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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012474
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】吸音材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20220107BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G10K11/168
B32B5/24 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114326
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】391021570
【氏名又は名称】呉羽テック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 万充
(72)【発明者】
【氏名】逸見 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】峯村 慎一
(72)【発明者】
【氏名】田中 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】立崎 晃樹
【テーマコード(参考)】
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AK03C
4F100AK03D
4F100AK03E
4F100AK04B
4F100AK04C
4F100AK04D
4F100AK04E
4F100AK41A
4F100AK48B
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA11C
4F100BA11D
4F100BA11E
4F100DG06A
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100DG20A
4F100DJ00B
4F100DJ01C
4F100DJ01D
4F100DJ01E
4F100EC09
4F100EC09A
4F100EC09B
4F100GB07
4F100GB31
4F100GB48
4F100JA04A
4F100JA04B
4F100JA13
4F100JA13C
4F100JA13D
4F100JA13E
4F100JD02
4F100JD02A
4F100JD02B
4F100JD02C
4F100JD02D
4F100JD02E
4F100JH01
5D061AA03
5D061AA06
5D061AA22
5D061AA23
5D061AA25
5D061AA26
5D061BB21
5D061BB24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】500~1250Hzの低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を有する吸音材を提供する。
【解決手段】フィルム又は低通気性不織布からなる膜状体1並びに多孔質構造体からなる多孔質層2を有する積層体A及びシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層3を有する積層体Bを含む吸音材5であり、音源側から積層体A、積層体Bの順に配置され、積層体Aは、音源側から膜状体、多孔質層の順に配置され、膜状体の通気度が30cm3/cm2・sec以下であり、シート状発泡体の厚さが0.5mm以上3.0mm以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム又は低通気性不織布からなる膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を有する積層体A、及びシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層を有する積層体Bを含む吸音材であり、
音源側から前記積層体A、前記積層体Bの順に配置され、
前記積層体Aは、音源側から膜状体、多孔質層の順に配置され、
前記膜状体の通気度が30cm3/cm2・sec以下であり、
前記シート状発泡体の厚さが0.5mm以上3.0mm以下である吸音材。
【請求項2】
前記積層体Aの通気度が0.5cm3/cm2・sec以上30cm3/cm2・sec以下である請求項1に記載の吸音材。
【請求項3】
前記多孔質構造体が、平均繊維径が5μm以上50μm以下の繊維から構成される、嵩密度が0.010g/cm3以上0.200g/cm3以下の不織布である請求項1又は2に記載の吸音材。
【請求項4】
前記積層体Aとして、前記膜状体よりもさらに音源側に配置される、不織布からなるカバー層を含む請求項1~3のいずれかに記載の吸音材。
【請求項5】
前記積層体Bの通気度が20cm3/cm2・sec以下である請求項1~4のいずれかに記載の吸音材。
【請求項6】
厚さが5mm以上30mm以下、嵩密度が0.010g/cm3以上0.300g/cm3以下、通気度が10cm3/cm2・sec以下である請求項1~5のいずれかに記載の吸音材。
【請求項7】
前記2枚以上のシート状発泡体の、シート状発泡体間の平均距離が、100μm以上である請求項1~6のいずれかに記載の吸音材。
【請求項8】
前記シート状発泡体の嵩密度が0.005g/cm3以上0.120g/cm3以下である請求項1~7のいずれかに記載の吸音材。
【請求項9】
前記シート状発泡体の通気度が0.5cm3/cm2・sec以上20cm3/cm2・sec以下である請求項1~8のいずれかに記載の吸音材。
【請求項10】
前記シート状発泡体が発泡性樹脂シートであり、前記発泡性樹脂シートの基材樹脂がポリオレフィン系樹脂である請求項1~9のいずれかに記載の吸音材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸音材に関するものであり、特にシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層を有する吸音材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物、電気製品、車両等における騒音源からの音を吸収して騒音を低減するために、吸音材が用いられている。そして、前記吸音材としては、建築物、電気製品、車両等の幅広い用途に適用可能とするために、幅広い周波数に対して吸音性能を有することが望まれている。例えば、特許文献1には、短繊維不織布と吸音フィルム層とが積層された複合不織布を含む吸音材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-174398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来から知られる上記特許文献1の吸音材は、3000~5000Hzというような高周波数域における吸音性能は満足できるものであるが、低周波数域及び中周波数域における吸音性能が十分に満足できない場合があった。そこで本発明は、500~1250Hzの低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を有する吸音材を提供することを課題として掲げた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を、音源側から膜状体、多孔質層の順に有する積層体A、及び厚さが0.5mm以上3.0mm以下のシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層を有する積層体Bを含み、音源側から積層体A、積層体Bの順に配置する吸音材により、500~1250Hzの低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を発揮することを見出し、本発明を完成した。なお、「音源側」とは吸音材において音源に近い側のことを示す。
【0006】
すなわち、本発明に係る吸音材は、以下の点に要旨を有する。
[1] フィルム又は低通気性不織布からなる膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を有する積層体A、及びシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層を有する積層体Bを含む吸音材であり、
音源側から前記積層体A、前記積層体Bの順に配置され、
前記積層体Aは、音源側から膜状体、多孔質層の順に配置され、
前記膜状体の通気度が30cm3/cm2・sec以下であり、
前記シート状発泡体の厚さが0.5mm以上3.0mm以下である吸音材。
[2] 前記積層体Aの通気度が0.5cm3/cm2・sec以上30cm3/cm2・sec以下である[1]に記載の吸音材。
