(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124873
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】空調用レジスタ
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20220819BHJP
F24F 13/15 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B60H1/34 611B
F24F13/15 B
F24F13/15 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022764
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595115581
【氏名又は名称】株式会社浜名プラスチック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大竹 正起
(72)【発明者】
【氏名】三井 靖之
(72)【発明者】
【氏名】外山 真
(72)【発明者】
【氏名】菅 幹善
【テーマコード(参考)】
3L081
3L211
【Fターム(参考)】
3L081AA02
3L081FA04
3L081FB01
3L081FC01
3L081FC02
3L081HB02
3L211BA14
3L211DA14
3L211DA95
(57)【要約】
【課題】軸受孔部内でのフィン軸のがたつきを抑制する。
【解決手段】リテーナ16は、対向する2つの壁部27を備える。各壁部27は、両壁部27の対向方向に延びる支持孔24を有する。上流フィン61は、板状の上流フィン本体65と、上流フィン本体65から上記対向方向両側へ突出する2つの上流フィン軸66とを備える。支持孔24は、円形の断面形状を有する孔部24bを軸受孔部として備える。上流フィン軸66が孔部24bに挿通されることで、上流フィン61が壁部27に傾動可能に支持される。上流フィン軸66は、孔部24bから露出する露出部66dを有し、露出部66dは、突起部66eからなるアンカーを有する。突起部66eは、露出部66dの周方向における複数箇所に形成され、かつ上流フィン軸66の径方向外方へ突出する。上流フィン軸66の軸線L1から突起部66eの外面までの距離D1は、孔部24bの半径R1よりも大きい。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気の通風路を有するリテーナと、前記通風路に配置され、かつ前記空調用空気の流れ状態を調整するフィンとを備え、
前記リテーナは、前記空調用空気の流れ方向に交差する方向に互いに対向した状態で配置された2つの壁部を備え、
各壁部は、両壁部の対向方向に延びる支持孔を有し、
前記フィンは、板状のフィン本体と、前記フィン本体から前記対向方向における両側へ突出する2つのフィン軸とを備え、
前記支持孔は、円形の断面形状を有し、かつ前記フィン軸を支持する軸受孔部を備え、
前記フィン軸が前記軸受孔部に挿通されることにより、前記フィンが前記壁部に傾動可能に支持された空調用レジスタにおいて、
前記フィンにおける少なくとも一方の前記フィン軸は、前記軸受孔部から露出する露出部を有し、前記露出部はアンカーを有し、前記アンカーは、前記露出部の周方向における複数箇所に形成され、かつ前記フィン軸の径方向外方へ突出する突起部からなり、前記フィン軸の軸線から各突起部の外面までの距離が、前記軸受孔部の半径よりも大きく設定されている空調用レジスタ。
【請求項2】
前記複数の突起部は、前記露出部の周方向に等角度毎に配置されている請求項1に記載の空調用レジスタ。
【請求項3】
前記アンカーは2つの突起部からなり、
2つの前記突起部は、前記軸線に対し線対称となる位置に配置されている請求項2に記載の空調用レジスタ。
【請求項4】
前記フィンは、下流フィンと、前記流れ方向における前記下流フィンよりも上流に配列された複数の上流フィンとを備え、
前記下流フィンは、前記フィン本体として下流フィン本体を有し、かつ前記フィン軸として下流フィン軸を有し、各上流フィンは、前記フィン本体として上流フィン本体を有し、かつ前記フィン軸として上流フィン軸を有し、
各上流フィンは、前記上流フィン軸を支点として、前記通風路を開放する開位置と閉鎖する閉位置との間で傾動し、
前記下流フィン本体には、前記下流フィン軸の延びる方向へ操作ノブがスライド可能に装着され、
前記操作ノブと全ての前記上流フィンとの間には、前記操作ノブのスライドに連動して各上流フィンを傾動させる駆動機構が設けられ、
前記駆動機構は、前記上流フィン毎の前記上流フィン軸から前記流れ方向へ離れた箇所において、前記上流フィン軸に平行に延びるように前記上流フィン本体に設けられた連結軸と、全ての前記連結軸に連結され、かつ前記操作ノブのスライドが伝達機構を介して伝達されることにより前記上流フィンの配列方向に移動するロッドとを備える請求項1~3のいずれか1項に記載の空調用レジスタ。
【請求項5】
前記伝達機構は、前記操作ノブから前記流れ方向における上流へ突出する板状の第1リブと、前記ロッドから前記流れ方向における下流へ突出する板状の第2リブとを備え、前記第1リブ及び前記第2リブの一方は、互いに平行な状態で前記流れ方向に延びて、他方を前記配列方向における両側から挟み込んでいる請求項4に記載の空調用レジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置から送られてきて室内に吹出す空調用空気の向きを変更等する空調用レジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のインストルメントパネルには、空調装置から送られてきた空調用空気を車室内に吹出す空調用レジスタが組込まれている。空調用レジスタは、リテーナ及びフィンを備える。リテーナは空調用空気の通風路を有する。リテーナは、空調用空気の流れ方向に交差する方向に互いに対向した状態で配置された2つの壁部を備える。各壁部は、両壁部の対向方向に延びる支持孔を有する。上記対向方向における支持孔の少なくとも一部は、円形の断面形状を有する軸受孔部によって構成される。
【0003】
フィンは、板状のフィン本体と、2つのフィン軸とを備え、通風路に配置される。両フィン軸は、フィン本体から上記対向方向における両側へ突出する。各フィン軸が軸受孔部に挿通されることにより、フィンが両壁部に傾動可能に支持される。そして、フィンの上記傾動により、空調用空気の流れ方向等、空調用空気の流れ状態が調整される。
【0004】
さらに、上記空調用レジスタの一態様として、フィンの少なくとも一方のフィン軸が、軸受孔部から露出する露出部を有するものがある。露出部は、フィン軸が軸受孔部から抜け出すのを規制するためのアンカーを有している。アンカーは、露出部の全周にわたって形成され、かつフィン軸の径方向外方へ突出する円環状の突起部からなる。フィン軸の軸線から突起部の外面までの距離は、軸受孔部の半径よりも大きく設定されている。この突起部が、壁部のうち軸受孔部の周辺部分に接触することで、フィン軸の軸受孔部からの抜け出しが規制される。
【0005】
なお、フィン軸が壁部の軸受孔部に挿通されることで、フィンが同壁部に傾動可能に支持される構造は、例えば、特許文献1に記載されている。また、特許文献1における
図4、
図7等では、環状の突起部からなるアンカーに相当する部分が、フィン軸(特許文献1では、「下回動支持軸23」と記載)に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記特許文献1を含め、従来の空調用レジスタでは、フィン軸の軸受孔部への挿通に際し、アンカーが軸受孔部を通過するときに、同軸受孔部がアンカーによって押し拡げられる。軸受孔部の半径は、突起部の上記距離よりも一旦大きくなる。アンカーが軸受孔部を通過した後に、壁部の弾性復元力によって軸受孔部は小さくなる。軸受孔部の半径は、突起部の上記距離よりも小さくなる。そのため、アンカーが抜け止め機能を発揮する。
