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特開2022-124938ジエングラフトエポキシ樹脂、ジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法、ゴム組成物及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124938
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】ジエングラフトエポキシ樹脂、ジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法、ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/14 20060101AFI20220819BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220819BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20220819BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220819BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C08G59/14
C08L21/00
C08L63/00 A
C08K3/36
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022866
(22)【出願日】2021-02-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和元年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、未来社会創造事業「界面マルチスケール4次元解析による革新的接着技術の構築」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】庄田 靖宏
(72)【発明者】
【氏名】小齋 智之
(72)【発明者】
【氏名】曽根 遼大
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J036
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA07
3D131BA12
3D131BC22
3D131BC31
3D131BC33
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002CD202
4J002DJ016
4J002FD010
4J002FD016
4J002FD140
4J002FD150
4J002GN01
4J036AD04
4J036AD08
4J036CD04
4J036DD01
4J036FA05
4J036FB05
4J036HA12
4J036JA15
4J036KA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゴム材料と共に用いた際の耐久性を高めることができるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂の主鎖に対して、ジエン系ポリマーがグラフトされていることを特徴とするジエングラフトエポキシ樹脂、上記樹脂を含有するゴム組成物、及び上記組成物を用いたタイヤを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂の主鎖に対して、ジエン系ポリマーがグラフトされていることを特徴とする、ジエングラフトエポキシ樹脂。
【請求項2】
前記ジエン系ポリマーのグラフト量は、前記エポキシ樹脂100mol%に対して1~30mol%であることを特徴とする、請求項1に記載のジエングラフトエポキシ樹脂。
【請求項3】
ホウ素原子をさらに含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のジエングラフトエポキシ樹脂。
【請求項4】
前記ジエン系ポリマーは、前記ホウ素原子を介して前記エポキシ樹脂の主鎖と結合していることを特徴とする、請求項3に記載のジエングラフトエポキシ樹脂。
【請求項5】
窒素原子をさらに含有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のジエングラフトエポキシ樹脂。
【請求項6】
前記ジエン系ポリマーは、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-ブタジエンゴム、スチレン-エチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリクロロプレンゴムからなる群より選択される1種以上のゴムであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のジエングラフトエポキシ樹脂。
【請求項7】
窒素原子含有エポキシ樹脂に、ボロン酸変性ジエン系ポリマーを反応させることを特徴とする、ジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記窒素原子含有エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルに、アミン化合物を反応させて得ることを特徴とする、請求項7に記載のジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法。
【請求項9】
ゴム成分と、請求項1~6のいずれか1項に記載のジエングラフトエポキシ樹脂と、を含むことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項10】