[3] 前記多孔質構造体が、平均繊維径が5μm以上50μm以下の繊維から構成される、嵩密度が0.010g/cm3以上0.200g/cm3以下の不織布である[1]又は[2]に記載の吸音材。
[4] 前記積層体Aとして、前記膜状体よりもさらに音源側に配置される、不織布からなるカバー層を含む[1]~[3]のいずれかに記載の吸音材。
[5] 前記積層体Bの通気度が20cm3/cm2・sec以下である[1]~[4]のいずれかに記載の吸音材。
[6] 厚さが5mm以上30mm以下、嵩密度が0.010g/cm3以上0.300g/cm3以下、通気度が10cm3/cm2・sec以下である[1]~[5]のいずれかに記載の吸音材。
[7] 前記2枚以上のシート状発泡体の、シート状発泡体間の平均距離が、100μm以上である[1]~[6]のいずれかに記載の吸音材。
[8] 前記シート状発泡体の嵩密度が0.005g/cm3以上0.120g/cm3以下である[1]~[7]のいずれかに記載の吸音材。
[9] 前記シート状発泡体の通気度が0.5cm3/cm2・sec以上20cm3/cm2・sec以下である[1]~[8]のいずれかに記載の吸音材。
[10] 前記シート状発泡体が発泡性樹脂シートであり、前記発泡性樹脂シートの基材樹脂がポリオレフィン系樹脂である[1]~[9]のいずれかに記載の吸音材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を、音源側から膜状体、多孔質層の順に有する積層体A、及び厚さが0.5mm以上3.0mm以下のシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層を有する積層体Bを含み、音源側から積層体A、積層体Bの順に配置する吸音材により、500~1250Hzの低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を有する吸音材を提供することが可能となる。また、本発明の吸音材は嵩密度が小さく軽量であるため、軽量化が求められる用途においての吸音材として好ましく用いることができる。さらに、本発明の吸音材は高周波数域(例えば、3000~5000Hz)においても優れた吸音性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態に係る吸音材の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る発泡体層の一例を示す概略断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る吸音材の別の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、必要に応じて図示例を参照しつつ本発明に係る吸音材に関して詳細に説明する。ただし、本発明は下記図示例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えることは可能であり、それらはいずれも本発明の技術範囲に包含される。
【0010】
図1又は図3の概略断面図に示すように、吸音材5は、フィルム又は低通気性不織布からなる膜状体1、並びに多孔質構造体からなる多孔質層2を有する積層体A、及びシート状発泡体31を2枚以上積層した発泡体層3を有する積層体Bを含み、音源側から前記積層体A、前記積層体Bの順に配置され、前記積層体Aが、音源側から膜状体1、多孔質層2の順となるように配置され、前記膜状体1の通気度が30cm3/cm2・sec以下であり、前記シート状発泡体31の厚さが0.5mm以上3.0mm以下であることを特徴とする。吸音材5は、音が当たるとまず、膜状体1において共振系が生じ、その共振周波数に近い周波数の音波により吸音材5が振動する。このように吸音材5が振動して、音の持つ振動エネルギーが吸音材5の振動エネルギーや熱エネルギーに変換されることにより、吸音材5は吸音性能を発揮する。続いて、伝達された音が多孔質層2の内部に存在する孔に当たり、孔中の空気の運動に対して摩擦抵抗が働いて音のエネルギーが熱エネルギーに変換されることにより、吸音材5は高周波数域においても高い吸音性能を発揮する。さらに、伝達された音が発泡体層3に当たり、発泡体層3において共振系が生じ、その共振周波数に近い周波数の音波により吸音材5がさらに振動することで、例えば500~1250Hzといった低周波数域及び中周波数域において吸音材5は優れた吸音性能を発揮する。本発明者らが検討したところ、このような吸音性能は、前記積層体Bを前記積層体Aよりも音源側に配置した場合には発揮されず、また前記シート状発泡体31が1枚以下の場合にも発揮されずに、前記積層体Bを前記積層体Aよりも反音源側に配置し、且つ前記シート状発泡体31を2枚以上積層することで達成できるものであると分かった。以下、吸音材5について詳細に説明する。なお、「反音源側」とは吸音材5において音源から遠い側のことを示す。
【0011】
1.積層体A
積層体Aは、少なくとも膜状体1及び多孔質層2を有する積層構造体である。積層体Aにおいて膜状体1及び多孔質層2は、音源側から膜状体1、多孔質層2の順に配置される。
【0012】
積層体Aの通気度としては、0.0cm3/cm2・sec以上であればよく、0.05cm3/cm2・sec以上が好ましく、0.2cm3/cm2・sec以上がより好ましく、0.5cm3/cm2・sec以上がさらに好ましく、1.0cm3/cm2・sec以上がよりさらに好ましく、1.5cm3/cm2・sec以上がいっそう好ましく、2.5cm3/cm2・sec以上が特に好ましく、また30cm3/cm2・sec以下が好ましく、28cm3/cm2・sec以下がより好ましく、25cm3/cm2・sec以下がさらに好ましく、20cm3/cm2・sec以下がよりさらに好ましい。積層体Aの通気度が前記範囲内であることにより、高周波数域における吸音性能に優れ、且つ低周波数域及び中周波数域においての吸音性能により優れる吸音材5を得ることができる。
【0013】
積層体Aの厚さとしては、1.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、2.5mm以上がさらに好ましく、また8.0mm以下が好ましく、7.0mm以下がより好ましく、6.0mm以下がさらに好ましい。積層体Aの厚さが前記範囲内であることにより、軽量で嵩高な吸音材5を得ることができる。
【0014】
1-1.膜状体
吸音材5は、膜状体1において共振系が生じ、その共振周波数に近い周波数の音波により膜状体1全体が振動して、音の持つ振動エネルギーが膜状体1を含む吸音材5の振動エネルギーや熱エネルギーに変換されることにより、吸音効果を発揮する。
【0015】
膜状体1を構成するのは、フィルムであっても、低通気性不織布であってもよい。
【0016】
膜状体1の通気度としては、0.0cm3/cm2・sec以上であればよく、0.05cm3/cm2・sec以上が好ましく、0.2cm3/cm2・sec以上がより好ましく、0.5cm3/cm2・sec以上がさらに好ましく、1.0cm3/cm2・sec以上がよりさらに好ましく、1.5cm3/cm2・sec以上がいっそう好ましく、2.5cm3/cm2・sec以上が特に好ましく、また30cm3/cm2・sec以下であり、29cm3/cm2・sec以下が好ましく、28cm3/cm2・sec以下がより好ましく、27cm3/cm2・sec以下がさらに好ましい。なお、膜状体1は前記好ましい範囲の通気度を達成するために、孔を有していてもよい。前記孔は、後記する積層体Aが有する各層間を接着する際のニードルパンチ加工や熱融着時に形成されてもよい。膜状体1の通気度が前記範囲内であることにより、音波(特に低周波数域及び中周波数域の音波)が吸音材5に当たった際に、膜状体1が振動し易く、優れた吸音性能を発揮することができる。特に通気度が0.0cm3/cm2・secよりも大きい場合(より好ましくは0.05cm3/cm2・sec以上の場合)、音波により膜状体1が振動しつつ、膜状体1の表面で反射せず、膜状体1の厚さ方向に存在する孔を通過する際の摩擦によっても音を減衰させることができるため好ましい。
【0017】
膜状体1としてのフィルムは、1枚のフィルムであってもよく、2枚以上のフィルムが一体化したフィルムであってもよい。
【0018】
フィルムの目付としては、10g/m2以上が好ましく、20g/m2以上がより好ましく、25g/m2以上がさらに好ましく、また80g/m2以下が好ましく、70g/m2以下がより好ましく、60g/m2以下がさらに好ましい。なお、2枚以上のフィルムが一体化したフィルムの場合には、一体化したフィルムの目付が前記範囲内であることが好ましい。フィルムの目付が前記範囲内であることにより、軽量な吸音材5を得ることができる。
【0019】
フィルムの厚さとしては、0.010mm以上が好ましく、0.015mm以上がより好ましく、0.020mm以上がさらに好ましく、0.025mm以上がよりさらに好ましく、また0.100mm以下が好ましく、0.080mm以下がより好ましく、0.070mm以下がさらに好ましく、0.060mm以下がよりさらに好ましい。なお、2枚以上のフィルムが一体化したフィルムの場合には、一体化したフィルムの厚さが前記範囲内であることが好ましい。フィルムの厚さが前記範囲内であることにより、機械的強度に満足でき、且つ音波(特に低周波数域及び中周波数域の音波)が吸音材5に当たった際に、フィルムからなる膜状体1が振動し易く、より優れた吸音性能を発揮することができる。
