(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124774
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】フローティングジョイント及びリニアアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16D 3/50 20060101AFI20220819BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20220819BHJP
F16H 25/22 20060101ALI20220819BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20220819BHJP
H02K 7/06 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
F16D3/50 Z
F16H25/20 E
F16H25/22 Z
F16H25/24 H
H02K7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022607
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
【テーマコード(参考)】
3J062
5H607
【Fターム(参考)】
3J062AB22
3J062AC07
3J062BA14
3J062BA16
3J062BA22
3J062CD02
3J062CD23
3J062CD35
3J062CD64
3J062CG83
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE52
(57)【要約】
【課題】 ジョイント部品A/Bの間に回転規制されるような弾性体を介在させることにより、被直動駆動装置による出力用ネジ軸の回り止め機能を保持した状態で、軸心合わせや平行度合わせが容易にできるフローティングジョイント及びリニアアクチュエータを提供する。
【解決手段】 被駆動装置に締結されたケース30の径方向内側に、前記出力用ネジ軸2に締結された円筒体300を内装し、前記ケース30の内周と、前記円筒体300の外周の間に、筒状の弾性体33を介在させるとともに、前記筒状の弾性体33の外周面と、前記ケース30の内周面とに互いに係合する係合部を設けたことにある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力用ネジ軸と螺合するネジナットとを備え、モータの回転を前記ネジナットにより前記出力用ネジ軸の直線運動に変換されるリニアアクチュエータの前記出力用ネジ軸と前記リニアアクチュエータによって駆動される被駆動装置との間を接続するフローティングジョイントであって、
前記被駆動装置に締結されたケースの径方向内側に、前記出力用ネジ軸に締結された円筒体を内装し、前記ケースの内周と、前記円筒体の外周の間に、筒状の弾性体を介在させるとともに、前記筒状の弾性体の外周面と、前記ケースの内周面とに互いに係合する係合部を設けたことを特徴とするフローティングジョイント。
【請求項2】
前記筒状の弾性体は前記係合部として、円周方向に沿って一定間隔で、軸方向の突起部を複数設け、一方、前記ケースの内周面には、円周方向に沿って前記突起部に係合する係合凹部を設けてなる請求項1に記載のフローティングジョイント。
【請求項3】
前記円筒体として、プーリーを用いるとともに、前記筒状の弾性体の内周面に前記プーリーの外周の歯に噛み合う歯を設け、前記プーリーの外周の歯に噛み合う前記筒状の弾性体の内周の歯溝部の結合によって回転方向の位置が規制されている請求項1に記載のフローティングジョイント。
【請求項4】
前記円筒体として、外周をローレット加工した円筒部品を使用し、筒状の弾性体の内面側に円筒部品を差し込んで一体成型したものである請求項1に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項5】
出力用ネジ軸と螺合するネジナットとを備え、モータの回転を前記ネジナットにより前記出力用ネジ軸の直線運動に変換されるリニアアクチュエータの前記出力用ネジ軸の直線運動の方向に沿ってリニアアクチュエータケースの外面にガイド部を設け、該ガイド部に沿ってスライドする移動子を設けるとともに、該移動子を前記出力用ネジ軸に接続して連結したリニアアクチュエータであって、
前記出力用ネジ軸に締結された円筒体を被駆動装置に締結されたケースの径方向内側に内装し、前記ケースの内周と、前記円筒体の外周の間に、筒状の弾性体を介在させるとともに、前記筒状の弾性体の外周面と、前記ケースの内周面とに互いに係合する係合部を設けたフローティングジョイントを介して前記移動子に締結したことを特徴とするリニアアクチュエータ。
