(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124904
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】カバー構造
(51)【国際特許分類】
B63H 20/32 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
B63H20/32 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022816
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】金原 匡利
(72)【発明者】
【氏名】松本 心吾
(57)【要約】 (修正有)
【課題】一部を交換することができるカバー構造を提供する。
【解決手段】船外機の電動モータ(動力源)が配置されるアッパユニット2のモータカバー10(カバー構造)は、船舶の進行方向に対して左右方向に分割可能な一対の分割カバー31を連結することで形成される本体カバー30と、一対の分割カバー31の外面の一部に着脱可能に設けられる着脱カバー40と、を備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機の動力源が配置されるアッパユニットのカバー構造であって、
船舶の進行方向に対して左右方向に分割可能な一対の分割カバーを連結することで形成される本体カバーと、
一対の前記分割カバーの少なくとも1つの前記分割カバーの外面の一部に着脱可能に設けられる着脱カバーと、を備えていることを特徴とするカバー構造。
【請求項2】
前記着脱カバーは、前記本体カバーに装着された状態で、前記船外機における左右方向の頂部となる部分を含むことを特徴とする請求項1に記載のカバー構造。
【請求項3】
一対の前記分割カバーは、前記着脱カバーの装着位置に設けられる少なくとも1つの第1の締結部材と、前記着脱カバーの装着位置よりも下方に外れて前記着脱カバーから露出する位置に設けられる少なくとも1つの第2の締結部材と、を用いて組み付けられることを特徴とする請求項1または2に記載のカバー構造。
【請求項4】
前記着脱カバーは、前記分割カバーとの間に収納空間を形成して装着されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のカバー構造。
【請求項5】
一対の前記分割カバーの少なくとも1つの前記分割カバーには、前記本体カバーの内側を目視するための窓部と所定の物品を保持する保持部の少なくとも一方が設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のカバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機の動力源が配置されるアッパユニットのカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、上下方向に二分割にすることができるトップカウリング等を含む船外機が開示されている。この船外機では、吸気口の位置、面積の設計自由度を増大させることや、エンジンから上方に伝達する音を遮断することを目的として、トップカウリングの上面全体にモールディングを配置して二重構造としていた。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、左右方向に二分割にすることができるアッパユニットを含む船外機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-63995号公報
【特許文献2】米国特許第4600396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、レジャー目的で使用されることの多い小型の船外機では、人の目に触れ易いアッパユニットのカバーを、好みに応じてカスタマイズしたいというユーザからの要望があった。製造者として、複数種のアッパユニット(カバー)を製造することは、上記のようなユーザ志向に応えることになるものの、製造コストの増加や製品管理の煩雑化等の問題が生じるため、現実的とは言えなかった。
【0006】
