(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124689
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】多層フィルム及び包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20220819BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220819BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B32B27/18 F
B32B27/36
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022466
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 直志
(72)【発明者】
【氏名】油家 佑紀
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AD01
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(57)【要約】
【課題】抗ウイルス性を十分に担保し得る多層フィルムと、前記多層フィルムを用いて得られた包装体の提供。
【解決手段】外層と、シーラント層と、が積層されており、前記外層及び前記シーラント層のいずれか一方又は両方が抗ウイルス剤を含む、多層フィルム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層と、
シーラント層と、
が積層されており、
前記外層及び前記シーラント層のいずれか一方又は両方が抗ウイルス剤を含む、多層フィルム。
【請求項2】
前記抗ウイルス剤が、水酸化カルシウム、重金属イオン系抗ウイルス剤及び第4級アンモニウム化合物からなる群より選択される1種または2種以上である、請求項1に記載の多層フィルム。
【請求項3】
前記重金属イオン系抗ウイルス剤が、銀イオン、亜鉛イオン及び銅イオンからなる群より選択される1種または2種以上の重金属イオンを含むものである、請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化ジアルキルジメチルアンモニウムからなる群より選択される1種または2種以上である、請求項2に記載の多層フィルム。
【請求項5】
前記外層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層の厚さが12μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項6】
前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記シーラント層の厚さが12μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項7】
前記外層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層において、前記外層の総質量に対する、前記抗ウイルス剤の含有量の割合が、1質量%~5質量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項8】
前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記シーラント層において、前記シーラント層の総質量に対する、前記抗ウイルス剤の含有量の割合が、1%~5質量%である、請求項1~4及び6のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項9】
前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層が二軸延伸されている、請求項1~4、6及び8のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項10】
前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層がポリエステルまたはポリオレフィンを含む、請求項1~4、6、8及び9のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項11】
前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである、請求項10に記載の多層フィルム。
【請求項12】
前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、請求項10に記載の多層フィルム。
【請求項13】
前記外層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層が、さらに、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリウレタン及びポリアミドからなる群より選択される1種または2種以上を含む、請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項14】
前記シーラント層がポリオレフィンを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項15】
前記多層フィルムが、前記外層と前記シーラント層との間に、さらに中間層を含み、
前記中間層が、ウレタン系接着性樹脂、アクリル系接着性樹脂、チタネート系接着性樹脂、イミン系接着性樹脂、ブタジエン系接着性樹脂、ポリエステル系接着性樹脂、オレフィン系接着性樹脂及びエポキシ系接着性樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、
前記中間層が接着性を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の多層フィルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の多層フィルムを用いて得られた包装体であって、
前記シーラント層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、
前記シーラント層が前記外層よりも前記収容空間側に配置されている、包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルム及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
目的物を収容して保存するために、種々の保存用の包装体が用いられている。例えば、保存対象物が食品等の経口摂取されるものである場合には、この対象物を、良好な品質を維持しながら保存できることが求められ、このような目的を達成するための包装体が開示されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、包装体を衛生的に製造し、取り扱っても、保存対象物を包装体に収容するときに、この保存対象物などの、包装体の収容部へ接触するものに付着しているウイルス等が、包装体の収容空間内に取り込まれることがある。保存対象物を衛生的に保存したい場合には、このようなウイルス等の混入は大きな問題となる。
【0004】
保存対象物を収容するときに、この保存対象物に付着しているウイルス等の収容空間内への混入を抑制するためには、例えば、加熱処理、薬品処理、紫外線照射処理等のウイルス等を死滅させる処理を行った後の保存対象物を、包装体へ収容することが考えられる。しかし、保存対象物が、上述のような経口摂取されるものである場合など、その種類によっては、これらの処理を行うことができない場合もあり、この方法は汎用性があるとはいえない。したがって、保存中の包装体の収容空間内で、問題点を生じない程度にウイルス等の増殖を抑制することが、より現実的で重要であり、そのためには、例えば、包装体に抗ウイルス性を付与することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示されている多層フィルムを用いた袋状等の包装体においては、抗ウイルス性が十分に担保されないという問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、抗ウイルス性を十分に担保し得る多層フィルムと、前記多層フィルムを用いて得られた包装体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].外層と、シーラント層と、が積層されており、前記外層及び前記シーラント層のいずれか一方又は両方が抗ウイルス剤を含む、多層フィルム。
[2].前記抗ウイルス剤が、水酸化カルシウム、重金属イオン系抗ウイルス剤及び第4級アンモニウム化合物からなる群より選択される1種または2種以上である、[1]に記載の多層フィルム。
[3].前記重金属イオン系抗ウイルス剤が、銀イオン、亜鉛イオン及び銅イオンからなる群より選択される1種または2種以上の重金属イオンを含むものである、[2]に記載の多層フィルム。
[4].前記第4級アンモニウム化合物が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム及び塩化ジアルキルジメチルアンモニウムからなる群より選択される1種または2種以上である、[2]に記載の多層フィルム。
