(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124711
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】電磁束制御部材
(51)【国際特許分類】
H01Q 15/08 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
H01Q15/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022498
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 孝吉
(72)【発明者】
【氏名】荒井 孝之
【テーマコード(参考)】
5J020
【Fターム(参考)】
5J020AA02
5J020BB01
5J020DA02
(57)【要約】
【課題】曲面上(ベース曲面上)に配列された複数の凸部により電磁波の反射を抑制することができる電磁束制御部材を提供すること。
【解決手段】電磁束制御部材は、電磁波を入射させるための入射面と、前記入射面で入射した電磁波を外部に出射させるための出射面と、を有する。前記入射面および前記出射面の少なくとも一方は、ベース曲面と、前記ベース曲面上に配列された複数の凸部と、を含む。前記複数の凸部のそれぞれは、その底面の縁の少なくとも一部が前記ベース曲面と接するように配置された、錐体状の先端部と、前記先端部と前記ベース曲面との間に配置された、部分柱体状の脚部と、を含む。前記先端部の中心軸および前記脚部の中心軸は、前記電磁束制御部材の主軸に平行である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を入射させるための入射面と、前記入射面で入射した電磁波を外部に出射させるための出射面と、を有する電磁束制御部材であって、
前記入射面および前記出射面の少なくとも一方は、
ベース曲面と、
前記ベース曲面上に配列された複数の凸部と、
を含み、
前記複数の凸部のそれぞれは、
その底面の縁の少なくとも一部が前記ベース曲面と接するように配置された、錐体状の先端部と、
前記先端部と前記ベース曲面との間に配置された、部分柱体状の脚部と、
を含み、
前記先端部の中心軸および前記脚部の中心軸は、前記電磁束制御部材の主軸に平行である、
電磁束制御部材。
【請求項2】
前記先端部の底面の大きさおよび形状は、平面視において、前記脚部の底面の大きさおよび形状とそれぞれ同一である、
請求項1に記載の電磁束制御部材。
【請求項3】
前記複数の凸部の、前記先端部の形状および大きさは、それぞれ同一である、
請求項1または2に記載の電磁束制御部材。
【請求項4】
前記複数の凸部は、平面視したときに、前記主軸が通る点を中心とする複数の同心円上に配置され、
前記複数の同心円の各円周上において、前記複数の凸部は等間隔で配置されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電磁束制御部材。
【請求項5】
前記複数の凸部は、それぞれ互いに接している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の電磁束制御部材。
【請求項6】
前記複数の凸部の脚部は、それぞれ、部分正六角柱状である、
請求項5に記載の電磁束制御部材。
【請求項7】
前記入射面および前記出射面は、それぞれ、前記複数の凸部を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の電磁束制御部材。
【請求項8】
前記電磁波は電波を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電磁束制御部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁束制御部材に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信において、より多くの情報を高効率で長距離に伝送するための手段として、レンズアンテナを用いることが知られている。レンズアンテナは、球面波を平面波に変換するなど、電波を含む電磁波の進行方向を制御する機能を有しており、近年、準ミリ波、ミリ波、およびテラヘルツ波などの波長が短い電波を含む電磁波にも使用され始めている。
【0003】
従来、上記レンズアンテナのような電磁束制御部材(レンズ)は、セラミックスや樹脂などの誘電体媒質を含むため、レンズと空気層とで、誘電率が異なり、電磁波に対する屈折率も異なる。そのため、電波や光などを含む電磁波をレンズに入射させると、これらの境界面で電磁波の反射が生じてしまう。
