(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012491
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20220107BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K3/10 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114352
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木内 脩治
【テーマコード(参考)】
5E316
5E343
【Fターム(参考)】
5E316AA15
5E316AA29
5E316AA35
5E316AA43
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC37
5E316DD03
5E316DD17
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5E316EE33
5E316FF07
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5E316GG17
5E316GG18
5E316HH11
5E316JJ02
5E343AA02
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA18
5E343BB02
5E343BB24
5E343DD43
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】支持基板の上に微細な配線層を形成しFC-BGA基板に搭載する方式において、加熱時の基板の反りや、配線層内部の応力に対して耐性のある配線基板及び配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】配線基板は、厚さ方向に貫通する開口部を備えた絶縁樹脂層と、導電性材料で配線部を形成した配線層とを交互に積層形成してなり、前記開口部内に配置された導電性材料から形成されるビア部を介して、前記絶縁樹脂層を挟んだ前記配線層の前記配線部同士が導通する内部配線層と、前記内部配線層の一方の側に隣接して形成され、半導体素子と電気的に接続するためのチップ接続端子を備えた第1端子層と、前記内部配線層の他方の側に隣接して形成され、FC-BGA基板と電気的に接続するためのBGA接続端子を備えた第2端子層とを有し、前記チップ接続端子及び前記BGA接続端子のうち少なくとも一方の厚みは、前記内部配線層の配線層総厚より厚い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に貫通する開口部を備えた絶縁樹脂層と、導電性材料で配線部を形成した配線層とを交互に積層形成してなり、前記開口部内に配置された導電性材料から形成されるビア部を介して、前記絶縁樹脂層を挟んだ前記配線層の前記配線部同士が導通する内部配線層と、
前記内部配線層の一方の側に隣接して形成され、半導体素子と電気的に接続するためのチップ接続端子を備えた第1端子層と、
前記内部配線層の他方の側に隣接して形成され、FC-BGA基板と電気的に接続するためのBGA接続端子を備えた第2端子層とを有し、
前記チップ接続端子及び前記BGA接続端子のうち少なくとも一方の厚みは、前記内部配線層の配線層総厚より厚いことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記チップ接続端子及び前記BGA接続端子のうち少なくとも一方の厚みが、前記内部配線層の配線層総厚の1.3倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1端子層及び前記第2端子層のうち少なくとも一方と前記内部配線層との界面における粗さが、前記内部配線層における前記絶縁樹脂層と前記配線層の界面の粗さの3倍以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記内部配線層は密着層を有し、前記密着層が、少なくともTi,Ni,Pdを含む材料から形成された単層ないし合金層からなることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の配線基板。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法において、