[5].前記外層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層の厚さが12μm以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[6].前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記シーラント層の厚さが12μm以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[7].前記外層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層において、前記外層の総質量に対する、前記抗ウイルス剤の含有量の割合が、1質量%~5質量%である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[8].前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記シーラント層において、前記シーラント層の総質量に対する、前記抗ウイルス剤の含有量の割合が、1%~5質量%である、[1]~[4]及び[6]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[9].前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層が二軸延伸されている、[1]~[4]、[6]及び[8]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[10].前記シーラント層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層がポリエステルまたはポリオレフィンを含む、[1]~[4]、[6]、[8]及び[9]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[11].前記ポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである、[10]に記載の多層フィルム。
[12].前記ポリオレフィンが、ポリプロピレンである、[10]に記載の多層フィルム。
[13].前記外層が抗ウイルス剤を含む場合に、前記外層が、さらに、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリウレタン及びポリアミドからなる群より選択される1種または2種以上を含む、[1]~[5]及び[7]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[14].前記シーラント層がポリオレフィンを含む、[1]~[13]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[15].前記多層フィルムが、前記外層と前記シーラント層との間に、さらに中間層を含み、前記中間層が、ウレタン系接着性樹脂、アクリル系接着性樹脂、チタネート系接着性樹脂、イミン系接着性樹脂、ブタジエン系接着性樹脂、ポリエステル系接着性樹脂、オレフィン系接着性樹脂及びエポキシ系接着性樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、前記中間層が接着性を有する、[1]~[14]のいずれか一項に記載の多層フィルム。
[16].[1]~[15]のいずれか一項に記載の多層フィルムを用いて得られた包装体であって、前記シーラント層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記シーラント層が前記外層よりも前記収容空間側に配置されている、包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗ウイルス性を十分に担保し得る多層フィルムと、前記多層フィルムを用いて得られた包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の多層フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の包装体を模式的に示す斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施形態の多層フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の包装体を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の多層フィルムは、外層と、シーラント層と、が積層されており、前記外層及び前記シーラント層のいずれか一方又は両方が抗ウイルス剤を含む。
本発明の多層フィルムは、抗ウイルス性を十分に担保することができる。
【0012】
<<第1実施形態>>
<多層フィルム>
図1は、本発明の第1実施形態の多層フィルムを模式的に示す断面図である。なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0013】
ここに示す多層フィルム1は、外層11と、中間層12と、シーラント層13とを備え、中間層12が、外層11と、シーラント層13と、の間に配置されて、概略構成されている。すなわち、多層フィルム1は、外層11と、中間層12と、シーラント層13と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、外層11の露出面が一方の表面となり、シーラント層13の露出面が他方の表面となるように構成されている。
シーラント層13は、抗ウイルス剤を含む。
【0014】
[外層]
外層11は、多層フィルム1を用いて目的物を保存するときに、シーラント層13よりも、この保存対象物側とは反対側に配置される層である。例えば、多層フィルム1を用いて作製された包装体においては、シーラント層13が外層11よりも、この包装体の収容空間側に配置される。
【0015】
外層11は、延伸されていてもよいし、延伸されていなくてもよいが、延伸されていることが好ましい。外層11が延伸されていることにより、外層11の酸素ガス透過量をより低下させることができる。また、外層11を伸びにくくすることができ、意匠性を担保することができる。
【0016】
外層11は、二軸延伸されていることが好ましい。外層11が二軸延伸されていることにより、外層11の酸素ガス透過量をより低下させることができる。また、より安価な材料を使用することができ、また伸びの異方性を低減させることができる。
【0017】
外層11の構成材料は、後述する酸素ガス透過量の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリビニル系樹脂等の樹脂が挙げられる。また、外層11の構成材料としては、これら以外の樹脂も挙げられる。
なお、前記ポリビニル系樹脂は、ビニル基(エテニル基)を有するモノマーから誘導された構成単位を有する樹脂である。前記ポリビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)等が挙げられる。
【0018】
外層11の構成材料は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0019】
外層11は、ポリエステルまたはポリオレフィンを含むことが好ましい。外層11がポリエステルまたはポリオレフィンを含むことにより、安価な材料で製造することができ、また低吸湿性を担保することができる。
【0020】
外層11において、外層11の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
【0021】
外層11に含まれるポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0022】
外層11に含まれるポリオレフィンとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)が挙げられる。ポリプロピレン(PP)は、ポリオレフィンの中でも汎用樹脂であるため、低コスト化が可能である。
【0023】
外層11は、上記以外の樹脂や、添加剤等を含んでいてもよい。これらは1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0024】
外層11は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。外層11が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0025】
外層11の厚さは、特に限定されないが、2~100μmであることが好ましく、5~70μmであることがより好ましく、8~40μmであることが特に好ましい。
【0026】
外層11の厚さが前記下限値以上であることで、外層11の強度がより向上するとともに、外層11の前記酸素ガス透過量を小さくした場合と同様の効果がより顕著に得られる。また、外層11の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
【0027】
外層11が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい外層11の厚さとなるようにするとよい。
【0028】
外層11の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、5000cm3/m2・atm・day以下であることが好ましく、4500cm3/m2・atm・day以下であることがより好ましく、4000cm3/m2・atm・day以下であることが特に好ましい。
【0029】
外層11の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、前記抗ウイルス剤について、シーラント層13の内部から中間層12への移行と、中間層12を介した外層11への移行と、外層11を介したその外部(多層フィルム1の外層11側の外部)への移行とが、効果的に抑制される。したがって、シーラント層13の内部から保存対象物側へ移行する前記抗ウイルス剤の量を、長期間、適切な水準で維持できるため、多層フィルム1は、より優れた抗ウイルス効果を発現する。また、例えば、多層フィルム1を用いて作製された包装体に目的物を収容して、封止した場合には、この包装体の外部への前記抗ウイルス剤の移行が抑制され、目的物の保存時に、前記抗ウイルス剤の使用を全く又はほとんど想起させず、官能上好ましい。
【0030】
さらに、外層11の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、外層11を介したその外部(多層フィルム1の外層11側の外部)から内部への、酸素ガスの移行が効果的に抑制される。したがって、品質を劣化させずに目的物を保存できる効果がより高くなる。
【0031】
一方、外層11の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量の下限値は、特に限定されず、例えば、50cm3/m2・atm・day、500cm3/m2・atm・day、及び1000cm3/m2・atm・dayのいずれかとすることができるが、これらは一例である。
【0032】
外層11の前記酸素ガス透過量は、いずれもJIS K7126Bに準拠して測定された値である。
【0033】
外層11の軟化温度は、60℃以上240℃以下であることが好ましく、80℃以上220℃以下であることがより好ましく、90℃以上210℃以下であることが好ましい。