【0004】
このような、電磁波の反射を生じにくくするためのレンズとして、レンズ表面に、外部に向かうにつれて断面積が小さくなる微細な凸部を有するものが知られている。表面に上記の凸部が複数配置されたレンズでは、凸部の先端近傍における電磁波の平均屈折率は、空気中における屈折率とほぼ等しく、凸部の根元近傍における電磁波の平均屈折率は、レンズ中における屈折率ほぼ等しい。そのため、先端から根元にかけて屈折率の変化が緩やかになり、電磁波が入射または出射する際に、反射が生じにくい。そして、電磁波の出射方向において、先端と根元との距離が長いほど(凸部の高さが高いほど)、屈折率は緩やかに変化するため、電磁波の反射をより低減することができる。また、このような凸部がレンズ表面上に多く配置されているほど、電磁波の反射を低減することができる。
【0005】
例えば、特許文献1には、素子面の少なくとも一部に、反射防止機能をもたせるための周期的な凹凸の微細構造が形成された光学素子が開示されている。特許文献1では、上記周期的な微細構造の凹凸方向の素子面に対する角度が、光の入射方向もしくは射出方向に対して±15度以内の角度に設定されることで、光の反射を抑制できたとされている。
【0006】
特許文献2には、基板表面上に円錐形状やピラミッド状を有する微細な凸部が配置された反射防止光学構造付き基板であって、前記微細な凸部の頂部が円弧状に繋がった連続凸部を配置して成る反射防止光学構造付き基板、およびその製造方法が開示されている。特許文献2では、上記基板を用いることで、可視光の反射を抑制できたとされており、曲面上にも上記凸部を配置することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-171857号公報
【特許文献2】特開2012-058584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されているようなレンズでは、
図1Aに示されるように、複数の凸部10のうちの少なくとも一部の凸部10が、電磁波の出射方向(
図1Aにおける矢印)に対して傾いた状態で曲面(ベース曲面)の上に配置されている。このようなレンズでは、電磁波の出射方向における凸部10の高さ(
図1におけるX)を確保しにくく、平均屈折率の変化が緩やかにならないため、電磁波の反射を十分に低減することができないおそれがある。
【0009】
そこで、
図1Bに示されるように、レンズの主軸Y1と凸部10の中心軸Y2とが平行になるように複数の凸部10を配置することが考えられる(特許文献2を参照)。しかしながら、このように凸部10を曲面上(ベース曲面上)に配置すると、主軸Y1に対する曲面の傾きが大きくなるほど、凸部10の根元の幅(
図1BにおけるZ)が長くなり、1つの凸部10が曲面上を占める割合が大きくなってしまう。そのため、レンズの外周部において、凸部10の密度を十分に大きくすることができず、電磁波の反射を十分に抑制できないおそれがある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、曲面上(ベース曲面上)に配列された複数の凸部により電磁波の反射を抑制することができる電磁束制御部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る電磁束制御部材は、電磁波を入射させるための入射面と、前記入射面で入射した電磁波を外部に出射させるための出射面と、を有する電磁束制御部材であって、前記入射面および前記出射面の少なくとも一方は、ベース曲面と、前記ベース曲面上に配列された複数の凸部と、を含み、前記複数の凸部のそれぞれは、その底面の縁の少なくとも一部が前記ベース曲面と接するように配置された、錐体状の先端部と、前記先端部と前記ベース曲面との間に配置された、部分柱体状の脚部と、を含み、前記先端部の中心軸および前記脚部の中心軸は、前記電磁束制御部材の主軸に平行である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、曲面上(ベース曲面上)に配列された複数の凸部により電磁波の反射を抑制することができる電磁束制御部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、電磁波の出射方向に対して、凸部が傾いて配置されたレンズを模式的に示した図である。
図1Bは、凸部の中心軸とレンズの主軸とが平行になるように凸部が配置されたレンズを示す模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る電磁束制御部材の左側面図である。