【請求項6】
前記フローティングジョイントとして、前記移動子に締結されたケースの径方向内側に、前記出力用ネジ軸に締結されたプーリーを円筒体として内装し、前記ケースの内周と、前記プーリーの外周の間に、筒状の弾性体を介在させるとともに、前記筒状の弾性体の外周面と、前記ケースの内周面とに互いに係合する係合部を設け、前記筒状の弾性体の内周面に前記プーリーの外周の歯に噛み合う歯溝部を設けてなる請求項5に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項7】
前記筒状の弾性体は前記係合部として、円周方向に沿って一定間隔で、軸方向の突起部を複数設け、一方、前記ケースの内周面には、円周方向に沿って前記突起部に係合する係合凹部を設けてなる請求項5に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項8】
前記プーリーの外周の歯に噛み合う前記筒状の弾性体の内周の歯溝部の結合によって回転方向の位置が規制されている請求項6に記載のリニアアクチュエータ。
【請求項9】
前記円筒体は、外周をローレット加工した円筒部品を使用し、筒状の弾性体の内面側に円筒部品を差し込んで一体成型したものである請求項5に記載のリニアアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローティングジョイント及びリニアアクチュエータに関する。
詳しくは、出力用ネジ軸と螺合するネジナットとを備え、モータの回転を前記ネジナットにより前記出力用ネジ軸の直線運動に変換する機能を有するリニアアクチュエータの前記出力用ネジ軸と被駆動装置との接続に際し使用される接続部材としてのフローティングジョイント、及び前記フローティングジョイントを使用したガイド付きリニアアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のリニアアクチュエータの出力用ネジ軸と被駆動装置との接続構造としては、例えば、特許文献1、特許文献2に示すようなものがある。
一例として、
図8(a)(b)に示すような接続構造で、リニアアクチュエータ51を一般的な直動機器50に組み付ける場合の問題点を説明する。
直動機器50は、ベース板53上にガイドレール54があり、ガイドレール54に案内されているガイドブロック55と、ガイドブロック55に固定されている、L字型のテーブル56で構成されている。直動機器50のテーブル56の一端面にリニアアクチュエータ51の出力用ネジ軸であるボールネジ軸43の先端を結合しており、リニアアクチュエータ51のボールネジ軸43が移動するとガイドレール54に沿ってガイドブロック55と共にテーブル56が直動する。
【0003】
直動機器50にリニアアクチュエータ51を組み付ける際、回転中心であるデータムAに対する出力用ネジ軸であるボールネジ軸43の同軸度、およびリニアアクチュエータ51とアクチュエータ取付板52の組付部であるデータムBに対する出力ネジ軸であるボールネジ軸43の直角度を、精度良く組み付ける必要がある。
データムAに対する出力用ネジ軸であるボールネジ軸43の同軸度、データムBに対する出力用ネジ軸であるボールネジ軸43の直角度は、それぞれφ0.02~0.05程度に精度よく規制する必要がある。そのためには部品の精度の確保、組み付けの調整をする必要があり、精度確認のための測定も大変手間がかかるという問題点があった。
特許文献1では、出力用ネジ軸であるボールネジ軸43又は滑りネジ軸の外周で案内することにより上記の問題点を解決することができる出力用ネジ軸案内機構付リニアアクチュエータが開示されている。
【0004】
特許文献2は、流体圧シリンダのシリンダロッドと被駆動装置間の接続部材であり、その心ずれ調整機構により、軸心合わせや平行度合わせを容易ならしめているシリンダジョイントが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-78464号公報
【特許文献2】特開平9-42305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、出力用ネジ軸自体の振れ精度や外径精度の影響で高精度な取り付けを安価に実現するのは困難であった。特許文献2は、流体圧シリンダのシリンダロッドと被駆動装置間を接続するジョイントであり、その心ずれ調整機構は自由に回転してしまう。出力用ネジ軸に螺合させて、ネジナットの回転運動を出力用ネジ軸の直線運動に変換する機能を有するリニアアクチュエータは、出力用ネジ軸と直動する被駆動装置と接続することにより、出力用ネジ軸の回転を規制することにより直線運動することが可能になるので、特許文献2のようなジョイントを採用することはできなかった。
