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  • 特開-屋根の構築方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124856
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】屋根の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/35 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
E04B1/35 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022736
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】黒田 陽史
(72)【発明者】
【氏名】竹中 秀文
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 進
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 朋成
(57)【要約】
【課題】屋根の形状に影響を受けることなく、スライド工法を利用して高い精度で効率よく、大空間構造物の屋根躯体を組立てることである。
【解決手段】先行して組立てた先行ブロックの後方に、後行して組立てた後行ブロックを接続したのち、先行ブロックと後行ブロックとを支持する壁体に沿ってスライドさせる作業を順次繰り返し、大空間構造物の屋根躯体を組立てる屋根の構築方法であって、壁体に支持された状態で変形が生じた先行ブロックに、複数の伸縮装置を介して壁体の上方に配置された後行ブロックを接続する工程と、伸縮装置を短縮させて、先行ブロックに接続させた後行ブロックを壁体に支持させる工程と、を備え、後行ブロックは、複数の伸縮装置ごとに伸長量を制御して、先行ブロックの変形に対応した形状に変形させたのち、先行ブロックに接続する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行して組立てた先行ブロックの後方に、後行して組立てた後行ブロックを接続したのち、前記先行ブロックと前記後行ブロックとを支持する壁体に沿ってスライドさせる作業を順次繰り返し、大空間構造物の屋根躯体を組立てる屋根の構築方法であって、
前記壁体に支持された状態で変形が生じた前記先行ブロックに、複数の伸縮装置を介して前記壁体の上方に配置された前記後行ブロックを接続する工程と、
前記伸縮装置を短縮させて、前記先行ブロックに接続させた前記後行ブロックを前記壁体に支持させる工程と、を備え、
前記後行ブロックは、複数の前記伸縮装置ごとに伸長量を制御して、前記先行ブロックの変形に対応した形状に変形させたのち、前記先行ブロックに接続することを特徴とする屋根の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根の構築方法において、
前記先行ブロックと前記後行ブロックを、つなぎ材を介して接続することを特徴とする屋根の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大空間構造物の屋根を構築するための屋根の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
体育館や工場建屋といった大空間構造物を施工するにあたり、屋根を構築する工法にスライド工法を採用される場合がある。例えば特許文献1には、スライド工法により鉄骨造の屋根を構築する方法が開示されている。
【0003】
具体的には、あらかじめ構築した鉄筋コンクリート造の躯体の一端側に足場を組立てておき、この足場を利用して躯体の一端側屋上部で、屋根を構成する鉄骨トラスを1ユニット組み立てる。次に、組み立てた鉄骨トラスを躯体の他端側に向けて1ユニット幅だけスライドさせる。
【0004】
その後、空いた躯体の一端側屋上部で、次の鉄骨トラスを1ユニット組立て、これを先行して組み立てた鉄骨ユニットに継ぎ足したのち、1ユニット幅だけスライドさせる。上記の、鉄骨ユニットを1ユニット組み立て、先行の鉄骨トラスに継ぎ足し、これらをスライドさせる作業を繰り返し、躯体に屋根を構築する。
【0005】