【0020】
フィルムとしては、合成樹脂フィルムが好ましく、加熱により熱融着性を示す熱融着性フィルムであってもよく、加熱により熱融着性を示さない非熱融着性フィルムであってもよい。積層体Aを一体化する場合には、フィルムを吸音部材としてだけでなく、接着部材としても用いることが可能な点から、フィルムとしては少なくとも熱融着性フィルムを1枚以上有することが好ましい。
【0021】
熱融着性フィルムの融点としては、200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、170℃以下がさらに好ましく、160℃以下がよりさらに好ましく、また70℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。フィルムを、吸音材5において吸音部材としてだけでなく、積層体Aを一体化するための接着部材としても用いる場合、熱融着性フィルムの融点が前記範囲内であることにより、積層体Aにおける一体化のための接着強さを十分に得ることができる。
【0022】
熱融着性フィルムとしては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン-酢酸ビニル共重合体を原料とする熱融着性フィルムが好適である。中でも、入手が容易な点から、ポリエチレン樹脂を原料とする熱融着性フィルムが好ましい。
【0023】
非熱融着性フィルムの融点としては、300℃以下が好ましく、290℃以下がより好ましく、270℃以下がさらに好ましく、また200℃以上が好ましく、210℃以上がより好ましく、220℃以上がさらに好ましい。
【0024】
非熱融着性フィルムとしては、例えば、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂を原料とする非熱融着性フィルム等が挙げられる。
【0025】
膜状体1としての低通気性不織布は、通気度が30cm3/cm2・sec以下である限り、乾式不織布でも湿式不織布でもよいが、所望の低通気度を容易に達成できる点から、極細繊維で緻密な不織布を得られるメルトブローン不織布又はエレクトロスピニング不織布が好ましく、メルトブローン不織布がより好ましい。
【0026】
低通気性不織布の繊維径としては、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、1.2μm以上がよりさらに好ましく、また10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、4μm以下がよりさらに好ましい。低通気性不織布の繊維径が前記範囲内であることにより、低通気性不織布を所望の通気度とし易く、且つ音波(特に低周波数域及び中周波数域の音波)が吸音材5に当たった際に、低通気性不織布からなる膜状体1が振動し易く、より優れた吸音性能を発揮することができる。
【0027】
低通気性不織布の目付としては、5g/m2以上が好ましく、8g/m2以上がより好ましく、10g/m2以上がさらに好ましく、12g/m2以上がよりさらに好ましく、また150g/m2以下が好ましく、130g/m2以下がより好ましく、120g/m2以下がさらに好ましく、110g/m2以下がよりさらに好ましい。低通気性不織布の目付が前記範囲内であることにより、軽量な吸音材5を得ることができる。
【0028】
低通気性不織布の厚さとしては、0.10mm以上が好ましく、0.15mm以上がより好ましく、0.18mm以上がさらに好ましく、0.20mm以上がよりさらに好ましく、また1.8mm以下が好ましく、1.6mm以下がより好ましく、1.4mm以下がさらに好ましく、1.2mm以下がよりさらに好ましい。低通気性不織布の厚さが前記範囲内であることにより、機械的強度に満足でき、且つ音波(特に低周波数域及び中周波数域の音波)が吸音材5に当たった際に、低通気性不織布からなる膜状体1が振動し易く、より優れた吸音性能を発揮することができる。
【0029】
低通気性不織布を構成する素材としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂が挙げられ、中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンの樹脂が好ましい。
【0030】
1-2.多孔質層
多孔質層2は、吸音材5を嵩高く仕上げるために積層される多孔質構造体からなる層である。また、吸音材5は、多孔質層2において伝達された音が多孔質層2内部に存在する孔に当たり、孔中の空気の運動に対して摩擦抵抗が働いて音のエネルギーが熱エネルギーに変換されることにより、吸音効果を発揮する。
【0031】
多孔質層2を構成する多孔質構造体としては、気泡体構造を有するものであればよく、例えば、織布及び不織布等の繊維集合体、樹脂性樹脂体等が挙げられる。多孔質構造体としては、繊維の弾性をバネとして利用し、音が繊維と衝突を繰り返すことで音のエネルギーのさらなる低減を達成できるため、繊維集合体が好ましく、不織布がより好ましく、短繊維不織布がさらに好ましい。前記短繊維は、繊維長が100mm以下であることが好ましく、80mm以下であることがより好ましく、70mm以下であることがさらに好ましく、また10mm以上であることが好ましく、30mm以上であることがより好ましい。
【0032】
繊維集合体を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-塩化ビニル共重合体等のアクリル樹脂;等を原料とする合成繊維;レーヨン、ポリノジック等の再生繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維等の半合成繊維;等の各種化学繊維、及び綿、パルプ、カポック、麻、毛、絹等の天然繊維;が挙げられる。これらの繊維は、単独で使用しても、混綿して使用してもよい。中でも、繊維集合体が一定の剛性を有するよう、合成繊維を使用することが好ましく、ポリエステル樹脂を原料とする繊維(つまり、ポリエステル繊維)がより好ましい。
【0033】
繊維集合体を構成する繊維の繊維径としては、1.0μm以上が好ましく、3.0μm以上がより好ましく、5.0μm以上がさらに好ましく、7.0μm以上がよりさらに好ましく、また80μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましく、50μm以下がよりさらに好ましい。また、繊維集合体を構成する繊維の平均繊維径としては、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、13μm以上がさらに好ましく、15μm以上がよりさらに好ましく、また60μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、45μm以下がさらに好ましく、40μm以下がよりさらに好ましい。繊維集合体を構成する繊維の繊維径及び/又は平均繊維径が前記範囲内であることにより、多孔質層2を嵩高く仕上げることが可能となる
【0034】
繊維集合体には、中空繊維、捲縮繊維及び中空捲縮繊維から選ばれる少なくとも1種以上の嵩高繊維が含まれることも好ましい。これらの嵩高繊維を含むことにより、多孔質層2を嵩高く、且つ嵩密度を低くすることが可能となる。
【0035】
嵩高繊維の使用量は、例えば、繊維集合体を構成する繊維100重量%中、5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、また100重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。
【0036】
多孔質層2を構成する多孔質構造体としての不織布は、乾式不織布でも湿式不織布でもよいが、乾式不織布であることが好ましい。繊維の結合方法としては、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法等が挙げられ、サーマルボンド法及び/又はニードルパンチ法が好ましい。上記嵩高繊維を用いる場合には、嵩高繊維の嵩高さを損なわないために、繊維の結合方法としては、サーマルボンド法がより好ましい。なお、サーマルボンド法を用いて不織布を製造するときは、不織布には後記の低融点繊維が一定量含まれる。
【0037】
サーマルボンド法を用いて多孔質層2としての不織布を製造する場合には、不織布の骨格となる繊維よりも融点が50℃以上低い繊維(低融点繊維ともいう)が不織布に含まれているとよい。低融点繊維を混綿することにより、繊維間の結合を強固にできる上、溶融・固化後の低融点繊維が不織布の剛性を高めることが可能となる。融点差が50℃未満であると、加熱条件によっては、骨格となる繊維、及び低融点繊維の両方が溶融又は軟化して不織布全体が固化したり、或いは骨格となる繊維、及び低融点繊維の両方が溶融又は軟化せず、不織布中の繊維の結合力が弱まる虞があるため好ましくない。低融点繊維の融点は、骨格となる繊維の融点よりも60℃以上低いことがより好ましい。また、低融点繊維の融点の下限は特に限定されないが、例えば、骨格となる繊維の融点から150℃以下が好ましく、より好ましくは骨格となる繊維の融点から100℃以下である。低融点繊維の融点は、例えば、80℃以上であることが好ましく、90℃以上がより好ましく、また160℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。
