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特開2022-124907架橋性熱可塑性エラストマー組成物、熱可塑性エラストマー架橋物、およびこれを用いたエンジン吸気エアダクト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124907
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】架橋性熱可塑性エラストマー組成物、熱可塑性エラストマー架橋物、およびこれを用いたエンジン吸気エアダクト
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/10 20060101AFI20220819BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220819BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20220819BHJP
   C08L 61/04 20060101ALI20220819BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L53/02
C08L23/08
C08L61/04
C08L23/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022821
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】村松 駿
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE05Z
4J002BB05Y
4J002BB12W
4J002BB14W
4J002BB15Y
4J002BB18Z
4J002BP01X
4J002CC03Z
4J002FD02Z
4J002FD14Z
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】エンジン吸気ダクトに求められる耐熱性、耐油性、圧縮永久歪の特性や成型加工性を満足するとともに、耐オイル透過性にも優れる組成物を提供する。
【解決手段】(a)プロピレン系単独重合体 10~20質量%、(b)芳香族ビニル単位からなるハードセグメントブロックと、共役ジエン単位からなるソフトセグメントブロックとのブロック共重合体またはその水素添加物 13~30質量%、(c)エチレン系共重合体ゴム 13~22質量%、(d)非芳香族系ゴム用軟化剤 40~50質量%、ここで、上記成分(a)、(b)、(c)、および(d)の合計は100質量%であり、前記成分(b)の芳香族ビニル化合物を含むハードセグメントブロックは、スチレン単位と、置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位とを有し、前記成分(b)および(c)の合計100質量部に対し(e)フェノール樹脂系架橋剤 3~9質量部を含む、架橋性熱可塑性エラストマー組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)プロピレン系単独重合体 10~20質量%、
(b)芳香族ビニル単位からなるハードセグメントブロックと、共役ジエン単位からなるソフトセグメントブロックとのブロック共重合体またはその水素添加物 13~30質量%、
(c)エチレン系共重合体ゴム 13~22質量%、
(d)非芳香族系ゴム用軟化剤 40~50質量%、
ここで、上記成分(a)、(b)、(c)、および(d)の合計は100質量%であり、
前記成分(b)の芳香族ビニル化合物を含むハードセグメントブロックは、スチレン単位と、置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位とを有し、
前記成分(b)および(c)の合計100質量部に対し、
(e)フェノール樹脂系架橋剤 3~9質量部、
を含む、架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記成分(b)と(c)との比率が、質量基準において35~65:65~35である、請求項1に記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記(b)ブロック共重合体またはその水素添物が、
スチレン-メチルスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン、
スチレン-ビニルシクロヘキセン-エチレン-プロピレン-スチレン-ビニルシクロヘキセン、
スチレン-メチルスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン、
スチレン-ビニルシクロヘキセン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-ビニルシクロヘキセン、
スチレン-メチルスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン-メチルスチレン、および
スチレン-ビニルシクロヘキセン-エチレン-ブタジエン-スチレン-ビニルシクロヘキセン、
からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記(a)プロピレン系単独重合体の、JIS K 7112に準拠して230℃、21.18Nの条件にて測定されるMFRが、0.1~3g/10minである、請求項1~3のいずれか一項に記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物を動的架橋した熱可塑性エラストマー架橋物。
【請求項6】
エンジン吸気エアダクト成形物の製造に使用される、請求項5に記載の熱可塑性エラストマー架橋物。
【請求項7】
請求項5または6に記載の熱可塑性エラストマー架橋物からなるエンジン吸気エアダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性熱可塑性エラストマー組成物に関する。より詳しくは、とりわけ耐オイル透過性に優れた架橋性熱可塑性エラストマー組成物、当該組成物を動的架橋した熱可塑性エラストマー架橋物、および当該熱可塑性エラストマー架橋物からなるエンジン吸気エアダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンに空気を供給するエアダクトの一部には、ゴムや熱可塑性エラストマー組成物からなる吸気ダクトが用いられている。近年、材料のリサイクル性、軽量化および加硫工程を含む成型サイクルの簡略化などの観点より、熱可塑性エラストマー製の吸気ダクトの使用が望まれている。
