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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124811
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】電動車両駆動装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/02 20060101AFI20220819BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B60K1/02
B60L15/20 S
B60L15/20 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022667
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】塚本 準
【テーマコード(参考)】
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB18
3D235BB32
3D235CC12
3D235CC13
3D235CC15
3D235GB03
3D235HH32
5H125AA01
5H125AB01
5H125BA05
5H125BE05
5H125CA02
5H125EE42
5H125FF01
(57)【要約】
【課題】低速トルクの増加と高速回転数の増加とを両立でき、また、減速機構をコンパクトにでき、さらに、車両姿勢の変化に影響しないようにでき、加えて、中間加速に影響しないようにできる電動車両駆動装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る電動車両駆動装置5は、前輪用駆動ユニット8a,8bと、後輪用駆動ユニット9a,9bと、を備える。前輪用駆動ユニット8a,8bは、第1電動モータ15と、第1電動モータ15による回転を減速して前輪3a,3bに伝達する第1減速ギア機構16と、を備える。後輪用駆動ユニット9a,9bは、第2電動モータ17と、第2電動モータ17による回転を減速して後輪4a,4bに伝達し、前輪用駆動ユニット8a,8bとは異なる減速比である第2減速ギア機構18と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前方及び後方のいずれか一方に設けられ、車幅方向に並ぶ一組の第1車輪を駆動する第1駆動ユニットと、
車体の前方及び後方のいずれか他方に設けられ、車幅方向に並ぶ一組の第2車輪を駆動する第2駆動ユニットと、
を備え、
前記第1駆動ユニットは、
第1電動モータと、
前記第1電動モータによる回転を減速して前記一組の第1車輪に伝達する第1減速機構と、
を備え、
前記第2駆動ユニットは、
第2電動モータと、
前記第2電動モータによる回転を減速して前記一組の第2車輪に伝達し、前記第1減速機構とは異なる減速比である第2減速機構と、
を備える
ことを特徴とする電動車両駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両駆動装置において、
前記第1減速機構と前記第2減速機構との減速比に応じて前記第1電動モータと前記第2電動モータとを制御する制御モードを備える
ことを特徴とする電動車両駆動装置。
【請求項3】
前記第1駆動ユニットは、前記一組の第1車輪をそれぞれ個別に独立駆動するために一組設けられており、
前記第2駆動ユニットは、前記一組の第2車輪をそれぞれ個別に独立駆動するために一組設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電動車両駆動装置。
【請求項4】
前記第1駆動ユニットは、
前記第1電動モータの回転が入力される第1駆動ギアと、
前記第1駆動ギアに噛み合わされ前記第1車輪に前記第1電動モータの回転を伝達する第1従動ギアと、
を備え、
前記第2駆動ユニットは、
前記第2電動モータの回転が入力される第2駆動ギアと、
前記第2駆動ギアに噛み合わされ前記第2車輪に前記第2電動モータの回転を伝達する第2従動ギアと、
を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動車両駆動装置。
【請求項5】