【0008】
しかし、軸受孔部は小さくなるとはいえ、フィン軸が挿通される前の大きさまでは小さくならない。フィン軸と軸受孔部の内壁面との隙間が、フィン軸が挿通される前の隙間よりも大きくなる。そして、この大きくなった隙間が原因で、軸受孔部内でフィン軸ががたつき、異音が発生するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する空調用レジスタは、空調用空気の通風路を有するリテーナと、前記通風路に配置され、かつ前記空調用空気の流れ状態を調整するフィンとを備え、前記リテーナは、前記空調用空気の流れ方向に交差する方向に互いに対向した状態で配置された2つの壁部を備え、各壁部は、両壁部の対向方向に延びる支持孔を有し、前記フィンは、板状のフィン本体と、前記フィン本体から前記対向方向における両側へ突出する2つのフィン軸とを備え、前記支持孔は、円形の断面形状を有し、かつ前記フィン軸を支持する軸受孔部を備え、前記フィン軸が前記軸受孔部に挿通されることにより、前記フィンが前記壁部に傾動可能に支持された空調用レジスタにおいて、前記フィンにおける少なくとも一方の前記フィン軸は、前記軸受孔部から露出する露出部を有し、前記露出部はアンカーを有し、前記アンカーは、前記露出部の周方向における複数箇所に形成され、かつ前記フィン軸の径方向外方へ突出する突起部からなり、前記フィン軸の軸線から各突起部の外面までの距離が、前記軸受孔部の半径よりも大きく設定されている。
【0010】
上記の構成によれば、フィンを壁部に支持するために、アンカー付きフィン軸が支持孔の軸受孔部に挿通される。この挿通に際し、アンカーが軸受孔部を通過するときに、同軸受孔部が突起部によって押し拡げられる。突起部は、フィン軸の周方向における複数箇所に形成されている。隣り合う突起部は、上記周方向に互いに離間している。そのため、軸受孔部のうち、周方向において突起部に対応する箇所とその周辺箇所とが、同突起部によって押し拡げられる。軸受孔部のうち、押し拡げられた箇所の半径は、突起部の上記距離よりも一旦大きくなる。軸受孔部のうち、突起部から上記周方向へ離れた箇所は、押し拡げられない、又は押し拡げられにくい。従って、軸受孔部において、押し拡げられる箇所は、突起部が露出部の全周にわたって形成された場合よりも少なくなる。
【0011】
上記のように押し拡げられた軸受孔部は、突起部が同軸受孔部を通過した後に、壁部の弾性復元力によって小さくなる。軸受孔部のうち、突起部によって押し拡げられた箇所では、半径が上記距離よりも小さくなる。そのため、アンカーが抜け止め機能を発揮する。軸受孔部のうち、押し拡げられた箇所では、同軸受孔部の内壁面とフィン軸との隙間が、フィン軸が軸受孔部に挿通される前の隙間よりも大きくなる。但し、このように拡大された隙間は、露出部の周方向における一部のみである。隙間は、突起部が露出部の全周にわたって形成された場合に比較して、上記周方向に短い。
【0012】
また、軸受孔部のうち、押し拡げられていない箇所の半径は、フィン軸の軸受孔部への挿通前後で変化しない、又はほとんど変化しない。従って、軸受孔部の内壁面とフィン軸との隙間は、フィン軸が軸受孔部に挿通される前の隙間と同じ、又は略同じになる。
【0013】
その結果、突起部が露出部の全周に設けられた場合よりも、フィン軸が軸受孔部内でがたつきにくくなり、がたつきに起因する異音の発生が抑制される。
上記空調用レジスタにおいて、前記複数の突起部は、前記露出部の周方向に等角度毎に配置されていることが好ましい。
【0014】
複数の突起部が、上記の条件を満たす箇所に形成されることで、アンカー付きフィン軸が軸受孔部に挿通された場合、軸受孔部のうち、上記周方向に等角度毎に離れた箇所が、突起部によって押し拡げられる。軸受孔部が周方向にバランスよく変形される。これに伴い、上記周方向に等角度毎に離れた箇所で、軸受孔部の内壁面とフィン軸との隙間が大きくなる。従って、隙間が周方向に等角度毎でない箇所で大きくなるものに比べ、異音発生のリスクが低くなる。
【0015】
上記空調用レジスタにおいて、前記アンカーは2つの突起部からなり、2つの前記突起部は、前記軸線に対し線対称となる位置に配置されていることが好ましい。
突起部の数が多くなるに従い、フィン軸が軸受孔部に挿通される場合に、軸受孔部において突起部によって押し拡げられる箇所が多くなる。
【0016】
また、軸受孔部の内壁面とフィン軸との隙間を小さくしつつ、フィン軸の軸受孔部からの抜け出しを規制することのできる突起部の最小数は2である。突起部が2つの場合、これらの突起部が、フィン軸の軸線に対し線対称となる位置に配置されると、両突起部はフィン軸の周方向に対し等角度毎に配置される。フィン軸が軸受孔部に挿通されると、軸受孔部において突起部に対応する箇所、すなわち、軸線を挟んで相対向する箇所が突起部によって押し拡げられる。軸受孔部が周方向にバランスよく変形される。
【0017】
従って、上記の構成によるように、アンカーが2つの突起部からなり、かつ両突起部がフィン軸の軸線に対し線対称となる位置に配置されると、最小数の突起部でありながら、フィン軸の抜け出しを規制しつつ、フィン軸の軸受孔部でのがたつきを抑制して異音の発生を抑制する効果が得られる。
【0018】
上記空調用レジスタにおいて、前記フィンは、下流フィンと、前記流れ方向における前記下流フィンよりも上流に配列された複数の上流フィンとを備え、前記下流フィンは、前記フィン本体として下流フィン本体を有し、かつ前記フィン軸として下流フィン軸を有し、各上流フィンは、前記フィン本体として上流フィン本体を有し、かつ前記フィン軸として上流フィン軸を有し、各上流フィンは、前記上流フィン軸を支点として、前記通風路を開放する開位置と閉鎖する閉位置との間で傾動し、前記下流フィン本体には、前記下流フィン軸の延びる方向へ操作ノブがスライド可能に装着され、前記操作ノブと全ての前記上流フィンとの間には、前記操作ノブのスライドに連動して各上流フィンを傾動させる駆動機構が設けられ、前記駆動機構は、前記上流フィン毎の前記上流フィン軸から前記流れ方向へ離れた箇所において、前記上流フィン軸に平行に延びるように前記上流フィン本体に設けられた連結軸と、全ての前記連結軸に連結され、かつ前記操作ノブのスライドが伝達機構を介して伝達されることにより前記上流フィンの配列方向に移動するロッドとを備えることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、操作ノブが下流フィン本体に沿って、下流フィン軸の延びる方向へスライドされると、そのスライドが駆動機構における伝達機構を介してロッドに伝達され、同ロッドが上流フィンの配列方向に移動する。ロッドの動きは、駆動機構における上流フィン毎の連結軸を介して全ての上流フィン本体に同時に伝達される。上流フィン毎の連結軸は、上流フィン軸に平行に延びている。そのため、各上流フィンが、互いに同期した状態で、自身の上流フィン軸を支点として、開位置と閉位置との間で、同一方向へ、同一の角度ずつ傾動される。
【0020】
開位置では、いずれの上流フィン本体も、隣の上流フィン本体から離れた状態となる。上記配列方向における両端の上流フィン本体は、リテーナの壁部から離れた状態となる。従って、開位置では、通風路が上流フィン本体によって開放される。空調用空気は、隣り合う上流フィン本体間や、上流フィンの配列方向における両端の上流フィン本体とリテーナの壁部との間を、上流フィン本体に沿って下流へ流れる。
【0021】
