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特開2022-124832回転式放水ノズル構造による家屋火災の消火方法
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  • 特開-回転式放水ノズル構造による家屋火災の消火方法 図1
  • 特開-回転式放水ノズル構造による家屋火災の消火方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124832
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】回転式放水ノズル構造による家屋火災の消火方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 35/00 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
A62C35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022701
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】510078229
【氏名又は名称】寳坂 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】寶坂 昭博
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189CC05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ホテル及び家屋火災の効率のより消火方法を提供する。
【解決手段】ホテル及び家屋火災では、屋外から屋内に棒状放水することより、屋内中央において、回転放水により家屋外に向けて分散放水することの方が、水蒸気の蒸散を促進するとともに、屋内の酸素ガスをいち早く屋外に逃散させるので、屋内の酸素ガスを燃焼限界濃度といわれる17%以下に低減させ、消火又は鎮火に有効な燃焼物の窒息作用の促進を行い、火災鎮火効果が促進される。そのため、放水ノズルには四方八方に放水が行われるように、放水ノズル自体を回転させる構造を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家屋及びホテル火災において、消火用水を放水して屋内火災を鎮火又は消火させるにあたり、部屋のほぼ中央の床上又は天井下に、送水管の放水ノズルを位置させる工程と、その放水を中央から外方四方八方に指向させる工程と、放水される消火用水を屋内で気化して水蒸気に変換してほぼ1700倍に体積膨張させる工程と、膨張する水蒸気により屋内の空気酸素を屋外に逃散させ、屋内酸素濃度を17%以下に低減させる工程とを含むことを特徴とする、家屋火災の消火方法。
【請求項2】
消火用水を放水する送水管10が、その先端部に、家屋火炎内に挿入するホース本体を耐熱性とする難燃性織布又は金属からなる耐熱性放水部20と、その先端に放水ノズル30を有し、該放水ノズル30が、円筒形をなし、その円筒外壁の異なる半径方向にノズル口31を複数個開口させる構造を備え、該放水ノズル口31からの放水を中央から外方四方八方に指向させる工程と、放水される消火用水を屋内で気化させ、その体積膨張により屋内の空気酸素を屋外に逃散させる工程を行なう請求項1記載の家屋火災の消火方法。
【請求項3】
消火用水を放水する送水管10が屋内天井配置のスプリンクラー50に接続する放水ノズル40を有し、該放水ノズル40が、円筒形をなし、その円筒外壁42の異なる半径方向にノズル口41を複数個開口させる構造を備えて天井内部に収納され、スプリンクラー50からの放水後、部屋内温度が下降しないときはその温度を検知して該放水ノズル40を突出させ、天井から放水を中央から外方四方八方に指向させる工程と、放水される消火用水を屋内で気化し、その体積膨張により屋内の空気酸素を屋外に逃散させる工程を行なう請求項1記載の消火方法。
【請求項4】
前記放水ノズル30、40がノズル軸線の周りに回転させる機能60を有し、火炎状況に応じて回転数を調整可能である請求項2又は3に記載の消火方法。
【請求項5】
先端ノズル30,40のノズル軸線の周りに回転させる機能60が一部又は全部のノズル口31、41をノズル円筒42からその断面円形の接線方向に指向させることにより構成され、先端ノズル30,40を放水圧によりノズル長手方向に延びる軸線の周りに回転させる請求項1記載の消火方法。
【請求項6】
先端ノズル30、40のノズル軸線の周りに回転させる機能60がノズル長手方向に延びる軸線に沿って延び、送水管10から延びるノズル外筒42内の内筒43に設けた回転歯車機構61をモータ62の駆動により回転させ、火炎燃焼熱に従って適切な水量の消火用水をミスト又は棒状に放水する請求項1記載の消火方法。
【請求項7】
送水管10が放水ノブルに至る送水ホースの連結部に耐熱性放水部20の耐熱性外套を備え、該連結部内部に先端ノズル部を回転駆動させる駆動軸63が挿通され、駆動軸63に設けた回転翼64に当接する水流により駆動軸63を回転させ、先端ノズル30、40を回転させることを特徴とする請求項1記載の消火方法。
【請求項8】
