(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124728
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】液体動物油及び動物由来水溶液を得る分離方法
(51)【国際特許分類】
C11B 3/12 20060101AFI20220819BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20220819BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20220819BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220819BHJP
A61K 35/35 20150101ALI20220819BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C11B3/12
A61K8/98 ZAB
A61K8/92
A61Q19/00
A61K35/35
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022528
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】504017256
【氏名又は名称】株式会社F・E・C
(71)【出願人】
【識別番号】399037195
【氏名又は名称】清栄薬品 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福本 康文
(72)【発明者】
【氏名】清水 幸子
【テーマコード(参考)】
4C083
4C087
4H059
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA081
4C083BB13
4C083CC03
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD30
4C083EE06
4C083EE12
4C083FF01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB63
4C087CA06
4C087CA19
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4H059BC03
4H059BC42
4H059CA19
4H059CA72
4H059CA73
(57)【要約】
【課題】動物に含まれる油と水を、動物に含まれているままの形で、簡便に分離して得る方法、及び、得られた液体動物油及び動物由来水溶液を有用物として利用した製品を提供すること。
【解決手段】以下の工程(1)ないし工程(4)を全て有する低温真空分離法を用いて、液体動物油及び動物由来水溶液を得る分離方法、該分離方法で得られた動物由来水溶液及び液体動物油、それらを含有する肉の保存液、化粧料、及び、外用剤。
(1)動物の「脂肪を有する部位」を、分離装置が有する容器内に投入する工程
(2)外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を45℃以下に維持しつつ、減圧器で容器内を減圧にする工程
(3)該容器内から留出してきた気体を冷却して動物由来水溶液を得る工程
(4)該容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」を回収する工程
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(1)ないし工程(4)を全て有する低温真空分離法を用いて、液体動物油及び動物由来水溶液を得ることを特徴とする分離方法。
(1)動物の「脂肪を有する部位」を、分離装置が有する容器内に投入する工程
(2)外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を45℃以下に維持しつつ、減圧器で容器内を減圧にする工程
(3)該容器内から留出してきた気体を冷却して動物由来水溶液を得る工程
(4)該容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」を回収する工程
【請求項2】
以下の工程(5)を更に有する請求項1に記載の分離方法。
(5)前記残渣を圧搾又は濾過し、室温にすることによって、液体動物油及び固体残渣を得る工程
【請求項3】
実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、液体動物油及び動物由来水溶液を得る請求項1又は請求項2に記載の分離方法。
【請求項4】
前記工程(2)を、101.3kPa(1気圧)に対し、80kPa以上低い圧力を維持しつつ行う請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の分離方法。
【請求項5】
前記減圧器が、水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタである請求項1ないし請求項4の何れかの請求項に記載の分離方法。
【請求項6】
前記動物が、哺乳類、爬虫類、又は、両生類に属する動物である請求項1ないし請求項5の何れかの請求項に記載の分離方法。
【請求項7】
前記動物の「脂肪を有する部位」が、牛、豚、馬、又は、鶏の脂身である請求項1ないし請求項6の何れかの請求項に記載の分離方法。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の分離方法を使用して得られるものであることを特徴とする動物由来水溶液。
【請求項9】
請求項2ないし請求項7の何れかの請求項に記載の分離方法を使用して得られるものであることを特徴とする液体動物油。
【請求項10】
請求項8に記載の動物由来水溶液を含有することを特徴とする肉の保存液又は化粧料。
【請求項11】
請求項8に記載の動物由来水溶液又は請求項9に記載の液体動物油を含有することを特徴とする化粧料又は外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の工程を有する低温真空分離法を用いて、動物の「脂肪を有する部位」から、液体動物油及び動物由来水溶液を得る分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
動物の脂身等の「脂肪を有する部位」は、牛脂(ヘッド)、豚油(ラード)、鶏油(チーユ)等として一部の料理に使用されてはいるが、大部分は廃棄されている。
上記「脂肪を有する部位」は、通常「脂身」と呼ばれ、20℃では全て固体であり、(加熱して液体とする)料理にしか使い道はなく、該料理に使用される脂身の使用量は、食用肉の使用量に比べれば、非常に少ないものである。従って、大部分は廃棄されている。
【0003】
上記した通り、脂身等の「動物の脂肪を有する部位」については、用途が料理以外にないので、そこから抽出物を得る方法についての技術は非常に少ない。
【0004】
特許文献1には、海産動物を冷凍して水分を固化させた後に真空乾燥し、それを圧搾して油分を得る海産動物油の採油方法が記載されている。
しかしながら、特許文献1は、鮮度の維持を目的としたものであり、海産動物を水性成分と油性成分とに分離するものではなく、採油の対象となる海産動物の部位を指定したものでもなかった。しかも、魚に含まれる油は、そもそも室温で液体であるため、特許文献1記載の圧搾でも得られたに過ぎない。
