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特開2022-124865移動体、移動制御システム、移動体の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124865
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】移動体、移動制御システム、移動体の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20220819BHJP
【FI】
G05D1/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022754
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 聡
(72)【発明者】
【氏名】杉本 喜一
(72)【発明者】
【氏名】中尾 健太
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 健司
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA01
5H301BB07
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301KK02
5H301KK03
5H301KK07
(57)【要約】
【課題】周囲の障害物をセンサで適切に検出する。
【解決手段】移動体は、自動で移動する移動体であって、周囲の障害物を検出可能な複数のセンサと、障害物の基準位置と移動体の位置との関係に基づき設定された、障害物の検出のために使用するセンサを示す選択情報を取得する選択情報取得部と、選択情報で示されたセンサに障害物を検出させ、障害物の検出結果から障害物の位置を特定する検出制御部と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動で移動する移動体であって、
周囲の障害物を検出可能な複数のセンサと、
前記障害物の基準位置と前記移動体の位置との関係に基づき設定された、前記障害物の検出のために使用するセンサを示す選択情報を取得する選択情報取得部と、
前記選択情報で示された前記センサに前記障害物を検出させ、前記障害物の検出結果から前記障害物の位置を特定する検出制御部と、
を含む、
移動体。
【請求項2】
前記選択情報は、前記障害物の基準位置と前記移動体の位置との関係に基づき算出される、前記センサから照射される光の前記障害物への入射角に基づき、設定される、請求項1に記載の移動体。
【請求項3】
前記選択情報においては、複数の前記センサのうち、前記入射角が最も大きいセンサが、使用するセンサとされる、請求項2に記載の移動体。
【請求項4】
前記選択情報取得部は、前記選択情報として、前記基準位置が前記移動体から所定距離以上離れた前記障害物を検出するための、センサを示す情報を取得し、
前記検出制御部は、前記選択情報で示された前記センサに、前記基準位置が前記移動体から所定距離以上離れた前記障害物を検出させる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項5】
前記選択情報取得部は、前記選択情報として、前記基準位置が前記移動体の移動する軌道の側方であってかつ前記軌道から所定の距離範囲内にある前記障害物を検出するための、センサを示す情報を取得し、
前記検出制御部は、前記選択情報で示された前記センサに、前記基準位置が前記移動体の移動する軌道の側方であってかつ前記軌道から所定の距離範囲内にある前記障害物を、検出させる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項6】
前記選択情報取得部は、前記選択情報として、前記基準位置が前記軌道の一方の側方にある前記障害物を検出するためのセンサを示す第1選択情報と、前記基準位置が前記軌道の他方の側方にある前記障害物を検出するためのセンサを示す第2選択情報と、を取得し、
前記検出制御部は、前記第1選択情報で示されたセンサに、前記基準位置が前記軌道の一方の側方にある前記障害物を検出させ、前記第2選択情報で示されたセンサに、前記基準位置が前記軌道の他方の側方にある前記障害物を検出させる、請求項5に記載の移動体。
【請求項7】
前記検出制御部は、前記センサの検出により取得した点群に基づき、前記障害物の前記軌道に面している側の表面の位置を特定する、請求項5又は請求項6に記載の移動体。
【請求項8】
前記検出制御部は、前記センサに前記障害物の検出を複数回実行させ、複数回の検出により取得された点群を重ね合わせて、前記障害物の前記軌道に面している側の表面の位置を特定する、請求項7に記載の移動体。
【請求項9】
前記移動体が移動する軌道の情報を取得する移動情報取得部と、
前記軌道に沿って移動体を移動させる移動制御部と、をさらに含み、
前記移動情報取得部は、前記検出制御部が特定した前記障害物の位置に基づき、前記軌道に沿って前記移動体を移動させた際に前記障害物に干渉するかを判断する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の移動体。
【請求項10】
前記移動情報取得部は、前記障害物に干渉すると判断した場合であって、前記障害物に干渉しない別の軌道の設定が可能である場合には、前記障害物に干渉しない軌道の情報を取得し、前記移動制御部は、前記障害物に干渉しない軌道に沿って前記移動体を移動させる、請求項9に記載の移動体。
【請求項11】
前記移動制御部は、前記障害物に干渉すると判断された場合であって、前記障害物に干渉しない別の軌道の設定が不可能である場合には、前記移動体を停止させる、請求項9又は請求項10に記載の移動体。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の移動体と、前記移動体と情報の送受信を行う情報処理装置と、を含む、
移動制御システム。
【請求項13】
前記移動体は、前記情報処理装置から、前記障害物の基準位置の情報を取得するものであり、
前記情報処理装置は、前記移動体の検出制御部が特定した前記障害物の位置を、前記障害物の基準位置とすることで、前記基準位置を更新する、請求項12に記載の移動制御システム。
【請求項14】
前記情報処理装置は、前記移動体の検出制御部によって特定された前記障害物の位置の精度の信頼度が所定の閾値以上となる前記障害物の位置を用いて、前記障害物の基準位置を更新する、請求項13に記載の移動制御システム。
【請求項15】
前記情報処理装置は、予め設定された軌道に沿って前記移動体が移動した場合に前記障害物に干渉し、かつ、前記障害物に干渉しない別の軌道の設定が不可能である場合には、前記障害物を移動させる旨の指令を、前記移動体又は他の移動体に出力する、請求項12から請求項14のいずれか1項に記載の移動制御システム。
【請求項16】
周囲の障害物を検出可能な複数のセンサを有し自動で移動する移動体の制御方法であって、
前記障害物の基準位置と前記移動体の位置との関係に基づき設定された、前記障害物の検出のために使用するセンサを示す選択情報を取得するステップと、
前記選択情報で示された前記センサに前記障害物を検出させ、前記障害物の検出結果から前記障害物の位置を特定するステップと、
を含む、
移動体の制御方法。
【請求項17】
周囲の障害物を検出可能な複数のセンサを有し自動で移動する移動体の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記障害物の基準位置と前記移動体の位置との関係に基づき設定された、前記障害物の検出のために使用するセンサを示す選択情報を取得するステップと、
前記選択情報で示された前記センサに前記障害物を検出させ、前記障害物の検出結果から前記障害物の位置を特定するステップと、
を、コンピュータに実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、移動制御システム、移動体の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
