(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124787
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】編物および衣料および座席
(51)【国際特許分類】
D04B 1/16 20060101AFI20220819BHJP
D04B 1/00 20060101ALI20220819BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20220819BHJP
A41D 31/08 20190101ALI20220819BHJP
A41D 31/14 20190101ALI20220819BHJP
A41D 31/06 20190101ALI20220819BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
D04B1/16
D04B1/00 B
A41D31/00 502C
A41D31/08
A41D31/14
A41D31/06
A41D31/00 503F
A41D31/00 503J
B60N2/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022631
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 篤男
【テーマコード(参考)】
3B087
4L002
【Fターム(参考)】
3B087DE10
4L002AA05
4L002AA06
4L002AA08
4L002AB02
4L002AB04
4L002AC00
4L002AC07
4L002BA00
4L002BB01
4L002EA00
4L002EA02
4L002EA04
4L002FA01
4L002FA06
(57)【要約】
【課題】難燃性、遮熱性、通気性、および軽量性に優れる編物および衣料および座席を提供する。
【解決手段】繊度が互いに異なる2種類以上の難燃繊維糸条を用いて丸編組織を有する編物を得た後、必要に応じて衣料または座席を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編組織を有する編物であって、繊度が互いに異なる2種類以上の難燃繊維糸条を含むことを特徴とする編物。
【請求項2】
前記2種類以上の難燃繊維糸条において、最小繊度が最大繊度の90%以下である、請求項1に記載の編物。
【請求項3】
前記難燃繊維糸条が、JIS L 1091(1999) E-2法によるLOIが26以上の難燃繊維を含む、請求項1または請求項2に記載の編物。
【請求項4】
前記難燃繊維糸条が、メタアラミド繊維と、パラアラミド繊維および/または酸化ポリアクリルニトリル繊維を含む、請求項1~3のいずれかに記載の編物。
【請求項5】
インターロック組織で編成されている、請求項1~4のいずれかに記載の編物。
【請求項6】
インターロック組織で編成する際、繰り返し単位の糸数の10%以上が太繊度の難燃繊維糸条である、請求項5に記載の編物。
【請求項7】
目付けが300g/m2以下である、請求項1~6のいずれかに記載の編物。
【請求項8】
厚さが1.2mm以上である、請求項1~7のいずれかに記載の編物。
【請求項9】
通気性が120cm3/cm2・sec以上である、請求項1~8のいずれかに記載の編物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の編物を用いてなる衣料。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の編物を、表地とクッション材との間に挟持してなる座席。
【請求項12】
前記編物を前記表地に縫着してなる、請求項11に記載の座席。
【請求項13】
座席が、航空機用、車両用、列車用、船舶用、病院用、老人ホーム用、劇場用、またはインテリア用である、請求項11または請求項12に記載の座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、遮熱性、通気性、および軽量性に優れる編物および衣料および座席に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークウエアとして難燃性繊維からなる空気層を有する編物が提案されている(特許文献1、2)。しかしながら、かかる編物は重量が大きいため、ワークウエアとして使用するには満足とはいえなかった。
【0003】
また近年、生活様式の高度化と共に、家具、寝具、特に老人ホームおよび病院のベッド、ならびに各種交通機関の座席用クッションなどに耐熱性、難燃性が要求されるようになってきた。特に航空機用シートクッションについては、火炎などから尊い人命を守ることが最も重要とされるため、米国連邦航空局(FAA)規格によって、極めて厳しい難燃規格が決められている。
【0004】
従来、この種のクッションにはウレタンなどの弾力性を有する材料にFBL(Fire Blocking Layer)と称する耐火布を貼り合わせることが一般的である。そして、かかる耐火布として、例えば特許文献3では、耐炎繊維を用いた不織布が提案されている。
【0005】
しかしながら、かかる不織布では、硬く、着座感が不快であり、長時間の着座が困難であるといった問題があった。また上記難燃規格は耐火布を重くすることで適合可能ではあるが、一方航空機用途であるため、軽さを求められており、相反する要求特性への適合が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-090120号公報