これに対し、閉位置では、いずれの上流フィン本体も、隣の上流フィン本体との間に隙間のない状態、又はそれに近い状態となる。上記配列方向における両端の上流フィン本体は、リテーナの壁部との間に隙間がない状態、又はそれに近い状態となる。従って、閉位置では、通風路が上流フィン本体によって閉鎖され、空調用空気は、上流フィン本体よりも下流へ流れることを遮断される。
【0022】
特に、上記の構成によれば、操作ノブの動きがロッドを介して全ての上流フィンに同時に伝達される。そのため、上流フィン間に位相遅れが発生しにくく、全ての上流フィンが同時に傾動される。全ての上流フィンが閉位置まで傾動されたときに、隣り合う上流フィン間に隙間が生じにくい。また、配列方向における両端の上流フィンとリテーナの壁部との間に隙間が生じにくい。その結果、全ての上流フィンが閉位置まで傾動された状態では、空調用空気が上流フィンよりも下流へ漏れにくい。リテーナからの空調用空気の吹き出しを遮断する性能が高められる。
【0023】
上記空調用レジスタにおいて、前記伝達機構は、前記操作ノブから前記流れ方向における上流へ突出する板状の第1リブと、前記ロッドから前記流れ方向における下流へ突出する板状の第2リブとを備え、前記第1リブ及び前記第2リブの一方は、互いに平行な状態で前記流れ方向に延びて、他方を前記配列方向における両側から挟み込んでいることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、操作ノブが下流フィン本体に沿ってスライドされると、そのスライドが伝達機構を介してロッドに伝達される。この伝達は、第1リブ及び第2リブを介して行なわれる。
【0025】
ここで、第1リブを有する操作ノブは、下流フィン軸の延びる方向へスライドする。これに対し、各上流フィンは、上流フィン軸を支点として傾動する。各上流フィンの連結軸は、上流フィン軸を中心とする円弧上を移動する。上流フィン毎の連結軸に連結されたロッドの動きは、上流フィンによって規制される。ロッドは、上流フィンの配列方向に延びる姿勢を維持しながら、上流フィン毎の上流フィン軸を支点として略配列方向へ円弧運動する。
【0026】
このように、操作ノブの上記スライドと、ロッドの上記円弧運動とにより、第1リブ及び両第2リブの上記流れ方向における位置が変化する。
しかし、第1リブ及び第2リブのうち、一方は他方を、上記配列方向における両側から挟み込んでいる。第1リブ及び第2リブは、上記流れ方向に相対移動可能である。そのため、第1リブ及び第2リブの相対位置が変化しても、操作ノブの動きを、第1リブ及び第2リブを介してロッドに伝達することが可能である。この伝達により、操作ノブのスライドに応じてロッドに上記円弧運動を行なわせ、各上流フィンを傾動させることが可能である。
【発明の効果】
【0027】
上記空調用レジスタによれば、軸受孔部内でのフィン軸のがたつきを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】上流フィンが開位置にあるときの空調用レジスタの側断面図。
【
図2】上流フィン61を通る面における空調用レジスタの平断面図。
【
図3】上流フィン63を通る面における空調用レジスタの平断面図。
【
図4】空調用レジスタの一部の構成部材を示す分解斜視図。
【
図5】同じく、空調用レジスタの一部の構成部材を示す分解斜視図。
【
図6】同じく、空調用レジスタの一部の構成部材を示す分解斜視図。
【
図12】(a)は、実施形態におけるアンカー付き上流フィン軸の断面図、(b)は比較例におけるアンカー付き上流フィン軸の断面図。
【
図14】
図1に対応する図であり、上流フィンが閉位置にあるときの空調用レジスタの部分側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、車両に組込まれて使用される空調用レジスタに具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の記載において、車両を基準に方向を規定する場合には、車両の進行方向を前方とし、後進方向を後方とする。車両の高さ方向を上下方向とする。また、車幅方向、すなわち、左右方向については、車両を後方から見た場合を基準として方向を規定するものとする。
【0030】
車室内において、車両の前席の前方には、インストルメントパネルが設けられている。インストルメントパネルの左右方向における中央部、側部等には空調用レジスタが組み込まれている。
【0031】
空調用レジスタの主な機能は、空調装置から送風ダクトを通じて送られてきて車室内に吹出す空調用空気の向きを変更すること、同空調用空気の吹出し量を調整すること等である。吹出し量の調整には、吹出しを遮断することが含まれる。
【0032】
図1~
図3に示すように、空調用レジスタ15は、リテーナ16、下流フィン、操作ノブ51、複数の上流フィン及び駆動機構71を備えている。次に、これら各部の構成について説明する。
【0033】
<リテーナ16>
リテーナ16は、空調用レジスタ15の外殻部分を構成する部分である。リテーナ16は、リテーナ本体17、複数のシム及びベゼル38を備えている。
図4に示すように、リテーナ本体17は、リテーナ16の主要部を構成する部材であり、両端が開放された筒状をなしている。リテーナ本体17は、硬質の樹脂材料によって形成されている。リテーナ本体17は、左右方向に相対向する2つの縦壁部18,19と、上下方向に相対向する2つの横壁部21,22とを備えている。
【0034】
複数のシムは、いずれも軸受としての機能を有する部材であり、左右方向に対向する状態で配置された2つの縦シム23,25と、上下方向に対向する状態で配置された2つの横シム31,32とを備えている。両縦シム23,25及び両横シム31,32は、リテーナ本体17よりも軟質の樹脂材料によって形成されている。
【0035】
図2~
図4に示すように、左側の縦シム23の上下方向に互いに離間した複数箇所には、支持孔24が形成されている。各支持孔24は、両縦シム23,25の対向方向である左右方向へ延びて、縦シム23を貫通している。右側の縦シム25の上下方向に互いに離間した複数箇所には、支持孔26が形成されている。各支持孔26は、左右方向へ延びて、縦シム25を貫通している。
【0036】
図1及び
図4に示すように、各横シム31,32の左右方向に互いに離間した複数箇所には、支持孔33が形成されている。各支持孔33は、両横シム31,32の対向方向である上下方向へ延びて、横シム31,32を貫通している。
【0037】
隣り合う縦シム23,25と横シム31,32とは連結されており、全体として四角枠状をなしている。両縦シム23,25及び両横シム31,32は、リテーナ本体17内の下流部に配置され、同リテーナ本体17に取付けられている。
【0038】
図2~
図4に示すように、左側の縦シム23は、左側の縦壁部18に隣接しており、同縦壁部18とともに、リテーナ16の左側の壁部27を構成している。右側の縦シム25は、右側の縦壁部19に隣接しており、同縦壁部19とともに、リテーナ16の右側の壁部28を構成している。
【0039】
図1及び
図4に示すように、上側の横シム31は、上側の横壁部21に隣接しており、同横壁部21とともに、リテーナ16の上側の壁部34を構成している。下側の横シム32は、下側の横壁部22に隣接しており、同横壁部22とともに、リテーナ16の下側の壁部35を構成している。
【0040】
そして、
図1~
図4に示すように、上記4つの壁部27,28,34,35によって囲まれた空間は、空調装置から送られてくる空調用空気A1の流路(以下「通風路36」という)を構成している。
【0041】
ここで、空調用空気A1の流れ方向に関し、空調装置に近い側を「上流」といい、同空調装置から遠い側を「下流」というものとする。本実施形態では通風路36の「上流」は、車両の「前」に合致し、通風路36の「下流」は、車両の「後」に合致している。
【0042】
上記両壁部27,28は、上記流れ方向に交差する方向である左右方向に互いに対向している。また、両壁部34,35は、上記流れ方向に交差する方向である上下方向に互いに対向している。