周囲を検出するセンサを備えて自動で移動する移動体が知られている。例えば特許文献1には、迫り来る障害物との接触を回避するために、平坦でかつ所定の平面視長さを有する退避壁面を探索する自律移動体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-248713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような移動体は、周囲の障害物と干渉しないように移動したり、干渉してしまう場合には移動を停止したりする必要があるため、周囲の障害物をセンサで適切に検出することが求められている。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、周囲の障害物をセンサで適切に検出可能な移動体、移動制御システム、移動体の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る移動体は、自動で移動する移動体であって、周囲の障害物を検出可能な複数のセンサと、前記障害物の基準位置と前記移動体の位置との関係に基づき設定された、前記障害物の検出のために使用するセンサを示す選択情報を取得する選択情報取得部と、前記選択情報で示された前記センサに前記障害物を検出させ、前記障害物の検出結果から前記障害物の位置を特定する検出制御部と、を含む。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る移動制御システムは、前記移動体と、前記移動体と情報の送受信を行う情報処理装置と、を含む。
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る移動体の制御方法は、周囲の障害物を検出可能な複数のセンサを有し自動で移動する移動体の制御方法であって、前記障害物の基準位置と前記移動体の位置との関係に基づき設定された、前記障害物の検出のために使用するセンサを示す選択情報を取得するステップと、前記選択情報で示された前記センサに前記障害物を検出させ、前記障害物の検出結果から前記障害物の位置を特定するステップと、を含む。
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るプログラムは、周囲の障害物を検出可能な複数のセンサを有し自動で移動する移動体の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記障害物の基準位置と前記移動体の位置との関係に基づき設定された、前記障害物の検出のために使用するセンサを示す選択情報を取得するステップと、前記選択情報で示された前記センサに前記障害物を検出させ、前記障害物の検出結果から前記障害物の位置を特定するステップと、を、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、周囲の障害物をセンサで適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る移動制御システムの模式図である。
図2図2は、移動体の構成の模式図である。
図3図3は、管理システムの模式的なブロック図である。
図4図4は、情報処理装置の模式的なブロック図である。
図5図5は、移動体の制御装置の模式的なブロック図である。
図6図6は、使用するセンサの選択処理を説明するための模式図である。
図7図7は、障害物の検出を説明するための模式図である。
図8図8は、障害物の検出を説明するための模式図である。
図9図9は、障害物の検出を説明するための模式図である。
図10図10は、制御装置の処理フローを説明するフローチャートである。
図11図11は、信頼度の算出の例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0013】
(第1実施形態)
(移動制御システムの全体構成)
図1は、第1実施形態に係る移動制御システムの模式図である。図1に示すように、第1実施形態に係る移動制御システム1は、移動体10、管理システム12、及び情報処理装置14を含む。移動制御システム1は、設備Wに所属する移動体10の移動を制御するシステムである。
【0014】
(設備の構成)
設備Wは、例えば倉庫など、物流管理される設備である。移動制御システム1においては、移動体10を軌道Rに沿って移動させて、移動体10によって設備Wの領域W0内に配置された目標物P0をピックアップして搬送させる。領域W0は、例えば設備Wの床面であり、目標物P0が設置されたり移動体10が移動したりする領域である。目標物P0は、本実施形態では、パレット上に荷物が積載された搬送対象物である。目標物P0のパレットは、複数の柱PLが形成されており、柱PL同士の間に、移動体10の後述するフォーク24が挿入される開口が形成されている。ただし、目標物P0は、パレット上に荷物が積載されたものに限られず任意の形態であってよく、例えばパレットを有さず荷物のみであってもよい。以下、領域W0に沿った一方向を、方向Xとし、領域W0に沿った方向であって方向Xに交差する方向を、方向Yとする。本実施形態では、方向Yは、方向Xに直交する方向である。方向X、方向Yは、水平方向といってもよい。また、方向X、方向Yに直交する方向を、すなわち鉛直方向を、方向Zとする。また、方向Xのうちの一方向を方向X1とし、方向Xのうちの他方向(方向X1と反対方向)を、方向X2とする。
【0015】
また、設備Wの領域W0内には、障害物Pが配置されている。本実施形態では、障害物Pは、後述の狭隘路NRの側方に配置される物体である。本実施形態では、障害物Pは、移動体10が搬送の対象となる目標物P0以外の荷物であり、目標物P0と同様に、パレット上に荷物が積載されたものである。ただし、障害物Pは、パレット上に荷物が積載されたものに限られず任意の形態であってよく、例えばパレットを有さず荷物のみであってもよい。また例えば、障害物Pは、荷物やパレットであることに限られず、設備W内で位置が変化する可能性がある任意の物体や、あるタイミングでは存在するが別のタイミングでは存在しなくなる可能性がある任意の物体であってよい。言い換えれば、本実施形態の障害物Pは、設備Wで永続的に位置が固定された構造物ではないといえる。
【0016】
設備W内の領域W0には、複数の設置領域ARが設けられている。設置領域ARは、目標物P0や障害物Pが設置される領域である。設置領域ARは、目標物P0や障害物Pを設置すべき領域として、予め設定される。設置領域ARは、例えば白線などで区分されており、設置領域ARの位置(座標)、形状、及び大きさは、予め設定されている。目標物P0や障害物Pは、それぞれの設置領域AR内に設けられるため、目標物P0が設けられる設置領域ARの位置(座標)が、目標物P0の基準位置(基準座標)であり、障害物Pが設けられる設置領域ARの位置(座標)が、障害物Pの基準位置(基準座標)であるといえる。ただし、基準位置は、目標物P0や障害物Pが設置領域AR内に定められた位置及び姿勢で配置されたと仮定した場合の、目標物P0や障害物Pの位置であり、目標物P0や障害物Pは、定められた位置及び姿勢で配置されない場合もある。従って、目標物P0や障害物Pの基準位置は、目標物P0や障害物Pの実際の位置とずれる場合もあり、目標物P0や障害物Pのおおよその位置であるといえる。なお、ここでの「位置」とは、設備Wの領域W0における方向X及び方向Yの二次元座標であり、「姿勢」とは、方向X及び方向Yに直交する方向Zから見た場合の移動体10の向き(回転角度)である。本実施形態の説明における「位置」及び「姿勢」とは、別途説明が無い限り、同様の意味とする。
【0017】
なお、本実施形態では、設置領域ARは、設備Wの床である領域W0に設けられているが、それに限られず、例えば目標物P0を設備Wに搬入した車両の荷台内に設けられてもよい。また、本実施形態では、設置領域ARは、目標物P0や障害物P毎に区画されており、設置領域ARには目標物P0や障害物Pのうちの1つが配置されるが、それに限られない。例えば、設置領域ARは、フリースペースとして、複数の目標物P0や障害物Pが設置されるように設定されていてもよい。また、図1の例では設置領域ARは矩形であるが、形状及び大きさは任意であってよい。また、領域W0に設けられる設置領域ARの数も任意であってよい。
【0018】
(狭隘路)
本実施形態においては、移動体10は、狭隘路NRを通って目標物P0にアプローチする。言い換えれば、移動体10は、狭隘路NRを通る軌道Rに沿って移動して、目標物P0にアプローチする。ここで、障害物Pの基準位置は予め決められているため、障害物Pのおおよその位置は既知である。しかし例えば、狭隘路NRのような狭い通路を通る際には、障害物Pのおおよその位置を避けるように移動したとしても、実際の障害物Pとの位置ずれが原因で障害物Pと干渉してしまうおそれがより顕著となる。そのため、狭隘路NRを通る際には、障害物Pのより詳細な位置を把握しておくことが好ましい。それに対し、本実施形態においては、移動体10は、狭隘路NRを通る際には、障害物Pの検出用のセンサを選択して障害物Pの位置を検出する狭隘路モードを実行することで、障害物Pの位置を適切に検出可能となる。狭隘路モードについては後述する。
【0019】