【0003】
ところで、自動車等に使用されている吸気ダクトはエンジンの吸気口に近接してされるため、圧縮永久歪や耐熱性を有していることに加え、エンジン側から流出してくるエンジンオイル、ガソリン、燃焼残分等への耐性が必要である。しかしながら、熱可塑性エラストマーは耐油性が低く、エンジンオイルがダクトホースの外表面に染み出たり、場合によっては膨潤して剛性や強度が低下することがあるため、使用できる用途が限られていた。
【0004】
上記のような問題に対して、例えば特許文献1には、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、プロピレン系重合体幹セグメントに窒素含有ビニル系重合体枝セグメントをグラフトした共重合体および脂肪酸アミドを配合することで耐油性等を改善することが記載されている。また、特許文献2には、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの耐熱性を改善するために、ポリエステルハードセグメントと脂肪族ポリカーボネートセグメントとからなる熱可塑性エラストマーを提案している。
【0005】
また、特許文献3には、熱可塑性エラストマー組成物を動的架橋することで、成形性を維持しながら機械的強度やゴム弾性を改善できることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-222449号公報
【特許文献2】特開2008-150540号公報
【特許文献3】特開2004-315619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1および2等において提案されている熱可塑性エラストマー組成物からなるエンジン吸気ダクトであっても、エンジン側から流出したエンジンオイルが吸気ダクトの内表面に付着すると吸気ダクト外側に透過して、べたつきや外観不良として問題となる場合があり、エンジンオイル耐性、特に耐オイル透過性に改善の余地があった。また、特許文献3等に記載されている動的架橋された熱可塑性エラストマー組成物においても同様に、エンジンオイル耐性が充分でなく、特に耐オイル透過性に課題が残っていた。
【0008】
本発明は、従来の熱可塑性エラストマー組成物の有する問題点に鑑み、エンジン吸気ダクトに求められる耐熱性、耐油性、圧縮永久歪の特性や成型加工性を満足するとともに、耐オイル透過性にも優れる組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリプロピレンとエチレン系共重合体ゴムとからなるオレフィン系熱可塑性エラストマーに、特定のブロック共重合体ゴムを所定量添加することにより、耐熱性や圧縮永久歪等の特性を維持しながら耐油性、とりわけ耐オイル透過性にも優れる架橋性熱可塑性エラストマー組成物を実現できるとの知見を得た。本発明は係る知見によるものである。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] (a)プロピレン系単独重合体 10~20質量%、
(b)芳香族ビニル単位からなるハードセグメントブロックと、共役ジエン単位からなるソフトセグメントブロックとのブロック共重合体またはその水素添加物 13~30質量%、
(c)エチレン系共重合体ゴム 13~22質量%、
(d)非芳香族系ゴム用軟化剤 40~50質量%、
ここで、上記成分(a)、(b)、(c)、および(d)の合計は100質量%であり、
前記成分(b)の芳香族ビニル化合物を含むハードセグメントブロックは、スチレン単位と、置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位とを有し、
前記成分(b)および(c)の合計100質量部に対し、
(e)フェノール樹脂系架橋剤 3~9質量部、
を含む、架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
[2] 前記成分(b)と(c)との比率が、質量基準において35~65:65~35である、[1]に記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
[3] 前記(b)ブロック共重合体またはその水素添物が、
スチレン-メチルスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン、
スチレン-ビニルシクロヘキセン-エチレン-プロピレン-スチレン-ビニルシクロヘキセン、
スチレン-メチルスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン、
スチレン-ビニルシクロヘキセン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-ビニルシクロヘキセン、
スチレン-メチルスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン-メチルスチレン、および
スチレン-ビニルシクロヘキセン-エチレン-ブタジエン-スチレン-ビニルシクロヘキセン、
からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]または[2]に記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
[4] 前記(a)プロピレン系単独重合体の、JIS K 7112に準拠して230℃、21.18Nの条件にて測定されるMFRが、0.1~3g/10minである、[1]~[3]のいずれかに記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物。
[5] [1]~[4]のいずれかに記載の架橋性熱可塑性エラストマー組成物を動的架橋した熱可塑性エラストマー架橋物。
[6] エンジン吸気エアダクト成形物の製造に使用される、[5]に記載の熱可塑性エラストマー架橋物。