前記ジエングラフトエポキシ樹脂の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1~50質量部であることを特徴とする、請求項9に記載のゴム組成物。
【請求項11】
シリカをさらに含み、該シリカの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して10~100質量部であることを特徴とする、請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか1項に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジエングラフトエポキシ樹脂、ジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴム産業においては、環境負荷低減が強く求められており、耐久性を向上させることでゴム材料の使用量を削減する技術が注目されている。
このような技術としては、例えば、ジエン系のゴム材料に対して、カーボンブラックやシリカ等の充填剤を添加することで、耐久性が向上することが知られている。この充填剤及び充填剤-ポリマー界面の分子設計を検討し、さらなる耐久性の向上が求められている。
【0003】
また、耐久性に寄与する樹脂材料として、エポキシ樹脂は、その硬化物の強度や弾性率が大きく、耐熱性や耐薬品性に優れていること等が知られており、工業分野において様々な用途に利用されている。その一方、エポキシ樹脂の硬化物は、柔軟性が低く、歪みに対する破壊特性に課題があった。エポキシ樹脂の硬化物が自動車や電気部品に使用される場合、振動や力が加わることでひび割れが発生することがあり、その改善が望まれていた。
【0004】
そのため、エポキシ樹脂に柔軟性を付与するための技術として、特許文献1~3には、エポキシ樹脂の末端にブタジエンゴム又はアクリロニトリルブタジエンゴムを反応させた末端ゴム変性エポキシ樹脂が開示されている。
また、特許文献4には、エポキシ樹脂と、コアシェル構造を有するポリマー微粒子とを含むことで、硬化物の接着性や、靱性、耐衝撃性を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-49719号公報
【特許文献2】特開昭59-36124号公報
【特許文献3】特開昭61-228060号公報
【特許文献4】特開2016-199763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、エポキシ樹脂の硬化物は極性が高く、ゴム材料との相溶性が低いことから、ゴム組成物に含まれる場合には十分な耐久性を実現することができなかった。
この点については、特許文献1~3の末端ゴム変性エポキシ樹脂や、特許文献4のエポキシ樹脂についても同様の問題があり、ゴム材料と共に用いた際の、耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等の耐久性向上の点でさらなる改善が望まれていた。
【0007】
そのため、本発明は、ゴム材料と共に用いた際の耐久性を高めることができるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等の耐久性に優れたゴム組成物及びタイヤを提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討をした結果、エポキシ樹脂の主鎖に対して、所定のジエン系ポリマーをグラフトさせることによって、ジエン系ポリマーがグラフトされたエポキシ樹脂とゴム材料との反応性が高まり、エポキシ樹脂の相溶性が改善される結果、ゴム材料の耐久性(耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等)を大きく高めることができることを見出した。また、所定のジエン系ポリマーがグラフトされたエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂単体に比べて、柔軟性や接着性等についても向上できることも見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
本発明のジエングラフトエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の主鎖に対して、ジエン系ポリマーがグラフトされていることを特徴とする。
上記構成によって、ゴム材料と共に用いた際の耐久性を高める。
【0010】
また、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂では、数平均分子量(Mn)が5000以上であることが好ましい。より優れた耐久性を実現できるからである。
【0011】
さらに、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂では、前記ジエン系ポリマーのグラフト量は、前記エポキシ樹脂100mol%に対して1~30mol%であることが好ましい。強度や弾性率を高めつつ、より優れた耐久性を実現できるからである。
【0012】
また、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂では、ホウ素原子をさらに含有することが好ましく、記ホウ素原子を介して前記エポキシ樹脂の主鎖と結合していることがより好ましい。ゴム材料と共に用いた際の耐久性をより確実に高めることができるからである。
【0013】
さらに、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂では、窒素原子をさらに含有することが好ましい。ゴム材料と共に用いた際の耐久性をより確実に高めることができるためである。
【0014】
さらにまた、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂では、前記ジエン系ポリマーが、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリクロロプレンゴムからなる群より選択される1種以上のゴムであることが好ましい。より優れた耐久性を実現できるからである。
