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特開2022-12488布製品用アクリル糊落し剤、および布製品のアクリル糊落し方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012488
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】布製品用アクリル糊落し剤、および布製品のアクリル糊落し方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/54 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
C11D7/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114348
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】春名 隆史
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC07
4H003BA12
4H003DA01
4H003DB01
4H003DC02
4H003EB08
4H003EB21
4H003ED02
4H003EE07
4H003EE08
4H003EE09
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】アクリル糊により糊付けされた布製品からアクリル糊を除去する。
【解決手段】実施形態に係る布製品用アクリル糊落とし剤は、塩素系漂白剤を含み、前記塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときのpH(80℃)が5.0~8.0である。実施形態に係る布製品のアクリル糊落とし方法は、アクリル糊が糊付けされた布製品を、塩素系漂白剤を含むpH5.0~8.0の液体に浸漬する工程を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩素系漂白剤を含み、前記塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときのpH(80℃)が5.0~8.0である、布製品用アクリル糊落とし剤。
【請求項2】
使用温度が定められた布製品用アクリル糊落とし剤であって、塩素系漂白剤を含み、前記塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときの前記使用温度でのpHが5.0~8.0である、布製品用アクリル糊落とし剤。
【請求項3】
前記塩素系漂白剤が次亜塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩およびトリクロロイソシアヌル酸塩からなる群より選択された1以上の化合物である、請求項1または2に記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
【請求項4】
さらにスルファミン酸およびポリカルボン酸からなる群より選択された1以上の化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
【請求項5】
さらに界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
【請求項6】
リネンサプライ用である請求項1~5のいずれか1項に記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
【請求項7】
アクリル糊が糊付けされた布製品を、請求項1~6のいずれか1項に記載の布製品用アクリル糊落とし剤を含む液体に浸漬する工程を含む、布製品のアクリル糊落とし方法。
【請求項8】
アクリル糊が糊付けされた布製品を、塩素系漂白剤を含むpH5.0~8.0の液体に浸漬する工程を含む、布製品のアクリル糊落とし方法。
【請求項9】
前記布製品が、アクリル糊が糊付けされた新品の布製品である、請求項7または8に記載のアクリル糊落とし方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、布製品用アクリル糊落とし剤、および布製品のアクリル糊落し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
澱粉糊により糊付けされた衣類やリネン類等の布製品については、一般的な洗浄剤により、糊落しを行うことができる。また、たとえば、特許文献1には、使用する洗濯糊が酢酸ビニル系糊である場合に効果的に糊落しをすることが可能な技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5770396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