【
図3】
図3Aは、実施の形態1に係る電磁束制御部材の平面図であり、
図3Bは、実施の形態1に係る電磁束制御部材の底面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1の変形例に係る電磁束制御部材の左側面図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1の変形例に係る電磁束制御部材の底面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態2に係る電磁束制御部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[実施の形態1]
(電磁束制御部材の構成)
図2~
図4は、本発明の実施の形態1に係る電磁束制御部材100の構成を示す図である。
図2は、電磁束制御部材100の左側面図である。
図3Aは、電磁束制御部材100の平面図であり、
図3Bは、電磁束制御部材100の底面図である。
図4は、
図3AのA-A線の断面模式図である。なお、
図4では、ベース曲面121および凸部122の形状をわかりやすくするために、縮尺を変更するとともにハッチングを省略している。
【0016】
図2~
図4に示されるように、電磁束制御部材100は、入射面110と、出射面120と、を有している。出射面120は、ベース曲面121と、複数の凸部122とを有している。
【0017】
電磁束制御部材100に含まれる材料は、本発明の効果を奏するものであれば特に限定されず、制御対象の電磁波を透過させうる材料から適宜選択される。電磁束制御部材100に含まれる材料の例には、セラミックス、樹脂材料、ガラスなどが含まれる。樹脂材料の例には、ポリプロピレン、ポリシクロオレフィン、ポリテトラフルオロエチレンなどが含まれる。
【0018】
本実施の形態において、制御対象の電磁波の種類は、特に限定されない。電磁波は、例えば、ミリ波や準ミリ波などの電波、可視光線、赤外線等である。
【0019】
入射面110は、電磁束制御部材100の表面のうち、電磁波の進行方向を制御しつつ電磁束制御部材100の内部に入射させる面である。入射面110は、電磁束制御部材100の主軸CA1と交わるように配置されている。ここで、本明細書において、「電磁束制御部材100の主軸」とは、電磁束制御部材100の中心軸であり、入射面110および出射面120それぞれの中心を通る直線のことをいう。電磁束制御部材100の主軸は、光軸ともいう。
【0020】
入射面110の形状は、特に限定されない。本実施の形態では、入射面110の形状は、電磁束制御部材100の主軸CA1を回転軸として、回転対称である。より具体的には、本実施の形態では、入射面110の形状は、略円形の平面である。
【0021】
出射面120は、電磁束制御部材100の表面のうち、入射面110で入射した電磁波を、進行方向を制御しつつ電磁束制御部材100の外部に出射させる面である。出射面120は、電磁束制御部材100の主軸CA1と交わるように配置されている。出射面120は、ベース曲面121と、ベース曲面121上に配置された複数の凸部122と、を有する。
【0022】
ベース曲面121は、出射面120における、1または2以上の曲面121aと、1または2以上の仮想曲面121bの総称である。本実施の形態において、曲面121aは、複数の凸部122の間に存在する曲面である。仮想曲面121bは、凸部122の下に位置し、周囲の曲面121aと滑らかに連続して存在すると仮定された曲面である。1または2以上の曲面121aと、1または2以上の仮想曲面121bとは、滑らかに連続して1つのベース曲面121を構成する。
【0023】
ベース曲面121は、曲面121aのみを有していてもよく、仮想曲面121bのみを有していてもよく、曲面121aおよび仮想曲面121bの両方を有していてもよい。
図3Aおよび
図4に示されるように、本実施の形態では、ベース曲面121は、1つの曲面121aと、複数の仮想曲面121bとを有する。すなわち、本実施の形態では、出射面120は、1つの曲面121aと、複数の仮想曲面121b上にそれぞれ配置された複数の凸部122と、を有する。後述するように、入射面110がベース曲面と複数の凸部と、を有する場合は、出射面120は複数の凸部122を有していなくてもよい。この場合は、出射面120のベース曲面121は、曲面121aのみを有する。
【0024】