特許文献1で開示されているようなスライド工法によれば、鉄骨トラスを1ユニット分だけ組立てることの可能な足場を躯体の一端側屋上部に設ければよく、固定された省スペースで鉄骨ユニットの組立て作業を行うことができる。また、屋根を構築する作業と屋根下部の作業とを並行して同時施工できるため、工期短縮及び工費削減に寄与できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53-130813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スライド工法では一般に、1ユニット分の鉄骨ユニットを、躯体を構成する一対の壁体に支持させた際、自重による鉛直降下やスパン(一対の壁体の間隔)方向の広がりが生じて鉛直方向にたわむことが知られている。このため、組み立て時に鉄骨ユニットにむくりをつけることで、対をなす壁体に支持させた際、鉄骨ユニットにたわみを生じさせない対策を講じている。
【0008】
しかし、屋根のスライド方向の端部に跳ね出しがある場合には、この跳ね出しを含んで1ユニット分の鉄骨ユニットを組立てると、対をなす壁体に支持させた際、スライド方向や鉛直方向の変形を生じる場合がある。このような変形を生じた状態で後行の鉄骨ユニットを継ぎ足すことはできず、また、継ぎ足しが可能となるよう、変形した鉄骨ユニットを修正することも容易ではない。このため、跳ね出しを有する屋根を大空間構造物に採用する場合には、スライド工法の適用が困難となっていた。
【0009】
かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、屋根の形状に影響を受けることなく、スライド工法を利用して高い精度で効率よく、大空間構造物の屋根を構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の屋根の構築方法は、先行して組立てた先行ブロックの後方に、後行して組立てた後行ブロックを接続したのち、前記先行ブロックと前記後行ブロックとを支持する壁体に沿ってスライドさせる作業を順次繰り返し、大空間構造物の屋根躯体を組立てる屋根の構築方法であって、前記壁体に支持された状態で変形が生じた前記先行ブロックに、複数の伸縮装置を介して前記壁体の上方に配置された前記後行ブロックを接続する工程と、前記伸縮装置を短縮させて、前記先行ブロックに接続させた前記後行ブロックを前記壁体に支持させる工程と、を備え、前記後行ブロックは、複数の前記伸縮装置ごとに伸長量を制御して、前記先行ブロックの変形に対応した形状に変形させたのち、前記先行ブロックに接続することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の屋根の構築方法は、前記先行ブロックと前記後行ブロックを、つなぎ材を介して接続することを特徴とする。
【0012】
上述する本発明の屋根の構築方法によれば、先行して組立てた先行ブロックに跳ね出しが含まれていることで、壁体に支持させた状態の先行ブロックが変形を生じている場合に、この変形に対応するよう伸縮装置を利用して後行ブロックを強制的に変形させる。これにより、先行ブロックと後行ブロックを容易に接続することができ、跳ね出しを有するような屋根であっても、スライド工法を利用して高い精度で効率よく屋根躯体を組立て、大空間構造物の屋根を構築することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、屋根の形状に影響を受けることなく、スライド工法を利用して高い精度で効率よく、大空間構造物の屋根を構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態における大空間構造物の屋根を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における作業ステージ、伸縮装置及び前方側ブロックを示す図である。
図3】本発明の実施の形態における図2のc-c断面及びd-d断面を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における屋根の前方側ブロックを壁体上でスライドさせる様子を示す図である。
図5】本発明の実施の形態における屋根の中間ブロックを示す図である。
図6】本発明の実施の形態における前方側ブロックと中間ブロックを接続した様子を示す図である。