【0043】
リテーナ本体17の上流端は、空調装置から送風ダクトを介して送られてきた空調用空気A1の流入口37を構成している。
図1~
図3に示すように、ベゼル38は、リテーナ16の下流端部を構成する部材である。ベゼル38は、空調用空気A1の吹出口39を自身の下流端に有している。ベゼル38の下流端面であって、吹出口39の周りの部分は、空調用レジスタ15の意匠面を構成している。
【0044】
<下流フィン>
図1~
図3及び
図6に示すように、本実施形態では、下流フィンとして、2つの下流フィン41,42が用いられている。両下流フィン41,42は、通風路36であって吹出口39の上流付近において、左右方向へ互いに離間した状態で配列されている。一方の下流フィン41は、左右の両壁部27,28間の中央部付近に配置されている。他方の下流フィン42は、左側の壁部27に接近した箇所に配置されている。
【0045】
各下流フィン41,42は、下流フィン本体43と、2つの下流フィン軸44,45と、1つの下流連結ピン46とを備えている。下流フィン41,42を構成する上記各部は、いずれも上側ほど上流に位置するように、鉛直線VL(
図1参照)に対し傾斜する方向へ延びている。
【0046】
そのため、空調用レジスタ15の各部について説明する際、下流フィン本体43、両下流フィン軸44,45及び下流連結ピン46が延びる方向を基準とし、上下方向を規定するものとする。従って、空調用レジスタ15の上下方向と車両の上下方向(鉛直方向)とは異なることとなる。
【0047】
なお、図面における「上」及び「下」は、車両の上下方向における「上」及び「下」を示している。また、空調用レジスタ15の左右方向及び前後方向については、車両の幅方向及び前後方向と合致している。
【0048】
下流フィン41,42毎の下流フィン本体43は、空調用レジスタ15の上記上下方向における寸法が空調用空気A1の流れ方向の寸法よりも大きな縦長の板状をなしている。下流フィン41,42毎の上側の下流フィン軸44は、下流フィン本体43の下流端から空調用レジスタ15の上方へ延び、上側の横シム31の支持孔33に挿通されている。下流フィン41,42毎の下側の下流フィン軸45は、下流フィン本体43の下流端から空調用レジスタ15の下方へ延び、下側の横シム32の支持孔33に挿通されている。各下流フィン41,42は、両下流フィン軸44,45により、両横シム31,32に対し、左右方向へ傾動可能に支持されている。
【0049】
下流フィン41,42毎の下流連結ピン46は、下流フィン本体43において、下流フィン軸44から上流へ離れた箇所に設けられている。下流フィン41,42毎の下流連結ピン46は、左右方向へ延びる下流連結ロッド47によって相互に連結されている。
【0050】
下流フィン41の下流フィン本体43の上下方向における中間部分には、下流側から荷重出し用のシム48が装着されている(
図1、
図6参照)。
<操作ノブ51>
図1、
図3及び
図6に示すように、操作ノブ51は、吹出口39から吹出される空調用空気A1の向きを変更する際、及び吹出口39からの空調用空気A1の吹き出しを遮断する際に乗員によって操作される部材である。操作ノブ51は、ノブ本体52、下流カバー53及び上流カバー54を備えている。ノブ本体52は、操作ノブ51の主要部を構成する部材であり、下流フィン41の下流フィン本体43に対し、空調用レジスタ15の上記上下方向へスライド可能に装着されている。下流カバー53は、ノブ本体52に対し下流から装着されている。上流カバー54は、ノブ本体52に対し上流から装着されている。
【0051】
操作ノブ51は、下流フィン41と一緒に、下流フィン軸44,45を支点として傾動可能であり、また、下流フィン41の下流フィン本体43上をスライドすることで、空調用レジスタ15の上記上下方向へ変位可能である。下流フィン41の下流フィン本体43に装着された上記シム48は、ノブ本体52に対し弾性的に接触している(
図1参照)。この接触により、操作ノブ51がスライドされたときにシム48とノブ本体52との間に摺動抵抗が発生し、操作ノブ51に適度な荷重が付与される。
【0052】
<複数の上流フィン>
図1~
図3及び
図5に示すように、複数の上流フィンは、通風路36の下流フィン41,42よりも上流へ離れた箇所に配置されている。複数の上流フィンは、空調用レジスタ15の上記上下方向に配列されている。複数の上流フィンは、4種類の上流フィン61,62,63,64からなる。上流フィン61は、複数の上流フィン61~64のうち、最も上方に位置する上流フィンであり、上流フィン62は、最も下方に位置する上流フィンである。上流フィン63は、複数の上流フィン61~64のうち、空調用レジスタ15の上記上下方向における中間に位置し、かつ後述する切欠き75が形成された上流フィンである。上流フィン64は、複数の上流フィン61~64のうち、上記上下方向における中間に位置し、かつ上記上流フィン63を除く上流フィンである。
【0053】
各上流フィン61~64は、上流フィン本体65と、2つの上流フィン軸66,67とを備えている。上流フィン61~64毎の上流フィン本体65は、左右方向の寸法が上記流れ方向の寸法よりも若干大きな板状をなしている。上流フィン61~64毎の左側の上流フィン軸66は、上流フィン本体65から左方へ延び、左側の縦シム23の支持孔24に挿通されている。上流フィン61~64毎の右側の上流フィン軸67は、上流フィン本体65から右方へ延び、右側の縦シム25の支持孔26に挿通されている。各上流フィン61~64は、両上流フィン軸66,67により、壁部27,28における両縦シム23,25に対し、上下方向へ傾動可能に支持されている。
【0054】
各上流フィン61~64の上記傾動は、開位置と閉位置との間で行なわれる。開位置では、
図1に示すように、全ての上流フィン61~64における上流フィン本体65が、通風路36の中心を通る線(中心軸線CL)に対し平行な状態又は平行に近い状態になる。開位置では上流フィン61~64のうち、隣り合うものの上流フィン本体65が、空調用レジスタ15の上記上下方向へ互いに離間する。上流フィン61の上流フィン本体65が壁部34の横壁部21から離間する。上流フィン62の上流フィン本体65が壁部35の横壁部22から離間する。
【0055】
閉位置では、
図14に示すように、全ての上流フィン本体65が、上記中心軸線CLに対し同一の傾斜状態となる。隣り合う上流フィン本体65の一部同士が重なり合う。上流フィン61の上流フィン本体65が横壁部21に接触し、上流フィン62の上流フィン本体65が横壁部22に接触した状態となる。
【0056】
<駆動機構71>
図1及び
図5及び
図13に示すように、駆動機構71は、操作ノブ51のスライドに連動して各上流フィン61~64を傾動させるための機構である。駆動機構71は、上流フィン61~64毎に設けられた連結軸72、ロッド81及び伝達機構85を備えている。
【0057】
上流フィン61~64毎の連結軸72は、次の条件を満たす箇所に設けられている。
・上流フィン61~64毎の上流フィン軸66,67から空調用空気A1の流れ方向へ離れた箇所であること。
【0058】
・各上流フィン本体65から、互いに同上流フィン本体65の厚み方向である、空調用レジスタ15の上記上下方向における同一方向に離れた箇所であること。
上記条件を満たす箇所として、本実施形態では、上流フィン本体65の上流フィン軸66,67よりも下流であって、同上流フィン本体65よりも上方の箇所が設定されている。
【0059】
各連結軸72は、左右方向へ延びており、上流フィン本体65に繋がっている。より詳しくは、各上流フィン61~64は、互いに左右方向に離間した状態で、上流フィン本体65から上方へ突出する2つの支持突部73を有している。上流フィン61~64毎の連結軸72は、両支持突部73の上部間に架け渡されている。
