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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124914
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】保冷材提供システム
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/38 20060101AFI20220819BHJP
   C09K 5/08 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B65D81/38 Q
C09K5/08 101
B65D81/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022835
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】三澤 誠
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB20
3E067FC01
3E067GA01
3E067GA11
3E067GD01
3E067GD02
(57)【要約】
【課題】食品を購入した店舗において使用済の保冷材と冷却済の保冷材とを交換することにより、常に冷却済の保冷材を使用することができる保冷材提供システムを提供すること。
【解決手段】保冷材提供システム100は、食品を購入可能な地点Yにおいて使用済保冷材900Bの返却と引き換えに凍結保冷材900Aを提供するシステムであり、地点Xから地点Yに凍結保冷材900Aを搬送する供給搬送ステップと地点Yから地点Xに使用済保冷材900Bを搬送する回収搬送ステップとを有し地点Xと地点Yとの間で保冷材900を循環させる供給サイクルC1と、地点Yから地点Zに凍結保冷材900Aを用いて低温に保たれた食品を搬送する保冷材使用ステップと地点Zから地点Yに使用済保冷材900Bを搬送する保冷材返却ステップとを有し地点Yと地点Zとの間で保冷材900を循環させる消費サイクルC2と、を有する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を購入可能な地点Yにおいて、使用済の保冷材の返却と引き換えに冷却済の保冷材を提供することを特徴とする保冷材提供システム。
【請求項2】
地点Xから前記地点Yに前記冷却済の保冷材を搬送する供給搬送ステップと、前記地点Yから前記地点Xに前記使用済の保冷材を搬送する回収搬送ステップと、を有し、前記地点Xと前記地点Yとの間で前記保冷材を循環させる供給サイクルと、
前記地点Yから地点Zに前記冷却済の保冷材を用いて低温に保たれた対象物を搬送する保冷材使用ステップと、前記地点Zから前記地点Yに前記使用済の保冷材を搬送する保冷材返却ステップと、を有し、前記地点Yと前記地点Zとの間で前記保冷材を循環させる消費サイクルと、を有する請求項1に記載の保冷材提供システム。
【請求項3】
前記供給搬送ステップでは、前記冷却済の保冷材は、要冷凍物と共に前記地点Yに搬送される請求項2に記載の保冷材提供システム。
【請求項4】
前記地点Xには、前記使用済の保冷材を凍結させる凍結装置が設置され、
前記地点Yには、前記冷却済の保冷材を提供する保冷材提供装置が設置されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の保冷材提供システム。
【請求項5】
前記保冷材に広告を記載する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の保冷材提供システム。
【請求項6】
前記保冷材の履歴を記録する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の保冷材提供システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷材提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品を冷却し当該食品の腐敗を防止するための保冷材が広く使用されている(例えば、特許文献1参照)。保冷材は、一般家庭においては食品購入時によく用いられ、食品購入時に、購入した食品と共に保冷材を保冷バッグに収容することにより、帰宅するまでの間、保冷バッグ内の食品を冷却することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-048318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、近年の夫婦共働き世帯の増加により、仕事からの帰宅途中に食品を購入せざるを得ないケースが増えている。