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特開2022-124933機器塗装劣化評価プログラムとそのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124933
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】機器塗装劣化評価プログラムとそのシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20220819BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20220819BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20220819BHJP
   G06Q 10/00 20120101ALI20220819BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20220819BHJP
【FI】
G01N17/00
G01N21/88
G06T7/00 350B
G06T7/00 610Z
G06Q10/00 300
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022861
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】花嶋 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】島林 順一
(72)【発明者】
【氏名】石原 大輝
【テーマコード(参考)】
2G050
2G051
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
2G050AA04
2G050EB07
2G050EC01
2G051AA88
2G051AB12
2G051CA04
2G051GD05
5L049CC15
5L096AA06
5L096BA03
5L096GA30
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】点検作業における目視での判断を必要とすることなく塗装劣化度を客観的かつ効率的に高精度で評価しつつ、塗装劣化度及び塗装劣化促進要素の他、塗装が施されている機器の仕様及び塗装の仕様をも考慮して経時劣化を評価することで高精度に塗装修理時期を評価できる機器塗装劣化評価プログラム及びそのシステムを提供する。
【解決手段】機器塗装劣化評価システム1aは、表面に塗装を施した機器の前記塗装の劣化度を評価するために、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データ11と塗装劣化度教師データ13とを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデル16を備え、塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データ22を学習済の塗装劣化度評価モデル16に入力し、評価された塗装の劣化度を塗装劣化度評価データ25として出力する評価部6を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって、表面に塗装を施した機器の前記塗装の劣化度を評価するために実行されるプログラムであって、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルを備え、この学習済の塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データを入力して前記塗装の前記劣化度を評価し、評価された前記劣化度を塗装劣化度評価データとして出力することを特徴とする機器塗装劣化評価プログラム。
【請求項2】
コンピュータによって、表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために実行されるプログラムであって、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第1の塗装修理時期評価モデルを備え、この学習済の第1の塗装修理時期評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力することを特徴とする機器塗装劣化評価プログラム。
【請求項3】
コンピュータによって、表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために実行されるプログラムであって、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルと、この学習済の塗装劣化度評価モデルを用いて評価した第1の塗装劣化度評価データを教師データとする塗装劣化度評価教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと前記塗装劣化度評価教師データを出力した際に前記塗装劣化度評価モデルに入力した第1の塗装劣化画像データに対応する塗装修理時期を教師データとする塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第2の塗装修理時期評価モデルと、を備え、この学習済の第2の塗装修理時期評価モデルに、学習済の前記塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した第2の塗装劣化画像データを入力して出力された第2の塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力することを特徴とする機器塗装劣化評価プログラム。
【請求項4】
表面に塗装を施した機器の前記塗装の劣化度を評価するために、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルを備え、この学習済の塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データを入力して前記塗装の前記劣化度を評価し、評価された前記劣化度を塗装劣化度評価データとして出力する評価部を有することを特徴とする機器塗装劣化評価システム。
【請求項5】
表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第1の塗装修理時期評価モデルを備え、この学習済の第1の塗装修理時期評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力する評価部を有することを特徴とする機器塗装劣化評価システム。
【請求項6】
表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルと、この学習済の塗装劣化度評価モデルを用いて評価した第1の塗装劣化度評価データを教師データとする塗装劣化度評価教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと前記塗装劣化度評価教師データを出力した際に前記塗装劣化度評価モデルに入力した第1の塗装劣化画像データに対応する塗装修理時期を教師データとする塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第2の塗装修理時期評価モデルと、を備え、この学習済の第2の塗装修理時期評価モデルに、学習済の前記塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した第2の塗装劣化画像データを入力して出力された第2の塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力する評価部を有することを特徴とする機器塗装劣化評価システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電所や変電所等に設置される設備や機器の塗装に対する機器塗装劣化評価プログラムとそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発電所や変電所等では、経年によって劣化していく設備や機器の塗装に対し、塗装修理の基本的な考え方や劣化状態の評価方法等、機器塗装に関する標準的な事項を定め、適正な劣化評価に基づき、合理的な塗装計画を策定することで、効果的に機器塗装の維持や管理を実行している。しかしながら、これらの劣化評価の基となっているのは人間の目視によるものであり、定められた標準的な事項に基づいて劣化評価を行うにしても客観的な評価が難しく、また、熟練度によってもバラツキを生じる可能性を否定できなかった。