放水ノズル30、40が回転式であって、その先端に屋内設置型スプリンクラー50を備え、該スプリンクラー50を部屋の天井部に設置し、それに連続する回転式放水ノズル40は、初期火災ではスプリンクラー50を介して放水し、火炎が拡大する場合はそれを感知して放水ノズル40を天井から部屋内に露出させ、送水管の先端ノズル40が回転して放水を行うことを特徴とする請求項1記載の消火方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はホテル及び通常家屋の部屋火災の鎮火を促進する回転式放水ノズル構造による消火方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に水を燃焼物に注水すると燃焼物を着火温度以下の温度に低下させるだけでなく、燃焼物から蒸発潜熱を奪い水蒸気状態に変化させ、発生した水蒸気による燃焼物への空気遮断、いわゆる窒息効果を生じ消火させることができる。
【0003】
しかし、この消火剤として最適な水も、散水方法及び方向が異なると燃焼物への空気遮断、いわゆる窒息効果を十分に生じ消火効果を減殺させる。すなわち、一般に消防車からの火災家屋への放水は図2に示すように、一方向で、外から家屋内部に放水されるのが普通であるから、空気中の酸素も巻き込んでしまう結果、燃焼物への空気遮断、いわゆる窒息効果を生じにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明はホテル及び一般家屋火災における燃焼物への空気遮断、いわゆる窒息効果が生じやすい消火方法を提供することを課題とし、鋭意研究の結果、家屋火災における燃焼物への空気遮断を効果的に行うには、家屋外から屋内への棒状放水は空気の巻き込みもあって、燃焼物への空気遮断に対し、効果的でないことを見出した。これに着目し、さらに、鋭意研究の結果、屋内から家屋外に向けて放水することにより、屋内の酸素ガスをいち早く屋外に逃散させ、酸素ガスを燃焼限界濃度といわれる17%以下に低減させるのが家屋や部屋火災の鎮火促進に繋がることを見出し、この消火方法に回転式放水ノズル構造を利用して実現する消火方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、水は気化して水蒸気となると、ほぼ1700倍に体積膨張することに着目し、この現象を有効に利用して屋内酸素ガスをいち早く屋外の放出し、酸素ガス濃度を燃焼限界の17%以下に低減させるようとするものであり、家屋及びホテル火災において、消火用水を放水して屋内火災を鎮火又は消火させるにあたり、部屋のほぼ中央の床又は天井に送水管の放水ノズルを位置させ、その放水を中央から外方四方八方に指向させ、放水される消火用水を屋内で気化して水蒸気に変換してほぼ1700倍に体積膨張させ、その体積膨張により屋内の空気酸素を屋外に逃散させ、屋内酸素濃度を17%以下に低減させ、家屋火災の鎮火を促進することを特徴とする家屋火災の消火方法にある。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、屋内からの棒状放水(図2)より、屋内中央における回転放水により家屋外に向けて分散放水することにより(図1)、水蒸気の蒸散を促進するとともに消火又は鎮火に有効な窒息作用を屋内の酸素ガスをいち早く屋外に逃散させ、酸素ガスを燃焼限界濃度といわれる17%以下に低減させるので、火災鎮火効果が促進される。以下の実験により明らかである。
【0007】
消火用水を放水する送水管は、外部から屋内に挿入するか、通常屋内天井部に設置されるが、屋外から挿入する場合は、図3に示すように、その先端部に、家屋火炎内に挿入するホース本体を耐熱性とする難燃性織布又は金属からなる耐熱性放水部20と、その先端に放水ノズル30を有し、該放水ノズルが、円筒形をなし、その円筒外壁の異なる半径方向にノズル口31を複数個開口させ、該放水ノズル30からの放水を中央から外方四方八方に指向させ、放水される消火用水を屋内で気化し、その体積膨張により屋内の空気酸素を屋外に逃散させると、本発明の実施が容易である。
【0008】
屋内配置の場合は、図4に示すように、消火用水を放水する送水管が屋内配置のスプリンクラー50に接続する。スプリンクラー50は放水ノズル40の先端に設けられ、ノズル内筒43と接続部55を介してスプリンクラー50に連結する。このスプリンクラー50は送水口のデフレクター弁51に分解部52を介して可溶片53に繋がり、感熱部54からの、(1)伝熱により(2)分解され、デフレクター弁51が(3)下降する。このデフレクター弁51に当接して散水するようになっているが、本発明ではこのスプリンクラー50に、回転式放水ノズル40が接続している。この回転式放水ノズル40は、難燃性織布又は金属からなる耐熱性放水部20と、円筒形外筒42と内筒43とからなる放水ノズル40とからなり、その円筒外壁42の異なる半径方向にノズル口41を複数個開口させている。火災が起こると、通常通り、最初にスプリンクラー50が機能する。それと同時に又はスプリンクラーでの消火が十分でない場合は、接続部55で内筒43との接続が切れ、(4)内筒43は天井に退避し、外筒42のノズル口41からの放水を中央から外方四方八方に指向させ、(5)放水される。この消火用水を屋内で気化し、その体積膨張により屋内の空気酸素を屋外に逃散させる。外筒42は以下のような回転機能を有するのが好ましい。
【0009】
放水ノズル30、40はノズル軸線の周りに回転させる機能を有するのが好ましい。放水口31,41はノズル半径方向に開口させてもよいし、ノズル断面円の接線方向に開口させることも可能である。図5に示すように、半径方向に開口する場合は正反対の二方向(図5(a))、等分した三方向(図5(b))または四方向(図5(c))が理想的である。分散放水はノズルの回転放水により、放水分散性が優れるので好ましく、火炎状況に応じて回転数を調整することにより、好ましい分散放水が実現しやすい。