【0005】
特許文献2には、動物性原料を脱水し、アルコールと触媒の存在下で脂質を分解し、該アルコールを除去した後に、該脂質を鹸化し、不鹸化画分を抽出する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献2では、脂質を分解して鹸化しているのであって、動物内の脂質を化学変化させずに取り出す技術ではなく、しかも、動物に含有される水は不要であった。
【0006】
特許文献3には、動物産物に抽出剤を添加し粉砕してマッシュを形成し、該マッシュを、精製相としての油相、水相及び固相に分離する方法が記載されている。
しかしながら、特許文献3の分離技術は、そもそも抽出を行うものではなく、マッシュの平均粒径を限定して、動物産物から有用物質を得る方法である。
【0007】
このように、動物から、室温で液体の動物油を該動物に含有されている化学構造のままの形で簡便に得る方法に関しては技術がなく、また、動物由来の水溶液、すなわち、動物又は動物の脂身に含有されている水をそのままの形で得る方法もなかった。
近年、自然志向・天然物志向が叫ばれているが、動物由来の油も水も、それらの取得方法が従来技術では不十分であった。
また、(食肉)動物に由来した大量に出る産業廃棄物の処理や、その有効利用についても、従来技術では十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59-135291号公報
【特許文献2】特表2013-508495号公報
【特許文献3】特表2020-534860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、動物に含まれる油と水を、動物に含まれているままの形で、簡便に分離して得る方法を提供することである。
また、該方法で得られた液体動物油及び動物由来水溶液を、有用物として利用した製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、動物の脂身等の「脂肪を有する部位」を、45℃を超えない温度で減圧にして水を完全に留去すると、意外にも、残った油性成分は、室温にしても固化せずに液体であることを見出した。
また、留去した水性成分は、該動物の脂身等に由来した水及び水溶性成分を、分解や変質も組成比変動も殆どなく、動物に含まれている形で(化学構造や成分組成を同じくして)含有するので、極めて優れており、そのためその利用範囲が広いことも見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の工程(1)ないし工程(4)を全て有する低温真空分離法を用いて、液体動物油及び動物由来水溶液を得ることを特徴とする分離方法を提供するものである。
(1)動物の「脂肪を有する部位」を、分離装置が有する容器内に投入する工程
(2)外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を45℃以下に維持しつつ、減圧器で容器内を減圧にする工程
(3)該容器内から留出してきた気体を冷却して動物由来水溶液を得る工程
(4)該容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」を回収する工程
【0012】
また、本発明は、以下の工程(5)を更に有する前記の分離方法を提供するものである。
(5)前記残渣を圧搾又は濾過し、室温にすることによって、液体動物油及び固体残渣を得る工程
【0013】
また、本発明は、実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、液体動物油及び動物由来水溶液を得る前記の分離方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、前記の分離方法を使用して得られるものであることを特徴とする動物由来水溶液を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、前記の分離方法を使用して得られるものであることを特徴とする液体動物油を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、前記の動物由来水溶液を含有することを特徴とする肉の保存液又は化粧料を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記の動物由来水溶液又は前記の液体動物油を含有することを特徴とする化粧料又は外用剤を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前記問題点と課題を解決し、新規の「液体の『動物に含有されている油性の組成物』」を提供できる。また、本発明によれば、新規の「動物の脂身に含有されている水溶液」を提供できる。
【0019】
本発明では、動物の「脂肪を有する部位」を、45℃以下に維持しつつ、減圧にして、水及び水性成分を留去するので、留出してきた気体を冷却して得られる動物由来水溶液も、留去されずに残った動物油も、何れも熱分解も熱による変質も起こっていない。また、低温を維持しつつ分離するので、何れも容器内の酸素等による酸化が起こっていない。
従って、本発明の液体動物油及び動物由来水溶液は、何れも完全に天然由来の新規な液体である。これらが新規な液体であることは、実施例に示す通り、それらが新規な効果を奏することから明らかである。
以下、「動物の『脂肪を有する部位』」を単に「脂身」と略記することがあるが、該脂身には、肉、腱、細胞水、血、骨、皮、臓器等の「脂肪以外の物質・物体」が混入していてもよい。
【0020】
牛脂(ヘッド)、豚油(ラード)、鶏油(チーユ)等の脂身は、何れも、室温(例えば20℃)では固体であり、加熱すると液体になり、再度、室温に冷やせば固体となる。しかしながら、本発明の分離方法を使用して水及び水性成分を留去して得られた油は、その後、室温(例えば20℃)に冷やしても液体である。
本発明で得られる液体動物油は、液体であるために使用し易く、その利用・応用範囲が極めて広くなる。
【0021】
従来のように、室温に冷やすと固体になる理由は、水が完全に留去されていないからであることが本発明により判明した。例えば、脂身を、通常の料理のときのように、160℃に加熱して液体として、その後、常圧で該温度を維持しても水分は完全には抜けない。そのために、室温に冷やすと固化してしまう。
一方、本発明においては、温度に関しては45℃以下と低温であるが、減圧にすることで水及び水性成分を留去した。そのことによって(減圧によって)、本発明の分離方法を使用して水及び水性成分を留去して得られた油は、意外にも、室温(例えば20℃)で液体となる。すなわち、室温に戻しても液体状態のままである。
油を室温で液体の形で取り出すためには、減圧による水の留去が、温度上昇による水の留去より重要である(支配的である)ことを見出して本発明はなされた。
【0022】
従来のように脂身を加熱して(例えば、100℃以上にして)、更に減圧にもして、水及び水性成分を留去して得られた油は、該減圧によって水が抜けるので、室温(例えば20℃)で液体となる。
しかしながら、その場合には、熱分解や熱変質が起こる。また、熱による酸化が起こり、本発明で得られる液体動物油とは全く異なるものとなる。
本発明によって得られる動物油は、液体であることに加えて、熱による変質が起こっていないことに特徴がある。