[7] [5]または[6]に記載の熱可塑性エラストマー架橋物からなるエンジン吸気エアダクト。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンジン吸気ダクトに求められる耐熱性、耐油性、圧縮永久歪の特性や成型加工性を満足するとともに、耐オイル透過性にも優れる熱可塑性エラストマー組成物を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による架橋性熱可塑性エラストマー組成物は、(a)プロピレン系単独重合体、(b)所定のブロック共重合体またはその水添物、(c)エチレン系共重合体ゴム、(d)非芳香族系ゴム用軟化剤、および(e)フェノール樹脂系架橋剤を必須成分として含む。以下、本発明による架橋性熱可塑性エラストマー組成物を構成する各成分について説明する。
【0013】
<(a)プロピレン系単独重合体>
成分(a)のプロピレン系単独重合体は、プロピレン単位のみで構成される重合体であり、結晶性があり融点が高いため、架橋性熱可塑性エラストマー組成物を動的架橋した架橋物の耐熱性を向上させることができる。また、架橋物中においてエンジンオイルを保持し、エンジンオイルの透過を防ぐ効果を示す。
【0014】
プロピレンの単独重合体は、JIS K7210-1999に準拠して230℃、21.18Nの条件で測定されるMFR(メルトマスフローレート)が0.1~3.0g/10minであることが好ましく、0.3~2.5g/10minであることがより好ましい。(a)プロピレン系単独重合体のMFRが上記範囲内であることにより、成型加工性と耐エンジンオイル透過性とをより高いレベルで両立させることができる。
【0015】
成分(a)プロピレンの単独重合体の融点は、耐熱性の観点から、155℃以上であることが好ましい。融点の上限は特に制限されないが、ポリプロピレン系樹脂であることから通常は約167℃程度が上限である。なお、融点は、特記がない限りDSC型示差走査熱量計(例えば株式会社パーキンエルマージャパンのDiamond)を使用し、230℃で5分間保持した後、10℃/分で-10℃まで冷却し、続いて-10℃で5分間保持した後、10℃/分で230℃まで昇温するプログラムで測定したときのセカンド融解曲線(すなわち最後の昇温過程で測定される融解曲線)において、最も高温側に現れるピークのピークトップ融点を意味する。
【0016】
成分(a)プロピレンの単独重合体の配合量は、成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計100質量%に対して、10~20質量%であり、好ましい配合量は12~19質量%である。10質量%を下回ると成型加工性が悪化し、20質量%を上回ると耐オイル透過性が劣る。
【0017】
<(b)芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体>
成分(b)は、芳香族ビニル単位からなるハードセグメントブロックと、共役ジエン単位からなるソフトセグメントブロックとのブロック共重合体またはその水素添加物である。このようなブロック共重合体またはその水素添加物が配合されることにより、成型加工性を悪化させることなく、耐油性、とりわけ耐オイル透過性を向上させることができる。その理由は明らかではないが、下記のように推察される。すなわち、例えばEPDM等のようなプロピレン系単独重合体とエチレン系共重合体ゴムとからなる熱可塑性エラストマーではオイル保持性が不十分であるところ、上記したような特定のブロック共重合体またはその水素添加物が配合されることにより、耐熱性、圧縮永久歪の特性や成型加工性を維持しながらもオイル保持性を改善できると考えられる。
【0018】
成分(b)の芳香族ビニル単位と共役ジエン単位とのブロック共重合体は、通常、芳香族ビニル化合物に由来する構成単位を主体とするハードセグメントブロックXを1個以上、好ましくは機械的特性の観点から2個以上と、共役ジエン化合物に由来する構成単位を主体とするソフトセグメントブロックYを1個以上とを有するブロック共重合体である。例えば、X-Y、X-Y-X、Y-X-Y-X、およびX-Y-X-Y-X等の構造を有するブロック共重合体を挙げることができる。
【0019】
成分(b)のブロック共重合体の水素添加物は、上記芳香族ビニル単位と共役ジエン単位とのブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合に水素を添加して炭素・炭素単結合にすることにより得られる。上記水素添加は、公知の方法、例えば、不活性溶媒中で水素添加触媒を用いて水素処理することにより行うことができる。
【0020】
芳香族ビニル単位と共役ジエン単位とのブロック共重合体の水素添加物の水素添加率(すなわち、水素添加前のブロック共重合体中の炭素・炭素二重結合の数に対する、水素添加で生じた炭素・炭素単結合の数の割合)は、耐熱性の向上の観点から、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。なお上記水素添加率は、特記がない限り1H-NMRで測定される値を意味する。
【0021】
ハードセグメントブロックを構成する芳香族ビニル単位は、重合性の炭素・炭素二重結合と芳香環とを有する重合性モノマー単位であり、スチレン単位と置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位とを有する共重合体である。置換基を有するスチレン単位としては、例えば、メチルスチレン、エチルスチエン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレン、および炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレン等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレンが好ましい。なお、置換基を有するスチレン単位にはスチレンは含まないものとする。上記ベンゼン骨格含有化合物としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0022】
炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がベンゼン環に結合したアルキルスチレンとしては、例えば、o-アルキルスチレン、m-アルキルスチレン、p-アルキルスチレン、2,4-ジアルキルスチレン、3,5-ジアルキルスチレン、2,4,6-トリアルキルスチレン等のアルキルスチレン類およびこれらアルキルスチレン類におけるアルキル基の水素原子の1個または2個以上がハロゲン原子で置換されたハロゲン化アルキルスチレン類、等が挙げられる。より具体的には、例えば、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジエチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、2,4,6-トリエチルスチレン、o-プロピルスチレン、m-プロピルスチレン、p-プロピルスチレン、2,4-ジプロピルスチレン、3,5-ジプロピルスチレン、2,4,6-トリプロピルスチレン、2-メチル-4-エチルスチレン、3-メチル-5-エチルスチレン、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、2,4-ビス(クロロメチル)スチレン、3,5-ビス(クロロメチル)スチレン、2,4,6-トリ(クロロメチル)スチレン、o-ジクロロメチルスチレン、m-ジクロロメチルスチレン、およびp-ジクロロメチルスチレン等が挙げられる。これらの中でもp-メチルスチレンが架橋性の観点から特に好ましい。
【0023】
置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位としては、例えば、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、エチルシクロヘキセン、t-ブチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセン、および炭素数1~8のアルキル基の少なくとも1個がシクロヘキセン環に結合したアルキルシクロヘキセン等を挙げることができる。これらの中でも、架橋性の観点から、エチルシクロヘキセン、ビニルシクロヘキセンが好ましい。上記置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0024】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン単位と、上記した置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位の1以上とからなる共重合体である。成形加工性および耐オイル透過性の観点からは、成分(b)のハードセグメントは、スチレン単位と置換基を有するスチレン単位の1以上とからなることが好ましい。
【0025】
ハードセグメントブロックXにおける、上記置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位の割合は、架橋性の観点から1質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、さらに100質量%であってもよい。
【0026】
成分(b)のソフトセグメントブロックを構成する共役ジエン単位は、2つの炭素・炭素二重結合が1つの炭素・炭素単結合により結合された構造を有する重合性モノマーである。共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンおよびクロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)等を挙げることができる。これらの中でも、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。ソフトセグメントブロックを構成する共役ジエン単位としては、これらの1種以上を用いることができる。
【0027】
芳香族ビニル単位からなるハードセグメントブロックと、共役ジエン単位からなるソフトセグメントブロックとのブロック共重合体またはその水素添加物における芳香族ビニル単位の割合は、特に制限されないが、機械強度、耐寒性、耐熱性および柔軟性の観点から、成分(b)全体に対して5~50質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。
【0028】
成分(b)のハードセグメントブロックXは、好ましくは、上記した芳香族ビニル単位のみからなるが、ハードセグメントブロックX中に上記した芳香族ビニル単位以外のモノマー単位が含まれていてもよく、例えば上記芳香族ビニル化合物と上記共役ジエン単位との共重合体ブロックであってもよい。ハードセグメントブロックXが上記共役ジエン単位を含む場合、当該ハードセグメントブロック中の上記芳香族ビニル単位の割合は、特に制限されないが、耐熱性の観点から、通常50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、ハードセグメントブロックX中の共役ジエン単位の分布は、特に制限されない。成分(b)のブロック共重合体中にハードセグメントブロックXが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
【0029】
成分(b)のソフトセグメントブロックYは、好ましくは、上記した共役ジエン単位のみからなるが、ソフトセグメントブロックY中に上記した共役ジエン単位以外のモノマー単位が含まれていてもよく、例えば上記芳香族ビニル化合物と上記共役ジエン単位との共重合体ブロックであってもよい。ソフトセグメントブロックYが上記芳香族ビニル単位を含む場合、当該ソフトセグメントブロック中の上記共役ジエン単位の割合は、特に制限されないが、耐熱性の観点から、通常50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。また、ソフトセグメントブロックY中の芳香族ビニル単位の分布は、特に制限されない。また、上記共役ジエン単位と上記芳香族ビニル単位との結合様式も、特に制限されない。成分(b)のブロック共重合体中にソフトセグメントブロックYが2個以上あるとき、これらは同一構造であってもよく、互いに異なる構造であってもよい。
【0030】
成分(b)ブロック共重合体としては、例えば、ハードセグメントブロックが、スチレン単位と、置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位とを有する共重合体である、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-ブタジエン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-イソプレン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体等を挙げることができる。
【0031】