【0060】
上流フィン61,64には、切欠き74が形成されている。各切欠き74は、上流フィン61,64の上流フィン本体65の下流端から上流へ延びている。各切欠き74の一部は、両支持突部73間であって連結軸72の下方に位置している。
【0061】
また、上流フィン63には、切欠き74,75が形成されている。切欠き75は、上流フィン63の上流フィン本体65の下流端から上流へ延びている。切欠き75は、後述する第2リブ87及び連結板部88が通過し得る大きさに形成されている(
図3参照)。上流フィン63における切欠き74は、上記上流フィン61,64の切欠き74に対応する切欠きであり、上記切欠き75からさらに上流へ延びている。切欠き74の一部もまた両支持突部73間であって、連結軸72の下方に位置している。
【0062】
ロッド81は、空調用レジスタ15の上記上下方向に延びる板状のロッド本体82を備えている。ロッド本体82の上流部であって、上記上下方向に互いに離間した複数箇所には、軸支持部83が形成されている。各軸支持部83は、ロッド本体82の上流端面から下流側へ凹む凹部によって構成されており、円弧状の内壁面を有している。
【0063】
そして、各軸支持部83に対し、上流フィン61~64毎の連結軸72が係合されることにより、ロッド81が全ての連結軸72に連結されている。なお、軸支持部83が、ロッド本体82の上流端面から下流へ離れた箇所に設けられた孔によって構成され、連結軸72が軸支持部83に挿入されてもよい。そして、ロッド81が連結軸72に連結された状態では、ロッド本体82の上流部の一部が、切欠き74,75内に挿入されている。
【0064】
図3、
図6及び
図13に示すように、伝達機構85は、操作ノブ51のスライドをロッド81に伝達して、同ロッド81を、空調用レジスタ15の上記上下方向に移動させるための機構である。伝達機構85は、1つの第1リブ86と、2つの第2リブ87とを備えている。第1リブ86は、上流カバー54から上流へ突出している。第1リブ86は、上下方向よりも左右方向に寸法の大きな板状をなしている。第1リブ86の上流端面は、上流へ膨らむように湾曲している。
【0065】
各第2リブ87は、ロッド本体82の下流部から左右両方向へ延びている。各第2リブ87は、左右方向における寸法が上下方向における寸法よりも大きく、かつ上流へ膨らむように湾曲した板状をなしている。両第2リブ87は、互いに上下方向に平行に離間している。両第2リブ87の各上流端部は、ロッド本体82の下流部から左右両方向へ延び、かつ、上流へ膨らむように湾曲した連結板部88によって連結されている。両第2リブ87は、第1リブ86を上下両側から挟み込んでいる。両第2リブ87が、左右方向に延びる板状をなしていることから、操作ノブ51が左右方向のいずれの箇所にあるときにも、両第2リブ87は、第1リブ86を挟み込んだ状態を維持する。
【0066】
また、第1リブ86及び両第2リブ87のそれぞれの上記流れ方向における寸法は、ロッド81が上下方向におけるどの箇所に位置するときにも、上記流れ方向にラップする寸法に設定されている。
【0067】
第1リブ86は、下流フィン41の下流フィン軸44,45を中心とする円弧に沿って左右方向へ延びる突状部86aを、自身の上面及び下面にそれぞれ有している。上側の突状部86aは、上側の第2リブ87の下面に対する第1リブ86の接触箇所とされている。そのため、第1リブ86の上面の全体が上側の第2リブ87の下面に接触する場合よりも、第1リブ86と上側の第2リブ87との接触面積が小さい。また、下側の突状部86aは、下側の第2リブ87の上面に対する第1リブ86の接触箇所とされている。そのため、第1リブ86の下面の全体が下側の第2リブ87の上面に接触する場合よりも、第1リブ86と下側の第2リブ87との接触面積が小さい。
【0068】
ここで、
図2及び
図3に示すように、上流フィン61~64毎の左側の上流フィン軸66が挿通される支持孔24は、互いに同一の構造を有している。各支持孔24は、
図10に示すように、左右方向に隣り合うように並べられた3つの孔部24a,24b,24cからなる。これらの孔部24a,24b,24cは、いずれも円形の断面形状を有している。また、3つの孔部24a,24b,24cの軸線L1は共通している。中央部の孔部24bの半径R1は、両側の孔部24a,24cの半径よりも小さく設定されている。この中央部の孔部24bによって、左側の上流フィン軸66を支持する軸受孔部が構成されている。
【0069】
図2及び
図3に示すように、上流フィン61~64毎の右側の上流フィン軸67が挿通される支持孔26は、互いに同一の構造を有している。各支持孔26は、
図9及び
図11に示すように、左右方向に隣り合うように並べられた2つの孔部26a,26bからなる。これらの孔部26a,26bは、いずれも円形の断面形状を有している。また、2つの孔部26a,26bの軸線L2は共通している。各支持孔26において、左側の孔部26bの半径R2は、右側の孔部26aの半径よりも小さく設定されている。この左側の孔部26bによって、上流フィン軸67を支持する軸受孔部が構成されている。
【0070】
図7、
図10及び
図12(a)に示すように、上流フィン61~64毎の左側の上流フィン軸66は、互いに同一の構造を有している。各上流フィン軸66の大部分は、軸本体部66aによって構成されている。軸本体部66aは、孔部24b(軸受孔部)よりも僅かに小径の円柱状をなしている。左右方向における軸本体部66aの中間部分、より詳しくは、中央部よりも上流フィン本体65に近い箇所には、同軸本体部66aの全周にわたって拡径部66bが形成されている。拡径部66bの半径は、孔部24bの半径R1よりも大きく、かつ右側の孔部24cの半径よりも小さい。そして、拡径部66bの大部分が右側の孔部24cに挿通され、軸本体部66aの拡径部66bとの境界部分が孔部24bに挿通されている。右側の孔部24cと孔部24bとの間の段差部24d(
図10参照)は、拡径部66bに接触することで、上流フィン61~64の左方への動きを規制する機能を有している。
【0071】
上流フィン軸66毎の軸本体部66aの一部は、孔部24bよりも左方に位置している。軸本体部66aの該当する部分を、同孔部24bに支持された部分と区別するために、「露出部66d」というものとする。露出部66dの一部は、左側の孔部24a内に位置している。露出部66dは、複数の突起部66eからなるアンカーを有している。複数の突起部66eは、孔部24bよりも左方(左側の孔部24aを含む)に位置している。複数の突起部66eは、露出部66dの周方向に互いに離間した箇所に形成されている。各突起部66eは、軸本体部66aの径方向外方へ突出している。上流フィン軸66の軸線L1から各突起部66eの外面までの距離D1は、孔部24bの半径R1よりも大きく設定されている。複数の突起部66eは、露出部66dの周方向に等角度毎に配置されている。本実施形態では、アンカーは2つの突起部66eからなる。2つの突起部66eは、上記軸線L1に対し線対称となる位置に配置されている(
図12(a)参照)。
【0072】
図8、
図9及び
図11に示すように、上流フィン61~64における右側の上流フィン軸67は、上流フィン61,62とそれ以外の上流フィン63,64とで異なる構造を有している(
図5参照)。
【0073】
図8及び
図11に示すように、上流フィン61,62では、右側の上流フィン軸67の大部分は、軸本体部67aによって構成されている。軸本体部67aは、孔部26b(軸受孔部)よりも僅かに小径の円柱状をなしている。そして、軸本体部67aが孔部26bに挿通されている。
【0074】