前記第1電動モータ及び前記第2電動モータは、スイッチトリラクタンスモータであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動車両駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電動モータのみを走行用の動力源とした電動車両駆動装置が搭載された電動車両が知られている。この種の電動車両駆動装置は、例えば、4輪(4つの車軸)にそれぞれ設けられて4輪を独立駆動する。この電動車両駆動装置は、電動モータの起動トルクの大きさや高回転までのトルク-回転数特性がガソリン車の特性に近いことから、例えば、4輪(4つの車軸)に設けられた減速機構のギア比が一定に設定されている。この減速機構は、一対のギア(すなわち、1段ギア)によりギア比(減速比)が設定され、コンパクトにまとめられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-170952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1にあっては、4輪に設けられた減速機構の減速比が一定に設定されている。このため、低速トルク(低速時のトルク)を増加すると高速回転数を確保することが難しく、高速回転数を増加すると低速トルクを確保することが難しくなる。このように、低速トルクと高速回転数との2つ増加を両立することが難しいという課題があった。
【0005】
この対策として、例えば、2段以上の変速機構や、無段変速機構を用いることにより、低速トルクと高速回転数とを両立させることが考えられる。しかし、2段以上の変速機構や無段変速機構は、1段ギアの減速機構と比べてサイズ(形状)をコンパクトにまとめ難くなり、4輪に設けることが難しいという課題があった。
また、2段以上の変速機構や無段変速機構の場合、例えば、左右の車輪(車軸)に備えた変速機構の変速タイミングのズレにより車両姿勢が変化する可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、低速トルクの増加と高速回転数の増加とを両立でき、減速機構をコンパクトにできる電動車両駆動装置を提供する。また、車両姿勢の変化に影響しないようにでき、中間加速に影響しないようにできる電動車両駆動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係る電動車両駆動装置は、車体の前方及び後方のいずれか一方に設けられ、車幅方向に並ぶ一組の第1車輪を駆動する第1駆動ユニットと、車体の前方及び後方のいずれか他方に設けられ、車幅方向に並ぶ一組の第2車輪を駆動する第2駆動ユニットと、を備え、前記第1駆動ユニットは、第1電動モータと、前記第1電動モータによる回転を減速して前記一組の第1車輪に伝達する第1減速機構と、を備え、前記第2駆動ユニットは、第2電動モータと、前記第2電動モータによる回転を減速して前記一組の第2車輪に伝達し、前記第1減速機構とは異なる減速比である第2減速機構と、を備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成において、前記第1減速機構と前記第2減速機構との減速比に応じて前記第1電動モータと前記第2電動モータとを制御する制御モードを備えてもよい。
【0009】
上記構成において、前記第1駆動ユニットは、前記一組の第1車輪をそれぞれ個別に独立駆動するために一組設けられており、前記第2駆動ユニットは、前記一組の第2車輪をそれぞれ個別に独立駆動するために一組設けられてもよい。
【0010】
上記構成において、前記第1駆動ユニットは、前記第1電動モータの回転が入力される第1駆動ギアと、前記第1駆動ギアに噛み合わされ前記第1車輪に前記第1電動モータの回転を伝達する第1従動ギアと、を備え、前記第2駆動ユニットは、前記第2電動モータの回転が入力される第2駆動ギアと、前記第2駆動ギアに噛み合わされ前記第2車輪に前記第2電動モータの回転を伝達する第2従動ギアと、を備えてもよい。
【0011】
上記構成において、前記第1電動モータ及び前記第2電動モータは、スイッチトリラクタンスモータであってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低速トルクの増加と高速回転数の増加とを両立でき、かつ減速機構をコンパクトにできる。また、車両姿勢の変化に影響しないようにでき、中間加速に影響しないような電動車両駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態における電動車両駆動装置を備えた電動車両の模式図。
図2】本発明の実施形態における前輪側の電動車両駆動装置を車体の車幅方向側面からみた説明図。
図3】本発明の実施形態における後輪側の電動車両駆動装置を車体の車幅方向側面からみた説明図。
図4】本発明の実施形態における前輪用駆動ユニット及び後輪用駆動ユニットで前輪及び後輪を駆動する場合のトルク-回転数特性を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
<電動車両>