また成分(b)ブロック共重合体の水素添加物としては、例えば、ソフトセグメントブロックがスチレン単位と、置換基を有するスチレン単位および/または置換基を有していてもよいビニルシクロヘキセン単位とを有する共重合体である、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-ブテンブロック共重合体、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-プロピレンブロック共重合体、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-ブテン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体等を挙げることができる。
【0032】
これらの中でも、架橋物とした際の耐摩耗性の観点からは、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体、スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体、およびスチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)-エチレン-ブタジエン-スチレン-メチルスチレン(および/またはビニルシクロヘキセン)ブロック共重合体が好ましく、特に、スチレン-メチルスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレンブロック共重合体、スチレン-メチルスチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレン-メチルスチレンブロック共重合体が好ましい。
【0033】
成分(b)のブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは150,000~500,000である。質量平均分子量は、耐オイル透過性が良好である成形体(架橋物)を得る観点から、Mwの下限値は150,000以上であることが好ましく、180,000以上であることが好ましく、200,000以上であることがさらに好ましい。一方、成形体製造時の加工性の観点から、Mwの上限値は500,000以下であることが好ましく、450,000以下であることがより好ましく、400,000以下であることがさらに好ましい。なお、質量平均分子量(Mw)、特記がない限りゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の値を意味する。
【0034】
上記成分(b)のブロック共重合体またはその水素添加物の配合量は、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計100質量%に対して、13~30質量%であり、好ましくは14~22質量%であり、より好ましくは16~20質量%である。成分(b)の配合量が13質量%未満であると架橋密度が低く耐オイル透過性が悪化し、30質量%を超えると耐油性や成形加工性が悪化する。
【0035】
<(c)エチレン系共重合体ゴム>
成分(c)エチレン系共重合体ゴムは、エチレンとα-オレフィンとを主体とする共重合体ゴムである。上記成分(c)は、熱可塑性エラストマー組成物の架橋物に柔軟性を付与するとともに、圧縮永久歪みの向上(圧縮永久歪みを小さくすること)に寄与する。
【0036】
α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、2-メチル-1-プロペン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、2-エチル-1-ブテン、2,3-ジメチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数3~10のα-オレフィンが好ましい。α-オレフィンとしては、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0037】
上記成分(c)エチレン系共重合体ゴムは、エチレンとα-オレフィンの他に、これらと共重合可能なモノマーに由来する構造単位を含むものであってよい。
【0038】
共重合可能なモノマーとしては、例えば、非共役ジエン系モノマーなどをあげることができる。上記非共役ジエン系モノマーとしては、例えば、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン(MNB)、1,6-オクタジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、3,7-ジメチル-1,6-オクタジエン、1,3-シクロペンタジエン、1,4-シクロヘキサジエン、テトラヒドロインデン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-ノルボルネン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ノルボルナジエン、1,2-ブタジエン、1,4-ペンタジエン等を挙げることができる。上記した共重合可能なモノマーは、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0039】
成分(c)エチレン系共重合体ゴムの具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・1-ブテン共重合体ゴム、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・1-オクテン共重合体ゴム、エチレン・1-オクテン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・1-オクテン共重合体ゴム等を挙げることができる。これらの中でも、柔軟性の点から、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好ましい。成分(c)エチレン系共重合体ゴムとしては、これらの1種または2種以上の混合物を用いることができる。
【0040】
成分(c)エチレン系共重合体ゴムとして、油展されたEPDMを使用することもできる。油展EPDMとしては、EPDMに対しての油展量が約30~120重量%が用いられる。油展には、下記成分(d)を用いるのが好ましい。
【0041】
成分(c)エチレン系共重合体ゴム中のエチレンに由来する構成単位の含有量は、エチレンと共重合されるα-オレフィン等の種類や分子構造(直鎖状であるか、長鎖分岐を有するかなど)にもよるが、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~85質量%である。
【0042】