【0007】
さらに、
図9ないし
図11に示すように、リニアアクチュエータ61の出力用ネジ軸62と、ガイド66上に配置された直動するテーブル65に採用される接続部材が考えられる。
この接続部材としては、出力用ネジ軸62を、例えば2面の平面部を設けるような非円形部を備えたジョイント部品63Aと、テーブル65側にジョイント部品63Aの非円形部63aと若干の隙間gを持って嵌め合うジョイント部品63Bで構成される回転規制されるジョイント部品64も考えられるが、下記のような問題点があった。
(a)停止精度が悪化する。
(b)リニアアクチュエータの動作に対し、テーブル動作に遅延が生じる。
(c)ジョイント部品63A/Bの接触部から生じる摩耗粉が周囲に飛散する。
(d)水平方向に設置した場合、ジョイント部品63Aの質量によりボールねじにラジアル荷重が加わり、寿命低下の要因になる。
【0008】
本発明は、このような従来の課題(欠点)に着目してなされたもので、ジョイント部品A/Bの間に回転規制されるような弾性体を介在させることにより、上記の問題点を解決することができるフローティングジョイント及びリニアアクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、出力用ネジ軸と螺合するネジナットとを備え、モータの回転を前記ネジナットにより前記出力用ネジ軸の直線運動に変換されるリニアアクチュエータの前記出力用ネジ軸と前記リニアアクチュエータによって駆動される被駆動装置との間を接続するフローティングジョイントであって、前記被駆動装置に締結されたケースの径方向内側に、前記出力用ネジ軸に締結された円筒体を内装し、前記ケースの内周と、前記円筒体の外周の間に、筒状の弾性体を介在させるとともに、前記筒状の弾性体の外周面と、前記ケースの内周面とに互いに係合する係合部を設けたことにある。
また、本発明は、出力用ネジ軸と螺合するネジナットとを備え、モータの回転を前記ネジナットにより前記出力用ネジ軸の直線運動に変換されるリニアアクチュエータの前記出力用ネジ軸の直線運動の方向に沿ってリニアアクチュエータケースの外面にガイド部を設け、該ガイド部に沿ってスライドする移動子を設けるとともに、該移動子を前記出力用ネジ軸に接続して連結したリニアアクチュエータであって、前記出力用ネジ軸に締結された円筒体を被駆動装置に締結されたケースの径方向内側に内装し、前記ケースの内周と、前記円筒体の外周の間に、筒状の弾性体を介在させるとともに、前記筒状の弾性体の外周面と、前記ケースの内周面とに互いに係合する係合部を設けたフローティングジョイントを介して前記移動子に締結したことにある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、出力用ネジ軸と螺合するネジナットとを備え、モータの回転により前記出力用ネジ軸の直線運動に変換する機能を有するリニアアクチュエータの出力用ネジ軸と被直動駆動装置との接続に際し、本願のフローティングジョイントを使用することで、被直動駆動装置による出力用ネジ軸の回り止め機能を保持した状態で、軸心合わせや平行度合わせが容易にできる。
また、本願のフローティングジョイントを使用することで、リニアアクチュエータの推力に対し、載せる荷重の制限がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態による直動機器とリニアアクチュエータを本願のフローティングジョイントで連結した実施の形態を示し、(a)は正面図、(b)は(a)の平面図である。
【
図3】
図1(b)のB部分のフローティングジョイント部分を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4A】
図1(a)のフローティングジョイント部分を分解して示す分解斜視図である。
【
図4B】
図4Aのフローティングジョイント部分を拡大して示す拡大図である。
【
図5A】本発明のフローティングジョイントの他の実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図5B】
図5Aのフローティングジョイント部分を拡大して示す拡大図である。
【
図6】本発明のフローティングジョイントを適用するリニアアクチュエータを示す縦断面図である。
【
図7】本発明のガイド付きリニアアクチュエータの実施の形態を示す断面図である。
【
図8】従来の直動機器を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の正面図である。
【
図9】従来のジョイント部品を使用した直動機器を示し、(a)は平面図、(b)は(a)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1ないし
図4A,
