(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124789
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20220819BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20220819BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20220819BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20220819BHJP
C08G 64/04 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L33/04
C08K5/49
C08K5/13
C08G64/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022633
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】皆川 健
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002BC08X
4J002BC09X
4J002BG04X
4J002BG05X
4J002BG06X
4J002CG01W
4J002EJ026
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4J029KB02
4J029KB05
4J029KB06
4J029KB12
4J029KD02
4J029KE11
4J029KH04
4J029KH06
(57)【要約】
【課題】透過性、表面硬度、耐熱性および剛性に優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)99.9~50重量部並びに(B)芳香族(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-1)6~47モル%、アルキル(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-2)47~93モル%および変性された芳香族ビニル単量体から誘導される構成単位(b-3)1~30モル%からなり、重量平均分子量が5,000~30,000である共重合体(B成分)0.1~50重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、A成分が、下記式(1)で表される構成単位(a-1)、下記式(2)で表される構成単位(a-2)および下記式(3)で表される構成単位(a-3)から構成され、全構成単位における構成単位a-1の割合が5~15モル%、構成単位a-2の割合が20~60モル%、構成単位a-3の割合が25~75モル%であるポリカーボネート共重合体(A-1成分)を含むポリカーボネート樹脂であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)99.9~50重量部並びに(B)芳香族(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-1)6~47モル%、アルキル(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-2)47~93モル%および変性された芳香族ビニル単量体から誘導される構成単位(b-3)1~30モル%からなり、重量平均分子量が5,000~30,000である共重合体(B成分)0.1~50重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、A成分が、下記式(1)で表される構成単位(a-1)、下記式(2)で表される構成単位(a-2)および下記式(3)で表される構成単位(a-3)から構成され、全構成単位における構成単位a-1の割合が5~15モル%、構成単位a-2の割合が20~60モル%、構成単位a-3の割合が25~75モル%であるポリカーボネート共重合体(A-1成分)を含むポリカーボネート樹脂であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1およびR
2は夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1~9の炭化水素基またはハロゲン原子である。)
【化2】
(式(2)中、R
3およびR
4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【化3】
(式(3)中、Wは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【請求項2】
式(1)におけるR1およびR2が夫々独立して水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基であり、式(2)におけるR3およびR4が夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基であり、Xが単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基であり、式(3)におけるWが単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
A-1成分の粘度平均分子量が15,000~40,000であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
構成単位a-1が、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンから誘導された構成単位であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
構成単位a-2が、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンから誘導された構成単位であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項6】
構成単位a-3が、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項7】
A成分とB成分との合計100重量部に対して、(C)リン系安定剤(C成分)0.1~1重量部および(D)フェノール系安定剤(D成分)0.1~1重量部を含有することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過性、表面硬度、耐熱性および剛性を併せ持つ熱可塑性樹脂組成物およびその成形品に関する。さらに詳しくは、特定のビスフェノール構造単位からなる変性ポリカーボネート共重合体および特定のアクリル系共重合体を特定量配合することによって透過性が改善された樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート系樹脂は高い透過性と機械特性のバランスに優れることから各種工業分野で幅広く使用されている。特に耐候性を付与した芳香族ポリカーボネート樹脂は各種照明カバーや表示パネルカバー等の光学用途において長期にわたって優れた特性を保持することができるため、OA機器を含む電気電子分野や自動車などの分野において有効に利用されている。但し、これらの用途の多くは傷付防止を目的として、成形品の表面に各種コーティングを施し製品化されている。近年ではポリカーボネート成形品表面にハードコートを施すことにより、耐傷付性と耐候性を両立させる技術が確立されているが、該技術は耐傷付性を飛躍的に向上させることが可能な反面、コーティング剤が高価であることに加え、成形後に複雑な塗装工程を設ける必要があり、完成後の製品コストが課題となっている。これらを背景として、ポリカーボネート樹脂の優れた透過性を維持したまま、耐傷付性を付与した樹脂組成物の開発が強く望まれている。塗装をせずにポリカーボネート樹脂の耐傷擦性を向上させる手法として、樹脂表面にアクリル樹脂フィルム、またはシートを積層する方法が知られている。(特許文献1参照)しかしながら、アクリル樹脂はポリカーボネート樹脂よりも耐熱性が低く、更に吸水しやすいため、温湿度による寸法変化が大きく、最終製品に反りが発生することが課題である。さらに、アクリル樹脂フィルム、またはシートの膜厚分布により、外観斑が生じ、漆黒調の高級感が損なわれることも問題である。また、ポリカーボネート樹脂に特定のアクリル系表面硬度改質剤を配合することで高い透過性を維持したまま、耐傷付性を付与する検討が多くなされている。(特許文献2、3参照)
【0003】
また、ビスフェノールC由来の構造を有するポリカーボネート樹脂は、耐傷付性が高い傾向にあることが知られている。そのため、上記ポリカーボネート樹脂から成形される成形品もハードコートレスで製品として使用されることがある。(特許文献4~10参照)しかしながら、該ポリカーボネート樹脂組成物は表面硬度に優れた樹脂組成物であるが、漆黒性などを言及しておりさらなる透過性の向上が求められる。さらに、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンおよび2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンを構成単位とするポリカーボネート樹脂とする方法が記載されている。(特許文献11参照)しかし、該ポリカーボネート樹脂は、表面硬度に優れるが、剛性に与える影響に関する知見は何ら開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-160892号公報
【特許文献2】特開2012-251107号公報
【特許文献3】特開2016-017153号公報
【特許文献4】特開昭64-069625号公報
【特許文献5】特開平08-183852号公報
【特許文献6】特開平08-034846号公報
【特許文献7】特開2002-117580号公報
【特許文献8】特許第3768903号公報
【特許文献9】特開2017-110180号公報
【特許文献10】特開2020-0633321号公報
【特許文献11】WO2017/073508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、透過性、表面硬度、耐熱性および剛性に優れる樹脂組成物および成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題は、下記構成により解決される。
