(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124839
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】コイル形成装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
H02K15/04 B
H02K15/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022710
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】507216098
【氏名又は名称】シチズン千葉精密株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 慎也
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP13
5H615PP14
5H615PP15
5H615QQ03
5H615QQ08
5H615QQ20
5H615QQ26
5H615QQ28
5H615SS10
(57)【要約】
【課題】引き出し部における巻枠側の部位を撚り、先端側は撚らないようにすることができるコイル形成装置を提供する。
【解決手段】ワイヤ5が巻かれる巻枠10と、巻枠10におけるワイヤ5の巻き方向に交差する方向の回転軸心R回りに回転するとともに、回転軸心Rに対して互いに反対側に設けられて、ワイヤ5を引掛ける2つの突出部33が設けられた治具30と、治具30と巻枠10との間の空間であって治具30よりも巻枠10に近い空間を開閉可能に設けられた一対の開閉部材51であって、閉じたときの一対の開閉部材51間の隙間Lcが2つの突出部33間距離Ljよりも小さくなる一対の開閉部材51と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤが巻かれる巻枠と、
前記巻枠における前記ワイヤの巻き方向に交差する方向の回転軸心回りに回転するとともに、当該回転軸心に対して互いに反対側に設けられて、当該ワイヤを引掛ける2つの突出部が設けられた治具と、
前記治具と前記巻枠との間の空間であって当該治具よりも当該巻枠に近い空間を開閉可能に設けられた一対の開閉部材であって、閉じたときの当該一対の開閉部材間の隙間が前記2つの突出部間距離よりも小さくなる一対の開閉部材と、
を備えるコイル形成装置。
【請求項2】
前記巻枠の周囲を回転することで、当該巻枠に前記ワイヤを巻く巻部材をさらに備え、
前記一対の開閉部材は、前記巻部材が前記巻枠の周囲を回転しているときには開き、当該巻部材が停止したときに閉じる
請求項1に記載のコイル形成装置。
【請求項3】
前記治具は、前記巻部材が前記巻枠の周囲を回転しているときには当該巻部材の回転軌跡よりも外側に退避し、当該巻部材が停止したときに当該巻枠に近づいて前記ワイヤを前記2つの突出部に引掛ける
請求項2に記載のコイル形成装置。
【請求項4】
前記一対の開閉部材は、前記治具が前記ワイヤを前記2つの突出部に引掛けた後に閉じ、
前記治具は、前記一対の開閉部材が閉じているときに、前記回転軸心回りに予め定められた回転数回転する
請求項1~3の何れか一つに記載のコイル形成装置。
【請求項5】
前記治具が回転しているときに、当該治具の前記2つの突出部の内の一方の突出部から前記巻枠までの距離と、他方の突出部から前記巻枠までの距離とは異なる
請求項1~4の何れか一つに記載のコイル形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、DCコアレスモータにおけるロータ巻線の巻線方法として、以下の方法が記載されている。すなわち、マンドレル本体に連続する如く設けられた亀甲形の心細と、エナメル線を回転させながら送り出すフライヤーとを対向設置して、フライヤーの回転に依り、エナメル線を上記心細に次々に位置をずらせながら巻き付けるとともに、各極に対応する部分に引き出し線を設け、巻線終了後に上記心細から亀甲形の巻線を脱抜する。続いて、上記脱抜した巻線を平につぶして平板状体となし、この様な平板状体をカールさせて、平板状体両端の単層部どうしを重畳且つ接着して、筒状のロータ巻線を得るものである。そして、特許文献1に記載された巻線方法においては、引き出し線形成時に、変形防止のために、引き出した巻線を撚り上げている。
【0003】
DCモータでは、撚り上げた引き出し線を、そのままの状態で組み付けることができるため問題はないが、例えばブラシレスモータでは、撚り上げた引き出し線の先端を切断して2本の線にして、これら2本の線をそれぞれ別々の接点に結線する必要がある。