狭隘路NRとは、目標物P0まで続く通路(空間)であって、幅Dが狭い通路を指す。狭隘路NRの幅Dの長さは任意であってよいが、例えば、移動体10の幅に対して1.2倍以下を指してよい。本実施形態では、狭隘路NRは、両側方に配置される障害物Pによって幅が区画されている。すなわち、狭隘路NRとは、一方の側方側に配置された障害物Pと他方の側方側に配置された障害物Pとに挟まれて、目標物P0まで続く通路であるといえる。従って、狭隘路NRの幅Dは、一方の側方側に配置された障害物Pから、他方の側方側に配置された障害物Pまでの距離を指すといえる。また、狭隘路NRは、一方の側方側の設置領域ARと、他方の側方側の設置領域ARとに挟まれて、かつ、目標物P0まで続く通路であるともいえる。この場合、狭隘路NRの幅Dは、一方の側方側の設置領域ARから、他方の側方側の設置領域ARまでの距離を指すともいえる。なお、図1の例では、狭隘路NRは、目標物P0までY方向に延在し、X1方向側(一方の側方側)の障害物Pと、X2方向側(他方の側方側)の障害物Pとに挟まれているが、図1の狭隘路NRは一例である。
【0020】
このように、狭隘路NRの側方には、障害物Pが設置される設置領域ARがあるため、障害物Pや、障害物Pが設置される設置領域ARは、狭隘路NRを通る軌道Rに対して近くに存在するといえ、言い換えれば、狭隘路NRを通る軌道Rに対して所定の距離範囲内にあるといえる。従って、移動体10は、狭隘路NRを通る軌道Rに沿って移動する際には、側方の障害物Pとの距離が近くなり、上述のように干渉するリスクが高くなる。なおここでの所定の距離は、任意の距離を指してよいが、図1の例では幅Dの半分の長さといえる。
【0021】
なお、本実施形態では、移動体10が、狭隘路NRを通って目標物P0までアプローチし、目標物P0をピックアップすることを例に説明するが、それに限られず、移動体10が保持している対象物を、狭隘路NRを通って荷下ろしするものであってもよい。すなわち、図1などに示す目標物P0(又は目標物P0が設置されている設置領域AR)の位置は、移動体10の移動先である目的地であるといえ、ピックアップする場合には目的地に目標物P0があり、荷下ろしする場合には目的地に対象物を荷下ろしする。
(移動体)
移動体10は、自動で移動可能な装置である。本実施形態では、移動体10は、フォークリフトであり、さらにいえば、いわゆるAGF(Automated Guided Forklift)である。図1に例示すように、移動体10は、設備Wにおける領域AR上を移動する。移動体10は、軌道Rに従って、目標物P0にアプローチする。
【0022】
図2は、移動体の構成の模式図である。図2に示すように、移動体10は、車体20と、マスト22と、フォーク24と、複数のセンサ26と、制御装置28とを備えている。車体20は、車輪20Aを備えている。マスト22は、車体20の前後方向における一方の端部に設けられている。マスト22は、前後方向に直交する上下方向に沿って延在する。フォーク24は、マスト22に方向Zに移動可能に取付けられている。フォーク24は、マスト22に対して、車体20の横方向(上下方向及び前後方向に交差する方向)にも移動可能であってよい。フォーク24は、一対のツメ24A、24Bを有している。ツメ24A、24Bは、マスト22から車体20の前方向に向けて延在している。ツメ24Aとツメ24Bとは、マスト22の横方向に、互いに離れて配置されている。以下、前後方向のうち、移動体10においてフォーク24が設けられている側の方向を、前方向とし、フォーク24が設けられていない側の方向を、後方向とする。
【0023】
制御装置28は、移動体10の移動を制御する。制御装置28については後述する。
【0024】
(センサ)
センサ26は、車体20の周辺に存在する対象物の位置及び姿勢の少なくとも1つを検出する。センサ26は、移動体10に対する対象物の位置と、移動体10に対する対象物の姿勢とを検出してよい。本実施形態では、センサ26は、マスト22と、車体20の四隅とに、すなわち車体20の前方向側の左右の端部と後方向側の左右の端部とに、設けられている。すなわち、本実施形態では、センサ26として、センサ26A、26B、26C、26Dの4つが設けられている。センサ26A、26Bは、フォーク24と対向する支持部25の先端に設けられ、センサ26C、26Dは、車体20の後方向側に設けられる。ただし、センサ26が移動体10において設けられる位置(移動体10の座標系におけるセンサ26の位置)はこれに限られず、任意の位置に設けられてもよい。また、センサ26の数も4つに限られず、任意であってよい。また例えば、移動体10に設けられる安全センサを、センサ26として流用してもよい。安全センサを流用することで、新たにセンサを設ける必要がなくなる。なお、移動体10の座標系におけるそれぞれのセンサ26の位置は、既知であり、例えば制御装置28の記憶部に記憶されていてよい。
【0025】
センサ26は、周囲の対象物からの反射光を検出(受光)することで、対象物の位置及び姿勢を検出する。さらに言えば、センサ26は、レーザ光を照射するセンサである。センサ26は、照射したレーザ光の反射光を検出することで、対象物の位置及び姿勢を検出する。センサ26は、一方向に走査しつつレーザ光を照射し、照射したレーザ光の反射光から、対象物の位置及び姿勢を検出する。すなわち、センサ26は、いわゆる2D-LiDAR(Light Detection And Ranging)であるともいえる。本実施形態では、センサ26は、水平方向に、すなわち方向Zに直交する方向に、レーザ光を走査する。ただし、センサ26は、以上のものに限られず任意の方法で対象物を検出するセンサであってよく、例えば、複数の方向に走査されるいわゆる3D-LiDARであってもよいし、カメラであってもよい。
【0026】
(管理システム)
図3は、管理システムの模式的なブロック図である。管理システム12は、設備Wにおける物流を管理するシステムである。管理システム12は、本実施形態ではWMS(Warehouse Management System)であるが、WMSに限られず任意のシステムであってよく、例えば、その他の生産管理系システムのようなバックエンドシステムでも構わない。管理システム12が設けられる位置は任意であり、設備W内に設けられてもよいし、設備Wから離れた位置に設けられて、離れた位置から設備Wを管理するものであってもよい。管理システム12は、コンピュータであり、図3に示すように、通信部30と記憶部32と制御部34とを含む。
【0027】
通信部30は、制御部34に用いられて、情報処理装置14などの外部の装置と通信するモジュールであり、例えばアンテナなどを含んでよい。通信部30による通信方式は、本実施形態では無線通信であるが、通信方式は任意であってよい。記憶部32は、制御部34の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置と、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0028】
制御部34は、演算装置、すなわちCPU(Central Processing Unit)である。制御部34は、作業決定部36を含む。制御部34は、記憶部32からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、作業決定部36を実現して、その処理を実行する。なお、制御部34は、1つのCPUによって処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、作業決定部36を、ハードウェア回路で実現してもよい。また、記憶部32が保存する制御部34用のプログラムは、管理システム12が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0029】
作業決定部36は、搬送する対象となる目標物P0を決定する。具体的には、作業決定部36は、例えば入力された作業計画に基づき、搬送する対象となる目標物P0の情報を示す作業内容を決定する。作業内容は、搬送する対象となる目標物P0を特定する情報であるともいえる。本実施形態の例では、作業内容は、どの設備にあるどの目標物P0を、いつまでに、どこに搬送するかを、作業内容として決定する。すなわち、作業決定部36は、対象となる目標物P0が保管されている設備と、対象となる目標物P0と、目標物P0の搬送先と、目標物P0の搬送時期とを、を示す情報である。作業決定部36は、決定した作業内容を、通信部30を介して、情報処理装置14に送信する。
【0030】
(情報処理装置)
