す本実施形態の表示装置1は、レーザ光を光源とする車両用ヘッドアップディスプレイを構成しており、表示装置1から出射された表示光が車両のフロントシールドFSに投射され、フロントシールドFSの前方に表示光の虚像が表示される。虚像として表示されるのは、例えば、車両の走行速度、車両警告、各種周囲センサなどの車両機能動作状態、経路案内などの計器情報が表された数字、文字、図形などである。
【0019】
表示装置1は、レーザ光を出射する光源部2と、光源部2が出射するレーザ光の光路上に配置され、スクリーン3に画像を描画するために、レーザ光の空間的な分布(振幅、位相、偏光など)を変調する変調パターンを可変可能な空間光変調器4と、光源部2から空間光変調器4に至る光路に配置され、レーザ光の合成や拡張を行うメイン光学系5と、入力画像データに基づいて空間光変調器4に変調パターン信号を出力する制御部6と、空間光変調器4の0次光に非点収差を付与する非点収差光学系7と、0次光の非点収差を検出する4分割光検出器8と、4分割光検出器8の検出値を制御部6に入力する入力回路9と、を備える。なお、メイン光学系5を構成するレンズ群は、周知のものを用いるため、詳細な説明は省略する。
【0020】
光源部2は、赤色レーザ発光部21、緑色レーザ発光部22、及び青色レーザ発光部23を備える。各レーザ発光部21~23は、レーザ発光ダイオードを用いて構成されており、レーザ発光ダイオードが発光するレーザ光は、温度変動に応じて波長がシフトする特性を有する。
【0021】
空間光変調器4は、SLM(Spatial Light Modulator)であり、例えば、LCOSーSLM(Liquid Crystal on Silicon-Spatial Light Modulator)が用いられる。本実施形態の表示装置1は、1つの空間光変調器4を備え、制御部6から出力される赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号に応じて、各色のレーザ光の空間的な分布を変調する。空間光変調器4が反射(又は透過)させるレーザ光には、スクリーン3に向かう画像表示光だけでなく、表示に使用されない0次光が含まれる。0次光は、通常、迷光とならないように遮光用シートなどを用いて遮光されるが、本実施形態では、0次光をレーザ光の波長検出に利用する。
【0022】
制御部6は、LD駆動回路LDDを介して、赤色レーザ発光部21、緑色レーザ発光部22、及び青色レーザ発光部23を時分割で順次駆動させつつ、それに同期して赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号を空間光変調器4に順次出力することで、1つの空間光変調器4でスクリーン3に画像を描画させる。
【0023】
図2は、4分割光検出器8に入射した光の縦横比Hの変化を示す図であり、3つの状態G202からG202が模式的に示されている。
図1及び
図2に示すように、非点収差光学系7及び4分割光検出器8は、1つの空間光変調器4に対応して1組が設けられる。非点収差光学系7は、空間光変調器4の0次光を反射させる反射ミラー71と、集光レンズ72及び円柱レンズ73の組み合わせで構成されており、入射光の平行度に応じて変化する光の像を4分割光検出器8上に投影する。例えば、入射光が平行光である場合は、4分割光検出器8上の光の像が円になり、入射光が収束光である場合は、4分割光検出器8上の光の像が縦長の楕円になり、入射光が拡散光である場合は、4分割光検出器8上の光の像が横長の楕円になる。なお、非点収差光学系7は、各色のレーザ光の波長に応じた焦点距離の違いを補正する焦点距離補正機能を備えることが好ましい。
【0024】
図2に示すように、4分割光検出器8は、互いに直交する分割線によって4つに分割された光検出部81A~81Dを有し、各光検出部81A~84Dが入射光の光量を検出し、その検出値を電流値の変化として出力する。また、4分割光検出器8は、空間光変調器4からスクリーン3までの距離と、空間光変調器4から4分割光検出器8までの距離とが同じになるように配置される。