また、発電所等でなくとも、様々な構造物の塗膜に対してその劣化状態を診断、検査、管理することは一般的に実行されている。
例えば、特許文献1には、鋼構造物の塗膜及び塗膜下素地の劣化状態を診断する「塗膜診断システム」という発明が開示されており、この発明では、診断領域毎の複数の調査(劣化面積率の目視による測定、劣化面積率の画像処理による解析、塗膜した金属腐食測定、塗膜の化学分析、塗膜の膜厚測定、塗膜の付着性測定)結果をデータベースに登録して総合判定を行うことが可能である。
また、特許文献2には、「塗膜劣化診断システム」という名称の発明が開示されており、この発明では、リモートで構造物表面の塗膜面を撮影し画像データから塗膜面の剥がれ状態、錆の状態及び色の状態に基づいて劣化状態の評価を行うことが可能である。
さらに、特許文献3には、「塗装面検査装置、学習器、及びプログラム」という名称で、撮影画像を用いて、サビ色以外の劣化領域として、塗装の割れ、剥がれ及び膨れ領域を特定すべく、ニューラルネットワーク等を用いて、「訓練用入力情報」と「訓練用出力情報」との組で機械学習させる技術が開示されている。
最後に、特許文献4には、「塗装管理システム」という名称で、大型構造物やプラント設備の塗装状態を管理するシステムで、塗装状態(錆び発生と塗膜はがれ)を観測するエリアを決定してそのエリアに対し、定期的にデジタル写真撮影を行い、画像解析処理を行いつつ、塗装劣化進行状況を点数化するか、あるいは画像解析で得られる定量値を基に、補修時期を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-236609号公報
【特許文献2】特開2005-283519号公報
【特許文献3】特開2020-159793号公報
【特許文献4】特開2004-20498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの特許文献に開示される発明では、構造物に対する塗装面の劣化状態の検査や診断あるいは管理を行うことがある程度客観的に可能であるものの、機器が使用される環境や機器の内部にどのような装置類が配置されてどのような内部環境となっているかあるいは外形がどのような状態にあるか等の機器仕様が影響する効果や、その機器の仕様に基づいてどのような塗料が用いられどの程度の塗膜が施されているかといった塗装仕様の効果については反映されていないため経時的な精度という観点からは不足する可能性があるという課題があった。
そして、その結果、一時点では塗装面の劣化状態については診断や評価が可能であるものの、特に、その時点からどれくらいの時間が経過すると再塗装や補修を行う必要があるかという評価についての精度が不足してしまうという課題があった。
【0005】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、点検作業における目視での判断を必要とすることなく塗装劣化度を客観的かつ効率的に高精度で評価しつつ、塗装劣化度及び塗装劣化促進要素の他、塗装が施されている機器の仕様及び塗装の仕様をも考慮して経時劣化を評価することで高精度に塗装修理時期を評価できる機器塗装劣化評価プログラム及びそのシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、第1の発明である機器塗装劣化評価プログラムは、コンピュータによって、表面に塗装を施した機器の前記塗装の劣化度を評価するために実行されるプログラムであって、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルを備え、この学習済の塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データを入力して前記塗装の前記劣化度を評価し、評価された前記劣化度を塗装劣化度評価データとして出力することを特徴とするものである。
上記構成の機器塗装劣化評価プログラムでは、学習済の塗装劣化度評価モデルが塗装劣化画像データの入力によって塗装劣化度評価データを出力するように作用する。
【0007】
また、第2の発明である機器塗装劣化評価プログラムは、コンピュータによって、表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために実行されるプログラムであって、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第1の塗装修理時期評価モデルを備え、この学習済の第1の塗装修理時期評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力することを特徴とするものである。
上記構成の機器塗装劣化評価プログラムでは、学習済の第1の塗装修理時期評価モデルが塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データの入力によってその機器の塗装修理時期評価データを出力するように作用する。
【0008】
第3の発明である機器塗装劣化評価プログラムは、コンピュータによって、表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために実行されるプログラムであって、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルと、この学習済の塗装劣化度評価モデルを用いて評価した第1の塗装劣化度評価データを教師データとする塗装劣化度評価教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと前記塗装劣化度評価教師データを出力した際に前記塗装劣化度評価モデルに入力した第1の塗装劣化画像データに対応する塗装修理時期を教師データとする塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第2の塗装修理時期評価モデルと、を備え、この学習済の第2の塗装修理時期評価モデルに、学習済の前記塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した第2の塗装劣化画像データを入力して出力された第2の塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力することを特徴とするものである。
上記構成の機器塗装劣化評価プログラムでは、学習済の第2の塗装修理時期評価モデルが学習済の塗装劣化度評価モデルによって出力された塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データの入力によってその機器の塗装修理時期評価データを出力するように作用する。
【0009】