1.(A)ポリカーボネート樹脂(A成分)99.9~50重量部並びに(B)芳香族(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-1)6~47モル%、アルキル(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-2)47~93モル%および変性された芳香族ビニル単量体から誘導される構成単位(b-3)1~30モル%からなり、重量平均分子量が5,000~30,000である共重合体(B成分)0.1~50重量部からなるポリカーボネート樹脂組成物であって、A成分が、下記式(1)で表される構成単位(a-1)、下記式(2)で表される構成単位(a-2)および下記式(3)で表される構成単位(a-3)から構成され、全構成単位における構成単位a-1の割合が5~15モル%、構成単位a-2の割合が20~60モル%、構成単位a-3の割合が25~75モル%であるポリカーボネート共重合体(A-1成分)を含むポリカーボネート樹脂であることを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
【0007】
【0008】
(式(1)中、R1およびR2は夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1~9の炭化水素基またはハロゲン原子である。)
【0009】
【0010】
(式(2)中、R3およびR4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【0011】
【0012】
(式(3)中、Wは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【0013】
2.式(1)におけるR1およびR2が夫々独立して水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基であり、式(2)におけるR3およびR4が夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基であり、Xが単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基であり、式(3)におけるWが単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基であることを特徴とする上記構成1記載のポリカーボネート樹脂組成物。
3.A-1成分の粘度平均分子量が15,000~40,000であることを特徴とする上記構成1または2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
4.構成単位a-1が、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンから誘導された構成単位であることを特徴とする上記構成1~3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
5.構成単位a-2が、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパンから誘導された構成単位であることを特徴とする上記構成1~4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
6.構成単位a-3が、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導された構成単位であることを特徴とする上記構成1~5のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
7.A成分とB成分との合計100重量部に対して、(C)リン系安定剤(C成分)0.1~1重量部および(D)フェノール系安定剤(D成分)0.1~1重量部を含有することを特徴とする上記構成1~6のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
8.上記構成1~7のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂組成物を成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物は、透過性、表面硬度、耐熱性および剛性に優れることから、電気・電子用途、機械用途、OA用途、自動車内外装部品および医療用途、その他の各種用途において幅広く有用である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細について更に説明する。
【0016】
<A成分>
本発明のポリカーボネート樹脂は、主たる構成単位として、下記式(1)で表される構成単位(a-1)、下記式(2)で表される構成単位(a-2)および下記式(3)で表される構成単位(a-3)から構成されるポリカーボネート樹脂を含む。
【0017】
【0018】
(式(1)中、R1およびR2は夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1~9の炭化水素基またはハロゲン原子である。)
【0019】
【0020】
(式(2)中、R3およびR4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基またはハロゲン原子である。Xは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子である。)
【0021】
【0022】
(式(3)中、Wは、単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキリデン基、硫黄原子または酸素原子を示す。)
【0023】
ここで、“主たる”とは、末端を除く全カーボネート構成単位100モル%中、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上、最も好ましくは100モル%の割合であることを示す。
【0024】
前記式(1)で表される構成単位a-1において、R1およびR2は夫々独立して水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましい。
【0025】
構成単位a-1を誘導する二価フェノールとしては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(BCF)が挙げられる。最も好適な二価フェノールは、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンである。
【0026】
本発明のポリカーボネート共重合体において全構成単位に対する、構成単位a-1の割合は5~15モル%であり、5~12モル%であることが好ましく、8~10モル%であることがより好ましい。構成単位a-1の割合が5モル%未満では表面硬度が劣り、15
モル%を超えると透過性が劣る。
【0027】
前記式(2)で表される構成単位a-2において、R3およびR4は夫々独立して炭素原子数1~6のアルキル基であることが好ましく、Xは単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基であることが好ましい。
【0028】
構成単位a-2を誘導する二価フェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールC(BPC)と記載)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。最も好適な二価フェノールは、ビスフェノールCである。
【0029】
本発明のポリカーボネート共重合体において全構成単位に対する、構成単位a-2の割合は20~60モル%であり、30~50モル%であることが好ましく、40~50モル%であることがより好ましい。構成単位a-2の割合が20モル%未満では、表面硬度に劣り、60モル%を超えると耐熱性に劣る。
【0030】
前記式(3)で表される構成単位a-3において、Wは単結合、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキレン基、置換もしくは無置換の炭素原子数1~10のアルキリデン基であることが好ましい。
【0031】
構成単位a-3を誘導する二価フェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、ビスフェノールA(BPA)と記載)、4,4’-ジヒドロキシ-1,1-ビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン等が例示される。最も好適な二価フェノールは、ビスフェノールAである。
【0032】
本発明のポリカーボネート共重合体において全構成単位に対する、構成単位a-3の割合は25~75モル%であり、30~70モル%が好ましく、35~65モル%がより好ましい。構成単位a-3の割合が25モル%未満では耐熱性に劣り、75モル%を超えると表面硬度が劣る。
【0033】
さらに、構成単位a-1、a-2およびa-3以外の構成単位を誘導する二価フェノールとして、好適には、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、炭素数1~3のアルキル基で置換されたレゾルシノール、3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3-トリメチルインダン-5-オール、1-(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-5-オール、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチルスピロインダン、1-メチル-1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-イソプロピルシクロヘキサン、1-メチル-2-(4-ヒドロキシフェニル)-3-[1-(4-ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、1,6-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,6-ヘキサンジオン等が例示される。かかるポリカーボネートのその他詳細については、例えばWO03/080728号パンフレット、特開平6-172508号公報、特開平8-27370号公報、特開2001-55435号公報、および特開2002-117580号公報等に記載されている。
【0034】