また、レジャー用の小型の船外機は、未使用時に船舶から取り外され、横に寝かせた保管姿勢にされて地面(床面)に置かれることがある。この場合、地面に接するアッパユニット(カバー)の側面に傷が付くことがあった。船外機を船舶に装着すると、アッパユニットのカバーの側面に付いた傷が目立つため、カバーの損傷部分を容易に交換することができる構造が求められていた。
【0007】
上記した特許文献に記載の船外機では、ユーザの好みに応じたカバーのカスタマイズや傷が付いたカバーの交換について十分に考慮されていなかった。
【0008】
また、上記した船外機では、簡単なメンテナンスを行うために必要な工具類を収納することができなかった。このため、工具類を収納したケース等を持ち運はなければならなかった。さらに、上記した船外機には、例えば、釣針、釣糸および小型ライト等の釣り目的に使用する小道具類等を収納するスペースも存在しなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、一部を交換することができるカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、船外機の動力源が配置されるアッパユニットのカバー構造であって、船舶の進行方向に対して左右方向に分割可能な一対の分割カバーを連結することで形成される本体カバーと、一対の前記分割カバーの少なくとも1つの前記分割カバーの外面の一部に着脱可能に設けられる着脱カバーと、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アッパユニットのカバーの一部を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る船外機を右方から示す側面図である。
【
図2】本発明の実施例に係る船外機のモータカバー(アッパユニットのカバー構造)を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例に係るモータカバーの本体カバーを右方から示す側面図である。
【
図4】本発明の実施例に係るモータカバーの本体カバーを左方から示す側面図である。
【
図6】本発明の実施例に係るモータカバーの着脱カバーを示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施例に係る船外機を保管姿勢にした状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るカバー構造は、船外機の動力源が配置されるアッパユニットのカバーである。カバー構造は、船舶の進行方向に対して左右方向に分割可能な一対の分割カバーを連結することで形成される本体カバーと、一対の分割カバーの少なくとも1つの分割カバーの外面の一部に着脱可能に設けられる着脱カバーと、を備えている。
【0014】
着脱カバーが分割カバーに対して着脱可能であるため、例えば、ユーザは、既存の着脱カバーを取り外し、自分の好みのデザインが施された着脱カバーを装着することができる。これにより、アッパユニットの一部の意匠を容易に変更することができるため、アッパユニットのカバー(の意匠)をカスタマイズしたいというユーザの志向に対応することができる。また、着脱カバーのみを交換するため、アッパユニットのカバー全体を交換する場合に比べて、交換(意匠変更)に係るコストを低減することができる。
【実施例0015】
以下、本発明の実施例に係る船外機のアッパユニットのカバー構造について図面を用いて説明する。なお、実施例の説明において、上(Ud)、下(Dd)、前(Fd)、後(Bd)、左(Ld)、右(Rd)は、船外機が取り付けられた船舶に乗って船舶の進行方向を向いている乗員の上、下、前、後、左、右を基準とする。各図に示す矢印はこれらの方向を示している。
【0016】
図1を参照して、船外機1の全体構成について説明する。
図1は船外機1を右方から示す側面図である。
【0017】
船外機1は、船舶5のトランサムボード6に取り付けられ、船舶5を推進させる装置である。また、本実施例に係る船外機1は、電動モータ11を動力源とする電動式の船外機1であり、小型の船舶5に適した小出力の船外機である。なお、実施例の説明では、
図1に示すように、船外機1を船舶5に取り付けて使用する状態を基準とし、請求項で言う「船舶の進行方向」とは前方を指す。
【0018】