【0034】
外層11の軟化温度が上記範囲内であることにより、多層フィルム1の耐熱性を向上させることができる。
【0035】
外層11は、後述する第2実施形態の外層21と同様のものであってもよい。すなわち、外層11及びシーラント層13の両方が抗ウイルス剤を含んでいてもよい。
【0036】
[中間層]
多層フィルム1は、外層11とシーラント層13との間に、さらに中間層12を含んでいてもよい。
【0037】
中間層12は、樹脂、その他の成分等の中間層12を構成するための成分を含有する中間層用樹脂組成物を用いて製造できる。より具体的には、中間層用樹脂組成物を、中間層12の形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで、中間層12が得られる。
中間層12が複数層からなる場合は、例えば、1層(単層)の中間層12を複数枚作製し、これらを貼り合わせることで、製造できる。
【0038】
中間層用樹脂組成物は、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、マルチコーター等の各種コーターを用いて、塗工できる。
【0039】
(樹脂)
樹脂は、中間層12において、フィルムの形状を維持するために必要な成分である。前記樹脂は、このような機能を有するものであれば、特に限定されず、非接着性樹脂であってもよいが、接着性樹脂(本明細書においては「接着剤」と称することがある)であることが好ましい。前記樹脂として、接着性樹脂(接着剤)を用いることで、中間層12を、接着性を有するもの(すなわち、接着性中間層)とすることができ、例えば、別途接着剤層を設けることなく、多層フィルムを構成できる。
【0040】
好ましい前記接着性樹脂としては、例えば、ポリウレタン等のウレタン系接着性樹脂(ウレタン結合を有する接着性樹脂);アクリル共重合樹脂等のアクリル系接着性樹脂((メタ)アクリロイル基を有する接着性樹脂)、チタネート系接着性樹脂(チタン酸エステルを用いて得られた接着性樹脂)、イミン系接着性樹脂(エチレンイミンを用いて得られた接着性樹脂)、スチレン・ブタジエン共重合体等のブタジエン系接着性樹脂(モノマー成分としてブタジエンを用いて得られた接着性樹脂)、ポリ酢酸ビニル等のポリエステル系接着性樹脂(エステル結合を有する接着性樹脂)、イソブテン・無水マレイン酸共重合体等のオレフィン系接着性樹脂(モノマー成分としてオレフィンを用いて得られた接着性樹脂)、エポキシ系接着性樹脂等が挙げられる。
【0041】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。
【0042】
中間層12において、前記樹脂は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
例えば、前記樹脂として、接着性を有しない非接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、接着性樹脂のみを1種又は2種以上用いてもよいし、非接着性樹脂及び接着性樹脂を、それぞれ1種又は2種以上用いてもよい。
【0043】
中間層12は、前記樹脂として、ウレタン系接着性樹脂、アクリル系接着性樹脂、チタネート系接着性樹脂、イミン系接着性樹脂、ブタジエン系接着性樹脂、ポリエステル系接着性樹脂、オレフィン系接着性樹脂及びエポキシ系接着性樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上を含み、中間層12が接着性を有することが好ましい。
【0044】
(その他の成分)
中間層12及び中間層用樹脂組成物は、前記樹脂に該当しない、その他の成分を含んでいてもよい。
中間層12及び中間層用樹脂組成物における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
中間層12及び中間層用樹脂組成物において、前記その他の成分は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0045】
・溶媒
前記樹脂は、例えば、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。すなわち、前記その他の成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。
【0046】
前記溶媒は、前記樹脂の種類に応じて適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。
好ましい前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
【0047】
前記有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル(カルボン酸エステル);メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0048】
前記中間層用樹脂組成物において、前記溶媒は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、2種以上の溶媒を併用する場合、有機溶媒のみを2種以上併用して、有機溶媒のみの混合溶媒を用いてもよいし、1種又は2種以上の有機溶媒と水とを併用して、水性混合溶媒を用いてもよい。
【0049】
前記中間層用樹脂組成物において、前記中間層用樹脂組成物の総質量に対する、溶媒の含有量の割合は、特に限定されず、例えば、50~70質量%とすることができるが、これは一例に過ぎない。
【0050】
・硬化剤、架橋剤
中間層12及び中間層用樹脂組成物は、前記その他の成分として、硬化剤又は架橋剤を含んでいてもよいし、硬化剤によって硬化されているか、又は架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0051】
中間層12における、中間層12の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合(換言すると、前記中間層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記樹脂の合計含有量の割合)は、70~99質量%であることが好ましく、70~90質量%であることがより好ましく、70~80質量%であることがさらに好ましい。
【0052】
中間層12における、中間層12の総質量に対する、前記その他の成分の含有量の割合(換言すると、前記中間層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記その他の成分の合計含有量の割合)は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
【0053】
硬化剤を用いる場合、前記中間層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計配合量に対する、硬化剤の配合量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。前記硬化剤の配合量の割合が前記下限値以上であることで、硬化剤の効果がより高くなる。また、前記硬化剤の配合量の割合が前記上限値以下であることで、硬化剤の過剰使用が抑制される。
【0054】
架橋剤を用いる場合、前記中間層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計配合量に対する、架橋剤の配合量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。前記架橋剤の配合量の割合が前記下限値以上であることで、架橋剤の効果がより高くなる。また、前記架橋剤の配合量の割合が前記上限値以下であることで、架橋剤の過剰使用が抑制される。
【0055】
中間層12は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。中間層12が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0056】
なお、本明細書においては、中間層12の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
【0057】
中間層12の厚さは、用途に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。
中間層12を用いて、例えば、包装体を作製する場合には、中間層12の厚さは、0.5~15μmであることが好ましく、1~12μmであることがより好ましく、1.3~10μmであることが特に好ましく、例えば、1.3~5.0μm等であってもよい。
中間層12が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい中間層12の厚さとなるようにするとよい。
【0058】
[シーラント層]
シーラント層13は、多層フィルム1を用いて目的物を保存するときに、外層11よりもこの保存対象物側に配置される層である。例えば、多層フィルム1を用いて作製された包装体においては、シーラント層13が外層11よりも、この包装体の収容空間側に配置される。
したがって、例えば、シーラント層13が多層フィルム1の一方の最も外側の層となる場合には、シーラント層13は保存対象物と接触する層となる。
【0059】
シーラント層13は、樹脂、抗ウイルス剤、その他の成分等のシーラント層13を構成するための成分を含有するシーラント層用樹脂組成物を用いて製造できる。より具体的には、シーラント層用樹脂組成物を、シーラント層13の形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで、シーラント層13が得られる。
シーラント層13が複数層からなる場合は、例えば、1層(単層)のシーラント層13を複数枚作製し、これらを貼り合わせることで、製造できる。
【0060】
シーラント層用樹脂組成物は、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、マルチコーター等の各種コーターを用いて、塗工できる。
【0061】
(樹脂)
樹脂は、シーラント層13において、フィルムの形状を維持するために必要な成分である。前記樹脂は、このような機能を有するものであれば、特に限定されないが、ポリオレフィン等の樹脂を含むことが好ましい。
【0062】