キャリア基板上に、前記第1端子層、前記内部配線層、前記第2端子層の順に積層し、前記内部配線層の配線部を、前記BGA接続端子を介してFC-BGA基板の配線に接続した後、前記キャリア基板を除去することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記配線層の配線形成をダマシン工法で行うことを特徴とする請求項5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1端子層を形成した後に、前記内部配線層を形成する前に、前記第1端子層の上面に粗し加工を施すことを特徴とする請求項5または6に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記内部配線層を形成した後に、前記第2端子層を形成する前に、前記内部配線層の上面に粗し加工を施すことを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記内部配線層の配線部を、前記チップ接続端子を介して半導体素子に接続することを特徴とする請求項5~8のいずれか一項に記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及び配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年半導体装置の高速化、高集積化が進む中で、半導体素子を搭載するFC-BGA(Flip Chip-Ball Grid Array)基板に対しても、半導体素子との接合端子の狭ピッチ化、基板内の配線の微細化が求められている。一方、FC-BGA基板とマザーボードとの接合は、従来とほぼ変わらないピッチの接合端子での接合が要求されている。
【0003】
このような半導体素子との接合端子の狭ピッチ化、これに伴うFC-BGA基板内の配線の微細化に対応するため、FC-BGA基板と半導体素子との間に、インターポーザとも呼ばれる、微細な配線を含む多層配線基板を設ける技術が採用されている。
その一つは、インターポーザを半導体回路の製造技術を用いて、シリコンウェハ上に形成するシリコンインターポーザ技術である。
【0004】
また、インターポーザをシリコンウェハ上に形成するのではなく、FC-BGA基板上に直接作り込む手法も開発されている。これは、FC-BGA基板の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学機械研磨)等で平坦化し、インターポーザとなる多層配線基板を、FC-BGA基板上に直に形成する方式である。かかる技術については、特許文献1に開示されている。
【0005】
さらに、インターポーザ(多層配線基板)をガラス基板等の支持体の上に形成し、これをFC-BGA基板に搭載した後、支持基板を剥離することで、FC-BGA基板上に狭ピッチな多層配線基板を形成する方式もある。かかる技術については、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-225671号公報
【特許文献2】国際公開第2018/047861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリコンインターポーザは、シリコンウェハを利用して、半導体製造における前工程用の設備を用いて製作されることから、微細な配線層を形成することに適している。しかし、シリコンウェハは形状、サイズに制約があり、1枚のウェハから製作できるインターポーザの数が少なく、製造設備も高価であるため、インターポーザも高価となる。また、シリコンウェハが半導体であることから、伝送特性も劣化するという問題がある。
【0008】
また、FC-BGA基板の表面の平坦化を行い、その上にインターポーザとなる多層の配線層を形成する方式においては、シリコンインターポーザに見られる伝送特性の劣化は小さいが、FC-BGA基板自体の製造歩留まりの問題や、FC-BGA基板上に形成する微細配線を形成する際の難易度が高いため、全体的に微細配線形成の製造歩留まりが低いという課題がある。さらにFC-BGA基板の反り、歪みに起因した半導体素子の実装不良等の課題も存在する。
【0009】
さらに、多層配線基板をガラス基板等の支持体の上に形成し、これをFC-BGA基板上に載置した後に、支持体をから剥離することによってFC-BGA基板上に載置する方式においては、支持体の上に多層配線層を形成する際に、セミアディティブ法が用いられることが多い。しかし、セミアディティブ法で用いられる絶縁感光性樹脂層はフィラーを含有せず、後の工程で用いるフィラーを含有したアンダーフィル層、及び、ソルダーレジスト層と比較して、弾性率が低く、且つ、CTE(coefficient of thermal expansion、熱膨張率)が大きい傾向がある。
【0010】