船外機1は、アッパユニット2と、ミドルユニット3と、ロアユニット4と、を備えている。アッパユニット2は船外機1の上部を構成し、アッパユニット2には動力源の一例としての電動モータ11が配置されている。ロアユニット4は船外機1の下部を構成し、ロアユニット4にはプロペラ26が設けられている。ミドルユニット3は、アッパユニット2とロアユニット4との間に設けられている。
【0019】
[アッパユニット]
アッパユニット2は、モータカバー10と、電動モータ11と、インバータ12等と、を備えている。
【0020】
モータカバー10は、電動モータ11およびインバータ12を覆い、アッパユニット2の外観を構成するカバー構造である。モータカバー10は、概ね球体を前後方向に引き伸ばしたような卵型に形成されている(
図2も参照)。詳細は後述するが、モータカバー10は、一部分を二重構造とし、その一部分を着脱することができるように構成されている。
【0021】
電動モータ11およびインバータ12は、モータカバー10の内部に収容されている。電動モータ11の出力軸には、ドライブシャフト14の上端部が接続されている。ドライブシャフト14は、電動モータ11から下方に向かって伸長している。ドライブシャフト14は、電動モータ11の動力によって軸周りに回転し、電動モータ11の動力をプロペラ26に伝達する。インバータ12は、電動モータ11の上方に配置されており、電動モータ11の駆動の電流を制御する。モータカバー10には、例えば、小出力の電動モータ11の場合、充電することで繰り返し使用可能な高性能の二次電池等のバッテリ(図示せず)が収容されてもよい。バッテリは、電動モータ11やインバータ12等に電気的に接続され、これらに電力を供給する。なお、一般的には、バッテリは、アッパユニット2(モータカバー10)外部に設けられ、外部ケーブル等を介して電動モータ11等と接続されていることが多い。
【0022】
[ミドルユニット]
ミドルユニット3は、ドライブシャフトハウジング15と、クランプブラケット16と、スイベルブラケット17と、ヒートシンク18と、を備えている。
【0023】
<ドライブシャフトハウジング>
ドライブシャフトハウジング15は、モータカバー10の下方に設けられ、上下方向に長い略円筒状に形成されている。ドライブシャフトハウジング15は、ドライブシャフト14を内包している。
【0024】
<クランプブラケット>
クランプブラケット16は、船外機1を船舶5のトランサムボード6に固定するために設けられている。クランプブラケット16は、側面から見ると上下反転した略U字状に形成され、上方からトランサムボード6に被せられ、トランサムボード6を挟み込む。また、
図1からは明らかではないが、クランプブラケット16は平面から見ると左右一対のアーム状に形成されている。
【0025】
<スイベルブラケット>
スイベルブラケット17は、クランプブラケット16の左右一対のアーム部分に架設されたチルト軸S1を介して回動可能に支持されている。チルト軸S1を中心にスイベルブラケット17を上下方向に回動(揺動)することで、船外機1が船舶5に対してチルト(チルトアップ、チルトダウン)される。また、スイベルブラケット17は、ドライブシャフトハウジング15を囲むように配置され、ドライブシャフトハウジング15を軸周りに回動可能に支持している。
【0026】
(ハンドル)
船外機1には、ドライブシャフトハウジング15を回動(揺動)操作するハンドル20が設けられている。ハンドル20は、アタッチメント21を介してドライブシャフトハウジング15の前側に取り付けられている。ハンドル20の基端部は、左右方向に延びたハンドル軸S2を介してアタッチメント21に連結され、ハンドル20は、ハンドル軸S2を中心に上下方向に回動可能に設けられている。ハンドル20の先端部には、電動モータ11の回転数を操作するためのスロットルグリップGが設けられている。
【0027】
<ヒートシンク>
ヒートシンク18は、冷却水通路(図示せず)と冷却水をリザーバー用として貯留するタンク22とポンプ23と共に、電動モータ11やインバータ12を冷却するための冷却装置を構成する。ヒートシンク18は、ドライブシャフトハウジング15よりも前後方向に幅広い筒状に形成され、ドライブシャフトハウジング15の下端に連結されている。冷却水通路は、電動モータ11、インバータ12およびヒートシンク18を循環するようにモータカバー10やドライブシャフトハウジング15等の内部に設けられている。タンク22およびポンプ23は、モータカバー10の内部に設けられている。ポンプ23は冷却水通路を流通する冷却水を循環させる。ヒートシンク18は、冷却水通路を循環する冷却水を冷却する。なお、冷却水は、例えばエチレングリコールを主成分とする不凍液を用いることができる。