第4の発明である機器塗装劣化評価システムは、表面に塗装を施した機器の前記塗装の劣化度を評価するために、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルを備え、この学習済の塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データを入力して前記塗装の前記劣化度を評価し、評価された前記劣化度を塗装劣化度評価データとして出力する評価部を有することを特徴とするものである。
上記構成の機器塗装劣化評価システムでは、学習済の塗装劣化度評価モデルを備えた評価部が塗装劣化画像データの入力によって塗装の劣化度を評価し、塗装劣化度評価データとして出力するように作用する。
【0010】
第5の発明である機器塗装劣化評価システムは、表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第1の塗装修理時期評価モデルを備え、この学習済の第1の塗装修理時期評価モデルに前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力する評価部を有することを特徴とするものである。
上記構成の機器塗装劣化評価システムでは、学習済の第1の塗装修理時期評価モデルを備えた評価部が塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データの入力によって塗装の修理時期を評価し、塗装修理時期評価データとして出力するように作用する。
【0011】
第6の発明である機器塗装劣化評価システムは、表面に塗装を施した機器の前記塗装の修理時期を評価するために、前記塗装の状態を撮影した塗装劣化画像教師データと塗装劣化度教師データとを入力して学習させた学習済の塗装劣化度評価モデルと、この学習済の塗装劣化度評価モデルを用いて評価した第1の塗装劣化度評価データを教師データとする塗装劣化度評価教師データと機器仕様教師データと塗装仕様教師データと塗装劣化促進要素教師データと前記塗装劣化度評価教師データを出力した際に前記塗装劣化度評価モデルに入力した第1の塗装劣化画像データに対応する塗装修理時期を教師データとする塗装修理時期教師データとを入力して学習させた学習済の第2の塗装修理時期評価モデルと、を備え、この学習済の第2の塗装修理時期評価モデルに、学習済の前記塗装劣化度評価モデルに前記塗装の状態を撮影した第2の塗装劣化画像データを入力して出力された第2の塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データとを入力して前記塗装の前記修理時期を評価し、評価された前記修理時期を塗装修理時期評価データとして出力する評価部を有することを特徴とするものである。
上記構成の機器塗装劣化評価システムでは、学習済の塗装劣化度評価モデルと学習済の第2の塗装修理時期評価モデルを備えた評価部が第2の塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データの入力によって塗装の修理時期を評価し、塗装修理時期評価データとして出力するように作用する。
なお、第6の発明では、塗装劣化度評価データとして、第1の塗装劣化度評価データと第2の塗装劣化度評価データの2通り存在している。第1の塗装劣化度評価データは、学習済の塗装劣化度評価モデルに第1の塗装劣化画像データを入力して出力されたもので、第2の塗装修理時期評価モデルの生成のための教師データとするものであり、第2の塗装劣化度評価データは、第2の塗装修理時期評価モデルが生成された後に、別個に、学習済の塗装劣化度評価モデルに別個の第2の塗装劣化画像データを入力して出力されるものである。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明である機器塗装劣化評価プログラムは、熟練を必要とする目視による点検を行うことなく、塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データから客観的かつ効率的で高精度な塗装の劣化度の評価が可能である。
【0013】
第2の発明である機器塗装劣化評価プログラムは、熟練を必要とする目視による点検を行うことなく、塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データから客観的かつ効率的で高精度な塗装の修理時期の評価が可能である。
【0014】
第3の発明である機器塗装劣化評価プログラムも第2の発明と同様に、熟練を必要とする目視による点検を行うことなく、第1の発明の評価された塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データから客観的かつ効率的で高精度な塗装の修理時期の評価が可能である。
【0015】
第4の発明である機器塗装劣化評価システムにおいても第1の発明と同様に、熟練を必要とする目視による点検を行うことなく、塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データから客観的かつ効率的で高精度な塗装の劣化度の評価が可能である。
【0016】
第5の発明である機器塗装劣化評価システムにおいても第2の発明と同様に、熟練を必要とする目視による点検を行うことなく、塗装の状態を撮影した塗装劣化画像データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データから客観的かつ効率的で高精度な塗装の修理時期の評価が可能である。
【0017】
第6の発明である機器塗装劣化評価システムにおいても第5の発明と同様に、熟練を必要とする目視による点検を行うことなく、学習済の塗装劣化度評価モデルを用いて評価した第2の塗装劣化度評価データと機器仕様データと塗装仕様データと塗装劣化促進要素データから客観的かつ効率的で高精度な塗装の修理時期の評価が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムのブロック図である。
図2】第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムを説明するために用いた変圧器の簡略外形図である。
図3】第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムを説明するために用いた変圧器の写真である。
図4】(a)-(d)はいずれも図3で示した変圧器の発錆による塗装劣化で、劣化点としてそれぞれ10点、20点、30点、40点と判断される例を示す写真である。
図5】機器の部分(部品)の塗装劣化を機器全体の塗装劣化としてとらえるためにまとめた一覧表の概念図である。
図6】第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムの塗装劣化度評価モデルと第1の塗装修理時期評価モデルの生成を説明するためのフロー図である。
図7】ニューラルネットワークを用いた塗装劣化度評価モデルの構成を示す概念図である。
図8】ニューラルネットワークを用いた第1の塗装修理時期評価モデルの構成を示す概念図である。
図9】第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムの学習済モデルデータベースに格納される塗装劣化度評価モデルを用いて実行される塗装の劣化度の評価を説明するためのフロー図である。
図10】第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムの学習済モデルデータベースに格納される第1の塗装修理時期評価モデルを用いて実行される塗装の修理時期の評価を説明するためのフロー図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムのブロック図である。
図12】第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムの第2の塗装修理時期評価モデルの生成を説明するためのフロー図である。
図13】ニューラルネットワークを用いた第2の塗装修理時期評価モデルの構成を示す概念図である。