図7】本発明の実施の形態における接続した前方側ブロックと中間ブロックを壁体に支持させた様子を示す図である。
図8】本発明の実施の形態における前方側ブロックと中間ブロックに接続した後方側ブロックを壁体に支持させた様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、スライド工法を採用して屋根躯体を組立て、大空間構造物の屋根を構築する方法であって、特に、屋根に跳ね出し部がある場合に好適な方法である。以下に、図1図8を参照しつつ屋根の構築方法の詳細を説明する。
【0016】
図1(a)で示すように、大空間構造物1は、外周部に設けられた下部構造物である壁体2に上部構造物である屋根5を支持させた建物であり、屋根5は、屋根躯体3と屋根仕上げ材4とを備えている。
【0017】
屋根躯体3は、図1(b)で示すように、鉄骨トラス構造が採用されており、壁体2の延在方向(スライド方向)に、跳ね出し31を有する前方側ブロック3aと、中間ブロック3bと、後方側ブロック3cに分割されている。また、分割された前方側ブロック3aと中間ブロック3bと後方側ブロック3cはそれぞれ、つなぎ鉄骨10を介して接続されている。そして、図1(c)で示すように、屋根躯体3は、間隔を設けて構築された対をなす壁体2に対して、水平となるように組立てられている。
【0018】
屋根仕上げ材4は、屋根躯体3に設けるものであって雨水や雪等に対応可能な部材であれば、いずれのものであってもよい。また、本実施の形態では、屋根躯体3の上弦材側に設ける屋根仕上げ材4を事例に挙げたが、例えば、屋根躯体3の下弦材側に軒天パネル等を設けるものであってもよい。
【0019】
≪≪屋根の構築方法≫≫
このような大空間構造物1の屋根5の構築方法を、図2図8を参照しつつ説明するが、その大まかな手順は次の通りである。
【0020】
まず、図2(b)で示すように、壁体2の一端側における上方で前方側ブロック3aを組立て、所定の位置まで壁体2に沿ってスライドさせる。次に、図5(a)で示すように、前方側ブロック3aを組立てた位置で中間ブロック3bを組立てる。
【0021】
組立てた中間ブロック3bを、前方側ブロック3aの後端につなぎ鉄骨10を介して接続する。そして、接続した中間ブロック3bと前方側ブロック3aを、図8(a)で示すように、所定の位置まで壁体2に沿ってスライドさせる。こののち、前方側ブロック3aを組立てた位置で後方側ブロック3cを組立て、図8(b)で示すように、中間ブロック3bの後端につなぎ鉄骨10を介して接続する。本実施の形態では、屋根躯体3を3つのブロックに分割したが、屋根躯体3が長大な場合には、3つ以上のブロックに分割して上記の作業繰り返す。
【0022】
このような、スライド工法を採用して屋根躯体3を組立てる方法では、前方側ブロック3a、中間ブロック3b及び後方側ブロック3cをいずれも、壁体2の一端側の同じ場所で組み立てる。このため、図2(a)で示すように、作業ステージ7は建物空間Sの固定された省スペースに設ければよく、経済的であるとともに、建物空間Sを他の作業に効率よく利用できる。また、これら建物空間Sで実施する作業と屋根躯体3の組み立て作業とで作業領域が干渉しないため、両作業を並行して同時施工できる。
【0023】
ところで、上記の手順で組み立てる屋根躯体3において、前方側ブロック3a、中間ブロック3b及び後方側ブロック3cはいずれも、壁体2に支持するのみの状態では、自重による鉛直降下やスパン方向(壁体2の配置間隔の方向)への広がり等に起因して、鉛直下向きのたわみを生じることが知られている。
【0024】
さらに、前方側ブロック3aはその端部に跳ね出し31を有することから、この跳ね出し31に起因する変形が生じる。跳ね出し31に起因する変形は、スライド方向及び鉛直方向に生じる変形を含んでいる。そこで、屋根の構築方法では、これらの変形に対応しつつ屋根躯体3を組立て、大空間構造物1の屋根5を構築する。以下に、その手順を説明する。
【0025】
≪事前準備≫
スライド工法を採用するにあたり、図2(a)で示すように、建物空間Sにおける壁体2の一端側に作業ステージ7を設けるとともに、壁体2の天端にガイドレール21を設ける。
【0026】