本発明のポリカーボネート樹脂は、二価フェノールと、カーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。また、3官能成分を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、並びにビニル系単量体を共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0035】
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0~40℃であり、反応時間は数分~5時間である。
【0036】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0037】
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート共重合体は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、m-メチルフェノール、p-メチルフェノール、m-プロピルフェノール、p-プロピルフェノール、1-フェニルフェノール、2-フェニルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-クミルフェノール、イソオクチルフェノール、p-長鎖アルキルフェノール等が挙げられる。
【0038】
本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じて脂肪族ジオールを共重合することができる。例えば、イソソルビド:1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロデカン、テトラメチルシクロブタンジオール(TMCBD)、2,2,4,4-テトラメチルシクロブタン-1,3-ジオール、混合異性体、シス/トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、シス/トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シクロヘクス-1,4-イルエンジメタノール、トランス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(tCHDM)、トランス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,4-シクロヘキサンジメタノール(cCHDM)、シス-1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、シス-1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,1’-ビ(シクロヘキシル)-4,4’-ジオール、スピログリコール、ジシクロヘキシル-4,4’-ジオール、4,4’-ジヒドロキシビシクロヘキシル、及びポリ(エチレングリコール)が挙げられる。
【0039】
本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じて脂肪酸を共重合することができる。例えば、1,10-ドデカンジオン酸(DDDA)、アジピン酸、ヘキサンジオン酸、イソフタル酸、1,3-ベンゼンジカルボン酸、テレフタル酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸(mHBA)、及び4-ヒドロキシ安息香酸(pHBA)が挙げられる。
【0040】
本発明のポリカーボネート樹脂は、芳香族または脂肪族(脂環式を含む)の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートを含む。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω-ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、およびイコサン二酸などの直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が好ましく挙げられる。これらのカルボン酸は、目的を阻害しない範囲で共重合してもよい。本発明のポリカーボネート共重合体は、必要に応じてポリオルガノシロキサン単位を含有する構成単位を、共重合することもできる。
【0041】
本発明のポリカーボネート樹脂は、必要に応じて三官能以上の多官能性芳香族化合物を含有する構成単位を、共重合し、分岐ポリカーボネートとすることもできる。分岐ポリカーボネートに使用される三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、4,6-ジメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキジフェニル)ヘプテン-2、2,4,6-トリメチル-2,4,6-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、1,3,5-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1-トリス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,6-ビス(2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェノール、および4-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン}-α,α-ジメチルベンジルフェノール等のトリスフェノールが好適に例示される。中でも1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。かかる多官能性芳香族化合物から誘導される構成単位は、他の二価成分からの構成単位との合計100モル%中、好ましくは0.03~1.5モル%、より好ましくは0.1~1.2モル%、特に好ましくは0.2~1.0モル%である。
【0042】
また分岐構造単位は、多官能性芳香族化合物から誘導されるだけでなく、溶融エステル交換法による重合反応時に生じる副反応の如き、多官能性芳香族化合物を用いることなく誘導されるものであってもよい。尚、かかる分岐構造の割合については1H-NMR測定により算出することが可能である。
【0043】
本発明のポリカーボネート樹脂は、その粘度平均分子量(Mv)が好ましくは15,000~40,000であり、より好ましくは16,000~30,000であり、さらに好ましくは18,000~28,000である。粘度平均分子量が15,000未満のポリカーボネート樹脂では、実用上十分な耐衝撃性が得られないことがある。一方、粘度平均分子量が40,000を超えるポリカーボネート樹脂は、高い成形加工温度を必要とするか、または特殊な成形方法を必要とすることから汎用性に劣り、更に溶融粘度の増加により、射出速度依存性も高くなりやすく、外観不良等により歩留まりが低下することがある。
【0044】
本発明におけるポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0045】
本発明のポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度が140~160℃であることが好ましく、140~155℃がより好ましく、140~150℃がさらに好ましい。ガラス転移温度が140℃未満であると耐熱性が劣る場合があり、160℃を超えると透過性および表面硬度が劣る場合がある。
【0046】
<B成分>
本発明のB成分として使用するアクリル系共重合体は、芳香族(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-1)6~47モル%、アルキル(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-2)47~93モル%および変性された芳香族ビニル単量体から誘導される構成単位(b-3)1~30モル%からなり、重量平均分子量が5,000~30,000である共重合体である。
【0047】
芳香族(メタ)アクリレート単量体とは、エステル部分に芳香族基を有するメタクリレート、エステル部分に芳香族基を有するアクリレート、又は双方を含むものであり、具体的には、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレートが挙げられる。これは1種を単独で用いても、2種以上を併用しても差し支えない。これらの中でも、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートが好ましく、フェニルメタクリレートが更に好ましい。
【0048】
アルキル(メタ)アクリレート単量体としては、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートなどが挙げられ、これらの中でもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
【0049】
変性された芳香族ビニル単量体としては、具体的には α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレンなどが挙げられ、なかでもα-メチルスチレンが特に好ましい。
【0050】
各構成単位の割合については、構成単位の合計を100モル%とした場合、芳香族(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-1)は6~47モル%、好ましくは8~38モル%、より好ましくは10~29モル%、アルキル(メタ)アクリレート単量体から誘導される構成単位(b-2)は47~93モル%、好ましくは50~90モル%、より好ましくは58~86モル%、変性された芳香族ビニル単量体から誘導される構成単位(b-3)は1~30モル%、好ましくは1~19モル%、より好ましくは3~18モル%である。b-1の割合が6モル%未満の場合、透過性および表面硬度が向上しない。b-1の割合が47モル%を超えると表面硬度が向上しない。また、b-2の割合が47モル%未満の場合、表面硬度が向上せず、93モル%を超える場合は透過性および表面硬度が向上しない。さらに、b-3の割合が1モル%未満の場合は透過性が向上せず、30モル%を越えると透過性および表面硬度が向上しない。
【0051】
さらに本発明におけるアクリル系共重合体は、重量平均分子量が5,000~30,000であり、好ましくは7,000~28,000、更に好ましくは8,000~25,000である。重量平均分子量が5,000~30,000の範囲から外れる場合、B成分とA成分との相溶性が悪くなり、表面硬度やウエルド外観の低下が起こる。かかる重量平均分子量はGPC測定(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定)により算出される。ここで示す重量平均分子量は、標準ポリスチレン樹脂による較正直線を使用したGPC測定によりポリスチレン換算の値として算出されたものである。