その場合、出勤時に冷却済みの保冷材を携帯する必要がある。しかしながら、これでは、仕事が終わって買い物を済ませた頃には保冷材がすっかり温くなっているため、せっかく保冷材を携帯したにも関わらず、その冷却材では購入した食品を冷却することができない。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、食品を購入した店舗において使用済の保冷材と冷却済の保冷材とを交換することにより、常に冷却済の保冷材を使用することができる保冷材提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0007】
(1) 食品を購入可能な地点Yにおいて、使用済の保冷材の返却と引き換えに冷却済の保冷材を提供することを特徴とする保冷材提供システム。
【0008】
(2) 地点Xから前記地点Yに前記冷却済の保冷材を搬送する供給搬送ステップと、前記地点Yから前記地点Xに前記使用済の保冷材を搬送する回収搬送ステップと、を有し、前記地点Xと前記地点Yとの間で前記保冷材を循環させる供給サイクルと、
地点Yから地点Zに前記冷却済の保冷材を用いて低温に保たれた対象物を搬送する保冷材使用ステップと、前記地点Zから前記地点Yに前記使用済の保冷材を搬送する保冷材返却ステップと、を有し、前記地点Yと前記地点Zとの間で前記保冷材を循環させる消費サイクルと、を有する上記(1)に記載の保冷材提供システム。
【0009】
(3) 前記供給搬送ステップでは、前記冷却済の保冷材は、要冷凍物と共に前記地点Yに搬送される上記(2)に記載の保冷材提供システム。
【0010】
(4) 前記地点Xには、前記使用済の保冷材を凍結させる凍結装置が設置され、
前記地点Yには、前記冷却済の保冷材を提供する保冷材提供装置が設置されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の保冷材提供システム。
【0011】
(5) 前記保冷材に広告を記載する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の保冷材提供システム。
【0012】
(6) 前記保冷材の履歴を記録する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の保冷材提供システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明の保冷材提供システムによれば、消費者は、食品を購入可能な地点Yにおいて使用済の保冷材の返却と引き換えに冷却済の保冷材を受け取ることができる。そのため、地点Yで購入した食品を、地点Yで受け取った冷却済の保冷材を用いて冷却することができる。そのため、地点Yからの移動中における食品の腐敗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の好適な実施形態に係る保冷材提供システムの構成を示す図である。
図2】保冷材提供装置を示す平面図である。
図3】供給サイクルを示すブロック図である。
図4】消費サイクルを示すブロック図である。
図5】保冷材を示す斜視図である。
図6】保冷材の使用履歴を示す図である。
図7】保冷材提供システムが作成する流通計画を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の保冷材提供システムの好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1に示す保冷材提供システム100は、食品販売店舗200において消費者に凍結済(冷却済)の保冷材900を提供することを目的とするシステムである。保冷材提供システム100によれば、消費者は、食品販売店舗200で凍結済の保冷材900(以下「凍結保冷材900A」とも言う。)を受け取ることができる。
【0017】
そのため、消費者は、食品販売店舗200で受け取った凍結保冷材900Aを用いて食品販売店舗200で購入した食品を保冷し、食品販売店舗200から自宅400までの移動中、食品を低温に保つことができる。また、消費者は、使用済の保冷材900(以下「使用済保冷材900B」とも言う。)を次回の買い物時に返却することにより、再び凍結保冷材900Aを受け取ることができる。
【0018】
例えば、近年の夫婦共働き世帯の増加により、仕事終わりの帰宅途中に買い物をせざるを得ないケースが増えている。そのような場合、凍結保冷材900Aを出勤時に携帯する必要があるが、これでは仕事が終わって買い物を済ませる頃には凍結保冷材900Aがすっかり融解し、食品を冷却することができない。そのため、上述のように、食品販売店舗200で凍結保冷材900Aを受け取れる保冷材提供システム100は、凍結保冷材900Aを買い物のタイミングに合わせて携帯することができない消費者にとって特に便利なシステムとなる。