ガイドレール21には、前方側ブロック3a、中間ブロック3b及び後方側ブロック3c各々を支持しながら走行する、滑り支承や転がり支承等の移動支承6が配置される。本実施の形態では、ガイドレール21を壁体2の天端に対してトレンチ上に形成したが、必ずしもこれに限定するものではない。また、移動支承6は、自走式でもよいし、例えば壁体2に牽引装置を設け、牽引により移動支承6を走行させるものであってもよい。
【0027】
作業ステージ7は、建物空間Sに立設された複数の仮受構台8によって支持されている。本実施の形態では、スパン方向に3台、スライド方向に4台の計12台を配置しているが、その数量は何ら限定されるものではない。そして、作業ステージ7上には、複数の伸縮装置9が載置されている。
【0028】
伸縮装置9は、上下方向に伸縮するよう配置された、例えば油圧ジャッキにより構成されており、鉄骨トラス構造の前方側ブロック3a、中間ブロック3b及び後方側ブロック3cを組立てる際にこれらを支持する。したがって、あらかじめ前方側ブロック3a等を構築する際に、図2(b)で示すように、下弦材が連結される節点N1、N2の位置を把握しておく。
【0029】
そして、複数の伸縮装置9はそれぞれ、前方側ブロック3a等の節点N1、N2のうち、スパン方向の内側に位置する節点N2の直下に位置するよう配置する。前方側ブロック3a等の節点N1、N2のうち、スパン方向の外側に位置する節点N1の直下には、移動支承6を配置しておく。
【0030】
≪前方側ブロック3aの組立て及びスライド≫
まず、図2(b)で示すように、作業ステージ7上で前方側ブロック3aを先行して組立てる。前方側ブロック3aは、図3(a)で示すように、予め所定量を伸長させた状態の伸縮装置9に支持された状態で組立てられる。
【0031】
伸縮装置9は、前方側ブロック3aを壁体2の上方に位置するよう支持するだけでなく、図3(b)で示すように、むくらせるよう、各々の伸長量が制御されている。前述したように前方側ブロック3aは、ジャッキダウンにより壁体2のみに支持された際、鉛直下向きのたわみを生じる。
【0032】
したがって、このたわみを見込んでたわみとは逆方向に反らせたむくりを、前方側ブロック3aに対して生じさせるためのキャンバー値を予め算定しておく。キャンバー値は、前方側ブロック3aを支持する伸縮装置9ごとに設定されるから、これに基づいて、伸縮装置9各々の伸長量を制御・管理する。
【0033】
こうして、前方側ブロック3aを組立てたのち、ジャッキダウンして前方側ブロック3aを移動支承6を介して、図4(a)で示すように、対をなす壁体2に支持させる。すると、前方側ブロック3aは、自重による鉛直降下により図3(b)で示すようなむくりが減少し、壁体2上で水平を維持した状態となる。
【0034】
しかし、前方側ブロック3aは、前方側の端部に跳ね出し31を有することから、スパン方向中央部付近において図4(b)で示すように、スライド方向及び鉛直方向に変形を生じた状態にある。図4(b)では、スパン方向の中央部で、後方側の端部に浮き上がりが生じる様子を例示している。このような変形を許容したまま、移動支承6をガイドレール21に沿って壁体2の他端側に向けて走行させ、前方側ブロック3aを所定位置までスライドさせる。
【0035】
前方側ブロック3aは、次に接続する中間ブロック3bとの間に設けるつなぎ鉄骨10の大きさを考慮し、スライド量が設定される。これにより、伸縮装置9の上方が解放されるから、伸縮装置9を利用して中間ブロック3bを組立てる。
【0036】
≪中間ブロック3bの組立て及び強制変形≫
図5(a)で示すように、中間ブロック3bを作業ステージ7上で組立てる。中間ブロック3bも、前方側ブロック3aの組立てと同様に、生じることが見込まれる鉛直下向きのたわみとは逆方向に反らせたむくりを生じさせるよう、予めキャンバー値を算定しておく。そのうえで、図5(b)で示すように、このキャンバー値に基づいて伸縮装置9各々の伸長量を制御・管理する。
【0037】
中間ブロック3bを組立てたのち、これを先行の前方側ブロック3aに連結させるが、前述したように前方側ブロック3aは、スライド方向の変形が許容されたままの状態となっている。そこで、図5(c)で示すように、変形した状態の先行の前方側ブロック3aに対応するよう、中間ブロック3bを強制的に変形させたのち、つなぎ鉄骨10を利用して両者を接続する。
【0038】