【0028】
[ロアユニット]
ロアユニット4は、ギヤケース24と、ギヤ機構25と、プロペラ26と、を備えている。
【0029】
<ギヤケース>
ギヤケース24は、ヒートシンク18の下端に連結されている。ギヤケース24は、正面視で、上端部から、ギヤ機構25を収容するギヤ機構収容部24Aにかけての部分が細く括れた形状となっている。また、ギヤ機構収容部24Aよりも下方に延びた部分は、舵として機能するように板状に形成されている。また、上記したドライブシャフトハウジング15の下端部、つまりギヤケース24との境界付近には、アンチベンチレーションプレート28が後方に向かって延びている。アンチベンチレーションプレート28は、水面からのプロペラ26への空気の流入を抑制する。
【0030】
<ギヤ機構>
ギヤ機構25は、ギヤケース24のギヤ機構収容部24Aに収容されている。ドライブシャフト14の下側はギヤケース24内に進入しており、ギヤ機構25に接続されている。ギヤ機構25は前後方向に延びたプロペラシャフト27を含み、プロペラシャフト27の後部はギヤケース24から後方に突き出している。プロペラシャフト27の後部には、プロペラ26が取り付けられている。ギヤ機構25は、ドライブシャフト14の軸周りの回転を、プロペラシャフト27(プロペラ26)へ伝達する。プロペラ26は、水中において軸周りに回転して船舶5を推進させる推進力を生成する。
【0031】
ところで、小型の船外機1はレジャー目的で使用されることの多く、人の目に触れ易いアッパユニット2のモータカバー10を、好みに応じてカスタマイズしたいというユーザからの要望があった。このような要望に応えるために、製造者が複数種のモータカバー10を製造した場合、製造コストの増加や製品管理の煩雑化等の別の問題が生じる。
【0032】
また、レジャー用の小型の船外機1は、未使用時に船舶5から取り外され、横に寝かせた保管姿勢P(後述する
図7参照)にされて地面GL(床面)に置かれることがあり、地面GLに接するアッパユニット2のモータカバー10の側面に傷が付くことがあった。船外機1を船舶5に装着すると、その傷が目立つため、モータカバー10の損傷部分を容易に交換することができる構造が求められていた。
【0033】
そこで、本実施例に係る船外機1では、アッパユニット2のモータカバー10の一部が交換可能に構成されている。
【0034】
[モータカバーの構造]
図2ないし
図7を参照して、モータカバー10の構造(アッパユニット2のカバー構造)について説明する。
図2はモータカバー10(アッパユニット2のカバー構造)を示す斜視図である。
図3はモータカバー10の本体カバー30を右方から示す側面図である。
図4はモータカバー10の本体カバー30を左方から示す側面図である。
図5は、
図3のV-V断面図である。
図6はモータカバー10の着脱カバー40を示す斜視図である。
図7は船外機1を保管姿勢Pにした状態を示す側面図である。
【0035】
モータカバー10は、例えば、合成樹脂製で概ね卵型に形成されている(
図2参照)。モータカバー10の後方下部は、側面視で前側部分よりも下方に突き出すように形成されている。また、モータカバー10の下部は、正面視(背面視)で下方に向かって左右方向に幅狭くなるように括れた形状を成している。
【0036】
図2に示すように、モータカバー10(カバー構造)は、本体カバー30と、2つの着脱カバー40(
図2では右方のみを図示)と、を備えている。
【0037】
<本体カバー>
本体カバー30は、船舶5の進行方向に対して左右方向に分割可能な一対の分割カバー31で構成される。本体カバー30は、左右割構造となっており、電動モータ11を挟んで左右方向に対向する一対の分割カバー31を連結することで形成される。
【0038】
(分割カバー)
一対の分割カバー31は、それぞれ対向する面を開口させたバスタブ状(トレイ状)に形成されている(
図5参照)。
図3ないし