【0052】
本発明のアクリル系共重合体の重合方法としては、公知の乳化重合法、懸濁重合法、塊状重合法、溶液重合法などが挙げられる。これらの中では、変性された芳香族ビニルの重合性が良好になることから乳化重合法が好ましい。乳化重合法で用いられる乳化剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の公知の乳化剤を使用できる。乳化重合で使用する重合開始剤としてはt-ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸カリウム等の公知の重合開始剤を使用できる。
【0053】
B成分の含有量はA成分とB成分との合計100重量部に対し、0.1~50重量部であり、好ましくは20~45重量部、より好ましくは30~40重量部である。B成分の含有量が0.1重量部未満の場合、表面硬度の向上効果が十分に得られず、50重量部を超えると溶融混錬ができなくなる。
【0054】
<C成分>
本発明の樹脂組成物はリン系安定剤を含有することが好ましい。リン系安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル、並びに第3級ホスフィンなどが例示される。これらの中でも特に、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、およびホスホン酸、トリオルガノホスフェート化合物、およびアシッドホスフェート化合物が好ましい。尚、アシッドホスフェート化合物における有機基は、一置換、二置換、およびこれらの混合物のいずれも含む。該化合物に対応する下記の例示化合物においても同様にいずれをも含むものとする。
【0055】
トリオルガノホスフェート化合物としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリデシルホスフェート、トリドデシルホスフェート、トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、およびトリブトキシエチルホスフェートなどが例示される。これらの中でもトリアルキルホスフェートが好ましい。かかるトリアルキルホスフェートの炭素数は、好ましくは1~22、より好ましくは1~4である。特に好ましいトリアルキルホスフェートはトリメチルホスフェートである。
【0056】
アシッドホスフェート化合物としては、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、デシルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、ベヘニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、シクロヘキシルアシッドホスフェート、フェノキシエチルアシッドホスフェート、アルコキシポリエチレングリコールアシッドホスフェート、およびビスフェノールAアシッドホスフェートなどが例示される。これらの中でも炭素数10以上の長鎖ジアルキルアシッドホスフェートが熱安定性の向上に有効であり、該アシッドホスフェート自体の安定性が高いことから好ましい。
【0057】
ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-iso-プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ-n-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトなどが挙げられる。
【0058】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)(2-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、および2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイトなどが例示される。
【0059】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等があげられ、テトラキス(ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-フェニル-フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は上記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0060】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
【0061】
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0062】
上記の如く、ホスホナイト化合物としてはテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-ビフェニレンジホスホナイトが好ましく、該ホスホナイトを主成分とする安定剤は、Sandostab P-EPQ(商標、Clariant社製)およびIrgafos P-EPQ(商標、CIBA SPECIALTY CHEMICALS社製)として市販されておりいずれも利用できる。これらリン系安定剤の中でも好ましいものは、ホスホナイト化合物であるが、リン系安定剤2種以上を併用することも可能である。
【0063】
<D成分>
本発明の樹脂組成物はフェノール系安定剤を含有することが好ましい。フェノール安定剤としては、通常樹脂に配合される各種の化合物が使用できる。かかるフェノール化合物としては、例えば、α-トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3’-tert-ブチル-5’-メチル-2’-ヒドロキシベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(N,N-ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール)、2,2’-ジメチレン-ビス(6-α-メチル-ベンジル-p-クレゾール)、2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、1,6-へキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2-tert-ブチル-4-メチル6-(3-tert-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9-ビス{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,1,-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’-ジ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-トリ-チオビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、2,2-チオジエチレンビス-[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、N,N’-ヘキサメチレンビス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス2[3(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール-N-ビス-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセテート、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)アセチルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、テトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)ベンゼン、およびトリス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)イソシアヌレートなどが例示される。
【0064】
上記化合物の中でも、本発明においてはテトラキス[メチレン-3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート]メタン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、および3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましく利用される。特に3,9-ビス[2-{3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンが好ましい。上記フェノール系安定剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0065】
リン系安定剤およびフェノール系安定剤の含有量は、それぞれA成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.1~1重量部、より好ましくは0.2~0.3重量部である。
【0066】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物には、目的に応じて添加剤を配合することができる。
(i)チオエーテル系安定剤
チオエーテル系安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール-3-ステアリルチオプロピオネートなどが例示される。かかるチオエーテル系安定剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.01~1重量部、より好ましくは0.02~0.3重量部である。
【0067】
(ii)離型剤