熱分解・変質・酸化が起こっておらず、かつ、液体である動物油は、それら2つの特徴から、新規性があることは勿論のこと、種々の特性に優れているので、また液体であることも相まって、広く利用されるものである。
【0023】
更に、本発明の分離方法は、対象である脂身を45℃以下に保って行われる。
人の体温は37.0℃であり、致死体温は43℃である。牛や豚の体温は38.6℃であるから、人の場合を参考にすれば、致死体温は約45℃と考えられる。
本発明の分離方法では、分離対象は常に45℃以下に保たれているので、動物が生きている温度に維持されている。従って、脂身に含有される物質は、全て変質することなく、本発明の液体動物油及び動物由来水溶液の中にそのままの形で残っている。
【0024】
実際に、本発明の分離方法で得られた液体動物油及び動物由来水溶液は、45℃を超える温度で得られたものとは性質が異なっている。
45℃を超える温度で得られたものが劣っているので、通常の100℃以上(例えば、料理における160℃以上)の温度を経験した油は、当然に更に劣っている。
該液体動物油は、液体であることもあって、多くの用途があり極めて有用である。
【0025】
一方、留出される水の方に関しては、従来、そもそも、「脂身に含有されている水」については着目すらされていなかった。
本発明の分離方法で得られた動物由来水溶液は、動物が死なない45℃以下で得られているので、全て動物(天然)由来の、かつ、熱による変質のない、優れた水溶液であることは勿論、脂身に含有される45℃以下で蒸留した「単離された動物由来水溶液」自体が新規なものである。
そのため、該動物由来水溶液には、多くの用途があり、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の分離方法において、動物の「脂肪を有する部位」として牛脂(ヘッド)を用いたときの写真である。(a)工程(1)において、動物の「脂肪を有する部位」を容器内に投入した後に上から見た写真 (b)工程(4)において、容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」を上から見た写真
【
図2】本発明の分離方法において、動物の「脂肪を有する部位」として牛肉(ロース)を用いたときの写真である。(a)同上 (b)同上
【
図3】本発明の分離方法において、動物の「脂肪を有する部位」として牛肉(サーロイン)を用いたときの写真である。(a)同上 (b)同上
【
図4】本発明の分離方法において、動物の「脂肪を有する部位」として牛ケンネを用いたときの写真である。(a)同上 (b)同上
【
図5】本発明の分離方法において、動物の「脂肪を有する部位」として牛肉(ロース)を用いたときの写真である。(a)同上 (b)同上
【
図6】本発明に使用する分離装置の全体の一形態を示す概略図である。
【
図7】本発明に使用する分離装置に具備される容器、冷却器、回収容器等の一形態を示す概略断面図である。
【
図8】本発明に使用する分離装置に具備される容器の一形態を示す概略縦断面図である。
【
図9】本発明に使用する分離装置に具備される容器が有する破砕撹拌機の一形態を示す概略斜視図である。
【
図10】本発明に使用する装置に具備される好ましい減圧器である横噴射型の水エジェクタの一形態を示す概略断面図である。
【
図11】本発明に使用する装置に具備される好ましい減圧器である横噴射型の水エジェクタと水タンクと循環ポンプ等の一形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
[分離方法]
【0028】
本発明の分離方法は、以下の工程(1)ないし工程(4)を全て有する低温真空分離法を用いて、液体動物油及び動物由来水溶液を得ることを特徴とする。
(1)動物の「脂肪を有する部位」を、分離装置が有する容器内に投入する工程
(2)外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を45℃以下に維持しつつ、減圧器で容器内を減圧にする工程
(3)該容器内から留出してきた気体を冷却して動物由来水溶液を得る工程
(4)該容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」を回収する工程
【0029】
本発明の分離方法は、上記した工程(1)ないし工程(4)に加えて、更に、以下の工程(5)を有することが好ましい。
(5)前記残渣を圧搾又は濾過し、室温にすることによって、液体動物油及び固体残渣を得る工程
【0030】
<工程(1)>
工程(1)は、動物の「脂肪を有する部位」を、分離装置が有する容器内に投入する工程である。
前記した通り、本発明において、「動物の『脂肪を有する部位』」を、単に「脂身」と略記することがある。
【0031】
「脂身」には、脂肪以外に他の部位が混入していてもよい。工程(1)において、対象物を投入前に、脂肪以外の部位を完全に除くのは極めて面倒である;除かなくても液体動物油及び動物由来水溶液を得ることができる(完全に除く必要がない);除かないことにより生成する工程(5)における固体残渣も、ふりかけ、飼料、肥料、ペットフード等の用途に使用できる;サーロイン、ロース等の霜降り肉の間の脂肪も分離の対象となる;等の理由による。
上記「他の部位」としては、例えば、肉、腱、細胞水、血、骨、血管、皮、臓器等が挙げられる。
【0032】
上記動物としては、特に限定はないが、哺乳類、爬虫類、又は、両生類に属する動物が挙げられる。魚類に属する動物は、脂肪が最初から、室温で液体であることが多いので、本発明の「分離後に初めて液体の油が得られると言う前記した効果」が有効でない場合(特長を生かせない場合)等がある。
【0033】
上記動物としては、牛、豚、馬、鯨、熊、鹿、トナカイ、羊、鶏、アヒル、ウズラ、カエル、ワニ等が挙げられる。中でも、頭数が多いことから、牛、豚、馬又は鶏が好ましく、牛又は豚が特に好ましい。また、「上記脂身」としては、「上記動物の脂身」が挙げられる。
【0034】
動物の「脂肪を有する部位」(脂身)としては、具体的には、牛脂(ヘッド)、豚油(ラード)、鶏油(チーユ)等が挙げられる。また、肉等の「他の部位」を含んだ、牛肉、豚肉、馬肉、鯨肉、鶏肉等;それらの動物の臓器、皮つき皮下脂肪;等も挙げられる。
図1には牛脂(ヘッド)、
図2には脂肪が比較的多い牛肉(ロース)、
図3には牛肉(サーロイン)、
図4には牛ケンネ、
図5には脂肪が比較的少ない牛肉(ロース)を用いたときの写真を示す。
【0035】
上記脂身としては、「通常破棄されているもの」が、好ましいものとして挙げられる。
該廃棄物は、少なくとも日本国では産業廃棄物として扱われるので処理費用が高い。本発明によれば、有用物が獲得できるだけではなく、産業廃棄物の処理費用の節約にもなり、コスト的に極めて有利である。
脂身には、例えば実施例に示す通り、多くの水が含まれている。該水の含有によって産業廃棄物の処理質量が多くなっており、該処理に多くの費用がかかっている。本発明によれば、得られた動物由来水溶液が有用であることに加えて、産業廃棄物の質量を大幅に減らせる。もっとも、本発明で得られる『動物由来水溶液』、並びに、「『液体動物油』及び『固体残渣』を含有する残渣」は、全て有用物となり得る。
【0036】
なお、ケンネは、腎臓の周りの脂肪で、最上級の脂肪として使用されているので、本発明における脂身としては、例えばケンネ等の「料理に使う高価な脂身・脂肪」以外であることが特に好ましい。
上記脂身としては、生のものや、冷凍・冷蔵保存したもの等が好ましく、乾燥したり、調理したり、加工したものは、前記した本発明の効果を奏し難いので、好ましくない場合がある。