成分(c)エチレン系共重合体ゴムのASTM D-1646に準拠し、温度125℃で測定したムーニー粘度ML1+4は、特に制限されないが、圧縮永久歪みの観点から、好ましくは10以上、より好ましくは20以上である。一方、成形加工性の観点から、好ましくは180以下、より好ましくは150以下である。
【0043】
成分(c)エチレン系共重合体ゴムのJIS K 7112:1999に準拠して測定した密度は、好ましくは850~900Kg/m、より好ましくは855~890Kg/mである。
【0044】
成分(c)エチレン系共重合体ゴムの配合量は、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計100質量%に対して13~22質量%であり、好ましくは16~20質量%である。成分(c)の配合量が13質量%未満であると圧縮永久歪が悪化し、22質量%を超えると耐オイル透過性が悪化する。なお、成分(c)エチレン系共重合体ゴムとして油展EPDMを使用する場合の配合量はEPDMのみとし、油展した油分が成分(d)非芳香族系ゴム用軟化剤である場合、下記成分(d)の配合量とする。
【0045】
また、上記成分(b)と成分(c)との配合比率は、質量基準において35~65:65~35であることが好ましく、より好ましくは40~60:60~40であり、さらに好ましくは50:50である。成分(b)と成分(c)の配合比率が1に近いほど耐オイル透過性および成形加工性が良好になる。
【0046】
<(d)非芳香族系ゴム用軟化剤>
成分(d)の非芳香族系ゴム用軟化剤は、成形加工性および柔軟性を向上させる働きをする。(d)非芳香族系ゴム用軟化剤は、非芳香族系の鉱物油(石油等に由来する炭化水素化合物)または合成油(合成炭化水素化合物)であり、通常、常温では液状またはゲル状若しくはガム状である。ここで非芳香族系とは、鉱物油については、下記の区分において芳香族系に区分されない(芳香族炭素数が30%未満である)ことを意味する。合成油については、芳香族モノマーを使用していないことを意味する。
【0047】
ゴム用軟化剤として用いられる鉱物油は、パラフィン鎖、ナフテン環、および芳香環の何れか1種以上の組み合わさった混合物であって、ナフテン環炭素数が30~45%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系と呼ばれ、ナフテン系にも芳香族系にも属さず、かつパラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものはパラフィン系と呼ばれて区別されている。
【0048】
成分(d)の非芳香族系ゴム用軟化剤としては、例えば、直鎖状飽和炭化水素、分岐状飽和炭化水素、およびこれらの誘導体などのパラフィン系鉱物油;ナフテン系鉱物油;水素添加ポリイソブチレン、ポリイソブチレン、およびポリブテンなどの合成油;等を挙げることができる。市販例としては、日本油脂株式会社のイソパラフィン系炭化水素油「NAソルベント(商品名)」、出光興産株式会社のn-パラフィン系プロセスオイル「ダイアナプロセスオイルPW-100(商品名)」および「ダイアナプロセスオイルPW-380(商品名)」、出光石油化学株式会社の合成イソパラフィン系炭化水素「IP-ソルベント2835(商品名)」、および三光化学工業株式会社n-パラフィン系プロセスオイル「ネオチオゾール(商品名)」等を挙げることができる。これらの中でも、相容性の観点から、パラフィン系鉱物油が好ましく、芳香族炭素数の少ないパラフィン系鉱物油がより好ましい。また取扱い性の観点から、室温で液状であるものが好ましい。成分(d)の非芳香族系ゴム用軟化剤としては、これら1種以上を用いることができる。
【0049】
(d)非芳香族系ゴム用軟化剤は、耐熱性および取扱い性の観点から、JIS K 2283:2000に準拠し測定された37.8℃における動的粘度が20~1000cStであることが好ましい。また取扱い性の観点から、JIS K 2269:1987に準拠し測定された流動点が-25~-10℃であることが好ましい。さらに、安全性の観点から、JIS K 2265:2007に準拠し測定された引火点(COC)が170~300℃であることが好ましい。
【0050】
(d)非芳香族系ゴム用軟化剤の配合量は、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)および成分(d)の合計100質量%に対して、40~50質量%であり、43~47質量%であることがより好ましい。成分(d)の配合量が40質量%未満であると硬く柔軟性が乏しく成型加工性に劣り、50質量%を超えるとオイル保持ができなくなり、耐オイル透過性が悪化し、またブリードが発生しやすくなる。
【0051】
<(e)フェノール樹脂系架橋剤>
(e)フェノール樹脂系架橋剤は、上記成分(b)同士、上記成分(c)同士、および上記成分(b)と上記成分(c)とを架橋する働きをする。
【0052】
フェノール樹脂系架橋剤は、レゾール樹脂と呼ばれ、アルキル置換フェノールまたは非置換フェノールの、アルカリ媒体中のアルデヒドとの縮合、好ましくはホルムアルデヒドとの縮合、または二官能性フェノールジアルコール類の縮合により製造される。アルキル置換されたフェノールのアルキル置換体は典型的に1~約10の炭素原子を有する。p-位において1~約10の炭素原子を有するアルキル基で置換されたジメチロールフェノール類またはフェノール樹脂が好ましい。それらのフェノール系架橋剤は、典型的には、熱硬化性樹脂であり、フェノール樹脂架橋剤またはフェノール樹脂と呼ばれる。熱可塑性加硫ゴムのフェノール樹脂による架橋の具体的な例としては、米国特許第4,311,628号、米国特許第2,972,600号および3,287,440号に記載され、これらの技術も本発明で用いることができる。
【0053】
好ましいフェノール樹脂系架橋剤としては、例えば、一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。
【0054】
【化1】
【0055】
なお、式中、Qは、-CH-およびCH-O-CH-からなる群より選択される二価基、好ましくは-CH-であり、mは0または1~20の自然数、好ましくは0または1~10の自然数であり、より好ましくは0または1~5の自然数であり、Rは有機基であり、好ましくは炭素原子数1~20の有機基、より好ましくは4~12の有機基であり、有機基はアルキル基であることが好ましい。
【0056】