本発明の樹脂組成物には、離型剤を配合することができる。本発明に用いることができる離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1-アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも入手の容易さ、離型性および透過性の点から脂肪酸エステルが好ましい。かかる離型剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.005~0.2重量部、より好ましくは0.007~0.1重量部、さらに好ましくは0.01~0.06重量部である。添加量が前記範囲の下限未満では、離型性の改善が十分ではない場合があり、上限を超える場合、ブリードアウトなど外観不良を起こす場合がある。
【0068】
上記の中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、好適には3~32の範囲、より好適には5~30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール~ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明の脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
【0069】
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3~32であることが好ましく、特に炭素数10~22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸(ベヘン酸)などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14~20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。かかる脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明で使用される脂肪族カルボン酸の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。しかしながら全エステル(フルエステル)の場合には、離型性を向上させるため、少なからず遊離の脂肪酸を含有することが好ましく、この点においてフルエステルにおける酸価は3~15の範囲が好ましい。また脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0070】
本発明の樹脂組成物に用いることができる脂肪酸エステルは、部分エステルおよびフルエステルのいずれであってもよいが。本発明においてより好ましくは良好な離型性および耐久性の点で部分エステルである。中でもグリセリンモノエステルが好ましい。グリセリンモノエステルは、グリセリンと脂肪酸のモノエステルが主成分であり、好適な脂肪酸としてはステアリン酸、パルチミン酸、ベヘン酸、アラキン酸、モンタン酸、およびラウリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸、およびソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、特にステアリン酸、ベヘン酸、およびパルチミン酸のグリセリンモノエステルを主成分としたものが好ましい。尚、かかる脂肪酸は、天然の脂肪酸から合成されたものであり、上述のとおり混合物となる。グリセリンモノエステルは、他の離型剤、殊に脂肪酸フルエステルとの併用が可能であるが、併用した場合でもグリセリンモノエステルを主成分とすることが好ましい。即ち、離型剤100重量%中、60重量%以上とすることが好ましい。
【0071】
尚、部分エステルは、熱安定性の点ではフルエステルに対して劣る場合が多い。かかる部分エステルの熱安定性を向上するため、部分エステルは、好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満のナトリウム金属含有量とすることが好ましい。ナトリウム金属含有量が1ppm未満の脂肪酸部分エステルは、脂肪酸部分エステルを通常の方法で製造した後、分子蒸留などにより精製して製造することができる。
【0072】
具体的には、スプレーノズル式脱ガス装置によりガス分および低沸点物質を除去した後に流下膜式蒸留装置を用い蒸留温度120~150℃、真空度0.01~0.03kPaの条件にてグリセリン等の多価アルコール分を除去し、更に遠心式分子蒸留装置を用いて、蒸留温度160~230℃、真空度0.01~0.2Torrの条件にて高純度の脂肪酸部分エステルを留出分として得る方法などがあり、ナトリウム金属は蒸留残渣として除去できる。得られた留出分に対し、繰り返し分子蒸留を行うことにより、更に純度を上げ、ナトリウム金属含有量の更に少ない脂肪酸部分エステルを得ることもできる。また前もって適切な方法にて分子蒸留装置内を十分に洗浄し、また気密性を高めるなどにより外部環境からのナトリウム金属成分の混入を防ぐことも肝要である。かかる脂肪酸エステルは、専門業者(例えば理研ビタミン(株))から入手可能である。
【0073】
(iii)紫外線吸収剤
本発明の樹脂組成物は紫外線吸収剤を含有することができる。本発明の紫外線吸収剤としては、具体的にはベンゾフェノン系では、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシトリハイドライドレイトベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、および2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンなどが例示される。
【0074】
紫外線吸収剤としては、具体的に、ベンゾトリアゾール系では、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-クミル-6-ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’-p-フェニレンビス(1,3-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2-[2-ヒドロキシ-3-(3,4,5,6-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、並びに2-(2’-ヒドロキシ-5-メタクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体や2-(2’-ヒドロキシ-5-アクリロキシエチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールと該モノマーと共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体などの2-ヒドロキシフェニル-2H-ベンゾトリアゾール骨格を有する重合体などが例示される。
【0075】
紫外線吸収剤としては、具体的に、ヒドロキシフェニルトリアジン系では、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-メチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-エチルオキシフェノール、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-プロピルオキシフェノール、および2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ブチルオキシフェノールなどが例示される。さらに2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシフェノールなど、上記例示化合物のフェニル基が2,4-ジメチルフェニル基となった化合物が例示される。
【0076】
紫外線吸収剤としては、具体的に環状イミノエステル系では、例えば2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、2,2’-(4,4’-ジフェニレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)、および2,2’-(2,6-ナフタレン)ビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)などが例示される。
【0077】
また紫外線吸収剤としては、具体的にシアノアクリレート系では、例えば1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼンなどが例示される。
【0078】
さらに上記紫外線吸収剤は、ラジカル重合が可能な単量体化合物の構造をとることにより、かかる紫外線吸収性単量体および/またはヒンダードアミン構造を有する光安定性単量体と、アルキル(メタ)アクリレートなどの単量体とを共重合したポリマー型の紫外線吸収剤であってもよい。上記紫外線吸収性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステルのエステル置換基中にベンゾトリアゾール骨格、ベンゾフェノン骨格、トリアジン骨格、環状イミノエステル骨格、およびシアノアクリレート骨格を含有する化合物が好適に例示される。
【0079】
上記の中でも紫外線吸収能の点においてはベンゾトリアゾール系およびヒドロキシフェニルトリアジン系が好ましく、耐熱性や色相の点では、環状イミノエステル系およびシアノアクリレート系が好ましい。上記紫外線吸収剤は単独であるいは2種以上の混合物で用いてもよい。
【0080】
紫外線吸収剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.01~2重量部、より好ましくは0.03~2重量部、さらに好ましくは0.04~1重量部、特に好ましくは0.05~0.5重量部である。
【0081】
(iv)難燃剤
本発明の樹脂組成物には、ポリカーボネート樹脂の難燃剤として知られる各種の化合物が配合されてよい。難燃剤として使用される化合物の配合は難燃性の向上のみならず、各化合物の性質に基づき、例えば帯電防止性、流動性、剛性、および熱安定性の向上などがもたらされる。
【0082】
かかる難燃剤としては、(i)有機金属塩系難燃剤(例えば有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、ホウ酸金属塩系難燃剤、および錫酸金属塩系難燃剤など)、(ii)有機リン系難燃剤(例えば、モノホスフェート化合物、ホスフェートオリゴマー化合物、ホスホネートオリゴマー化合物、ホスホニトリルオリゴマー化合物、およびホスホン酸アミド化合物など)、(iii)シリコーン化合物からなるシリコーン系難燃剤、並びに(iv)ハロゲン系難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート(オリゴマーを含む)、臭素化ポリアクリレート、および塩素化ポリエチレンなど)等が挙げられる。