【0037】
工程(1)では、上記脂身を分離装置が有する容器内に投入する。
本発明に用いる分離装置の一例の概略図を
図6に示す。また、該分離装置が有する容器の一例の概略図を
図7、
図8及び
図9に示す。
【0038】
本発明の分離方法に使用される分離装置は、一例を
図6に示したように、低温真空分離法の実施が可能で、好ましくは実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、好ましくは撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ減圧し、「脂身」を45℃以下に維持するように減圧器で容器内を減圧して、液体動物油及び動物由来水溶液が得られるようになっている。
【0039】
本発明における「低温真空分離法」は、実質的に抽出媒体も加熱水蒸気も使用せずに、好ましくは撹拌機で撹拌しながら、外部から熱を加えつつ減圧して分離して、液体動物油及び動物由来水溶液を得る方法である。
ここで、「抽出媒体」とは、例えば、水;アルコール類等の有機溶媒;二酸化炭素等の超臨界流体・亜臨界流体;等が挙げられる。上記水蒸気とは、水蒸気蒸留法で使用する100℃の水蒸気のことを言う。
ここで「実質的に使用しない」とは、分離対象の5質量%以下しか使用しないことを言い、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下しか使用しないことであり、特に好ましくは全く使用しないことである。
【0040】
<<分離装置と好ましい分離方法>>
本発明の分離方法に使用される分離装置は、具体的には、例えば、
脂身A及び容器100内を加熱する加熱ユニット120、脂身Aから発生する水蒸気等の気体を取り出す気体取出口130、及び、分離後に「液体動物油を含有する残渣」を取り出す残渣取出口140等を有する容器100;
該気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200;
該容器100内を減圧する減圧器300;並びに;
該冷却器200で冷却されて液化した動物由来水溶液を回収獲得する回収容器400;を具備している。
【0041】
容器100内には、限定はされないが、好ましくは、分離対象である脂身Aを破砕しつつ撹拌する破砕撹拌機110が具備されていることが好ましい(例えば
図9参照)。
なお、本発明によれば、分離中に破砕も撹拌も行わなくても、得られる動物油は室温(20℃)で液体となる。すなわち、破砕と撹拌によって、脂身Aから動物油が室温液体状態で分離されたのではない。水分の除去によって、動物油が室温液体状態で分離された。
【0042】
分離対象となる脂身Aは、投入口103から容器100に投入される。投入される脂身Aは、予め裁断しておいてもよい。
脂身A以外の物質を、上記容器内に実質的に投入しないで分離することが好ましい。本発明では、外部から「分離対象である脂身A以外のもの」を実質的に投入する必要がなく、投入しないことによって得られる液体動物油及び動物由来水溶液は、脂身Aに含有されている成分のみからなるようにできる。言い換えると、本発明によって得られる液体動物油及び動物由来水溶液は、脂身Aに含有されていた成分のみからなる。
【0043】
図7及び
図8に、本発明における分離装置の容器100の一例の概略図を示す。
容器100は、脂身Aを収容し、好ましくは破砕撹拌機110で破砕しながら撹拌し、加熱ユニット120によって外部から熱を加えつつ減圧して分離する容器である。容器100には、破砕撹拌機110が具備されておらず、分離中は破砕も撹拌もせずに分離してもよい。
【0044】
図7~9の容器100は、破砕撹拌機110を収容した下部半円筒部101と、その上に形成された上部角形部102とからなる。少なくとも下部半円筒部101の周囲には、容器100の内部に熱を加える蒸気室121がある。
下部半円筒部101の最下部の中央には、分離後の「液体動物油を含有する残渣」を取り出す残渣取出口140が設けられていることが好ましい。以下、上記括弧内を、単に、「残渣」と略記することがある。
【0045】
図6~8に示すように、上記上部角形部102の上部には、投入口103が設けられていると共に、その投入口103を塞ぐ投入口蓋104が設けられている。
上記上部角形部102の上部には、吸引される蒸気の気体取出口130が設けられ、言い換えれば、脂身Aから発生する気体を取り出すための気体取出口130が設けられ、この気体取出口130には、冷却器200につながる気体配管131が接続されている。
【0046】
本発明の分離方法においては、好ましくは脂身Aを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し、該破砕・撹拌下に分離を行う。
上記破砕・撹拌は、「複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112b」及び「分離装置の内面(好ましくは上記下部半円筒部101の下内面)に設けられた複数の凸型固定刃111」を備えた分離装置内で行うことが、上記効果を得るために特に好ましい。
【0047】
例えば、
図9は、前記破砕撹拌機110の構成の一例を示す斜視図であり、破砕撹拌機110は、容器100の外部に設けられたモータにより回転されるものであり、容器100の端壁105a、105bに回転可能に支持される左右の端板106a、106bと、その先端間に両端が固定された、ほぼ「く」の字115a、115bの形をなす回転刃体112a、112bとによって構成することにより、中心軸を有しない構造(中心軸なしで回転可能の構造)に構成されている。
【0048】
回転刃体112a、112bをほぼ「く」の字形にすることによって、脂身Aを撹拌羽根で破砕しながら撹拌し易くすると共に、「残渣」を容器100の内壁から良好に掻き取り、残渣取出口140に向けて掻き寄せることができる。
本発明の分離方法は、該回転刃体112a、112bを同方向に回転させることで、上記脂身Aを破砕しつつ撹拌し、分離完了後には、「残渣」を上記容器100の内壁から掻き取り、上記残渣取出口140に向けて掻き寄せることが好ましい。ただし、回転刃体112は1個でもよい。また、分離完了後には、残渣を、容器100の上部から、すくい出してもよい。
【0049】
本発明の分離方法は、上記容器100の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の凸型固定刃111を有すると共に、上記破砕撹拌機110は、1個に複数の回転刃113a、113bを有する回転刃体112a、112bを有し、該回転刃体112a、112bを回転させることによって、容器100内の脂身Aを、該凸型固定刃111と該回転刃113a、113bとで破砕しつつ分離することも好ましい。
【0050】
本発明の分離方法は、容器の下部が円筒状になっており、その内壁に複数の固定刃を有すると共に、撹拌機は、1個に複数の回転刃を有する回転刃体を有し、該回転刃体を回転させることによって、容器内の脂身Aを、該固定刃と該回転刃で粗破砕しつつ分離することが好ましい。
【0051】
容器100には、更に、前記容器100内の真空度を計測する真空計108と温度計109a、109bが設けられている(
図7、8参照)。これらは、分離工程における容器内の圧力(減圧度)と温度を測定し、分離時の脂身Aの温度を間接的に測定するために設けられたものであり、また、分離の開始と終了を判定するために設けられている。