【0025】
入力回路9は、4分割光検出器8から出力される4つの電流値を電圧値に変換するI-V変換回路91と、電圧値をアナログ値からデジタル値に変換するA/Dコンバータ92と、を備える。デジタル値に変換された4分割光検出器8の4つの検出値は、制御部6に入力される。
【0026】
制御部6は、ハードウェアとソフトウェアとの協働により実現される機能構成として、4分割光検出器8の検出値に基づいてレーザ光の波長を演算する波長演算手段と、演算した波長に基づいて空間光変調器4に出力する変調パターン信号を補正する変調パターン補正手段と、を備える。
【0027】
波長演算手段は、赤色レーザ発光部21、緑色レーザ発光部22、及び青色レーザ発光部23の順次駆動に同期して4分割光検出器8の検出値を取得し、取得した検出値に基づいて、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の波長を演算する。
【0028】
具体的に説明すると、波長演算手段は、
図2に示すように、4分割光検出器8の4つの検出値に基づいて、4分割光検出器8に入射した光の像の縦横比Hを下記の計算式で演算する。ただし、光検出部81A~81Dは、左回りに光検出部81A、光検出部81B、光検出部81C、光検出部81Dの順で並ぶものとし、Aは光検出部81Aの検出値、Bは光検出部81Bの検出値、Cは光検出部81Cの検出値、Dは光検出部81Dの検出値とする。なお、
図2には、光検出部81A~81Dのそれぞれに対応付けて検出値A~Dが表記されている。
H=((A+C)-(B+D))/(A+B+C+D)
なお、A+B+C+Dで割ることで、光量の経時変化による均一な増減変動にも対応することが可能となる。
【0029】
そして、演算した縦横比Hの値が、H<0のときは、
図2のG202に模式的に示すように、4分割光検出器8に入射した光の像が横長の楕円であり、H=0のときは、
図2のG200に模式的に示すように、4分割光検出器8に入射した光の像が円であり、H>0のときは、
図2のG201に模式的に示すように、4分割光検出器8に入射した光の像が縦長の楕円であると推定することができる。
【0030】
図3は、縦横比Hとレーザ光の波長λとの関係を示す図である。
図3において、横軸は波長λであり、縦軸はHの値の変動ΔHを表す。
図3において、矢印G300は、縦横比Hとレーザ光の波長λとの関係に線形性(リニアリティ)のある領域を示す。
図3に示すように、波長演算手段は、予め作成した縦横比Hと波長λとの関係式を用いて各色のレーザ光の波長を演算する。
λ=-Hpp/(λm-λs)*H+λa 式A
【0031】
この関係式は、空間光変調器4で想定している各色のレーザ光の波長で、平行光(4分割光検出器8においてきれいな円)が照射されるように空間光変調器4の変調パターン信号を調整する。ここで、平行光が4分割光検出器8に入射するように、4分割光検出器8の配置、あるいは、反射ミラー71の角度を調整することが好ましい。その後、光源部2の温度コントロールで波長を変動させながら、4分割光検出器8の検出値を読み取って縦横比Hを算出し、
図3に示すように縦横比Hの正の値の最大値と、そのときの波長λsと、縦横比Hの負の値の最小値と、そのときの波長λmと、を記憶するとともに、これらの記憶値から縦横比Hの変動幅Hppや中心波長λaを算出することにより作成される。これは各色のレーザ光毎に行われる。
【0032】
変調パターン補正手段は、演算した各色の波長λに基づいて、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号をそれぞれ補正する。例えば、常に各色のλ値を更新し、各色の位相パターンを生成する際の演算パラメータとしてλ値を使い、λ値の変動に対応する位相パターンを生成することで、λ値の変動による画質の低下を抑制することができる。具体的な位相パターンの生成手順を以下に示す。
【0033】
1)画像座標を入力する。