図4Bに示す本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1(a)(b)は、本発明の実施の形態による直動機器とリニアアクチュエータを本願のフローティングジョイントで連結した実施の形態を示す図である。
図1ないし
図4において、1は直動機器10を構成するリニアアクチュエータ、2は前記リニアアクチュエータ1の出力用ネジ軸、3は前記出力用ネジ軸2を介して前記リニアアクチュエータ1の直線運動が伝達されるフローティングジョイントである。このフローティングジョイント3は、互いに締結されるケースA31とケースB32から成るケース30を備えている。ケースA31には、ケースA31の中空部31aの内周面31bに配置された筒状の弾性体33と、この弾性体33の内周側、すなわち径方向内側に、円筒体300として配置されたプーリー34と、このプーリー34の軸線上には、すなわち内周側に配置され、該プーリー34を固定するプーリー固定用ボルト35が設けられている。出力用ネジ軸2が挿通されるケースA31のリニアアクチュエータ1側の側壁面31cには、軸線上に出力用ネジ軸2を挿通する挿通孔31dが形成され、この挿通孔31dを通して出力用ネジ軸2がケースA31の中空部31aに挿入されている。
【0013】
出力用ネジ軸2は中空部31aに内装されたプーリー34のリニアアクチュエータ1側の端面34aに当接して配置されている。ケースA31の中空部31aの内周面31bには、円周方向に沿って一定間隔で、係合部としての複数(図示例では4か所)の溝状の係合凹部31eが軸方向に沿って形成されている。係合凹部31eの周囲の壁面部には、円周方向に一定間隔で複数のネジ孔31fが軸方向に形成されている(図示例では4か所)。
前記筒状の弾性体33の外周面には、前記係合凹部31eに係合する係合部としての突起部33aが軸方向に沿って形成されている。前記筒状の弾性体33の内周面には、前記プーリー34の外周面に形成された歯34bに係合する歯溝部33bが内周面に沿って軸方向に形成されている。
【0014】
前記プーリー34の内側に形成された挿通孔34cにはプーリー固定用ボルト35が内装されており、このプーリー固定用ボルト35はプーリー34の端面34a、軸線上に形成された挿通穴34cを通して、出力用ネジ軸2の先端から出力用ネジ軸2の軸線上のネジ部(図示せず)に螺合して締結され、プーリー固定用ボルト35の頭部がプーリー34の端面34a内壁面に係止されて前記プーリー34を固定している。
【0015】
ケースB32は、周縁部に設けられた挿通孔32aを通して、ケースA31の周縁部端面に円周方向に一定間隔で設けられたネジ孔31fに軸方向に沿って挿通螺合したケースA固定用ボルト36を介して互いに締結されている。ケースB32は、プーリー34との対向面との間に間隙δが形成されており、プーリー34の外周側端面には、内周側に向けて外周側が幅広の斜面34Tが形成されている。この斜面34Tは、ケースB32との間の間隙δ1が、内周側の間隙δ2に比べて間隙の幅を大きく、δ1+δ>δ2+δに形成されている。間隙δ2+δは、下端部では、間隙δと一致して垂直面になる。
他方プーリー34はケースA31との間でも同様に外周側に間隙δ1が、内周側に間隙δ2が端面に形成されている。
【0016】
ケースB32は中心軸に設けられたネジ孔32bに、ケースB固定用ボルト37を介して被直動駆動装置としてのL字形のテーブル7に締結されている。
テーブル7はベース板4に配置したガイドレール5に組み付けられたガイドブロック6にテーブル固定用ボルト8を介して固定されており、フローティングジョイント3は直動機器10の直線運動を確実にテーブル7に伝達するものである。
【0017】
次に、上記の実施例の作用を説明する。
まず、直動機器10の構成を説明すると、リニアアクチュエータ1はベース板4に組み付けられ、図示しない固定手段によって固定されている。ベース板4上には、ガイドレール5があり、このガイドレール5に、ガイドレール5上を摺動するガイドブロック6が組み付けられている。このガイドブロック6はガイドレール5に沿って案内されて直動する。ガイドブロック6には、L字型のテーブル7がテーブル固定用ボルト8を介して固定されており、ガイドブロック6に固定されていないテーブル7の面とリニアアクチュエータ1の出力用ネジ軸2の先端とを、フローティングジョイント3を接続して結合している。リニアアクチュエータ1の出力用ネジ軸2が移動するとガイドレール5に沿ってガイドブロック6と共にテーブル7が直動する。
【0018】
フローティングジョイント3は、ケース30内に収容した筒状の弾性体33およびプーリー34を用いた心ずれ調整機構により、軸心合わせや平行度合わせを容易ならしめており、さらに、軸の回転を規制する機能を持っている。フローティングジョイント3は、