フェノール樹脂の中でも、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂およびメチロール化アルキルフェノール樹脂が好ましい。また、末端の水酸基を臭素化した臭化フェノール樹脂、例えば臭素化アルキルフェノール樹脂、も好ましい。特に、アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0057】
フェノール樹脂系架橋剤の市販例としては、タッキロール201、202(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250-I(臭素化率4%の臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、タッキロール250-III(臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂、田岡化学工業社製)、PR-4507(群栄化学工業社製)、Vulkaresat 510E(Hoechst社製)、Vulkaresat532E(Hoechst社製)、Vulkaresen E(Hoechst社製)、Vulkaresen 105E(Hoechst社製)、Vulkaresen 130E(Hoechst社製)、Vulkaresol 315E(Hoechst社製)、Amberol ST 137X(Rohm&Haas社製)、スミライトレジンPR-22193(住友デュレズ社製)、Symphorm-C-100(Anchor Chem.社製)、Symphorm-C-1001(Anchor Chem.社製)、タマノル531(荒川化学社製)、Schenectady SP1059(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1045(Schenectady Chem.社製)、CRR-0803(U.C.C社製)、Schenectady SP1055(Schenectady Chem.社製)、Schenectady SP1056(Schenectady Chem.社製)、CRM-0803(昭和ユニオン合成社製)、Vulkadur A(Bayer社製)が挙げられ、その中でもタッキロール201(アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂)を好ましく使用できる。
【0058】
(e)フェノール樹脂系架橋剤の配合量は、成分(b)および成分(c)の合計100質量部に対して、3~9質量部である。好ましくは4~8質量部である。成分(e)の配合量が3質量部未満であると架橋効率が低下し圧縮永久歪および耐オイル透過性が悪化し、9質量部を超える量を配合しても架橋が進まないため意味を成さない。
【0059】
(e)フェノール樹脂系架橋剤は事前にマスターバッチとして、使用することもできる。マスターバッチ化することにより、作業性、分散性等の点で有用である。マスターバッチのバインダー成分としては、本発明に影響を及ぼさない限りにおいて、任意に選択されるが、本発明の組成物の配合剤と同系統の、例えばポリプロピレン系重合体やスチレン系ブロック共重合体を用いるのが好ましい。
【0060】
<その他の成分>
本発明の架橋性熱可塑性エラストマー組成物は、さらに、本発明に影響をおよぼさない限りにおいて、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶核剤、ブロッキング防止剤、シール性改良剤、ステアリン酸、シリコーンオイル等の離型剤、ポリエチレンワックス等の滑剤、着色剤、顔料、無機充填剤(アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ウァラステナイト、クレー)、発泡剤(有機系、無機系)、難燃剤(金属水和物、赤燐、ポリリン酸アンモニウム、アンチモン、シリコーン)などを配合することができる。
【0061】
本発明の架橋性熱可塑性エラストマー組成物は、上記成分(a)~(e)、および必要に応じて、その他の成分を加えて、各成分を同時にあるいは任意の順に加えて混合することにより製造することができる。前述のように成分(e)は前もってマスターバッチ化して使用することもできる。
【0062】
溶融混練の方法は、特に制限はなく、通常公知の方法を使用し得る。例えば、単軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサーまたは各種のニーダー等を使用し得る。例えば、適度なL/Dの二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー等を用いることにより、上記操作を連続して行うこともできる。ここで、溶融混練の温度は、好ましくは160~200℃であり、架橋を十分に進行させるためには混練時間を5~30分とることが好ましい。さらに好ましくは10~20分である。
【0063】
具体的な用途としては、エンジン吸気エアダクトの他に、自動車部品として、ライティングガスケット、3Dエクスチェンジブロークリーンエアダクト、フーロシールヒンジカバー、ベリーパン(ロボテックエクストゥルージョンガスケット)、カップホルダー、サイドブレーキグリップ、シフトノブカバー、シート調整ツマミ、IPスキン、フラッパードアシール、ワイヤーハーネスグロメット、ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションカバーブーツ(ストラットカバーブーツ)、ガラスガイド、インナーベルトラインシール、ルーフガイド、トランクリッドシール、モールデッドクォーターウィンドガスケット、コーナーモールディング、グラスエンキャプシュレーション(ロボテックエクストゥルージョン)、フードシール、グラスエンキャプシュレーション(射出成形)、グラスランチャンネル、セカンダリーシール等が挙げられる。また、工業部品として、高層ビルのカーテンウォールガスケット、窓枠シール、金属類/補強繊維類への接着、パーキングデッキシール、エキスパンションジョイント、地震対策用エキスパンションジョイント、住宅窓ドアシール(例えば共押出等)、住宅ドアシール、手すり表皮、歩行用マット(シート、足ゴム、洗濯機排水ホース(PPとの二色成形等)、洗濯機フタのシール、エアコンモーターマウント、排水管シール(PPとの二色成形等)、ライザーチューブ(PVC等)、キャスターホイール、プリンタロール、ダクトホース、ワイヤー& ケーブル、注射器シュリンジガスケット等が挙げられる。さらに、日用品・部品として、スピーカーサラウンド、ヘアブラシグリップ、かみそりグリップ、化粧品グリップ・フット、歯ブラシグリップ、日用品ブラシグリップ、ほうきの毛先、台所用品グリップ、計量スプーングリップ、枝切りバサミグリップ、ガラス耐熱容器フタ、園芸用品グリップ、ハサミグリップ、ステイプラーグリップ、コンピュータマウス、ゴルフバッグ部品、壁塗りコテグリップ、チェーンソーグリップ、スクリュードライバーグリップ、ハンマーグリップ、電気ドリルグリップ、研磨機グリップ、目覚まし時計等に好ましく使用できる。