例えば、特許文献2には、ブラシレスモータ用のコイルの製造方法が記載されている。すなわち、六角柱状の巻枠を一方の回転方向に所定回転数だけ回転させて第1コイルを形成する。続いて、第1コイルの巻き終わりから、予め定めた長さ分だけワイヤを引き出して、屈曲させて折り返し、その折り返しを、第1コイルの巻き終わりまで戻すことにより、第1引き出し部を形成する。次に、巻枠を一方の回転方向に所定回転数だけ回転させて第2コイルを形成する。続いて、第2コイルの巻き終わりから、予め定めた長さ分だけワイヤを引き出して、屈曲させて折り返し、その折り返しを、第2コイルの巻き終わりまで戻すことにより、第2引き出し部を形成する。以降、上記工程を3回繰り返し、同じ回転方向に所定巻数分巻かれた、第3コイル、第4コイル及び第5コイルを形成する。また、第3コイルと第4コイルとの間に第3引き出し部を、第4コイルと第5コイルとの間に第4引き出し部を、第5コイルの巻き終わり箇所に第5引き出し部を形成する。そして、第5引き出し部を形成した後に、巻枠を一方の回転方向に所定回転数だけ回転させて第6コイルを形成する。その後、第1~第5引き出し部における屈曲部を切断し、それぞれの引き出し部の両側のコイルの内の一方のコイルの巻き始め端部と、他方のコイルの巻き終わり端部とを形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54-114707号公報
【特許文献2】特開2020-162387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばブラシレスモータ用のコイル等、引き出し部の先端を切断して2本の線にする必要がある場合には、引き出し部における巻枠側の部位のみを撚り、引き出し部の先端側は撚らないようにすることが望ましい。
本発明は、引き出し部における巻枠側の部位を撚り、先端側は撚らないようにすることができるコイル形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的のもと完成させた本発明は、ワイヤが巻かれる巻枠と、前記巻枠における前記ワイヤの巻き方向に交差する方向の回転軸心回りに回転するとともに、当該回転軸心に対して互いに反対側に設けられて、当該ワイヤを引掛ける2つの突出部が設けられた治具と、前記治具と前記巻枠との間の空間であって当該治具よりも当該巻枠に近い空間を開閉可能に設けられた一対の開閉部材であって、閉じたときの当該一対の開閉部材間の隙間が前記2つの突出部間距離よりも小さくなる一対の開閉部材と、を備えるコイル形成装置である。
ここで、前記巻枠の周囲を回転することで、当該巻枠に前記ワイヤを巻く巻部材をさらに備え、前記一対の開閉部材は、前記巻部材が前記巻枠の周囲を回転しているときには開き、当該巻部材が停止したときに閉じても良い。
また、前記治具は、前記巻部材が前記巻枠の周囲を回転しているときには当該巻部材の回転軌跡よりも外側に退避し、当該巻部材が停止したときに当該巻枠に近づいて前記ワイヤを前記2つの突出部に引掛けても良い。
また、前記一対の開閉部材は、前記治具が前記ワイヤを前記2つの突出部に引掛けた後に閉じ、前記治具は、前記一対の開閉部材が閉じているときに、前記回転軸心回りに予め定められた回転数回転しても良い。
また、前記治具が回転しているときに、当該治具の前記2つの突出部の内の一方の突出部から前記巻枠までの距離と、他方の突出部から前記巻枠までの距離とは異なっても良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、引き出し部における巻枠側の部位を撚り、先端側は撚らないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施の形態に係るコイル形成装置の斜視図の一例である。
【
図2】本実施の形態に係るコイル形成装置を中心線方向に見た図の一例である。
【
図3】コイル形成装置がコイルを製造する方法の一例を示す図である。
【
図4】コイル形成装置がコイルを製造する方法の一例を示す図である。
【
図5】偏平化コイルの概略構成を例示する図である。
【
図6】(a)は、引き出し部を切断する前の状態の一例を平面的に示す図である。(b)は、引き出し部を切断した後の状態の一例を平面的に示す図である。
【
図7】比較例に係る装置にて引き出し部を撚るときの状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係るコイル形成装置1の斜視図の一例である。