【特許文献2】特開2020-193422号公報
【特許文献3】国際公開第1994/003393号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、難燃性、遮熱性、通気性、および軽量性に優れる編物および衣料および座席を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記の課題を達成するため鋭意検討した結果、糸条種類や布帛構造などを巧みに工夫することにより、難燃性、遮熱性、通気性、および軽量性に優れる編物および衣料および座席が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、「丸編組織を有する編物であって、繊度が互いに異なる2種類以上の難燃繊維糸条を含むことを特徴とする編物。」が提供される。
その際、前記2種類以上の難燃繊維糸条において、最小繊度が最大繊度の90%以下であることが好ましい。また、前記難燃繊維糸条が、JIS L 1091(1999) E-2法によるLOIが26以上の難燃繊維を含むことが好ましい。また、前記難燃繊維糸条が、メタアラミド繊維と、パラアラミド繊維および/または酸化ポリアクリルニトリ
ル繊維を含むことが好ましい。また、編物がインターロック組織で編成されていることが好ましい。また、インターロック組織で編成する際、繰り返し単位の糸数の10%以上が太繊度の難燃繊維であることが好ましい。
【0010】
本発明の編物において、目付けが300g/m2以下であることが好ましい。また、厚さが1.2mm以上であることが好ましい。また、通気性が120cm3/cm2・sec以上であることが好ましい。
本発明によれば、前記の編物を用いてなる衣料が提供される。また、前記の編物を、表地とクッション材との間に挟持してなる座席が提供される。その際、前記編物を前記表地に縫着してなることが好ましい。また、座席が、航空機用、車両用、列車用、船舶用、病院用、老人ホーム用、劇場用、またはインテリア用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難燃性、遮熱性、通気性、および軽量性に優れる編物および衣料および座席が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明において、難燃繊維糸条に含まれる難燃繊維は、JIS L 1091(1999) E-2法によるLOIが26以上である難燃繊維であることが好ましい。
【0013】
かかる難燃繊維は、例えば、メタ型全芳香族ポリアミド繊維(メタアラミド繊維)、パラ型全芳香族ポリアミド繊維(パラアラミド繊維)などの全芳香族ポリアミド繊維、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、酸化ポリアクリルニトリル繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリアリレート繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、ノボロイド繊維、難燃アクリル繊維、ポリクラール繊維、難燃ポリエステル繊維、難燃綿繊維、難燃レーヨン繊維、難燃ビニロン繊維、難燃ウール繊維などを単一または混合して使用することができる。
【0014】
さらに、難燃繊維は、融点が300℃以上であることが好ましい。そのような繊維として、全芳香族ポリアミド繊維(メタ型全芳香族ポリアミド繊維、パラ型全芳香族ポリアミド繊維)、ポリベンゾイミダゾール繊維、ポリイミド繊維、ポリアミドイミド繊維、酸化ポリアクリルニトリル繊維などが例示される。
【0015】
また、これらの難燃繊維は、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、難燃剤、酸化チタン、着色剤、不活性微粒子などの添加剤を含有してもよい。
【0016】
特に、難燃繊維は、LOIが26以上、かつ、融点が400℃以上であることが好ましい。そのような繊維として、全芳香族ポリアミド繊維(メタ型全芳香族ポリアミド繊維またはパラ型全芳香族ポリアミド繊維)を挙げることができる。
【0017】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その繰返し単位の85モル%以上がm-フェニレンイソフタルアミドであるポリマーからなる繊維である。なお、メタ型全芳香族ポリアミドは、15モル%未満の範囲内で第3成分を含んだ共重合体であってもよい。
【0018】
このようなメタ型全芳香族ポリアミドは、公知の界面重合法により製造することができ、そのポリマーの重合度は、0.5g/100mlの濃度のN-メチル-2-ピロリドン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が1.3~1.9dl/gの範囲にあるものが好ましい。
【0019】