図4A、
図4Bに示すように、ケース30を構成するケースA31とケースB32、筒状の弾性体33、プーリー34で構成されている。出力用ネジ軸2とプーリー34はプーリー固定用ボルト35で結合、ケースA31とケースB32はケースA固定用ボルト36で結合、ケースB32とテーブル7はケースB固定用ボルト37で結合されている。
【0019】
なお、ケースA31とケースB32はケースA固定用ボルト36で結合する際、ケースB32とプーリー34の間に70μm程度の隙間が設けられている。プーリー34の外周には軸方向に沿った多数の歯34bが円周方向に沿って形成されている。筒状の弾性体33は外周に円周方向に沿って数個の突起部33aが軸方向に沿って設けられ、内周には、プーリー34の外周の歯34bと噛合う歯溝部33bが形成されている。筒状の弾性体33の外周の突起部33aがケースA31の溝状の係合凹部31eに、はめ込み固定され、プーリー34の外周の歯34bと筒状の弾性体33の内周の歯溝部33bが噛合うことによって回転方向の位置が規制されている。さらに、筒状の弾性体33により、この弾性力により心ずれ調整機構も備えている。なお、プーリー34はアルミニウム等の金属製であり、筒状の弾性体33は、ポリウレタンが望ましい。
【0020】
従って、直動機器10にリニアアクチュエータ1を組み付ける際、回転中心である出力用ネジ軸2の同軸度、およびリニアアクチュエータ1とベース板4の組付部に対する出力用ネジ軸2の直角度を、それぞれφ0.02~0.05程度に精度よく規制する必要があるが、フローティングジョイント3を使用することにより、この精度を吸収することができるので、容易に組み付けることができる。
【0021】
さらに、
図5A,
図5Bは、
図4A,
図4Bと同一部分は同符号を付して同一部分の説明は省略して示す本発明の他の実施の形態であり、この場合、
図4A,
図4Bの円筒体300として配置されたプーリー34の代わりに外周をローレット加工した円筒部品302を使用し、筒状の弾性体301の内面側に円筒部品302を差し込んで一体成型したものである。
筒状の弾性体301を円筒部品302と一体成型することで安価に同様の構造にすることもできる。
【0022】
前記実施の形態で用いたリニアアクチュエータ1の例を、
図6に示す。
モータ部201のロータ202Bが中空シャフト203の小径部203Aに締結してあり、中空シャフト203の大径部203Bにスラスト兼ラジアルベアリング204の内輪をロックナット206で固定してある。中空シャフト203の大径部203B内にボールネジナット211を配設して、ロックナット206にボールネジナット締結ネジ214によりボールネジナット211のフランジ部211Aを締結してある。そのためステータ202Aの図示しない巻線の励磁を切りかえることによりロータ202Bが回転し、ロータ202Bと同期してボールネジナット211も回転する。ボールネジ軸212は、ボールネジナット211に螺合しており、ボールネジ軸212の先端を、直動させる図示しない負荷に回り止めとなるように固定することで、ボールネジ軸212はボールネジナット211が回転することにより直動する。
【0023】
この
図6に示すリニアアクチュエータ1を
図1に示した直動機器10に適用させた場合、ガイドブロック6およびテーブル7はガイドレール5に案内されて直動する機構となる。テーブル7の面と、リニアアクチュエータ1の出力用ネジ軸2としてのボールネジ軸212の先端を、回転規制されたフローティングジョイント3を通して結合する。ボールネジ軸212は、直動される負荷としてのテーブル7に回り止めとなるように固定されているので、ボールネジ軸212はボールネジナット211が回転することにより直動する。
【0024】
この場合、リニアアクチュエータ1の出力用ネジ軸2として、ボールネジ軸212を採用しているが、すべりネジ軸とすべりネジナットの構成でも良い。
また、リニアアクチュエータ1として、モータ部201によりボールネジナット211を回転させることで、ボールネジ軸212を回り止めとなるように固定して直動しているが、モータによりボールネジ軸212を回転させ、ボールネジナット211に固定したロッド等を回り止めとなるように固定して、ボールネジナット211とロッドが直動するようなリニアアクチュエータでも良い。
【0025】
その他の実施の形態について説明する。
図7は、(特開2018-48693号公報の
図6(b)に示された、)シングルガイド・ブロックの直動案内機構が設けられたリニアアクチュエータに、本発明のフローティングジョイント3を適用した構造が示されている。この実施の形態ではリニアアクチュエータ1の外側にガイド機構を組み付けたものである。
【0026】
ここではリニアアクチュエータ400のガイド機構の構造について説明する。