図14】第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムの学習済モデルデータベースに格納される第2の塗装修理時期評価モデルを用いて実行される塗装の修理時期の評価を説明するためのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムについて図1図4を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aのブロック図である。
図1において、機器塗装劣化評価システム1aは、演算装置2と教師データデータベース8、学習済モデルデータベース15、入力データベース19及び出力データベース24から構成されている。この機器塗装劣化評価システム1aは、コンピュータサーバ内でそれぞれの機能を発揮し得る演算回路や記憶装置を備えたシステムを想定することが可能である。
【0020】
演算装置2はシステム外部やシステム内のデータべースからのデータの入力を行う入力部3、教師データを用いて学習済のモデルを生成する学習済モデル生成部4、学習済モデルと評価に必要なデータを用いて機器塗装の劣化度や修理時期を評価する評価部6、システム外部へデータ類の出力を行う出力部7を備えている。
また、図1の演算装置2の構成要素は一体でなくとも入力部3と出力部7を演算装置2から分離して独立に別体として設けて、有線又は無線でデータや情報を学習済モデル生成部4や評価部6との間で送受信するシステムや装置とすることも可能である。なお、本願において入力部3等に「部」を用いているがこれは演算装置2の一部を意味するものであり、それ自体は装置や回路を構成するものである。
【0021】
教師データデータベース8は学習済モデル生成部4で学習済モデルを生成するために用いる教師データを格納するデータベースであり、機器仕様教師データ9、塗装仕様教師データ10、塗装劣化画像教師データ11、塗装劣化促進要素教師データ12、塗装劣化度教師データ13及び塗装修理時期教師データ14が読み出し可能に格納されている。
本実施の形態においては教師データデータベース8と学習済モデル生成部4を機器塗装劣化評価システム1aに含めているが、これらを独立して別に設けておいてもよい。すなわち、別のシステムで教師データデータベース8を用いて学習済モデル生成部4で学習済モデルデータベース15に格納される塗装劣化度評価モデル16及び第1の塗装修理時期評価モデル17を生成させて、それらの学習済の評価モデルのみを学習済モデルデータベース15に格納して学習済モデルデータベース15だけを機器塗装劣化評価システム1aに含めてもよい。第2の実施の形態においても同様である。
【0022】
学習済モデルデータベース15は教師データを用いて学習済モデル生成部4によって生成された学習済モデルを格納するデータベースであり、塗装劣化度評価モデル16及び第1の塗装修理時期評価モデル17が読み出し可能に格納されている。これらの評価モデルは評価部6によって読み出される。
【0023】
入力データベース19は学習済モデルを用いて塗装の劣化度に関する評価や修理時期に関する評価を評価部6で実行するために必要となるデータを格納するデータベースであり、機器仕様データ20、塗装仕様データ21、塗装劣化画像データ22及び塗装劣化促進要素データ23が格納されている。
これらのデータについては図8を参照しながら説明するそれぞれの教師データの内容と共通するので、ここでは説明を省略する。
【0024】
出力データベース24は入力データを用いて評価部6によって評価された塗装の劣化度や修理時期に関するデータを格納するデータベースであり、塗装劣化度評価データ25と塗装修理時期評価データ26が格納されている。
【0025】
以下、詳細に機器塗装劣化評価システム1aについて説明する。
演算装置2の入力部3は、教師データデータベース8や入力データベース19に格納される前述のデータ類を入力したり、学習済モデルデータベース15に格納される評価モデル類を外部で生成した場合には、それらの評価モデル類を入力する際にも用いられる。
入力部3として具体的には、キーボード、マウス、ペンタブレット、光学式の読み取り装置あるいはデータ受信部としての他の装置や情報通信網からの受信端子が相当する。
演算装置2の出力部7は、評価部6で評価された塗装の劣化度に関する塗装劣化度評価データ25や塗装の修理時期に関する塗装修理時期評価データ26を外部へ出力する機能を有する。また、必要に応じて、教師データデータベース8や入力データベース19に格納されるデータ類あるいは学習済モデルデータベース15に格納される評価モデル類を出力することも可能である。
出力部7として具体的には、ディスプレイ装置やプリンタ装置等の出力装置、さらには、外部装置への伝送を行うためのトランスミッタなどの発信装置や送信端子などが考えられる。もちろん、外部装置や情報通信網への伝送のための出力に対するインターフェースのようなものであってもよい。
【0026】
次に、機器塗装劣化評価システム1aにおいて塗装の劣化度や修理時期の評価に用いられる塗装劣化画像データ22について図2図4を参照しながら説明を加える。図2は機器塗装劣化評価システム1aを説明するために用いた変圧器の簡略外形図である。図3は機器塗装劣化評価システム1aを説明するために用いた変圧器の写真であり、図4の(a)-(d)は図3の変圧器の発錆による塗装劣化で、劣化点としてそれぞれ10点、20点、30点、40点と判断される例を示す写真である。また、図5は機器の部分(部品)の塗装劣化を機器全体の塗装劣化としてとらえるためにまとめた一覧表の概念図である。
図2及び図3において、変圧器30は本体31とコンサベータ32(図2のみに示す)、ラジエター33、箱類34及びダクト35等から構成されている。
本体31には鉄心と巻線が巻線冷却用の絶縁油に浸漬されて収容されている。変圧器は負荷状況によって加熱と冷却を繰り返すことから、絶縁油も膨張と収縮を繰り返すが、その際に変圧器の内部には空気の出入り(呼吸作用)が生じるため、絶縁油の酸化を防止する必要がある。その呼吸作用の対策としてコンサベータ32が本体31上部に設置されている。このコンサベータ32は、内部に空気袋を収容しており、絶縁油の膨張時には空気袋から空気を排出し、収縮時には外気を吸入することで絶縁油の膨張と収縮を吸収している。ラジエター33は、運転中に変圧によって生じるジュール熱を放熱するためのものであり、箱類34は変圧器の運転に必要な操作を行うための盤類や計器類が収納されたものである。ダクト35は低圧ブッシングからの配線を収容するためのものである。
【0027】
変電所における変圧器30は降圧の程度によっても異なるが、概ね大型のものが多いため、塗装範囲も広い。また、巻線冷却用の絶縁油を収容していることから稼働時は常にある程度の温度は維持されており、橋脚や鉄塔等の構造物における塗装表面温度とは異なり、塗装の劣化に与える影響は大きい。
しかも屋外に設置されるため、設置されている環境の影響も受けやすく、電力会社では変圧器30の点検を定期的に実施しており、その機能確認はもちろんのこと、経年劣化については内部の鉄心等の絶縁部破壊や巻線の変形・断線や外部の破損・熱劣化についても点検を行っている。
さらに、塗装の劣化もタンクや筐体に影響を及ぼし、絶縁油の漏洩や雨水や外気の内部への混入の原因となることから、図4の(a)-(d)に示されるような発錆や塗装剥がれ、あるいは塗装割れについて点検作業者の目視によって点検されている。
そこで、今回の発明では、まず、これらの点検作業者による目視の際に、劣化点なる点数を付与し、そのデータの蓄積に基づいてニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)を行い、評価モデルを生成することに至った。特に、発錆は塗装剥がれや塗装割れの原因となる最も早期に現れる劣化の現象であることから、この後に説明する劣化点の割合が塗装剥がれや塗装割れよりも大きく配分することとした。