メタ型全芳香族ポリアミドは、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩が含有されていてもよい。アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩は、ヘキシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ヘキシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルテトラデシルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩などの化合物などが例示される。なかでもドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルフォスフォニウム塩、またはドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルベンジルアンモニウム塩は、入手しやすく、熱的安定性も良好なうえ、N-メチル-2-ピロリドンに対する溶解度も高いため特に好ましく例示される。
【0020】
アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩の含有割合は、十分な染色性の改良効果を得るために、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドに対して2.5モル%以上、好ましくは3.0~7.0モル%の範囲にあるものが好ましい。
【0021】
また、ポリ-m-フェニレンイソフタルアミドとアルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を混合する方法は、溶媒中にポリ-m-フェニレンイソフタルアミドを混合、溶解した後、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩をその溶媒に溶解する方法などが用いられる。このようにして得られたドープは、公知の方法により繊維に形成される。
【0022】
メタ型全芳香族ポリアミド繊維に用いるポリマーは、染着性や耐変褪色性を向上させるなどの目的で、下記の式(1)で示される反復構造単位を含む芳香族ポリアミド骨格中に、反復構造の主たる構成単位とは異なる芳香族ジアミン成分、または芳香族ジカルボン酸ハライド成分を、第3成分として芳香族ポリアミドの反復構造単位の全量に対し1~10mol%となるように共重合させてもよい。
-(NH-Ar1-NH-CO-Ar1-CO)- ・・・式(1)
Ar1はメタ配位または平行軸方向以外に結合基を有する2価の芳香族基である。
【0023】
なお、第3成分として下記の式(2)、(3)、(4)、(5)で示される芳香族ジアミンまたは芳香族ジカルボン酸ジクロライドを共重合させることが可能である。
【0024】
式(2)、(3)に示した芳香族ジアミンの具体例としては、例えば、p-フェニレンジアミン、クロロフェニレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、アセチルフェニレンジアミン、アミノアニシジン、ベンジジン、ビス(アミノフェニル)エーテル、ビス(アミノフェニル)スルホン、ジアミノベンズアニリド、ジアミノアゾベンゼンなどが挙げられる。式(4)、(5)に示すような芳香族ジカルボン酸ジクロライドの具体例としては、例えば、テレフタル酸クロライド、1,4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレンジカルボン酸クロライド、4,4’-ビフェニルジカルボン酸クロライド、5-クロルイソフタル酸クロライド、5-メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0025】
H2N-Ar2-NH2 ・・・式(2)
H2N-Ar2-Y-Ar2-NH2 ・・・式(3)
XOC-Ar3-COX ・・・式(4)
XOC-Ar3-Y-Ar3-COX ・・・式(5)
Ar2はAr1とは異なる2価の芳香族基、Ar3はAr1とは異なる2価の芳香族基、Yは酸素原子、硫黄原子、アルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1種の原子または官能基であり、Xはハロゲン原子を表す。
【0026】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の結晶化度は、染料の吸尽性がよく、少量の染料や染色条件が弱いなどの条件でも狙いの色に調整し易いという点で、5~35%であることが好ましい。さらには、染料の表面偏在が起こり難く耐変褪色性も高い点および実用上必要な寸法安定性も確保できる点で15~25%であることがより好ましい。
【0027】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の残存溶媒量は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維の優れた難燃性能を損なわない点で、0.1重量%以下(好ましくは0.001~0.1重量%)であることが好ましい。
【0028】
なお、メタ型全芳香族ポリアミド繊維として、優れた耐光堅牢度を得る上で、例えば、国際公開公報第2013/061901号パンフレットに記載されているような原着メタ型全芳香族ポリアミド繊維が好ましい。その際、用いられる顔料は、アゾ系、フタロシアニン系、ペリノン系、ペリレン系、アンスラキノン系等の有機顔料、あるいは、カーボンブラック、群青、ベンガラ、酸化チタン、酸化鉄などの無機顔料が例示される。
【0029】
また、メタ型全芳香族ポリアミドと顔料との混合方法は、アミド系溶媒中に顔料を均一分散したアミド系溶媒スラリーを作製し、当該アミド系溶媒スラリーをメタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液に添加する方法、あるいは顔料粉末を直接、メタ型全芳香族ポリアミドがアミド系溶媒に溶解した溶液に添加する方法などが例示される。