たとえば、リネン等の布製品については、製造された後、出荷される前に、かさ高さを抑える等の目的で、アクリル糊により糊付けされることがある。しかしながら、このようなアクリル糊を効果的に取り除くことは一般的な洗浄剤等では難しいという問題がある。
【0005】
本発明の実施形態は、アクリル糊により糊付けされた布製品からアクリル糊を除去することができる布製品用アクリル糊落とし剤、および布製品のアクリル糊落とし方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
(1)塩素系漂白剤を含み、前記塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときのpH(80℃)が5.0~8.0である、布製品用アクリル糊落とし剤。
(2)使用温度が定められた布製品用アクリル糊落とし剤であって、塩素系漂白剤を含み、前記塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときの前記使用温度でのpHが5.0~8.0である、布製品用アクリル糊落とし剤。
(3)前記塩素系漂白剤が次亜塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸塩およびトリクロロイソシアヌル酸塩からなる群より選択された1以上の化合物である、(1)または(2)に記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
(4)さらにスルファミン酸およびポリカルボン酸からなる群より選択された1以上の化合物を含む、(1)~(3)のいずれか1項に記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
(5)さらに界面活性剤を含む、(1)~(4)のいずれかに記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
(6)リネンサプライ用である(1)~(5)のいずれかに記載の布製品用アクリル糊落とし剤。
(7)アクリル糊が糊付けされた布製品を、(1)~(6)のいずれかに記載の布製品用アクリル糊落とし剤を含む液体に浸漬する工程を含む、布製品のアクリル糊落とし方法。
(8)アクリル糊が糊付けされた布製品を、塩素系漂白剤を含むpH5.0~8.0の液体に浸漬する工程を含む、布製品のアクリル糊落とし方法。
(9)前記布製品が、アクリル糊が糊付けされた新品の布製品である、(7)または(8)に記載のアクリル糊落とし方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、布製品の生地を傷めることなく、当該布製品から効果的にアクリル糊を除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態に係る布製品用アクリル糊落とし剤(以下、単に「糊落とし剤」ということがある。)は、アクリル糊の除去性向上の観点から、塩素系漂白剤を含有する。
【0009】
塩素系漂白剤としては、たとえば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸塩、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸カリウムなどのジクロロイソシアヌル酸塩、およびトリクロロイソシアヌル酸ナトリウム、トリクロロイソシアヌル酸カリウムなどのトリクロロイソシアヌル酸塩などが挙げられる。これらは単独使用されてもよく、2種以上併用されてもよい。これらの塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。塩素系漂白剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、ジクロロイソシアヌル酸ナトリウムおよびトリクロロイソシアヌル酸ナトリウムからなる群より選択された1以上の化合物であることが好ましい。
【0010】
一実施形態に係る糊落し剤は、塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときのpH(80℃)が5.0~8.0である。このようにpHが5.0以上かつ8.0以下であることにより、布製品の生地を傷めることなく、効果的にアクリル糊を除去することができる。上記pHは、アクリル糊の除去性向上の観点から、5.5~7.0であることが好ましく、より好ましくは5.5~6.5である。
【0011】