図4は、情報処理装置の模式的なブロック図である。情報処理装置14は、設備Wに設けられ、移動体10と情報の送受信を行う装置、いわゆる地上システムである。情報処理装置14は、コンピュータであり、図4に示すように、通信部40と記憶部42と制御部44とを含む。通信部40は、制御部44に用いられて、管理システム12や移動体10などの外部の装置と通信するモジュールであり、例えばアンテナなどを含んでよい。通信部40による通信方式は、本実施形態では無線通信であるが、通信方式は任意であってよい。記憶部42は、制御部44の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAMと、ROMのような主記憶装置と、HDDなどの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0031】
制御部44は、演算装置、すなわちCPUである。制御部44は、作業内容取得部50と、移動体選定部52と、移動情報取得部54とを含む。制御部44は、記憶部42からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、作業内容取得部50と移動体選定部52と移動情報取得部54とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部44は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、作業内容取得部50と移動体選定部52と移動情報取得部54との少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。また、記憶部42が保存する制御部44用のプログラムは、情報処理装置14が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0032】
(作業内容取得部及び移動体選定部)
作業内容取得部50は、管理システム12が決定した作業内容の情報、すなわち搬送対象となる目標物P0の情報を取得する。作業内容取得部50は、作業内容における目標物P0の情報から、目標物P0が設置されている設置領域ARを特定する。例えば、記憶部42には、目標物P0と、その目標物P0が設置されている設置領域ARとが、関連付けて記憶されており、作業内容取得部50は、記憶部42からその情報を読み出すことで、設置領域ARを特定する。移動体選定部52は、対象となる移動体10を選定する。移動体選定部52は、例えば、設備Wに所属する複数の移動体から、対象となる移動体10を選定する。移動体選定部52は、任意の方法で対象となる移動体10を選定してよいが、例えば、作業内容取得部50が特定した設置領域ARに基づき、その設置領域ARにある目標物P0の搬送に適した移動体10を、対象となる移動体10として選定してよい。
【0033】
(移動情報取得部)
移動情報取得部54は、移動体10の移動に関する情報である移動情報を取得する。移動情報取得部54は、移動情報として、障害物Pの基準位置(ここでは障害物Pが設置される設置領域ARの位置)の位置情報を、取得する。障害物Pの基準位置は、予め設定されている。移動情報取得部54は、例えば記憶部42から、障害物Pの基準位置の位置情報を取得する。
【0034】
また、移動情報取得部54は、移動情報として、作業内容取得部50が特定した設置領域ARまでの軌道Rの情報を、取得する。軌道Rは、例えば設置領域AR毎に、予め設定されている。移動情報取得部54は、例えば記憶部42から、作業内容取得部50が特定した設置領域ARに対して設定された軌道Rの情報を取得する。
【0035】
軌道Rは、設備Wの地図情報に基づき予め設定される。設備Wの地図情報は、設備Wに設置されている構造物(柱や壁などの固定物)、障害物Pの基準位置(障害物Pが設置される設置領域ARの位置)、及び移動体10が走行可能な通路などの位置情報を含んだ情報であり、領域AR内で移動体10が移動可能な領域を示す情報といえる。また、軌道Rは、設備Wの地図情報に加えて、移動体10の車両仕様の情報にも基づき、設定されてよい。車両仕様の情報とは、例えば、移動体10の大きさや最小旋回半径など、移動体10が移動可能な経路に影響を及ぼす仕様である。車両仕様の情報にも基づき軌道Rが設定されている場合、軌道Rは、移動体毎に設定されてよい。なお、軌道Rは、人によって、地図情報や車両仕様の情報などに基づき設定されてもよいし、情報処理装置14などの装置によって、地図情報や車両仕様の情報などに基づき、自動的に設定されてもよい。自動的に軌道Rを設定する場合、例えば通過して欲しいポイント(Waypoint)を指定してもよく、この場合、通過して欲しいポイントを通過しつつ、最短、かつ構造物を避けた軌道Rの設定が可能となる。
【0036】
なお、移動情報取得部54は、予め設定された軌道Rを読み出すことなく、軌道Rを設定してもよい。この場合、移動情報取得部54は、対象となる移動体10の位置情報と、目標物P0の設置領域ARの位置情報と、設備Wの地図情報とに基づき、移動体10の現在位置から移動先である目標物P0の設置領域ARまでの経路を、軌道Rとして生成してよい。
【0037】
情報処理装置14は、取得した移動情報を、すなわちここでは障害物Pの基準位置の位置情報及び軌道Rの情報を、通信部40を介して、対象となる移動体10に送信する。
【0038】
(移動体の制御装置)
次に、移動体10の制御装置28について説明する。図5は、移動体の制御装置の模式的なブロック図である。制御装置28は、移動体10を制御する。制御装置28は、軌道Rに沿って移動体10を移動させて、移動体10に目標物P0をピックアップさせる。制御装置28は、コンピュータであり、図5に示すように、通信部60と記憶部62と制御部64とを含む。通信部60は、制御部64に用いられて、情報処理装置14などの外部の装置と通信するモジュールであり、例えばアンテナなどを含んでよい。通信部40による通信方式は、本実施形態では無線通信であるが、通信方式は任意であってよい。記憶部62は、制御部64の演算内容やプログラムなどの各種情報を記憶するメモリであり、例えば、RAMと、ROMのような主記憶装置と、HDDなどの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0039】
制御部64は、演算装置、すなわちCPUである。制御部64は、移動情報取得部70と、移動制御部72と、選択情報取得部74と、検出制御部76とを含む。制御部64は、記憶部62からプログラム(ソフトウェア)を読み出して実行することで、移動情報取得部70と移動制御部72と選択情報取得部74と検出制御部76とを実現して、それらの処理を実行する。なお、制御部64は、1つのCPUによってこれらの処理を実行してもよいし、複数のCPUを備えて、それらの複数のCPUで、処理を実行してもよい。また、移動情報取得部70と移動制御部72と選択情報取得部74と検出制御部76との少なくとも一部を、ハードウェア回路で実現してもよい。また、記憶部62が保存する制御部64用のプログラムは、制御装置28が読み取り可能な記録媒体に記憶されていてもよい。
【0040】
(移動情報取得部)
移動情報取得部70は、通信部60を介して、情報処理装置14から、移動情報を、すなわちここでは障害物Pの基準位置の位置情報及び軌道Rの情報を、取得する。
【0041】
(移動制御部)
移動制御部72は、移動体10の駆動部やステアリングなどの移動機構を制御して、移動体10の移動を制御する。移動制御部72は、移動情報取得部70が取得した軌道Rに従って、移動体10を移動させる。移動制御部72は、現在の移動体10の位置から、目標物P0に向けて、軌道Rを通るように移動体10を移動させる。移動制御部72は、移動体10の位置及び姿勢を逐次把握することで、軌道Rを通るように移動体10を移動させる。移動体10の位置及び姿勢の取得方法は任意であるが、本実施形態では、SLAM(Slmultaneous Localization and Mapping)を用いる。例えば、移動制御部72は、情報処理装置14から設備の地図情報を取得し、参照物の地図情報における位置と、センサ26で検出した参照物の位置との位置関係に基づき、すなわちマップマッチングの手法を用いて、移動体10の位置及び姿勢を逐次取得する。ただし、移動体10の位置及び姿勢の取得方法はこれに限られず、任意であってよい。例えばレーザ誘導の原理を用いて移動体10の位置及び姿勢を取得してもよい。この場合例えば、設備Wに図示しない検出体が設けられており、移動体10は、検出体に向けてレーザ光を照射し、検出体によるレーザ光の反射光を受光して、設備Wにおける自身の位置及び姿勢を検出する。
【0042】
(選択情報取得部)
選択情報取得部74は、障害物Pの検出に使用するセンサ26を示す選択情報を取得する。選択情報は、障害物Pの基準位置と、移動体10の位置との関係に基づき設定される。本実施形態では、選択情報取得部74が、障害物Pの基準位置と移動体10の位置との関係に基づき、障害物Pの検出に使用するセンサ26を選択することで、選択情報を設定する。選択情報取得部74の処理については後述する。
【0043】
(検出制御部)