そのため、加熱時には絶縁樹脂層のみが大きく変形するため、基板の反りや、配線層内部に応力を発生させ、ひいては、微細な配線層などの内部の導体層の剥離や、剥離した箇所を起点とするクラックが生じてしまうという問題があった。この現象は、特にチップ接続端子およびFC-BGA接続端子が形成されている層で顕著にみられる。上記2層は接合のために内層に比べ各パターンの面積が大きいため、応力が集中しやすいためである。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、加熱時の基板の反りや、配線層内部の応力に対して耐性のある配線基板及び配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の配線基板は、
厚さ方向に貫通する開口部を備えた絶縁樹脂層と、導電性材料で配線部を形成した配線層とを交互に積層形成してなり、前記開口部内に配置された導電性材料から形成されるビア部を介して、前記絶縁樹脂層を挟んだ前記配線層の前記配線部同士が導通する内部配線層と、
前記内部配線層の一方の側に隣接して形成され、半導体素子と電気的に接続するためのチップ接続端子を備えた第1端子層と、
前記内部配線層の他方の側に隣接して形成され、FC-BGA基板と電気的に接続するためのBGA接続端子を備えた第2端子層とを有し、
前記チップ接続端子及び前記BGA接続端子のうち少なくとも一方の厚みは、前記内部配線層の配線層総厚より厚いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、加熱時の基板の反りや、配線層内部の応力に対して耐性のある配線基板及び配線基板の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本実施形態の配線基板を用いた半導体装置の断面図である。
【
図2】
図2は、支持体に導体層等を形成した状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、表面研磨により導体層及びシード層を研磨した状態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、表面研磨によりシード密着層及び感光性樹脂層を研磨し半導体素子との接合用電極を形成した状態を示す断面図である。
【
図5】
図5は、表面研磨によりビア部及び配線部を形成した状態を示す断面図である。
【
図6】
図6は、
図5を用いて説明した工程を繰り返して多層配線を含む内部配線層を形成した状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、内部配線層上に感光性樹脂層等を形成した状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、不要なシード密着層及びシード層をエッチング除去しソルダーレジスト層を形成した状態を示す断面図である。
【
図9】
図9は、表面処理層、はんだ接合部を形成した状態を示す断面図である。
【
図10】
図10は、支持体上の配線基板が完成した状態を示す断面図である。
【
図11】
図11は、支持体上の配線基板とFC-BGA基板を接合しアンダーフィル層で封止し、剥離層にレーザー光を照射する状態を示す断面図である。
【
図12】
図12は、支持体を除去した状態を示す断面図である。
【
図13】
図13は、実施例における半導体装置に対応する、
図12のA-A′で示す点線で囲った部分の拡大詳細断面図(a)であり、(b)配線部、(c)チップ接続端子、(d)ビア部の拡大図と共に示す。
【
図14】
図14は、比較例における半導体装置に対応する、
図12のA-A′で示す点線で囲った部分の拡大詳細断面図(a)であり、(b)配線部、(c)チップ接続端子、(d)ビア部の拡大図と共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0016】
なお、本開示において、「面」とは、板状部材の面のみならず、板状部材に含まれる層について、板状部材の面と略平行な層の界面も指すことがある。また、「上面」、「下面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層を図示した場合の、図面上の上方又は下方に示される面を意味する。
また、「側面」とは、板状部材や板状部材に含まれる層における面や層の厚みの部分を意味する。さらに、面の一部及び側面を合わせて「端部」ということがある。
また、「上方」とは、板状部材又は層を水平に載置した場合の垂直上方の方向を意味する。さらに、「上方」及びこれと反対の「下方」については、これらを「Z軸方向」ということがあり、水平方向については、「X軸方向」、「Y軸方向」ということがある。
また、「平面形状」、「平面視」とは、上方から面又は層を視認した場合の形状を意味する。さらに、「断面形状」、「断面視」とは、板状部材又は層を特定の方向で切断した場合の水平方向から視認した場合の形状を意味する。