ベース曲面121の形状は、特に限定されず、電磁波をどのように制御するかに応じて適宜設定される。本実施の形態では、ベース曲面121の形状は、電磁束制御部材100の主軸CA1を回転軸として、回転対称である。より具体的には、本実施の形態では、ベース曲面121は凸状の非球面である。すなわち、本実施の形態に係る電磁束制御部材100は、平凸レンズをベースとして、凸レンズ面(出射面120)に複数の凸部122を配置した形状を有する。
【0025】
図5は、
図4におけるα部分の拡大図である。複数の凸部122は、ベース曲面121上に配列された突起であり、錐体状の先端部123と、部分柱体状の脚部124と、を有する。ここで「部分柱体」とは、柱体から一部を切り欠いて残った部分を意味する。本実施の形態では、複数の凸部122は、ベース曲面121の仮想曲面121b上に配列され、電磁束制御部材100の他の構成要素と一体的に成形されている。そのため、先端部123の根元(
図5におけるB)の近傍では、電磁波に対する平均屈折率は電磁束制御部材100を構成する材料の屈折率とほぼ等しい。一方、先端部123の先端(
図5におけるC)の近傍では、主軸CA1(電磁波の進行方向)に直交する方向の凸部122の断面積が小さく、電磁波に対する平均屈折率は空気の屈折率とほぼ等しい。このとき、先端部123の根元から先端にかけて徐々に断面積が減少するため、電磁束制御部材100内から周囲の空気への屈折率の変化を連続的、かつ、緩やかにすることができる。そのため、出射面120において、出射させる電磁波を反射させにくくすることができる。
【0026】
先端部123は、その底面123aの縁の少なくとも一部がベース曲面121と接するように配置された、錐体である。上述のように、本実施の形態において、先端部123は、脚部124と一体的に形成されており、先端部123の底面123aは、実際には存在しない。そのため、本実施の形態において、「先端部123の底面123a」は、錐体の仮想的な底面である。先端部123は、その底面123aの縁の少なくとも一部がベース曲面121と接するように配置することで、ベース曲面121と先端部123の先端との距離を一定の範囲内に抑えることができるため、ベース曲面121の形状による電磁波の制御を阻害しない。
【0027】
先端部123の形状は、錐体状であれば特に限定されない。先端部123の形状の例には、円錐、正多角錐などが含まれる。本実施の形態では、先端部123は、略円錐形である。ベース曲面121の形状による電磁波の制御を阻害しない観点からは、先端部123の大きさ、および形状は、それぞれ同一であることが好ましい。
【0028】
先端部123の根元から先端までの距離(
図5におけるB-C間の主軸CA1に沿う方向の距離)は、特に限定されないが、電磁波の波長に対して0.1倍以上0.25倍以下であることが好ましい。上記範囲にあることで、屈折率を連続的かつ緩やかに変化させることができ、かつ、電磁束制御部材100を金型成形で製造する際の離型が容易になる。
【0029】
脚部124は、先端部123とベース曲面121との間に配置された、部分柱体である。また、本実施の形態において、脚部124は、柱体の一方の底面124aが、先端部123の底面123aと接するように配置されている。上述のように、本実施の形態において、先端部123は脚部124と一体的に形成されているため、脚部124の底面124aは実際には存在しない。そのため、本実施の形態において「脚部124の底面124a」は、部分柱体の仮想的な底面である。脚部124は、先端部123の直下に、先端部123とベース曲面121との間の空間が埋まるように配置された柱体(他方の底面はベース曲面121よりも入射面110側に位置する)から、ベース曲面121により切り欠いた形状を有する。錐体状の先端部123とベース曲面121との間に部分柱体状の脚部124を配置することで、先端部123とベース曲面121との間隔が変化しても、平面視したときに、1つの凸部122がベース曲面121上に占める面積を一定(柱体の底面と同じ)とすることができる。そのため、出射面120における、複数の凸部122の数(密度)を増やすことができ、出射させる電磁波を反射させにくくすることができる。
【0030】