一実施形態において、糊落とし剤はその使用温度が指定されていてもよく、その場合、塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときの当該使用温度でのpHが5.0~8.0であることが好ましい。これにより、布製品の生地を傷めることなく、効果的にアクリル糊を除去することができる。この場合のpHも、5.5~7.0であることが好ましく、より好ましくは5.5~6.5である。使用温度とは、後述する糊落とし用洗濯液の温度である。使用温度が例えば80℃に指定されている場合、80℃でのpHが上記範囲内にあればよく、使用温度が範囲をもたせて指定されている場合、当該温度範囲の全体でpHが上記範囲内にあればよい。
【0012】
ここで、塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたときのpHとは、糊落とし剤に含まれる塩素系漂白剤の濃度が0.1質量%となるように、イオン交換水を用いて糊落とし剤を溶解および/または希釈としたときの水溶液について、80℃または上記使用温度で測定したpHである。
【0013】
本実施形態に係る糊落し剤においては、pHを上記の範囲内に設定するためにpH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、特に限定されないが、たとえば、スルファミン酸および/またはポリカルボン酸を用いることが好ましい。
【0014】
ポリカルボン酸は、1分子中に複数のカルボキシ基を有する有機酸である。ポリカルボン酸としては、特に限定されず、たとえば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸などのジカルボン酸、クエン酸、リンゴ酸、アガリシン酸などのヒドロキシポリカルボン酸などを挙げることができる。これらは単独使用されてもよく、2種以上併用されてもよい。ここで、ヒドロキシポリカルボン酸とは、1分子中に複数のカルボキシ基とともにヒドロキシ基を有する有機酸である。ポリカルボン酸としては、糊落とし剤のpHを下げ、かつ粘度を抑える観点から、クエン酸および/またはリンゴ酸が好ましい。
【0015】
一実施形態において、糊落とし剤に用いるpH調整剤としては、スルファミン酸およびヒドロキシポリカルボン酸からなる群より選択された1以上の化合物であることが好ましく、より好ましくはスルファミン酸、クエン酸およびリンゴ酸からなる群より選択された1以上の化合物であり、さらに好ましくはスルファミン酸およびクエン酸からなる群より選択された1以上の化合物である。
【0016】
本実施形態に係る糊落し剤においては、さらに、たとえば界面活性剤を含有してもよい。これにより糊落し剤の布製品への浸透性が高まり、アクリル糊の除去性を向上することができる。
【0017】
上記界面活性剤としては、特に限定されず、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられる。これらは単独使用されてもよく、2種以上併用されてもよい。
【0018】
アニオン界面活性剤としては、たとえば、脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムなどの脂肪酸塩、モノアルキル硫酸塩、アルキルポリオキシエチレン硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノアルキルリン酸塩等が挙げられる。
【0019】
カチオン界面活性剤としては、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0020】
両性界面活性剤としては、たとえば、アルキルジメチルアミンオキシド、アルキルカルボキシベタイン等が挙げられる。
【0021】
ノニオン界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル等)、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸ジエタノールアミド、アルキルモノグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0022】
これらのうち、界面活性剤としては、アクリル糊の除去性向上の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルが好ましい。
【0023】
本実施形態に係る糊落とし剤は、さらに水を含んでもよい。すなわち、本実施形態に係る糊落とし剤は、上記の塩素系漂白剤と任意成分としてのpH調整剤および/または界面活性剤などを混合してなる粉末状でもよく、あるいはまた、これらを水に溶解してなる液状でもよい。
【0024】
本実施形態に係る糊落とし剤において、塩素系漂白剤の含有量は特に限定されない。たとえば、上記粉末状の場合、糊落とし剤中に占める塩素系漂白剤の含有量は、10~90質量%でもよく、15~70質量%でもよい。また、上記液状の場合、当該含有量は、0.1~30質量%でもよく、0.5~15質量%でもよく、1~10質量%でもよい。
【0025】