検出制御部76は、選択情報で示されたセンサ26に障害物Pを検出させ、センサ26による障害物Pの検出結果から障害物Pの位置を特定する。検出制御部76の処理については後述する。
【0044】
(制御装置の処理)
次に、移動体10が目標物P0に向かう際の制御装置28の処理について説明する。制御装置28の移動情報取得部70は、軌道Rの情報を取得する。本実施形態では、軌道Rは、図1の例に示すように、狭隘路NRを通って目標物P0に向かう軌道となる。制御装置28の移動制御部72は、移動情報取得部70が取得した軌道Rに沿って移動体10を移動させる。なお、目標物P0までの軌道Rは、上述のように予め設定されているが、例えば移動体10と目標物P0との距離が所定範囲まで近づいたら、目標物P0の位置に応じて軌道Rを更新してもよい。この場合、制御装置28は、センサ26に目標物P0の位置及び姿勢を検出させて、目標物P0の位置及び姿勢に基づいて、目標物P0に向かうより正確な軌道Rを生成し、その軌道Rに切り替えて目標物P0にアプローチしてもよい。
【0045】
(通常モードから狭隘路モードへの切り替え)
制御装置28は、移動体10が切替位置Aに到着するまでは、通常モードで移動体10を制御し、切替位置Aに到着したら、狭隘路モードに切り替えて、狭隘路モードで移動体10を制御する。通常モードとは、狭隘路NRから離れた位置を移動する際の制御モードであり、狭隘路モードは、狭隘路NRの近くや狭隘路NR内を移動する際の制御モードである。制御装置28は、通常モードにおいては、障害物Pを検出するためのセンサ26を選択する処理を行うことなく、移動体10を軌道Rに沿って移動させる。狭隘路モードでの処理については後述する。
【0046】
切替位置Aは、予め設定されている。本実施形態では、移動情報取得部70が、情報処理装置14から、切替位置Aの位置情報を取得する。切替位置Aは、軌道R上であって、狭隘路NRの領域外の位置として設定される。切替位置Aは、任意の位置に設定されてよいが、例えば、狭隘路NRの側方の設置領域AR(障害物Pの基準位置)のうちの、狭隘路NRの最も入り口側の設置領域ARから、切替位置Aまでの距離LAが、後述の所定距離LX1(例えば移動体10が安全に停止できる距離)以上となる位置に、設定されてよい。
【0047】
このように、制御装置28は、移動体10が、予め定められた切替位置Aに到着したことをトリガとして、狭隘路モードに切り替えるが、狭隘路モードに切り替えるトリガはこれに限られず任意であってよい。例えば、制御装置28は、移動体10と狭隘路NRの側方の設置領域ARとの位置関係に基づき、狭隘路モードに切り替えるかを判断し、狭隘路モードに切り替えると判断したことをトリガとして、狭隘路モードに切り替えてよい。この場合例えば、制御装置28は、移動体10から狭隘路NRの最も入り口側の設置領域ARまでの距離が、後述の所定距離LX1以上の所定の距離となったことをトリガとして、狭隘路モードに切り替えてよい。
【0048】
(狭隘路モード)
(検出対象となる障害物の選定)
図6は、使用するセンサの選択処理を説明するための模式図である。狭隘路モードにおいては、制御装置28は、選択情報取得部74により、移動情報取得部70が取得した障害物Pの基準位置(設置領域ARの位置)と、移動制御部72が検出した移動体10の位置との関係に基づき、検出対象とする障害物Pを選定する。選択情報取得部74は、それぞれの障害物Pの基準位置と、移動体10の位置との関係を算出し、その関係が所定の条件を満たす場合に、その障害物Pを検出対象とする。より詳しくは、図6に示すように、障害物Pの基準位置と移動体10の現在の位置Bとの間の距離を、距離LBとすると、選択情報取得部74は、距離LBが所定距離LX1以上となる障害物Pを、言い換えれば距離LBが所定距離LX1以上となる設置領域ARに設置されている障害物Pを、検出対象とする。所定距離LX1は、任意の距離であってよいが、例えば、移動体10が安全に停止できる距離であってよい。所定距離LX1は、例えば、以下の式(1)により算出される。
【0049】
LX1=LCVM+LCAM ・・・(1)
【0050】
ここで、LCVMは、センサ26でセンシングしてからブレーキが作動するまでの時間に、移動体10が等速運動で移動する距離であり、移動体10の等速運動時の速度(現在の移動速度)に、センサ26でセンシングしてからブレーキが作動するまでの時間を乗じた値となる。また、LCAMは、ブレーキが作動し始めてから移動体10が停止するまでの等加速度運動で移動する距離であり、例えば次の式(2)で算出できる。ただし、式(2)において、Vが移動体10の等速運動時の速度であり、aがブレーキによる減速加速度である。
【0051】
CAM=1.5・V /a ・・・(2)
【0052】
なお、障害物Pを検出可能な距離LBの上限は、特に規定されず、例えばレーザ光の出力と対象物の反射率、センサ26の感度などのセンサ特定などに基づき設定されてよい。
【0053】
選択情報取得部74は、以上のようにして検出対象とする障害物Pを選定するが、検出対象とする障害物Pの選定方法は任意であってよい。なお、以降においては、図6に示すように、狭隘路NRのX1方向側の設置領域AR1にある障害物P1と、狭隘路NRのX2方向側の設置領域AR2にある障害物P2とを、検出対象とした場合を例に説明を続ける。障害物P1は、基準位置が狭隘路NRを通る軌道Rの一方の側方にあり、かつ、その軌道Rから所定の距離範囲内にあるといえ、障害物P2は、基準位置が狭隘路NRを通る軌道Rの他方の側方にあり、かつ、その軌道Rから所定の距離範囲内にあるといえる。
【0054】
(センサの選択)
選択情報取得部74は、検出対象とした障害物Pの基準位置(検出対象とした設置領域ARの位置)と、移動体10の位置との関係に基づき、検出対象とした障害物Pの検出に使用するセンサ26を選択する。検出対象とした障害物Pの検出に使用するセンサ26の選択結果が、選択情報といえる。選択情報取得部74は、検出対象とした障害物Pのそれぞれについて、使用するセンサ26を選択する。
【0055】
より詳しくは、選択情報取得部74は、センサ26から照射される光の障害物Pへの入射角θに基づき、使用するセンサ26を選択する。入射角θは、センサ26から照射される光の実際の入射角ではなく、障害物Pの基準位置と移動体10の位置とに基づき、選択情報取得部74によって算出される。具体的には、選択情報取得部74は、移動体10の位置と、センサ26の移動体10上での位置とに基づき、各センサ26の位置(設備Wの座標系におけるセンサ26の位置)を算出する。そして、選択情報取得部74は、センサ26の位置と、障害物Pの基準位置とから、入射角θを算出する。選択情報取得部74は、センサ26の位置と障害物Pの基準位置とを結んだ直線(図6の例では矢印L)と、その障害物Pの設置領域ARの狭隘路NR側(軌道R側)の辺PSとがなす角度を、入射角θとして算出してよい。選択情報取得部74は、それぞれのセンサ26について、障害物Pへの入射角θを算出して、それぞれの入射角θに基づき、使用するセンサ26を選択する。具体的には、選択情報取得部74は、移動体10に設けられる複数のセンサ26のうち、入射角θが最も大きいセンサ26を、使用するセンサ26として選択する。図6の例では、X1方向側の障害物P1についてはセンサ26Bの入射角θが大きいため、障害物P1の検出にはセンサ26Bが選択され、X2方向側の障害物P2についてはセンサ26Aの入射角θが大きいため、障害物P2の検出にはセンサ26Aが選択される。
【0056】
選択情報取得部74は、以上のようにして検出対象とする障害物Pを検出するセンサ26を選択するが、センサ26の選択方法は上記に限られず任意であってよい。例えば、選択情報取得部74は、それぞれのセンサ26について、センサ26と障害物Pの基準位置との距離を算出し、距離に基づいて障害物Pを検出するセンサ26を選択してよい。この場合例えば、選択情報取得部74は、センサ26と障害物Pの基準位置との距離が最も遠いセンサ26を、障害物Pを検出するセンサ26として選択してよい。
【0057】
また、本実施形態では、選択情報取得部74が、使用するセンサ26を選択して選択情報を設定するが、それに限られない。例えば、選択情報取得部74は、情報処理装置14などの外部の装置が設定した選択情報を、取得してもよい。この場合の情報処理装置14などによる選択情報の設定方法は、選択情報取得部74による設定方法と同様である。
【0058】
(障害物の位置の検出)