これらの発錆状況、剥がれ、割れについては規定を作成し、それぞれの状態に応じて点検作業者は劣化点を付ける。このような規定に基づいて点検作業者は様々な機器の塗装の点検を実施する。
具体的には、点検作業者の目視による発錆状況の点検では、表1に示されるような劣化点が付与される。
【0028】
【表1】
【0029】
塗装の発錆状況は、発錆面積によって診断され、発錆面積が0%の場合は異状なし、5%を超える場合には不良としてそれぞれ劣化点が0から50点で評価される。具体例としては、図4(a)では10点、(b)では20点、(c)では30点、(d)では40点として評価されている。
次に、表2に塗装剥がれの診断による劣化点の評価、表3に塗装割れの診断による劣化点の評価について示す。
【0030】
【表2】
【0031】
【表3】
【0032】
塗装の剥がれは剥がれの大きさと剥がれの面積で診断され、異常なしから表面積の大部分で剥がれが発生している状態の間で評価され、劣化点としては0点から10点で評価される。
また、塗装の割れは発生面積で診断され、異常なしから表面積の大部分で割れが発生している状態の間で評価され、劣化点としては0点から10点で評価される。
【0033】
これら3要素(発錆、剥がれ、割れ)に基づく劣化点の評価は、発生面積がいずれも評価対象となっていることから、いずれの面積を基準とする発生面積であるかについては予め設定しておき、塗装劣化画像教師データ11や塗装劣化画像データ22を得る際にはその基準に応じた画像を入手するようにする。
また、これらの劣化点の評価は機器の部分(部品)によって評価される劣化点であることから、これらをまとめて図5に示されるような一覧表とする。この一覧表は機器の設備全体として実施される塗装修理の有無を判断するために用いられるものであるが、縦方向には部品項目が羅列され、横方向には部材項目が羅列されている。部品項目に対応する部材項目は図5中ではハッチングが施されていない部分であるが、それぞれの部品項目によって異なっている。例えば、部品項目の「本体」に対応するのは、部材項目の「タンク・板類」及び「配管類」であり、ラジエターNo.1及びNo.2では、その「本体」に対しては部材項目の「タンク・板類」であり、支持架台に対しては部材項目の「架台」となっている。なお、部品項目の「付属品」に対しては部材項目として「タンク・板類」が対応している。
各行の部品項目毎の3要素の劣化点を合計したものは0点から70点となり、その平均値を最右欄に記載し、それらの部品項目全体、すなわち、「本体」、「ラジエターNo.1」、「ラジエターNo.2」及び「付属品」に係る部品項目11項目全体の平均値が対象機器設備全体の劣化点となる。また、使用する部品項目が多い場合には、その項目数によって適宜平均値の出し方を工夫してもよい。例えば、11の部品項目すべての劣化点を評価した場合には、その上位70%(上位8番目まで)の劣化点の平均値を対象機器設備全体の劣化点とするような場合である。
このように部品項目毎の3要素の劣化点の和の平均値を計算して対象機器設備全体の劣化点を計算すると、表4に示されるように対象設備全体としての劣化レベルとして評価され、塗装修理のレベルが決定される。すなわち、これらの3要素に基づく劣化点の評価及び設備全体としての劣化レベルの評価の結果が塗装劣化度評価データ25に相当する。
なお、このような劣化点の算出、評価方法については、個々の部品及び機器全体の劣化点として塗装発錆、塗装剥がれ、塗装割れを要素として評価することによれば特に限定するものではない。
【0034】
【表4】
【0035】
対象機器設備全体の塗装の劣化レベルに応じて、塗装修理レベルが設けられており、劣化レベル1では塗装の必要はなく、レベル2では全面塗装は必要ではなく部分塗装修理を実施することになる。劣化レベル3では、全面修理の計画検討が必要なレベルとして評価され、部分塗装修理を実施する。劣化レベル4やレベル5では部分塗装修理では対処せず、全面塗装修理を実施する必要がある。
したがって、劣化レベル3になった際には全面塗装修理のための計画を検討しなければならず、また、実際に劣化レベル4やレベル5に到達して全面塗装修理を実施した場合の記録も管理される。
このような塗装の劣化に対する熟練した点検作業者による評価の蓄積を行い、これらの評価に用いた機器の塗装の劣化画像を入力の教師データとし、評価結果(劣化点)を出力の教師データとして、ニューラルネットワークを用いて深層学習を実行することで、学習済の塗装劣化度評価モデル16を構築する。
また、対象機器設備全体としての劣化レベル評価に応じて全面塗装修理された記録も蓄積されることから、塗装の劣化に関する3つの要素に基づく劣化点の評価時点から、実際にどの程度の時間が経過すると全面塗装修理を実施しなければならないかという経時変化に関する評価の蓄積もされる。
そこで本実施の形態では、これらの劣化レベルの評価に用いた機器の塗装の劣化画像を入力の教師データとし、その塗装の劣化の画像を撮影した時点から経時して実際に全面塗装修理を実施した時期を教師データとして、ニューラルネットワークを用いて深層学習を実行することで、学習済の第1の塗装修理時期評価モデル17を構築する。
【0036】
塗装劣化度評価モデル16及び第1の塗装修理時期評価モデル17の具体的な構築方法については、図6図8を参照しながら説明する。図6は本実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aの塗装劣化度評価モデル16と第1の塗装修理時期評価モデル17の生成を説明するためのフロー図である。この図6は、本願発明の機器塗装劣化評価プログラムに対しては、コンピュータを用いて実行されるその工程を表すものでもあり、この図を参照しながら機器塗装劣化評価システム1aにおけるデータ処理の流れを説明することは機器塗装劣化評価プログラムの実施の形態について説明することと同義である。このほか、図9図10図12及び図14についても同様である。
図7はニューラルネットワークを用いた塗装劣化度評価モデル16の構成を示す概念図であり、図8はニューラルネットワークを用いた第1の塗装修理時期評価モデルの構成を示す概念図である。
【0037】
図6において、演算装置2の学習済モデル生成部4は、ステップS1及びステップS2のそれぞれで、教師データデータベース8に予め入力部3から格納しておいた塗装劣化画像教師データ11と塗装劣化の3要素に関する劣化点の評価に関する塗装劣化度教師データ13を読み出す。
そして、ステップS3として、学習済モデル生成部4は劣化点に対応する塗装劣化画像教師データ11に含まれる発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する特徴量と塗装の劣化度(劣化点)の関係を学習する深層学習を実施する。その際には、塗装劣化画像教師データ11を入力して出力された塗装劣化度データを塗装劣化度教師データ13と比較し、出力値である塗装劣化データが塗装劣化度教師データ13に近づくように、中間層で用いるパラメータを最適化する。このパラメータとしては、例えばニューロン間の重み(結合係数)や後述する活性化関数に用いられる係数等がある。これらのパラメータの最適化方法については、例えば、誤差逆伝播法等を用いて実行する。
このようにして、学習済モデル生成部4は塗装劣化画像データ22の入力を受けて塗装劣化度評価データ25を出力するニューラルネットワークを用いる塗装劣化度評価モデル16を生成し、これを学習済モデルデータベース15に読み出し可能に格納する。
このニューラルネットワークとしては、本実施の形態では、画像処理に適しているとされるコンボリューショナル(畳み込み)ニューラルネットワーク(CNN)を用いるが、その他、入力と出力の正しい相関関係を維持できるのであればサポートベクターマシン(SVM)等、他の学習アルゴリズムで構築されるものを用いてもよい。特に、第2の実施の形態で説明する第2の塗装修理時期評価モデル18では塗装劣化画像データを用いずに塗装修理時期を評価するため、畳み込み層やプーリング層を用いないニューラルネットワークを構成してもよい。