コイル形成装置1は、六角柱状の巻枠10と、ボビン(不図示)に巻かれたマグネットワイヤ(以下、「ワイヤ」と称する場合がある。)5を巻枠10に巻き付けるフライヤ20とを備えている。フライヤ20は、ワイヤ5を送り出すとともに、巻枠10の中心線Cの方向(以下、「中心線方向」と称する場合がある。)に移動しつつ巻枠10の周囲を回転して、ワイヤ5を巻枠10に巻き付ける巻部材21を有している。
【0010】
また、コイル形成装置1は、引き出し部110を形成するとともに引き出し部110を撚る治具30と、治具30を回転させるモータ40とを備えている。また、コイル形成装置1は、治具30及びモータ40を、中心線方向及び中心線方向に交差する方向に移動させる移動装置(不図示)を有している。
また、コイル形成装置1は、フライヤ20にて巻枠10にワイヤ5を巻き付けるときには開き、治具30にて引き出し部110を撚るときには閉じる開閉装置50を有している。
【0011】
図2は、本実施の形態に係るコイル形成装置1を中心線方向に見た図の一例である。
図2(a)は、巻部材21が回転しているときの状態を示す図である。
図2(b)は、巻部材21の回転が停止し、治具30にて引き出し部110を撚るときの状態を示す図である。以下では、
図2に示すように、巻枠10の六角形の中心と、六角形における六角の内の一の角とを通る線の方向を「上下方向」、中心線方向と上下方向とに直交する方向を「左右方向」と称する場合がある。
【0012】
治具30は、モータ40の回転軸に連結されて、モータ40の回転に連動して回転する。治具30は、回転軸心Rの方向(以下、「回転軸方向」と称する場合がある。)に延びた平板状の軸方向部31と、軸方向部31における巻枠10側の端部から、回転軸方向に交差する方向に延びた平板状の交差方向部32とを有している。また、治具30は、交差方向部32における両端部それぞれに、交差方向部32から板面に直交する方向に突出するように設けられた2つの突出部33を有している。2つの突出部33は、回転軸心Rに対して非対称となるように設けられている。つまり、2つの突出部33の内の一方の突出部と他方の突出部とは、回転軸心Rに対して反対側に設けられているとともに、一方の突出部と他方の突出部とを結ぶ線Aが回転軸心Rと交差するように設けられている。
【0013】
本実施の形態に係るコイル形成装置1においては、
図2(b)に示すように、治具30にて引き出し部110を撚るときには、治具30及びモータ40は、巻枠10の下方に配置され、回転軸心Rの延長線が巻枠10の六角形の中心を通るように配置されている。
また、
図2(a)に示すように、巻部材21が回転しているときには、治具30及びモータ40は、巻枠10の周囲を回転する巻部材21の回転軌跡よりも下側において巻部材21と干渉しない位置に退避する。
【0014】
開閉装置50は、開閉機構(不図示)を用いて開閉する一対の開閉部材51を有している。
図2(a)は、一対の開閉部材51が開いた状態を示しており、
図2(b)は、一対の開閉部材51が閉じた状態を示している。
図2(a)に示すように、一対の開閉部材51は、巻部材21にて巻枠10にワイヤ5を巻き付けるときには、巻枠10に対して、治具30及びモータ40と反対側に位置して一対の開閉部材51の先端部同士が開いた状態となる。そして、一対の開閉部材51が開いた状態では、一対の開閉部材51は、巻枠10の周囲を回転する巻部材21の回転軌跡よりも外側において巻部材21と干渉しない位置に退避する。
【0015】
他方、
図2(b)に示すように、治具30にて引き出し部110を撚るときには、一対の開閉部材51の先端部同士が、巻枠10と治具30との間に位置して閉じた状態となる。そして、一対の開閉部材51が閉じた状態では、一対の開閉部材51の先端部同士間の距離Lcが、治具30に設けられた2つの突出部33間の距離Ljよりも小さい。
【0016】
一対の開閉部材51が閉じた状態であるときの距離Lcは、一対の開閉部材51の先端部同士間において、2本のワイヤ5が回転可能であることが必要であるために、ワイヤ5の線径の2倍よりも大きくなるように設定されている。また、一対の開閉部材51が閉じた状態であるときの先端部同士の位置は、治具30よりも巻枠10に近い位置となるように設定されている。一対の開閉部材51の各開閉部材51と巻枠10との間の距離は、できる限り近い方が好ましいが、各開閉部材51と巻枠10との間にはワイヤ5が存在する必要があるため、ワイヤ5の線径よりも大きくなるように設定されている。
【0017】
図3、
図4は、コイル形成装置1がコイルを製造する方法の一例を示す図である。