図5に示すように、各々の分割カバー31の外面(外側面)の一部には、着脱カバー40を装着するための装着凹部32が凹設されている。各々の装着凹部32は、側面視で分割カバー31の中央を含む領域において略楕円形状に形成されている。なお、一対の分割カバー31には異なる部分もあるが、概ね同じ外形を有しているため、以下、一対の分割カバー31に共通する説明では1つの分割カバー31に着目して説明する。
【0039】
図3および
図4に示すように、分割カバー31の外側面には、装着凹部32の範囲内において、後述する、着脱カバー40を固定する面ファスナのフック面部F1が複数固定されている。複数のフック面部F1は、装着凹部32の楕円形状の輪郭に沿って所定の間隔で配置されている。なお、フック面部F1の数は自由に変更してもよい。
【0040】
分割カバー31の外側面には、装着凹部32の範囲内において、一対の位置決め凹部33と横倒し用凹部34とが凹設されている。一対の位置決め凹部33は、側面視で装着凹部32の前方上部と後方下部とに形成された略半球状の窪みである(
図5も参照)。詳細は後述するが、一対の位置決め凹部33には、着脱カバー40に形成された一対の位置決め凸部41が嵌合するようになっている。横倒し用凹部34は、側面視で装着凹部32のやや前側下部(一対の位置決め凹部33の間)に形成された略円柱状の窪みである(
図5も参照)。
図5に示すように、横倒し用凹部34は、分割カバー31の内側に向かって突出した横倒し用ボス34Aを構成する。横倒し用ボス34Aには、例えば合成ゴム等の弾性体から成るクッション部材34Bが覆設されている。一対の分割カバー31を連結して本体カバー30が形成された状態で、一対の横倒し用ボス34Aは、クッション部材34Bを介して電動モータ11の左右方向の両側面に当接する。
【0041】
(窓部)
図3に示すように、右方の分割カバー31には、本体カバー30の内側、具体的にはタンク22(
図1参照)に貯留した冷却水の残量を目視するための窓部35が設けられている。窓部35は、装着凹部32の範囲内において後方上部(後方下部の位置決め凹部33の上方)に配置されている。窓部35は、例えば、透明または半透明の合成樹脂やガラス等で略円板状に形成され、分割カバー31に開口した略円形状の穴を閉塞している。窓部35は、径方向外側に向かってアーム部35Aの先端部を貫通したビス35Bを介して分割カバー31に固定されている。
【0042】
(保持部)
図4に示すように、左方の分割カバー31には、簡単なメンテナンス用の工具(所定の物品)を保持する2つの保持部36が上下方向に並んで設けられている。各々の保持部36は、装着凹部32の範囲内において一対の位置決め凹部33や横倒し用凹部34を避けるように凹設されている。2つの保持部36は、例えば、スパナと六角レンチ(図示せず)の外形を成すような窪みであり、スパナや六角レンチ等の工具は、保持部36に嵌合して保持される。
【0043】
図3に示すように、右方の分割カバー31には、3つの第1のボルト穴37Aと2つの第2のボルト穴38Aが穿設されている。3つの第1のボルト穴37Aは、装着凹部32の範囲内において、上部に2つ、後部に1つ穿設されている。2つの第2のボルト穴38Aは、装着凹部32の範囲外となる分割カバー31の下部(括れた部分)に左右方向に離間して穿設されている。
図4に示すように、左方の分割カバー31には、3つの第1のインサートナット37Bと2つの第2のインサートナット38Bが埋設されている。第1および第2のインサートナット37B,38Bは、一対の分割カバー31を連結した状態で第1および第2のボルト穴37A,38Aに対向するように埋め込まれている(
図5参照)。
【0044】
図5に示すように、一対の分割カバー31は、左右両側から電動モータ11を覆うように組み付けられる。具体的には、一対の分割カバー31の継目にシール部材(図示せず)を挟み込み、各々の第1の締結部材37を第1のボルト穴37Aに差し込み、その先端部を第1のインサートナット37Bに螺合させる。また、各々の第2の締結部材38を第2のボルト穴38Aに差し込み、その先端部を第2のインサートナット38Bに螺合させる。以上のように、一対の分割カバー31は、着脱カバー40の装着位置に設けられる3つの第1の締結部材37と、着脱カバー40の装着位置よりも下方に外れた露出位置に設けられる2つの第2の締結部材38と、を用いて組み付けられる(
図3も参照)。これにより、一対の分割カバー31が連結されて本体カバー30を構成する。
【0045】
<着脱カバー>