シーラント層13を抗ウイルス剤のみで形成すると、抗ウイルス剤がシーラント層13から滑落しやすくなる。一方、シーラント層13が前記樹脂、好ましくはポリオレフィンを含むことによって、抗ウイルス剤をシーラント層13に留めることができる。また、シーラント層13がポリオレフィンを含むことにより、シーラント層13の耐水性及び耐候性をより向上させることができる。さらに、シーラント層13がポリオレフィンを含まない場合よりもシーラント層13同士を容易に接着することができる。
【0063】
前記ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、酸変性ポリオレフィン、アクリル変性ポリオレフィン等が挙げられる。これらのうち、シーラント層13は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を含んでいることが好ましい。また、シーラント層13の構成材料としては、これら以外の樹脂も挙げられる。
【0064】
シーラント層13において、前記樹脂は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0065】
シーラント層13における、シーラント層13の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合(換言すると、前記シーラント層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記樹脂の合計含有量の割合)は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましく、例えば、90質量%以上であってもよいし、95質量%であってもよい。
【0066】
(抗ウイルス剤)
シーラント層13は、抗ウイルス剤を含む。
シーラント層13においては、含まれている抗ウイルス剤が、シーラント層13の内部から外部に徐々に移行することで、抗ウイルス性を発現する。
【0067】
前記抗ウイルス剤は、抗ウイルス性を有する薬剤であれば、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、水酸化カルシウム、重金属イオン系抗ウイルス剤、第4級アンモニウム化合物等の薬剤が挙げられる。また、抗ウイルス剤としては、これら以外の薬剤も挙げられる。
【0068】
前記重金属イオン系抗ウイルス剤とは、構成元素として重金属を含む抗ウイルス剤をいう。前記重金属イオンとしては、例えば、銀イオン、亜鉛イオン、銅イオン等が挙げられる。これらのうち、銀イオン及び亜鉛イオンが好ましい。
【0069】
前記重金属イオン系抗ウイルス剤に含まれる重金属は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。2種以上である場合の例としては、例えば、前記重金属イオン系抗ウイルス剤が、構成元素として銀と亜鉛の両方を含む場合が挙げられる。
【0070】
前記第4級アンモニウム化合物としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム等が好ましい。
【0071】
シーラント層13に含まれる抗ウイルス剤は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0072】
シーラント層13における、シーラント層13の総質量に対する、抗ウイルス剤の含有量の割合(換言すると、前記シーラント層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、抗ウイルス剤の合計含有量の割合)は、1%~5質量%であることが好ましく、1~4質量%であることがより好ましく、1~3質量%であることがさらに好ましい。
【0073】
抗ウイルス剤の含有量の割合が前記下限値以上であることで、抗ウイルス効果がより高くなる。また、抗ウイルス剤の含有量の割合が前記上限値以下であることで、シーラント層13において、抗ウイルス剤が高い均一性でより安定して保持される。
【0074】
抗ウイルス剤は、前記薬剤(例えば、水酸化カルシウム、重金属イオン系抗ウイルス剤、第4級アンモニウム化合物)以外に、その他の成分を含有していてもよい。
抗ウイルス剤における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
例えば、前記薬剤は、常温及び常圧下において、固形状及び液状のいずれであってもよく、多層フィルムの種類に応じて、適宜適した性状のものを選択すればよい。そして、前記薬剤は、例えば、溶媒に溶解又は分散させて用いてもよく、溶媒で希釈して用いてもよい。すなわち、前記その他の成分としては、例えば、溶媒等が挙げられる。
なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0075】
前記溶媒は、前記薬剤の種類に応じて適宜選択すればよく、その種類は特に限定されない。
好ましい前記溶媒としては、例えば、有機溶媒、水が挙げられる。
【0076】
前記有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル(カルボン酸エステル);メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-メチル-2-プロパノール等のアルコール;メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0077】
前記抗ウイルス剤において、前記溶媒は1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。例えば、2種以上の溶媒を併用する場合、有機溶媒のみを2種以上併用して、有機溶媒のみの混合溶媒を用いてもよいし、1種又は2種以上の有機溶媒と水とを併用して、水性混合溶媒を用いてもよい。
【0078】
前記抗ウイルス剤が前記溶媒を含有する場合、前記抗ウイルス剤において、前記抗ウイルス剤の総質量に対する、溶媒の含有量の割合は、特に限定されず、例えば、10~90質量%とすることができるが、これは一例に過ぎない。
なお、溶媒を含有する前記抗ウイルス剤は、そのまま、シーラント層用樹脂組成物として用いることができる。
【0079】
前記抗ウイルス剤の使用によって、抗ウイルス効果が認められるウイルスとしては、エンベロープを有するウイルスとエンベロープを有さないウイルスが挙げられる。
前記エンベロープを有するウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス、コロナウイルス(SARS-CoV)、B型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(口唇ヘルペスウイルス等)、エボラウイルス、AIDSウイルス等が挙げられる。
前記エンベロープを有さないウイルスとしては、例えば、ノロウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス(風邪)、A型肝炎ウイルス、ポリオウイルス、コクサッキーウイルス(手足口病)等が挙げられる。
【0080】
前記抗ウイルス剤のうち、2種以上の成分を含有するものは、これらの成分を配合することで得られる。
【0081】
各成分の配合時には、すべての成分を添加してからこれらを混合してもよいし、一部の成分を順次添加しながら混合してもよく、すべての成分を順次添加しながら混合してもよい。
混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー、ニーダー又はビーズミル等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
【0082】
配合時の温度、及び配合時間は、各成分が劣化しない限り特に限定されない。配合時の温度は、例えば、5~50℃とすることができ、配合時間は、例えば、5~60分とすることができるが、これらは一例である。
【0083】
(その他の成分)
シーラント層13及びシーラント層用樹脂組成物は、前記樹脂及び前記抗ウイルス剤に該当しない、その他の成分を含んでいてもよい。
シーラント層13及びシーラント層用樹脂組成物における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
シーラント層13及びシーラント層用樹脂組成物において、前記その他の成分は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0084】
・硬化剤、架橋剤
シーラント層13及びシーラント層用樹脂組成物は、前記その他の成分として、硬化剤又は架橋剤を含んでいてもよいし、硬化剤によって硬化されているか、又は架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0085】
シーラント層13における、シーラント層13の総質量に対する、前記その他の成分の含有量の割合(換言すると、前記シーラント層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記その他の成分の合計含有量の割合)は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
【0086】
硬化剤を用いる場合、前記シーラント層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計配合量に対する、硬化剤の配合量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。前記硬化剤の配合量の割合が前記下限値以上であることで、硬化剤の効果がより高くなる。また、前記硬化剤の配合量の割合が前記上限値以下であることで、硬化剤の過剰使用が抑制される。
【0087】
架橋剤を用いる場合、前記シーラント層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計配合量に対する、架橋剤の配合量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。前記架橋剤の配合量の割合が前記下限値以上であることで、架橋剤の効果がより高くなる。また、前記架橋剤の配合量の割合が前記上限値以下であることで、架橋剤の過剰使用が抑制される。
【0088】
シーラント層13は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。シーラント層13が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0089】