図7から図9は、障害物の検出を説明するための模式図である。検出制御部76は、選択情報取得部74が選択したセンサ26に障害物Pを検出させ、センサ26による障害物Pの検出結果から、障害物Pの位置を特定する。より詳しくは、検出制御部76は、選択したセンサ26に、検出対象とした設置領域ARに向けて、レーザ光を照射させる。設置領域ARに障害物Pが設置されている場合には、レーザ光は障害物Pに反射され、センサ26は、障害物Pからの反射光を受光する。検出制御部76は、センサ26が受光した反射光に基づいて、計測点Mの集合である点群M0を取得し、点群M0に基づいて、障害物Pの位置として、障害物Pの狭隘路NRを通る軌道R側に面した表面PAの位置を特定する。表面PAの位置とは、例えば、表面PAに沿った各位置の座標群を指してよい。なお、図7に示すように、計測点Mとは、それぞれの反射光が反射された箇所の位置(座標)を示す。すなわち、計測点Mとは、レーザ光が反射された位置を示す点であり、点群M0とは、レーザ光が反射された位置を示す点の集合を指す。また、本実施形態では、検出制御部76は、障害物Pの表面PAの位置を特定したが、それに限られず障害物Pの表面PA以外の位置を特定してもよい。
【0059】
本実施形態では、制御装置28は、軌道Rに沿って移動体10を移動させつつ、使用するセンサ26を選択してセンサ26によって障害物Pの位置を検出させる。従って、図8に示すように、検出制御部76は、センサ26に、同じ設置領域ARに向けて複数スキャンのレーザ光を照射させて、同じ障害物Pを複数回検出させる。検出制御部76は、それぞれのスキャンのレーザ光に対する反射光から点群M0を取得して、複数回の検出により取得した点群M0を重ね合わせる。検出制御部76は、直近の所定数のスキャンで取得した点群M0を重ね合わせてよい。なお、制御装置28は、移動体10を移動させながらセンサ26にスキャンを行わせることに限られず、停止した状態で複数回スキャンを行わせてもよいし、所定距離移動する毎に停止して、スキャンを行わせてもよい。
【0060】
検出制御部76は、重ね合わせた点群M0に含まれる計測点Mのうちから、表面PAの位置の特定に用いる計測点Mを抽出する。検出制御部76は、検出対象とした障害物Pの基準位置に基づいて、表面PAからの反射光に対応する計測点Mを抽出する。例えば、検出制御部76は、障害物Pの基準位置から所定の距離範囲内にある計測点Mを、表面PAの位置の特定に用いる計測点Mとして抽出する。また、検出制御部76は、検出対象とした障害物Pの基準位置に加えて、計測点Mの位置の測定誤差にも基づき、計測点Mを抽出してよい。この場合例えば、測定誤差分だけ距離範囲を広げて、障害物Pの基準位置から所定の距離範囲内にある計測点Mを、抽出する。また例えば、検出制御部76は、障害物Pの開口(パレットの柱PLの間の開口)の位置と推定される位置の計測点Mを除外して、開口以外の位置と推定される計測点Mを抽出してもよい。障害物Pの開口の位置の推定は、例えば障害物Pの設計情報に基づいて行われてよい。
【0061】
計測点Mを抽出した後、検出制御部76は、図8に示すように、抽出した計測点Mの集合の点群M0に基づいて、障害物Pの表面PAの位置を算出する。検出制御部76は、抽出した点群M0に対して線分フィッティングを実行して直線PSAを算出し、直線PSAを、障害物Pの表面PAとして特定する。線分フィッティングは任意の方法で行ってよいが、例えば抽出した点群M0の近似直線を、直線PSAとして算出してよい。
【0062】
検出制御部76は、以上のようにして障害物Pの表面PAの位置を特定する。なお、上述の説明では、各スキャンにより取得した点群M0を重ね合わせる処理を行っており、これにより障害物Pの表面PAの位置の算出精度を向上できる。ただし、この重ね合わせる処理は必須ではなく、例えば、1回のスキャンにより取得した点群M0から、表面PAの位置を特定してもよい。また、表面PAの位置の特定に用いる計測点Mを抽出する方法も、上述の方法に限られず任意の方法で行ってよいし、抽出する処理自体も必須ではない。
【0063】
検出制御部76は、特定した障害物Pの位置の情報を、情報処理装置14に送信してもよい。この場合、情報処理装置14の移動情報取得部54は、検出制御部76が特定した障害物Pの位置の情報を取得し、検出制御部76が特定した障害物Pの位置を、その障害物Pの基準位置とすることで、その障害物Pの基準位置を更新する。これにより、障害物Pの基準位置と、実際の障害物Pの位置との誤差が低減されて、次回以降の軌道Rの設定などを高精度に行うことができたり、次回以降の狭隘路NRの移動をより高速で行うことができたりする。また例えば、マップマッチングで移動体10の位置推定の際に、その障害物Pの基準位置を用いることで、より高精度に自己位置の推定が可能となる。なお、検出制御部76が特定した障害物Pの位置を、その障害物Pの基準位置とする場合には、その障害物Pが移動されていないことを条件とすることが好ましい。すなわち、障害物Pの位置が特定されてから、その障害物Pが移動されていない場合に、その障害物Pの基準位置を、検出制御部76に特定された障害物Pの位置で更新することが好ましい。
【0064】
(干渉の判断)
次に、移動情報取得部70は、検出制御部76が特定した障害物Pの位置に基づき、軌道Rに沿って移動体10の移動を継続した場合に移動体10が障害物Pに干渉するかを判断する。例えば、移動情報取得部70は、軌道Rの位置情報と移動体10の設計情報から、移動体10が通過する軌跡を算出し、位置が特定された障害物Pにその軌跡が重なる場合には、移動体10が障害物Pに干渉すると判断する。一方、移動情報取得部70は、移動体10が通過する軌跡が障害物Pに重ならない場合には、移動体10が障害物Pに干渉しないと判断する。ただし干渉するかの判断基準はそれに限られない。例えば、移動体10が搬送する目標物P0が移動体10の幅より大きい場合などにおいては、移動情報取得部70は、目標物P0が通過する軌跡を移動体10の軌跡として扱って、その軌跡が障害物Pの位置に重なる場合に、移動体10が障害物Pに干渉すると判断してもよい。また例えば、誤差を加味してもよく、移動体10が通過する軌跡と障害物Pの位置との距離が距離範囲内となった場合には、移動体10が障害物Pに干渉すると判断してもよい。
【0065】
(干渉する場合)
移動体10が障害物Pに干渉すると判断された場合には、移動情報取得部70は、障害物Pに干渉しない別の軌道Rの設定が可能であるかを判断する。別の軌道Rの設定が可能であるかの判断は任意に行ってよいが、例えば、狭隘路NRを通る軌道Rの両側方の障害物Pの位置が検出されており(すなわち両側方に障害物Pが存在し)、かつ、両側方の障害物Pの表面PA間の距離が、所定の長さより長い場合には、別の軌道Rの設定が可能であると判断してよい。一方、両側方の障害物Pの表面PA間の距離が、所定の長さ以下である場合には、別の軌道Rの設定が不可能と判断してよい。ここでの所定の長さは、例えば、移動体10の幅や、目標物P0の幅であってよい。
【0066】
障害物Pに干渉しない別の軌道Rの設定が可能である場合、移動情報取得部70は、障害物Pに干渉しない軌道Rを生成して、移動制御部72は、その軌道Rに切り替えて、その軌道Rに沿って移動体10を移動させる。
【0067】
一方、障害物Pに干渉しない別の軌道Rの設定が不可能である場合には、移動制御部72は、移動体10の移動を停止させる。さらに言えば、移動制御部72は、移動体10と障害物Pとの間の距離が所定距離LX1以下である場合には、移動体10を緊急停止させて、移動体10と障害物Pとの間の距離が所定距離LX1より大きい場合には、移動体10を通常停止させてよい。緊急停止とは、通常停止よりも減速加速度を高くする制御である。なお、別の軌道Rの設定が可能であるかの判断や別の軌道Rの生成は、移動情報取得部70によって行われることに限られず、例えば情報処理装置14などの別の装置が行って、移動情報取得部70が、判断結果や別の軌道Rの情報を取得してもよい。
【0068】
障害物Pに干渉しない別の軌道Rの設定が不可能である場合には、制御装置28は、障害物Pとの干渉により移動体10が移動できない旨の情報を、情報処理装置14に送信してもよい。情報処理装置14は、この情報を受信した場合には、干渉の原因となった障害物Pを移動させる旨の指令を生成し、その指令を、移動体10又は他の移動体に出力してよい。この場合、指令を受信した移動体が干渉の原因となった障害物Pを移動させるため、移動体10は、干渉することなく目標物P0に向けて移動することが可能となる。干渉の原因となった障害物Pの移動先は、同じ設置領域AR内であって干渉しなくなる位置であってもよいし、別の場所であってもよい。また、干渉の原因となる障害物Pが複数ある場合には、情報処理装置14は、基準位置に対してずれが大きい障害物Pを優先して移動させるように指令を生成することが好ましい。
【0069】
(干渉しない場合)
一方、移動体10が障害物Pに干渉しないと判断された場合には、移動制御部72は、その軌道Rを継続して使用して、その軌道Rに沿った移動体10の移動を続けさせる。ただし、移動体10が障害物Pに干渉しない場合でも、移動情報取得部70が別の軌道Rを設定し、移動制御部72は、その軌道Rに切り替えてもよい。例えば、移動情報取得部70は、別の軌道Rとして、狭隘路NRの両側方の障害物P同士の中央を通る軌道Rを設定してよい。