【0038】
このようにして生成されたCNNを用いた塗装劣化度評価モデル16について図7を参照しながら説明を加える。図7において、塗装劣化度評価モデル16の入力層では塗装劣化画像データ22に含まれる塗装発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する画像情報に含まれる各画素の画素値が入力される複数のニューロンを備えている。そして、これらの画素値は中間層に送出されるが、中間層では学習済の塗装劣化度評価のための関数が形成されており、関数に応じて画像情報に含まれる特徴量を抽出する複数のニューロンを備えている。
塗装劣化度評価モデル16ではCNNを採用しているので、中間層では、各画素の画素値を畳み込むコンボリューション処理を実行するコンボリューション層と畳み込まれた画素値をダウンサンプリングするプーリング処理を実行するプーリング層を交互に配列して画像の画素情報を圧縮しながら画像の特徴量を抽出しつつ、適宜線形変換を行うアフィン関数を用いた全結合層を組み合せて配列し、それらとtanh等の非線形変換を行う活性化関数を用いるとよい。
さらに、機器の部品毎の劣化点を所望に設定される数値範囲内で決定する場合には、中間層の最後の関数としては、ソフトマックス関数等を用いて入力値が確率として出力されるようにして最も確率の高い劣化点が選択されるようにするとよい。これらの関数を組み合せて学習済の塗装劣化度評価のための関数が構成されている。
そして、出力層は機器の部品毎の3要素である塗装発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する劣化点の評価値が出力されるニューロンを有しており、機器塗装に関する劣化度を評価し、塗装劣化度評価データ25として出力する。評価部6はこの塗装劣化度評価データ25を出力データベース24に読み出し可能に格納する。
また、設備全体としての劣化レベルは前述のとおり、個々の部品項目における3要素の劣化点の和の平均値を求めるので、評価部6は、塗装劣化度評価モデル16が出力した個々の部品項目における3要素の劣化点の和の平均値を計算して、表4に示される数値換算に沿ってその機器設備全体としての劣化レベルを評価し、塗装劣化度評価データ25として出力し、出力データベース24に読み出し可能に格納する。
【0039】
次に、図6に戻って、第1の塗装修理時期評価モデル17の生成について説明する。ステップS4は、学習済モデル生成部4が入力部3から教師データデータベース8へ予め格納しておいた塗装劣化画像教師データ11を読み出す工程であり、ステップS5は同様に機器仕様教師データ9を読み出す工程である。
機器仕様教師データ9とは、図8に示される塗装部位の材質及び板厚や塗装部位の傾斜角度、さらには塗装部位の温度に関するデータの教師データである。塗装部位の材質としては、塗装を伴う鋼鉄が用いられることが多いが、耐食性を高めるために亜鉛、アルミニウム、マグネシウム合金等が用いられることもある。また、塗装部位の板厚も塗装の発錆等の劣化に影響を及ぼすので教師データとして用いられる。
塗装部位の傾斜角度は、降雨後の濡れ時間に影響があり、降雨による雨水の濡れ時間が長いと発錆等の劣化に繋がるため教師データとして用いられる。傾斜角度が大きいほど濡れ時間は短くなるが、この塗装部位の傾斜角度は選択的な教師データであり、機器仕様教師データ9に含めてもよいし含めなくともよい。
また、塗装部位の温度については、変圧器等、発電・変送電事業に用いられる機器では、内部でジュール熱による発熱に対して冷却を必要とする場合が多く、その筐体面の温度が塗装の発錆等の劣化に繋がる可能性があるので教師データとして用いられる。
【0040】
次に、ステップS6では、学習済モデル生成部4が入力部3から教師データデータベース8へ予め格納しておいた塗装仕様教師データ10を読み出す工程であり、ステップS7は同様に塗装劣化促進要素教師データ12を読み出す工程である。
塗装仕様教師データ10とは、図8にも示される塗膜の材質と塗膜の膜厚のデータの教師データである。これらは塗装の劣化に影響を及ぼす塗膜自身の要素に関する教師データである。一方、塗装劣化促進要素教師データ12とは塗装の劣化を促進する要素に関するデータの教師データである。具体的には図8に示される降雨量、気温、紫外線量、塩分量等変圧器が設置される環境に関する要素で塗装の劣化を促進し得るデータの教師データである。降雨量は多いほど、気温は高いほど、紫外線量も高いほど、塩分量も多いほど塗装の劣化は促進される。また、これらの要素に関するデータついては一定期間内の平均値や積算値を用いて設定するとよい。
ステップS8は学習済モデル生成部4が入力部3から教師データデータベース8へ予め格納しておいた塗装修理時期教師データ14を読み出す工程である。塗装修理時期教師データ14とは、前述のとおり、その塗装の劣化の画像を撮影した時点から経時して実際に全面塗装修理を実施した時期を教師データとしたものである。
【0041】
そして、ステップS9として、学習済モデル生成部4は劣化点に対応する塗装劣化画像教師データ11に含まれる発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する特徴量と機器仕様教師データ9に含まれる機器仕様、塗装仕様教師データ10に含まれる塗装仕様及び塗装劣化促進要素教師データ12に含まれる塗装劣化促進要素に関する特徴量から塗装修理時期教師データ14に含まれる塗装修理時期を学習する深層学習を実施する。
その際には、ステップS3と同様に、塗装劣化画像教師データ11、機器仕様教師データ9、塗装仕様教師データ10、塗装劣化促進要素教師データ12を入力して出力された塗装修理時期データを塗装修理時期教師データ14と比較し、出力値である塗装修理時期データが塗装修理時期教師データ14に近づくように、中間層で用いるパラメータを最適化する。このパラメータとしては、前述のとおり、例えばニューロン間の重み(結合係数)や後述する活性化関数に用いられる係数等があり、パラメータの最適化方法については、例えば、誤差逆伝播法等を用いて実行する。
そして、学習済モデル生成部4は塗装劣化画像データ22、機器仕様データ20、塗装仕様データ21及び塗装劣化促進要素データ23の入力を受けて塗装修理時期評価データ26を出力するCNNを用いる第1の塗装修理時期評価モデル17を生成し、これを学習済モデルデータベース15に読み出し可能に格納する。
【0042】
このようにして生成されたCNNを用いた第1の塗装修理時期評価モデル17について図8を参照しながら説明を加える。
図8において、第1の塗装修理時期評価モデル17の入力層では塗装劣化画像データ22に含まれる塗装発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する画像情報、機器仕様データ20に含まれる塗装部位の材質、塗装部位の傾斜角度、塗装部位の温度、また、塗装仕様データ21に含まれる塗膜の材質、塗膜の膜厚、さらに、塗装劣化促進要素データ23に含まれる機器が設置されている地点での降雨量、気温、紫外線量、塩分量が入力される。したがって、これらの入力に対応する複数のニューロンを備えている。なお、機器仕様データ20の塗装部位の傾斜角度については機器仕様教師データ9に含まれる塗装部位の傾斜角度と同様に選択的な要素であり、機器仕様教師データ9に含めた場合は含め、含めなかった場合には含めないようにする。
そして、これらの4種類のデータ入力値は中間層に送出されるが、中間層では学習済の第1の塗装修理時期評価のための関数が形成されており、関数に応じて入力情報に含まれる特徴量を抽出する複数のニューロンを備えている。
第1の塗装修理時期評価モデル17も塗装劣化度評価モデル16と同様にCNNを採用しており、その中間層における関数の構成に関する考え方は塗装劣化度評価モデル16と同様である。