【0038】
低融点繊維の形態は、特に限定されないが、低融点繊維としては、ポリエチレン-ポリプロピレン、ポリエチレン-ポリエステル、ポリエステル-変性ポリエステル等の融点の異なる複数の樹脂からなる芯鞘構造、偏心構造、或いはサイドバイサイド構造を有する複合繊維;変性ポリエステル繊維;変性ポリアミド繊維;変性ポリプロピレン繊維等の変性ポリオレフィン繊維;等が使用できる。中でも、生産性がよく入手が容易であることから、芯鞘構造を有する複合繊維が好ましい。
【0039】
不織布100重量%における、低融点繊維の配合比率は、10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、25重量%以上がさらに好ましく、また95重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、55重量%以下がさらに好ましい。低融点繊維の配合比率が前記下限値を下回ると、繊維を強固に結合できず、溶融・固化後の低融点繊維の量が少ないため、不織布の剛性が向上せず好ましくない。また、低融点繊維の配合比率が前記上限値を超えると、不織布が薄くなり、必要とする厚さが得られにくくなることや、不織布としての形態が不安定となり、製造コストも上昇するため好ましくない。
【0040】
サーマルボンド法による不織布の製造条件は、例えば、熱処理時間は10秒間以上3分間以下が好ましく、より好ましくは20秒間以上2分間以下である。熱処理時間が前記範囲内であれば、配合される繊維の風合いを損なうことなく繊維を熱接着ができるため好ましい。同様の理由から、熱処理温度は160℃以上230℃以下が好ましく、より好ましくは170℃以上220℃以下である。
【0041】
多孔質層2の目付としては、50g/m2以上が好ましく、60g/m2以上がより好ましく、65g/m2以上がさらに好ましく、70g/m2以上がよりさらに好ましく、また600g/m2以下が好ましく、550g/m2以下がより好ましく、520g/m2以下がさらに好ましく、500g/m2以下がよりさらに好ましい。多孔質層2の目付が前記範囲内であることにより、軽量で機械的強度も有する吸音材5を得ることができる。
【0042】
多孔質層2の厚さとしては、1.5mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、2.5mm以上がさらに好ましく、また6.0mm以下が好ましく、5.5mm以下がより好ましく、5.0mm以下がさらに好ましい。多孔質層2の厚さが前記範囲内であることにより、軽量で機械的強度も有し、且つ高周波数域の吸音性能が高く低周波数域及び中周波数域においても優れた吸音性能を有する吸音材5を得ることができる。
【0043】
多孔質層2の嵩密度としては、0.010g/cm3以上が好ましく、0.015g/cm3以上がより好ましく、0.020g/cm3以上がさらに好ましく、0.025g/cm3以上がよりさらに好ましく、また0.200g/cm3以下が好ましく、0.180g/cm3以下がより好ましく、0.150g/cm3以下がさらに好ましく、0.130g/cm3以下がよりさらに好ましい。多孔質層2の嵩密度が前記範囲内であることにより、軽量で、且つ低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を有する吸音材5を得ることができる。
【0044】
1-3.カバー層
積層体Aは、フィルム又は低通気性不織布からなる膜状体1の外部からの衝撃や摩擦等による破損防止のために、膜状体1よりもさらに音源側に配置される、不織布からなるカバー層4を有していてもよい。特に、膜状体1がフィルムからなる場合には、膜状体1が損傷し易くなるため、カバー層4を有することが好ましい。
【0045】
カバー層4に用いる不織布としては、膜状体1の損傷防止のため、耐摩耗性に優れる不織布であることが好ましい。
【0046】
カバー層4を構成する不織布としては、スパンボンド不織布;サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法、ステッチボンド法等の各種結合方法により得られた乾式不織布;サーマルボンド法、ケミカルボンド法、スパンレース法等の各種結合方法により得られた湿式不織布;等が挙げられる。中でも、繊維の抜けが少なく、耐摩耗性に優れることから、スパンボンド不織布又はサーマルボンド不織布が好ましく、スパンボンド不織布がより好ましい。
【0047】
カバー層4を構成する不織布は、耐摩耗性を向上するために、カレンダー加工及び/又はエンボス加工等の圧密加工が施されていてもよく、カバー層4を構成する不織布としては、エンボス加工されたスパンボンド不織布、又はカレンダー加工されたサーマルボンド不織布がより好ましい。
【0048】
不織布からなるカバー層4を構成する繊維としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリアリレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル-塩化ビニル共重合体等のアクリル樹脂;等を原料とする合成繊維;レーヨン、ポリノジック等の再生繊維;アセテート繊維、トリアセテート繊維等の半合成繊維;等の各種化学繊維、及び綿、パルプ、カポック、麻、毛、絹等の天然繊維;が挙げられる。中でも、耐熱性及び耐摩耗性を有するポリエステル樹脂を原料とする繊維(つまり、ポリエステル繊維)、ポリアミド樹脂を原料とする繊維(つまり、ポリアミド繊維)が好ましく、ポリエチレンテレフタレート繊維、ナイロン繊維がより好ましい。
【0049】
不織布からなるカバー層4を構成する繊維の繊維径としては、10μm以上が好ましい。このように太繊維からなる不織布であることが好ましいカバー層4は、前述の膜状体1としての細繊維からなるメルトブローン不織布であることが特に好ましい低通気性不織布とは、態様が異なるものである。
【0050】
カバー層4の目付としては、5g/m2以上が好ましく、10g/m2以上がより好ましく、15g/m2以上がさらに好ましく、また60g/m2以下が好ましく、50g/m2以下がより好ましい。カバー層4の目付が前記範囲内であることにより、外部からの衝撃や摩擦等による膜状体1の破損を防止することができる。
【0051】
カバー層4の厚さとしては、0.05mm以上が好ましく、0.08mm以上がより好ましく、0.10mm以上がさらに好ましく、また0.40mm以下が好ましく、0.35mm以下がより好ましく、0.30mm以下がさらに好ましい。カバー層4の厚さが前記範囲内であることにより、外部からの衝撃や摩擦等による膜状体1の破損を防止することができる。
【0052】
積層体Aが有する前記の各層間は、熱や機械的及び/又は化学的な作用により接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
【0053】
膜状体1がフィルムからなる場合には、膜状体1と多孔質層2とが、接着され一体化されていることが好ましく、ニードルパンチ加工による機械的交絡により一体化していることがより好ましい。前記ニードルパンチ加工の条件としては、加工後の膜状体1の通気度が30cm3/cm2・sec以下である限り特に限定されないが、孔径0.1mm以上2.0mm以下、孔数10n/cm2以上200n/cm2以下とすることが好ましい。孔径や孔数が前記範囲より大きいと、膜状体1及び/又は積層体Aとして所望の通気度が得られないだけでなく、膜状体1が破損し易くなるため好ましくない。また、多孔質層2が製造工程にニードルパンチ法を用いる不織布である場合には、前記不織布製造工程でのニードルパンチ加工と同時に膜状体1と多孔質層2とを一体化してもよい。
【0054】
積層体Aとしてカバー層4を有する場合には、カバー層4と膜状体1とが、接着され一体化されていることが好ましく、熱融着により一体化していることがより好ましい。前記熱融着は、膜状体1が有する熱融着性成分(樹脂)によりなされることが好ましい。前記熱融着の方法としては、積層体Aを、ベルト式連続板状ヒーターを有する加熱されたラミネート機を通過させることにより、積層体A中(特に膜状体1中)の熱融着性成分を溶融させ、その後冷却等により熱融着性成分を固化させる方法が好ましい。前記熱融着の際の加熱により、積層体A(特に膜状体1)に微細な孔が形成されてもよい。熱融着の条件としては、熱融着後の膜状体1の通気度が30cm3/cm2・sec以下である限り特に限定されないが、ヒーターの加熱温度は、膜状体1が熱融着性成分を含有する場合には膜状体1が有する熱融着性成分の融点温度以上が好ましく、膜状体1が非熱融着性成分を含有する場合には膜状体1が有する非熱融着性成分の融点温度以下が好ましく、膜状体1が熱融着性成分及び非熱融着性成分を含有する場合には膜状体1が有する熱融着性成分の融点温度以上、非熱融着性成分の融点温度以下が好ましい。ヒーターの加熱温度は、例えば、160℃以上220℃以下が好ましく、加熱時間は、20秒間以上3分間以下が好ましい。クリアランスは、積層体Aの厚さ以下となるように設定するのが好ましく、例えば、5mm以上30mm未満が好ましい。なお、膜状体1が非熱融着性フィルムのみからなる場合には、カバー層4と膜状体1との間に接着手段として、呉羽テック社製「ダイナック(登録商標)」に代表される熱融着性不織布等を設けておいてもよい。また、多孔質層2が製造工程にサーマルボンド法を用いる不織布である場合には、前記不織布製造工程での熱処理加工と同時に前記熱融着をしてもよい。