さらに、「中心部」とは、面又は層の周辺部ではない中心部を意味する。そして、「中心方向」とは、面又は層の周辺部から面又は層の平面形状における中心に向かう方向を意味する。
【0017】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
本実施形態の配線基板11は、第1の面において半導体素子と接続可能であり、第2の面において他の配線基板と接続可能である。まず、
図1に示すように、本実施形態の配線基板11を用いて製造する半導体装置16の全体について説明する。
図1において、配線基板11の上面に半導体素子15が接合されており、配線基板11の下面にはFC-BGA基板12が接合され、これらが一体となって半導体装置16を構成している。
【0019】
半導体素子15は、配線基板11とチップ接続端子18を介して接続されたのち、封止樹脂26によって封止固定されている。また、配線基板11は、FC-BGA基板12と接続端子9及びはんだ接合部10を介して接続されたのち、封止樹脂28によって封止固定されている。
後述するように、配線基板11は支持体(キャリア基板)1の上方に剥離層2を介して形成され、支持体1とともにFC-BGA基板12に接合されたのち、支持体1は剥離層によって剥離除去されている。
【0020】
半導体素子15は、FC-BGA基板12に接合された後の配線基板11に接合されてもよいし、FC-BGA基板12に接合される前の配線基板11に接合されていてもよい。以下の実施形態の説明では、配線基板11がFC-BGA基板12に接合された後に配線基板11に半導体素子15が接合される態様について説明する。
【0021】
図2~
図12を用いて、本発明の一実施形態に係る支持体を用いた配線基板の製造工程の一例を説明する。
図2は、支持体1の上方に剥離層2、感光性樹脂層(絶縁樹脂層)3、シード密着層(密着層)4、シード層5、導体層6を形成した状態を示す断面図である。
【0022】
本実施形態では、ダマシン工法を用いて配線を形成している。ダマシン工法とは、以下の工程を含む。
(1)平坦な絶縁層表面に溝を形成する。溝の形成方法としては、感光性の材料を絶縁層に用いてフォトリソグラフィーで形成する場合が多いが、機械的に切削する場合もある。(2)その後、溝の中にメッキ等で導電体を充てんする。これに伴い、溝の外にも導電体が積層されることが多いので、その場合には一旦、絶縁層が導電体で被覆される。
(3)溝の中だけに(摺り切りで)導電体が残るように、絶縁層上の導体に研磨をかける。溝の最上面かその少し下くらいまで削れば、溝の部分のみに導電体が残り、それにより配線を形成できる。
ダマシン工法によれば、絶縁層から配線が出っ張らない精密な加工が可能になるため、きれいな積層構造を形成できる。加えてダマシン工法は、微細配線の形成に好適である。その理由は、配線の形成に際し、溝を形成して導電体を埋め込むだけなので、比較的加工の難易度が高いエッチング工程を用いる必要がないからである。
以下、
図2の構成を得るための工程を順次説明する。
【0023】
(1)支持体1上面への剥離層2の形成
まず、支持体1の一方の面に剥離層2を形成する。
支持体1は、支持体1を通じて剥離層2に光を照射させる場合もあるため、透光性を有するのが有利であり、例えば矩形板状のガラスを用いることができる。矩形板状のガラスは大型化に適しているとともに、ガラスは平坦性に優れており、また、剛性が高いため、支持体上に微細なパターンを形成するのに適している。
また、ガラスはCTEが小さく歪みにくいことから、パターン配置精度及び平坦性の確保に優れている。支持体1としてガラスを用いる場合、ガラスの厚さは、製造プロセスにおける反りの発生を抑制する観点から厚い方が望ましく、例えば0.7mm以上、好ましくは1.1mm以上の厚みである。
【0024】
さらに、ガラスのCTEは3ppm以上、15ppm以下が好ましく、FC-BGA基板12、半導体素子15のCTEとの整合性の観点から9ppm程度がより好ましい。ガラスとしては、例えば石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス、又は、サファイヤガラス等が用いられる。
【0025】
一方、剥離層2に熱によって発泡する樹脂を用いる等、支持体1を剥離する際に支持体1に光の透過性が必要でない場合は、支持体1には、歪みの少ない例えばメタルやセラミックスなどを用いることができる。本実施形態では、剥離層2としてUV光を吸収して剥離可能となる樹脂を用い、支持体1にはガラスを用いる例で説明する。
【0026】
剥離層2は、例えば、UV光などの光を吸収して発熱、もしくは、変質によって剥離可能となる樹脂から形成されていてもよく、熱によって発泡により剥離可能となる樹脂から形成されてもよい。