【0070】
(制御装置の処理フロー)
以上説明した制御装置28の処理のフローを、フローチャートに基づき説明する。図10は、制御装置の処理フローを説明するフローチャートである。図10に示すように、制御装置28は、狭隘路モードである場合には(ステップS10;Yes)、移動体10の位置の情報と、障害物Pの基準位置の情報とを取得する(ステップS12)。制御装置28は、選択情報取得部74により、移動体10の位置及び障害物Pの基準位置に基づき、検出対象とする障害物Pを選定し(ステップS14)、検出対象とした障害物Pの検出に使用するセンサ26を選択する(ステップS16)。制御装置28は、検出制御部76により、選択したセンサ26に、検出対象とした障害物Pを検出させて、障害物Pの位置を特定する(ステップS18)。本実施形態では、検出制御部76は、センサ26の検出結果から点群M0を取得して、点群M0に基づき、障害物Pの位置を算出する。そして、制御装置28は、特定した障害物Pの位置に基づき、軌道Rに沿って移動体10を移動させた場合に、移動体10が障害物Pと干渉するかを判断する(ステップS20)。干渉しないと判断した場合には(ステップS20;No)、制御装置28は、移動制御部72により、今の軌道Rに沿った移動を継続させ(ステップS22)、処理を終了しない場合には(ステップS24;No)、ステップS10に戻り、狭隘路モードである場合には、検出対象となる障害物Pの選定、センサ26の選択、及び干渉の判定を繰り返す。一方、干渉すると判断した場合には(ステップS20;Yes)、制御装置28は、障害物Pと干渉しない別の軌道Rがあるかを判断する(ステップS26)。干渉しない別の軌道Rがある場合には(ステップS26;Yes)、制御装置28は、移動制御部72により、障害物Pに干渉しない軌道Rに切り替えて、移動体10を移動させる(ステップS28)。一方、干渉しない別の軌道Rが無い場合には(ステップS26;No)、制御装置28は、移動制御部72により、移動体10の移動を停止させる(ステップS30)。ステップS28やステップS30の実行後は、ステップS24に移り、処理を終了しない場合には(ステップS24;No)、ステップS10に戻り、狭隘路モードである場合には、検出対象となる障害物Pの選定、センサ26の選択、及び干渉の判定を繰り返す。なお、ステップS24で処理を終了する場合には(ステップS24;Yes)、本処理を終了する。
【0071】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る移動体10は、障害物Pの基準位置と移動体10の位置関係から、その障害物Pの検出に使用するセンサ26を選択する。従って、本実施形態によると、検出に適したセンサ26を用いて、障害物Pを適切に検出することが可能となる。特に、狭隘路NRを移動する際には、障害物Pと衝突しないように、安全に停止できる距離よりも遠方の障害物Pを検出することが好ましいが、遠方の障害物Pを検出する場合、センサ26の位置によっては、レーザ光の障害物Pへの入射角が小さくなってしまう場合がある。入射角が小さくなると、センサ26から障害物Pを見た際の障害物Pの見かけ長さが短くなることで点群M0の密度が小さくなったり、反射光量が少なくなったりするため、計測精度が低下するおそれがある。それに対して、本実施形態に係る移動体10は、入射角θが大きくなるセンサ26を選択して計測に用いるため、計測精度の低下を適切に抑制できる。
【0072】
なお、本実施形態では、狭隘路NRの側方に基準位置がある障害物Pに対して、センサ26を選択し、そのセンサ26を用いて障害物Pを検出していたが、対象とする障害物Pは、狭隘路NRの側方にあるものに限られない。制御装置28は、任意の位置にある障害物Pについて、上述と同様の方法で、センサ26を選択して障害物Pを検出させてよい。ただし、このように、対象とする障害物Pは任意であるが、基準位置が移動体10から所定距離LX1以上離れた障害物Pを対象とすることが好ましい。
【0073】
また、本実施形態に係る移動制御システム1は、物流管理される設備W用に用いられていたが、物流管理される設備に限られず任意の用途に用いられてよい。
【0074】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、検出制御部76が算出した障害物Pの位置についての信頼度に応じて、算出した障害物Pの位置を用いて基準位置を更新する点で、第1実施形態とは異なる。第2実施形態において、第1実施形態と構成が共通する箇所は、説明を省略する。
【0075】
第2実施形態においては、移動体10の検出制御部76は、特定した障害物Pの位置の精度についての、信頼度を算出する。信頼度とは、検出制御部76が特定した障害物Pの位置と、実際の障害物Pの位置との誤差の度合いを指し、信頼度が高いと誤差が少ない可能性が高いといえる。上述のように、検出制御部76は、点群M0に対して線分フィッティングを実行して直線PSAを算出し、直線PSAを障害物Pの位置とする。そのため、第2実施形態では、検出制御部76は、障害物Pの位置の信頼度として、直線PSAの信頼度を算出する。
【0076】
信頼度の算出方法は任意であってよいが、例えば、検出制御部76は、センサ26から照射されるレーザ光の障害物Pへの入射角度に基づき、直線PSAの信頼度を算出してよい。この場合、検出制御部76は、入射角度が大きいほど、信頼度を高く設定することが好ましい。なお、ここでの入射角度は、障害物Pの基準位置と移動体10の位置とに基づき算出された入射角θであるが、それに限られず、実際にセンサ26から照射されたレーザ光の障害物Pへの入射角の計測値を用いてもよい。
【0077】
図11は、信頼度の算出の例を説明するためのグラフである。検出制御部76は、直線PSAの残差に基づき、直線PSAの信頼度を算出してよい。残差とは、計測点Mと直線PSAとの間の距離を指す。検出制御部76は、直線PSAの残差が小さいほど、信頼度を高く設定することが好ましい。図11は、直線PSAと計測点Mの一例を示している。例えば、検出制御部76は、図11に示すように、それぞれの計測点Mについて、X方向及びY方向の2次元座標系における、計測点Mと直線PSAとの間の距離MLを残差として算出し、算出した距離MLの合計値が小さいほど信頼度を高く設定してよい。
【0078】
また例えば、検出制御部76は、直近で基準位置が更新されてから経過した時間である経過時間に基づき、直線PSAの信頼度を算出してよい。経過時間とは、検出制御部76が算出した障害物Pの位置を用いて障害物Pの基準位置が最後に更新されてから、検出制御部76が同じ障害物Pの位置(直線PSA)を算出するまでの時間を指す。検出制御部76は、経過時間が小さいほど、信頼度を高く設定することが好ましい。
【0079】
なお、検出制御部76は、センサ26による直近の複数回の検出で取得された点群M0から、直線PSAを算出している。すなわち、検出制御部76は、センサ26が検出する度に直線PSAを算出する。この場合、検出制御部76は、算出したそれぞれの直線PSAについて、信頼度を算出する。
【0080】
検出制御部76は、検出制御部76は、信頼度が所定の閾値以上となった障害物Pの位置の情報を、情報処理装置14に送信する。この場合、情報処理装置14の移動情報取得部54は、検出制御部76が特定した、信頼度が閾値以上となる障害物Pの位置を、その障害物Pの基準位置とすることで、その障害物Pの基準位置を更新する。このように、第2実施形態においては、信頼度が高いデータのみを使用して障害物Pの基準位置を更新するため、障害物Pの基準位置と、実際の障害物Pの位置との誤差をより好適に低減できる。
【0081】
なお、以上の説明では、検出制御部76が信頼度を算出して、信頼度が閾値以上となる障害物Pの位置の情報を、情報処理装置14に送信していたが、それに限られない。例えば、検出制御部76は、特定した障害物Pの位置の情報を、信頼度と関連付けて情報処理装置14に送信し、情報処理装置14の移動情報取得部54が、信頼度に基づいて、取得した障害物Pの位置で基準位置を更新するかを判断してよい。また例えば、情報処理装置14の移動情報取得部54が、信頼度を算出して、算出した信頼度に基づき、基準位置を更新するかを判断してもよい。これらの場合、移動情報取得部54は、信頼度が閾値以上である場合に、その障害物Pの位置で基準位置を更新してよい。
【0082】
(本開示の効果)