【0083】
(v)滴下防止剤
本発明の樹脂組成物には、滴下防止剤を含むことができる。かかる滴下防止剤を上記難燃剤と併用することにより、より良好な難燃性を得ることができる。かかる滴下防止剤としては、フィブリル形成能を有する含フッ素ポリマーを挙げることができ、かかるポリマーとしてはポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、など)、米国特許第4379910号公報に示されるような部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート樹脂などを挙げることかできるが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(以下PTFEと称することがある)である。
【0084】
フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン(フィブリル化PTFE)は極めて高い分子量を有し、せん断力などの外的作用によりPTFE同士を結合して繊維状になる傾向を示すものである。その数平均分子量は、150万~数千万の範囲である。かかる下限はより好ましくは300万である。かかる数平均分子量は、特開平6-145520号公報に開示されているとおり、380℃でのポリテトラフルオロエチレンの溶融粘度に基づき算出される。即ち、フィブリル化PTFEは、かかる公報に記載された方法で測定される380℃における溶融粘度が107~1013poiseの範囲であり、好ましくは108~1012poiseの範囲である。
【0085】
かかるPTFEは、固体形状の他、水性分散液形態のものも使用可能である。またかかるフィブリル形成能を有するPTFEは樹脂中での分散性を向上させ、更に良好な難燃性および機械的特性を得るために他の樹脂との混合形態のPTFE混合物を使用することも可能である。また、特開平6-145520号公報に開示されているとおり、かかるフィブリル化PTFEを芯とし、低分子量のポリテトラフルオロエチレンを殻とした構造を有するものも好ましく利用される。
【0086】
フィブリル化PTFEの市販品としては例えば三井・デュポンフロロケミカル(株)のテフロン(登録商標)6J、ダイキン化学工業(株)のポリフロンMPA FA500、F-201Lなどを挙げることができる。フィブリル化PTFEの水性分散液の市販品としては、旭アイシーアイフロロポリマーズ(株)製のフルオンAD-1、AD-936、ダイキン工業(株)製のフルオンD-1、D-2、三井・デュポンフロロケミカル(株)製のテフロン(登録商標)30Jなどを代表として挙げることができる。
【0087】
混合形態のフィブリル化PTFEとしては、(1)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体の水性分散液または溶液とを混合し共沈殿を行い共凝集混合物を得る方法(特開昭60-258263号公報、特開昭63-154744号公報などに記載された方法)、(2)フィブリル化PTFEの水性分散液と乾燥した有機重合体粒子とを混合する方法(特開平4-272957号公報に記載された方法)、(3)フィブリル化PTFEの水性分散液と有機重合体粒子溶液を均一に混合し、かかる混合物からそれぞれの媒体を同時に除去する方法(特開平06-220210号公報、特開平08-188653号公報などに記載された方法)、(4)フィブリル化PTFEの水性分散液中で有機重合体を形成する単量体を重合する方法(特開平9-95583号公報に記載された方法)、および(5)PTFEの水性分散液と有機重合体分散液を均一に混合後、更に該混合分散液中でビニル系単量体を重合し、その後混合物を得る方法(特開平11-29679号などに記載された方法)により得られたものが使用できる。これらの混合形態のフィブリル化PTFEの市販品としては、三菱レイヨン(株)の「メタブレン A3800」(商品名)、およびGEスペシャリティーケミカルズ社製 「BLENDEX B449」(商品名)などが例示される。
【0088】
本発明の樹脂組成物が有する良好な機械特性や表面外観性をより有効に活用するためには、上記フィブリル化PTFEはできる限り微分散されることが好ましい。かかる微分散を達成する手段として、上記混合形態のフィブリル化PTFEは有利である。また水性分散液形態のものを溶融混練機に直接供給する方法も微分散には有利である。但し水性分散液形態のものはやや色相が悪化する点に配慮を要する。混合形態におけるフィブリル化PTFEの割合としては、かかる混合物100重量%中、10~80重量%が好ましく、より好ましくは15~75重量%である。フィブリル化PTFEの割合がかかる範囲にある場合は、フィブリル化PTFEの良好な分散性を達成することができる。
【0089】
フィブリル化PTFEのポリカーボネート樹脂組成物中の含有量は、A成分とB成分と
の合計100重量部に対して、好ましくは0.001~1重量部、より好ましくは0.1~0.7重量部である。
【0090】
(vi)熱線吸収能を有する化合物
本発明の樹脂組成物は熱線吸収能を有する化合物を含有することができる。かかる化合物としてはフタロシアニン系近赤外線吸収剤、ATO、ITO、酸化イリジウムおよび酸化ルテニウム、酸化イモニウムなどの金属酸化物系近赤外線吸収剤、ホウ化ランタン、ホウ化セリウムおよびホウ化タングステンなどの金属ホウ化物系や酸化タングステン系近赤外線吸収剤などの近赤外吸収能に優れた各種の金属化合物、ならびに炭素フィラーが好適に例示される。かかるフタロシアニン系近赤外線吸収剤としてはたとえば三井化学(株)製MIR-362が市販され容易に入手可能である。炭素フィラーとしてはカーボンブラック、グラファイト(天然、および人工のいずれも含む)およびフラーレンなどが例示され、好ましくはカーボンブラックおよびグラファイトである。これらは単体または2種以上を併用して使用することができる。フタロシアニン系近赤外線吸収剤の含有量は、A成分とB成分の合計100重量部に対して、0.0005~0.2重量部が好ましく、0.0008~0.1重量部がより好ましく、0.001~0.07重量部がさらに好ましい。金属酸化物系近赤外線吸収剤、金属ホウ化物系近赤外線吸収剤および炭素フィラーの含有量は、本発明の樹脂組成物中、0.1~200ppm(重量割合)の範囲が好ましく、0.5~100ppmの範囲がより好ましい。
【0091】
(vii)光拡散剤
本発明の樹脂組成物には、光拡散剤を配合して光拡散効果を付与することができる。かかる光拡散剤としては高分子微粒子、炭酸カルシウムの如き低屈折率の無機微粒子、およびこれらの複合物等が例示される。かかる高分子微粒子は、既に熱可塑性樹脂の光拡散剤として公知の微粒子である。より好適には粒径数μmのアクリル架橋粒子およびポリオルガノシルセスキオキサンに代表されるシリコーン架橋粒子などが例示される。光拡散剤の形状は球形、円盤形、柱形、および不定形などが例示される。かかる球形は、完全球である必要はなく変形しているものを含み、かかる柱形は立方体を含む。好ましい光拡散剤は球形であり、その粒径は均一であるほど好ましい。光拡散剤の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、好ましくは0.005~20重量部、より好ましくは0.01~10重量部、更に好ましくは0.01~3重量部である。尚、光拡散剤は2種以上を併用することができる。
【0092】
(viii)光高反射用白色顔料
本発明の樹脂組成物には、光高反射用白色顔料を配合して光反射効果を付与することができる。かかる白色顔料としては二酸化チタン(特にシリコーンなど有機表面処理剤により処理された二酸化チタン)顔料が特に好ましい。かかる光高反射用白色顔料の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、3~30重量部が好ましく、8~25重量部がより好ましい。尚、光高反射用白色顔料は2種以上を併用することができる。
【0093】
(ix)帯電防止剤
本発明の樹脂組成物には、帯電防止性能が求められる場合があり、かかる場合帯電防止剤を含むことが好ましい。かかる帯電防止剤としては、例えば(1)ドデシルベンゼンスルホン酸ホスホニウム塩に代表されるアリールスルホン酸ホスホニウム塩、およびアルキルスルホン酸ホスホニウム塩などの有機スルホン酸ホスホニウム塩、並びにテトラフルオロホウ酸ホスホニウム塩の如きホウ酸ホスホニウム塩が挙げられる。該ホスホニウム塩の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として5重量部以下が適切であり、好ましくは0.05~5重量部、より好ましくは1~3.5重量部、更に好ましくは1.5~3重量部の範囲である。
【0094】
帯電防止剤としては例えば、(2)有機スルホン酸リチウム、有機スルホン酸ナトリウム、有機スルホン酸カリウム、有機スルホン酸セシウム、有機スルホン酸ルビジウム、有機スルホン酸カルシウム、有機スルホン酸マグネシウム、および有機スルホン酸バリウムなどの有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩が挙げられる。かかる金属塩は前述のとおり、難燃剤としても使用される。かかる金属塩は、より具体的には例えばドデシルベンゼンスルホン酸の金属塩やパーフルオロアルカンスルホン酸の金属塩などが例示される。有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、0.5重量部以下が適切であり、好ましくは0.001~0.3重量部、より好ましくは0.005~0.2重量部である。特にカリウム、セシウム、およびルビジウムなどのアルカリ金属塩が好適である。
【0095】
帯電防止剤としては、例えば(3)アルキルスルホン酸アンモニウム塩、およびアリールスルホン酸アンモニウム塩などの有機スルホン酸アンモニウム塩が挙げられる。該アンモニウム塩の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部を基準として0.05重量部以下が適切である。帯電防止剤としては、例えば(4)ポリエーテルエステルアミドの如きポリ(オキシアルキレン)グリコール成分をその構成成分として含有するポリマーが挙げられる。該ポリマーの含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、5重量部以下が適切である。
【0096】
(x)充填材
本発明の樹脂組成物には、強化フィラーとして公知の各種充填材を配合することができる。かかる充填材としては、各種の繊維状充填材、板状充填材、および粒状充填材が利用できる。ここで、繊維状充填材はその形状が繊維状(棒状、針状、扁平状、またはその軸が複数の方向に伸びた形状をいずれも含む)であり、板状充填材はその形状が板状(表面に凹凸を有するものや、板が湾曲を有するものを含む)である充填材である。粒状充填材は、不定形状を含むこれら以外の形状の充填材である。