シーラント層13の厚さは、特に限定されないが、12μm以下であることが好ましく、0.1~12μmであることがより好ましく、0.2~9μmであることがさらに好ましく、0.3~6μmであることが特に好ましい。
【0090】
前記上限値以下のような薄膜化したシーラント層13は、シーラント層用樹脂組成物を、シーラント層13の形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで得られる。シーラント層13を薄膜化すると、シーラント層13に含まれる抗ウイルス剤の量を低減することができ、コストダウンも可能となる。また、シーラント層13を薄膜化すると、シーラント層13の表面に抗ウイルス剤が剥き出しになりやすく、抗ウイルス効果をより向上させることができる。
【0091】
シーラント層13の厚さが前記下限値以上であることで、シーラント層13の強度がより向上するとともに、シーラント層13から保存対象物への抗ウイルス剤の過剰な移行がより抑制される。
【0092】
シーラント層13が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましいシーラント層13の厚さとなるようにするとよい。
【0093】
シーラント層13の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm3/m2・atm・day以上であることが好ましく、3000~1500000cm3/m2・atm・dayであることがより好ましく、20000~750000cm3/m2・atm・dayであることがさらに好ましく、25000~500000cm3/m2・atm・dayであることが特に好ましい。
【0094】
シーラント層13の前記酸素ガス透過量が前記下限値以上であることで、シーラント層13に含まれる抗ウイルス剤がその外部(多層フィルム1のシーラント層13側の外部)へ容易に移行する。これにより、多層フィルム1は、優れた抗ウイルス効果を発現する。
【0095】
シーラント層13の前記酸素ガス透過量は、いずれもJIS K7126Bに準拠して測定された値である。
【0096】
シーラント層13の軟化温度は、40℃以上180℃以下であることが好ましく、50℃以上160℃以下であることがより好ましく、60℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0097】
シーラント層13の軟化温度が上記範囲内であることにより、シーラント層13同士を容易に接着することができる。
【0098】
[その他の層]
多層フィルム1は、本発明の効果を損なわない範囲内において、外層11、中間層12及びシーラント層13以外に、さらにその他の層を備えていてもよい。
前記その他の層は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0099】
ただし、多層フィルム1は、外層11、中間層12及びシーラント層13が、この順に互いに直接接触して積層されているものが好ましい。このように、外層11と中間層12との間、中間層12とシーラント層13との間に、いずれも前記その他の層を備えていないことにより、多層フィルム1は、抗ウイルス効果にさらに優れたものとなる。
【0100】
また、多層フィルム1は、シーラント層13の中間層12を備えている側とは反対側には、前記その他の層を備えていないことが好ましい。このように、シーラント層13が多層フィルム1の一方の最も外側の層となっていることにより、多層フィルム1は、抗ウイルス効果にさらに優れたものとなる。
多層フィルム1が、前記その他の層を備えている場合、その他の層を、外層11の中間層12を備えている側とは反対側に備えていることが好ましい。
【0101】
多層フィルム1は、25℃、65%RHの雰囲気下における、[シーラント層13の酸素ガス透過量]/[外層11の酸素ガス透過量]が、0.9以上であることが好ましく、1.0以上50以下であることが好ましく、1.2以上40以下であることがより好ましい。
【0102】
25℃、65%RHの雰囲気下における、[シーラント層13の酸素ガス透過量]/[外層11の酸素ガス透過量]が上記下限値以上であることにより、シーラント層13に含まれる抗ウイルス剤を外部への放出を抑制して内容物側に多く放出させることができる。また、25℃、65%RHの雰囲気下における、[シーラント層13の酸素ガス透過量]/[外層11の酸素ガス透過量]が上記上限値以下であることにより、シーラント層13に含まれる抗ウイルス剤を保存対象物側に徐々に放出させることができる。
【0103】
多層フィルム1においては、外層11の軟化温度が、シーラント層13の軟化温度よりも高いことが好ましい。
【0104】
外層11の軟化温度を、シーラント層13の軟化温度よりも高くすることにより、シーラント層13同士を熱溶着させた際に、外層11が一緒に溶けてしまうことを防止することができる。
【0105】
<多層フィルムの製造方法>
多層フィルム1は、上述の中間層用樹脂組成物及びシーラント層用樹脂組成物を用い、多層積層フィルムの公知の製造方法を適用することで製造できる。
例えば、外層11の表面(片面)に中間層用樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、中間層12を形成することで、外層11と、中間層12と、が積層されてなる中間積層体を形成する。このときの中間層12の形成方法は、先に説明した中間層12の製造方法と同じである。
【0106】
次いで、前記中間積層体における中間層12の露出面(外層11が設けられていない表面)に、上述のシーラント層用樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、シーラント層13を形成することで、外層11と、中間層12と、シーラント層13と、が積層されてなる積層体を形成する。このときのシーラント層13の形成方法は、先に説明したシーラント層13の製造方法と同じである。
【0107】
以上により、多層フィルム1が得られるが、外層11、中間層12及びシーラント層13以外に、さらにその他の層を備えてなる多層フィルム1を製造する場合には、上述の製造方法において、前記その他の層が目的の積層位置に配置されるよう、適切なタイミングで、前記その他の層を形成する工程を追加して行ってもよいし、多層構成のフィルム同士を貼り合わせて製造するようにしてもよい。
【0108】
ここまでは、多層フィルム1の製造方法として、中間層用樹脂組成物を用いて、中間層12と前記中間積層体の形成を同時に行う工程を有するものについて説明した。
ただし、多層フィルムの製造方法としては、他のものも挙げられ、例えば、あらかじめ形成済みの中間層12を用いて、前記中間積層体を形成する工程を有する製造方法も挙げられる。
【0109】
このように、あらかじめ形成済みの中間層12を用いる場合には、例えば、以下のように多層フィルムを製造すればよい。
まず、剥離処理面を有する剥離フィルムの前記剥離処理面に、中間層用樹脂組成物を用いて、中間層12を形成する。このときの中間層12の形成方法は、先に説明した中間層12の製造方法と同じである。形成済みの中間層12は、剥離フィルムを備えていない側の表面に、さらに同様に剥離フィルムを備えたものとしてもよい。
【0110】
次いで、適切なタイミングで剥離フィルムを取り除き、中間層12の一方の表面に外層11を貼り合わせ、中間層12の他方の表面に、シーラント層用樹脂組成物を用いて、シーラント層13を形成することで、多層フィルム1を形成する。このときのシーラント層13の形成方法は、先に説明したシーラント層13の製造方法と同じである。
【0111】
また、上記と同様に、あらかじめ形成済みのシーラント層13を用いて、多層フィルムを製造することもできる。
【0112】
ここまでは、多層フィルム1が、外層11とシーラント層13との間に、さらに中間層12を含んでいるものについて説明した。
ただし、多層フィルム1としては、他のものも挙げられ、例えば、多層フィルム1において、外層11とシーラント層13とが中間層12を介さないで直接接触して積層されており、シーラント層13が接着性樹脂を含む場合が挙げられる。シーラント層13が接着性樹脂を含むことにより、中間層12を介さなくても、外層11とシーラント層13とを直接接触して積層させることができる。
【0113】
前記接着性樹脂としては、例えば、上述したものと同様の接着性樹脂が挙げられる。
【0114】
外層11とシーラント層13とが中間層12を介さないで直接接触して積層されており、シーラント層13が前記接着性樹脂を含む場合、シーラント層13において、シーラント層13の総質量に対する、前記接着性樹脂の含有量の割合は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上9質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0115】
<包装体>
本発明の包装体は、上述の本発明の多層フィルムを用いて得られた包装体であって、前記シーラント層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記シーラント層が前記外層よりも前記収容空間側に配置されているものである。
本発明の包装体は、前記多層フィルムを用いていることで、優れた抗ウイルス性を有する。
【0116】
図2は、本発明の第1実施形態の包装体を模式的に示す断面図である。
ここに示す包装体10は、
図1に示す多層フィルム1を用いて形成されたものである。包装体10は、一対の多層フィルム1,1のシーラント層13,13同士の一部が接着され、形成されている収容空間Sを有しており、中間層12が外層11よりも収容空間S側に配置されて、概略構成されている。すなわち、一対の多層フィルム1,1は、これらのシーラント層13,13同士が対向するように配置されている。
包装体10の収容空間Sには、目的とする保存対象物(図示略)が収容される。
【0117】
多層フィルム1を用いて形成された包装体10においては、シーラント層13の内部から収容空間S内へ、抗ウイルス剤が容易に移行する。これにより、包装体10は、収容空間S内の抗ウイルス剤の濃度を適切な水準で一定期間維持でき、優れた抗ウイルス効果を発現する。
【0118】
さらに、多層フィルム1を用いて形成された包装体10においては、外層11の構成を調節することで、抗ウイルス効果の持続性をより高めることが可能である。
【0119】