図5は、偏平化コイル130の概略構成を例示する図である。
コイル形成装置1は、固定した巻枠10の周囲に、巻部材21を一方の回転方向に予め定めた所定回転数だけ回転させるとともに、巻部材21を中心線方向に移動させて、ボビンに巻かれていたワイヤ5を用いて、一方の回転方向に予め定めた所定巻数分巻かれ、かつ、巻き方向が中心線方向となる第1コイル101を形成する。その後、コイル形成装置1は、第1コイル101の巻き終わりから、予め定めた所定長さ分だけワイヤ5を引き出す(
図3(a)参照)。なお、第1コイル101を形成する前に、第1コイル101の巻き始まり側に第1巻き始め端部121sを形成しておく。
【0018】
その後、コイル形成装置1は、治具30及びモータ40を移動させるとともに巻部材21を移動させて、治具30に設けられた2つの突出部33の下部に、第1コイル101の巻き終わりから引き出されたワイヤ5を引掛ける(
図3(b)参照)。その状態で、コイル形成装置1は、治具30及びモータ40を、治具30が巻枠10の下方に位置するように移動させて第1引き出し部111を形成する(
図4(a)参照)。このとき、巻枠10の中心線Cが、回転軸心Rの延長線上に位置することが好ましい。
【0019】
その後、コイル形成装置1は、巻部材21におけるワイヤ5の送り出し部である先端を巻枠10の左上方であって、一対の開閉部材51とは中心線方向にずれた位置に退避させる。
その後、コイル形成装置1は、一対の開閉部材51を閉じた状態とし、治具30を予め定めた所定回転数(例えば3回転)だけ回転させる(
図4(b)参照)。これにより、第1引き出し部111の巻枠10側の部位である根元が、所定回転数分撚られる。その後、コイル形成装置1は、一対の開閉部材51を開いた状態とするとともに、治具30及びモータ40を巻部材21の回転軌跡よりも下側に退避させる。
【0020】
その後、コイル形成装置1は、上述した手法と同様な手法を用いて、第1コイル101の隣に第2コイル102及び第2引き出し部112を形成する。つまり、コイル形成装置1は、固定した巻枠10の周囲に、巻部材21を一方の回転方向に所定回転数だけ回転させるとともに、巻部材21を中心線方向に移動させて、一方の回転方向に所定巻数分巻かれ、かつ、巻き方向が中心線方向となる第2コイル102を第1コイル101の隣に形成する。その後、コイル形成装置1は、第2コイル102の巻き終わりから、所定長さ分だけワイヤ5を引き出す。その後、コイル形成装置1は、治具30、モータ40及び巻部材21を移動させて、第2コイル102の巻き終わりから引き出された第2引き出し部112を形成する。その後、コイル形成装置1は、巻部材21を退避させて、一対の開閉部材51を閉じた状態とするとともに、治具30を所定回転数だけ回転させ、第2引き出し部112の根元を所定回転数分撚る。その後、コイル形成装置1は、一対の開閉部材51を開いた状態とするとともに、治具30及びモータ40を巻部材21の回転軌跡よりも下側に退避させる。
【0021】
以降、上記工程を3回繰り返し、同じ回転方向に所定巻数分巻かれた、第3コイル103、第4コイル104及び第5コイル105を形成する。また、第3コイル103と第4コイル104との間に第3引き出し部113を、第4コイル104と第5コイル105との間に第4引き出し部114を、第5コイル105の巻き終わり箇所に第5引き出し部115を形成する。
【0022】
そして、第5引き出し部115を形成した後に、コイル形成装置1は、第5コイル105の隣に第6コイル106を形成する。続いて、第6コイル106の巻き終わりから、ワイヤ5を引き出して、第6コイル106の巻き終わり端部となる第6巻き終わり端部126eを形成する。
以上説明したように、コイル形成装置1は、コイルを製造する。
【0023】
引き出し部110の根元が撚られているときの巻部材21の退避位置は、巻部材21におけるワイヤ5の送り出し部位と、治具30の突出部33における引掛け部位との間のワイヤ5が、一対の開閉部材51の先端部同士間に位置させるように設定されている。言い換えれば、中心線方向に一対の開閉部材51と干渉しない位置に退避している巻部材21におけるワイヤ5の送り出し部位と、治具30の突出部33における引掛け部位との間のワイヤ5が、一対の開閉部材51の先端部同士間内に収まるように、一対の開閉部材51の中心線方向の大きさが定められている。
【0024】
第1コイル101~第6コイル106を巻枠10に巻き付けた状態で、これら第1コイル101~第6コイル106にテープ(不図示)を貼って仮固定する。その状態で、第1コイル101~第6コイル106を巻枠10から抜き取る。そして、巻枠10から抜き取った筒状の第1コイル101~第6コイル106を斜めに倒して、偏平化コイル130を生成する。