【0052】
<工程(2)>
工程(2)は、外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を45℃以下に維持しつつ、減圧器で容器内を減圧にする工程である。
【0053】
<<温度>>
分離中の脂身Aの温度は、上記加熱ユニット120によって、該脂身Aが有する脂肪、酵素、微量成分等を変質又は失活させないように、45℃以下に維持する。特に、分離中は、水の蒸発熱で脂身Aを冷却し、該加熱ユニット120によって加熱し、温度範囲を10℃以上44℃以下に維持することが好ましい。
分離中の該脂身Aの温度は、15℃以上42℃以下がより好ましく、20℃以上40℃以下が更に好ましく、25℃以上38℃以下が特に好ましく、30℃以上36℃以下が最も好ましい。
【0054】
該温度が低過ぎると、商業的規模や工業的規模を考えた場合、蒸発分離に時間がかかり過ぎる場合等がある。
一方、該温度が高過ぎると、該脂身Aが有する物質を変質・分解・失活・酸化させてしまう場合等がある。
上記温度範囲であると、脂身Aが有する、成分組成・純度、極微量成分、低沸点成分、不安定物質、水等を、変化も変質・分解もさせずに、液体動物油及び動物由来水溶液として得ることができる。
分離中の脂身Aの温度(範囲)は、本発明の効果を得るために極めて重要であり、たとえ投入する脂身Aが個体として死んでいたとしても、動物個体が正常にその生命を維持できる、又は、細胞等が死なない上記温度範囲(特に温度上限)が望ましい。
【0055】
容器100に設けられた温度計109a、109bは、破砕撹拌機110を含む容器100の熱伝導等を利用して、分離中の脂身Aの温度を十分正確に測定できるようになっている。
【0056】
<<圧力>>
減圧器300の気体排出能力は、特に限定はないが、「内容積が1m3の容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m3/時間以上」とすることが、分離効率、水の蒸発速度、蒸発による冷却等が好適範囲になるので好ましい。
該減圧器300としては、蒸発熱による冷却する、脂身Aの温度を好適範囲に維持する、上記の気体排出能力を有する、等の点から、水エジェクタ301(特に好ましくは水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301)が好ましい。
【0057】
本発明における容器100には、脂身Aから発生する気体を取り出す気体取出口130が設置されている。気体取出口130の近傍も、十分な熱伝導等で前記温度範囲に維持して、気体取出口130の近傍で水滴が生じないようにする(結露させないようにする)ことが好ましい。
【0058】
本発明の分離方法における分離装置には、例えば
図6に示したように、容器100の工程的後段に、気体取出口130から取り出された気体を冷却する冷却器200が具備されている。該冷却器200としては、公知のものが用いられる。
冷却器200の後ろには、容器100内を減圧する減圧器300が具備されている。
該減圧器300としては、水の蒸発熱による吸熱で、脂身Aの温度が45℃を超えないように、又は、所定の好ましい温度範囲になるように、限定はされないが、内容積が1m
3の容器を用いた場合に換算して、常圧体積20m
3/時間以上の気体排出能力を有する減圧器300を用いることが好ましい。
【0059】
図6に一例を示したように、水タンク303に水(好ましくは、予め水チリングユニットで冷却した水)を貯め、水循環ポンプ302で加圧した水を送液し、水エジェクタ301において該加圧水を噴出させることにより減圧することが好ましい。流動液体は静止液体より圧力が低い性質(ベルヌーイの定理)を用いて減圧して気体を排出する。
【0060】
本発明においては、上記分離を、101.3kPa(1気圧)に対し、80kPa以上低い圧力を維持しつつ行うことが好ましい。減圧器300による減圧度は、分離中は、該容器内の圧力を、101.3kPa(1気圧)に対し、80kPa以上低くすることが好ましい。
減圧器300による減圧度は、分離中は、該容器内の圧力を1kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-100.3kPa]以上10kPa[1気圧(101.3kPa)に対して、-91.3kPa]以下に維持することがより好ましい。
更に好ましくは1.3kPa(1気圧に対して、-100kPa)以上9kPa(1気圧に対して、-92.3kPa)以下であり、特に好ましくは2kPa(1気圧に対して、-99.3kPa)以上8.6kPa(1気圧に対して、-92.7kPa)以下であり、特に好ましくは3.3kPa(1気圧に対して、-98kPa)以上8.3kPa(1気圧に対して、-93kPa)以下である。
【0061】
減圧度が低過ぎると(圧力が高過ぎると)、水の蒸発熱による脂身Aの冷却が期待できずに、脂身Aの温度が高くなり過ぎる場合、分離に時間がかかり過ぎる場合等があり、その結果、液体動物油や動物由来水溶液に含まれる有効成分が、分解・変質・酸化等する場合がある。
一方、減圧度が高過ぎると(圧力が低過ぎると)、下記する「該圧力における水の沸点」と「脂身Aの前記温度範囲」との関係で、そこまで低圧力にする必要がない場合があり、また、量産化を図る場合、十分な気体排出能力を有した上に、そこまで減圧度を上げられる減圧器300が存在しない又は極めて高価になる場合等がある。
【0062】
温度(℃) 水の蒸気圧(kPa)
10 1.2
20 2.3
30 4.2
40 7.4
50 12.3
【0063】
減圧器300による容器内圧力(減圧度)は、分離中は、分離対象である脂身Aの温度における水の蒸気圧の0.10倍以上1.0倍以下が好ましく、0.2倍以上0.99倍以下がより好ましく、0.4倍以上0.95倍以下が更に好ましく、0.6倍以上0.9倍以下が特に好ましい。
【0064】
上記減圧器300は、水を噴射することによって減圧を達成する水エジェクタ301であることが前記理由から好ましく、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタ301であることが、高い減圧度と共に高い気体排出能力を有するために特に好ましい。
すなわち、減圧度と気体排出能力の両立ができ、前記本発明の効果を奏し易い点から好ましい。水循環ポンプ302を有して横噴射型であると、特に気体排出能力を上げ易い。
本発明の分離方法は、(産業)廃棄物の処理も兼ねていることが好ましいが、該産業廃棄物は、一般に1バッチ(1回分)の量が多いので、減圧器300として、気体排出能力が大きいものを使用することは重要である。
【0065】
上記気体排出能力と減圧度(真空度)の両立は、「水エジェクタ301」で好適に達成でき、特に、水循環ポンプ302を有する横噴射型の水エジェクタを用いることによって、好適に両立が可能である。
前記した高い気体排出能力の数値は、かかる水エジェクタで達成できるとは言っても汎用的な数値ではない。前記した高い気体排出能力の数値は、(例えば好ましい態様を下記する)水エジェクタを有する減圧器の構造(特に、吸引孔、水位、消音器等);噴射する水の温度;噴射速度;噴射ノズル径;単位時間当たりの噴射量;噴射距離等を調整して得る。
【0066】
本発明における特に好ましい減圧器300の態様を
図10と
図11に示す。
図10と