【0055】
2.積層体B
積層体Bは、シート状発泡体31を2枚以上積層した発泡体層3を有する積層構造体である。積層体Bは、吸音材5において積層体Aよりも反音源側に配置される。また、積層体Bは吸音材5において最も反音源側に配置されることが好ましい。つまり、積層体Bよりもさらに音源から遠い位置に不織布等からなる層を吸音材5として有さないことが好ましい。吸音材5では、積層体Bが反音源側(特に最も反音源側)に配置されていることにより、例えば500~1250Hzといった低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を発揮する。
【0056】
積層体Bの通気度としては、0.00cm3/cm2・sec以上であればよく、0.05cm3/cm2・sec以上が好ましく、0.08cm3/cm2・sec以上がより好ましく、0.10cm3/cm2・sec以上がさらに好ましく、また20cm3/cm2・sec以下が好ましく、15cm3/cm2・sec以下がより好ましく、10cm3/cm2・sec以下がさら好ましく、7cm3/cm2・sec以下がよりさらに好ましく、5cm3/cm2・sec以下が特に好ましい。積層体Bの通気度が前記範囲内であることにより、低周波数域及び中周波数域においての吸音性能により優れる吸音材5を得ることができる。
【0057】
積層体Bの厚さとしては、1.0mm以上が好ましく、2.0mm以上がより好ましく、3.0mm以上がさらに好ましく、また30.0mm以下が好ましく、25.0mm以下がより好ましく、20.0mm以下がさらに好ましい。積層体Bの厚さが前記範囲内であることにより、軽量で嵩高な吸音材5を得ることができる。
【0058】
2-1.発泡体層
吸音材5では、発泡体層3において共振系が生じ、その共振周波数に近い周波数の音波により発泡体層3が振動して、音の持つ振動エネルギーが、発泡体層3の振動エネルギーや熱エネルギーに変換されることにより、吸音効果を発揮する。
【0059】
発泡体層3は、シート状発泡体31を2枚以上積層した層であり、積層枚数の上限は特にないが、例えば、20枚以下であってもよい。
【0060】
発泡体層3が有するシート状発泡体31の1枚当たりの厚さは、0.5mm以上であり、0.6mm以上が好ましく、0.7mm以上がより好ましく、また3.0mm以下であり、2.9mm以下が好ましく、2.8mm以下がより好ましい。シート状発泡体31の1枚当たりの厚さが前記範囲内であることにより、低周波数域及び中周波数域においての吸音性能により優れる吸音材5を得ることができる。
【0061】
発泡体層3が有するシート状発泡体31の1枚当たりの嵩密度は、0.005g/cm3以上が好ましく、0.008g/cm3以上がより好ましく、0.010g/cm3以上がさらに好ましく、0.012g/cm3以上がよりさらに好ましく、また0.120g/cm3以下が好ましく、0.110g/cm3以下がより好ましく、0.100g/cm3以下がさらに好ましく、0.097g/cm3以下がよりさらに好ましい。シート状発泡体31の1枚当たりの嵩密度が前記範囲内であることにより、軽量で、且つ低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を有する吸音材5を得ることができる。
【0062】
発泡体層3が有するシート状発泡体31の1枚当たりの通気度は、0.0cm3/cm2・sec以上であればよく、0.05cm3/cm2・sec以上が好ましく、0.2cm3/cm2・sec以上がより好ましく、0.5cm3/cm2・sec以上がさらに好ましく、1.0cm3/cm2・sec以上がよりさらに好ましく、また20cm3/cm2・sec以下が好ましく、15cm3/cm2・sec以下がより好ましく、12cm3/cm2・sec以下がさら好ましく、10cm3/cm2・sec以下がよりさらに好ましい。シート状発泡体31の1枚当たりの通気度が前記範囲内であることにより、音波(特に低周波数域及び中周波数域の音波)が発泡体層3に届いた際に、発泡体層3が振動し易く、優れた吸音性能を発揮することができる。
【0063】
発泡体層3が有するシート状発泡体31は、発泡体構造を有するシートであれば特に限定されないが、発泡性樹脂シートであることが好ましい。
【0064】
発泡性樹脂シートを構成する基材樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。また、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のオレフィン系エラストマー、水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)等のエラストマー樹脂等も挙げられる。これらの樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、基材樹脂としては、柔軟性や強度に優れる点からポリオレフィン系樹脂又はオレフィン系エラストマーが好ましく、軽量に仕上げられる点からポリオレフィン系樹脂がより好ましい。
【0065】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0066】
基材樹脂から樹脂シートを形成する方法としては、カレンダー法、溶融押出法、押出成形法等の公知の方法が採用できる。また、発泡性樹脂シートが有する発泡体構造を樹脂シートに形成する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用すればよい。例えば、樹脂シートを形成する樹脂組成物の中に発泡剤を含有させておき、形成後に加熱して発泡剤を熱分解させる方法が採用できる。前記発泡剤としては、例えば、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の無機化合物;アゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物等の有機化合物;等が使用できる。
【0067】
シート状発泡体31が有する気泡の状態は、気泡同士が独立した状態の独立気泡構造であってもよく、気泡同士が連続した状態の連続気泡構造であってもよく、一部の気泡同士が連続し、他の気泡が独立した状態の半連続気泡構造であってもよい。シート状発泡体31としては、柔軟性を持たせ、通気度を低く吸音性能を向上できる点から、独立気泡構造又は半連続気泡構造が好ましく、半連続気泡構造がより好ましい。シート状発泡体31における気泡の状態の確認は、シート状発泡体31の断面の画像を撮影し確認することができる。
【0068】
2-2.発泡体間の平均距離
発泡体層3におけるシート状発泡体31間の平均距離は、100μm以上であることが好ましく、130μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、170μm以上がよりさらに好ましく、また2000μm以下が好ましく、1500μm以下がより好ましく、1200μm以下がさらに好ましく、1000μm以下がよりさらに好ましい。なお、シート状発泡体31を3枚以上有する場合には、複数のシート状発泡体31間の平均距離がそれぞれ独立に上記範囲内であることが好ましい。
【0069】
シート状発泡体31間の距離が前記平均距離となるようにシート状発泡体31を設置する方法としては、例えば、スペーサーを用いてシート状発泡体31を離間して設置する方法や、隣接するシート状発泡体31のうち少なくとも片方を波打ち形状として積層する方法が挙げられる。ただし、隣接するシート状発泡体31の両方を波打ち形状とする場合には、隣接するシート状発泡体31間で波打ち形状による凹凸が完全に一致すると、所望のシート状発泡体31間の距離が得られないため、隣接するシート状発泡体31間で波打ち形状による凹凸が完全に一致することがないように積層する。シート状発泡体31が波打ち形状のシートであれば、積層するのみでシート状発泡体31間に容易に距離をつくれるため好ましい。なお、シート状発泡体31間の平均距離は、発泡体層3の厚さからシート状発泡体31の合計厚さを減し、該減した値をシート状発泡体31間の数で除すことで求めることができる。
【0070】