【0027】
UV光などの光、例えばレーザー光によって剥離可能となる樹脂を用いる場合、剥離層2を設けた側とは反対側の面から支持体1に光を照射して、支持体上の配線基板11と、FC-BGA基板12との接合体から支持体1を取り去ることができる。
【0028】
剥離層2は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、マレイミド樹脂、及び、アクリル樹脂などの有機樹脂や、アモルファスシリコン、ガリウムナイトライド、金属酸化物層などの無機層から選ぶことが出来る。さらに剥離層2に用いる樹脂は、光分解促進剤や光吸収剤、増感剤、フィラー等の添加剤を含有してもよい。さらに剥離層2は、複数層で構成されていてもよく、例えば支持体1上に形成される多層配線層の保護を目的として、剥離層2上にさらに保護層を設けたり、あるいは支持体1との密着性を向上させる層を剥離層2の下層に設けてもよい。さらに剥離層2と多層配線層との間にレーザー光反射層や金属層を設けてもよく、その構成は本実施形態により限定されない。
【0029】
(2)剥離層2上面への感光性樹脂層3の形成
支持体1の上面に剥離層2を形成した後、剥離層2の上面に感光性樹脂層(下層)3を形成する。本実施形態では、感光性樹脂層(下層)3として例えば、感光性のエポキシ系樹脂を用い、これをスピンコート法により形成する。感光性のエポキシ樹脂は比較的低温で硬化することができ、形成後の硬化による収縮が少ないため、その後の微細パターン形成に優れている。
【0030】
感光性樹脂の形成方法としては、液状の感光性樹脂を用いる場合は、スリットコート、カーテンコート、ダイコート、スプレーコート、静電塗布法、インクジェットコート、グラビアコート、スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、スピンコート、ドクターコートより選定できる。フィルム状の感光性樹脂で用いる場合は、ラミネート、真空ラミネート、真空プレスなどが適用できる。感光性樹脂層3は、例えば感光性ポリイミド樹脂、感光性ベンゾシクロブテン樹脂、感光性エポキシ樹脂およびその変性物を絶縁樹脂として用いることも可能である。
【0031】
(3)感光性樹脂層3のパターン化
次いで、フォトリソグラフィーにより、感光性樹脂層(下層)3に開口部を設ける。開口部に対して、現像時の残渣除去を目的として、プラズマ処理を行ってもよい。感光性樹脂層(下層)3の厚みは、本実施形態においては、後述するチップ接続端子18と同じ厚みとなるため、内部配線層の配線層総厚の1.3倍以上に設定され、例えば11μmに形成する。これにより配線基板11の剛性を高めることができる。また平面視の開口部形状は、半導体素子の接合電極のピッチ、形状に応じて設定され、例えばφ25μmの開口形状とし、ピッチは55μmで形成する。なお、チップ接続端子18を形成した感光性樹脂層3を、第1端子層という。
【0032】
(4)シード密着層4、シード層5の形成
次いで、真空中で、シード密着層4、及び、シード層5を形成する。シード密着層4は感光性樹脂層(下層)3へのシード層5の密着性を向上させる層であり、シード層5の剥離を防止する層である。シード層5は配線形成において、電解めっきの給電層として作用する。シード密着層4、及び、シード層5は、例えば、スパッタ法、または蒸着法などにより形成され、例えば、Cu、Ni、Al、Ti、Cr、Mo、W、Ta、Au、Ir、Ru、Pd、Pt、AlSi、AlSiCu、AlCu、NiFe、ITO、IZO、AZO、ZnO、PZT、TiN、Cu3N4、Cu合金や、これらを複数組み合わせたものを適用することができる。
【0033】
本実施形態では、電気特性、製造の容易性の観点およびコスト面を考慮して、シード密着層4にチタン層、続いてシード層5の銅層を順次スパッタリング法で形成する。チタンと銅層の合計の膜厚は、電解めっきの給電層として1μm以下とするのが好ましい。本実施形態では、シード密着層4はTi:50nm、シード層5はCu:300nmの厚みで形成する。
【0034】
(5)チップ接続端子18の形成
次にシード層5の上方に電解めっき6を施した後、チップ接続端子18を形成する。チップ接続端子18は、半導体素子15と接合用の電極となる。電解めっき6としては、電解ニッケルめっき、電解銅めっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等が挙げられるが、電解銅めっきであると簡便に用いることができ安価で、電気伝導性が良好であることから望ましい。
【0035】
電解銅めっきの厚みは、半導体素子15と接合用の電極となり、はんだ接合の観点から1μm以上、且つ、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本実施形態では、チップ接続端子18の厚みは、内部配線層の配線層総厚の1.3倍以上に設定され、感光性樹脂層(下層)3の開口部にはCu:1.3μmの厚みで形成し、感光性樹脂層(下層)3の上部にはCu:2μmの厚みで形成する。