中間ブロック3bの強制変形は、伸縮装置9の伸長量を調整して中間ブロック3bを調整降下させることで実施する。具体的には、壁体2に支持されている前方側ブロック3aを測量して、つなぎ鉄骨10の接続を予定する位置の変形形状を把握する。次に、この変形形状に対応する中間ブロック3bの変形形状を推定する。そのうえで、推定した変形形状を実現する伸縮装置9各々の伸長量を算定し、算定した伸長量となるように、中間ブロック3bを支持している状態の伸縮装置9を制御・管理する。
ておく。
【0039】
≪前方側ブロック3aと中間ブロック3bの接続≫
こうして中間ブロック3bを強制的に変形させたのち、図6(a)で示すように、つなぎ鉄骨10を介して中間ブロック3bを前方側ブロック3aに接続する。接続時には必要に応じて、中間ブロック3bと前方側ブロック3aとの間隔調整を行うとよい。間隔調整は、前方側ブロック3aを支持する移動支承6をガイドレール21に沿って走行させることにより、容易に調整できる。
【0040】
図6(b)で示すように、中間ブロック3bを前方側ブロック3aの変形形状に対応させて強制変形させたことにより、前方側ブロック3a及び中間ブロック3b各々に設けたボルト孔に対して、つなぎ鉄骨10に設けたボルト孔の中心が精度よく合致する。したがって、つなぎ鉄骨10のボルト締結作業を効率よく実施することが可能となる。
【0041】
前方側ブロック3aと中間ブロック3bが接続されたのち、ジャッキダウンを行って中間ブロック3bを、移動支承6を介して壁体2にのみ支持させる。すると、図7(a)(b)で示すように、前方側ブロック3aと中間ブロック3bは、鉛直方向及びスライド方向の変形が解消された状態となる。
【0042】
≪屋根仕上げ材4の設置及びスライド≫
こののち、前方側ブロック3a、つなぎ鉄骨10及び中間ブロック3bに、屋根仕上げ材4を設置する。
【0043】
その後、移動支承6をガイドレール21に沿って壁体2の他端側に向けて走行させ、接続された前方側ブロック3aと中間ブロック3bを所定位置までスライドさせる。スライド量は、中間ブロック3bと次に接続する後方側ブロック3cとの間に設けるつなぎ鉄骨10の大きさを考慮し設定する。
【0044】
≪後方側ブロック3cの組立て≫
図8(a)で示すように、接続した前方側ブロック3aと中間ブロック3bを移動させたことにより解放された作業ステージ7上で、後方側ブロック3cを組立てる。
【0045】
後方側ブロック3cも、前方側ブロック3aや中間ブロック3bの組立てと同様に、生じることが見込まれる鉛直下向きのたわみとは逆方向に反らせたむくりを生じさせるよう、予めキャンバー値を算定しておく。そのうえで、このキャンバー値に基づいて伸縮装置9各々の伸長量を制御・管理する。
【0046】
伸縮装置9に支持させて後方側ブロック3cを組立てたのち、図8(b)で示すように、ジャッキダウンして移動支承6を介して壁体2に支持させる。このとき、中間ブロック3bにはスライド方向の変形が生じていないから、後方側ブロック3cを強制変形させるよう調整降下する作業は不要である。
【0047】
こののち、後方側ブロック3cをつなぎ鉄骨10を介して中間ブロック3bに接続する。また、後方側ブロック3cとつなぎ鉄骨10に、屋根仕上げ材4を設置する。これらの作業により、図1(a)で示すように、大空間構造物1の壁体2に屋根5が構築される。
【0048】
上記のとおり、屋根の構築方法によれば、先行して組立てた前方側ブロック3aに跳ね出し31が含まれていることにより、前方側ブロック3aがスライド方向の変形を生じている場合に、この変形形状に対応するよう、伸縮装置9を用いた調整降下により中間ブロック3bを強制変形させる。これにより、前方側ブロック3aと中間ブロック3bを容易に接続でき、高い精度で効率よく屋根躯体3を組立て、大空間構造物1の屋根5を構築することが可能となる。
【0049】
本発明の屋根の構築方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 大空間構造物
2 壁体
21 ガイドレール
3 屋根躯体
31 跳ね出し
3a 前方側ブロック(先行ブロック)
3b 中間ブロック(後行ブロック)
3c 後方側ブロック
4 屋根仕上げ材
5 屋根
6 移動支承
7 作業ステージ
8 仮受構台
9 伸縮装置
10 つなぎ鉄骨(つなぎ材)
S 建物空間
N1 節点(外側)
N2 節点(内側)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8