発泡体層3におけるシート状発泡体31間の平均距離は、シート状発泡体31の1枚当たりの厚さ(厚さの異なるシート状発泡体31を有する場合には、シート状発泡体31の1枚当たりの平均厚さ)に対して、0.05倍以上が好ましく、0.10倍以上がより好ましく、0.13倍以上がさらに好ましく、0.15倍以上がよりさらに好ましく、また1.0倍以下が好ましく、0.8倍以下がより好ましく、0.6倍以下がさらに好ましく、0.5倍以下がよりさらに好ましい。
【0071】
3.吸音材
吸音材5は、上記のフィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体1、並びに多孔質構造体からなる多孔質層2を、音源側から膜状体1、多孔質層2の順に有する積層体A、及び厚さが0.5mm以上3.0mm以下のシート状発泡体31を2枚以上積層した発泡体層3を有する積層体Bを、積層体Bが反音源側となるように積層することにより形成されている。特に、積層体Bと比して通気度が大きい積層体Aを音源側に、積層体Aと比して通気度が小さい積層体Bを反音源側となるように積層するとより良好な吸音性能が得られるため好ましい。なお、積層体Aと積層体Bとは、熱や機械的及び/又は化学的な作用により接着されていてもよく、接着されていなくてもよい。
【0072】
吸音材5の厚さとしては、5mm以上が好ましく、7mm以上がより好ましく、9mm以上がさらに好ましく、また30mm以下が好ましく、28mm以下がより好ましく、26mm以下がさらに好ましく、24mm以下がよりさらに好ましい。
【0073】
吸音材5の目付としては、150g/m2以上が好ましく、180g/m2以上がより好ましく、200g/m2以上がさらに好ましく、また3000g/m2以下が好ましく、2000g/m2以下がより好ましく、1500g/m2以下がさらに好ましく、1300g/m2以下がよりさらに好ましい。
【0074】
吸音材5の嵩密度としては、0.010g/cm3以上が好ましく、0.013g/cm3以上がより好ましく、0.015g/cm3以上がさらに好ましく、0.017g/cm3以上がよりさらに好ましく、また0.300g/cm3以下が好ましく、0.280g/cm3以下がより好ましく、0.260g/cm3以下がさらに好ましく、0.240g/cm3以下がよりさらに好ましい。
【0075】
吸音材5の通気度としては、0.0cm3/cm2・sec以上であればよく、10cm3/cm2・sec以下が好ましく、8.0cm3/cm2・sec以下がより好ましく、6.0cm3/cm2・sec以下がさらに好ましく、4.0cm3/cm2・sec以下がよりさらに好ましく、3.0cm3/cm2・sec以下が特に好ましい。吸音材5の通気度が前記範囲内であることにより、低周波数域及び中周波数域においての吸音性能により優れる吸音材5を得ることができる。
【0076】
本発明の一実施形態における吸音材5は、例えば吸音材の厚さが8mm以上12mm以下の場合には、周波数500Hzの吸音率が0.15以上、周波数1000Hzの吸音率が0.30以上、周波数1250Hzの吸音率が0.50以上、周波数3000Hz、4000Hz、及び5000Hzの吸音率の平均が0.50以上を満たすものであり、例えば吸音材の厚さが18mm以上22mm以下の場合には、周波数500Hzの吸音率が0.15以上、周波数1000Hzの吸音率が0.40以上、周波数1250Hzの吸音率が0.60以上、周波数3000Hz、4000Hz、及び5000Hzの吸音率の平均が0.6以上を満たすものである。なお、前記吸音率は、JIS A 1405-2の試験方法に準じて測定することができる。500Hz、1000Hz、及び1250Hzの音に対する吸音率を高くできることから、吸音材5は低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を発揮することが可能であるといえる。また、3000~5000Hzの音に対する吸音率が高いことから、吸音材5は高周波数域においても優れた吸音性能を発揮することが可能であるといえる。
【実施例0077】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0078】
下記実施例及び比較例で得られた吸音材は、以下の測定方法及び試験方法で物性を測定し、特性を評価した。
(1)目付;JIS L1913 6.2に準じて測定した。
(2)厚さ;カバー層、膜状体
:ダイヤルゲージを用いて測定した。
発泡体シート、積層体A、積層体B、吸音材
:ノギスを用いて見掛け厚さを測定した。
(3)嵩密度:目付を厚さで除し、g/cm3に単位換算することにより求めた。
(4)繊維径;(株)キーエンス製のデジタルマイクロスコープVHX-1000を使用して倍率100倍で画像を撮影し任意の20本の繊維の繊維径の平均を測定した。これを1点の測定として5点測定しその平均値を繊維径とした。
(5)通気度;JIS L1913の6.8.1に準じて測定した。
(6)吸音性能;JIS A 1405-2(垂直入射吸音率)に準じて測定した。吸音材の厚さが8mm以上12mm以下の場合には、周波数500Hzの吸音率が0.15以上、周波数1000Hzの吸音率が0.30以上、周波数1250Hzの吸音率が0.50以上、周波数3000Hz、4000Hz、及び5000Hzの吸音率の平均が0.50以上を合格と判定し、吸音材の厚さが18mm以上22mm以下の場合には、周波数500Hzの吸音率が0.15以上、周波数1000Hzの吸音率が0.40以上、周波数1250Hzの吸音率が0.60以上、周波数3000Hz、4000Hz、及び5000Hzの吸音率の平均が0.60以上を合格と判定した。
【0079】
実施例1
繊度1.3dtex、繊維長44mmのポリエステル繊維40重量%と、繊度5.5dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維30重量%と、繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部融点:110℃)30重量%とをそれぞれ計量、混綿、カーディング、及びクロス積層した繊維ウエブ(平均繊維径17μm)に、ポリエチレン-ナイロン-ポリエチレンからなる3層一体化フィルム(ポリエチレン部融点:100℃、ナイロン部融点:225℃)を積層して、針本数80本/cm2、針深さ10.0mmで、繊維ウエブ面からニードルパンチ加工を施し、目付400g/m2、厚さ3.7mm、嵩密度0.108g/cm3の短繊維不織布aを形成すると同時に、目付45g/m2、厚さ0.045mm、通気度12.5cm3/cm2・secのフィルムaを短繊維不織布aに一体化した。前記短繊維不織布aを多孔質層a、前記フィルムaを膜状体aとする。
次いで、ポリエステル樹脂からなる目付40g/m2、厚さ0.25mmのスパンボンド不織布をカバー層aとして、前記膜状体aの多孔質層aを積層した面とは反対面にカバー層aを積層し、220℃に加熱した熱処理機で30秒間の熱処理を行い、カバー層a、膜状体a、及び多孔質層aが一体化した厚さ4.0mm、通気度8.5cm3/cm2・secの積層体Aaを形成した。
目付27g/m2、厚さ1.6mm、嵩密度0.017g/cm3、通気度7.8cm3/cm2・secで、半連続気泡構造のポリエチレン樹脂からなる発泡体シートを3枚積層することにより発泡体層aを形成した。なお、前記発泡体シート間の平均距離は600μmであり、目付81g/m2、厚さ6.0mm、通気度2.20cm3/cm2・secの積層体Baを得た。
前記積層体Aaと前記積層体Baとを、音源側が積層体Aaの有するカバー層a、反音源側が積層体Baとなるように積層することにより、目付566g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.057g/cm3、通気度1.3cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0080】
実施例2
目付17g/m2、厚さ0.8mm、嵩密度0.021g/cm3、通気度1.3cm3/cm2・secで、半連続気泡構造のポリエチレン樹脂からなる発泡体シートを6枚積層することにより発泡体層bを形成した。なお、前記発泡体シート間の平均距離は240μmであり、目付102g/m2、厚さ6.0mm、通気度0.31cm3/cm2・secの積層体Bbを得た。
前記積層体Aaと前記積層体Bbとを、音源側が積層体Aaの有するカバー層a、反音源側が積層体Bbとなるように積層することにより、目付587g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.059g/cm3、通気度0.1cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0081】
実施例3
目付27g/m2、厚さ1.6mm、嵩密度0.017g/cm3、通気度7.8cm3/cm2・secで、半連続気泡構造のポリエチレン樹脂からなる発泡体シートを8枚積層することにより発泡体層cを形成した。なお、前記発泡体シート間の平均距離は457μmであり、目付216g/m2、厚さ16.0mm、通気度0.12cm3/cm2・secの積層体Bcを得た。