ケース407はガイドレール取付部407Aを設け、ねじ420でガイドレール408を組み付けている。ガイドレール408に沿ってガイドブロック409が移動する。ガイドブロック409には移動子としてのテーブル410が結合してあり、テーブル410の先端には、下方に向けて折り曲げられたジョイント部410aが設けられている。
特開2018-48693号公報の構造では、このジョイント部410aに、ボールネジ兼出力軸412の先端をねじで直接締結してある。そして、ボールネジ兼出力軸412が移動すれば、ジョイント部410aを介してテーブル410とガイドブロック409が同期して移動する構成になっている。
【0027】
この場合、
図1に示すように、リニアアクチュエータ1を直動機構10のガイド、ガイドレール、テーブルに組み付けるのではなく、リニアアクチュエータ400にシングルガイド・ブロックの直動案内機構が設けられるので、ケース、ガイドレール、ガイドブロック、テーブル等の各部品の精度や製造段階での組み立て精度を上げることにより、ボールネジ兼出力軸の同軸度やジョイント部との直角度を精度よく生産できる。しかしながら、テーブル410の上に荷重をかけて、直線駆動する場合、テーブル410、ガイドブロック409、ガイドレール408、ガイドレール取付部407Aがたわみ、ボールネジ兼出力軸412にラジアル荷重がかかるため、リニアアクチュエータの推力に対し、テーブル410に載せる荷重が制限されてしまうという問題があった。
【0028】
そこで、
図7に示すように、テーブル410の先端には、下方に向けて折り曲げられたジョイント部410aとボールネジ兼出力軸412の先端との締結部に、
図3ないし
図5A、
図5Bで説明した構造のフローティングジョイント3を入れて連結することにより、上記問題点を解決することができる。
図7のフローティングジョイント3には、
図3と同一部分に、同符号を付して同一部分の説明は省略して説明する。ボールネジ兼出力軸412は、
図1(a)(b)に示されたリニアアクチュエータ1の出力用ネジ軸2に相当し、フローティングジョイント3を介してジョイント部410aに連結されている。ジョイント部410aには、ケースB固定用ボルト37を介して固定されている。
テーブル410の上に荷重をかけて、直線駆動する場合、テーブル410のたわみをフローティングジョイント3により吸収されるので、ボールネジ兼出力軸412には、ラジアル荷重が直接かからなくなるため、リニアアクチュエータ400の推力に対し、テーブル410に載せる荷重が制限されてしまうことがなくなる。
【0029】
上記実施の形態によれば、フローティングジョイントとして以下の構成を備えることにより、次のような効果を奏することができる。
(i)出力用ネジ軸2と螺合するネジナット211とを備え、モータ201の回転を前記ネジナット211により前記出力用ネジ軸2の直線運動に変換されるリニアアクチュエータ1の前記出力用ネジ軸2と前記リニアアクチュエータ1によって駆動される被駆動装置との間を接続するフローティングジョイント3であって、前記被駆動装置に締結されたケース30の径方向内側に、前記出力用ネジ軸2に締結された円筒体300を内装し、前記ケース30の内周と、前記円筒体300の外周の間に、筒状の弾性体33を介在させるとともに、前記筒状の弾性体33の外周面と、前記ケース30の内周面とに互いに係合する係合部を設けたので、被直動駆動装置による出力用ネジ軸2の回り止め機能を保持した状態で、軸心合わせや平行度合わせが容易にできる。
(ii)前記筒状の弾性体33は前記係合部として、円周方向に沿って一定間隔で、軸方向の突起部33aを複数設け、一方、前記ケース30の内周面には、円周方向に沿って前記突起部33aに係合する係合凹部31eを設けたので、被直動駆動装置による出力用ネジ軸2の回り止め機能を十分に保持した状態で、軸心合わせや平行度合わせが容易にできる。
(iii)前記円筒体300として、プーリー34を用いるとともに、前記筒状の弾性体33の内周面に前記プーリー34の外周の歯34bに噛み合う歯溝部33bを設け、前記プーリー34の外周の歯34bに噛み合う前記筒状の弾性体33の内周の歯溝部33bの結合によって回転方向の位置を規制することができる。
(iv)前記円筒体300として、外周をローレット加工した円筒部品302を使用し、筒状の弾性体301の内面側に円筒部品302を差し込んで一体成型したので、筒状の弾性体301を円筒部品302と一体成型することで安価に同様の構造にすることもできる。
【0030】
上記実施の形態によれば、リニアアクチュエータとして以下の構成を備えることにより、次のような効果を奏することができる。