図1は、電動車両1の模式図である。以下の説明では、電動車両1の進行方向に対して前方、後方を単に前方、後方と称する。進行方向に対して左右に直交する電動車両1の車幅方向を単に車幅方向と称する。また、電動車両1を路面F(図2参照)上を走行可能に配置した状態で進行方向に対して上下に直交する方向を上下方向と称する。
【0016】
図1に示すように、電動車両1は、車体2と、車体2の前方(請求項における車体の前方及び後方の一方の一例)で、かつ車幅方向両側に並ぶように配置された一組の前輪(請求項における第1車輪の一例)3a,3bと、車体2の後方(請求項における車体の前方及び後方の他方の一例)で、かつ車幅方向両側に並ぶように配置された一組の後輪(請求項における第2車輪の一例)4a,4bと、車体2内に設けられ、前輪3a,3b、及び後輪4a,4bをそれぞれ独立駆動させる電動車両駆動装置5と、を備えている。
【0017】
前輪3a,3b及び後輪4a,4bは、ホイールにタイヤ(いずれも図示しない)を装着したものである。前輪3a,3bのホイールに、車軸6が連結されている。後輪4a,4bのホイールに、車軸7が連結されている。また、前輪3a,3bのホイールには、ステアリング8が連結されている。車軸6,6,7,7には、電動車両駆動装置5が連結されている。
【0018】
<電動車両駆動装置>
電動車両駆動装置5は、各前後輪3a~4bに個別に設けられた4つの駆動ユニット8a,8b,9a,9b(前輪用駆動ユニット8a,8b、後輪用駆動ユニット9a,9b)と、各駆動ユニット8a~9bに電力を供給する蓄電池12と、前輪用駆動ユニット8a,8bの駆動制御を行う第1制御部(ドライバ)13と、後輪用駆動ユニット9a,9bの駆動制御を行う第2制御部(ドライバ)14と、各駆動ユニット8a~9bに接続されたスイッチ回路ユニット10と、各駆動ユニット8a~9b及びスイッチ回路ユニット10の操作を行う操作部11と、車体2の図示しないインストルメントパネル等に設けられた表示器19と、を備えている。蓄電池12、第1制御部13及び第2制御部14は、駆動ユニット8a~9bごとに設けられている。
前輪用駆動ユニット8a,8bは、請求項における第1駆動ユニットの一例である。後輪用駆動ユニット9a,9bは、請求項における第2駆動ユニットの一例である。
【0019】
<前輪用駆動ユニット、後輪用駆動ユニット>
前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの基本的構成は同一である。前輪用駆動ユニット8a,8bは、各車軸6,6を介して一組の前輪3a,3bをそれぞれ個別に独立駆動するために一組設けられている。具体的には、前輪用駆動ユニット8a,8bは、第1電動モータ15と、第1電動モータ15による回転を、車軸6,6を介して一組の前輪3a,3bに減速して伝達する第1減速ギア機構(請求項における第1減速機構の一例)16,16と、を備えている。
【0020】
また、後輪用駆動ユニット9a,9bは、各車軸7,7を介して一組の後輪4a,4bをそれぞれ個別に独立駆動するために一組設けられている。具体的には、後輪用駆動ユニット9a,9bは、第2電動モータ17と、第2電動モータ17による回転を、車軸7,7を介して一組の後輪4a,4bに減速して伝達する第2減速ギア機構(請求項における第2減速機構の一例)18,18と、を備えている。
【0021】
<第1電動モータ、第2電動モータ>
第1電動モータ15及び第2電動モータ17は、例えば、同一モータが使用されている。第1電動モータ15及び第2電動モータ17は、いわゆるスイッチトリラクタンスモータである。スイッチトリラクタンスモータは、ロータとステータとの両方に突極を設けたモータである。スイッチトリラクタンスモータは、ステータに設けられている複数のステータ突極にそれぞれ巻線が巻回されており、この巻線に電流を供給することによりステータ突極を励磁する。そして、ステータ突極に生じた磁気的吸引力によって、ロータに設けられている複数のロータ突極を吸引して回転力を発生させる。
また、スイッチトリラクタンスモータは、永久磁石(マグネット)を備えていないので、マグネットによる逆起電力が発生しない。
【0022】
<第1減速ギア機構>
図2は、前輪3a,3b側の電動車両駆動装置5の説明図であり、車体2の車幅方向側面からみた図である。なお、図2において、第1減速ギア機構16の構成を分かりやすくするために第1駆動平歯車21a及び第2従動平歯車21bの縮尺を適宜変更している。
図2に示すように、第1減速ギア機構16は、例えば互いに噛み合わされる第1駆動平歯車(請求項における第1駆動ギアの一例)21a及び第2従動平歯車(請求項における第1従動ギアの一例)21bにより構成されている。第1駆動平歯車21aは、第1電動モータ15の図示しないモータ軸に連結されている。第1従動平歯車21bは、車軸6に連結されている。すなわち、第1電動モータ15は、例えばモータ軸が車軸6と同軸上に配置されておらず、車軸6とずれた位置に配置されている。