【0036】
【0037】
(6)電解めっき6の研磨
次に
図3に示すように、CMP加工等によって銅層を研磨し、チップ接続端子18の上部、及びシード層5を除去する。シード密着層4とチップ接続端子18が表面となるように研磨加工を行う。本実施形態では、感光性樹脂層3の上部のチップ接続端子18ではCu:2μm、及び、シード層5ではCu:300nmを研磨により除去する。
【0038】
(7)シード密着層4、絶縁樹脂層3の研磨
次に
図4に示すように、グラインダ加工による切削、プラズマアッシングなどの加工等を再度行い、シード密着層4と、感光性樹脂層3を除去する。これは、チップ接続端子18及びシード層5の化学的な研磨と異なり、砥石による物理的な切削加工である。かかる工程を切削で行うことにより、チップ接続端子18及び感光性樹脂層3の表面粗さを大きくする。工程簡略化の目的で前述の工程(
図3)においても、
図4に示す工程と同様の切削を用いてもよく、同等の研磨手法を用いた後、プラズマによるドライアッシングなどで表面を粗化してもよい。そして、研磨を行った後に残ったチップ接続端子18が、半導体素子15と接合用の電極となる。
【0039】
(8)開口部の下側形成
次に
図5を参照して、上記の工程と同様に感光性樹脂層(下層)3とチップ接続端子18の上面に感光性樹脂層(中間層)3を形成する。感光性樹脂層(中間層)3の厚みは、開口部に形成する導体層の厚みに応じて設定され、例えば2μmに形成する。また平面視の開口部形状は、チップ接続端子18との接続の観点から設定され、例えばφ10μmの開口部形状を形成する。この開口部は多層配線の上下層をつなぐビア部の形状である。
【0040】
(9)開口部の上側形成
さらに、上記の工程と同様に感光性樹脂層(中間層)3の上面に、感光性樹脂層(上層)3を形成する。感光性樹脂層(上層)3の厚みは、開口部に形成する導体層の厚みに応じて設定され、例えば2μmを形成する。また平面視の開口部形状は、積層体の接続性の観点から設定され下部の開口形状外側を囲って形成され、例えばφ25μmの開口形状を形成する。この開口部は多層配線の配線部、及び、上下層をつなぐビア部の一部分の形状である。
【0041】
(10)シード密着層4、シード層5の形成
次いで、真空中で、シード密着層4、及び、シード層5を形成する。本実施形態ではシード密着層4をTi:50nm、シード層5をCu:300nmの厚みで形成する。
【0042】
(11)導体層6の形成
次に、シード層5の表面に電解めっきにより導体層6を形成する。導体層6はビア部、及び、配線部となる。導体層6の電解めっきは、電解ニッケルめっき、電解銅めっき、電解クロムめっき、電解Pdめっき、電解金めっき、電解ロジウムめっき、電解イリジウムめっき等が挙げられるが、電解銅めっきであると簡便に用いることができ安価で、電気伝導性が良好であることから望ましい。電解銅めっきの厚みは、配線部の電気抵抗の観点から0.5μm以上、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本実施形態では、電解銅めっきを、感光性樹脂層(上層)3の2重の開口部ではCu:6μmの厚みで形成し、感光性樹脂層(中間層)3の1重の開口部ではCu:4μmの厚みで形成し、感光性樹脂層3(下層)の上部ではCu:2μmの厚みで形成する。
【0043】
(12)導体層6の研磨
次に
図5に示すように、CMP(化学機械研磨)加工等によって研磨することにより、導体層6の上部、及び、シード層5を除去する。続けて、CMP(化学機械研磨)加工等によって研磨を再度行い、シード密着層4と、感光性樹脂層(上層)3を除去する。そして、CMPを行った後に残った導体層6が、ビア部、及び、配線部の導体部となる。本実施形態では、感光性樹脂層3の上部のチップ接続端子18ではCu:2μm、及び、シード層5ではCu:300nmを研磨により除去する。ここでは、ビア部を備えた感光性樹脂層3を絶縁樹脂層といい、配線部を備えた感光性樹脂層3を配線層という。
【0044】
(13)工程の繰り返しによる内部配線層の形成
以上の工程を繰り返して、
図6に示すような内部配線層を第1端子層上に形成する。本実施形態では、絶縁樹脂層を挟んだ2層の配線層を含む内部配線層を形成しており、絶縁樹脂層のビア部を介して配線層の配線部同士が導通する。
【0045】
(14)接続端子19の形成
次いで、FC-BGA基板12との接続端子(BGA端子)19を形成する工程を説明する。内部配線層の上面に、上記工程と同様に感光性樹脂層3を形成する。
【0046】
(15)シード密着層4及びシード層5の形成