図11に示した「横噴射型の水エジェクタ」は、水を受ける筒形の水入口片1と、該水入口片1の下流側に設けられ、該水入口片1から流入する水と吸引ガスとを混合する主管スロート6と、該主管スロート6の下流側端部に接続して設けられ、内径が末広がり形状をなすパイプからなる出力片7を有している。
更に要すれば、円筒形状であり、該出力片7の下流側端部に設けられ、水と吸引ガスとの混合物を流す消音器12と、該消音器12に取付けられ、水が流出する際に該消音器12内に空気を取り入れて、該消音器12内の気圧の急変を防止する吸気管11とを備えている。
【0067】
また、上記した水エジェクタ301においては、水入口片1と主管スロート6と出力片7とを収容する外被管8を備え、該外被管8に、細胞水と酵素の気体を供給する吸引管3を取付け、該外被管8を消音器12に接続し、主管スロート6は、水入口片1の終端部に連接して設けられ複数個のガス吸引孔4を有する円筒形パイプからなることが好ましい。
【0068】
図10は、水エジェクタ301とそれに連結される消音器12の概略を、
図11には、水エジェクタ301を横方向に設置して水タンク303に接続する形態を示す。
該水入口片1よりも直径の太い主管スロート6が入口片1に接続されている。該主管スロート6の形状は単純なパイプ形状である。
該主管スロート6の入口部には、パイプ管壁を貫通する複数個の吸引孔4が開けられており、該吸引孔4は、吸引管3を通じ真空引き(減圧)する際に、吸込みガス(細胞水と酵素の気体)を主管スロート6内に吸引するためのものである。
12は消音器であり、
図10のように、該消音器12の内径は、水エジェクタ301の出力片7の出口の内径より太いパイプ形状を有する。
【0069】
本発明における減圧器300の好ましい態様は、
図11に示すように、水エジェクタの極めて高い気体排出能力を図るために、消音器12を漬ける水を溜めた水タンク303を備え、水エジェクタ301で使用された水は、一旦、水タンク303に蓄えられる構造になっている。水タンク303の水は、冷却水で20℃以下に冷却されることが好ましい(
図6)。
【0070】
本発明における好ましい水エジェクタ301は、
図10に示したように、主管スロート6に吸引孔4が設けられている。それによって、管同士の隙間からガスを吸込む従来の水エジェクタと比べて、前記したような高い(大きい)気体排出能力を有するようになる。
また、本発明の好ましい水エジェクタ301とそれに連結される消音器12は、
図11のように、水の循環路が水タンク303の水位17より低く、横向き水平に使用設置することが可能となり、該「水循環ポンプを有する横噴射型の水エジェクタ」は、前記したような高い気体排出能力を有するようになる。
【0071】
本発明の分離方法は、45℃以下という比較的低温での水の蒸気圧を勘案して、該蒸気圧に対し必要以上に容器100内の圧力(減圧度)を低くすることに拘らず、その分を気体排出能力の向上に振り向けて、対象となる脂身Aを脂身Aに含有される水の蒸発熱で冷却することが好ましい。
また、そのように条件設定することで、商業的工業的規模の脂身Aの量(処理量)でも、十分な圧力(減圧度)と十分な気体排出能力を有する減圧器300が存在し得る。本発明は、産業廃棄物の処理も兼ねていることが好ましいので、1バッチの質量が大きい脂身でも対応できる減圧器として、気体排出能力が大きい上記した減圧器300を使用することが好ましい。
【0072】
<<時間>>
主たる分離(脂身Aに含有される水の95質量%が留去され分離されるまで)に要する時間は、投入量にもより特に限定はされないが、30分以上24時間以下が好ましく、45分以上12時間以下がより好ましく、1時間以上6時間以下が特に好ましい。
【0073】
時間が短過ぎる場合は、蒸発熱による冷却ができないで昇温する場合、そもそも本格生産規模で、45℃以下と言う比較的低温で、短時間で水を蒸発させるだけの減圧器がない又は極めて大型になる場合等がある。
一方、時間が長過ぎる場合は、時間が無駄でコストアップになる場合;本発明における前記した特殊な分離条件(容器内圧力、気体排出能力等)や、分離装置を適用する意味が薄れる場合;等がある。
【0074】
<工程(3)>
工程(3)は、容器100の中から留出してきた気体を冷却して動物由来水溶液を得る工程である。
【0075】
本発明の分離方法における分離装置には、例えば
図6、
図7に示したように、上記冷却器200で冷却されて液化した動物由来水溶液を回収・獲得する回収容器400が具備されている。回収容器400に回収された動物由来水溶液は、動物由来水溶液取出バルブ405を開くことによって取り出す。
該冷却器200は特に限定はなく、公知のものが使用される。
【0076】
<工程(4)>
工程(4)は、該容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」(残渣)を回収する工程である。
該残渣には、例えば、
図1~
図5のそれぞれ(b)に示したように、液体動物油及び固体残渣が含まれている。該残渣は、容器100の上からすくい出してもよいし、前記した残渣取出口140から取り出してもよい。該残渣中の液体動物油は、残渣取出口140から取り出すことが好ましい。
【0077】
本発明の分離方法では、減圧にすることによって、温度は低いものの、完全に水を取り除く(留去させる)ことができる。本発明によって、脂身から完全に水を取り除く(留去させる)ためには、温度(の高さ)より、圧力(の低さ)や気体排出能力(の高さ)の方が効果的であることが分かった。
水を完全に除くと、室温(例えば20℃)に戻しても、残渣中の液体動物油は液体であった。料理では、常圧で高温にして脂身を一旦液体にしても、水が完全には抜けない(抜けていない)ので、室温(例えば20℃)に戻した際に固体となる。
【0078】
<工程(5)>
工程(5)は、前記残渣を圧搾又は濾過し、室温にすることによって、液体動物油及び固体残渣を得る工程である。
得られた残渣中の液体動物油は、工程(4)の後、そのまま回収してもよいが、好ましくは、工程(5)によって、該残渣を液体動物油及び固体残渣に分けて、それぞれを利用することが好ましい。
工程(5)を行うことによって、脂身Aに含有されるほぼ全ての液体動物油を回収することができ、固体残渣の混入していない液体動物油を得ることができる。一方、固体残渣を単離することができ、該固体残渣は別途用途に有用物として使用することができる。
【0079】
前記残渣の圧搾又は濾過は、加熱下に行うことが、粘度が低くて扱い易い、圧搾又は濾過の作業性が良い等の点から好ましい。圧搾又は濾過の際の温度は、特に限定はないが、35℃以上60℃以下が好ましく、40℃以上55℃以下がより好ましく、45℃以上50℃以下が特に好ましい。圧搾又は濾過は、液体動物油が変質しないうちに手早く行うことが好ましい。
【0080】
圧搾と濾過は組み合わせて行うこと(圧搾濾過)も好ましい。濾材は特に限定はないが、不織布が、濾過容量が大きく、目詰まりし難い等のために好ましい。
【0081】
[動物由来水溶液]
本発明は、前記の分離方法を使用して得られるものであることを特徴とする動物由来水溶液でもある。
【0082】
本発明の動物由来水溶液の用途としては、水性又はエマルジョンの化粧料、肉の保存液等が挙げられる。本発明は、前記の動物由来水溶液を含有することを特徴とする肉の保存液又は化粧料でもある。
また、本発明の動物由来水溶液は、一般食品、健康食品等の食品の原料としても用いられる。
【0083】
<化粧料>
該化粧料としては、具体的には、例えば、スキンローション、収れん化粧水、柔軟化粧水等の化粧水;保湿液、美容液等の化粧液;ヘアウォーター等の整髪料;トニック等の養毛料;ヘアリンス;乳液;日やけ止め若しくは日やけ用化粧料;洗顔料、クレンジング、ボディーソープ、ハンドソープ等の洗浄料;シェービング液;パック;ボディーリンス;等が挙げられる。
