(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124976
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】杭基礎構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20220819BHJP
E02D 27/01 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/01 101A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021022932
(22)【出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124084
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 久人
(72)【発明者】
【氏名】稲田 博文
(72)【発明者】
【氏名】石橋 重雄
(72)【発明者】
【氏名】島村 高平
(72)【発明者】
【氏名】菅野 貴孔
(72)【発明者】
【氏名】河野 孝
(72)【発明者】
【氏名】秋月 通孝
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046BA22
2D046CA03
(57)【要約】
【課題】基礎杭の位置がずれた場合でも、プレキャストコンクリート造の基礎部材と基礎杭の杭頭との間に所定のクリアランスを確保可能な、杭基礎構造およびその構築方法を提供すること。
【解決手段】杭基礎構造1は、基礎杭10と、基礎杭10の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材20と、を備える。基礎杭10の杭頭11は、地盤面2から上方に突出しており、基礎部材20の下面には、基礎杭10の杭頭11が収容される凹部22が形成されている。また、杭基礎構造1は、基礎杭10の周囲の捨てコンクリート層3の上に設けられて基礎部材20を支持するレベル調整材40と、基礎杭10の杭頭11を覆うコンクリートからなる蓋部材30と、蓋部材30と基礎部材20の凹部22との間に無収縮グラウト材が充填されて形成された充填部42と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎杭と、当該基礎杭の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造であって、
前記基礎杭の杭頭は、地盤面から上方に突出しており、
前記基礎部材の下面には、前記基礎杭の杭頭が収容される凹部が形成され、
前記基礎杭の周囲の地盤面または当該地盤面上の捨てコンクリート層の上に設けられて前記基礎部材を支持するレベル調整材と、
前記基礎杭の杭頭を覆うセメント系材料からなる蓋部材と、
前記蓋部材と前記基礎部材の凹部との間に充填材が充填されて形成された充填部と、を備え、
前記基礎部材は、前記充填部および前記蓋部材を介して、前記基礎杭に接合されることを特徴とする杭基礎構造。
【請求項2】
前記基礎杭の杭頭には、当該杭頭の側面に隙間を形成するための杭頭キャップが被せられ、
前記蓋部材は、当該杭頭キャップの上にセメント系材料が打設されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の杭基礎構造。
【請求項3】
基礎杭と、当該基礎杭の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造の構築方法であって、
地盤面から上方に突出した基礎杭の杭頭を覆うように、セメント系材料からなる蓋部材を構築する工程と、
前記地盤面または当該地盤面上の捨てコンクリート層の上に、前記基礎部材の高さ位置を調整するためのレベル調整材を設置する工程と、
下面に凹部が形成された基礎部材を用意し、前記レベル調整材の上に前記基礎部材を載置して、前記基礎部材の凹部に前記基礎杭の杭頭に設けられた蓋部材を収容する工程と、
前記蓋部材と前記基礎部材の凹部との間に充填材を充填して充填部を形成することで、前記充填部および前記蓋部材を介して、前記基礎部材を前記基礎杭に接合する工程と、を備えることを特徴とする杭基礎構造の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎杭と、この基礎杭の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、基礎杭の上に、プレキャストコンクリート造の基礎部材を載せて、この基礎杭と基礎部材との隙間に充填材を充填することで、基礎杭と基礎部材とを一体化させることが行われている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-200094公報
【特許文献2】特開2016-186154公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基礎杭の位置がずれた場合でも、プレキャストコンクリート造の基礎部材と基礎杭の杭頭との間のクリアランスを調整可能な、杭基礎構造およびその構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、基礎杭の杭頭にプレキャストコンクリート造の基礎部材を設置する杭基礎構造として、後工程で設置する基礎部材の凹部との間に所定のクリアランスを確保できるように上面や側面の位置を決定した蓋部材を、基礎杭の杭頭を覆うようにセメント系材料で構築し、その後、基礎部材を設置して、蓋部材と基礎部材の凹部との間に充填材を充填することで、施工誤差により基礎杭の高さ位置や水平位置がずれた場合でも、蓋部材を介して基礎杭と基礎部材を接合することによって