(Xj,Yj,Zj)
なお、中間像スクリーンがある場合、Zjは固定値Zcになる。
2)位相を計算する。
3次元像の座標を(Xj,Yj,Zj)、ホログラム面の座標を(x
α,y
α,0)とし、参照光L
Rをホログラム面に対して角度θ
Rで入射する平面波であるとする。j番目の点光源から発せられる物体光L
Oj、参照光L
Rはそれぞれ、
L
Oj=(|L
O|/r
αj)expi(2πpr
αj/λ+φ
j), A式
L
R=|L
R|expi(2πpx
αsinθ
R+φ
R), B式
となる。ここで、λは参照光の波長、pSLM画素ピッチ、φ
jはj番目の点光源における初期位相、φ
Rは参照光の初期位相である。
簡単のため,参照光をホログラム面に対して垂直に入射させる。すなわちθ
R=0とし、初期位相φ
R、φ
jをそれぞれ0とすると、
L
Oj=(|L
O|/r
αj)expi(2πpr
αj/λ), A式
L
R=|L
R|, B式
となって、このA式を基に、ホログラム面における物体光L
Oすなわち表示させたい画像のホログラム面における位相成分を求める。
3)演算した位相を三角関数により実数と虚数に分ける。
4)1)~3)の計算を入力画像の座標毎にすべて実施して積算する。
5)4)で積算したN回分の入力画素毎の積算結果の値に対して、その位相成分を下記の計算式で算出する。
【数1】
6)5)の結果を、空間光変調器4の位相階調ビット数bに応じて量子化する。
【0034】
つぎに、上記のような機能構成を実現する制御部6の処理手順について、
図4を参照して説明する。
【0035】
図4は、本発明の第1実施形態に係る表示装置1の制御手順を示す図である。
図4に示すように、制御部6は、各色の波長値λr、λg、λbに初期値を設定した後(S101)、ユーザ操作又はシステム操作による停止コマンドの入力が無いか否かを判断し(S102)、この判断結果がNOの場合は、処理を終了する。
【0036】
制御部6は、ステップS102の判断結果がYESの場合、入力画像のフレームが変更されたか否かを判断し(S103)、この判断結果がYESの場合は、各色の波長値λr、λg、λbと入力画像データに基づいて、空間光変調器4に入力画像を描画するための各色のLCOS-SLMパターンを演算し(S104)、判断結果がNOの場合は、ステップS104をスキップする。
【0037】
つぎに、制御部6は、赤色レーザ発光部21を点灯させ、且つ、点灯時間タイマのカウントアップを開始した後(S105)、赤色用LCOS_SLMパターンを設定して描画を実行するとともに(S106)、赤色点灯時におけるA,B,C,D値のA/D変換値であるAr,Br,Cr,Dr値を読み取り(S107)、点灯時間が経過したか否かを判断する(S108)。制御部6は、ステップS108の判断結果がNOの場合、ステップS106及びステップS107を繰り返し、判断結果がYESになったら赤色レーザ発光部21を消灯し、且つ、点灯時間タイマをクリアする(S109)。
【0038】
つぎに、制御部6は、緑色レーザ発光部22を点灯させ、且つ、点灯時間タイマのカウントアップを開始した後(S110)、緑色用LCOS_SLMパターンを設定して描画を実行するとともに(S111)、緑色点灯時におけるA,B,C,D値のA/D変換値であるAg,Bg,Cg,Dg値を読み取り(S112)、点灯時間が経過したか否かを判断する(S113)。制御部6は、ステップS113の判断結果がNOの場合、ステップS111及びステップS112を繰り返し、判断結果がYESになったら緑色レーザ発光部22を消灯し、且つ、点灯時間タイマをクリアする(S114)。
【0039】
つぎに、制御部6は、青色レーザ発光部23を点灯させ、且つ、点灯時間タイマのカウントアップを開始した後(S115)、青色用LCOS_SLMパターンを設定して描画を実行するとともに(S116)、青色点灯時におけるA,B,C,D値のA/D変換値であるAb,Bb,Cb,Db値を読み取り(S117)、点灯時間が経過したか否かを判断する(S118)。制御部6は、ステップS118の判断結果がNOの場合、ステップS116及びステップS117を繰り返し、判断結果がYESになったら青色レーザ発光部23を消灯し、且つ、点灯時間タイマをクリアする(S119)。