【0097】
上記繊維状や板状の形状は充填材の形状観察より明らかな場合が多いが、例えばいわゆる不定形との差異としては、そのアスペクト比が3以上であるものは繊維状や板状といえる。
【0098】
板状充填材としては、ガラスフレーク、タルク、マイカ、カオリン、メタルフレーク、カーボンフレーク、およびグラファイト、並びにこれらの充填剤に対して例えば金属や金属酸化物などの異種材料を表面被覆した板状充填材などが好ましく例示される。その粒径は0.1~300μmの範囲が好ましい。かかる粒径は、10μm程度までの領域は液相沈降法の1つであるX線透過法で測定された粒子径分布のメジアン径(D50)による値をいい、10~50μmの領域ではレーザー回折・散乱法で測定された粒子径分布のメジアン径(D50)による値をいい、50~300μmの領域では振動式篩分け法による値である。かかる粒径は樹脂組成物中での粒径である。板状充填材は、各種のシラン系、チタネート系、アルミネート系、およびジルコネート系などのカップリング剤で表面処理されてもよく、またオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂などの各種樹脂や高級脂肪酸エステルなどにより集束処理されるか、または圧縮処理された造粒物であってもよい。
【0099】
繊維状充填材は、その繊維径が0.1~20μmの範囲が好ましい。繊維径の上限は13μmが好ましく、10μmが更に好ましい。一方繊維径の下限は1μmが好ましい。
【0100】
ここでいう繊維径とは数平均繊維径を指す。尚、かかる数平均繊維径は、成形品を溶剤に溶解するかもくしは樹脂を塩基性化合物で分解した後に採取される残渣、およびるつぼで灰化を行った後に採取される灰化残渣を走査電子顕微鏡観察した画像から算出される値
である。
【0101】
かかる繊維状充填材としては、例えば、ガラスファイバー、扁平断面ガラス繊維、ガラスミルドファイバー、ガラスフレーク、カーボンファイバー、扁平断面カーボンファイバー、カーボンミルドファイバー、メタルファイバー、バサルト繊維、アスベスト、ロックウール、セラミックファイバー、スラグファイバー、チタン酸カリウムウィスカー、ボロンウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、ワラストナイト、ゾノトライト、パリゴルスカイト(アタパルジャイト)、およびセピオライトなどの繊維状無機充填材、アラミド繊維、ポリイミド繊維およびポリベンズチアゾール繊維などの耐熱有機繊維に代表される繊維状耐熱有機充填材、ヘンプ麻や竹などの植物性繊維、並びにこれらの充填剤に対して例えば金属や金属酸化物などの異種材料を表面被覆した繊維状充填材などが例示される。異種材料を表面被覆した充填材としては、例えば金属コートガラスファイバー、金属コートガラスフレーク、酸化チタンコートガラスフレーク、および金属コートカーボンファイバーなどが例示される。異種材料の表面被覆の方法としては特に限定されるものではなく、例えば公知の各種メッキ法(例えば、電解メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法(例えば熱CVD、MOCVD、プラズマCVDなど)、PVD法、およびスパッタリング法などを挙げることができる。
【0102】
ここで繊維状充填材とは、アスペクト比が3以上、好ましくは5以上、より好ましくは10以上である繊維状の充填材をいう。アスペクト比の上限は10,000程度であり、好ましくは200である。かかる充填材のアスペクト比は樹脂組成物中での値である。また扁平断面ガラス繊維とは、繊維断面の長径の平均値が10~50μm、好ましくは15~40μm、より好ましくは20~35μmで長径と短径の比(長径/短径)の平均値が1.5~8、好ましくは2~6、更に好ましくは2.5~5であるガラス繊維である。繊維状充填材も上記板状充填材と同様に各種のカップリング剤で表面処理されてもよく、各種の樹脂などにより集束処理され、また圧縮処理により造粒されてもよい。
【0103】
かかる充填材の含有量は、A成分とB成分との合計100重量部に対して、200重量部以下が好ましく、より好ましくは100重量部以下、更に好ましくは50重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。
【0104】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物には、A成分、B成分以外の熱可塑性樹脂、上記記載の添加剤の他に、蛍光染料、蛍光増白剤、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、ブルーイング剤、流動パラフィンの如き分散剤およびフォトクロミック剤などを配合することができる。
【0105】
かかる他の樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスチレン樹脂、MS樹脂(メチルメタクリートとスチレンから主としてなる共重合体樹脂)、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、並びに熱可塑性フッ素樹脂(例えばポリフッ化ビニリデン樹脂に代表される)等の樹脂が挙げられる。
【0106】
<樹脂組成物および成形品の製造>
本発明の樹脂組成物の製造に当たっては、その製造方法は特に限定されるものではなく公知の製造方法を利用することができる。通常、ポリカーボネート樹脂、アクリル共重合
体および添加剤を予備混合した後、押出機に投入して溶融混練した後、押出されたスレッドを冷却し、ペレタイザーにより切断して、ペレット状の成形材料が製造される。押出機は単軸押出機、および二軸押出機のいずれもが利用できるが、生産性や混練性の観点からは二軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機の代表的な例としては、ZSK(Werner & Pfleiderer社製、商品名)を挙げることができる。同様のタイプの具体例としてはTEX((株)日本製鋼所製、商品名)、TEM(東芝機械(株)製、商品名)、KTX((株)神戸製鋼所製、商品名)などを挙げることができる。押出機としては、原料中の水分や、溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有するものが好ましく使用できる。ベントからは発生水分や揮発ガスを効率よく押出機外部へ排出するための真空ポンプが好ましく設置される。また押出原料中に混入した異物などを除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置し、異物を樹脂組成物から取り除くことも可能である。かかるスクリーンとしては金網、スクリーンチェンジャー、焼結金属プレート(ディスクフィルターなど)などを挙げることができる。
【0107】
更に添加剤は、独立して押出機に供給することもできるが、前述のとおり樹脂原料と予備混合することが好ましい。かかる予備混合の手段には、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、および押出混合機などが例示される。より好適な方法は、例えば原料の一部と添加剤とをヘンシェルミキサーの如き高速攪拌機で混合してマスター剤を作成した後、かかるマスター剤物を残る全量の樹脂原料とナウターミキサーの如き高速でない攪拌機で混合する方法である。
【0108】
押出機より押出された樹脂は、直接切断してペレット化するか、またはストランドを形成した後かかるストランドをペレタイザーで切断してペレット化される。外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にかかるペレットの製造においては、既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を行うことが好ましい。ミスカットの低減には、ペレタイザーでの切断時のスレッドの温度管理、切断時のイオン風の吹きつけ、ペレタイザーのすくい角の適正化、および離型剤の適切な配合などの手段、並びに切断されたペレットと水との混合物を濾過してペレットと水およびミスカットとを分離する方法などが挙げられる。その測定方法の一例は例えば特開2003-200421号公報に開示されている。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を行うことができる。
【0109】
本発明の樹脂組成物は、射出成形、射出圧縮成形、インジェクションブロー成形、押出成形またはブロー成形などの方法により目的の成形品を得ることもできる。
【0110】
更に本発明の成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、通常の熱可塑性樹脂に用いられる方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。
【実施例0111】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の物性評価は下記の方法に従った。
【0112】
<物性評価>
(1)粘度平均分子量
比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量(Mv)を算出した。
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0113】
(2)組成比
ポリカーボネート樹脂40mgを0.6ml重クロロホルム溶液に溶解し、日本電子製400MHzの核磁気共鳴装置により、1H-NMRを測定し、各構成単位に特徴のあるスペクトルピーク面積比により、ポリカーボネート共重合体の組成比を算出した。
【0114】
(3)ガラス転移温度
TAインスツルメント社製の熱分析システムDSC-2910を使用して、JIS K7121に従い窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0115】
(4)光線透過率
算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、住友重機械工業社製射出成形機SG150-Uを用いて、シリンダー温度270℃、金型温度70℃の条件で、保圧時間10秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。かかる3段プレートの厚み2mm部における光線透過率を村上色彩技術研究所(株)製のヘーズメーターHR-100を使用して、その厚み方向の透過率をASTMD1003に従い測定した。