【0015】
本発明のジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法は、本窒素原子含有エポキシ樹脂に、ボロン酸変性ジエン系ポリマーを反応させることを特徴とする。
上記構成によって、得られたジエングラフトエポキシ樹脂は、ゴム材料と共に用いた際の耐久性を高めることができる。
【0016】
また、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法では、前記窒素原子含有エポキシ樹脂は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルに、アミン化合物を反応させて得ることが好ましい。ジエングラフトエポキシ樹脂の強度や弾性率を高めることができるからである。
【0017】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂と、を含むことを特徴とする。
上記構成によって、優れた耐久性(耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等)を実現できる。
【0018】
また、本発明のゴム組成物では、前記ジエングラフトエポキシ樹脂の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1~50質量部であることが好ましい。他の物性を低下させることなく、より優れた耐久性を実現できるからである。
【0019】
さらに、本発明のゴム組成物では、シリカをさらに含み、該シリカの含有量が前記ゴム成分100質量部に対して10~100質量部であることが好ましい。他の物性を低下させることなく、より優れた耐久性を実現できるからである。
【0020】
本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成によって、優れた耐久性(耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等)を実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ゴム材料と共に用いた際の耐久性を高めることができるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の製造方法を提供することが可能となる。
また、本発明によれば、耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等の耐久性に優れたゴム組成物及びタイヤを提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について、その実施形態に基づき詳細に説明する。
(ジエングラフトエポキシ樹脂)
本発明のグラフトジエングラフトエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の主鎖に対して、ジエン系ポリマーがグラフトされていることを特徴とする。
【0023】
通常は極性が大きく異なるためゴム材料に相溶しにくいエポキシ樹脂に対して、所定のジエン系ポリマーをグラフトすることによって、ジエン系ポリマーがグラフトされたエポキシ樹脂とゴム材料との反応性が高まり、界面の相溶性が改善される結果、ゴム材料の耐久性(耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等)を大きく高めることができる。また、エポキシ樹脂は、シリカ等の充填剤との相互作用により補強性を高める効果が知られており、本発明のグラフトジエングラフトエポキシ樹脂を、シリカ等の充填剤とともに用いることによる相乗効果も得ることが可能となる。
さらに、前記ジエン系ポリマーがグラフトされたエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂単体に比べて、柔軟性や接着性等も向上できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0024】
ここで、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂は、ジエン系ポリマーがグラフトされていること以外は特に限定はされないが、より優れた耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等の耐久性を得る観点から、その数平均分子量(Mn)が、5000以上であることが好ましく、20000以上であることがより好ましく、50000以上であることがさらに好ましい。
【0025】
(1)エポキシ樹脂
本発明のジエングラフトエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の主鎖を有する。
主鎖としてエポキシ樹脂を有することによって、硬化物の強度(硬度)を高めることができる。
なお、前記エポキシ樹脂の状態、エポキシ当量、分子量、分子構造等に制限はなく、要求される性能に応じて、適宜選択することができる。
【0026】
前記エポキシ樹脂の種類は、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキス(ヒドロキシフェニル)エタン系エポキシ樹脂等のポリフェニル系エポキシ樹脂、フルオレン含有エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、トリアジン環含有エポキシ樹脂、複素芳香環を含むエポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂や;脂肪族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、脂環族グリシジルエステル型エポキシ樹脂等の非芳香族エポキシ樹脂が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、一種を単独で用いることもできるし、複数種を同時に用いることもできる。