【0023】
第1減速ギア機構16,16の一方は、第1電動モータ15による回転力を第1駆動平歯車21a及び第1従動平歯車21bにより車軸6を介して一方の前輪3aに伝達する。第1減速ギア機構16,16の他方は、第1電動モータ15による回転力を第1駆動平歯車21a及び第1従動平歯車21bにより車軸6を介して他方の前輪3bに伝達する。
【0024】
また、第1減速ギア機構16は、例えば第1駆動平歯車21a及び第1従動平歯車21bの各歯数が1:20に設定されている。すなわち、第1駆動平歯車21aに対する第1従動平歯車21bの減速比(ギア比、変速比)は、20に設定されている。ここで、第1減速ギア機構16の減速比「20」は、例えば通常の電動車両に設けられている減速ギア機構の減速比より高い。
第1減速ギア機構16の減速比を通常の電動車両の減速ギア機構より高くすることにより、前輪3a,3bの低速トルク(低速時のトルク)を通常の電動車両の前輪より増加させることができる。
【0025】
<第2減速ギア機構>
図3は、後輪4a,4b側の電動車両駆動装置5の説明図であり、車体2の車幅方向側面からみた図である。なお、図3において、第2減速ギア機構18の構成を分かりやすくするために第2駆動平歯車22a及び第2従動平歯車22bの縮尺を適宜変更している。
図3に示すように、第2減速ギア機構18は、例えば互いに噛み合わされる第2駆動平歯車(請求項における第2駆動ギアの一例)22a及び第2従動平歯車(請求項における第2従動ギアの一例)22bにより構成されている。第2駆動平歯車22aは、第2電動モータ17の図示しないモータ軸に連結されている。第2従動平歯車22bは、車軸7に連結されている。すなわち、第2電動モータ17は、例えばモータ軸が車軸7と同軸上に配置されておらず、車軸7とずれた位置に配置されている。
【0026】
第2減速ギア機構18,18の一方は、第2電動モータ17による回転力を第2駆動平歯車22a及び第2従動平歯車22bにより車軸7を介して一方の後輪4aに伝達する。第2減速ギア機構18,18の他方は、第2電動モータ17による回転力を第2駆動平歯車22a及び第2従動平歯車22bにより車軸7を介して他方の後輪4bに伝達する。
【0027】
また、第2減速ギア機構18は、例えば第2駆動平歯車22a及び第2従動平歯車22bの各歯数が1:10に設定されている。すなわち、第2駆動平歯車22aに対する第2従動平歯車22bの減速比(ギア比、変速比)は、「10」に設定されている。ここで、第2減速ギア機構18の減速比「10」は、例えば通常の電動車両に設けられている減速ギア機構の減速比より低い。
第2減速ギア機構18の減速比を通常の電動車両の減速ギア機構より低くすることにより、後輪4a,4bの回転数(車輪回転数)を通常の電動車両の後輪より増加させることができる。
【0028】
なお、第1減速ギア機構16と第2減速ギア機構18との減速比を異ならせて、第1減速ギア機構16の減速比を高く、第2減速ギア機構18の減速比を低く設定した理由については、後で詳しく説明する。
【0029】
図1に戻って、このように構成された各駆動ユニット8a~9bは、例えば車幅方向中央寄りに第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18が配置されている。前輪用駆動ユニット8a,8bの第1電動モータ15,15は、例えば第1減速ギア機構16,16を挟んで車幅方向両側に配置されている。後輪用駆動ユニット9a,9bの第2電動モータ17,17は、例えば第2減速ギア機構18,18を挟んで車幅方向両側に配置されている。
【0030】
<蓄電池>
蓄電池12としては、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、鉛電池等の電池が挙げられる。蓄電池12の最高直流電圧値は60V未満の安全電圧である。
【0031】
<第1制御部、第2制御部>
第1制御部13は、蓄電池12からの電流を所定の通電パターンで、第1電動モータ15の所定の巻線に選択的に供給する。第1制御部13は、例えば3つのHブリッジ回路を有している。Hブリッジ回路は、直列に接続された2つの図示しないスイッチング素子からなる回路を高電位側と接地電位との間に並列に接続して構成される。各スイッチング素子は、例えばFET(Field Effect Transistor;電界効果トランジスタ)、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。
【0032】