【0019】
ここで、日本国内の話をする。日本国内のコールドチェーン(低温流通網)は、世界トップレベルと言われているが、『ラストワンマイル』とも称される食品販売店舗200から自宅400までの間の流通網(以下「ラストワンマイル物流網」とも言う。)が十分に整備されていない。また、地球温暖化により夏季の気温が上昇傾向にあるため、食品にとってより過酷な環境となり易い。そのため、ラストワンマイルの間でも食品の融解や腐敗が生じる可能性が十分にある。したがって、保冷材提供システム100によってラストワンマイル物流網を整備することにより、食品の融解や腐敗を減らし、近年において世界的問題となっている食品ロスを大幅に削減することができる。保冷材提供システム100は、食品ロスの削減と保冷材900のリサイクルとを同時に実現することにより、環境負荷を低減したエコなシステムを実現している。
【0020】
以下、保冷材提供システム100について詳細に説明する。なお、本実施形態では、消費者は、食品販売店舗200で食品を購入した後、自宅400へ帰宅する設定としている。食品販売店舗200で食品を購入した後の目的地は、自宅400に限定されず、例えば、会社、事務所、知人宅、別荘等いかなる場所であってもよい。
【0021】
食品は、主に、アイスクリーム、冷凍餃子、冷凍ハンバーグ、冷凍焼きおにぎり等の各種冷凍食品、魚(刺身、切り身等を含む)、牛肉、豚肉、鶏肉、牛乳、ヨーグルト等の各種冷蔵食品(日配品)等の冷凍保存あるいは冷蔵保存を必要とする食品や、低温での保存が推奨されている食品を言う。また、食品には、医薬品、特定保健用食品等も含まれるものとする。ただし、食品としては、特に限定されない。
【0022】
また、保冷材900は、狭義では「食品が温まるのを防ぎ、食品を低温に保つ」機能を有するものであるが、これに限定されず、さらに「食品を冷却する」機能を有するものも含まれる。保冷材900は、容器に保冷剤が収容されたものであり、容器が柔軟なソフトタイプのものであってもよいし、容器が硬質なハードタイプのものであってもよい。また、保冷剤は、蓄冷剤とも呼ばれることもある。保冷剤と蓄冷剤の違いは、明確ではないが、蓄冷成分の殆んど水分であり氷点下数℃で凍るものが保冷剤であり、蓄冷成分に化学薬品を使って氷点下10℃以下になるものが蓄冷剤であるとも言われている。
【0023】
保冷材提供システム100は、互いに離れた3つの地点X、Y、Z間で保冷材900を循環させ、保冷材900を繰り返し使用する。本実施形態では、地点Xが食品配送センター300であり、地点Yが食品販売店舗200であり、地点Zが自宅400である。食品販売店舗200は、スーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストア、デパート、ショッピングセンター、ショッピングモール等であり、食品を購入することができれば如何なる形態の店舗であってもよい。また、食品配送センター300は、食品を一時保管し、そこから周辺の対象店舗へ必要数の食品を配送する拠点(ベース)となる場所である。ただし、地点X、Y、Zとしては、それぞれ、特に限定されない。
【0024】
保冷材提供システム100は、食品配送センター300と食品販売店舗200との間で保冷材900を循環させる供給側サイクルC1と、食品販売店舗200と自宅400との間で保冷材900を循環させる消費側サイクルC2と、を有する。供給側サイクルC1と消費側サイクルC2とをバランスよく行うことにより、食品配送センター300、食品販売店舗200および自宅400の間で保冷材900を過不足なく循環させることができる。
【0025】
保冷材提供システム100は、そのシステムを容易に実現するために、食品配送センター300に設置され、保冷材900を凍結させる凍結装置500と、食品販売店舗200に設置され、使用済保冷材900Bの回収と凍結保冷材900Aの提供とを自動で行う保冷材提供装置600(自動販売機)と、を用いる。ただし、用いる設備としては、特に限定されない。
【0026】
図2に示すように、保冷材提供装置600は、筐体610を有する。また、筐体610の正面には、使用済保冷材900Bの返却口611と、凍結保冷材900Aの取り出し口612と、金銭投入口613と、釣銭排出口614と、入力部615と、画面616と、ログイン用のリーダー617と、が設けられている。また、筐体610内には、返却された使用済保冷材900Bを回収する回収庫620と、凍結保冷材900Aを収容する収容庫630と、収容庫630内の凍結保冷材900Aを冷却し、凍結状態を維持する冷却装置640と、を有する。ただし、保冷材提供装置600の構成としては、その機能を発揮することができれば、特に限定されない。