(v)出力用ネジ軸2と螺合するネジナット211とを備え、モータの回転を前記ネジナット211により前記出力用ネジ軸2の直線運動に変換されるリニアアクチュエータ1の前記出力用ネジ軸2の直線運動の方向に沿ってリニアアクチュエータケースの外面にガイド部を設け、該ガイド部に沿ってスライドする移動子410を設けるとともに、該移動子410を前記出力用ネジ軸2に接続して連結したリニアアクチュエータであって、前記出力用ネジ軸2に締結された円筒体300を被駆動装置に締結されたケース30の径方向内側に内装し、前記ケース30の内周と、前記円筒体300の外周の間に、筒状の弾性体33を介在させるとともに、前記筒状の弾性体33の外周面と、前記ケース30の内周面とに互いに係合する係合部を設けたフローティングジョイント3を介して前記移動子に締結したので、フローティングジョイント3を備えたリニアアクチュエータ1の推力に対し、載せる荷重の制限がなくなる。
(vi)前記フローティングジョイント3として、前記移動子に締結されたケース30の径方向内側に、前記出力用ネジ軸2に締結されたプーリー34を円筒体300として内装し、前記ケース30の内周と、前記プーリー34の外周の間に、筒状の弾性体33を介在させるとともに、前記筒状の弾性体33の外周面と、前記ケース30の内周面とに互いに係合する係合部を設け、前記筒状の弾性体33の内周面に前記プーリー34の外周の歯34bに噛み合う歯溝部33bを設けたので、前記プーリー34の外周の歯34bに噛み合う前記筒状の弾性体33の内周の歯溝部33bの結合によって回転方向の位置を規制することができる。
(vii)前記筒状の弾性体33は前記係合部として、円周方向に沿って一定間隔で、軸方向の突起部33aを複数設け、一方、前記ケース30の内周面には、円周方向に沿って前記突起部33aに係合する係合凹部31eを設けたので、被直動駆動装置による出力用ネジ軸2の回り止め機能を十分に保持した状態で、軸心合わせや平行度合わせが容易にできる。
(viii)前記プーリー34の外周の歯34bに噛み合う前記筒状の弾性体33の内周の歯溝部33bの結合によって回転方向の位置を規制することができる。
(ix)前記円筒体300は、外周をローレット加工した円筒部品302を使用し、筒状の弾性体301の内面側に円筒部品302を差し込んで一体成型したので、筒状の弾性体301を円筒部品302と一体成型することで安価に同様の構造にすることもできる。
【0031】
以上説明したように、本発明によるフローティングジョイント及びリニアアクチュエータによれば、以下に列挙する効果が得られる。
(A)本発明によるフローティングジョイントを使用した場合、使用しないときと比べて次のような効果を奏することができる。
出力用ネジ軸と螺合するネジナットとを備え、モータの回転により前記出力用ネジ軸の直線運動に変換する機能を有するリニアアクチュエータ1の出力用ネジ軸2と被直動駆動装置との接続に際し、本願のフローティングジョイント3を使用することで、被直動駆動装置による出力用ネジ軸2の回り止め機能を保持した状態で、軸心合わせや平行度合わせが容易にできる。
また、フローティングジョイント3を備えたリニアアクチュエータ1では、リニアアクチュエータ1の推力に対し、載せる荷重の制限がなくなる。
(B)本発明によるフローティングジョイント3を使用した場合、
図9で示したジョイント部品を使用したときと比べて次のような効果を奏することができる。
フローティングジョイント3の使用時の停止精度を向上できる。
リニアアクチュエータ1の動作に対するテーブル7の動作の遅延を軽減できる。
フローティングジョイント3から生じる摩耗粉の飛散を防止できる。
水平方向に設置した場合、フローティングジョイント3の質量によるボールねじ等の出力用ネジ軸2へのラジアル荷重を軽減でき、寿命低下を防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、フローティングジョイント3およびリニアアクチュエータ1の構造については、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を変更しない範囲内で適宜変更して実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1,400 リニアアクチュエータ
2 出力用ネジ軸
3 フローティングジョイント
4 ベース板
5 ガイドレール
6 ガイドブロック
7 テーブル
8 テーブル固定用ボルト
10 直動機器
30 ケース
31 ケースA
31a 中空部
31b 内周面
31c 側壁面
31d 挿通孔
31e 係合凹部(係合部)
32 ケースB
32a 挿通孔
32b ネジ孔
33 筒状の弾性体
33a 突起部(係合部)
33b 歯溝部
34 プーリー(円筒体300)
34a 端面
34b 歯
34T 斜面
35 プーリー固定用ボルト
36 ケースA固定用ボルト
37 ケースB固定用ボルト
300 円筒体
302 円筒部品(円筒体300)
412 ボールネジ兼出力軸