第2制御部14は、蓄電池12からの電流を所定の通電パターンで、第1電動モータ15の所定の巻線に選択的に供給する。第2制御部14は、第1制御部13と同様に、例えば3つのHブリッジ回路を有している。Hブリッジ回路は、直列に接続された2つの図示しないスイッチング素子からなる回路を高電位側と接地電位との間に並列に接続して構成される。
【0033】
なお、通電パターンとは、スイッチング素子をオン状態又はオフ状態にするスイッチングパターンであって、継続的にオンされた状態(「ON」)若しくは継続的にオフ「OFF」された状態(「ON」又は「PWM(Pulse Width Modulation)」以外の期間)又は一定の周期でオンまたはオフに制御された状態(PWM制御された状態)(「PWM」)のいずれかの組み合わせである。
【0034】
第1制御部13と蓄電池12とは、第1スイッチ25を介して接続されている。第1スイッチ25は、第1制御部13と蓄電池12とを接続、遮断する。また、第2制御部14と蓄電池12とは、第2スイッチ26を介して接続されている。第2スイッチ26は、第2制御部14と蓄電池12とを接続、遮断する。
【0035】
<スイッチ回路ユニット>
スイッチ回路ユニット10は、図示しない外部電源と接続可能な給電部29と、給電部29と各蓄電池12とを個別に接続、遮断するスイッチ回路31と、を備えている。スイッチ回路31は、蓄電池12の個数に応じて4つのスイッチ32により構成されている。
【0036】
<操作部>
操作部11は、第1スイッチ25,25及び第2スイッチ26,26の操作を行う第1操作部33と、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bを個別に駆動するための第2操作部34と、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの運転モードを切り替える第3操作部35と、スイッチ回路31を操作する第4操作部36と、を備えている。
【0037】
<第1操作部>
第1操作部33を操作することによって第1スイッチ25及び第2スイッチ26が操作され、第1制御部13と蓄電池12との接続、遮断、第2制御部14と蓄電池12との接続、遮断が行われる。第1操作部33は、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bごとの第1スイッチ25及び第2スイッチ26を個別に操作することも可能である。また、第1操作部33は、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの第1スイッチ25及び第2スイッチ26を纏めて操作することも可能である。
【0038】
例えば、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの全ての第1スイッチ25及び第2スイッチ26を接続することにより、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの全てを駆動させることができる。この場合、電動車両1は4輪駆動になる。
また、前輪用駆動ユニット8a,8bの第1スイッチ25、又は後輪用駆動ユニット9a,9bの第2スイッチ26のいずれか一方を接続するとともに、他方を遮断することにより、前輪用駆動ユニット8a,8b、又は後輪用駆動ユニット9a,9bのいずれかのみ駆動させることができる。この場合、電動車両1は2輪駆動になる。
【0039】
この他、第1スイッチ25及び第2スイッチ26のうち、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの左右いずれかの駆動ユニット8a~9bに対応するスイッチのみを接続することも可能である。また、第1スイッチ25及び第2スイッチ26のうち、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bのいずれか1つのみに対応するスイッチを接続したりすることも可能である。このように、第1スイッチ25及び第2スイッチ26のうち、いずれか1つのみのスイッチを接続することにより、電動車両1の走行時における右旋回や左旋回をスムーズに行うことが可能になる。
【0040】
なお、実施形態においては、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの全ての第1スイッチ25及び第2スイッチ26を接続して、各駆動ユニット8a,8b,9a,9bの全てを駆動させる4輪独立駆動を例に説明する。
【0041】
<第2操作部>
第2操作部34は、第1操作部33によって、第1スイッチ25が接続されている前輪用駆動ユニット8a,8bに対して駆動制御を行い、第2スイッチ26が接続されている後輪用駆動ユニット9a,9bに対して駆動制御を行う。具体的には、前輪用駆動ユニット8a,8bを構成する第1電動モータ15における図示しないモータ軸の回転数の制御を行う。さらに、後輪用駆動ユニット9a,9bを構成する第2電動モータ17における図示しないモータ軸の回転数の制御を行う。