【0027】
なお、食品販売店舗200に保冷材提供装置600を設置するとは、食品販売店舗200内に保冷材提供装置600を設置する以外にも、社会通念上それと実質的に同一である場合を含む。例えば、食品販売店舗200の外であってもよいし、食品販売店舗200と隣接または近接する別店舗であってもよい。また、食品販売店舗200がショッピングセンターやショッピングモールにテナントとして入居している場合には、ショッピングモール内の別店舗、サービスカウンター等であってもよい。
【0028】
図3に示すように、供給側サイクルC1は、凍結装置500で保冷材900を凍結させて凍結保冷材900Aを得る凍結ステップS11と、凍結保冷材900Aを食品販売店舗200に搬送する供給搬送ステップS12と、食品販売店舗200で回収した使用済保冷材900Bを食品配送センター300に搬送する回収搬送ステップS13と、を有し、ステップS11~S13を繰り返す。
【0029】
<凍結ステップS11>
本ステップでは、食品配送センター300に設置された凍結装置500を用いて使用済保冷材900Bを凍結させる。凍結装置500としては、例えば、食品配送センター300に既に設置してある冷凍食品用の冷凍保管庫を用いることができる。既存の設備を使用することにより、保冷材提供システム100の導入コストを大幅に削減することができる。ただし、凍結装置500としては、特に限定されず、例えば、保冷材900専用の凍結装置であってもよい。この場合、凍結装置の構成は、特に限定されず、例えば、庫内に供給する冷気により保冷材900を凍結させる構成や、液状の冷媒中に保冷材900を浸漬させて保冷材900を凍結させる構成等が挙げられる。
【0030】
<供給搬送ステップS12>
本ステップでは、凍結保冷材900Aを食品販売店舗200に搬送する。本実施形態では、食品配送センター300に保管された冷凍食品を食品販売店舗200に配送する冷凍配送車800Aの空きスペースを借りて凍結保冷材900Aを食品販売店舗200に搬送する。このように、冷凍食品と共に凍結保冷材900Aを搬送することにより、凍結保冷材900Aの搬送コストを削減することができる。また、冷凍配送車800は、冷凍食品を食品販売店舗200に届けるために一日に1回から数回程度、定期的に運行されることが多いため、凍結保冷材900Aを食品販売店舗200に周期的に安定して搬送することができる。
【0031】
特に、本実施形態では、食品配送センター300に凍結装置500を設置している。そのため、冷凍食品と凍結保冷材900Aとを同時に冷凍配送車800Aに積載することができる。そのため、凍結保冷材900Aの搬送に伴う人員増加や作業時間延長を防ぐことができる。ただし、凍結装置500の設置場所は、特に限定されず、食品配送センター300でなくてもよい。例えば、保冷材900の凍結、搬送を専門にあつかう保冷材凍結センターを設け、当該センター内に凍結装置500を設置してもよい。この場合、冷凍配送車800Aに食品を積載する前または後に保冷材凍結センターを経由し、凍結保冷材900Aを積載すればよい。
【0032】
なお、搬送方法としては、特に限定されない。例えば、専用の冷凍配送車を用いて凍結保冷材900Aを搬送してもよいし、宅配業者に配送を依頼してもよい。これにより、冷凍食品の配送スケジュールや各回の冷凍食品の積載量に影響されずに所定数量の凍結保冷材900Aを所定時刻に食品販売店舗200に搬送することができる。また、食品配送センター300から食品販売店舗200までの距離によっては、冷凍配送車800Aに替えて、冷蔵食品(日配品)を配送するための冷蔵配送車、常温品を配送するための常温配送車等を用いてもよい。また、自動車に限定されず、例えば、船、ドローン等であってもよい。また、例えば、食品配送センター300と食品販売店舗200とが同敷地内に並設されている場合には、コンベアー、フォークリフト、AGV(無人搬送車)等によって凍結保冷材900Aを搬送してもよい。
【0033】
<回収搬送ステップS13>
本ステップは、食品販売店舗200で回収した使用済保冷材900Bを食品配送センター300に搬送する。本実施形態では、食品を配送し終え食品配送センター300に戻る配送車800Bを用いて使用済保冷材900Bを食品配送センター300に搬送する。これにより、使用済保冷材900Bの搬送コストを削減することができる。また、配送車800Bは、食品を食品販売店舗200に届けるために一日に1回から数回程度、定期的に運行されることが多いため、使用済保冷材900Bを食品配送センター300に周期的に安定して搬送することができる。