【0030】
顔料配合量としては、メタ型全芳香族ポリアミドに対して10.0重量%以下、好ましくは5.0重量%以下である。10.0重量%より多く添加した場合には、得られる繊維の物性が低下するおそれがある。
ここで、メタ型全芳香族ポリアミドポリマーの重合方法としては、例えば、特公昭35-14399号公報、米国特許第3360595号公報、特公昭47-10863号公報などに記載された溶液重合法、界面重合法を用いてもよい。
【0031】
紡糸溶液は、上記溶液重合や界面重合などで得られた、芳香族コポリアミドポリマーを含むアミド系溶媒溶液を用いてもよいし、上記重合溶液から該ポリマーを単離し、これをアミド系溶媒に溶解したものなどを用いてもよい。
重合に用いられるアミド系溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシドなどを例示することができる。
【0032】
得られた共重合芳香族ポリアミドポリマー溶液は、さらにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含むことで安定化され、より高濃度、低温での使用が可能となり好ましい。アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩はポリマー溶液の全重量に対して1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以下であることがより好ましい。その際、難燃剤を含ませることが好ましい。
紡糸・凝固工程は、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液または原着メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
【0033】
紡糸装置は特に限定されるものではなく、公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状などは特に制限する必要はなく、例えば、孔数が1000~30000個、紡糸孔径が0.05~0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
なお、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を紡糸口金から紡出する際の温度は、20~90℃の範囲が適当である。
【0034】
繊維を得るために用いる凝固浴は、実質的に無機塩を含まないアミド系溶媒で行う。特
に、NMPの濃度が45~60重量%の水溶液を、浴液の温度10~50℃の範囲で用いることが好ましい。アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が45重量%未満ではスキンが厚い構造となり、洗浄工程における洗浄効率が低下し、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となるおそれがある。一方、アミド系溶媒(好ましくはNMP)の濃度が60重量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができないため、繊維の残存溶媒量を低減させることが困難となる。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1~30秒の範囲が適当である。
【0035】
延伸は、アミド系溶媒で行う。特に、NMPの濃度が45~60重量%の水溶液であり、浴液の温度を10~50℃の範囲とした可塑延伸浴中にて、3~4倍の延伸倍率で行うことが好ましい。延伸後、10~30℃のNMPの濃度が20~40重量%の水溶液、続いて50~70℃の温水浴を通して十分に洗浄を行う。
【0036】
洗浄後の繊維は、温度270~290℃にて乾熱処理を施し、上記の結晶化度および残存溶媒量の範囲を満たすメタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
上述した方法により、結晶化度や残存溶媒量を上述した好ましい範囲とすることができる。
【0037】
なお、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、長繊維(マルチフィラメント)でもよいし短繊維でもよい。他の繊維と混紡する場合、繊維長25~200mmの短繊維が好ましく、単繊維繊度が1~5dtexの範囲であるとより好ましい。
【0038】
また、メタ型全芳香族ポリアミド繊維が、パラ型全芳香族ポリアミド繊維および/または酸化ポリアクリルニトリル繊維との混紡糸として布帛に含まれていると、布帛の強度が向上するため好ましい。
その際、パラ型全芳香族ポリアミド繊維は、パラフェニレンテレフタラミド繊維またはコパラフェニレン・3、4’オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維がより好ましい。
【0039】
本発明の編物において、前記の難燃繊維が編物重量に対し80重量%以上(より好ましくは100重量%)含まれることが好ましい。
本発明において用いられる難燃繊維糸条は、マルチフィラメント(長繊維)や、前述した繊維が混紡された紡績糸を用いることが好ましい。特に、機能性の面から紡績糸であることが好ましい。その場合、一般に衣料用で用いられる番手、たとえば英式綿番手20番~60番の間であることが好ましい。なお、紡績糸は単糸で使用してもよいし撚糸後使用してもよい。
【0040】