脚部124の大きさおよび形状は、上記の条件を満たしていれば特に限定されない。脚部124の形状の例には、部分円柱体、部分角柱体などが含まれる。本実施の形態では、脚部124は、部分円柱体である。また、凸部122の数(密度)を増やす観点からは、平面視において、先端部123の底面123aの大きさおよび形状と、脚部124の底面124aの大きさおよび形状とは、近いことが好ましく、同一であることがより好ましい。例えば、脚部124の底面124aが、先端部123の底面123aよりも大きいと、電磁波の一部が、脚部124の底面124aから意図せずに出射されてしまう。そこで、先端部123の底面123aの大きさおよび形状と、脚部124の底面124aの大きさおよび形状とを、略同一にすることで、電磁波を適切に制御しつつ出射させることができる。また、これらの大きさおよび形状を略同一にすることで、複数の凸部122の一体成形を容易に行うことができる。本実施の形態では、先端部123の底面123aの大きさおよび形状と、脚部124の底面124aの大きさおよび形状とは、同一である。
【0031】
複数の凸部122において、先端部123の中心軸CA2および脚部124の中心軸CA2は、それぞれ電磁束制御部材100の主軸CA1に平行である。本実施の形態において、「先端部123の中心軸」とは、先端部123(錐体)の先端を通り、かつ先端部123の底面123aに対して垂直な直線を意味する。また、「脚部124の中心軸」とは、脚部124(柱体)の底面124aの中心(重心)を通り、かつ底面124aに対して垂直な直線を意味する。本実施の形態では、先端部123の中心軸CA2および脚部124の中心軸CA2は、同一直線上に位置する。先端部123の中心軸CA2および脚部124の中心軸CA2が、それぞれ電磁束制御部材100の主軸CA1に平行であると、電磁波の出射方向(
図5におけるの矢印d)において、複数の凸部122の高さ(
図5におけるD)を適切に確保することができるため、先端部123において、屈折率の変化を緩やかにして、電磁波を反射させにくくすることができる。
【0032】
ベース曲面121上における複数の凸部122の配置は、特に限定されない。たとえば、電磁束制御部材100を平面視したとき、複数の凸部122は、電磁束制御部材100の主軸CA1が通る点を中心とする同心円上に配置され、かつ同心円に含まれる同一の円の周上において、複数の凸部122が等間隔で配列されている。このように配列されることで、配列される複数の凸部122の数を増やしつつ、ベース曲面121の面積に対して、複数の凸部122が配置された部分の面積の割合を増加させることができるため、出射される電磁波を反射させにくくすることができる。また、上記のように配置することで電磁束制御部材100を金型成型で製造する際に、離型を容易にすることができる。
図3Aに示されるように、本実施の形態では、複数の凸部122は、主軸CA1が通る点を中心とした同心円C1に含まれる同一の円cの周上に、等間隔で配列されている。
【0033】
本実施の形態において、ベース曲面121の面積に対する、複数の凸部122が配置された部分の面積の割合は、特に限定されないが、電磁波を反射させにくくする観点から、大きいほど好ましく、100%に近いほど好ましい。
【0034】
同一の円cの周上に配列された複数の凸部122の間隔は、電磁束制御部材100の大きさ、および複数の凸部122の大きさや形状に応じて適宜設定され、特に限定されないが、狭いほど好ましい。また、同一の円cの周上において、互いに接していることが好ましい。
【0035】
図6は、
図5におけるβ部分の拡大断面図である。
図6に示されるように、本実施の形態において、複数の凸部122の先端部123は、小突起123bを有していてもよい。たとえば、小突起123bは、電磁束制御部材100を製造する際に用いる、金型に形成されたガスベントによって形成される。小突起123bの大きさは、先端部123の最小断面積よりも小さければよく、特に限定されない。
【0036】
[変形例]
図7~
図9に示されるように、本実施の形態において、電磁束制御部材100の入射面110は、ベース平面111と、ベース平面111上に配列された複数の突起112とを有していてもよい。
図7は、実施の形態1の変形例に係る電磁束制御部材100の左側面図である。
図8は、変形例に係る電磁束制御部材100の底面図である。
図9は、
図8のE-E線の断面模式図である。なお、
図9では、ベース平面111、ベース平面111および突起112の形状をわかりやすくするために、縮尺を変更するとともにハッチングを省略している。
【0037】
ベース平面111は、入射面110における、1または2以上の平面111aと、1または2以上の仮想平面111bの総称である。仮想平面111bは、突起の上に位置し、周囲の平面111aと連続して存在すると仮定された平面である。1または2以上の平面111aと、1または2以上の仮想平面111bとは、滑らかに連続して1つのベース平面111を構成する。
【0038】
ベース平面111は、平面111aのみを有していてもよく、仮想平面111bのみを有していてもよく、両方を有していてもよい。