【0034】
なお、本ステップでは、搬送中、使用済保冷材900Bを冷却する必要がない。そのため、配送車800Bは、冷凍配送車、冷蔵配送車、常温配送車等、如何なる配送車であってもよい。また、例えば、専用の配送車を用いて使用済保冷材900Bを搬送してもよい。これにより、食品の配送スケジュールに影響されずに所定数量の使用済保冷材900Bを所定時刻に食品配送センター300に搬送することができる。また、自動車に限定されず、例えば、船、ドローン等であってもよい。また、例えば、食品配送センター300と食品販売店舗200とが同敷地内に並設されているような場合には、コンベアー、フォークリフト、AGV(無人搬送車)等によって使用済保冷材900Bを搬送してもよい。
【0035】
以上、供給側サイクルC1について説明した。次に、消費側サイクルC2について説明する。図4に示すように、消費側サイクルC2は、食品配送センター300から搬送された凍結保冷材900Aを凍結状態のまま保管する保管ステップS21と、使用済保冷材900Bを回収する回収ステップS22と、凍結保冷材900Aを消費者に提供する提供ステップS23と、を有する。
【0036】
<保管ステップS21>
本ステップは、食品配送センター300から搬送された凍結保冷材900Aを凍結状態のまま保管する。本実施形態では、凍結保冷材900Aは、搬送後、速やかに保冷材提供装置600の収容庫630に収容され、冷却装置640の稼働により、その凍結状態が維持される。
【0037】
<回収ステップS22>
本ステップでは、消費者から使用済保冷材900Bを回収する。本実施形態では、使用済保冷材900Bは、返却口611に投入され、回収庫620に回収される。
【0038】
<提供ステップS23>
本ステップでは、使用済保冷材900Bの返却あるいは金銭と引き換えに凍結保冷材900Aを消費者に提供する。消費者が使用済保冷材900Bを持っている場合、保冷材提供装置600は、使用済保冷材900Bが返却口611から返却されると、収容庫630内の凍結保冷材900Aを取り出し口612に排出し、消費者に提供する。一方、消費者が使用済保冷材900Bを持っていない場合(保冷材900を一度も購入したことがない場合、持ってくるのを忘れた場合)、保冷材提供装置600は、金銭投入と入力部615への入力とに応じて、収容庫630内の凍結保冷材900Aを取り出し口612に排出し、消費者に提供する。これにより、消費者は、凍結保冷材900Aを受け取ることができ、受け取った凍結保冷材900Aを食品の冷却に用いることができる。そのため、消費者は、食品販売店舗200で食品を購入した後、食品販売店舗200から自宅400までの移動中、食品を冷却することができ、食品の融解や腐敗を防ぐことができる。消費者は、次回の買い物の際に、今回使用した凍結保冷材900Aを使用済保冷材900Bとして保冷材提供装置600に返却することにより、新たな凍結保冷材900Aを受け取ることができる。
【0039】
なお、購入した食品の内容や気温によっては、凍結保冷材900Aが不要な場合もあり、使用済保冷材900Bの返却だけをしたい場合も考えられる。そこで、保冷材提供システム100は、使用済保冷材900Bの返却だけを受け付けることができる。その方法としては、特に限定されないが、例えば、使用済保冷材900Bの返却を受け付けると、保冷材900の購入代金を消費者に返金してもよい。また、次回に凍結保冷材900Aを無料で受け取ることができるチケットを発券してもよい。また、保冷材提供システム100を利用するための会員証が存在する場合には、その会員証に利用履歴を記憶し、次回、この利用履歴を参照することにより凍結保冷材900Aを無料で受け取ることができるようにしてもよい。このように、使用済保冷材900Bの返却だけを受け付けることができれば、保冷材提供システム100の利便性がより向上する。
【0040】
以上、保冷材提供システム100について説明した。次に、保冷材提供システム100で用いられる保冷材900について説明する。なお、保冷材900は、以下の構成に限定されない。
【0041】
図5に示すように、保冷材900には、広告を表示するスペースとして広告表示部910が設けられている。広告掲載希望者は、有償にて広告表示部910に広告を掲載することができる。図示の広告表示部910は、面積が異なる小スペース911および大スペース912をそれぞれ2つずつ有し、掲載スペースを選択できるようになっている。広告を有償とすることにより、その利益によって保冷材提供システム100の導入コスト、ランニングコストの全部または一部を賄うことができる。したがって、保冷材提供システム100の導入がより容易となるし、利益を上げやすくもなる。なお、広告掲載料は、無償であってもよい。また、保冷材提供システム100の運営者が自ら、食品販売店舗200のおすすめ品、特売品、新規店舗の開店案内等に関する広告を掲載してもよい。これにより、消費者の購買意欲を高めることができる。