本発明の編物は、軽量性の点で繊度(太さ)が互いに異なる2種類以上(好ましくは2~5種類)の難燃繊維糸条を含むことが重要である。その際、前記2種類以上の難燃繊維糸条において、最小繊度(糸条の総繊度)が最大繊度糸条の90%以下(より好ましくは30~80%)であることが好ましい。
本発明の編物は衣料用途であれば着用、および座席用であれば着座での変形に追随できる伸縮性、柔軟性、通気度を有する上で、丸編組織を有していることが重要である。
【0041】
また車両、航空機用途として軽量であることが要求され、さらに遮熱性が求められるため、厚みを有することが好ましい。上記の点からダブルニットが好ましい。かかるダブルニットの製造方法は公知のものでよく、難燃繊維糸条(原糸)を用いて丸編機による製造が好ましい。なお、ダブルニットの組織としては一般的な組織としてインターロック(両面編)が好ましい。また、インターロック組織で編成する際、繰り返し単位の原糸本数の10%以上(より好ましくは15~90%)が太繊度の難燃繊維糸条であることが好ましい。
【0042】
上記編物は製編後、油剤やワックスを除去することが難燃性確保の点で好ましい。特に常法の洗浄加工が好ましい。
また座席としての使用であれば審美性確保のため、濃色に着色されることが好ましく、黒、紺などの顔料原着、あるいはキャリア剤を用いた染色などが好ましく用いられる。さらには、吸汗剤、撥水剤、蓄熱剤あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、防蚊剤、防蚊剤、蓄光剤、再帰反射剤等の機能を付与する他の各種加工を付加適用してもよい。
【0043】
かくして得られた編物において、JIS L 1096(2010) A法(45°カンチレバー法)に規定される剛軟度が経方向または緯方向において95mm以下(好ましくは10~80mm、より好ましくは30~60mm)であることが好ましい。特に、
経方向および緯方向(ウエール方向およびコース方向)の剛軟度が95mm以下(好ましくは10~80mm、より好ましくは30~60mm)であることが好ましい。経方向および緯方向の剛軟度が95mmより大きいと、編物が硬いため快適性や成型性が低下するおそれがある。
【0044】
本発明の編物において、軽量性の点で目付けが300g/m2以下(好ましくは200~300g/m2)の範囲内であることが好ましい。ただし、目付けはJIS L 1096(2010) A法で測定するものとする。また、厚さとしては、1.2mm以上(より好ましくは1.2~2.0mm)の範囲内であることが好ましい。ただし、厚さはJIS L 1096(2010) A法で測定するものとする。また、快適性のため通気性が120cm3/cm2・sec以上(より好ましくは120~300cm3/cm2・sec)であることが好ましい。ただし、通気性はJIS L 1096(1990) 通気性A法(フラジール法)で測定するものとする。また、伸び率が、JIS 1096(2010) D法 (定荷重法)カットストリップ法を準用し標線間:200mm、一定荷重4.9Nで8%以上であり、かつ、伸長弾性率が、JIS L 1096(2010) E法(定荷重法)カットストリップ法 一定荷重:0.89N、繰り返し荷重:1回で70%以上であることが好ましい。
【0045】
また、座席として縫製する際、縫い目から耐火布が露出する場合、優れた外観を維持するため濃色すなわち低明度であることが好ましく、JIS Z 8781-4におけるL*として30以下(より好ましくは5~25)であることが好ましい。
【0046】
また、耐火性能としてFederal Aviation Regulation25「AIRWORTHINESS STANDARDS: TRANSPORT CATEGORY AIRPLANES」に要求されているVertical Bunsen Burner Test for Cabin and Cargo Compartment Materialsにおいて接炎時間12秒における燃焼長さ6インチ未満、残炎時間15秒未満、滴下物燃焼時間3秒以下であることが好ましい。
【0047】
さらにISO 17492 Clothing for protection against heat and flame -Determination of heat transmission on exposure to both flame and radiant heatにおいてHeat flux
80kw/m2でのThermal Protective Performance(TPP)が5.5秒以上であることが好ましい。5秒以下では航空機座席用クッションとして上記規格で要求されているOil burner test for seat cushionsに適合させることができない。
【0048】
本発明の編物は前記の構成を有することにより、難燃性、遮熱性、通気性、および軽量性に優れる。
本発明の編物は衣料または座席用耐火布として好ましく用いられる。特に、編物(耐火布)を、表地とクッション材との間に挟持してなる座席が好ましい。その際、耐火布は表地と、接着剤を用いずに積層していることが好ましい。例えば、耐火布は表地と縫着していることが好ましい。
【0049】
例えば、椅子張り裏材として前記耐火布を用い、ウレタン等のクッション材を前記耐火布で被覆し、さらに椅子張り表地で被覆することが好ましい。その際、表地と前記耐火布とは、接着されず、縫製等で部分的に固定されることが好ましい。それにより、表地の伸縮性と前記耐火布の伸縮性の違いによるしわの抑制や、前記耐火布の通気度を阻害しなくなり、快適性を併せ持った座席などが得られる。かかる座席は前記の耐火布を用いているため、難燃性、遮熱性、通気性、およびクッション性に優れる。