包装体10を用い、抗ウイルス剤の種類を調節することで、保存後の使用時における保存対象物を、抗ウイルス剤の使用を想起させにくいような、官能上好ましいものとすることもできる。
【0120】
ここまでは、本発明の包装体として、
図1に示す多層フィルム1を用いたものについて説明したが、本発明の包装体は、本発明の他の実施形態の多層フィルムを用いて形成されたものであってもよい。
【0121】
本発明の包装体は、上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図2に示す包装体10は、一対の同じ種類の多層フィルム1,1を用いたものであるが、本発明の包装体は、一対の異なる種類の多層フィルム用いたものであってもよい。
また、本発明の包装体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、多層フィルム以外のその他の構成を備えていてもよい。前記その他の構成は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0122】
本発明の包装体は、本発明の多層フィルムを用いて、収容空間を有するように、シーラント層13同士の一部を接着することで製造できる。
シーラント層13同士の接着は、例えば、公知のヒートシール法等を適用することで、行うことができる。
【0123】
本発明の多層フィルムを用いて包装体を作製することにより、抗ウイルス性を十分に担保することができる。
【0124】
<<第2実施形態>>
<多層フィルム>
図3は、本発明の第2実施形態の多層フィルムを模式的に示す断面図である。
【0125】
ここに示す多層フィルム2は、外層21と、中間層12と、シーラント層23とを備え、中間層12が、外層21と、シーラント層23と、の間に配置されて、概略構成されている。すなわち、多層フィルム2は、外層21と、中間層12と、シーラント層23と、がこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、外層21の露出面が一方の表面となり、シーラント層23の露出面が他方の表面となるように構成されている。
外層21は、抗ウイルス剤を含む。
【0126】
[外層]
外層21は、多層フィルム1を用いて目的物を保存するときに、シーラント層23よりも、この保存対象物側とは反対側に配置される層である。例えば、多層フィルム2を用いて作製された包装体においては、外層21がシーラント層23よりも、この包装体の収容空間とは反対側に配置される。
【0127】
外層21は、樹脂、抗ウイルス剤、その他の成分等の外層21を構成するための成分を含有する外層用樹脂組成物を用いて製造できる。より具体的には、外層用樹脂組成物を、外層21の形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで、外層21が得られる。
外層21が複数層からなる場合は、例えば、1層(単層)の外層21を複数枚作製し、これらを貼り合わせることで、製造できる。
【0128】
外層用樹脂組成物は、例えば、スピンコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ロールコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、グラビアコーター、マルチコーター等の各種コーターを用いて、塗工できる。
【0129】
(樹脂)
樹脂は、外層21において、フィルムの形状を維持するために必要な成分である。前記樹脂は、このような機能を有するものであれば、特に限定されないが、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリアミド等の樹脂を含むことが好ましい。
【0130】
外層21を抗ウイルス剤のみで形成すると、抗ウイルス剤が外層21から滑落しやすくなる。一方、外層21が上記の樹脂を含むことによって、抗ウイルス剤を外層21に留めることができる。また、外層21がポリオレフィンを含むことにより、外層21の耐水性及び耐候性をより向上させることができる。
【0131】
前記ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、酸変性ポリオレフィン、アクリル変性ポリオレフィン等が挙げられる。
【0132】
前記ポリエステルとしては、例えば、飽和共重合ポリエステル等が挙げられる。
前記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリロイル基を有する樹脂である。前記アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等が挙げられる。
【0133】
これらのうち、外層21は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を含んでいることが好ましい。また、外層21の構成材料としては、これら以外の樹脂も挙げられる。
【0134】
外層21において、前記樹脂は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0135】
外層21において、外層21の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
【0136】
(抗ウイルス剤)
外層21は、抗ウイルス剤を含む。
外層21においては、含まれている抗ウイルス剤が、外層21の内部から外部に徐々に移行することで、抗ウイルス性を発現する。
【0137】
前記抗ウイルス剤としては、例えば、第1実施形態に記載したものと同様の薬剤が挙げられる。
【0138】
外層21における、外層21の総質量に対する、抗ウイルス剤の含有量の割合(換言すると、前記外層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、抗ウイルス剤の合計含有量の割合)は、1~5質量%であることが好ましく、1~4質量%であることがより好ましく、1~3質量%であることがさらに好ましい。
【0139】
抗ウイルス剤の含有量の割合が前記下限値以上であることで、抗ウイルス効果がより高くなる。また、抗ウイルス剤の含有量の割合が前記上限値以下であることで、外層21において、抗ウイルス剤が高い均一性でより安定して保持される。
【0140】
前記抗ウイルス剤の使用によって、抗ウイルス効果が認められるウイルスとしては、第1実施形態に記載したものと同様のウイルスが挙げられる。
【0141】
前記抗ウイルス剤のうち、2種以上の成分を含有するものは、これらの成分を配合することで得られる。
【0142】
各成分の配合方法としては、例えば、第1実施形態に記載したものと同様の方法が挙げられる。
【0143】
(その他の成分)
外層21及び外層用樹脂組成物は、前記樹脂及び前記抗ウイルス剤に該当しない、その他の成分を含んでいてもよい。
外層21及び外層用樹脂組成物における前記その他の成分は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されず、任意に選択できる。
外層21及び外層用樹脂組成物において、前記その他の成分は1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0144】
・硬化剤、架橋剤
外層21及び外層用樹脂組成物は、前記その他の成分として、硬化剤又は架橋剤を含んでいてもよいし、硬化剤によって硬化されているか、又は架橋剤によって架橋されていてもよい。
【0145】
外層21における、外層21の総質量に対する、前記その他の成分の含有量の割合(換言すると、前記外層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、前記その他の成分の合計含有量の割合)は、前記その他の成分の種類に応じて、適宜選択すればよく、特に限定されない。
【0146】
硬化剤を用いる場合、前記外層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計配合量に対する、硬化剤の配合量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。前記硬化剤の配合量の割合が前記下限値以上であることで、硬化剤の効果がより高くなる。また、前記硬化剤の配合量の割合が前記上限値以下であることで、硬化剤の過剰使用が抑制される。
【0147】
架橋剤を用いる場合、前記外層用樹脂組成物における、溶媒以外の成分の合計配合量に対する、架橋剤の配合量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、2~25質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることが特に好ましい。前記架橋剤の配合量の割合が前記下限値以上であることで、架橋剤の効果がより高くなる。また、前記架橋剤の配合量の割合が前記上限値以下であることで、架橋剤の過剰使用が抑制される。
【0148】
外層21は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。外層21が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0149】
外層21の厚さは、特に限定されないが、12μm以下であることが好ましく、0.1~12μmであることがより好ましく、0.2~9μmであることがさらに好ましく、0.3~6μmであることが特に好ましい。
【0150】
前記上限値以下のような薄膜化した外層21は、外層用樹脂組成物を、外層21の形成対象面に塗工し、必要に応じて乾燥させることで得られる。外層21を薄膜化すると、外層21に含まれる抗ウイルス剤の量を低減することができ、コストダウンも可能となる。また、外層21を薄膜化すると、外層21の表面に抗ウイルス剤が剥き出しになりやすく、抗ウイルス効果をより向上させることができる。
【0151】
外層21の厚さが前記下限値以上であることで、外層21の強度がより向上するとともに、外層21から外部への抗ウイルス剤の過剰な移行がより抑制される。
【0152】
外層21が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましい外層21の厚さとなるようにするとよい。
【0153】
外層21の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、3000cm3/m2・atm・day以上であることが好ましく、3000~1500000cm3/m2・atm・dayであることがより好ましく、20000~750000cm3/m2・atm・dayであることがさらに好ましく、25000~500000cm3/m2・atm・dayであることが特に好ましい。