【0116】
(5)表面硬度(鉛筆硬度)
上記方法で成形した3段プレートの厚み2mm部における鉛筆硬度をJIS K5600に則して測定した。
【0117】
(6)耐熱性
ペレットを120℃で5時間乾燥後、住友重機械工業社製射出成形機SG260M-HPにより、シリンダー温度270℃で成形した試験片を用い、ISO75-1およびISO75-2に則して荷重たわみ温度を測定した。(荷重:1.80MPa、試験片形状:長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)
【0118】
(7)剛性(曲げ弾性率)
ペレットを120℃で5時間乾燥後、住友重機械工業社製射出成形機SG150-Uにより、シリンダー温度270℃で成形した試験片を用い、ISO178に則して曲げ弾性率を測定した。(試験片形状:長さ80mm×幅10mm×厚み4mm)
【0119】
(実施例1~11、比較例1~10)
表1記載のA成分、B成分、C成分およびD成分を均一に混合した後、ベント式二軸押出機[(株)日本製鋼所製TEX30α-38.5BW-3V]により脱気しながら溶融混錬し、ポリカーボネート樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について、上記記載の方法で光線透過率、表面硬度、耐熱性および剛性を評価した。結果を表2および表3に示した。
【0120】
<A成分>
A-1:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液4,555部およびイオン交換水22,730部を仕込み、これに9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(本州化学製)596部、ビスフェノールC(本州化学製)1,618部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)1,799部、およびハイドロサルファイト7.94部(和光純薬製)を溶解した後、塩化メチレン13,415部を加え、撹拌下、15~25℃でホスゲン2,000部を約70分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液650部およびp-tert-ブチルフェノール87.6部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン3.94部を加え、さらに28~35℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸を加え、酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0121】
A-2:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
ビスフェノールC(本州化学製)2,023部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)1,440部、p-tert-ブチルフェノール82.8部とした以外はA-1の調製方法と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0122】
A-3:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(本州化学製)298部、ビスフェノールC(本州化学製)1,820部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)1,799部、p-tert-ブチルフェノール71.0部とした以外はA-1の調製方法と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0123】
A-4:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(本州化学製)894部、ビスフェノールC(本州化学製)1,213部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)1,979部、p-tert-ブチルフェノール106.5部とした以外はA-1の調製方法と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量、およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0124】
A-5:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(本州化学製)179部、ビスフェノールC(本州化学製)2,023部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)1,691部、p-tert-ブチルフェノール92.3部とした以外はA-1の調製方法と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量、およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0125】
A-6:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(本州化学製)1,193部、ビスフェノールC(本州化学製)1,618部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)1,439部、p-tert-ブチルフェノール92.3部とした以外はA-1の
調製方法と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量、およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0126】
A-7:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
ビスフェノールAを使用せず、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(本州化学製)566部、ビスフェノールC(本州化学製)3,452部、p-tert-ブチルフェノール80.1部とした以外はA-1の調製方法と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量、およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0127】
A-8:下記条件で調製した芳香族ポリカーボネート樹脂
ビスフェノールCを使用せず、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(本州化学製)596部、ビスフェノールA(新日鐵化学製)3、238部、p-tert-ブチルフェノール71.0部とした以外はA-1の調製方法と同様の手法にてポリカーボネート樹脂パウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂の組成比、粘度平均分子量、およびガラス転移温度の測定結果を表1に示した。
【0128】
【0129】
<B成分>
B-1:重量平均分子量16,700のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位/メチルメタクリレートより誘導される構成単位/α―メチルスチレンより誘導される構成単位のモル比が21:71:8である共重合体(三菱レイヨン(株)製H-880(商品名))
B-2:重量平均分子量15,000のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位/メチルメタクリレートより誘導される構成単位/α-メチルスチレンより誘導される構成単位のモル比が10:64:26である共重合体からなるアクリル樹脂
B-3:重量平均分子量11,700のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位/メチルメタクリレートより誘導される構成単位/α-メチルスチレンより誘導される構成単位のモル比が37:53:10である共重合体からなるアクリル樹脂
B-4:重量平均分子量15,300のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位/メチルメタクリレートより誘導される構成単位/α-メチルスチレンより誘導される構成単位のモル比が12:85:3である共重合体からなるアクリル樹脂
B-5:重量平均分子量11,600のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位/メチルメタクリレートより誘導される構成単位/α-メチルスチレンより誘導される構成単位のモル比が54:34:12である共重合体からなるアクリル樹脂
B-6:重量平均分子量11,800のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位/メチルメタクリレートより誘導される構成単位/α-メチルスチレンより誘導される構成単位のモル比が3:94:3である共重合体からなるアクリル樹脂
B-7:重量平均分子量11,500のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位
/メチルメタクリレートより誘導される構成単位/α-メチルスチレンより誘導される構成単位のモル比が18:41:40である共重合体からなるアクリル樹脂
B-8:重量平均分子量10,000のフェニルメタクリレートより誘導される構成単位/メチルメタクリレートより誘導される構成単位のモル比が24:75である共重合体からなるアクリル樹脂
【0130】
<C成分>
C-1:ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(融点:235℃、ADEKA社製)
【0131】
<D成分>
D-1:オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(融点:52℃、BASF社製)
【0132】
【0133】
【0134】
表2および表3から本発明の配合により、透過性、表面硬度、耐熱性および剛性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることがわかる。
本発明の樹脂組成物および成形品は、携帯電話、液晶テレビ、スピーカー、携帯ゲーム機、ノートパソコンに代表される電気・電子・OA機器の筐体や自動車内外装部品、家具
、楽器類に利用できる。