これらの中でも、前記エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールAジグリシジルエーテルであることがより好ましい。
【0027】
また、前記エポキシ樹脂の硬化剤についても、特に限定はされず、要求される性能に応じて適宜選択することができる。前記硬化剤としては、例えば、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルベンゼン等の芳香族アミン、フェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、トリアジン環等の複素芳香環を有するアミン等である、芳香族硬化剤や;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,3,6-トリスアミノメチルヘキサン、ポリメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族アミン類、イソホロンジアミン、メンタンジアミン、N-アミノエチルピペラジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンアダクト、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)[「ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン」とも呼ばれる]、又は、これらの変性品等の脂環族ポリアミン類、その他ポリアミン類とダイマー酸からなる脂肪族ポリアミドアミン類等である、非芳香族硬化剤が挙げられる。なお、これらの硬化剤は、一種を単独で用いることもできるし、複数種を同時に用いることもできる。
これらの中でも、前記硬化剤は、アミン化合物(芳香族アミン、複素芳香環を有するアミン、脂肪族アミン類、脂環族ポリアミン類、脂肪族ポリアミドアミン類)であることが好ましく、脂肪族アミン類であることがより好ましい。
【0028】
また、前記エポキシ樹脂の硬化物は、窒素原子を含有することが好ましい。後述するジエン系ポリマーとの結合しやすくなり、ゴム材料との相溶性が高まるため、より確実に耐久性を高めることができるためである。
【0029】
前記窒素原子を含有するエポキシ樹脂の硬化物の一例として、例えば、以下の反応が挙げられる。
【化1】
【0030】
(2)ジエン系ポリマー
本発明のジエングラフトエポキシ樹脂は、前記エポキシ樹脂の主鎖に対してジエン系ポリマーがグラフトされている。
グラフト鎖としてジエン系ポリマーを有することによって、ジエン系ポリマーがグラフトされたエポキシ樹脂のゴム材料との反応性を高め、界面の相溶性が改善することができる。その結果、ゴム材料の耐久性(耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等)を大きく高めることが可能となる。
【0031】
ここで、前記ジエン系ポリマーの種類については特に限定はされないが、ゴム材料との相溶性を高める観点から、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン-ブタジエンゴム、スチレン-エチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム及びポリクロロプレンゴムからなる群より選択される1種以上のゴムであるであることが好ましく、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム及びスチレンブタジエンゴムのうちの少なくとも1種であることがより好ましい。
【0032】
また、他の物性を低下させることなく、耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等の耐久性をより高めることができる観点から、前記ジエン系ポリマーのグラフト量が、前記エポキシ樹脂100mol%に対して1~30mol%であることが好ましい。前記ジエン系ポリマーのグラフト量を前記エポキシ樹脂100mol%に対して1mol%以上とすることで、確実にエポキシ樹脂の相溶性を高め、耐久性をより高めることができ、さらに、前記ジエン系ポリマーのグラフト量を前記エポキシ樹脂100mol%に対して50mol%以下とすることで、エポキシ樹脂の弾性率、強度等を良好に維持できるためである。同様の観点から、前記ジエン系ポリマーのグラフト量は、3~40mol%であることがより好ましく、5~30mol%であることがさらに好ましい。
なお、前記ジエン系ポリマーのグラフト量については、核磁気共鳴スペクトルの測定や、グラフトさせるジエン系ポリマーが全て消費している場合には、エポキシ樹脂とジエン系ポリマーの仕込み比から算出することによって確認することができる。
【0033】
また、本発明のジエングラフトエポキシ樹脂は、ジエン系ポリマーがグラフトされていればよいが、さらにホウ素原子を含有することが好ましく、該ホウ素原子を介して前記エポキシ樹脂の主鎖と結合していることが好ましい。グラフト重合の際の反応の効率が向上し、ゴム材料と共に用いた際の耐久性をより確実に高めることができるからである。
【0034】
なお、ジエングラフトエポキシ樹脂中に前記ホウ素原子を含有させる方法としては、後述するように、グラフトに用いるジエン系ポリマーとして、例えばボロン酸変性ジエン系ポリマーを使用することによって、ホウ素原子を介して前記エポキシ樹脂の主鎖と前記ジエン系ポリマーとを結合させる(つまり、前記ジエングラフトエポキシ樹脂中に前記ホウ素原子を含有させる)ことができる。
ここで、前記ボロン酸変性ジエン系ポリマーについては、例えば、ボロン酸変性ブタジエンゴム、ボロン酸変性イソプレンゴム、ボロン酸変性スチレン-ブタジエンゴム等が挙げられる。