軸本体部67aの一部は、孔部26bよりも右方に位置している。軸本体部67aの該当する部分を、同孔部26bに支持された部分と区別するために、「露出部67d」というものとする。露出部67dの一部は、孔部26a内に位置している。露出部67dは、複数の突起部67eからなるアンカーを有している。複数の突起部67eは、孔部26bよりも右方(右側の孔部26aを含む)に位置している。上流フィン61,62毎の複数の突起部67eは、露出部67dの周方向に互いに離間した箇所に形成されている。各突起部67eは、軸本体部67aから径方向外方へ突出している。上流フィン軸67の軸線L2から各突起部67eの外面までの距離D2は、孔部26bの半径R2よりも大きく設定されている。複数の突起部67eは、露出部67dの周方向に等角度毎に配置されている。本実施形態では、アンカーは2つの突起部67eからなる。2つの突起部67eは、上記軸線L2に対し線対称となる位置に配置されている。
【0075】
図9に示すように、上流フィン63,64では、右側の上流フィン軸67が軸本体部67aによって構成されている。軸本体部67aは、孔部26b(軸受孔部)よりも僅かに小径の円柱状をなしている。そして、軸本体部67aが孔部26bに挿通されている。軸本体部67aの一部は、孔部26bよりも右方に位置している。軸本体部67aの該当する部分を、同孔部26bに支持された部分と区別するために、「露出部67d」というものとする。露出部67dの一部は、孔部26a内に位置している。ただし、露出部67dは、上述した上流フィン61,62とは異なり、アンカーを有していない。
【0076】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
最初に、空調用レジスタ15の製造工程のうち、複数の上流フィン61~64を左側の縦シム23に傾動可能に支持する工程における作用及び効果について説明する。
【0077】
この工程では、上流フィン61~64毎の左側の上流フィン軸66が、左側の縦シム23の支持孔24に挿通される。
この挿通に際し、
図7、
図10及び
図12(a)に示すように、アンカーが孔部24b(軸受孔部)を通過するときに、同孔部24bが突起部66eによって押し拡げられる。突起部66eは、露出部66dの周方向における複数箇所に形成されている。隣り合う突起部66eは、露出部66dの周方向に互いに離間している。そのため、孔部24bのうち、周方向において突起部66eに対応する箇所とその周辺箇所とが、同突起部66eによって押し拡げられる。孔部24bのうち、押し拡げられた箇所では、半径R1が上記距離D1よりも一旦大きくなる。孔部24bのうち、突起部66eから周方向へ離れた箇所は、押し拡げられない、又は押し拡げられにくい。従って、孔部24bにおいて、押し拡げられる箇所は、
図12(b)に示すように、突起部66eが露出部66dの全周にわたって形成されている場合(以下「比較例」という)よりも少ない。
【0078】
上記のように突起部66eによって押し拡げられた孔部24bは、突起部66eが孔部24bを通過すると、縦シム23の弾性復元力によって小さくなる。孔部24bの半径R1は、突起部66eによって押し拡げられた箇所では、上記距離D1よりも小さくなる。そのため、アンカーが抜け止め機能を発揮する。孔部24bのうち、突起部66eによって押し拡げられた箇所では、同孔部24bの内壁面と軸本体部66aとの隙間が、上流フィン軸66が支持孔24に挿通される前の隙間よりも大きくなる。但し、このように拡大された隙間は、露出部66dの周方向における一部のみであり、上記比較例に比べて、上記周方向に短い。
【0079】
また、孔部24bのうち、突起部66eによって押し拡げられていない箇所の半径R1は、上流フィン軸66の孔部24bへの挿通の前後で変化しない、又はほとんど変化しない。従って、孔部24bの内壁面と軸本体部66aとの隙間は、上流フィン軸66が支持孔24に挿通される前の隙間と同じ、又は略同じになる。
【0080】
アンカー(突起部66e)が孔部24bを通過すると、その通過のタイミングと略同じタイミングで、拡径部66bが段差部24dに接触し、上流フィン軸66がそれ以上支持孔24に挿通されることが規制される。表現を変えると、拡径部66bの段差部24dとの接触により、上流フィン軸66、ひいては上流フィン61~64の縦シム23に対する左右方向の位置決めがなされる。
【0081】
このように、上流フィン61~64毎の上流フィン軸66を、対応する支持孔24に挿通することで、上流フィン軸66の左右方向の位置決めと、抜け止めとを行ないつつ、上流フィン61~64を左側の縦シム23に傾動可能に支持することができる。
【0082】
上記の状態では、孔部24bの内壁面と軸本体部66aとの隙間が拡大した箇所は、上記比較例よりも、上流フィン軸66の周方向に短くなる。これに伴い、上流フィン軸66が孔部24b内でがたつきにくくなり、がたつきに起因する異音の発生を抑制できる。
【0083】
次に、複数の上流フィン61~64を右側の縦シム25に傾動可能に支持する工程について説明する。
この工程では、上流フィン61~64毎の右側の上流フィン軸67が、右側の縦シム25の支持孔26に挿通される。
【0084】
図8及び
図11に示すように、上流フィン61,62では、右側の上流フィン軸67が、上記左側の上流フィン軸66と同様にアンカーを有している。そのため、アンカーが孔部26b(軸受孔部)を通過するときに、同孔部26bが突起部67eによって押し拡げられる。孔部26bのうち、押し拡げられた箇所では、半径R2が距離D2よりも一旦大きくなる。孔部26bは、突起部67eが通過すると、縦シム25の弾性復元力によって小さくなる。孔部26bの半径R2は、突起部67eによって押し拡げられた箇所では、上記距離D2よりも小さくなる。そのため、アンカーが抜け止め機能を発揮する。
【0085】
孔部26bのうち、押し拡げられた箇所では、同孔部26bの内壁面と軸本体部67aとの隙間が、上流フィン軸67が孔部26bに挿通される前の隙間よりも大きくなる。但し、この隙間は、軸本体部67aの周方向における一部のみであり、突起部67eが露出部67dの全周にわたって形成される場合に比較して短い。
【0086】
また、孔部26bのうち、押し拡げられていない箇所の半径R2は、上流フィン軸67の孔部26bへの挿通前後で変化しない、又はほとんど変化しない。孔部26bの内壁面と軸本体部67aとの隙間は、上流フィン軸67が孔部26bに挿通される前の隙間と同じ、又は略同じになる。
【0087】
従って、上流フィン軸67が孔部26b内でがたつきにくく、がたつきに起因する異音の発生を抑制できる。
また、
図9に示すように、上流フィン63,64では、右側の上流フィン軸67がアンカーを有していない。そのため、上流フィン軸67は孔部26b(軸受孔部)に挿通される。孔部26bは、上流フィン軸67が挿通される際に押し拡げられない。上流フィン軸67は、縦シム25が抜け落ちるのを規制する機能を有していないが、支障ない。これは、右側の縦シム25は、上述したように、上流フィン61,62における右側の上流フィン軸67によって、抜け落ちを規制されているからである。
【0088】
次に、インストルメントパネルに組付けられた状態の空調用レジスタ15において、空調用空気A1の流れ状態を調整する際の作用及び効果について説明する。
図1及び
図13は、全ての上流フィン61~64が開位置にあるときの状態を示している。操作ノブ51は、空調用レジスタ15の上記上下方向における可動範囲の中央部分に位置している。開位置では、全ての上流フィン61~64における上流フィン本体65が、通風路36の中心軸線CLに対し平行な状態、又は平行に近い状態になる。いずれの上流フィン本体65も、隣の上流フィン本体65から大きく離間する。上流フィン61の上流フィン本体65が横壁部21から大きく離間する。上流フィン62の上流フィン本体65が横壁部22から大きく離間する。従って、開位置では、通風路36が上流フィン本体65によって開放される。空調用空気A1は、隣り合う上流フィン本体65間や、上流フィン61の上流フィン本体65と横壁部21との間や、上流フィン62の上流フィン本体65と横壁部22との間を、上流フィン本体65に沿って下流へ流れる。