【0040】
つぎに、制御部6は、各色のA,B,C,D値に基づいてH値を算出するとともに(S120)、上記の式Aを用いて、各色のH値に基づいて各色の波長値λr、λg、λbを演算し、前回の波長値λr、λg、λbを更新する(S121)。制御部6は、波長値λr、λg、λbの変化結果に基づいて、カラーバランスが合うように各色の点灯時間及び点灯ターゲットパワーのいずれか、又は両方を変更した後(S122)、ステップS102に戻って上述した一連の処理を繰り返す。
【0041】
本実施形態によれば、レーザ光を出射する光源部2と、光源部2が出射するレーザ光の光路上に配置され、レーザ光の空間的な分布を変調を表示させる空間光変調器4と、入力画像データに基づいて空間光変調器4に変調パターン信号を出力する制御部6と、を備える表示装置1であって、空間光変調器4の0次光に非点収差を付与する非点収差光学系7と、0次光の非点収差を検出する4分割光検出器8と、を備え、制御部6は、4分割光検出器8の検出値に基づいてレーザ光の波長を演算する波長演算手段と、演算した波長に基づいて変調パターン信号を補正する変調パターン補正手段と、を備えるので、スクリーン3に向かうレーザ光の光量を減らすことなく、レーザ光の波長を精度良く検出して画質を改善することができる。
【0042】
また、光源部2は、赤色レーザ発光部21、緑色レーザ発光部22、及び青色レーザ発光部23を含み、変調パターン信号は、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号を含み、制御部6は、赤色レーザ発光部21、緑色レーザ発光部22、及び青色レーザ発光部23を時分割で順次駆動させつつ、それに同期して赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号を空間光変調器4に順次出力することで、1つの空間光変調器4でスクリーン3に画像を描画させ、非点収差光学系7及び4分割光検出器8は、1つの空間光変調器4に対応して1組が設けられ、波長演算手段は、赤色レーザ発光部21、緑色レーザ発光部22、及び青色レーザ発光部23の順次駆動に同期して4分割光検出器8の検出値を取得し、取得した検出値に基づいて、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の波長を演算し、変調パターン補正手段は、演算した波長に基づいて、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号をそれぞれ補正するので、空間光変調器4、非点収差光学系7、及び4分割光検出器8の必要個数を抑えてコストを削減できる。
【0043】
また、4分割光検出器8は、空間光変調器4からスクリーン3までの距離と、空間光変調器4から4分割光検出器8までの距離とが同じになるように配置されるので、スクリーン3の位置でレーザ光の波長を検出する場合と同等の高精度な波長検出を行うことが可能になる。
【0044】
[第2実施形態]
つぎに、本発明の第2実施形態に係る表示装置1について、
図5及び
図6を参照して説明する。ただし、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と共通の構成については、第1実施形態と同じ符号を用いることで、第1実施形態の説明を援用する場合がある。
【0045】
図5は、本発明の第2実施形態に係る表示装置1の概略構成を示す図である。
図5に示すように、第2実施形態の表示装置1において、空間光変調器4は、赤色用空間光変調器41、緑色用空間光変調器42、及び青色用空間光変調器43を含み、制御部6は、赤色レーザ発光部21、緑色レーザ発光部22、及び青色レーザ発光部23を同時に駆動させつつ、赤色用変調パターン信号を赤色用空間光変調器41に、緑色用変調パターン信号を緑色用空間光変調器42に、青色用変調パターン信号を青色用空間光変調器43にそれぞれ出力することで、スクリーン3に画像を描画させる。