【0042】
保冷材提供システム100では、使用済保冷材900Bの返却と引き換えに凍結保冷材900Aを提供するため、消費者には前回と異なる凍結保冷材900Aが提供される。そこで、保冷材900毎または複数の保冷材900からなるグループ毎に異なる広告を掲載しておけば、様々な広告を消費者に順次見せることができる。具体的には、例えば、広告Lが掲載された保冷材900と、広告Mが掲載された保冷材900と、広告Nが掲載された保冷材900と、があり、広告Lが掲載された保冷材900が使用済保冷材900Bとして返却された場合、保冷材提供装置600は、広告Mか広告Nが掲載された保冷材900を新たな凍結保冷材900Aとして消費者に提供する。これにより、種々の広告を消費者に見せることができる。或いは、消費者が広告L、M、Nのうち、広告Lに最も高い興味を有することが推測できる場合には、広告Lが掲載された保冷材900を凍結保冷材900Aとして繰り返し提供してもよい。つまり、消費者の好みに応じて提供する凍結保冷材900Aを選択してもよい。
【0043】
また、保冷材900には、保冷材提供システム100を通じたエコプロジェクトに協賛する協賛企業名(個人名も含む)を表示するスペースとして協賛企業表示部920を有する。協賛企業は、協賛企業表示部920に企業名を載せることにより、消費者に対して環境意識の高い企業であることを宣伝することができ、企業のイメージアップを図ることができる。また、保冷材提供システム100の運営者は、協賛企業からの協賛金によって保冷材提供システム100の導入コスト、ランニングコストの全部または一部を賄うことができる。したがって、保冷材提供システム100の導入がより容易となるし、利益を上げやすくもなる。
【0044】
また、各保冷材900には、搬送履歴が記録される記録部930が設けられている。記録部930としては、特に限定されず、例えば、メモリーを備えたICチップ、バーコードに代表される一次元コード、QRコード(登録商標)に代表される二次元コード等が挙げられる。本実施形態では、記録部930として二次元コード931を用いている。二次元コード931は、十分な記録容量を有し、さらには、導入コストが安く、凍結時や搬送時に故障、破損し難いといったメリットがある。図6に示すように、二次元コード931には、個体を識別する識別コードが設定されており、さらに、使用履歴が記録、蓄積されるようになっている。これにより、各保冷材900の管理が容易となる。特に、本実施形態では、食品販売店舗200のレジと連動させて消費者の購入履歴(POS)を紐付けて記録することにより、有用な個人情報を取得することができ、その後の運営に役立てることができる。
【0045】
また、図1に示すように、保冷材提供システム100は、食品配送センター300側の保冷材900を管理する端末P300と、食品販売店舗200側の保冷材900を管理する端末P200と、を有する。端末P300、P200は、各保冷材900の二次元コード931を読み取り、そこに記録されている使用履歴を逐次更新する。これら端末P300、P200は、インターネット等のネットワークNTを介してサーバーSVRに接続されており、サーバーSVRに各保冷材900の履歴を送信する。サーバーSVRは、端末P300、P200から受信した各保冷材900の履歴や、そこから判明する各種情報を記憶し、保管する。各種情報としては、例えば、次のような情報が挙げられる。
【0046】
・食品配送センター300にある凍結保冷材900Aの数
・食品配送センター300にある使用済保冷材900Bの数
・食品販売店舗200にある凍結保冷材900Aの数
・食品販売店舗200にある使用済保冷材900Bの数
・凍結保冷材900Aの提供数
・凍結保冷材900Aの提供日時
・凍結保冷材900Aの返却数
・凍結保冷材900Aの返却日時
・凍結保冷材900Aを提供した消費者の情報
【0047】
また、サーバーSVRにはAI(人工知能)が搭載されている。例えば、AIは、サーバーSVRに保管された各保冷材900の使用履歴、各種情報、外部から取得した天気予報等に基づいて予想される保冷材900の循環サイクルを算出し、食品販売店舗200にある凍結保冷材900Aが過不足を起こさないような流通計画を作成する。流通計画としては、特に限定されないが、例えば、図7に示すようなものであり、過去の使用履歴や天気予報に基づいて算出した所定時刻毎の凍結保冷材900Aの想定必要数、想定必要数を維持するために最適な凍結保冷材900Aの配送時刻および配送量、配送時刻から算出される使用済保冷材900Bの凍結開始時刻および凍結量等が含まれている。これにより、凍結保冷材900Aを過不足なく準備することができる。そのため、過度な数の保冷材900を凍結させてしまうことによるエネルギーの無駄使いや、凍結保冷材900Aを消費者への提供までの間、長時間冷凍保管しておかなければならないことによるエネルギーの無駄使いを防ぐことができる。そのため、ランニングコストの削減を図ることができると共に、環境負荷を低減することができる。