出力層は、塗装修理時期に関する評価値が出力されるニューロンを備えており、機器塗装の修理時期を評価し、塗装修理時期評価データ26として出力する。この塗装修理時期に関する評価値は、例えば、予め想定される何年後かの年数分のニューロンを備えておき、中間層の最後の関数として、ソフトマックス関数等を用いて直前のニューロンの入力値が確率として出力されるようにして最も確率の高い塗装修理時期の年数が選択されるようにするとよい。
なお、第1の塗装修理時期評価モデル17の中間層では、塗装劣化度評価モデル16で出力される塗装発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する劣化点の評価値から評価部6によって演算された設備全体の劣化レベルも算出されるように構成され、最終的に出力層で塗装時期を評価した塗装修理時期評価データ26が出力される。
もちろん、塗装劣化度評価モデル16の中間層でも設備全体の劣化レベルが算出されるように構成してもよい。
【0043】
次に、図9を参照しながら第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aによる塗装劣化度評価について説明する。図9は機器塗装劣化評価システム1aの学習済モデルデータベース15に格納される塗装劣化度評価モデル16を用いて実行される塗装の劣化度の評価を説明するためのフロー図である。
図9において、ステップS10として、演算装置2の評価部6は学習済モデルデータベース15から塗装劣化度評価モデル16を選択して読み出す。
また、ステップS11として、評価部6は入力データベース19から塗装劣化画像データ22を読み出して、塗装劣化度評価モデル16の入力層に入力する。
そして、ステップS12として、評価部6は、塗装劣化度評価モデル16の中間層によって機器の部品毎の劣化に関する3要素である塗装発錆、塗装剥がれ及び塗装割れに関する劣化点の評価を実行し、その評価結果を出力層によって塗装劣化度評価データ25として出力する。また、評価部6は、設備全体の劣化レベルを前述のとおり計算して、これも塗装劣化度評価データ25として出力する。そしてこれらを出力データベース24に読み出し可能に格納する。もちろん、評価部6は塗装劣化度評価データ25に対して出力部7を用いて外部に表示や出力を行ってもよい。
【0044】
次に、図10を参照しながら第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aによる塗装修理時期評価について説明する。図10は機器塗装劣化評価システム1aの学習済モデルデータベース15に格納される第1の塗装修理時期評価モデル17を用いて実行される塗装の修理時期の評価を説明するためのフロー図である。
図10において、ステップS13として、演算装置2の評価部6は学習済モデルデータベース15から第1の塗装修理時期評価モデル17を選択して読み出す。
また、ステップS14として、評価部6は入力データベース19から塗装劣化画像データ22を読み出し、ステップS15として評価部6は入力データベース19から機器仕様データ20を読み出し、ステップS16として評価部6は入力データベース19から塗装仕様データ21を読み出し、さらに、ステップS17として評価部6は入力データベース19から塗装劣化促進要素データ23を読み出して、第1の塗装修理時期評価モデル17の入力層に入力する。
そして、ステップS18として、評価部6は、第1の塗装修理時期評価モデル17の中間層によって塗装修理時期に関する評価を実行し、その評価結果を出力層によって塗装修理時期評価データ26として出力する。出力された塗装修理時期評価データ26は評価部6によって、出力データベース24に読み出し可能に格納される。評価部6は塗装修理時期評価データ26に対して出力部7を用いて外部に表示や出力を行ってもよい。
【0045】
以上説明した第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aでは、熟練を必要とする目視による点検を行う必要がないため、熟練していない作業者が点検することが可能であることから人材の確保が容易で効率的な点検作業が可能であり、また、客観的に塗装劣化画像データ22を取得することが可能である。さらに、熟練した点検作業者による塗装劣化画像教師データ11に基づいた塗装劣化度教師データ13や実際に塗装修理を行った時期に関する塗装修理時期教師データ14を基に深層学習によって塗装劣化度評価モデル16や第1の塗装修理時期評価モデル17を得て、これを用いて塗装劣化度評価データ25や塗装修理時期評価データ26を得ることから、客観的かつ効率的でしかも高精度の劣化度や修理時期に関する評価を実行することが可能である。
【0046】
(第2の実施の形態)
以下に、本発明の第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システムについて図11図14を参照しながら説明する。
図11は第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1bのブロック図である。
図11において、機器塗装劣化評価システム1bと第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aの構成が異なるのは、教師データデータベース8に塗装劣化度評価教師データ27が追加されていることと、第1の塗装修理時期評価モデル17に代えて第2の塗装修理時期評価モデル18を備えている部分のみである。その他の同一の構成については同一の符号を付し、それらの構成についての説明は省略する。
第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aでは、図6を参照しながら説明したとおり、塗装修理時期の評価を行うために、塗装劣化画像教師データ11、機器仕様教師データ9、塗装仕様教師データ10、塗装劣化促進要素教師データ12及び塗装修理時期教師データ14を入力してCNNを用いた深層学習を行い第1の塗装修理時期評価モデル17を構築したが、本実施の形態では、塗装劣化画像教師データ11に代えて、塗装劣化度評価モデル16を用いた評価の結果出力される第1の塗装劣化度評価データ25を第2の塗装修理時期評価モデル18の生成のための塗装劣化度評価教師データ27として入力する点が異なる。すなわち、塗装劣化画像を教師データとして含まないため、入力と出力の精度にもよるが、必ずしも畳み込み層やプーリング層を用いることなくニューラルネットワークを構築してもよい。
この相違点について、図12を参照しながら説明を加える。
【0047】
図12は第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1bの第2の塗装修理時期評価モデル18の生成を説明するためのフロー図である。
図12において、演算装置2の学習済モデル生成部4は、ステップS19として教師データデータベース8から予め第2の塗装修理時期評価モデル18を生成するために深層学習用に用意された塗装劣化度評価教師データ27を教師データとして読み出す。この塗装劣化度評価教師データ27は、第2の塗装修理時期評価モデル18の生成に先立って、まず、塗装劣化度評価モデル16を生成し、その後に塗装劣化度評価モデル16を用いて出力された第1の塗装劣化度評価データ25を第2の塗装修理時期評価モデル18の生成のための教師データ用として教師データデータベース8に格納したものである。
また、ステップS20は学習済モデル生成部4が入力部3から教師データデータベース8へ予め格納しておいた機器仕様教師データ9を読み出す工程である。機器仕様教師データ9の内容については既に図8を参照しながら説明したので省略する。次に、ステップS21は、学習済モデル生成部4が入力部3から教師データデータベース8へ予め格納しておいた塗装仕様教師データ10を読み出す工程、ステップS22は同様に塗装劣化促進要素教師データ12を読み出す工程であり、ステップS23は学習済モデル生成部4が入力部3から教師データデータベース8へ予め格納しておいた塗装修理時期教師データ14を読み出す工程である。