【0042】
また、第2操作部34は、第1減速ギア機構16に応じて第1電動モータ15を制御する第1制御モード(請求項における制御モードの一例)と、第2減速ギア機構18に応じて第2電動モータ17を制御する第2制御モード(請求項における制御モードの一例)と、を備えている。また、第2操作部34は、は、モータ特性のマップを備えている。
【0043】
第2操作部34は、例えば、検出された第1電動モータ15の回転数と、予め設定されているモータ特性のマップとを比較して、フィードバックされた比較データに基づいて、第1電動モータ15を第1制御モードに制御する。
また、第2操作部34は、例えば、検出された第2電動モータ17の回転数と、予め設定されているモータ特性のマップとを比較して、フィードバックされた比較データに基づいて、第2電動モータ17を第2制御モードに制御する。
第1制御モード及び第2制御モードとしては、例えばスポーツモード、エコモード等が運転モードとして挙げられる。
【0044】
なお、第2操作部34の操作に対し、第1操作部33の操作を連動させてもよい。つまり、第2操作部34の操作に基づいて第1操作部33が操作され、これにより第1スイッチ25、第2スイッチ26の接続、遮断を行ってもよい。
【0045】
<第3操作部>
第3操作部35による前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの運転モードとしては、例えばスポーツモード、エコモード、チャージモード等が挙げられる。第3操作部35によって例えばスポーツモードを選択した場合、対応する駆動ユニット8a~9bの第1電動モータ15及び第2電動モータ17に対して進角通電を行ったり、通電幅(PWM制御におけるパルス幅)を大きくしたりする。
第3操作部35によってエコモードを選択した場合、対応する駆動ユニット8a~9bの第1電動モータ15及び第2電動モータ17に対して通電幅を小さくする等が行われる。第3操作部35によってチャージモードを選択した場合、対応する駆動ユニット8a~9bの第1電動モータ15及び第2電動モータ17に対し回生動作を行ったり、回生動作の時間を長くしたりする。
【0046】
<第4操作部>
第4操作部36は、給電部29に図示しない外部コネクタを接続し、各蓄電池12に充電を行う場合に用いられる。第4操作部36は、スイッチ回路31の各スイッチ32を個別に又は纏めて操作することが可能である。全スイッチ32を一度に接続、遮断を行うことにより蓄電池12ごとにスイッチ32を操作する必要がない。このため、給電部29に図示しない外部コネクタを接続した際、各蓄電池12に纏めて充電を行うことができる。
また、例えば4つの蓄電池12のうち、残容量の少ない蓄電池12に対応するスイッチ32のみを接続することにより、所望の蓄電池12のみに充電を行うことができる。蓄電池12の残容量は表示器19に表示される。
【0047】
<表示器>
表示器19は、蓄電池12の残容量の表示の他、この残容量から導き出される電動車両1の残走行距離を表示することが可能である。しかしながら、これに限られるものではなく、表示器19に警告等を表示することも可能である。警告とは、例えば前輪用駆動ユニット8a,8bにおける第1電動モータ15の異常や各部の接続不良等、後輪用駆動ユニット9a,9bにおける第2電動モータ17の異常や各部の接続不良等である。また、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの負荷状況を表示させることも可能である。
【0048】
表示器19に警告や負荷状況を表示させる場合、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bにセンサ等を設け、このセンサからの出力信号に基づく結果を表示器19に表示する。ここで、表示器19に各駆動ユニット8a~9bの負荷状況を表示させる場合、各蓄電池12同士を連結した構成とすることが望ましい。このように構成することで、操作部11は、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bの負荷状況に応じ、負荷の大きい駆動ユニット8a~9bに優先的に電力を供給する。
【0049】
<前輪及び後輪のトルク-回転数特性>
次に、図2から図4に基づいて、第1減速ギア機構16と第2減速ギア機構18との減速比を異ならせて、第1減速ギア機構16の減速比を高く、第2減速ギア機構18の減速比を低く設定した理由について詳しく説明する。