次いで、上記の工程と同様に真空中で、シード密着層4、及び、シード層5を形成する。
【0047】
本実施形態では、FC-BGA基板12との接続端子19と接合する内部配線層の表面を、グラインダ加工等の切削、プラズマアッシングなどの加工(これらを総称して、粗し加工という)を行い、内部配線層の上面(第2端子層との界面となる)の粗さを、内部配線層の絶縁樹脂層と配線層との間の界面の粗さの3倍以上とする。
【0048】
(16)レジストパターン7の形成
次いで
図7に示すように、レジストパターン7を形成し、その後、電解めっきにより接続端子19を形成する。接続端子19はFC-BGA基板12と接合用の電極となる。接続端子19を含むソルダーレジスト層8(後述)が、第2端子層を構成する。電解銅めっきの厚みは、はんだ接合の観点から1μm以上、且つ、生産性の観点から30μm以下であることが望ましい。本実施形態においては、接続端子19の厚み(内部配線層側に突出するビア部を含む場合には、そのビア部を含まない厚みとする)は、内部配線層の配線層総厚の1.3倍以上に設定され、感光性樹脂層3の開口部にはCu:13μmの厚みで形成し、感光性樹脂層3の上部にはCu:11μmの厚みで形成する。
【0049】
(17)レジストパターン7の除去
その後、レジストパターン7を除去し、不要なシード密着層4、及び、シード層5をエッチング除去する。この状態で表面に残った接続端子19が、FC-BGA基板12と接合用の電極となる
【0050】
(18)ソルダーレジスト層8の形成
次に、
図8に示すように、ソルダーレジスト層8を形成する。ソルダーレジスト層8は、感光性樹脂層3を覆うように、露光、現像し、接続端子19が露出するように開口部を備えるように形成する。なお、ソルダーレジスト層8の材料としては、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができる。本実施形態では、ソルダーレジスト層8としてフィラーを含有した感光性エポキシ樹脂を使用してソルダーレジスト層8を形成する。
【0051】
(19)表面処理層9の形成
次に、接続端子19の表面の酸化防止とはんだバンプの濡れ性をよくするため、表面処理層9を設ける。本実施形態では、表面処理層9として無電解Ni/Pd/Auめっきを成膜する。なお、表面処理層9には、OSP(Organic Soiderability Preservative:水溶性プレフラックスによる表面処理)膜を形成してもよいし、また、無電解スズめっき、無電解Ni/Auめっきなどから適宜用途に応じて選択しても良い。次いで、
図9に示すように表面処理層9上に、はんだ材料を搭載した後、一度溶融冷却して固着させることで、はんだ接合部10を得る。これにより、支持体1上に形成された支持体1上の配線基板11が完成する。
【0052】
(20)配線基板11とFC-BGA基板12との接合
次いで、
図10に示すように、支持体1上の配線基板11とFC-BGA基板12を接合した後、接合部をアンダーフィル層で封止する。アンダーフィル層としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、オキセタン樹脂、及びマレイミド樹脂の1種又はこれらの樹脂の2種類以上が混合された樹脂に、フィラーとしてのシリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、又は酸化亜鉛等が加えられた材料が用いられる。アンダーフィル層は、液状の樹脂を充填させることで形成される。
【0053】
(21)支持体1の剥離
次いで、
図11に示すように、配線基板11から支持体1を剥離する。剥離層2は、レーザー光13を照射することによって剥離可能な状態とされる。すなわち、支持体1の背面より、すなわち、支持体1のFC-BGA基板12とは逆側の面からレーザー光13を支持体1との界面に形成された剥離層2に照射し、剥離可能な状態とすることで、支持体1を取り外すことが可能となる。次に、
図12に示すように支持体1を除去した後、剥離層2とシード密着層4、及び、シード層5を除去し配線基板14を得る。
【0054】
(22)半導体装置16の完成
その後、配線基板11に半導体素子15を実装して、
図1に示すような半導体装置16が完成する。この際、半導体素子15の実装に先立って、表面に露出したチップ接続端子18上に、酸化防止とはんだバンプの濡れ性をよくするため、無電解Ni/Pd/Auめっき、OSP、無電解スズめっき、無電解Ni/Auめっきなどの表面処理を施してもよい。
【0055】
<効果の検証>
次に、上述したような配線基板14の構成の作用効果について、
図13に示す実施例と、
図14に示す比較例1とを比較して説明する。
【0056】