図9に示されるように、本実施の形態では、ベース平面111は、平面111aおよび仮想平面111bをそれぞれ有する。すなわち、本実施の形態では、入射面110は、平面111aと、仮想平面111b上に配置された複数の突起112と、を有する。
【0039】
ベース平面111の形状は、特に限定されない。本実施の形態では、ベース平面111の形状は、電磁束制御部材100の主軸CA1を回転軸として、回転対称である。より具体的には、本実施の形態では、ベース平面111の形状は、略円形の平面である。
【0040】
複数の突起112は、ベース平面111上に配列された突起である。本実施の形態では、複数の突起112は、ベース平面111の仮想平面111b上に配列され、電磁束制御部材100他の構成要素と一体的に形成されている。このとき、複数の突起112の先端から根元にかけて、徐々に断面積が増加することで、電磁波を入射させる際、空気から電磁束制御部材100への平均屈折率の変化を連続的、かつ、緩やかにすることができる。そのため、入射面110において、電磁波を反射させにくくすることができる。
【0041】
複数の突起112の形状は、電磁波が入射面110に入射する際に、屈折率を連続的かつ緩やかに変化させる観点から、根元から先端にかけて断面積が減少する形状であることが好ましい。複数の突起112の形状の例には、錐台形、錐体などが含まれる。本実施の形態では、複数の突起112の形状は、略円錐である。
【0042】
複数の突起112の大きさ、および形状は、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。ベース曲面121の形状による電磁波の制御を阻害しない観点からは、先端部123の大きさ、および形状は、それぞれ同一であることが好ましい。
【0043】
複数の突起112の、根元から先端までの距離は、特に限定されないが、電磁波の波長に対して0.1倍以上0.25倍以下であることが好ましい。上記範囲にあることで、屈折率を連続的かつ緩やかに変化させることができるため、電磁波を反射させにくくすることができる。また、金型成形で電磁束制御部材100を製造する際の離型を容易に行うことができる。
【0044】
ベース平面111の面積に対して、複数の突起112が配置された部分の面積の割合は、特に限定されないが、電磁波を反射させにくくする観点から、大きいほど好ましく、100%に近いほど好ましい。
【0045】
また、複数の突起112は互いに離れていてもよく、互いに接していてもよいが、電磁波を反射させにくくする観点から、互いに接していることが好ましい。これにより、複数の突起112の数(密度)を増やすことができる。
【0046】
複数の突起112の中心軸CA3と電磁束制御部材100の主軸CA1とは、平行であってもよく、平行でなくてもよい。金型成形で電磁束制御部材100を製造する際の離型を容易に行う観点からは、複数の突起112の中心軸CA3と電磁束制御部材100の主軸CA1とは、平行であることが好ましい。ここで、本実施の形態において、「複数の突起112の中心軸」とは、複数の突起112の先端を通る、ベース平面111に対して垂直な直線のことを意味する。複数の突起112が、錐台形のときは、複数の突起112の先端に位置する底面の中心を通る、ベース平面111に対して垂直な直線を意味する。
【0047】
このように、入射面110が、ベース平面111と、ベース平面111上に配列された複数の突起112とを有することで、電磁束制御部材100に入射させる電磁波についても、入射面110での反射を生じさせにくくすることができる。
【0048】
なお、上記の説明では、入射面110が平面で、出射面120が曲面の電磁束制御部材100について説明したが、本実施の形態に係る電磁束制御部材100は、これに限定されない。たとえば、入射面110が曲面で、出射面120が平面であってもよい。この場合は、入射面110に、錐体状の先端部と、部分柱体状の脚部とを含む複数の凸部が配列される。また、入射面110および出射面120の両方が曲面であってもよい。この場合は、入射面110および出射面120の少なくとも一方に、錐体状の先端部と、部分柱体状の脚部とを含む複数の凸部が配列される。また、入射面110または出射面120は、凹状の曲面であってもよい。
【0049】
また、入射面110および出射面120において、それぞれ、電磁波を反射させにくくする観点からは、入射面110および出射面120が、それぞれ、複数の凸部を有することが好ましい。
【0050】