図4は、前輪用駆動ユニット8a,8b及び後輪用駆動ユニット9a,9bで前輪3a,3b及び後輪4a,4bを駆動する場合のトルク-回転数特性を説明するグラフである。図4のグラフにおいて、縦軸に前輪及び後輪のトルク(軸トルク)[Nm]を示し、横軸に前輪及び後輪の回転数(車輪回転数)[rpm]を示す。
【0050】
また、グラフG1は、実施形態の前輪3a,3bの合計トルクと前輪の回転数との特性を示す。グラフG2は、実施形態の後輪4a,4bの合計トルクと回転数との特性を示す。グラフG3は、実施形態の前輪3a,3b及び後輪4a,4bを合わせた4輪の合計トルクと回転数との特性を示す。グラフG4は、通常の電動車両(以下、比較例ということもある)の4輪の合計トルクと回転数との特性を示す。
【0051】
図2図4に示すように、第1減速ギア機構16を、例えば減速比「20」に設定して、比較例の減速ギア機構より高くした。よって、グラフG1に示すように、前輪3a,3bの低速トルクを比較例の前輪より増加させることができる。
一方、図3図4に示すように、第2減速ギア機構18を、例えば減速比「10」に設定して、比較例の減速ギア機構より低くした。よって、グラフG2に示すように、後輪4a,4bの回転数を比較例の後輪より増加させることができる。
【0052】
これにより、グラフG3に示すように、比較例のグラフG4に比べて、前輪3a,3bおよび後輪4a,4bを合わせた4輪の低速トルクを増加させることができ、かつ、4輪の高速回転数を増加させることができる。すなわち、四輪3a,3b,4a,4bの低速トルクの増加と高速回転数との増加を両立できる。
【0053】
さらに、第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18による四輪3a,3b,4a,4bについての合計出力は、中間領域Eにおいて比較例による出力と比べて変わらない。これにより、第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18を備えた電動車両の中間加速を、比較例の中間加速に対して影響を与えないように同様に確保できる。
【0054】
また、図2図3に示すように、第1減速ギア機構16を第1駆動平歯車21a及び第1従動平歯車21bで構成し、第2減速ギア機構18を第2駆動平歯車22a及び第2従動平歯車22bで構成した。第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18を、通常の電動車両の伝達機構と同様に2つの歯車(ギア)で構成できる。
これにより、第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18の形状を、通常の電動車両の伝達機構と同様にコンパクトにできる。
【0055】
さらに、第1減速ギア機構16を2つの平歯車21a,21bで構成し、第2減速ギア機構18を2つの平歯車22a,22bで構成することにより、歯車数(ギア数)を少なく抑えることができる。これにより、一組の前輪(すなわち、左右の車輪)3a,3bに伝達されるトルクに時間的な差が生じない。同様に、一組の後輪(すなわち、左右の車輪)4a,4bに伝達されるトルクに時間的な差が生じない。これにより、電動車両1の車両姿勢の変化に影響を与えないようにできる。
【0056】
加えて、一組の前輪3a,3bを各前輪用駆動ユニット8a,8bでそれぞれ個別に独立駆動するようにした。また、一組の後輪4a,4bを各後輪用駆動ユニット9a,9bでそれぞれ個別に独立駆動するようにした。これにより、各前後輪3a,3b,4a,4bの路面に対する摩擦力(グリップ力)を確保でき、一組の前輪3a,3b及び一組の後輪4a,4bの4輪の高速、低速のトルクを効率よく得ることができる。
【0057】
さらに、第1電動モータ15及び第2電動モータ17は、いわゆるスイッチトリラクタンスモータである。これにより、第1電動モータ15及び第2電動モータ17には、磁石(マグネット)による逆起電力が発生しないので、一組の前輪3a,3b及び一組の後輪4a,4bの4輪の高速、低速のトルクを一層効率よく得ることができる。
加えて、例えば第1電動モータ15及び第2電動モータ17に通電していない状態ではコギングトルクが発生せずに、前輪3a,3b、後輪4a,4bのいずれかを従動輪とした場合であっても、この従動輪に余計な負荷がかかることがない。
【0058】
また、第2操作部34は、第1減速ギア機構16に応じて第1電動モータ15を制御する第1制御モードと、第2減速ギア機構18に応じて第2電動モータ17を制御する第2制御モードと、を備えている。さらに、第2操作部34は、モータ特性のマップを備えている。
【0059】