【0046】
また、非点収差光学系7及び4分割光検出器8は、赤色用空間光変調器41、緑色用空間光変調器42、及び青色用空間光変調器43に対応して3組が設けられる。具体的には、赤色用非点収差光学系75、緑色用非点収差光学系76、青色用非点収差光学系77、赤色用4分割光検出器85、緑色用4分割光検出器86、及び青色用4分割光検出器87を備える。
【0047】
そして、波長演算手段は、3つの4分割光検出器85~87の検出値に基づいて、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の波長を演算し、変調パターン補正手段は、演算した波長に基づいて、赤色用変調パターン信号、緑色用変調パターン信号、及び青色用変調パターン信号をそれぞれ補正する。
【0048】
このような第2実施形態の表示装置1であっても、スクリーン3に向かうレーザ光の光量を減らすことなく、レーザ光の波長を精度良く検出して画質を改善することができる。また、第2実施形態の表示装置1では、各色のレーザ発光部21~23を同時点灯できるので、第1実施形態の表示装置1に比べて表示画像を明るくできるだけでなく、時分割処理のための高速処理が不要になる。
【0049】
つぎに、上記のような第2実施形態を実現する制御部6の処理手順について、
図6を参照して説明する。
【0050】
図6は、本発明の第2実施形態に係る表示装置1の制御手順を示す図である。
図6に示すように、制御部6は、各色の波長値λr、λg、λbに初期値を設定した後(S201)、ユーザ操作又はシステム操作による停止コマンドの入力が無いか否かを判断し(S202)、この判断結果がNOの場合は、処理を終了する。
【0051】
制御部6は、ステップS202の判断結果がYESの場合、入力画像のフレームが変更されたか否かを判断し(S203)、この判断結果がYESの場合は、各色の波長値λr、λg、λbと入力画像データに基づいて、空間光変調器4に入力画像を描画するための各色のLCOS-SLMパターンを演算し(S204)、判断結果がNOの場合は、ステップS204をスキップする。
【0052】
つぎに、制御部6は、各色のレーザ発光部21~23を同時点灯させ、各色の描画処理を並列実行する。具体的には、赤色レーザ発光部21を点灯させ、且つ、点灯時間タイマのカウントアップを開始した後(S205)、赤色用LCOS_SLMパターンを設定して描画を実行するとともに(S206)、赤色用4分割光検出器85が出力したA,B,C,D値のA/D変換値であるAr,Br,Cr,Dr値を読み取り(S207)、点灯時間が経過したか否かを判断する(S208)。制御部6は、ステップS208の判断結果がNOの場合、ステップS206及びステップS207を繰り返し、判断結果がYESになったら赤色レーザ発光部21を消灯し、且つ、点灯時間タイマをクリアする(S209)。
【0053】
また、制御部6は、緑色レーザ発光部22を点灯させ、且つ、点灯時間タイマのカウントアップを開始した後(S210)、緑色用LCOS_SLMパターンを設定して描画を実行するとともに(S211)、緑色用4分割光検出器86が出力したA,B,C,D値のA/D変換値であるAg,Bg,Cg,Dg値を読み取り(S212)、点灯時間が経過したか否かを判断する(S213)。制御部6は、ステップS213の判断結果がNOの場合、ステップS211及びステップS212を繰り返し、判断結果がYESになったら緑色レーザ発光部22を消灯し、且つ、点灯時間タイマをクリアする(S214)。
【0054】
また、制御部6は、青色レーザ発光部23を点灯させ、且つ、点灯時間タイマのカウントアップを開始した後(S215)、青色用LCOS_SLMパターンを設定して描画を実行するとともに(S216)、青色用4分割光検出器87が出力したA,B,C,D値のA/D変換値であるAb,Bb,Cb,Db値を読み取り(S217)、点灯時間が経過したか否かを判断する(S218)。制御部6は、ステップS218の判断結果がNOの場合、ステップS216及びステップS217を繰り返し、判断結果がYESになったら青色レーザ発光部23を消灯し、且つ、点灯時間タイマをクリアする(S219)。