本実施形態に係る糊落とし剤において、pH調整剤の含有量は特に限定されないが、アクリル糊の除去性向上の観点から、塩素系漂白剤100質量部に対して、10~250質量部であることが好ましく、より好ましくは20~200質量部であり、さらに好ましくは25~150質量部であり、さらに好ましくは50~100質量部である。
【0026】
本実施形態に係る糊落とし剤において、界面活性剤の含有量は特に限定されないが、アクリル糊の除去性向上の観点から、塩素系漂白剤100質量部に対して、5~800質量部であることが好ましく、より好ましくは10~500質量部であり、さらに好ましくは15~300質量部である。
【0027】
本実施形態に係る糊落し剤には、その他の任意成分として、たとえば、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩、シリコーン化合物、酵素、抗菌剤、蛍光剤等の洗剤組成物に通常含まれる添加物を含有させることもできる。
【0028】
本実施形態に係る糊落とし剤は、布製品のアクリル糊を落とすために用いられる。一実施形態において、布製品のアクリル糊落とし方法は、アクリル糊が糊付けされた布製品を、上記糊落とし剤を含む液体に浸漬する工程を含む。その際、糊落とし剤は、粉末状の場合は水に溶かして、液状の場合はそのまま、または水に希釈して使用することができる。また、一実施形態において、布製品のアクリル糊落とし方法は、アクリル糊が糊付けされた布製品を、塩素系漂白剤を含むpH5.0~8.0の液体に浸漬する工程を含む。以下、このように実際に使用される際に布製品を浸漬する液体(水溶液)を「糊落とし用洗濯液」と称する。
【0029】
糊落とし用洗濯液は、アクリル糊の除去性向上の観点から、塩素系漂白剤を0.01質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上含むことであり、さらに好ましくは0.05質量%以上含むことである。また、糊落とし剤用洗濯液は、アクリル糊の除去性向上の観点から、塩素系漂白剤を1質量%以下含むことが好ましく、より好ましくは0.8質量%以下含むことがあり、さらに好ましくは0.6質量%以下含むことである。糊落とし剤においては、その使用濃度(即ち、糊落とし用洗濯液の濃度)が指定されていてもよく、その場合、糊落とし用洗濯液の濃度を当該使用濃度に設定して浸漬工程を行う。このように使用濃度が定められている場合、糊落とし剤は、当該使用濃度で水溶液としたときの上記使用温度でのpHが5.0~8.0となるように構成されてもよい。
【0030】
糊落とし用洗濯液は、糊落とし時(即ち、当該洗濯液に布製品を浸漬する工程)でのpHが5.0~8.0であることが好ましく、このようなpHに設定することにより、布製品の生地を傷めることなく、効果的にアクリル糊を除去することができる。糊落とし用洗濯液のpHは、5.5~7.0であることが好ましく、より好ましくは5.5~6.5である。
【0031】
糊落とし用洗濯液への布製品の浸漬工程は洗濯機を用いて行うことができる。使用される洗濯機としては特に限定されないが、バッチ式および連続式が挙げられる。
【0032】
浸漬工程においては、水とともに上記糊落とし剤または塩素系漂白剤を洗濯機の洗濯槽に投入することにより、糊落とし用洗濯液を調製することができる。糊落とし剤には、上記のように、任意成分としてアルカリ金属炭酸塩、シリコーン化合物、酵素、抗菌剤、蛍光剤等の添加剤を含有させることができるが、これらの任意成分は、糊落とし用洗濯液を調製する際に添加するなど、別途、洗濯槽に投入することもできる。
【0033】
被洗物、すなわちアクリル糊落としの対象となる布製品としては、アクリル糊が糊付けされた布製品であれば、特に限定されない。たとえば、織物は、経糸(たて糸)と緯糸(よこ糸)を直角に交差して作られる布地であり、その作製する工程上、経糸を糊剤での保護する必要がある。特にアクリル酸エステル系糊剤などのアクリル糊を付着した経糸は、単繊維間の接着性が高いので、工程中の毛羽立ちや糸切れを低減し、生産稼働率を向上させることができる。このようなアクリル糊が糊付けされた織物からなる布製品が、好ましい被洗物として挙げられる。
【0034】
被洗物として、より具体的には、たとえば、ホテルや病院などにおいて使用されるシーツ、シーツカバー、マクラカバー、テーブルクロスなどのリネン類、シャツ、エプロン、作業服、制服などの衣類、タオル類などが挙げられる。
【0035】
本実施形態に係る布製品のアクリル糊落し方法は、新品の(すなわち未使用の)布製品からアクリル糊を落とすために用いることが好ましいが、アクリル糊が糊付けされた布製品であれば当該アクリル糊を除去するために使用済みの布製品を対象としてもよい。
【0036】
本実施形態に係るアクリル糊落とし方法において布製品を糊落とし用洗濯液に浸漬する際には、必要に応じて、浸漬したまま静置してもよく、あるいはまた撹拌や振とう等の機械的処理を加えてもよい。ここで、糊落とし用洗濯液の調製および当該洗濯液への布製品の浸漬は、順次行なっても、同時に行なってもよい。静置または機械的処理を加えながら浸漬する時間は、特に限定されないが、実用性を考えると10~30分間程度が好ましい。