前記積層体Aaと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Aaの有するカバー層a、反音源側が積層体Bcとなるように積層することにより、目付701g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.035g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0082】
実施例4
繊度14.4dtex、繊維長64mmの中空顕在捲縮ポリエステル繊維60重量%と、繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部融点:110℃)40重量%とをそれぞれ計量し、混綿、カーディング、及びクロス積層した繊維ウエブ(平均繊維径30μm)に、低融点ポリエチレンフィルム(融点:100℃)、及びポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布を積層して、200℃に加熱した熱処理機で30秒間の熱処理を行い、目付125g/m2、厚さ3.9mm、嵩密度0.032g/cm3の短繊維不織布(以下、多孔質層bともいう)と、目付30g/m2、厚さ0.030mm、通気度2.1cm3/cm2・secのフィルム(以下、膜状体bともいう)と、目付15g/m2、厚さ0.10mmのスパンボンド不織布(以下、カバー層bともいう)とが前記の順で一体化した厚さ4.0mm、通気度2.0cm3/cm2・secの積層体Abを形成した。
前記積層体Abと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Abの有するカバー層b、反音源側が積層体Bcとなるように積層することにより、目付386g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.019g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0083】
実施例5
繊度1.3dtex、繊維長44mmのポリエステル繊維40重量%と、繊度5.5dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維30重量%と、繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部融点:110℃)30重量%とをそれぞれ計量、混綿、カーディング、及びクロス積層した繊維ウエブ(平均繊維径17μm)に、針本数80本/cm2、針深さ10.0mmで、片面からニードルパンチ加工を施した後、220℃に加熱した熱処理機で30秒間の熱処理を行い、目付400g/m2、厚さ3.7mm、嵩密度0.108g/cm3の短繊維不織布c(以下、多孔質層cともいう)を形成した。
次いで、ポリプロピレン樹脂からなる繊維径3.0μm、目付20g/m2、厚さ0.30mm、通気度27.0cm3/cm2・secのメルトブローン不織布(以下、膜状体cともいう)を前記多孔質層cと積層することにより、厚さ4.0mm、通気度19.6cm3/cm2・secの積層体Acを形成した。
前記積層体Acと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Acの有する膜状体c、反音源側が積層体Bcとなるように積層することにより、目付636g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.032g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0084】
実施例6
ポリプロピレン樹脂からなる繊維径3.0μm、目付50g/m2、厚さ0.50mm、通気度18.3cm3/cm2・secのメルトブローン不織布を膜状体dとし、前記多孔質層cと積層することにより、厚さ4.2mm、通気度16.4cm3/cm2・secの積層体Adを形成した。
前記積層体Adと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Adの有する膜状体d、反音源側が積層体Bcとなるように積層することにより、目付666g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.033g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0085】
実施例7
ポリプロピレン樹脂からなる繊維径3.0μm、目付100g/m2、厚さ1.00mm、通気度11.0cm3/cm2・secのメルトブローン不織布を膜状体eとし、前記多孔質層cと積層することにより、厚さ4.7mm、通気度8.3cm3/cm2・secの積層体Aeを形成した。
前記積層体Aeと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Aeの有する膜状体e、反音源側が積層体Bcとなるように積層することにより、目付716g/m2、厚さ21mm、嵩密度0.035g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0086】
実施例8
ポリプロピレン樹脂からなる繊維径1.0μm、目付30g/m2、厚さ0.50mm、通気度13.5cm3/cm2・secのメルトブローン不織布を膜状体fとし、前記多孔質層cと積層することにより、厚さ4.2mm、通気度10.9cm3/cm2・secの積層体Afを形成した。
前記積層体Afと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Afの有する膜状体f、反音源側が積層体Bcとなるように積層することにより、目付646g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.032g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0087】
実施例9
目付268g/m2、厚さ2.8mm、嵩密度0.096g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secで、半連続気泡構造のエチレン/プロピレン/ジェン共重合体からなる発泡体シートを2枚積層することにより発泡体層dを形成した。なお、前記発泡体シート間の平均距離は400μmであり、目付536g/m2、厚さ6.0mm、通気度<0.05cm3/cm2・secの積層体Bdを得た。
前記積層体Aaと前記積層体Bdとを、音源側が積層体Aaの有するカバー層a、反音源側が積層体Bdとなるように積層することにより、目付1021g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.102g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0088】
実施例10
繊度1.3dtex、繊維長44mmのポリエステル繊維40重量%と、繊度5.5dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維30重量%と、繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部融点:110℃)30重量%とをそれぞれ計量、混綿、カーディング、及びクロス積層した繊維ウエブ(平均繊維径17μm)に、針本数80本/cm2、針深さ10.0mmで、片面からニードルパンチ加工を施し、目付400g/m2、厚さ3.7mm、嵩密度0.108g/cm3の短繊維不織布d(以下、多孔質層dともいう)を形成した。
次いで、多孔質層dにポリエチレン-ナイロン-ポリエチレンからなる3層一体化フィルム(ポリエチレン部融点:100℃、ナイロン部融点:225℃)、及びポリエステル樹脂からなるスパンボンド不織布を積層して、200℃に加熱した熱処理機で30秒間の熱処理を行い、多孔質層dと、目付45g/m2、厚さ0.045mm、通気度<0.05cm3/cm2・secのフィルム(以下、膜状体gともいう)と、目付40g/m2、厚さ0.25mmのスパンボンド不織布(以下、カバー層cともいう)とが前記の順で一体化した厚さ4.0mm、通気度<0.05cm3/cm2・secの積層体Agを形成した。
前記積層体Agと前記積層体Baとを、音源側が積層体Agの有する膜状体g、反音源側が積層体Baとなるように積層することにより、目付566g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.057g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0089】
比較例1
前記積層体Aaと前記積層体Baとを、音源側が積層体Ba、反音源側が積層体Aaの有する多孔質層aとなるように積層することにより、目付566g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.057g/cm3、通気度1.3cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0090】
比較例2