【0089】
上記の状態から操作ノブ51が、下流フィン41の下流フィン本体43に沿って、空調用レジスタ15の上記上下方向における一方、例えば下方へスライドされると、そのスライドが伝達機構85を介してロッド81に伝達される。すなわち、上記スライドに伴い第1リブ86が下方へ移動する。第1リブ86を上下両側から挟み込む2つの第2リブ87のうち、下側に位置するものが第1リブ86によって下方へ押され、ロッド81に対し、下方へ向かう力が加わる。ロッド81は、軸支持部83において上流フィン61~64毎の連結軸72に連結されている。一方、各連結軸72は、上流フィン軸66,67を中心とする円弧に沿って移動する。また、各連結軸72は軸支持部83に対し係合されている。そのため、ロッド81は、上流フィン61~64毎の連結軸72に追従して、下流側へ膨らむように緩やかに湾曲する円弧状の経路に沿って下方へ移動する。
【0090】
この際、ロッド本体82の上流部の一部は、上流フィン61,63,64毎の切欠き74内において移動する。また、ロッド81の上下動に伴い、両第2リブ87及び連結板部88が空調用レジスタ15の上下方向へ移動する。ここで、上流フィン63の上流フィン本体65は、両第2リブ87及び連結板部88の可動範囲に位置する。しかし、上流フィン63には、両第2リブ87及び連結板部88が通過し得る大きさの切欠き75が形成されている(
図3、
図5参照)。そのため、上流フィン63と、両第2リブ87及び連結板部88との干渉を回避できる。
【0091】
また、両第2リブ87は、第1リブ86に対し、上記流れ方向にラップした状態で移動する。第1リブ86が両第2リブ87間から抜け出すことがない。
ロッド81の動きは、上流フィン61~64毎の連結軸72及び両支持突部73を介して全ての上流フィン本体65に同時に伝達される。上流フィン61~64毎の連結軸72は、上流フィン軸66,67から下流側へ離れた箇所であり、かつ上流フィン本体65から厚み方向へ離れた箇所において、上流フィン軸66,67に平行に延びている。そのため、各上流フィン61~64が、互いに同期した状態で、自身の上流フィン軸66,67を支点として、
図1の時計回り方向へ、同一の角度ずつ傾動される。空調用空気A1は、隣り合う上流フィン本体65間や、上流フィン61の上流フィン本体65と横壁部21との間や、上流フィン62の上流フィン本体65と横壁部22との間を、上流フィン本体65に沿って下流へ流れる。空調用空気A1は、上下方向における流れ方向を斜め下方へ変えられる。
【0092】
上記の状態から、操作ノブ51がさらに下方へスライドされると、各上流フィン61~64がさらに上記時計回り方向へ傾動する。各上流フィン61~64が、
図14に示す閉位置まで傾動されると、隣り合う上流フィン61~64のうち、傾動方向後側に位置するもの、すなわち、
図14では下側に位置するものの上流部分が、傾動方向前側に位置するもの、すなわち、
図14では上側に位置するものの下流部分に重ね合わされる。また、上流フィン61の上流フィン本体65が横壁部21に接触し、上流フィン62の上流フィン本体65が横壁部22に接触する。複数の上流フィン61~64によって通風路36が閉鎖された状態となる。
【0093】
ここで、操作ノブ51の動きを全ての上流フィン61~64に伝達して、これらの上流フィン61~64を閉位置まで傾動させる構造であって、本実施形態とは異なる構造として、次のようなものが考えられる。すなわち、図示はしないが、下流フィン41,42と同様に、上流フィン61~64毎に、上流フィン軸66,67から離れた箇所に連結ピンを設ける。上流フィン61~64毎の連結ピンを連結ロッドによって連結する。一方、複数の上流フィン61~64のうちの特定の1つと、操作ノブ51との間に、ギヤ機構等の伝達機構を設ける。
【0094】
このようにすると、操作ノブ51をスライドすると、ギヤ機構等の伝達機構により、操作ノブ51のスライド(直線運動)が回転運動に変換されて特定の上流フィンに伝達される。特定の上流フィンが、上流フィン軸66,67を支点として傾動する。この傾動が、連結ピン及び連結ロッドを介して残りの上流フィンに伝達される。操作ノブ51の操作により、全ての上流フィン61~64を閉位置まで傾動させることが可能である。
【0095】
しかし、この場合、操作ノブ51に加えられた力が、ギヤ機構等の伝達機構→特定の上流フィン→特定の連結ピン→連結ロッド→残りの連結ピン→残りの上流フィンの順に伝達されるため、少なからず位相遅れが発生する。特定の上流フィンと同時に残りの上流フィンを傾動させることが難しい。その結果、特定の上流フィンを閉位置まで傾動させたときに、隣り合う上流フィン本体間に隙間が生ずる。配列方向における両端の上流フィン本体と横壁部21,22との間に隙間が生ずる。そして、これらの隙間から空調用空気A1が漏れるおそれがある。
【0096】
この点、本実施形態では、操作ノブ51の動きを、ロッド81を介して全ての上流フィン61~64に同時に伝達している。そのため、上記のような位相遅れが発生しにくく、全ての上流フィン61~64を同時に傾動させることができる。全ての上流フィン61~64を閉位置まで傾動させたときに、隣り合う上流フィン本体65間に隙間が生ずるのを抑制できる。また、配列方向における両端の上流フィン61,62とリテーナ本体17の横壁部21,22との間に隙間が生ずるのを抑制できる。その結果、全ての上流フィン61~64を閉位置まで傾動させた状態で、空調用空気A1が漏れるのを抑制できる。吹出口39からの空調用空気A1の吹き出しを遮断する性能を高めることができる。
【0097】
図1及び
図3において、操作ノブ51に対し、左右方向へ向かう力が加えられると、この力は、操作ノブ51の装着された下流フィン41に伝達される。下流フィン41が両下流フィン軸44,45を支点として傾動させられる。下流フィン41の上記傾動は、下流連結ピン46及び下流連結ロッド47を介して下流フィン42に伝達される。下流フィン42が下流フィン41に同期して、同下流フィン41と同一方向へ傾動させられる。空調用空気A1は、隣り合う下流フィン本体43間や、下流フィン41,42毎の下流フィン本体43とリテーナ16の縦シム23,25との間を、下流フィン本体43に沿って下流へ流れる。空調用空気A1は、左右方向における流れ方向を、操作ノブ51に力を加えられた方向へ変えられる。
【0098】
なお、このときには、第1リブ86が両第2リブ87間を左右方向へ傾動する。操作ノブ51に加えられた左右方向の上記力は、ロッド81に伝達されない。従って、いずれの上流フィン61~64も傾動しない。
【0099】
空調用空気A1は、上流フィン61~64及び下流フィン41,42の各傾きに応じた方向へ流れて吹出口39から吹出す。このようにして、上流フィン61~64及び下流フィン41,42の少なくとも一方が操作ノブ51の操作を通じて傾動されることにより、吹出口39から吹出される空調用空気A1の向き(吹出し方向)が変更される。
【0100】
ここで、第1リブ86を有する操作ノブ51は、下流フィン軸44,45の延びる方向である空調用レジスタ15の上下方向へスライドする。これに対し、各上流フィン61~64は、上流フィン軸66,67を支点として傾動する。各上流フィン61~64の連結軸72は、上流フィン軸66,67を中心とする円弧上を移動する。上流フィン61~64毎の連結軸72に連結されたロッド81の動きは、上流フィン61~64によって規制される。ロッド81は、上流フィン61~64の配列方向である空調用レジスタ15の上記上下方向に延びる姿勢を維持しながら、上流フィン61~64毎の上流フィン軸66,67を支点として略配列方向(略上下方向)へ円弧運動する。
【0101】