【0048】
なお、端末P200、P300は、AIが作成した流通計画を実際の状況に基づいて修正することもできる。これにより、流通計画の精度がより向上する。修正内容は、サーバーSRVに記憶され、次回の流通計画の作成に役立てられる。また、端末P200、P300は、流通計画とは別に、凍結保冷材900Aの搬送依頼を行うこともできる。これにより、実際の状況に基づいて食品販売店舗200側の凍結保冷材900Aの在庫を管理することができる。
【0049】
端末P200、P300およびサーバーSRVは、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0050】
以上、保冷材提供システム100について説明した。次に、保冷材提供システム100の利用方法について簡単に説明する。ただし、保冷材提供システム100の利用方法としては、以下の方法に限定されない。
【0051】
まず、保冷材提供システム100は、消費者に対して、保冷材提供システム100を利用するための会員登録を求める。会員登録により消費者の氏名、住所、電話番号等の個人情報がサーバーSRVに登録される。保冷材提供システム100は、会員登録が済むと消費者に対して会員証を発行する。会員証は、カード等の会員証であってもよいし、スマートフォン等の携帯端末に格納される電子会員証であってもよい。以上により、保冷材提供システム100を利用する準備が整う。
【0052】
次に、保冷材提供システム100は、消費者に対し、会員証を保冷材提供装置600のリーダー617にかざし保冷材提供システム100にログインするよう要求する。ログインが完了すると、保冷材提供システム100は、消費者に対し、目的が凍結保冷材900Aの受け取りであるか、使用済保冷材900Bの返却であるかの返答を求める。
【0053】
使用済保冷材900Bの返却である場合、保冷材提供システム100は、消費者に対して返却口611への使用済保冷材900Bの返却を促し、返却口611から返却された使用済保冷材900Bと同じ数の凍結保冷材900Aを次回以降、消費者が無償で受け取れる状態とする(この状態をストック状態とも言う)。
【0054】
凍結保冷材900Aの受け取りである場合、保冷材提供システム100は、さらに、使用済保冷材900Bとの交換による受け取りであるか、ストック状態の使用済保冷材900Bの受け取りであるか、新規購入による受け取りであるかの回答を求める。使用済保冷材900Bとの交換による受け取りの場合、保冷材提供システム100は、消費者に対して返却口611への使用済保冷材900Bの返却を促し、返却口611から返却された使用済保冷材900Bと同じ数の凍結保冷材900Aを消費者に提供する。また、ストック状態の使用済保冷材900Bの受け取りの場合、保冷材提供システム100は、ストックされている数を上限として、指定された数の凍結保冷材900Aを消費者に提供する。また、新規購入の場合、保冷材提供システム100は、保冷材提供装置600への金銭投入、入力部615への入力を確認後、指定された数の凍結保冷材900Aを消費者に提供する。
【0055】
以上により、消費者は、凍結保冷材900Aを受け取ることができ、その日購入した食品の冷却に用いることができる。これにより、自宅400に到着するまでの間、食品を低温に保つことができ、食品の腐敗を防ぐことができる。なお、凍結保冷材900Aを受け取るタイミングは、食品購入後であってもよいし、食品購入前であってもよい。食品購入前に凍結保冷材900Aを受け取れば、凍結保冷材900Aを用いて、手に取ってから会計を済ませるまでの間もその食品を冷却することができる。自宅400に到着し、食品が冷蔵冷凍庫に収容されれば、保冷材900は、凍結保冷材900Aとしての役目が終わり、使用済保冷材900Bとなる。消費者は、次回の買い物時に使用済保冷材900Bを持参すればよい。
【0056】
ここで、保冷材提供システム100は、保冷材提供装置600内に大きさ(容量)の異なる複数種(大、中、小)の凍結保冷材900Aを保管してもよい。消費者は、自宅400までの距離、購入した食品の種類や量等を考慮して、これら複数種の凍結保冷材900Aから自身に適したものを選択して受け取ることができる。同様に、保冷材提供システム100は、保冷材提供装置600内に融点の異なる複数種(融点0℃、-10℃、-20℃)の凍結保冷材900Aを保管してもよい。消費者は、自宅400までの距離、購入した食品の種類や量等を考慮して、これら複数種の凍結保冷材900Aから自身に適したものを選択して受け取ることができる。