【0154】
外層21の前記酸素ガス透過量が前記下限値以上であることで、外層21に含まれる抗ウイルス剤がその外部(多層フィルム2の外層21側の外部)へ容易に移行する。これにより、多層フィルム2は、優れた抗ウイルス効果を発現する。
【0155】
外層21の前記酸素ガス透過量は、いずれもJIS K7126Bに準拠して測定された値である。
【0156】
外層21の軟化温度は、40℃以上180℃以下であることが好ましく、50℃以上160℃以下であることがより好ましく、60℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0157】
外層21の軟化温度が上記範囲内であることにより、多層フィルム2の耐熱性を向上させることができる。
【0158】
[中間層]
多層フィルム2は、外層21とシーラント層23との間に、さらに中間層12を含んでいてもよい。
【0159】
第2実施形態の中間層12は、第1実施形態の中間層12と同様のものであってもよい。
【0160】
[シーラント層]
シーラント層23は、多層フィルム2を用いて目的物を保存するときに、外層21よりもこの保存対象物側に配置される層である。例えば、多層フィルム2を用いて作製された包装体においては、シーラント層23が外層21よりも、この包装体の収容空間側に配置される。
したがって、例えば、シーラント層23が多層フィルム2の一方の最も外側の層となる場合には、シーラント層23は保存対象物と接触する層となる。
【0161】
シーラント層23の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量は、5000cm3/m2・atm・day以下であることが好ましく、4500cm3/m2・atm・day以下であることがより好ましく、4000cm3/m2・atm・day以下であることが特に好ましい。
【0162】
シーラント層23の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、前記抗ウイルス剤について、外層21の内部から中間層12への移行と、中間層12を介したシーラント層23への移行と、シーラント層23を介したその外部(多層フィルム2のシーラント層23側の外部)への移行とが、効果的に抑制される。したがって、外層21の内部から外部へ移行する前記抗ウイルス剤の量を、長期間、適切な水準で維持できるため、多層フィルム2は、より優れた抗ウイルス効果を発現する。
【0163】
さらに、シーラント層23の前記酸素ガス透過量の上限値が小さいほど、外層21、中間層12及びシーラント層23を介したその外部(多層フィルム2の外層21側の外部)から内部への、酸素ガスの移行が効果的に抑制される。したがって、品質を劣化させずに目的物を保存できる効果がより高くなる。
【0164】
一方、シーラント層23の、25℃、65%RH(相対湿度)の雰囲気下における酸素ガス透過量の下限値は、特に限定されず、例えば、50cm3/m2・atm・day、500cm3/m2・atm・day、及び1000cm3/m2・atm・dayのいずれかとすることができるが、これらは一例である。
【0165】
シーラント層23の前記酸素ガス透過量は、いずれもJIS K7126Bに準拠して測定された値である。
【0166】
シーラント層23の軟化温度は、60℃以上240℃以下であることが好ましく、80℃以上220℃以下であることがより好ましく、90℃以上210℃以下であることが好ましい。
【0167】
シーラント層23の軟化温度が上記範囲内であることにより、多層フィルム2の耐熱性を向上させることができる。
【0168】
シーラント層23は、延伸されていてもよいし、延伸されていなくてもよいが、延伸されていることが好ましい。シーラント層23が延伸されていることにより、シーラント層23の酸素ガス透過量をより低下させることができる。また、シーラント層23を伸びにくくすることができ、意匠性を担保することができる。
【0169】
シーラント層23は、二軸延伸されていることが好ましい。シーラント層23が二軸延伸されていることにより、シーラント層23の酸素ガス透過量をより低下させることができる。また、より安価な材料を使用することができ、また伸びの異方性を低減させることができる。
【0170】
シーラント層23は、ポリオレフィンを含むことが好ましい。シーラント層23がポリオレフィンを含むことにより、シーラント層23がポリオレフィンを含まない場合よりもシーラント層23同士を容易に接着することができる。
【0171】
前記ポリオレフィンとしては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、酸変性ポリオレフィン、アクリル変性ポリオレフィン等が挙げられる。これらのうち、シーラント層23は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)を含んでいることが好ましい。また、シーラント層23の構成材料としては、これら以外の樹脂も挙げられる。
【0172】
シーラント層23の構成材料は、1種のみでもよいし2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0173】
シーラント層23において、シーラント層23の総質量に対する、前記樹脂の含有量の割合は、60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましく、例えば、99質量%以上であってもよいし、100質量%であってもよい。
【0174】
シーラント層23は1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。シーラント層23が複数層からなる場合、これら複数層は互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0175】
シーラント層23の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、2~70μmであることがより好ましく、4~40μmであることが特に好ましい。
【0176】
シーラント層23の厚さが前記下限値以上であることで、シーラント層23の強度がより向上するとともに、シーラント層23の前記酸素ガス透過量を小さくした場合と同様の効果がより顕著に得られる。また、シーラント層23の厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが避けられる。
【0177】
シーラント層23が複数層からなる場合には、これら複数層の合計の厚さが、上記の好ましいシーラント層23の厚さとなるようにするとよい。
【0178】
シーラント層23は、第1実施形態のシーラント層13と同様のものであってもよい。すなわち、外層21及びシーラント層23の両方が抗ウイルス剤を含んでいてもよい。
【0179】
[その他の層]
多層フィルム2は、本発明の効果を損なわない範囲内において、外層21、中間層12及びシーラント層23以外に、さらにその他の層を備えていてもよい。
前記その他の層は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0180】
ただし、多層フィルム2は、外層21、中間層12及びシーラント層23が、この順に互いに直接接触して積層されているものが好ましい。このように、外層21と中間層12との間、中間層12とシーラント層23との間に、いずれも前記その他の層を備えていないことにより、多層フィルム2は、抗ウイルス効果にさらに優れたものとなる。
【0181】
また、多層フィルム2は、外層21の中間層12を備えている側とは反対側には、前記その他の層を備えていないことが好ましい。このように、外層21が多層フィルム2の一方の最も外側の層となっていることにより、多層フィルム2は、抗ウイルス効果にさらに優れたものとなる。
多層フィルム2が、前記その他の層を備えている場合、その他の層を、シーラント層23の中間層12を備えている側とは反対側に備えていることが好ましい。
【0182】
多層フィルム2は、25℃、65%RHの雰囲気下における、[外層21の酸素ガス透過量]/[シーラント層23の酸素ガス透過量]が、0.6以上であることが好ましく、4以上380以下であることが好ましく、6以上170以下であることがより好ましい。
【0183】
25℃、65%RHの雰囲気下における、[外層21の酸素ガス透過量]/[シーラント層23の酸素ガス透過量]が上記下限値以上であることにより、外層21に含まれる抗ウイルス剤の内容物側への放出を抑制して外部に多く放出させることができる。また、25℃、65%RHの雰囲気下における、[外層21の酸素ガス透過量]/[シーラント層23の酸素ガス透過量]が上記上限値以下であることにより、外層21に含まれる抗ウイルス剤を外部に徐々に放出させることができる。
【0184】
多層フィルム2においては、外層21の軟化温度が、シーラント層23の軟化温度よりも高いことが好ましい。
【0185】
外層21の軟化温度を、シーラント層23の軟化温度よりも高くすることにより、シーラント層23同士を熱溶着させた際に、外層21が一緒に溶けてしまうことを防止することができる。
【0186】
<多層フィルムの製造方法>
多層フィルム2は、上述の中間層用樹脂組成物及び外層用樹脂組成物を用い、多層積層フィルムの公知の製造方法を適用することで製造できる。
例えば、シーラント層23の表面(片面)に中間層用樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、中間層12を形成することで、シーラント層23と、中間層12と、が積層されてなる中間積層体を形成する。このときの中間層12の形成方法は、先に説明した中間層12の製造方法と同じである。
【0187】
次いで、前記中間積層体における中間層12の露出面(シーラント層23が設けられていない表面)に、上述の外層用樹脂組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させて、外層21を形成することで、外層21と、中間層12と、シーラント層23と、が積層されてなる積層体を形成する。このときの外層21の形成方法は、先に説明した外層21の製造方法と同じである。
【0188】