【0025】
その後、特許文献2に記載されているのと同様な方法により、偏平化コイル130を用いて固定子(不図示)を完成させる。先ず、偏平化コイル130を、円筒状又は円柱状の治具に巻き付けて、円筒状の円筒化コイル(不図示)を生成する。その後、円筒状のスタック(不図示)の内周面に、円筒化コイルを接着する。また、円筒状のスタックにおける他方側の端面に、中継基板(不図示)を接着する。
その後、第1引き出し部111~第5引き出し部115を切断して、第1コイル101~第6コイル106それぞれの端部を形成する。そして、中継基板上に、第1コイル101~第6コイル106それぞれの両端部を配線して半田付けを行う。
【0026】
以下、第1引き出し部111~第5引き出し部115を切断する手法について説明する。第1引き出し部111~第5引き出し部115それぞれを切断する手法は同一であるので、第1引き出し部111~第5引き出し部115をまとめて引き出し部110と称して説明する。
図6(a)は、引き出し部110を切断する前の状態の一例を平面的に示す図である。
図6(b)は、引き出し部110を切断した後の状態の一例を平面的に示す図である。
図6(a)に示すように、引き出し部110は、不等辺三角形をなしており、撚り部117と対向する辺である対向辺110aと、対向辺110aと撚り部117とを接続する2辺の内、短い方の辺である短辺110bと、長い方の辺である長辺110cとを有している。そして、対向辺110aの中央部を、はさみ等の切断道具を用いて切断する。すると、
図6(b)に示すように、短辺110b側の端部である短端部118と、長辺110c側の端部である長端部119とが形成される。
【0027】
ここで、治具30を回転させて引き出し部110の根元を所定回転数分撚る際に、短い方の短端部118が左側のコイル(引き出し部110が第1引き出し部111である場合には第1コイル101)の端部、長い方の長端部119が右側のコイル(引き出し部110が第1引き出し部111である場合には第2コイル102)の端部となるように所定回転数を設定する。これにより、短端部118、長端部119それぞれが、どのコイルの端部であるかを容易に判別することが可能となり、短端部118、長端部119を中継基板上に配線することが容易になる。
【0028】
つまり、例えば、引き出し部110が撚り部117を中心とする二等辺三角形である場合には、長さが等しい二辺それぞれがどのコイルの端部であるかを把握することが困難である。また、引き出し部110が撚り部117を中心とする二等辺三角形である場合には、撚り部117と対向する辺の中央部を切断すると、切断されることにより形成された2本の端部の長さが等しくなり、どちらの端部がどのコイルのものなのかを判別し難くなる。これに対して、コイル形成装置1を用いて形成された引き出し部110は、不等辺三角形であるため、撚り部117と対向する対向辺110aの中央部を切断すると、切断されることにより形成された短端部118と長端部119の長さが異なるので、判別し易い。
【0029】
以上、説明したように、コイル形成装置1は、ワイヤ5が巻かれる巻枠10と、巻枠10におけるワイヤ5の巻き方向の一例としての中心線方向に交差する方向の回転軸心R回りに回転するとともに、回転軸心Rに対して互いに反対側に設けられて、ワイヤ5を引掛ける2つの突出部33が設けられた治具30とを備える。また、コイル形成装置1は、治具30と巻枠10との間の空間であって治具30よりも巻枠10に近い空間を開閉可能に設けられた一対の開閉部材51であって、閉じたときの一対の開閉部材51間の隙間の一例としての先端部同士の距離Lcが2つの突出部33間距離Ljよりも小さくなる一対の開閉部材51を備える。
【0030】
図7は、比較例に係る装置にて引き出し部210を撚るときの状態の一例を示す図である。
比較例に係る装置は、比較例に係る治具230を有し、一対の開閉部材51を有していない。比較例に係る治具230は、回転軸心Rの方向に延びた直方体状の軸方向部231を有し、軸方向部231の先端部に、軸方向部231の板面に直交する方向に突出するように設けられた1つの突出部233を有している。
以上のように構成された比較例に係る装置を用いて引き出し部210を撚るべく治具230を回転させた場合、巻枠10から治具230の方へ向かう2本のワイヤ5における巻枠10側の幅よりも、突出部233側の幅の方が小さいため、治具230側の方が巻枠10側よりも先に撚られてしまう。その結果、引き出し部210の先端部の幅が小さくなり、引き出し部210の先端部にはさみ等の切断道具を挿入することが困難となるので、切断することが困難になる。