ここで、第2操作部34には、電動車両1のアクセルペダルの踏み量に応じて必要なトルクが伝達される。この状態において、例えば電動車両1の運転モードをエコモードやスポーツモードに設定したいときには、第2操作部34において、検出された第1電動モータ15の回転数とモータ特性のマップとを比較して、比較したデータがフィードバックされる。第2操作部34は、比較データ及び第1制御モードに基づいて、第1電動モータ15を、第1減速ギア機構16をふまえて、エコモードやスポーツモードに適した低速回転数に制御する。
【0060】
また、第2操作部34において、例えば、検出された第2電動モータ17の回転数とモータ特性のマップとを比較して、比較したデータがフィードバックされる。第2操作部34は、比較データ及び第2制御モードに基づいて、第2電動モータ17を、第2減速ギア機構18をふまえて、エコモードやスポーツモードに適した高速回転数に制御する。
これにより、電動車両1の前輪3a,3b及び後輪4a,4bをエコモードやスポーツモードのトルクで駆動できる。
【0061】
このように、第1減速ギア機構16と第2減速ギア機構18との減速比に応じて、第1電動モータ15と第2電動モータ17とを各制御モードにより低速用、高速用に制御できる。これにより、前輪3a,3b及び後輪4a,4bの低速トルクの増加と高速回転数との増加の両立をより効果的に発揮できる。
【0062】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、前輪3a,3bを個別の駆動ユニット8a,8bで独立駆動し、後輪4a,4bを個別の駆動ユニット9a,9bで独立駆動して、4輪をそれぞれ独立駆動する例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、前輪3a,3bを1つの駆動ユニットで駆動し、後輪4a,4bを1つの駆動ユニットでする構成としてもよい。
【0063】
上述の実施形態では、第1電動モータ15と第2電動モータ17とを同一モータを使用する例について説明したが、これに限らない。その他の例として、第1電動モータ15に低速用モータ、第2電動モータ17に高速用モータを使用してもよい。
第1電動モータ15、第2電動モータ17は、例えば巻線の線径、捲回数でモータの低速、高速が変えられる。第1電動モータ15、第2電動モータ17が異なる場合には、モータ特性のマップをそれぞれ個別に用意する。第1電動モータ15を低速仕様、第2電動モータ17を高速仕様とすることにより、第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18による減速比による効果を一層良好に発揮できる。
【0064】
上述の実施形態では、第1減速ギア機構16の減速比を通常の電動車両の減速ギア機構より高く、第2減速ギア機構18の減速比を通常の電動車両の減速ギア機構より低く設定した例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、第1減速ギア機構16の減速比を通常の電動車両の減速ギア機構より低く、第2減速ギア機構18の減速比を通常の電動車両の減速ギア機構より高く設定してもよい。
【0065】
上述の実施形態では、第1減速ギア機構16を減速比「20」、第2減速ギア機構18を減速比「10」に設定した例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18の減速比を任意に設定してもよい。
【0066】
上述の実施形態では、第1減速ギア機構16を各平歯車21a,21bで構成し、第2減速ギア機構18を各平歯車22a,22bで構成した例について説明したが、これに限らない。その他の例として、例えば、第1減速ギア機構16及び第2減速ギア機構18をはすば歯車、かさ歯車等の他の歯車で構成してもよい。さらに、各減速ギア機構16,18をそれぞれ2つの平歯車21a~22bで構成せずに、3つ以上の複数の歯車で構成してもよい。各減速ギア機構16,18の減速比が異なっていればよい。
【符号の説明】
【0067】
1…電動車両、2…車体、3a,3b…前輪(第1車輪)、4a,4b…後輪(第2車輪)、5…電動車両駆動装置、6,7…車軸、8a,8b…前輪用駆動ユニット(第1駆動ユニット)、9a,9b…後輪用駆動ユニット(第2駆動ユニット)、10…スイッチ回路ユニット、11…操作部、12…蓄電池、13…第1制御部、14…第2制御部、15…第1電動モータ、16…第1減速ギア機構(第1減速機構)、17…第2電動モータ、18…第2減速ギア機構(第2減速機構)、19…表示器、21a…第1駆動平歯車(第1駆動ギア)、21b…第1従動平歯車(第1従動ギア)、22a…第2駆動平歯車(第2駆動ギア)、22b…第2従動平歯車(第2従動ギア)、25…第1スイッチ、26…第2スイッチ、29…給電部、31…スイッチ回路、32…スイッチ、33…第1操作部、34…第2操作部、35…第3操作部、36…第4操作部
図1
図2
図3
図4