前記積層体Aaと前記積層体Bbとを、音源側が積層体Bb、反音源側が積層体Aaの有する多孔質層aとなるように積層することにより、目付587g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.059g/cm3、通気度0.1cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0091】
比較例3
前記積層体Aaと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Bc、反音源側が積層体Aaの有する多孔質層aとなるように積層することにより、目付701g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.035g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0092】
比較例4
前記積層体Abと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Bc、反音源側が積層体Abの有する多孔質層bとなるように積層することにより、目付386g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.019g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0093】
比較例5
前記積層体Acと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Bc、反音源側が積層体Acの有する多孔質層cとなるように積層することにより、目付636g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.032g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0094】
比較例6
前記積層体Adと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Bc、反音源側が積層体Adの有する多孔質層cとなるように積層することにより、目付666g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.033g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0095】
比較例7
前記積層体Aeと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Bc、反音源側が積層体Aeの有する多孔質層cとなるように積層することにより、目付716g/m2、厚さ21mm、嵩密度0.035g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0096】
比較例8
前記積層体Afと前記積層体Bcとを、音源側が積層体Bc、反音源側が積層体Afの有する多孔質層cとなるように積層することにより、目付646g/m2、厚さ20mm、嵩密度0.032g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0097】
比較例9
繊度1.3dtex、繊維長44mmのポリエステル繊維40重量%と、繊度5.5dtex、繊維長51mmのポリエステル繊維30重量%と、繊度4.4dtex、繊維長51mmの低融点ポリエステル繊維(芯鞘構造、鞘部融点:110℃)30重量%とをそれぞれ計量、混綿、カーディング、及びクロス積層した繊維ウエブ(平均繊維径17μm)に、ポリエチレン-ナイロン-ポリエチレンからなる3層一体化フィルム(ポリエチレン部融点:100℃、ナイロン部融点:225℃)を積層して、針本数80本/cm2、針深さ10.0mmで、繊維ウエブ面からニードルパンチ加工を施し、目付800g/m2、厚さ9.7mm、嵩密度0.082g/cm3の短繊維不織布eを形成すると同時に、目付45g/m2、厚さ0.045mm、通気度12.5cm3/cm2・secのフィルムa(膜状体a)を短繊維不織布eに一体化した。前記短繊維不織布eを多孔質層eとする。
次いで、前記カバー層aを、前記膜状体aの多孔質層eを積層した面とは反対面に積層し、220℃に加熱した熱処理機で30秒間の熱処理を行い、カバー層a、膜状体a、及び多孔質層eが一体化した目付885g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.089g/cm3、通気度4.5cm3/cm2・secの積層体Ahからなる吸音材を得た。なお、該吸音材においてはカバー層aを有する側を音源側とする。
【0098】
比較例10
目付110g/m2、厚さ6.0mm、嵩密度0.018g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secで、半連続気泡構造のポリエチレン樹脂からなる発泡体1枚を発泡体層eとして用いた。
前記積層体Aaと前記発泡体層eとを、音源側が積層体Aaの有するカバー層a、反音源側が発泡体層eとなるように積層することにより、目付595g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.060g/cm3、通気度<0.05cm3/cm2・secの吸音材を得た。
【0099】
比較例11
前記積層体Aaの多孔質層aを有する側に厚さ6mmの空気層を設けて、目付485g/m2、厚さ10mm、嵩密度0.049g/cm3、通気度8.5cm3/cm2・secの吸音材を得た。なお、該吸音材においてはカバー層aを有する側を音源側とする。
【0100】
上記実施例及び比較例の吸音材ついて、以下表に示す。なお、実施例1、2、9、10、及び比較例9、11の吸音材は、周波数3000Hz、4000Hz、及び5000Hzの吸音率の平均が0.50以上であり、実施例3~8の吸音材は、周波数3000Hz、4000Hz、及び5000Hzの吸音率の平均が0.60以上であった。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
【表5】
【0106】
【表6】
【0107】
【表7】
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
表8~10から明らかなように、実施例1~10では、いずれも、フィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を、音源側から膜状体、多孔質層の順に有する積層体A、及び厚さが0.5mm以上3.0mm以下のシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層を有する反音源側に配置される積層体Bを含むため、周波数500Hz、1000Hz、1250Hzの吸音率が高く、500~1250Hzの低周波数域及び中周波数域において優れた吸音性能を発揮する吸音材が得られた。なお、実施例1~10の吸音材は高周波数域においても優れた吸音性能を発揮するものであった。
【0112】
比較例1~8の吸音材は、いずれも、フィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を、音源側から膜状体、多孔質層の順に有する積層体A、及び厚さが0.5mm以上3.0mm以下のシート状発泡体を2枚以上積層した発泡体層を有する積層体Bを含むが、積層体Bが反音源側端部に配置されていないため、吸音性能が劣る吸音材であった。
【0113】
比較例9の吸音材は、フィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を、音源側から膜状体、多孔質層の順に有する積層体Aを有するが、発泡体層を有しないため、周波数500Hzの吸音率が低く、吸音性能が劣る吸音材であった。
【0114】
比較例10の吸音材は、フィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を、音源側から膜状体、多孔質層の順に有する積層体A、及び厚さが6mmの発泡体1枚からなる発泡体層を有し、該発泡体層が反音源側端部に配置されるが、発泡体層がシート状発泡体を2枚以上積層した構成ではないため、周波数500Hz、1000Hz、1250Hzの吸音率が低く、500~1250Hzの低周波数域及び中周波数域において吸音性能が劣る吸音材であった。また、比較例10の吸音材は高周波数域においても吸音性能が劣るものであった。
【0115】
比較例11の吸音材は、フィルム又は低通気性不織布からなる通気度が30cm3/cm2・sec以下の膜状体、並びに多孔質構造体からなる多孔質層を、音源側から膜状体、多孔質層の順に有する積層体Aを含み、積層体Bの代わりに空気層を有する構成であるが、該構成では周波数500Hz、1000Hz、1250Hzの吸音率が低く、500~1250Hzの低周波数域及び中周波数域において吸音性能が劣る吸音材であった。
【符号の説明】
【0116】
1 膜状体
2 多孔質層
3 発泡体層
31 シート状発泡体
4 カバー層
5 吸音材
図1
図2
図3