【0055】
つぎに、制御部6は、各色のA,B,C,D値に基づいてH値を算出するとともに(S220)、上記の式Aを用いて、各色のH値に基づいて各色の波長値λr、λg、λbを演算し、前回の波長値λr、λg、λbを更新する(S221)。制御部6は、波長値λr、λg、λbの変化結果に基づいて、カラーバランスが合うように各色の点灯時間及び点灯ターゲットパワーのいずれか、又は両方を変更した後(S222)、ステップS202に戻って上述した一連の処理を繰り返す。
【0056】
[第3実施形態]
つぎに、本発明の第3実施形態に係る表示装置1ついて、
図7を参照して説明する。ただし、上述の実施形態との相違点についてのみ説明し、上述の実施形態と共通の構成については、上述の実施形態と同じ符号を用いることで、上述の実施形態の説明を援用する場合がある。
【0057】
第3実施形態の表示装置1は、制御部6が、4分割光検出器8の検出値に基づいてレーザ光の光軸ずれを演算する光軸ずれ演算手段をさらに備え、変調パターン補正手段が、演算した光軸ずれに基づいて変調パターン信号をさらに補正する点が上述の実施形態と相違している。
【0058】
図7は、光軸ずれの検出原理を示す図である。
図7には、3つの状態G700からG702が示されており、x,yは、それぞれX光軸方向及びY光軸方向を示す。
図7に示すように、レーザ光の光軸がずれると、4分割光検出器8に入射される光の像がX光軸方向やY光軸方向にずれる。具体的には、G701は、ずれのない状態を示し、G702は、X光軸方向にずれた状態を示し、G703は、Y光軸方向にずれた状態を示す。光軸ずれ演算手段は、X光軸ずれ及びY光軸ずれを下記の計算式で演算する。
X光軸ずれ=((A+D)-(B+C))/(A+B+C+D)
Y光軸ずれ=((A+B)-(C+D))/(A+B+C+D)
【0059】
また、変調パターン補正手段による補正は、ホログラム演算のパターンニングにおける目標座標を光軸ずれの分を座標オフセット値としてホログラム演算に入力することにより行われる。例えば、X光軸のずれが1%で座標値Δxになる設計値とする。或いは、生産時に光軸をずらせて、実際の座標値を測定し、このΔ値を求めてもよい。光軸ずれα%のとき、オフセット値として、Δx*αの座標オフセット値で引き算することで、実際の描画座標位置の座標が求められる。
【0060】
また、第3実施形態では、制御部6が、4分割光検出器8の検出値に基づいてレーザ光の光強度を演算する光強度演算手段をさらに備え、変調パターン補正手段が、演算した光強度に基づいて変調パターン信号をさらに補正する。例えば、光強度演算手段は、下記の計算式で各色のレーザ光の光強度を算出する。
光強度=A+B+C+D
【0061】
また、変調パターン補正手段は、各色のレーザ光の光強度に基づいた変調パターンの補正に基づいて、表示画像の全体的な明るさの変動やカラーバランスの乱れを抑制することができる。
【0062】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 表示装置
2 光源部
21 赤色レーザ発光部
22 緑色レーザ発光部
23 青色レーザ発光部
3 スクリーン
4 空間光変調器
41 赤色用空間光変調器
42 緑色用空間光変調器
43 青色用空間光変調器
5 メイン光学系
6 制御部
7 非点収差光学系
71 反射ミラー
72 集光レンズ
73 円柱レンズ
75 赤色用非点収差光学系
76 緑色用非点収差光学系
77 青色用非点収差光学系
8 4分割光検出器
81A~81D 光検出部
85 赤色用4分割光検出器
86 緑色用4分割光検出器
87 青色用4分割光検出器
9 入力回路
91 I-V変換回路
92 A/Dコンバータ