【0057】
また、保冷材提供システム100は、掲載広告が異なる複数種の凍結保冷材900Aを保管してもよい。消費者が凍結保冷材900Aの受け取りを希望した場合、保冷材提供システム100は、これら複数の凍結保冷材900Aの中から消費者が興味を示す確率がより高い広告が掲載された凍結保冷材900Aを選択して提供する。これにより、消費者の購買意欲を高めることができ、優れた宣伝効果が発揮される。凍結保冷材900Aの選択は、サーバーSVR内のAIによって、サーバーSRVに記録された消費者の購入情報(POS)に基づいて行われる。
【0058】
また、保冷材提供システム100は、消費者のログイン中は、保冷材提供装置600の画面616に広告を表示し、消費者への宣伝を行う。これにより、消費者の購買意欲を高めることができる。広告は、静止画であっても動画であってもよい。この際、保冷材提供システム100は、消費者が興味を示す確率が高い広告を選択して表示する。これにより、消費者の購買意欲を高めることができ、優れた宣伝効果が発揮される。広告の選択は、サーバーSRVに記録された消費者の購入情報(POS)に基づき、サーバーSVR内のAIによって行われる。広告掲載希望者は、有償にて画面616に広告を掲載することができる。これにより、その利益によって保冷材提供システム100の導入コスト、ランニングコストの全部または一部を賄うことができる。したがって、保冷材提供システム100の導入がより容易となるし、利益を上げやすくもなる。なお、広告掲載料は、無償であってもよい。また、保冷材提供システム100の運営者が自ら、食品販売店舗200のおすすめ品、特売品、新規店舗の開店案内等に関する広告を掲載してもよい。
【0059】
以上、本発明の保冷材提供システムを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0060】
なお、前述した実施形態では、供給サイクルC1および消費サイクルC2において保冷材900をそれ単体で循環させているが、これに限定されない。例えば、供給サイクルC1および消費サイクルC2の少なくとも一方において、保冷材900を収容した保冷バッグごと循環させてもよい。すなわち、保冷材900入りの保冷バッグごと消費者に提供し、回収してもよい。また、例えば、保冷バッグに保冷剤や蓄冷剤が埋設されており、保冷バッグ自体が保冷材としての機能を有する場合には、保冷バッグが上述した実施形態の保冷材900に相当する。
【0061】
また、前述した実施形態では、保冷材提供装置600によって保冷材900の回収と提供とを自動で行っているが、保冷材900の回収および提供の手段は、特に限定されない。例えば、保冷材900の回収と提供の少なくとも一方を手動で行ってもよい。この場合、例えば、レジ脇に凍結保冷材900Bを保管する冷凍庫を設置しておき、消費者には食品販売店舗200での会計時に使用済保冷材900Bをレジへ返却してもらい、レジでの会計後、レジ脇に設置された冷凍庫から凍結保冷材900を消費者に提供してもよい。この際、消費者自ら冷凍庫から凍結保冷材900を取り出してもよいし、係員が冷凍庫から凍結保冷材900を取り出し、消費者に受け渡してもよい。
【0062】
また、前述した実施形態では、凍結させた保冷材900を凍結済保冷材900Aとして消費者に提供しているが、冷却済であり、食品を低温に保つ機能を発揮することができれば、凍結していなくてもよい。
【符号の説明】
【0063】
100…保冷材提供システム 200…食品販売店舗 300…食品配送センター 400…自宅 500…凍結装置 600…保冷材提供装置 610…筐体 611…返却口 612…取り出し口 613…金銭投入口 614…釣銭排出口 615…入力部 616…画面 617…リーダー 620…回収庫 630…収容庫 640…冷却装置 800…冷凍配送車 800A…冷凍配送車 800B…配送車 900…保冷材 900A…凍結保冷材 900B…使用済保冷材 910…広告表示部 911…小スペース 912…大スペース 920…協賛企業表示部 930…記録部 931…二次元コード C1…供給側サイクル C2…消費側サイクル NT…ネットワーク P200…端末 P300…端末 S11…凍結ステップ S12…供給搬送ステップ S13…回収搬送ステップ S21…保管ステップ S22…回収ステップ S23…提供ステップ SRV…サーバー SVR…サーバー X…地点 Y…地点 Z…地点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7