【0084】
<肉の保存液>
該「肉の保存液」は、ブライン液のように、肉にかけたり、肉につけて保存したりして使用される。ブライン液は、塩と砂糖を水に溶解したものであるが、本発明の「肉の保存液」には塩や砂糖を配合せず、脂身を分離して得た動物由来水溶液をそのまま使用することが好ましい。
該「肉の保存液」は、肉の保存用にも用いられるし、肉を美味しくするためにも用いられる。保存の対象となる動物の肉は、動物由来水溶液を得た動物とは、同一でも異なっていてもよい。
【0085】
<外用剤>
また、本発明の動物由来水溶液は、外用剤の原料としても用いられる。該外用剤の例としては、後記するものが挙げられる。
【0086】
[液体動物油]
本発明は、前記の分離方法を使用して得られるものであることを特徴とする液体動物油でもある。
【0087】
本発明の液体動物油の用途としては、油性又はエマルジョンの化粧料、外用剤等が挙げられる。
また、一般食品、健康食品等の食品の原料としても用いられる。
【0088】
<化粧料>
該化粧料としては、具体的には、例えば、油性クリーム;乳液;スキンオイル、ベビーオイル等の化粧用油;マッサージ料;口紅;頬紅;ヘアオイル、チック、ブロー料、ポマード、ヘアクリーム等の整髪料;ヘアローション等の養毛料;シャンプー等の洗髪料;等が挙げられる。
【0089】
<外用剤>
該外用剤としては、具体的には、例えば、軟膏・クリーム剤、外用液剤、点眼剤、点鼻剤、坐剤、貼付剤、吸入剤、舌下剤が挙げられる。
【0090】
本発明は、前記の動物由来水溶液又は前記の液体動物油を含有することを特徴とする化粧料又は外用剤でもある。
【0091】
[固体残渣]
本発明の分離方法の工程(5)で、「工程(4)で得られた残渣」を圧搾又は濾過して、液体動物油及び固体残渣を得るが、該固体残渣も有用である。
分離対象である「脂身」には、脂肪以外に、例えば、肉、腱、細胞水、血、骨、血管、皮、臓器等の「他の部位」が含まれていてもよい。これらは固体残渣として回収される。
該固体残渣は、ふりかけ、飼料、肥料、ペットフード等の用途に使用できる。
【実施例0092】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
実施例1
<牛脂(ヘッド)>
9.25kgの牛脂を、
図7~9に示す容器内に投入した(
図1(a)参照)。
図6、7に示すように、外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を38℃に維持しつつ、
図10、11に示す減圧器で容器内を減圧にした。容器内の圧力は、1気圧(101.3kPa)に対して、-97.0kPa~-98.0kPaの圧力(真空度)とした。
【0094】
容器内から留出される気体は、
図6に示した冷却器で冷却した。減圧開始から10分で、動物由来水溶液が得られ始めた。
また、減圧開始から20分で、容器内に液体動物油が観察された。
動物由来水溶液が得られなくなるまで、1時間30分かけて、38℃に維持しつつ、上記圧力を維持した。
【0095】
図6に示したような回収容器に、動物由来水溶液1.30kgを回収した。
【0096】
一方、
図1(b)に示すように、容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」(残渣)を回収した。
該残渣を、不織布でできた濾布を用いて、45℃で圧搾又は濾過して、濾過下として液体動物油5.25kgを得、濾過上として固体残渣2.70kgを得た。
該固体残渣には0.2質量%の水が含まれていた。
【0097】
実施例2
<ロース牛肉>
6.05kgのロース牛肉を、約3cm角に切り、
図7~9に示す容器内に投入した(
図2(a)参照)。
図6、7に示すように、外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を40℃に維持しつつ、
図10、11に示す減圧器で容器内を減圧にした。容器内の圧力は、1気圧(101.3kPa)に対して、-97.0kPa~-98.0kPaの圧力(真空度)とした。
【0098】
容器内から留出される気体は、
図6に示した冷却器で冷却した。減圧開始から15分で、動物由来水溶液が得られ始めた。
また、減圧開始から20分で、容器内に液体動物油が観察された。
動物由来水溶液が得られなくなるまで、1時間かけて、40℃に維持しつつ、上記圧力を維持した。
【0099】
図6に示したような回収容器に、動物由来水溶液2.20kgを回収した。
【0100】
一方、
図2(b)に示すように容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」(残渣)を回収した。
該残渣を、不織布でできた濾布を用いて、45℃で圧搾又は濾過して、濾過下として液体動物油1.80kgを得、濾過上として固体残渣2.05kgを得た。
該固体残渣には0.5質量%の水が含まれていた。
【0101】
実施例3
<サーロイン牛肉>
6.05kgのサーロイン牛肉を、約2cm角に切り、
図7~9に示す容器内に投入した(
図3(a)参照)。
図6、7に示すように、外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を37℃に維持しつつ、
図10、11に示す減圧器で容器内を減圧にした。容器内の圧力は、1気圧(101.3kPa)に対して、-97.0kPa~-98.0kPaの圧力(真空度)とした。
【0102】
容器内から留出される気体は、
図6に示した冷却器で冷却した。減圧開始から10分で、動物由来水溶液が得られ始めた。
また、減圧開始から15分で、容器内に液体動物油が観察された。
動物由来水溶液が得られなくなるまで、45分かけて、37℃に維持しつつ、上記圧力を維持した。
【0103】
図6に示したような回収容器に、動物由来水溶液1.45kgを回収した。
【0104】
一方、
図3(b)に示すように容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」(残渣)を回収した。
該残渣を、不織布でできた濾布を用いて、45℃で圧搾又は濾過して、濾過下として液体動物油1.65kgを得、濾過上として固体残渣1.55kgを得た。
該固体残渣には0.7質量%の水が含まれていた。
【0105】
実施例4
<牛ケンネ>
9.05kgの牛ケンネを、
図7~9に示す容器内に投入した(
図4(a)参照)。
図6、7に示すように、外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を39℃に維持しつつ、
図10、11に示す減圧器で容器内を減圧にした。容器内の圧力は、1気圧(101.3kPa)に対して、-97.0kPa~-98.0kPaの圧力(真空度)とした。
【0106】
容器内から留出される気体は、
図6に示した冷却器で冷却した。減圧開始から10分で、動物由来水溶液が得られ始めた。
また、減圧開始から15分で、容器内に液体動物油が観察された。
動物由来水溶液が得られなくなるまで、1時間30分かけて、39℃に維持しつつ、上記圧力を維持した。
【0107】
図6に示したような回収容器に、動物由来水溶液1.00kgを回収した。
【0108】
一方、
図4(b)に示すように容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」(残渣)を回収した。