なお、かかる座席は、航空機用、車両用、列車用、船舶用、病院用、老人ホーム用、劇場用、インテリア用などとして好適である。
【実施例0050】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0051】
(1)目付け
JIS L 1096(2010) A法で測定した。
【0052】
(2)厚さ
JIS L 1096(2010) A法で測定した。
【0053】
(3)通気性
JIS L 1096(1990) 通気性A法(フラジール法)で測定した。
【0054】
(4)剛軟度
JIS L 1096(2010) A法(45°カンチレバー法)で測定した。
【0055】
(5)伸び率
JIS 1096(2010) D法 (定荷重法)カットストリップ法を準用し標線間:200mm、一定荷重4.9Nで測定した。
【0056】
(6)伸長弾性率
JIS L 1096(2010) E法(定荷重法)カットストリップ法 一定荷重:0.89N、繰り返し荷重:1回で測定した。
【0057】
(7)明度
JIS Z 8781-4に基づきL*を測定した。
【0058】
(8)Vertical Bunsen Burner Test
Federal Aviation Regulation25「AIRWORTHINESS STANDARDS: TRANSPORT CATEGORY AIRPLANES」Appendix F「Part I-Test Criteria and Procedures for Showing Compliance With §25.853 or §25.855」Chapter 1 Vertical Bunsen Burner Test for Cabin and Cargo Compartment Materialsに準じて行った。
【0059】
(9)Thermal Protective Performance(TPP)
ISO 17492 Heat flux 80kw/m2にて行った。
【0060】
[実施例1~4]
(難燃繊維糸条:原糸A)
「メタ型全芳香族ポリアミド繊維原着短繊維」:帝人株式会社製「コーネックス」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下、メタアラミド繊維)9
5重量%と、「パラ型全芳香族ポリアミド短繊維」:帝人株式会社製「テクノーラ」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下、パラアラミド繊維)5重量%を用いて、公知の方法により英式綿番手40番の単糸(40/1)を製造した。次いで、得られた40番単糸を19.8回/2.54cmで双糸撚糸(40/2)し、100℃、60分でスチームセットを行った。
【0061】
(難燃繊維糸条:原糸B)
「メタ型全芳香族ポリアミド繊維原着短繊維」:帝人株式会社製「コーネックス」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下、メタアラミド繊維)95重量%と、「パラ型全芳香族ポリアミド短繊維」:帝人株式会社製「テクノーラ」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下、パラアラミド繊維)5重量%を用いて、公知の方法により英式綿番手40番の単糸(40/1)を製造した。
【0062】
シリンダ径30インチ(1インチ=2.54cm)、給糸本数シリンダ、ダイアル各12本、20ゲージのダブルニット丸編機にて計24本の各原糸クリールに対し表1に記載の順に原糸Aと原糸Bを投入し、インターロック組織で製編し、常法により、洗浄、乾燥、切開、ヒートセットを行った。得られたダブルニットは表1に記載される性能であり、評価結果であった。
【0063】
[比較例1]
シリンダ径30インチ(1インチ=2.54cm)、給糸本数シリンダ、ダイアル各12本、20ゲージのダブルニット丸編機にて計24本の各原糸クリールに対し原糸Aのみを投入し、インターロック組織で製編し、常法により、洗浄、乾燥、切開、ヒートセットを行った。得られたダブルニットは表1に記載される性能であり、評価結果であった。
【0064】
[比較例2]
(難燃繊維糸条:原糸C)
「メタ型全芳香族ポリアミド繊維原着短繊維」:帝人株式会社製「コーネックス」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下メタアラミド繊維)65重量%と、「パラ型全芳香族ポリアミド短繊維」:帝人株式会社製「テクノーラ」(登録商標)、平均単繊維繊度1.7dtex、繊維長51mm(以下パラアラミド繊維)5重量%と、「酸化ポリアクリルニトリル繊維」:帝人株式会社製「パイロメックス」(登録商標)、平均単繊維繊度2.2dtex、繊維長51mm、30重量%を用いて公知の方法により英式綿番手40番の単糸を製造した。次いで、得られた40番単糸を19.8回/2.54cmで双糸撚糸し、100℃、60分でスチームセットを行った。
【0065】
シリンダ径30インチ(1インチ=2.54cm)、給糸本数シリンダ、ダイアル各12本、20ゲージのダブルニット丸編機にて計24本の各原糸クリールに対し原糸Cのみを投入し、インターロック組織で製編し、常法により、洗インターロック組織で製編し、常法により、洗浄、乾燥、切開、ヒートセットを行った。得られたダブルニットは表1に記載される性量であり、評価結果であった。
【0066】
【0067】