【実施例0064】
次に本発明の実施形態について以下の実施例を参照して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0065】
本明細書において、実施例および比較例において用いた試験片の製造方法、評価方法および原料は以下の通りである。
【0066】
<評価方法>
(1)耐オイル透過性
後記する各ペレットをインジェクション成形により、縦30mm、横30mm、深さ2mmの窪み部を略中央に設けた縦130mm、横130mm、厚さ5mmのシートを作製した。得られたシートの窪み部にエンジンオイル(日産自動車株式会社製、日産SNストロングセーブ・X、0W-20)を1.5g滴下して窪み部をエンジンオイルで満たした。窪み部にオイルを満たしたシートを120℃の恒温槽に静置し、72時間経過後、窪み部を設けた側の裏面側に紙ウエス(日本製紙クレシア株式会社製、キムワイプ)を押し当て、押し当てた面の紙ウエス表面を観察し、エンジンオイルの透過性を評価した。評価基準は以下のとおりとした。
○:紙ウエス表面にオイルの転写が見られない
×:紙ウエス表面にオイルの転写が見られる
評価結果は表1および2に示すとおりであった。
【0067】
(2)耐油性(体積膨潤率)
後記する各ペレットを用いて、JIS K 6258に準拠した2mm厚のインジェクションシートを作製し、試験片とした。得られた試験片を120℃のエンジンオイル(日産自動車株式会社製、日産SNストロングセーブ・X、0W-20)に168時間浸漬した後、体積膨潤率を測定した。測定結果は表1および2に示すとおりであった。なお、好ましい体積膨潤率は62%以下である。
【0068】
(3)耐熱性(120℃引張試験での100%モジュラス)
後記する各ペレットを用いて、JIS K 6258(引張試験)に準拠した3号ダンベル形状の2mm厚のインジェクションシートを作製し、試験片として。得られた試験片を120℃の恒温槽に1分間静置した後、引張試験機(株式会社東洋精機製作所製、ストログラフTF-50F)を用いて500mm/minの条件にて100%モジュラスを測定した。測定結果は表1および2に示すとおりであった。なお、好ましい100%モジュラスの範囲は1.1~1.5MPaである。
【0069】
(4)圧縮永久歪
後記する各ペレットを用いて、JIS K 6262に準拠した6.3mm厚の円柱状のプレスシートを作製し、試験片とした。得られた試験片に厚さ25%に相当する圧縮歪みを付与し120℃×22時間保持した後に歪み開放し、1時間後に圧縮永久歪み率(%)を測定した。測定結果は表1および2に示すとおりであった。なお、好ましい圧縮永久歪の範囲は34%未満である。
【0070】
(5)硬度
後記する各ペレットを用いて、JIS K 6253に準拠した6.3mm厚円柱状のプレスシートを作製し、試験片とした。得られた試験片をデュロメータ(高分子計器株式会社製、AUTO DUROMETER P-2型)を用いて、デュロメータ硬さ・タイプA(ショアA)を測定した。測定結果は表1および2に示すとおりであった。なお、好ましい硬度範囲は67~73である。
【0071】
(6)MFR
後記する各ペレットを用いて、JIS K 7112に準拠して230℃、10kgの条件にて測定した。測定結果は表1および2に示すとおりであった。なお、好ましいMFR範囲は14~60である。
【0072】
(7)成型加工性
後記する各ペレットを用いて、自動車エンジンエアダクト用の金型を用いてインジェクション成形を行い、成型加工性の評価を行った。評価基準は以下のおとりとした。
○:良好な形状の成形品が得られる
×:成形条件を調整しても、成形品にワレ、ヒケ、およびフローマークのいずれかが発生し、良好な形状の成形品が得られない
評価結果は表1および2に示すとおりであった。
【0073】
<使用した材料>
成分(a)
(a-1)サンアロマー社製 VX200N
ポリプロピレン単独重合体、MFR:0.5g/10min、融点:164℃
(a-2)サンアロマー社製 PB222A
ポリプロピレンランダム共重合体、MFR:0.75g/10min、融点:146℃
(a-3)サンアロマー社製 VB370A
ポリプロピレンブロック共重合体、MFR:1.3g/10min、融点:162℃
【0074】
成分(b)
(b-1)クラレ社製 セプトンV9461
芳香族ビニル化合物がスチレンとp-メチルスチレンとの共重合体であるSEEPS、質量平均分子量:300,000
(b-2)旭化成ケミカルズ社製 タフテックN510
芳香族ビニル化合物がスチレンと4-エチルシクロヘキセンと4-ビニルシクロヘキセンとの共重合体であるSEBS、質量平均分子量:260,000
(b-3)クラレ社製 セプトン4077
SEPS、水素添加率:90%以上、質量平均分子量:320,000
【0075】
成分(c)
(c-1)ダウケミカル社製 ノーデルIP4760P
EPDM、エチレンに由来する構成単位の含有量:67%、ムーニー粘度:60、密度:0.88Kg/m
(c-2)三井化学社製 3072EPM、
油展率40phrのEPDM、由展成分:パラフィンオイル、エチレンに由来する構成単位の含有量:64%、ムーニー粘度:51、密度:0.87Kg/m
【0076】
成分(d)
(d-1)出光興産社製 PW-100
パラフィンオイル
【0077】
成分(e)
(e-1)田岡化学工業社製 タッキロール202
アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂
【0078】
表1に示す組成に従って上記した各原料を混合し、2軸押出機(日本製鋼所株式会社製、TEX28)を用いて溶融混練し、ペレット化した。得られたペレットを用いて上記したような種々の試験片を作製し、各評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。なお、表中の各成分の配合量(数値)は質量部を表す。また、表1において、実施例7の成分(c)の3072EPMの配合量は、油展成分であるパラフィンオイルは含まず、当該油展のパラフィンオイル量は、成分(d)のパラフィンの配合量の合計値として表記した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】