【0035】
(3)ジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法
本発明のジエングラフトエポキシ樹脂の製造方法については、前記エポキシ樹脂の主鎖に対して、前記ジエン系ポリマーをグラフトできる方法であれば特に限定はされない。例えば、以下に示すように、窒素原子含有エポキシ樹脂に、ボロン酸変性ジエン系ポリマー(以下の式では(BR-B(OEt)2又はBR-B(OH)2)、BRはジエン系ポリマーの一例としてブタジエンゴムを意味する)を反応させることで、ジエングラフトエポキシ樹脂(ブタジエングラフトエポキシ樹脂)を得ることができる。
【化2】
【0036】
なお、前記窒素原子含有エポキシ樹脂と、前記ボロン酸変性ジエン系ポリマーとの反応については、例えば、それぞれをクロロホルム等の溶媒中で混合した後、溶媒を蒸発させることで行うことができる。エポキシ樹脂が窒素原子を含有し、ジエン系ポリマーがボロン酸変性されていることで、互いの反応点が反応することにより容易に製造することが可能となる。
【0037】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、ゴム成分と、上述した本発明のジエングラフトエポキシ樹脂と、を含むことを特徴とする。
上記構成を具えることで、上述した本発明のジエングラフトエポキシ樹脂とゴム成分との反応性が高まり、エポキシ樹脂の相溶性が改善される結果、ゴム組成物の耐久性(耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等)を向上させることができる。
【0038】
ここで、本発明のゴム組成物のゴム組成物における、前記ジエングラフトエポキシ樹脂の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して1~50質量部であることが好ましい。前記ジエングラフトエポキシ樹脂の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して1質量部であれば、ゴム組成物の十分な耐久性を確保でき、前記ジエングラフトエポキシ樹脂の含有量が前記ゴム成分100質量部に対して50質量部以下であれば、耐亀裂進展性や発熱性等の他の物性悪化を抑制できる。同様の観点から、前記ジエングラフトエポキシ樹脂の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して5~40質量部であることがより好ましく、10~30質量部であることがさらに好ましい。
【0039】
本発明のゴム組成物の前記グラフト共重合体以外の成分については、特に限定されず、要求に応じて任意の成分を含むことが可能である。
【0040】
前記ゴム成分については、要求される性能に応じて適宜選択することができる。例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン-ブタジエンゴム、スチレン-エチレン-ブタジエンゴム等のジエン系ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、ブチルゴム(IIR)等の非ジエン系ゴムが挙げられる。これらの中でも、前記ジエングラフトエポキシ樹脂との相溶性が高く、耐久性をより向上できる観点から、前記ジエン系ゴムを含む1種又は2種以上を含むことが好ましい。
【0041】
また、本発明のゴム組成物は、耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等の耐久性をより向上させる観点から、補強性充填剤をさらに含むことが好ましい。
前記補強性充填剤については、ゴム分野で通常用いられる補強性充填剤であればよく、例えば、シリカ、カーボンブラック、タルク、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化チタン等が挙げられる。これらの中でも、ゴム組成物の上述したジエングラフトエポキシ樹脂との相乗効果により、耐久性をより高めることができる観点から、シリカを少なくとも含むことが好ましい。
【0042】
前記シリカの種類については、特に限定はされない。例えば、湿式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられる。
上述した中でも、前記シリカは、湿式シリカであることが好ましく、沈降シリカであることがより好ましい。これらのシリカは、分散性が高く、ゴム組成物の低ロス性及び耐摩耗性をより向上できるためである。なお、沈降シリカとは、製造初期に、反応溶液を比較的高温、中性~アルカリ性のpH領域で反応を進めてシリカ一次粒子を成長させ、その後酸性側へ制御することで、一次粒子を凝集させる結果得られるシリカのことである。
【0043】
また、前記シリカとしては、特に限定されないが、例えばCTAB比表面積(セチルトリメチルアンモニウムブロミド吸着比表面積)を、70m/g以上、250m/g以下のシリカを用いることができる。なお、前記CTAB比表面積は、ASTMD3765-92に準拠して測定された値を意味する。ただし、シリカ表面に対するセチルトリメチルアンモニウムブロミド1分子当たりの吸着断面積を0.35nm2として、CTABの吸着量から算出される比表面積(m2/g)をCTAB比表面積とする。
また、前記シリカのBET比表面積は、100m/g以上、250m/g以下とすることができる。なお、前記BET比表面積は、BET法により求めた比表面積のことであり、本発明では、ASTMD4820-93に準拠して測定することができる。
【0044】
また、前記シリカの含有量についても、特に限定はされない。例えば、前記ゴム成分100質量部に対して10~160質量部であることが好ましく、20~120質量部であることがより好ましく、30~100質量部であることが特に好ましい。