従来の同様の積層構成を持つ配線基板では、感光性樹脂層3がフィラーを持たないため、アンダーフィルや、ソルダーレジスト層8よりCTEは大きく、弾性率は低いため、加熱時に上凸に反る傾向があった。この場合、上方側の変形が大きく伸びる方向で、剥離が(底面を除く)上面、側面で発生していた。
【0057】
このことを踏まえ、本実施例では、支持体上の配線基板11の導体層6の総厚より、半導体素子と接合するチップ接続端子18及びFC-BGA基板と接続する接続端子19の厚みが1.3倍以上となるよう厚く形成した。具体的に本実施例では、内部配線層の配線層総厚(ここでは2層の配線層の合計厚)8μmに対して、チップ接続端子18と接続端子19の厚みを11μmに設定した。銅は樹脂に比べ、CTEが低く、弾性率が高いため、配線基板内の配線の銅の比率を大きくすれば、変形量を抑えることができる。ただし内部配線層の配線部では銅厚を増やすことが困難なため、チップ接続端子18、FC-BGA基板と接続する接続端子19の銅厚を増やすことにより、配線基板11の銅の比率を増やし、それにより基板の反り、接合の剥離を防いでいる。
【0058】
また、本実施例では、製造段階の加工で、チップ接続端子18を形成した第1端子層の表面粗さ、及び、接続端子19を含む第2端子層を積層する内部配線層の表面粗さ(すなわち層界面の表面粗さ)を、内部配線層の絶縁樹脂層と配線層の界面の表面粗さ(算術平均粗さ)Ra=50nmの3倍であるRa=150nmに設定した。FC-BGA基板などで使用されるシリカ混合の樹脂に比べ、内部配線層の樹脂は樹脂界面でのクラックが多く発生する傾向がある。そこで、密着性を向上させる目的で上記表面粗さを大きくすることで層間にアンカー効果を発現させ、反り、応力による層間剥離を防いでいる。
【0059】
チップ接続端子18と接続端子19の厚みを内部配線層の配線層総厚と同じ厚さにし、研磨工程を全層同一とし、かつ第1端子層と内部配線層との界面の粗さ、内部配線層と第2端子層との界面の粗さ、内部配線層の絶縁樹脂層と配線層の界面の粗さをほぼ均一にした構成を比較例1とした。
【0060】
この比較例1では、内部配線層の配線層総厚8μmに対して、チップ接続端子18と接続端子19の厚みを8μmにして作成し、各層界面の表面粗さRa=50nmとした。
【0061】
<効果の確認>
実施例で作製した配線基板14と比較例1で作製した配線基板14を、ピーク温度260℃のリフロー試験(JEDEC J-STD-020準拠)に繰り返し供試した。比較例1で作製した配線基板14では、チップ接続端子18と感光性樹脂層3の間で剥離が観察され、剥離した箇所を起点として感光性樹脂層3に亀裂が確認された。一方、実施例で作製した配線基板14では剥離も観察されず、感光性樹脂層3の亀裂も発生しなかった。
【0062】
(実施例2と比較例2)
上記実施例での効果を詳細に比較するため、支持体上の配線基板11の導体層6の総厚より、半導体素子と接合するチップ接続端子18及びFC-BGA基板と接続する接続端子19の厚みが1.3倍以上となるよう厚く形成した。基板において、内部配線層の絶縁樹脂層と配線層の界面の表面粗さ(算術平均粗さ)を、Ra=50nm(比較例2)、及びその3倍であるRa=150nm(実施例2)、となるように条件を変更して、各々の基板を上記実施例と同様にピーク温度260℃のリフロー試験(JEDEC J-STD-020準拠)に繰り返し供試した。その結果、実施例2及び比較例2のいずれでも剥離も観察されず、感光性樹脂層3の亀裂も発生しなかったが、光学測定装置によって、基板の反りを観察した所、Ra=50nmの基板(比較例2)では、Ra=150nmの基板(実施例2)に比べて反りの量が2倍となっていることが確認された。このことから、接続端子の厚み増加と、界面の粗さを組み合わせることにより、基板の特性が向上したことが確認された。
【0063】
上述の実施形態は一例であって、その他、具体的な細部構造などについては適宜に変更可能であることは勿論である。例えばチップ接続端子18、または、接続端子19の厚みを内部配線層の配線層総厚より厚くすれば足りる。さらに、第1端子層と内部配線層との界面、または、内部配線層と第2端子層との界面の粗さを、内部配線層の絶縁樹脂層と配線層の界面の粗さより(好ましくは3倍以上)、粗くすれば足りる。
【0064】
本発明は、主基板とICチップとの間に介在するインターポーザ等を備えた配線基板を有する半導体装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1 支持体
2 剥離層
3 感光性樹脂層
4 シード密着層
5 シード層
6 導体層
7 レジストパターン
8 ソルダーレジスト層
9 表面処理層
10 はんだ接合部
11 支持体上の配線基板
12 FC-BGA基板
13 レーザー光
14 配線基板
15 半導体素子
16 半導体装置
18 チップ接続端子
19 接続端子