該残渣を、不織布でできた濾布を用いて、45℃で圧搾又は濾過して、濾過下として液体動物油2.70kgを得、濾過上として固体残渣0.85kgを得た。
該固体残渣には0.3質量%の水が含まれていた。
【0109】
実施例5
<ロース牛肉>
9.40kgのロース牛肉を、約2cm角に切り、
図7~9に示す容器内に投入した(
図5(a)参照)。
図6、7に示すように、外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を36℃に維持しつつ、
図10、11に示す減圧器で容器内を減圧にした。容器内の圧力は、1気圧(101.3kPa)に対して、-97.0kPa~-98.0kPaの圧力(真空度)とした。
【0110】
容器内から留出される気体は、
図6に示した冷却器で冷却した。減圧開始から15分で、動物由来水溶液が得られ始めた。
また、減圧開始から40分で、容器内に液体動物油が観察された。
動物由来水溶液が得られなくなるまで、3時間かけて、36℃に維持しつつ、上記圧力を維持した。
【0111】
図6に示したような回収容器に、動物由来水溶液4.95kgを回収した。
【0112】
一方、
図5(b)に示すように容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」(残渣)を回収した。
該残渣を、不織布でできた濾布を用いて、45℃で圧搾又は濾過して、濾過下として液体動物油1.20kgを得、濾過上として固体残渣3.25kgを得た。
該固体残渣には0.7質量%の水が含まれていた。
【0113】
実施例6
<豚油(ラード)>
9.40kgの豚油を、約3cm角に切り、
図7~9に示す容器内に投入した(図示せず)。
図6、7に示すように、外部から熱を加えつつ減圧し、該動物の「脂肪を有する部位」を37℃に維持しつつ、
図10、11に示す減圧器で容器内を減圧にした。容器内の圧力は、1気圧(101.3kPa)に対して、-97.0kPa~-98.0kPaの圧力(真空度)とした。
【0114】
容器内から留出される気体は、
図6に示した冷却器で冷却した。減圧開始から15分で、動物由来水溶液が得られ始めた。
また、減圧開始から20分で、容器内に液体動物油が観察された。
動物由来水溶液が得られなくなるまで、2時間かけて、37℃に維持しつつ、上記圧力を維持した。
【0115】
図6に示したような回収容器に、動物由来水溶液5.10kgを回収した。
【0116】
一方、
図5(b)に示すように容器内に残った「該動物由来水溶液が除かれた『液体動物油を含有する残渣』」(残渣)を回収した。
該残渣を、不織布でできた濾布を用いて、45℃で圧搾又は濾過して、濾過下として液体動物油1.10kgを得、濾過上として固体残渣0.50kgを得た。
該固体残渣には0.5質量%の水が含まれていた。
【0117】
実施例7、比較例1
(1)牛脂を、1気圧(101.3kPa)に対して、-97.0kPa~-98.0kPaの圧力(真空度)とし、温度を37℃とし、低温真空分離法で、実施例1に準じて、動物油及び動物由来水溶液を得た。
動物由来水溶液の流出が止まった時点で分離を終了した。以下、同様である。
(2)上記(1)において、温度だけを120℃とし、動物油及び動物由来水溶液を得た。
(3)上記(1)において、常圧(1気圧)で、温度を37℃とし、動物油及び動物由来水溶液を得た。
(4)上記(1)において、常圧(1気圧)で、温度を120℃とし、動物油及び動物由来水溶液を得た。
【0118】
水と油への分離の可否、動物油の酸化の有無、固体か液体化について、結果を以下の表1に示す。
表1中、「液体」、「固体」は、動物油を分離後、室温(20℃)にしたときの状態を示す。
【0119】
【0120】
本発明の(1)の分離方法の場合だけが、動物油に酸化がなく、分離された動物油を室温(20℃)にしたときに液体であった。
【0121】
評価例1
<動物由来水溶液を化粧料として評価>
実施例1~6で得られた動物由来水溶液、純水、及び、市販の化粧水を、10人の男女に、コットンを使用して手の甲に付けてもらった。
それを1日に3回、5日間、繰り返してもらったところ、手の甲のみずみずしさ、保湿性等の手の感触、手の甲の皺の改善具合が、以下の順番であった。
[実施例1~6で得られた全ての動物由来水溶液]>[市販の化粧水]>[純水]
【0122】
評価例2
<動物由来水溶液を肉の保存液として評価>
牛肉の霜降り肉500g、硬い鶏の胸肉500g、及び、脂身を取り除いた豚肉500gに、実施例1~6で得られた動物由来水溶液200g、純水200g、及び、塩と砂糖を溶解したブライン液200gを、それぞれふりかけ、それぞれポリエチレンの袋に入れてよく馴染ませ、5℃の冷蔵庫で12時間、及び、25℃の室温で1週間静置した。
【0123】
5℃の冷蔵庫で12時間静置した3種の肉の味は、好みにもよるが概ね以下の順番であった。
[実施例1~6で得られた全ての動物由来水溶液]=[ブライン液]>[純水]
【0124】
また、25℃の室温で1週間静置した3種の肉の質は、以下の順番であった。
[実施例1~6で得られた全ての動物由来水溶液]≧[ブライン液]>>[純水]
3種の肉について、ブライン液では、肉に塩味と甘みがつき、肉の自然の味が失われたと言った人が多かった。
また、3種の肉について、純水では、肉が変質し不味くなった。
一方、実施例1~6で得られた全ての動物由来水溶液では、3種の肉全てにおいて、肉を腐らせず、肉を変質させず、1週間静置する前の肉と同様の自然の旨味を保っていて、総合的に最も優れていた。
【0125】
牛脂(実施例1~5)や豚脂(実施例6)から得られた動物由来水溶液は、何れも、別の動物の肉(牛肉、豚肉、鶏肉)の保存液としても有効であることが分かった。
【0126】
評価例3
<動物由来水溶液を外用剤として評価>
評価例1と同様にして評価を行った。ただし、評価項目を、しもやけ、ひび、又は、あかぎれ等の改善・治癒の程度とした。その結果、効果は、以下の順番であった。
[実施例1~6で得られた全ての動物由来水溶液]>[市販の化粧水]>[純水]
【0127】
評価例4
<液体動物油を化粧料として評価>
評価例1と同様にして評価を行った。ただし、実施例1~6で得られた動物由来水溶液、及び、ワセリンを、10人の男女に、各人の手で、手の甲に付けてもらった。
手の甲のみずみずしさ、保湿性等の手の感触、又は、手の甲の皺の改善具合が、以下の順番であった。
[実施例1~6で得られた全ての動物由来水溶液]>>[ワセリン]
【0128】
評価例5
<液体動物油を外用剤として評価>
評価例1、3と同様に、外用剤としての評価を行った。10人の男女に、各人の手で、手の甲に付けてもらった。評価項目を、しもやけ、ひび、又は、あかぎれ等の改善・治癒の程度とした。その結果、効果は、以下の順番であった。とした。
[実施例1~6で得られた全ての動物由来水溶液]>>[ワセリン]
本発明の分離方法で得られた液体動物油及び動物由来水溶液は、今までの他の分離方法による、脂身からの油性又は水性の分離物とは、水を含めた化学種及び成分組成を異にしている。また、分離工程において、高熱をかけず分離溶媒も使用しないので、実質的に完全に天然の脂身由来のものであり、得られる物の性能が極めて優れている。また、廃棄物の有効利用にもなる。
従って、本発明は、食肉製造・食肉加工分野;美容分野;一般食品、健康食品、医薬品、化粧料、肥料、飼料等の製造・使用分野;農業・畜産業分野;廃棄物処理業分野;等において、広く実施・利用されるものである。