【0010】
先端ノズルの回転機能は、図6に示すように、ノズル口31,41をノズル円筒30からその断面円形の接線方向に指向させ、放水圧によりノズルをその長手方向に延びる軸線の周りに回転させることができるが、ノズル開口の一部又は全部を選択することにより、放水量に応じて回転数を調節することができる。
【0011】
先端ノズルの回転機能は、図7に示すように、先端ノズル40はノズル軸線に沿って延び外筒42内に内筒43を設け、ノズル内筒43をその周囲に設けた大歯車63aと小歯車63bからなる歯車機構63に連結する駆動モータ62により回転させ、火炎燃焼熱に従って適切な水量の消火用水をミスト又は棒状に放水することができるようにすることができる。64、65は内筒43の回転を維持する主ベアリング、補助ベアリングである。
【0012】
先端ノズルの回転機能は、図8に示すように、放水ノズル30、40の連結部に外筒42と内筒43とからなる二重筒に構成し、内筒43を主ベアリング64と補助ベアリング65で支持し、内筒43内にノズル部を回転駆動させる駆動軸66が挿通され、駆動軸に回転翼67により駆動軸66を回転させ、先端ノズル部を回転させる構造でも実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の屋内回転放水の状況を示す概念図である。
図2】通常の家屋火災における屋外からの棒状放水の状況を示す概念図である。
図3】本発明の屋内挿入型の耐熱性ノズル構造の概略図である。
図4】本発明の屋内配置型の耐熱性ノズル構造の概略図である。
図5】放水ノズルのノズル口が半径方向に二方向(a),三方向(b)及び四方向(c)に指向して開口している状態を示すノズル構造の断面図である。
図6】放水ノズルのノズル口が断面円形の接線方向に指向しているノズル構造の断面図である。
図7】放水ノズルのモータ回転式の模式図である。
図8】放水ノズルの水中翼回転式の模式図である。
図9】放水実験室の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明方法の有効性を検証した。
実験は、火災室内及び燃焼物付近の温度変化につい て、放水条件ごとに把握することを目的に行った。
(1) 実験設定
ア 火災室
使用した火災室(内寸:幅330mm、奥行3600mm、天井 高2100mm)は、鉄骨造であり、内壁及び天井は、軽量気 泡コンクリート板(厚さ50mm)にステンレス板(厚さ 0.6mm)を貼り付けた構造である。 正面には、左右に扉がある開口部(幅1710mm、高さ 1850mm)が1箇所設けられている。概略を図9に示す。
イ 燃焼物
燃焼物は、火災室内全体が火炎で満たされる状態となるように、クリブ(消火器の技術上の規格を定める省令 (昭和39年9月17日自治省令第27号)に基づく普通火災 に対する消火能力単位2の模型)を図9に示す2か所設置した。
ロ 測定
測定は、火災室中央の温度(4点)、 1,クリブ中央の温度(2点)及び2,クリブ中央の温度 (2点)について行った。 また、デジタルビデオカメラにより、ノズル後方から開口部の状況について撮影した。放水体系 放水体系は、図9に示すように水槽に部署したB級ポンプから口径50mmホースを1本延長し、筒先には通常ノズルを取り付けた。
ハ 放水方法
放水は、実験者がノズルの先端を火災室開口部の垂直面に合わせ、火災室の床面からの高さが約 350mm(地面からの高さが800mm)の位置で保持し、火災 室左奥の天井面に向けて20秒間放水する(実験1)一方、天井に配置した図4のスプリンクラー式の回転式ノズルから放水した(実験2)。
ニ 実験条件
実験は、屋外からは通常の放水ノズルを使用し、棒状放水を行った(実験1)。他方、天井からは先端にスプリンクラーを有する回転式放水ノズルで回転放水を行った(実験2)。流量は、消防隊において 耐火造の建物火災で使用される値の、230~240リットル/分に設定した。実験1及び実験2については、ノズル元圧を仕様圧力 にして放水した場合を確認するため、0.5MPa型ノズル(ノズル元圧の仕様が0.5MPa)でノズル元圧を0.5MPaとして放水した。
ホ 実験結果
放水形状の違いについて 室内天井でノズルを回転させ、霧状で放水した場合(実験1)と外部から棒状で放水した場合(実験2)の火災室の温度について比較すると、棒状放水の方が温度降下は緩慢であった。 回転放水で四方八方に霧状で放水した場合は、火災室内に空気が 水蒸気の体積膨張により放散されるとともに、霧状の水が 538kcal/gの気化潜熱で効率的に高温の気体、燃焼物等を冷却し、気化することにより、火災室中央の温度降下に差が現れたと考えられる。 棒状で放水した場合は、大部分が塊状の水であるため室内での回転霧状の散布水に比べて気化潜熱による高温の気体や固体の冷却が効率的でないことから、火災室内の温度を降下させる 効果が低いと考えられる。実験1と実験2との比較によれば、屋内からの棒状放水(図2)より、屋内中央における回転放水により家屋外に向けて分散放水することにより(図1)、水蒸気の蒸散を促進するとともに消火又は鎮火に有効な窒息作用を屋内の酸素ガスをいち早く屋外に逃散させることにより、酸素ガスを燃焼限界濃度といわれる17%以下に低減させるので、火災鎮火効果が促進されることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9