2つの着脱カバー40は、一対の分割カバー31の外面(外側面)の一部、具体的には装着凹部32に着脱可能に設けられている(
図2および
図5参照)。なお、2つの着脱カバー40は、異なる部分もあるが、概ね同じ外形を有しているため、以下の説明では1つの着脱カバー40について説明する。
【0046】
図2および
図6に示すように、着脱カバー40は、分割カバー31の装着凹部32に嵌め込まれるように側面視で略楕円形状に形成されている。着脱カバー40は、内側から外側に膨らむような湾曲面を有し、深さの浅い略ボウル状(椀状)に形成されている。なお、
図2等に示す着脱カバー40の表面(外側面)には、絵柄や装飾等が示されていないが、着脱カバー40にはユーザの好みに応じて絵柄や装飾等を施してもよい。
【0047】
図6に示すように、着脱カバー40の内面には、面ファスナのループ面部F2が複数固定されている。複数のループ面部F2は、着脱カバー40の輪郭に沿って所定の間隔で配置されている。複数のループ面部F2は、着脱カバー40を装着凹部32に嵌め込んだ状態で、分割カバー31に設けられた複数のフック面部F1に対向するように配置されている。また、着脱カバー40の内面には、分割カバー31に凹設された一対の位置決め凹部33に嵌合可能な一対の位置決め凸部41が突設されている。
【0048】
[着脱カバーの装着]
図5に示すように、着脱カバー40は、分割カバー31との間に収納空間SPを挟んで装着される。収納空間SPとは、着脱カバー40を本体カバー30に装着した状態で、着脱カバー40と分割カバー31との間に形成される隙間(空間)のことである。収納空間SPには、例えば、釣針、釣糸および小型ライト等の釣り目的に使用する小道具類等を収納することができる。
【0049】
着脱カバー40を本体カバー30に装着する手順について説明する。ユーザ(作業者)は、本体カバー30(分割カバー31)の装着凹部32に着脱カバー40を嵌め込む。なお、小道具類を収納空間SPに収納したい場合には、着脱カバー40を嵌め込む前に、装着凹部32に小道具類を配置する。着脱カバー40を装着凹部32に嵌め込む過程において、着脱カバー40に突設された一対の位置決め凸部41(
図6参照)は、分割カバー31に凹設された一対の位置決め凹部33(
図3および
図4参照)に進入し、装着凹部32に対する着脱カバー40の装着をガイドする。これにより、ユーザは円滑に着脱カバー40を装着凹部32に嵌め込むことができる。
【0050】
着脱カバー40が装着凹部32に嵌め込まれると、着脱カバー40の各ループ面部F2(
図6参照)が分割カバー31の各フック面部F1(
図3および
図4参照)に貼り付く。これにより、着脱カバー40が本体カバー30に装着された状態に保持される(着脱カバー40の装着が完了する)。
【0051】
図2および
図5に示すように、着脱カバー40は、本体カバー30に装着された状態で、船外機1における左右方向の頂部40Tとなる部分を含んでいる。すなわち、船外機1では、モータカバー10(アッパユニット2)が左右方向に最も張り出しており、左右一対の着脱カバー40の湾曲面の頂部40Tが左右方向で最も外側に位置している。なお、頂部40Tは、任意の位置に設定して構わないが、例えば、着脱カバー40を本体カバー30に装着した状態で横倒し用凹部34(横倒し用ボス34A)に対向するように配置されることが好ましい(
図5参照)。また、頂部40Tとは、頂点として捉えてもよいが、所定の範囲を有する面として捉えてもよい。
【0052】
既に説明したが、
図7に示すように、未使用時の船外機1は船舶5から取り外され、横に寝かせた保管姿勢Pで地面GLに置かれる。保管姿勢Pにされた船外機1は、プロペラ26(ギヤケース24等)と着脱カバー40の頂部40Tとを地面GLに接触させている。地面GLに接する下側の着脱カバー40には電動モータ11等の重さ(荷重)が加わり、その荷重は本体カバー30(分割カバー31)の横倒し用ボス34Aを介して電動モータ11に支持される(
図5参照)。横倒し用ボス34Aに覆設されたクッション部材34Bは、本体カバー30および着脱カバー40(または電動モータ11)に加わる荷重を緩衝する。
【0053】
[着脱カバーの分離]
次に、着脱カバー40を本体カバー30から分離する手順について説明する。ユーザ(作業者)は、着脱カバー40の縁に指を掛け、左右方向の外側に引っ張る。着脱カバー40の各ループ面部F2が分割カバー31の各フック面部F1から剥がされ、着脱カバー40が本体カバー30から分離する。