以上説明したように、本開示に係る移動体10は、自動で移動する移動体であって、周囲の障害物Pを検出可能な複数のセンサ26と、選択情報取得部74と、検出制御部76とを含む。選択情報取得部74は、障害物Pの基準位置と移動体10の位置との関係に基づき設定された、障害物Pの検出のために使用するセンサ26を示す選択情報を取得する。検出制御部76は、選択情報で示されたセンサ26に障害物Pを検出させ、障害物Pの検出結果から障害物Pの位置を特定する。本開示に係る移動体10は、障害物Pの基準位置と移動体10の位置関係から、その障害物Pの検出に使用するセンサ26を選択する。従って、本開示によると、検出に適したセンサ26を用いて、障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0083】
選択情報は、センサ26から照射される光の障害物Pへの入射角θに基づき、設定される。入射角θは、障害物Pの基準位置と移動体10の位置との関係に基づき算出される。本開示によると、入射角θに基づいてセンサ26を選択するため、計測精度の低下を抑制して、障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0084】
選択情報においては、複数のセンサ26のうち、入射角θが最も大きいセンサ26が、使用するセンサ26とされる.本開示によると、入射角θが最大のセンサ26を選択するため、計測精度の低下を抑制して、障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0085】
選択情報取得部74は、選択情報として、基準位置が移動体10から所定距離LX1以上離れた障害物Pを検出するためのセンサ26を示す情報を取得する。また、検出制御部76は、選択情報で示されたセンサ26に、基準位置が移動体10から所定距離LX1以上離れた障害物Pを検出させる。移動体10から所定距離LX1以上離れるような遠方の障害物Pを検出する際には、センサ26の位置に応じた検出精度の低下が顕著となる。それに対し、本開示においては、障害物Pの基準位置と移動体10の位置関係から使用するセンサ26を選択するため、遠方の障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0086】
選択情報取得部74は、選択情報として、基準位置が軌道Rの側方であってかつ軌道Rから所定の距離範囲内にある障害物Pを検出するためのセンサ26を示す情報を取得する。また、検出制御部76は、選択情報で示されたセンサ26に、基準位置が軌道Rの側方であってかつ軌道Rから所定の距離範囲内にある障害物Pを検出させる。移動体10の軌道Rの側方であって軌道Rの近傍に障害物Pがある狭隘路NRを通るケースでは、障害物Pと干渉してしまうおそれがより顕著となったり、センサ26の位置に応じた検出精度の低下が顕著となったりする。それに対して、本開示においては、障害物Pの基準位置と移動体10の位置関係から使用するセンサ26を選択するため、狭隘路NRの側方にある障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0087】
選択情報取得部74は、選択情報として、基準位置が軌道Rの一方の側方(X1方向側)にある障害物P1を検出するためのセンサ26Bを示す第1選択情報と、基準位置が軌道Rの他方の側方(X2方向側)にある障害物P2を検出するためのセンサ26Aを示す第2選択情報と、を取得する。検出制御部76は、第1選択情報で示されたセンサ26Bに、基準位置が軌道Rの一方の側方にある障害物P1を検出させ、第2選択情報で示されたセンサ26Aに、基準位置が軌道Rの他方の側方にある障害物P2を検出させる。本開示においては、狭隘路NRの両側方に障害物Pがある場合でも、障害物Pの基準位置と移動体10の位置関係から使用するセンサ26を選択するため、障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0088】
検出制御部76は、センサ26の検出により取得した点群M0に基づき、障害物Pの軌道Rに面している側の表面PAの位置を特定する。本開示においては、点群M0を用いることで、障害物Pの表面PAを適切に特定できる。
【0089】
検出制御部76は、センサ26に障害物Pの検出を複数回実行させ、複数回の検出により取得された点群M0を重ね合わせて、障害物Pの軌道Rに面している側の表面PAの位置を特定する。本開示においては、それぞれの検出で取得された点群M0を重ね合わせることで、障害物Pの表面PAの算出精度を向上できる。
【0090】
移動体10は、移動体10が移動する軌道Rの情報を取得する移動情報取得部70と、軌道Rに沿って移動体10を移動させる移動制御部72とをさらに含む。移動情報取得部70は、検出制御部76が特定した障害物Pの位置に基づき、軌道Rに沿って移動体10を移動させた際に障害物Pに干渉するかを判断する。本開示においては、特定した障害物Pの位置により、移動体10と干渉するかを判断するため、移動体10との干渉を高精度に判定して、移動体10との衝突を適切に抑制できる。
【0091】
移動情報取得部70は、障害物Pに干渉すると判断した場合であって、障害物Pに干渉しない別の軌道Rの設定が可能である場合には、障害物Pに干渉しない軌道Rの情報を取得する。そして、移動制御部72は、障害物Pに干渉しない軌道Rに沿って移動体10を移動させる。本開示によると、特定した障害物Pの位置に基づき、障害物Pに干渉しない軌道Rを生成するため、移動体10との衝突を適切に抑制できる。
【0092】
移動制御部72は、障害物Pに干渉すると判断された場合であって、障害物Pに干渉しない別の軌道Rの設定が不可能である場合には、移動体10を停止させる。本開示によると、別の軌道Rが設定できない場合には停止するため、移動体10との衝突を適切に抑制できる。
【0093】
本開示に係る移動制御システム1は、移動体10と、移動体10との情報の送受信を行う情報処理装置14とを含む。本開示に係る移動制御システム1は、障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0094】
移動体10は、情報処理装置14から、障害物Pの基準位置の情報を取得する。また、情報処理装置14は、移動体10の検出制御部76が特定した障害物Pの位置を、障害物Pの基準位置とすることで、障害物Pの基準位置を更新する。これにより、障害物Pの基準位置と、実際の障害物Pの位置との誤差を適切に低減できる。
【0095】
情報処理装置14は、移動体10の検出制御部76によって特定された障害物Pの位置の精度の信頼度が所定の閾値以上となる障害物Pの位置を用いて、障害物Pの基準位置を更新する。これにより、障害物Pの基準位置と、実際の障害物Pの位置との誤差を、より適切に低減できる。
【0096】
情報処理装置14は、予め設定された軌道Rに沿って移動体10が移動した場合に障害物Pに干渉し、かつ、障害物Pに干渉しない別の軌道Rの設定が不可能である場合には、その障害物Pを移動させる旨の指令を、移動体10又は他の移動体に出力する。これにより、指令を受信した移動体が干渉の原因となった障害物Pを移動させるため、移動体10は、干渉することなく目標物P0に向けて移動することが可能となる。
【0097】
本開示の制御方法は、周囲の障害物Pを検出可能な複数のセンサ26を有し自動で移動する移動体10の制御方法であって、障害物Pの基準位置と移動体10の位置との関係に基づき設定された、障害物Pの検出のために使用するセンサ26を示す選択情報を取得するステップと、選択情報で示されたセンサ26に障害物Pを検出させ、障害物Pの検出結果から障害物Pの位置を特定するステップと、を含む。本制御方法によると、障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0098】
本開示のプログラムは、周囲の障害物Pを検出可能な複数のセンサ26を有し自動で移動する移動体10の制御方法をコンピュータに実行させるプログラムである。本プログラムは、障害物Pの基準位置と移動体10の位置との関係に基づき設定された、障害物Pの検出のために使用するセンサ26を示す選択情報を取得するステップと、選択情報で示されたセンサ26に障害物Pを検出させ、障害物Pの検出結果から障害物Pの位置を特定するステップとを、コンピュータに実行させる。本プログラムによると、障害物Pを適切に検出することが可能となる。
【0099】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態の内容により実施形態が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0100】
10 移動体
26 センサ
70 移動情報取得部
72 移動制御部
74 選択情報取得部
76 検出制御部
NR 狭隘路
P0 目標物
P 障害物
R 軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11