前記シリカの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して、30質量部以上とすることで、前記ジエングラフトエポキシ樹脂との相乗効果によってより優れた耐久性を得ることができ、100質量部以下とすることで、加工性等の物性の悪化をより確実に抑えることができる。
【0045】
なお、前記カーボンブラックの種類についても、特に限定はされない。例えば、オイルファーネス法により製造された任意のハードカーボン及びソフトカーボンを用いることができる。
また、前記カーボンブラックとしては、特に限定されるものではなく、例えば、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが挙げられ、窒素吸着比表面積(NSA、JIS K 6217-2:2001に準拠して測定する)が20~250m/gのカーボンブラックを用いることができる。これらの中でも、ゴム組成物の耐摩耗性を向上させる観点から、ISAF、SAFグレードのカーボンブラックが好ましい。これらカーボンブラックは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記カーボンブラックの含有量についても、特に限定はされない。例えば、前記ゴム成分100質量部に対して、0~70質量部であることが好ましく、10~60質量部であることがより好ましく、20~50質量部であることが特に好ましい。前記カーボンブラックの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して、20質量部以上とすることで、より優れた耐久性を得ることができ、50質量部以下とすることで、低発熱性の悪化をより確実に抑えることができる。0
さらに、前記カーボンブラックと前記シリカとの含有量比(質量比)についても、特に限定はされない。例えば、カーボンブラック:シリカ=1:15~3:1とすることが好ましく、1:12~1:1とすることがより好ましく、1:10~1:2とすることが特に好ましい。カーボンブラック:シリカを、1:15~3:1の範囲とすることで、耐疲労性、耐引裂性を一層向上させることができる。
【0047】
また、本発明のゴム組成物は、ゴム組成物に通常配合される添加剤(その他の成分)を、発明の効果を損なわない程度に含むことができる。例えば、ゴム工業で通常使用されている、シランカップリング剤、老化防止剤、架橋促進剤、架橋剤、架橋促進助剤、軟化剤、ステアリン酸、オゾン劣化防止剤、界面活性剤等の添加剤を適宜含むことができる。
【0048】
本発明のゴム組成物が、前記シリカを含む場合には、シランカップリング剤をさらに含むことが好ましい。前記シリカの分散性を高め、より優れた耐久性を得ることができるためである。
前記シランカップリング剤については、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
前記老化防止剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されない。例えば、フェノール系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、アミン系老化防止剤等を挙げることができる。これら老化防止剤は、1種又は2種以上を併用することができる。
【0050】
前記架橋促進剤としては、公知のものを用いることができ、特に制限されるものではない。例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラドデシルチウラムジスルフィド、テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛等のジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0051】
前記架橋剤についても、特に制限はされない。例えば、硫黄、ビスマレイミド化合物、パーオキサイド等が挙げられる。
前記ビスマレイミド化合物の種類については、例えば、N,N’-o-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス(3-エチル-5-メチル-4-マレイミドフェニル)メタンなどを例示することができる。本発明では、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド及びN,N’-(4,4’-ジフェニルメタン)ビスマレイミド等を好適に用いることができる。
【0052】
前記架橋促進助剤については、例えば、亜鉛華(ZnO)や脂肪酸等が挙げられる。脂肪酸としては、飽和若しくは不飽和、直鎖状若しくは分岐状のいずれの脂肪酸であってもよく、脂肪酸の炭素数も特に制限されないが、例えば炭素数1~30、好ましくは15~30の脂肪酸、より具体的にはシクロヘキサン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、側鎖を有するアルキルシクロペンタン等のナフテン酸;ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸(ネオデカン酸等の分岐状カルボン酸を含む)、ドデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)等の飽和脂肪酸;メタクリル酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;ロジン、トール油酸、アビエチン酸等の樹脂酸などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明においては、亜鉛華及びステアリン酸を好適に用いることができる。
【0053】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。本発明のゴム組成物をタイヤ材料として含むことによって、優れた耐久性(耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等)を実現できる。