【0054】
着脱カバー40を取り外すことで、収納空間SPに収納された小道具類を取り出すことができる。また、右方の着脱カバー40を取り外すことで、窓部35が露出し、ユーザは窓部35を通して冷却水の残量を確認することができる。また、左方の着脱カバー40を取り外すことで、保持部36に保持された工具が露出し、ユーザは工具を用いて簡単なメンテナンスを行うことができる。
【0055】
以上説明した本実施例に係るモータカバー10(アッパユニット2のカバー構造)によれば、分割カバー31に対して着脱カバー40を着脱することができるため、例えば、ユーザは、既存の着脱カバー40を取り外し、自分の好みのデザインが施された着脱カバー40を装着することができる。これにより、アッパユニット2の一部の意匠を容易に変更することができるため、モータカバー10(の意匠)をカスタマイズしたいというユーザの志向に対応することができる。また、着脱カバー40のみを交換するため、モータカバー10全体を交換する場合に比べて、交換(意匠変更)に係るコストを低減することができる。
【0056】
また、本実施例に係るモータカバー10では、本体カバー30に装着された着脱カバー40が船外機1における左右方向の頂部40Tを含んでいた。船外機1を保管姿勢Pにすると、着脱カバー40の頂部40Tが地面GLに接触するため(
図7参照)、着脱カバー40には傷が付きやすい。この問題に対し、本実施例に係るモータカバー10によれば、着脱カバー40が着脱可能であるため、傷が付いた着脱カバー40を、傷の無い着脱カバー40に容易に交換することができる。
【0057】
なお、船外機1は着脱カバー40を取り外した状態(図示せず)で保管姿勢Pにされてもよい。この場合、本体カバー30(分割カバー31)の装着凹部32の範囲内に存在する頂部(例えば、横倒し用ボス34Aに対応する部分)が地面GLに接触するため、分割カバー31に傷が付くことがあるが、着脱カバー40を装着することで分割カバー31に付いた傷を隠すことができる。
【0058】
また、本実施例に係るモータカバー10では、一対の分割カバー31の組み付けに用いる第1の締結部材37が装着凹部32に設けられ、第2の締結部材38が装着凹部32から下方に外れた位置に設けられていた(
図3参照)。この構成によれば、第1の締結部材37を着脱カバー40によって覆い隠すことができ、第2の締結部材38をアッパユニット2の下部の目立たない位置に配置することができる。これにより、分割カバー31を組み付けた状態で第1および第2の締結部材37,38が目立つことがなく、アッパユニット2の外観を良好なものとすることができる。
【0059】
また、本実施例に係るモータカバー10によれば、分割カバー31と着脱カバー40との間に収納空間SPが形成されるため、例えば、釣針、釣糸および小型ライト等の釣り目的に使用する小道具類等を収納空間SPに収納することができる。
【0060】
また、本実施例に係るモータカバー10によれば、着脱カバー40を取り外すことで窓部35が露出し、窓部35を通して冷却水の残量を簡単に点検することができる。また、保持部36に工具を保持させることができるため、工具を収納したケース等を持ち運ぶ必要が無くなり、保持部36に保持された工具を用いて簡単なメンテナンスを手軽に行うことができる。
【0061】
なお、本実施例に係る船外機1は、アッパユニット2、ミドルユニット3およびロアユニット4の3つの部位に分かれていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ミドルユニット3をロアユニット4の一部として捉え、船外機が上下2つのユニット(アッパユニット2、ロアユニット4)で構成されてもよい(図示せず)。
【0062】
また、本実施例に係る船外機1は、電動モータ11を動力源としていたが、電動モータ11に代えて、小型の内燃機関(例えば、排気を大気開放とする内燃機関)を動力源としてもよいし、電動モータ11と内燃機関とを組み合わせたハイブリッド型の動力源を備えていてもよい(いずれも図示せず)。
【0063】