また、上記の説明では、複数の凸部122が他の構成要素と一体として形成されている電磁束制御部材100について説明したが、本実施の形態に係る電磁束制御部材100は、これに限定されない。たとえば、別体として製造した複数の凸部122を、ベース曲面121の曲面121a上に配列してもよい。
【0051】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る電磁束制御部材100によれば、出射面120のベース曲面121上に、複数の凸部122をほぼ一定の高さで高密度に配置することができる。これにより、電磁波の反射をより抑制することができる。したがって、例えば、電波を用いた無線通信において、電磁束制御部材100をレンズアンテナとして使用することで、高いアンテナ利得を得ることができる。
【0052】
[実施の形態2]
図10は、実施の形態2に係る電磁束制御部材200の平面図である。
図11は、
図10における、F-F線の断面模式図である。
図11では、ベース曲面121および凸部122の形状をわかりやすくするために、縮尺を変更するとともにハッチングを省略している。
【0053】
実施の形態2に係る電磁束制御部材200は、複数の凸部122が互いに接している点で、実施の形態1に係る電磁束制御部材100と異なる。これにより、複数の凸部122をさらに密集させて配列させることができ、かつ、複数の凸部122の数をさらに増やすことができるため、ベース曲面121の面積に対する、複数の凸部122が配置された部分の面積の割合を増加させることができる。そのため、出射させる電磁波をより反射させにくくすることができる。
【0054】
このとき、本実施の形態において、電磁束制御部材200を平面視したとき、ベース曲面121の面積に対する、複数の凸部122が配置された部分の面積の割合は、特に限定されないが、電磁波を反射させにくくする観点から、大きいほど好ましく、100%に近いほど好ましい。
【0055】
複数の凸部122の形状は、特に限定されない。本実施の形態では、先端部123は円錐状であり、脚部124は部分円柱状である。複数の凸部122をより高密度に配置する観点からは、脚部124は部分正六角柱状であることが好ましい。ここで「部分正六角柱状」とは、正六角柱体から一部を切り欠いて残った部分を意味する。この場合、先端部123の形状は、特に限定されず、円錐であってもよく、正六角錐であってもよいが、電磁波に対する異方性(偏波依存性)を低減する観点から円錐であることが好ましい。
【0056】
複数の凸部122が、上記のような形状を有することで、複数の凸部122が互いに接するように配列されたときに、凸部122間に生じる隙間を減らし、ベース曲面121の面積に対して、複数の凸部122が配置された部分の面積の割合を増加させることができる。これにより、平面視上で、出射面120の面積に対して複数の凸部122が占める割合が増加し、出射される電磁波を反射させにくくすることができる。
【0057】
凸部間に生じる隙間をさらに減らす観点から、上記部分正六角柱状および正六角錐の大きさは、それぞれ同一であることが好ましい。
【0058】
なお、上記の説明では、入射面110が平面で、出射面120がベース曲面121を有する電磁束制御部材200について説明したが、本実施の形態に係る電磁束制御部材200は、これに限定されない。たとえば、入射面110がベース曲面を有し、出射面120が平面であってもよい。この場合は、入射面110に、錐体状の先端部と、部分柱体状の脚部とを含む複数の凸部が互いに接するように配列される。また、入射面110および出射面120の両方がベース曲面を有してもよい。この場合は、入射面110および出射面120の少なくとも一方に、錐体状の先端部と、部分柱体状の脚部とを含む複数の凸部が互いに接するように配列される。また、入射面110または出射面120は、凹状のベース曲面を有してもよい。
【0059】
また、入射面110および出射面120において、それぞれ、電磁波を反射させにくくする観点からは、入射面110および出射面120が、それぞれ、複数の凸部を有することが好ましい。
【0060】
(効果)
以上のように、本実施の形態に係る電磁束制御部材200によれば、複数の凸部122が互いに接するように、ベース曲面121上に配列されることで、出射させる電磁波の反射をより抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の電磁束制御部材は、電磁波の反射を抑制することができるため、例えば、無線通信や光学分野において有用である。
【符号の説明】
【0062】
100、200 電磁束制御部材
110 入射面
111 ベース平面
112 突起
120 出射面
121 ベース曲面
122 凸部
123 先端部
124 脚部