本発明のタイヤにおいて、本発明のゴム組成物を適用する部位については、特に限定はされないが、トレッド部に用いることが好ましい。本発明のゴム組成物をトレッド部に用いたタイヤは、耐久性に優れたタイヤとなる。
【0054】
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、該タイヤに充填する気体としては、通常のあるいは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0055】
(その他の物品)
また、上述した本発明のゴム組成物は、タイヤ以外のゴム物品(以下、「その他のゴム物品」という。)へ適用することもできる。
前記その他のゴム物品については、特に限定はされないが、例えば、防振ゴム、免震ゴム、クローラ、ベルト、ホース等が挙げられる。
【実施例0056】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(ジエングラフトエポキシ樹脂の作製)
以下の条件で、エポキシ樹脂、及び、ジエングラフトエポキシ樹脂1~4を作製した。
【0058】
(1)エポキシ樹脂
ビスフェノールAジグリシジルエーテルと、アミン化合物として、プロピルアミンとポリエーテルアミン(D2000)とをモル比1:2で混合したものとを、Chemical Communications 2018, 54, 12930-12933.を参考に、100℃で30分間反応させ、エポキシ樹脂1を得た。
【0059】
(2)ジエングラフトエポキシ樹脂1~4
ボロン酸変性ブタジエン(BR-B(OH)2)として、アニオン重合で合成したBR-Liを用いてOrganometallics 1983, 2, 1316.を参考にポリブタジエン部分の分子量の異なるBR1(分子量5000)及びBR2(分子量30000)を合成した。ジエングラフトエポキシ樹脂1~4は、それぞれ上記エポキシ樹脂1又は2とボロン酸変性ブタジエンとを、以下の割合でクロロホルム中で混合した後、クロロホルムを蒸発させることで、ジエングラフトエポキシ樹脂を得た。
ジエングラフトエポキシ樹脂1-エポキシ樹脂1:10g、BR1:1.8g
ジエングラフトエポキシ樹脂2-エポキシ樹脂2:10g、BR2:11g
ジエングラフトエポキシ樹脂3-エポキシ樹脂2:10g、BR1:1.5g
ジエングラフトエポキシ樹脂4-エポキシ樹脂2:10g、BR2:8.9g
なお、各ジエングラフトエポキシ樹脂におけるポリブタジエンのグラフト量については、エポキシ樹脂とポリブタジエンが全て反応していると仮定し、エポキシ100mol%におけるポリブタジエンのグラフト量を算出した。算出された値は後述する。
【0060】
<実施例1~4、比較例1~2>
表1に示す配合処方に従い、通常のバンバリーミキサーを用いて、ゴム組成物のサンプルを作製し、以下の評価を行った。
【0061】
<評価>
(1)耐疲労性
各サンプルのゴム組成物について、160℃にて15分間加硫して加硫ゴムとした後、JIS K 6270:2001に従い、ダンベル状試験片を作製し、試験歪み:100%、試験周波数:5Hz、試験温度:40℃で試験を実施し、破断するまでの繰り返し回数を測定した。
評価については、比較例1のサンプルが破断するまでの回数を100としたときの指数値として表示し、結果を表1に示す。なお、指数値は、大きいほど破断するまでの回数が多く、疲労性が良好であることを示す。
【0062】
(2)耐引裂性
各サンプルのゴム組成物について、160℃にて15分間加硫して加硫ゴムとした後、引張試験装置(株式会社島津製作所)を使用し、JIS K6252に従い、トラウザ形で引裂強度(MPa)を測定した。
なお、評価については、比較例1のサンプルの引裂強度を100としたときの指数値で表示し、結果を表1に示す。なお、指数値は、大きい程、耐引裂性が良好であり、耐久性に優れることを示す。
【0063】
【表1】
【0064】
*1 スチレンブタジエンゴム:T2000
*2 ジエングラフトエポキシ樹脂1:ポリブタジエンのグラフト量 エポキシ樹脂100mol%に対して5mol%
*3 ジエングラフトエポキシ樹脂2:ポリブタジエンのグラフト量 エポキシ樹脂100mol%に対して5mol%
*4 ジエングラフトエポキシ樹脂3:ポリブタジエンのグラフト量 エポキシ樹脂100mol%に対して5mol%
*5 ジエングラフトエポキシ樹脂4:ポリブタジエンのグラフト量 エポキシ樹脂100mol%に対して5mol%
*6 カーボンブラック:SAF級カーボンブラック、旭カーボン社製、商品名「ASAHI#105」
*7 シリカ:東ソーシリカ株式会社製、「NIPSIL AQ」
*8 シランカップリング剤:信越化学工業株式会社製「ABC-856」
*9 ワックス:マイクロクリスタリンワックス、精工化学社製
*10 老化防止剤:大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」
*11 加硫促進剤DPG:大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」
*12 加硫促進剤MBTS:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDM-P」
*13 加硫促進剤NS:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーNS-P(NS)」
*14 酸化亜鉛:ハクスイテック社製
【0065】
表1から、本発明例のジエングラフトエポキシ樹脂1~4を含む実施例のサンプルは、比較例1のサンプルに比べて、耐疲労性及び耐引裂性のいずれについても優れた結果が得られ、耐久性に優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、ゴム材料と共に用いた際の耐久性を高めることができるエポキシ樹脂及びエポキシ樹脂の製造方法を提供することが可能となる。
また、本発明によれば、耐カット性、耐摩耗性、耐疲労性等の耐久性に優れたゴム組成物及びタイヤを提供することが可能となる。