なお、本実施例に係るモータカバー10(アッパユニット2のカバー構造)では、一対の分割カバー31にそれぞれ着脱カバー40が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、着脱カバー40は、一対の分割カバー31の少なくとも1つの分割カバー31の外面の一部に着脱可能に設けられていればよい。また、着脱カバー40は、側面視で分割カバー31の中央領域に配置されていたが、これに限らず、分割カバー31の中央領域から前後方向または上下方向にずれた位置に配置されてもよい(図示せず)。
【0064】
また、本実施例に係るモータカバー10では、着脱カバー40が湾曲面を有するボウル状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。着脱カバー40は、例えば、円形や多角形を底面とする柱体形状や錐体形状であってもよい(図示せず)。すなわち、着脱カバー40は、頂部40Tを有する形状で、分割カバー31との間に収納空間SPを形成することのできる形状であれば如何なる形状でもよい。
【0065】
また、本実施例に係るモータカバー10では、着脱カバー40と分割カバー31との間に収納空間SPが形成されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、収納空間SPは省略されてもよく、着脱カバー40は収納空間SPを挟まず分割カバー31に接した状態で装着されてもよい(図示せず)。
【0066】
また、本実施例に係るモータカバー10では、一対の分割カバー31が3つの第1の締結部材37と2つの第2の締結部材38とで組み付けられていたが、これに限らず、少なくとも1つの第1の締結部材37と少なくとも1つの第2の締結部材38とを用いて一対の分割カバー31が組み付けられればよい。
【0067】
また、本実施例に係るモータカバー10では、分割カバー31に面ファスナのフック面部F1が固定され、着脱カバー40に面ファスナのループ面部F2が固定されていたが、これに限らず、分割カバー31にループ面部F2が固定され、着脱カバー40にフック面部F1が固定されてもよい(図示せず)。
【0068】
また、本実施例に係るモータカバー10では、分割カバー31に対する着脱カバー40の装着手段に面ファスナを採用したが、本発明はこれに限定されない。他の装着手段として、例えば、分割カバー31と着脱カバー40の何れか一方に設けた突起に、分割カバー31と着脱カバー40の何れか他方に設けたレバーを引っ掛けて倒すことでロックするスナップ錠(ファスナ)を採用してもよい(図示せず)。また、他の装着手段として、例えば、分割カバー31と着脱カバー40の何れか一方に爪状のフックを設け、分割カバー31と着脱カバー40の何れか他方にフックを係止させる凹部を設けてもよい(図示せず)。さらに、他の装着手段として、マグネットを採用してもよい(図示せず)。また、上記した様々な装着手段を組み合わせてもよい(図示せず)。
【0069】
また、本実施例に係るモータカバー10では、窓部35が冷却水の残量を確認するために設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、動力源として内燃機関を用いた場合、窓部35はオイル量を確認するために設けられてもよい。
【0070】
また、本実施例に係るモータカバー10では、右方の分割カバー31に窓部35が設けられ、左方の分割カバー31に保持部36が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、これとは逆に、右方の分割カバー31に保持部36が設けられ、左方の分割カバー31に窓部35が設けられてもよい(図示せず)。他にも、両側の分割カバー31に窓部35と保持部36の少なくとも一方が設けられてもよいし、窓部35および保持部36が省略されてもよい(図示せず)。
【0071】
また、本実施例に係るモータカバー10では、2つの保持部36が設けられていたが、保持部36は少なくとも1つ設けられていればよい。また、保持部36は、工具の形状に合わせた窪みであったが、これに限らず、例えば、工具の一部に引っ掛かるフックであってもよい(図示せず)。また、保持部36には所定の物品の一例としての工具が保持されていたが、本発明はこれに限定されない。物品の他の例としての交換部品等が保持部36に保持されてもよい(図示せず)。
【0072】
なお、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う船外機もまた本発明の技術思想に含まれる。