【0031】
これに対して、コイル形成装置1においては、治具30よりも巻枠10側に配置された一対の開閉部材51の先端部同士の距離Lcが2つの突出部33間距離Ljよりも小さいので、巻枠10側の方が治具30側よりも先に撚られる。その結果、
図6(a)等に示すように、引き出し部110における巻枠10側の部位のみを撚り、先端側を撚らないようにすることが可能となる。その結果、引き出し部110の先端部の幅が大きくなるので、引き出し部110を切断することが容易になる。なお、治具30の2つの突出部33は、引き出し部110が不等辺三角形となるように回転軸心Rに対して非対称となるように設けられているが、特にかかる態様に限定されない。引き出し部110における巻枠10側の部位のみを撚り、先端側を撚らないようにする観点から言えば、引き出し部110は二等辺三角形であっても良く、2つの突出部33は、回転軸心Rに対して対称となるように設けられていても良い。引き出し部110が二等辺三角形である場合には、切断する前の長さが等しい二辺それぞれがどのコイルの端部であるかを把握可能とするために、例えば二辺それぞれにテープを貼って印を付しておくと良い。
【0032】
また、コイル形成装置1においては、巻枠10の周囲を回転することで、巻枠10にワイヤ5を巻く巻部材21をさらに備え、一対の開閉部材51は、巻部材21が巻枠10の周囲を回転しているときには開き、巻部材21が停止したときに閉じる。これにより、巻枠10と治具30との間の空間であって治具30よりも巻枠10に近い空間において、一対の開閉部材51の先端部同士の距離Lcを2つの突出部33間距離Ljよりも小さくすることが可能となる。
【0033】
また、コイル形成装置1においては、治具30は、巻部材21が巻枠10の周囲を回転しているときには巻部材21の回転軌跡よりも外側に退避し、巻部材21が停止したときに巻枠10に近づいてワイヤ5を2つの突出部33に引掛ける。これにより、巻部材21が巻枠10にコイルを形成した後に引き出し部110を形成することが可能となる。
【0034】
また、コイル形成装置1においては、一対の開閉部材51は、治具30がワイヤ5を2つの突出部33に引掛けた後に閉じ、治具30は、一対の開閉部材51が閉じているときに、回転軸心R回りに予め定められた回転数回転する。これにより、引き出し部110における巻枠10側の部位のみを撚り、先端側を撚らないようにすることを確度高く実現することが可能となる。
【0035】
また、コイル形成装置1においては、治具30が回転しているときに、治具30の2つの突出部33の内の一方の突出部33から巻枠10までの距離と、他方の突出部33から巻枠10までの距離とは異なる。これにより、引き出し部110を確度高く不等辺三角形となるようにすることができる。
【0036】
なお、上述したコイル形成装置1を用いてコイルを形成する際に、治具30に設けられた2つの突出部33の下部に、第1コイル101の巻き終わりから引き出されたワイヤ5を引掛けた(
図3(b)参照)後、治具30及びモータ40を、治具30が巻枠10の下方に位置するように移動させる際に、治具30を例えば1回転させて引き出し部110を1回転撚っても良い。
また、上述したコイル形成装置1において、治具30は、2つの突出部33の下部に引掛けられたワイヤ5が中心線方向に移動して突出部33から脱落しないように中心線方向に移動するのを制限する部材を設けても良い。例えば、治具30が、突出部33の先端と接触する接触状態と、突出部33の先端と接触しない非接触状態とに遷移可能な制限部材(例えば交差方向部32と同様の平板状の部材)を有し、2つの突出部33の下部にワイヤ5を引掛ける際には非接触状態とし、2つの突出部33の下部にワイヤ5を引掛けた後、撚る際には接触状態としても良い。
また、上述したコイル形成装置1において、治具30に設けられた2つの突出部33は、互いに一体化され、全体として例えば1つの楕円柱状の突出部として形成されていても良い。この場合には、1つの楕円柱状の突出部における左右方向の両端の内の一端が一方の突出部33となり、他端が他方の突出部33となる。
【符号の説明】
【0037】
1…コイル形成装置、5…ワイヤ、10…巻枠、20…フライヤ、21…巻部材、30…治具、33…突出部、40…モータ、51…一対の開閉部材、110…引き出し部、110a…対向辺、110b…短辺、110c…長辺、117…撚り部、118…短端部、119…長端部