これらの塗装仕様教師データ10、塗装劣化促進要素教師データ12及び塗装修理時期教師データ14についても図8を参照しながら説明したので省略する。但し、塗装修理時期教師データ14については、塗装劣化度評価教師データ27を出力した際に塗装劣化度評価モデル16に入力した第1の塗装劣化画像データ22に対応する塗装修理時期を教師データとして用いる。
【0048】
そして、ステップS24として、学習済モデル生成部4は劣化点に対応する塗装劣化度評価教師データ27に含まれる発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する評価された特徴量と機器仕様教師データ9に含まれる機器仕様、塗装仕様教師データ10に含まれる塗装仕様及び塗装劣化促進要素教師データ12に含まれる塗装劣化促進要素に関する特徴量から塗装修理時期教師データ14に含まれる塗装修理時期を学習する深層学習を実施する。その際のパラメータ最適化法については第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aにおける第1の塗装修理時期評価モデル17の場合と同様である。
また、学習済モデル生成部4は、前述の第2の塗装修理時期評価モデル18の生成のための深層学習用に用意された塗装劣化度評価教師データ27とは異なり、第2の塗装修理時期評価モデル18の生成後に、塗装劣化度評価モデル16に第2の塗装劣化画像データ22を入力して塗装の劣化度を評価した第2の塗装劣化度評価データ25、機器仕様データ20、塗装仕様データ21及び塗装劣化促進要素データ23の入力を受けて塗装修理時期評価データ26を出力するニューラルネットワークに用いられる第2の塗装修理時期評価モデル18を生成し、これを学習済モデルデータベース15に読み出し可能に格納する。
【0049】
このようにして生成されたCNNを用いた第2の塗装修理時期評価モデル18について図13を参照しながら説明を加える。
図13において、第2の塗装修理時期評価モデル18の入力層では塗装劣化度評価データ25に含まれる塗装発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する特徴量情報、機器仕様データ20に含まれる塗装部位の材質、塗装部位の傾斜角度、塗装部位の温度、また、塗装仕様データ21に含まれる塗膜の材質、塗膜の膜厚、さらに、塗装劣化促進要素データ23に含まれる機器が設置されている地点での降雨量、気温、紫外線量、塩分量が入力される。したがって、これらの入力に対応する複数のニューロンを備えている。なお、機器仕様データ20の塗装部位の傾斜角度については第1の塗装修理時期評価モデル17の実施の形態の場合と同様に選択的な要素であり、機器仕様教師データ9に含めた場合は含め、含めなかった場合には含めないようにする。
そして、これらの4種類のデータ入力値は中間層に送出されるが、中間層では学習済の第2の塗装修理時期評価のための関数が形成されており、関数に応じて入力情報に含まれる特徴量を抽出する複数のニューロンを備えている。
第2の塗装修理時期評価モデル18も第1の塗装修理時期評価モデル17と同様にCNNを採用しており、その中間層における関数の構成に関する考え方は塗装劣化度評価モデル16や第1の塗装修理時期評価モデル17と同様である。
出力層は、塗装修理時期に関する評価値が出力されるニューロンを備えており、機器塗装の修理時期を評価し、塗装修理時期評価データ26として出力する。
なお、第2の塗装修理時期評価モデル18の中間層でも、塗装劣化度評価モデル16で出力される塗装発錆、塗装剥がれ、塗装割れに関する劣化点の評価値から評価部6によって演算された設備全体の劣化レベルも算出されるように構成され、最終的に出力層で塗装時期を評価した塗装修理時期評価データ26が出力されるようにするか、図13では示していないが、塗装劣化度評価データ25に評価部6によって演算される設備全体の劣化レベルも含めておいて出力層で塗装修理時期評価データ26が出力されるようにしておく。
【0050】
次に、図14を参照しながら第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1bによる塗装修理時期評価について説明する。なお、機器塗装劣化評価システム1bにおける塗装劣化度評価については第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aと同様であるため説明を省略する。
図14は機器塗装劣化評価システム1bの学習済モデルデータベース15に格納される第2の塗装修理時期評価モデル18を用いて実行される塗装の修理時期の評価を説明するためのフロー図である。
図14において、ステップS25として、演算装置2の評価部6は学習済モデルデータベース15から第2の塗装修理時期評価モデル18を選択して読み出す。
また、ステップS26として、評価部6は出力データベース24から第2の塗装劣化度評価データ25を読み出し、ステップS27として評価部6は入力データベース19から機器仕様データ20を読み出し、ステップS28として評価部6は入力データベース19から塗装仕様データ21を読み出し、さらに、ステップS29として評価部6は入力データベース19から塗装劣化促進要素データ23を読み出して、第2の塗装修理時期評価モデル18の入力層に入力する。
なお、第2の塗装劣化度評価データ25を入力するためには、評価部6は塗装劣化度評価モデル16を用いて既に第2の塗装劣化画像データ22を入力して塗装劣化度に関する評価を実行して第2の塗装劣化度評価データ25を出力データベース24に格納しておく必要がある。
そして、ステップS30として、評価部6は、第2の塗装修理時期評価モデル18の中間層によって塗装修理時期に関する評価を実行し、その評価結果を出力層によって塗装修理時期評価データ26として出力する。出力された塗装修理時期評価データ26は評価部6によって出力データベース24に読み出し可能に格納される。評価部6は塗装修理時期評価データ26に対して出力部7を用いて外部に表示や出力を行ってもよい。
以上説明した第2の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1bにおける効果は、第1の実施の形態に係る機器塗装劣化評価システム1aと同様である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、請求項1乃至請求項6に記載された発明は、産業機器設備に施された塗装の劣化評価と塗装修理時期に関する評価を点検作業者による目視を行うことなく客観的かつ効率的に高精度な評価を実施することのできる機器塗装劣化評価システムやプログラムに利用が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1a,1b…機器塗装劣化評価システム 2…演算装置 3…入力部 4…学習済モデル生成部 6…評価部 7…出力部 8…教師データデータベース 9…機器仕様教師データ 10…塗装仕様教師データ 11…塗装劣化画像教師データ 12…塗装劣化促進要素教師データ 13…塗装劣化度教師データ 14…塗装修理時期教師データ 15…学習済モデルデータベース 16…塗装劣化度評価モデル 17…第1の塗装修理時期評価モデル 18…第2の塗装修理時期評価モデル 19…入力データベース 20…機器仕様データ 21…塗装仕様データ 22…塗装劣化画像データ 23…塗装劣化促進要素データ 24…出力データベース 25…塗装劣化度評価データ 26…塗装修理時期評価データ 27…塗装劣化度評価教師データ 30…変圧器 31…本体 32…コンサベータ 33…ラジエター 34…箱類 35…ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14