このように、操作ノブ51の上記スライドと、ロッド81の上記円弧運動とにより、第1リブ86及び両第2リブ87の上記流れ方向における位置が変化する。
しかし、両第2リブ87は第1リブ86を、上記配列方向(上下方向)における両側から挟み込んでいる。第1リブ86及び両第2リブ87は、上記流れ方向に相対移動可能である。そのため、第1リブ86及び両第2リブ87の相対位置が変化しても、両第2リブ87によって第1リブ86を挟み込んだ状態が維持される。第1リブ86及び両第2リブ87は上記流れ方向にオーバラップする。従って、操作ノブ51の動きを、第1リブ86及び両第2リブ87を介してロッド81に伝達できる。この伝達により、操作ノブ51のスライドに応じてロッド81に上記円弧運動を行なわせ、各上流フィン61~64を傾動できる。
【0102】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、
図10及び
図12(a)に示すように、上流フィン軸66毎の複数の突起部66eが、露出部66dの周方向に等角度毎に配置されている。同様に、
図11に示すように、上流フィン軸67の複数の突起部67eが、露出部67dの周方向に等角度毎に配置されている。
【0103】
そのため、上流フィン軸66,67が孔部24b,26bに挿通された場合、孔部24b,26bのうち、周方向に等角度毎に離れた箇所が、突起部66e,67eによって押し拡げられる。孔部24b,26bが周方向にバランスよく変形される。これに伴い、周方向に等角度毎に離れた箇所で、孔部24b,26bの内壁面と軸本体部66a,67aとの隙間が大きくなる。従って、隙間が周方向に等角度毎でない箇所で大きくなる場合に比べ、異音発生のリスクを低減できる。
【0104】
・突起部66e,67eの数が多くなるに従い、上流フィン軸66,67が孔部24b,26bに挿通される場合に、同孔部24b,26bにおいて突起部66e,67eによって押し拡げられる箇所が多くなる。
【0105】
また、孔部24b,26bの内壁面と軸本体部66a,67aとの隙間を小さくしつつ、上流フィン軸66,67の孔部24b,26bからの抜け出しを抑制することのできる突起部66e,67eの最小数はそれぞれ2である。突起部66e,67eがそれぞれ2つの場合、これらの突起部66e,67eが、上流フィン軸66,67の軸線L1,L2に対し線対称となる位置に配置されると、両突起部66e,67eは露出部66d,67dの周方向に対し等角度毎に配置される。上流フィン軸66,67が孔部24b,26bに挿通されると、孔部24b,26bにおいて突起部66e,67eに対応する箇所、すなわち、軸線L1,L2を挟んで相対向する箇所が突起部66e,67eによって押し拡げられる。孔部24b,26bが周方向にバランスよく変形される。
【0106】
この点、本実施形態では、上流フィン軸66,67毎のアンカーは2つの突起部66e,67eによって構成されている。2つの突起部66e,67eは、上流フィン軸66,67の軸線L1,L2に対し線対称となる位置に配置されている。そのため、最小数の突起部66e,67eでありながら、上流フィン軸66,67の孔部24b,26bからの抜け出しを規制しつつ、上流フィン軸66,67の孔部24b,26bでのがたつきを抑制して異音の発生を抑制できる。
【0107】
・本実施形態では、
図6に示すように、伝達機構85を構成する第1リブ86及び第2リブ87のいずれも板状をなしており、しかも上記流れ方向に沿って延びている。そのため、第1リブ86及び第2リブ87は、空調用空気A1の流れの妨げとなりにくい。従って、本実施形態の空調用レジスタ15では、圧力損失及び騒音を低減できる。また、本実施形態の空調用レジスタ15の下流からは、第1リブ86及び第2リブ87が見えにくく、空調用レジスタ15の見栄えがよい。
【0108】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0109】
<リテーナ16について>
・
図4に示すように、リテーナ16の左側の壁部27が、リテーナ本体17の縦壁部18のみによって構成され、同縦壁部18に支持孔24が設けられてもよい。
【0110】
リテーナ16の右側の壁部28が縦壁部19のみによって構成され、同縦壁部19に支持孔26が設けられてもよい。
同様に、リテーナ16の上側の壁部34が、リテーナ本体17の横壁部21のみによって構成され、同横壁部21に支持孔33が設けられてもよい。
【0111】
リテーナ16の下側の壁部35が横壁部22のみによって構成され、同横壁部22に支持孔33が設けられてもよい。
<支持孔24,26について>
・支持孔24の全体が孔部24bのみによって構成されてもよい。また、支持孔26の全体が孔部26bのみによって構成されてもよい。
【0112】
<フィンについて>
・下流フィン41,42として、下流フィン軸44,45が左右方向に延びるものが用いられてもよい。この場合、下流フィン41,42が傾動されることにより、空調用空気A1の吹出し方向が上下方向に変更される。
【0113】
上流フィン61~64として、上流フィン軸66,67が空調用レジスタ15の上記上下方向へ延びるものが用いられてもよい。この場合、上流フィン61~64が傾動されることにより、空調用空気A1の吹出し方向が左右方向に変更される。
【0114】
・下流フィン41,42の数が1又は3以上に変更されてもよい。
・上流フィン61~64の数が、複数であることを条件に、上記実施形態とは異なる数に変更されてもよい。
【0115】
<アンカーについて>
・上流フィン軸66,67毎のアンカーを構成する突起部66e,67eの数が3以上に変更されてもよい。この場合、突起部66e,67eは、露出部66d,67dの周方向に等角度毎に配置されることが望ましいが、必ずしも等角度毎に配置されなくてもよい。
【0116】
・アンカーが、下流フィン41,42における下流フィン軸44,45の少なくとも一方に設けられてもよい。
・アンカーが全ての右側の上流フィン軸67に設けられてもよい。
【0117】
<駆動機構71について>
・伝達機構85における第1リブ86の数と第2リブ87の数との関係が、上記実施形態とは逆の関係になるように変更されてもよい。すなわち、第1リブ86の数が2つに変更され、第2リブ87の数が1つに変更されてもよい。この場合、操作ノブ51における2つの第1リブ86が、ロッド81における第2リブ87を挟み込むことになる。
【0118】
・伝達機構85の数が複数に変更されてもよい。
・各上流フィン61~64において、2つの支持突部73のうちの一方が省略されてもよい。
【0119】
・上流フィン62の上流フィン本体65にも、上流フィン61,64の上流フィン本体65と同様、切欠き74が形成されてもよい。
<空調用レジスタ15の適用対象について>
・上記空調用レジスタ15は、車室内においてインストルメントパネルとは異なる箇所に組込まれるものであってもよい。
【0120】
・上記空調用レジスタ15は、空調装置から送られてきて室内に吹出される空調用空気の向きをフィンによって調整することのできるものであれば、車両に限らず広く適用可能である。
【0121】
<その他>
・空調用レジスタ15は、その上下方向が鉛直方向(車両の上下方向)と合致するものであってもよい。
【符号の説明】
【0122】
15…空調用レジスタ
16…リテーナ
24,26…支持孔
24b,26b…孔部(軸受孔部)
27,28,34,35…壁部
36…通風路
41,42…下流フィン
43…下流フィン本体
44,45…下流フィン軸
51…操作ノブ
61,62,63,64…上流フィン
65…上流フィン本体
66,67…上流フィン軸
66d,67d…露出部
66e,67e…突起部
71…駆動機構
72…連結軸
81…ロッド
85…伝達機構
86…第1リブ
87…第2リブ
A1…空調用空気
D1,D2…距離
L1,L2…軸線
R1,R2…半径