【0037】
浸漬工程での糊落とし用洗濯液の温度は特に限定されず、例えば常温(20℃)~95℃でもよいが、アクリル糊の除去性向上の観点から50~95℃であることが好ましく、より好ましくは60~90℃であり、さらに好ましくは70~90℃である。
【0038】
一実施形態において、糊落とし剤の使用温度が指定される場合、糊落とし用洗濯液の温度を当該使用温度に設定して浸漬工程を行う。該使用温度としては、常温~95℃の範囲内で指定されてもよく、50~95℃の範囲内で指定されてもよく、60~90℃の範囲内で指定されてもよく、70~90℃の範囲内で指定されてもよい。
【0039】
浸漬工程後は繊維製品を絞り、水で十分にすすぐことが好ましい。すすぎの後は、布製品の使用目的等に応じて乾燥し、あるいは湿潤状態のまま次の工程に供すればよい。また、すすぎの前に、この分野において通常使用される他の洗剤で洗浄してもよい。
【実施例0040】
以下、実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において、特に言及しない限り、配合量等は質量基準とする。
【0041】
[実施例1~7,比較例1,2]
洗濯機として、バッチ式の業務用洗濯機である東京洗染機械製作所製:MOX-15Cを用いた。洗濯機の本洗槽に評価布を投入後、アクリル糊落とし剤としての塩素系漂白剤、pH調整剤および界面活性剤とともに水を投入して、表1に示す配合(質量部)の糊落とし用洗濯液とした。界面活性剤としては、第一工業製薬(株)製ノイゲンLP-180(ポリオキシアルキレンラウリルエーテル)を用いた。
【0042】
実施例1~7および比較例1,2のアクリル糊落とし剤について、塩素系漂白剤の濃度で0.1質量%水溶液としたとき(即ち、水を除いた成分間の比はそのままで、塩素系漂白剤の濃度を0.1質量%の水溶液としたとき)の80℃でのpH(0.1%pH)を表1に示す。
【0043】
糊落とし用洗濯液への浸漬による評価布の洗濯処理は洗濯機を動作させて攪拌しながら、80℃で10分間行った。洗濯処理後に、すすぎを2回行った。なお、それぞれの工程の間に排水と給水を行った。各糊落とし用洗濯液の洗濯処理温度(80℃)でのpH(洗濯液pH)を表1に示す。
【0044】
評価布としては、アクリル糊により糊付けされた、綿糸(単糸♯40)を用いたブロード布(経密度133本/2.54cm、緯密度72本/2.54cm)を用いた。アクリル糊による糊付けは、アクリル系糊剤としてのマーポゾールTS-100(松本油脂(株)製、固形分25%)100質量部に澱粉10質量部、水1000質量部を加えて水溶液を調製し、この水溶液に綿糸ブロード布を常温で30分浸漬し、その後、一昼夜静置し乾燥させることにより行った。評価布については、後述する糊除去性の評価方法と同様に試験し、色差a値が5以上であることを確認した。
【0045】
(糊除去性の評価方法)
ローダミン試薬(和光純薬工業製ローダミンB(試薬グレード))とクエン酸を混合して、ローダミン試薬が2g/L、クエン酸が1g/Lの水溶液を調製した。得られた水溶液に、各実施例および比較例のすすぎ後の評価布を入れて、40℃で5分間反応させた。続いて乾燥させ、試験生地とした。試験生地について、日本電色の色差計SD3000で色差a値を測定した。評価基準は以下のとおりとした。
a値が5以上: ×
a値が3以上5未満: △
a値が1以上3未満: 〇
a値が1未満: ◎
【0046】
(生地の劣化(脆化率)の評価)
50℃に調整した各実施例および比較例の糊落とし用洗濯液に、評価布を24時間浸漬した後、これを乾燥させて処理品の試験生地とした。オートグラフ(万能材料試験機:INSTRON5881)に、10cmのつかみ幅で、試験生地(15cm×5cm)をセットし、上下方向に引っ張り、破断時の荷重を測定した。未処理の評価布(未処理品)についても同様に破断時の荷重を測定した。次の計算式より、脆化率を算出し、下記基準により評価した。
脆化率(%)={1-(処理品の荷重/未処理品の荷重)}×100
脆化率が0%以上30%未満: 〇
脆化率が30%以上50%未満: △
脆化率が50%以上: ×
【0047】
【表1】
【0048】
結果は、表1に示すとおりである。塩素系漂白剤を含みpHが5.0~8.0の範囲内の糊落とし用洗濯液を用いて洗浄した実施例1~7では、布製品の生地を傷めることなく、アクリル糊で糊付けされた布製品からアクリル糊を効果的に除去することができた。これに対し、比較例1では、塩素系漂白剤を含むものの、糊落とし用洗濯液のpHが高すぎてアクリル糊の除去効果に劣っていた。比較例2では、塩素系漂白剤を含むものの、糊落とし用洗濯液のpHが低すぎて、布製品の生地が大きく劣化しており、またアクリル糊の除去効果にも劣っていた。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。