以上により、多層フィルム2が得られるが、外層21、中間層12及びシーラント層23以外に、さらにその他の層を備えてなる多層フィルム2を製造する場合には、上述の製造方法において、前記その他の層が目的の積層位置に配置されるよう、適切なタイミングで、前記その他の層を形成する工程を追加して行ってもよいし、多層構成のフィルム同士を貼り合わせて製造するようにしてもよい。
【0189】
ここまでは、多層フィルム2の製造方法として、中間層用樹脂組成物を用いて、中間層12と前記中間積層体の形成を同時に行う工程を有するものについて説明した。
ただし、多層フィルムの製造方法としては、他のものも挙げられ、例えば、あらかじめ形成済みの中間層12を用いて、前記中間積層体を形成する工程を有する製造方法も挙げられる。
【0190】
このように、あらかじめ形成済みの中間層12を用いる場合には、例えば、以下のように多層フィルムを製造すればよい。
まず、剥離処理面を有する剥離フィルムの前記剥離処理面に、中間層用樹脂組成物を用いて、中間層12を形成する。このときの中間層12の形成方法は、先に説明した中間層12の製造方法と同じである。形成済みの中間層12は、剥離フィルムを備えていない側の表面に、さらに同様に剥離フィルムを備えたものとしてもよい。
【0191】
次いで、適切なタイミングで剥離フィルムを取り除き、中間層12の一方の表面にシーラント層23を貼り合わせ、中間層12の他方の表面に、外層用樹脂組成物を用いて、外層21を形成することで、多層フィルム2を形成する。このときの外層21の形成方法は、先に説明した外層21の製造方法と同じである。
【0192】
また、上記と同様に、あらかじめ形成済みの外層21を用いて、多層フィルムを製造することもできる。
【0193】
ここまでは、多層フィルム2が、外層21とシーラント層23との間に、さらに中間層12を含んでいるものについて説明した。
ただし、多層フィルム2としては、他のものも挙げられ、例えば、多層フィルム2において、外層21とシーラント層23とが中間層12を介さないで直接接触して積層されており、外層21が接着性樹脂を含む場合が挙げられる。外層21が接着性樹脂を含むことにより、中間層12を介さなくても、外層21とシーラント層23とを直接接触して積層させることができる。
【0194】
前記接着性樹脂としては、例えば、上述したものと同様の接着性樹脂が挙げられる。
【0195】
外層21とシーラント層23とが中間層12を介さないで直接接触して積層されており、外層21が前記接着性樹脂を含む場合、外層21において、外層21の総質量に対する、前記接着性樹脂の含有量の割合は、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上9質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上8質量%以下であることがさらに好ましい。
【0196】
<包装体>
本発明の包装体は、上述の本発明の多層フィルムを用いて得られた包装体であって、前記シーラント層同士の一部が接着され、形成されている収容空間を有し、前記シーラント層が前記外層よりも前記収容空間側に配置されているものである。
本発明の包装体は、前記多層フィルムを用いていることで、優れた抗ウイルス性を有する。
【0197】
図4は、本発明の第2実施形態の包装体を模式的に示す断面図である。
ここに示す包装体20は、
図3に示す多層フィルム2を用いて形成されたものである。包装体20は、一対の多層フィルム2,2のシーラント層23,23同士の一部が接着され、形成されている収容空間Sを有しており、中間層12が外層21よりも収容空間S側に配置されて、概略構成されている。すなわち、一対の多層フィルム2,2は、これらのシーラント層23,23同士が対向するように配置されている。
包装体20の収容空間Sには、目的とする保存対象物(図示略)が収容される。
【0198】
多層フィルム2を用いて形成された包装体20においては、外層21の内部から多層フィルム2の外部へ、抗ウイルス剤が容易に移行し、優れた抗ウイルス効果を発現する。
【0199】
さらに、多層フィルム2を用いて形成された包装体20においては、シーラント層23の構成を調節することで、抗ウイルス効果の持続性をより高めることが可能である。
【0200】
包装体20を用い、抗ウイルス剤の種類を調節することで、保存後の使用時における保存対象物を、抗ウイルス剤の使用を想起させにくいような、官能上好ましいものとすることもできる。
【0201】
ここまでは、本発明の包装体として、
図3に示す多層フィルム2を用いたものについて説明したが、本発明の包装体は、本発明の他の実施形態の多層フィルムを用いて形成されたものであってもよい。
【0202】
本発明の包装体は、上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、一部の構成が変更、削除又は追加されたものであってもよい。
例えば、
図4に示す包装体20は、一対の同じ種類の多層フィルム2,2を用いたものであるが、本発明の包装体は、一対の異なる種類の多層フィルム用いたものであってもよい。
また、本発明の包装体は、本発明の効果を損なわない範囲内において、多層フィルム以外のその他の構成を備えていてもよい。前記その他の構成は特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0203】
本発明の包装体は、本発明の多層フィルムを用いて、収容空間を有するように、シーラント層23同士の一部を接着することで製造できる。
シーラント層23同士の接着は、例えば、公知のヒートシール法等を適用することで、行うことができる。
【0204】
本発明の多層フィルムを用いて包装体を作製することにより、抗ウイルス性を十分に担保することができる。
【実施例0205】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0206】
<多層フィルムの製造>
[実施例1]
以下に示す手順により、多層フィルムを製造した。
(外層及び中間層の製造)
外層(二軸延伸ポリプロピレン、フタムラ化学社製「AF-642」(品番)、厚さ20μm)の一方の表面に、マルチコーターを用いて、ポリブタジエン系接着剤(日本曹達社製「T-180E」)を塗工し、80℃で乾燥させることで、中間層(厚さ2μm)を外層上に形成した。なお、ポリブタジエン系接着剤の塗工時には、グラビアロールの深さを6μmとした。
【0207】
(シーラント層の製造)
エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)(ジャパンコーティングレジン社製「EC-1700」(品番))、(固形分50質量%、水(溶媒)50質量%)(98質量部)の樹脂組成物を調製した。次いで、第四級アンモニウム化合物(大和化学工業社製「バイオデン(登録商標)M-2」、2質量%)を、上記で得られた樹脂組成物の全量と混合して、シーラント層用樹脂組成物を形成した。
【0208】
前記シーラント層用樹脂組成物において、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)の合計含有量の割合は、96質量%であった。
前記シーラント層用樹脂組成物において、溶媒以外の成分の合計含有量に対する、第四級アンモニウム化合物の合計含有量の割合は、4質量%であった。
【0209】
(多層フィルムの製造)
さらに、上記で得られた中間層の外層が設けられている側とは反対側の表面に、マルチコーターを用いて、上記で得られたシーラント層用樹脂組成物を塗工し、80℃で乾燥させることで、シーラント層(厚さ6μm)を中間層上に形成した。なお、シーラント層用樹脂組成物の塗工時には、グラビアロールの深さを110μmとした。
上記のようにして、外層、中間層及びシーラント層がこの順に積層されてなる、多層フィルムを得た。
【0210】
[実施例2]
第四級アンモニウム化合物を銀亜鉛系抗ウイルス剤(シナネンゼオミック社製「AJ10N」、5質量%)としたことを除いては、実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。
【0211】
[実施例3]
第四級アンモニウム化合物を水酸化カルシウム(WM社製「スカロープレミアム」)としたことを除いては、実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。
【0212】
[比較例1]
第四級アンモニウム化合物を2-フェノキシエタノール(富士フイルム和光純薬社製「2-フェノキシエタノール」)としたことを除いては、実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。
【0213】
[比較例2]
第四級アンモニウム化合物をソルビン酸カリウム(関東化学社製「ソルビン酸カリウム」)としたことを除いては、実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。
【0214】
<抗ウイルス性の評価>
宿主細胞にウイルスを感染させ、培養後、遠心分離によって細胞残渣を除去したものをウイルス懸濁液とした。得られたウイルス懸濁液を滅菌蒸留水を用いて10倍希釈し、1~5×107PFU/mLに調整したものを試験ウイルス懸濁液とした。
【0215】
実施例1~3並びに比較例1及び2の多層フィルムから、50mm角のプレート状の試験片を切り出した。この試験片に試験ウイルス懸濁液0.4mLを接種し、密着フィルムをかぶせて、25±1℃で、24時間静置した。
【0216】
24時間静置後、各試験検体に洗い出し液10mLを加え、各試験検体および密着フィルムの表面を擦り、ウイルスを洗い出すことで、試験片からウイルスを回収した。回収したウイルスについて、プラーク法にてウイルス感染価の測定を行った。
下記の式に従って、抗ウイルス活性値(Mv)を算出した。
Mv=log10(Va)-log10(Vb)
log10(Va):ウイルス液を接種した直後の標準布のウイルス感染価の常用対数
log10(Vb):ウイルス液を接種し、24時間静置した後の試験片のウイルス感染価の常用対数
【0217】
以下の基準に従って、抗ウイルス性を評価した。結果を表1に示す。
A:抗ウイルス活性値(Mv)が、3.0以上
B:抗ウイルス活性値(Mv)が、2.0以上、3.0未満
C:抗ウイルス活性値(Mv)が、2.0未満
【0218】
【0219】
表1に示すように、実施例1~3の多層フィルムは、A型インフルエンザ、ネコカリシウイルスのいずれか一方又は両方で、抗ウイルス性の評価が「A」となり、比較例1及び2の多層フィルムよりも十分に抗ウイルス性が担保されていることが確認された。