、この施工誤差を吸収可能な点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明の杭基礎構造(例えば、後述の杭基礎構造1)は、基礎杭(例えば、後述の基礎杭10)と、当該基礎杭の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材(例えば、後述の基礎部材20)と、を備える杭基礎構造であって、前記基礎杭の杭頭(例えば、後述の杭頭11)は、地盤面(例えば、後述の地盤面2)から上方に突出しており、前記基礎部材の下面には、前記基礎杭の杭頭が収容される凹部(例えば、後述の凹部22)が形成され、前記基礎杭の周囲の地盤面または当該地盤面上の捨てコンクリート層(例えば、後述の捨てコンクリート層3)の上に設けられて前記基礎部材を支持するレベル調整材(例えば、後述のレベル調整材40)と、前記基礎杭の杭頭を覆うセメント系材料(例えば、後述のコンクリート)からなる蓋部材(例えば、後述の蓋部材30)と、前記蓋部材と前記基礎部材の凹部との間に充填材が充填されて形成された充填部(例えば、後述の充填部42)と、を備え、前記基礎部材は、前記充填部および前記蓋部材を介して、前記基礎杭に接合されることを特徴とする。
【0006】
プレキャストコンクリート造の基礎部材の下面には、基礎杭の杭頭を収容するための凹部が形成されている。従来では、基礎杭の位置がずれると、この基礎部材の凹部と基礎杭の杭頭との間の隙間(クリアランス)が過大となる場合があった。この場合、この隙間に充填材を充填すると、充填材の充填量が多くなり、杭基礎構造の施工コストが高くなる、という問題があった。
そこで、この発明によれば、基礎杭の杭頭を覆うように蓋部材を構築した。このとき、蓋部材の上面や側面の位置を、後工程で取り付ける基礎部材の凹部との間に所定のクリアランスを確保できるように構築する。次に、基礎杭の周囲の地盤面または地盤面上の捨てコンクリート層の上にレベル調整材を設置し、このレベル調整材上に基礎部材を載置する。これにより、蓋部材の上面および側面と基礎部材の凹部との間に所定のクリアランスが確保される。その後、この隙間に充填材を充填して充填部を形成することで、充填部および蓋部材を介して、基礎部材を基礎杭に接合する。よって、施工誤差で基礎杭の高さ位置や水平位置がずれた場合でも、蓋部材で施工誤差を吸収して、プレキャストコンクリート造の基礎部材と基礎杭の杭頭との間のクリアランスを調整できる。その結果、このクリアランスに充填する充填材の充填量を少なくでき、杭基礎構造を低コストで構築できる。
【0007】
第2の発明の杭基礎構造は、前記基礎杭の杭頭には、当該杭頭の側面に隙間を形成するための杭頭キャップ(例えば、後述の杭頭キャップ31)が被せられ、前記蓋部材は、当該杭頭キャップの上にセメント系材料が打設されて形成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、杭頭キャップで杭頭の側面に隙間を形成することにより、基礎杭と基礎部材とを半剛接合として、地震時の構造安定性を確保できる。よって、この杭頭キャップを底型枠として、杭頭キャップの上にセメント系材料を打設することで、蓋部材を効率良く構築できるうえに、基礎杭と基礎部材とを半剛接合として、地震時の構造安定性を確保できる。
【0009】
第3の発明の杭基礎構造の構築方法は、基礎杭と、当該基礎杭の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材と、を備える杭基礎構造の構築方法であって、地盤面から上方に突出した基礎杭の杭頭を覆うように、セメント系材料からなる蓋部材を構築する工程(例えば、後述のステップS1、S2)と、前記地盤面または当該地盤面上の捨てコンクリート層の上に、前記基礎部材の高さ位置を調整するためのレベル調整材を設置する工程(例えば、後述のステップS3)と、下面に凹部が形成された基礎部材を用意し、前記レベル調整材の上に前記基礎部材を載置して、前記基礎部材の凹部に前記基礎杭の杭頭に設けられた蓋部材を収容する工程(例えば、後述のステップS4)と、前記蓋部材と前記基礎部材の凹部との間に充填材(例えば、後述の無収縮グラウト材)を充填して充填部を形成することで、前記充填部および前記蓋部材を介して、前記基礎部材を前記基礎杭に接合する工程(例えば、後述のステップS5)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、基礎杭の杭頭を覆うように蓋部材を構築した。このとき、蓋部材の上面や側面の位置を、後工程で取り付ける基礎部材の凹部との間に所定のクリアランスを確保できるように構築する。次に、基礎杭の周囲の地盤面または地盤面上の捨てコンクリート層の上にレベル調整材を設置し、このレベル調整材上に基礎部材を載置する。これにより、蓋部材の上面および側面と基礎部材の凹部との間に所定のクリアランスが確保される。その後、この隙間に充填材を充填して充填部を形成することで、充填部および蓋部材を介して、基礎部材を基礎杭に接合する。よって、施工誤差で基礎杭の高さ位置や水平位置がずれた場合でも、蓋部材で施工誤差を吸収して、プレキャストコンクリート造の基礎部材と基礎杭の杭頭との間のクリアランスを調整できる。その結果、このクリアランスに充填する充填材の充填量を少なくでき、杭基礎構造を低コストで構築できる。
また、基礎部材を設置する前に、コンクリートを打設して蓋部材を構築するので、基礎部材を設置した後に、基礎杭の杭頭と基礎部材の凹部との隙間にコンクリートを充填することで蓋部材を構築する場合と異なり、杭頭廻りに比較的薄くかつ平面的に広がりのある蓋部材を構築できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、基礎杭の位置がずれた場合でも、杭頭を覆う蓋部材を設けることで、プレキャストコンクリート造の基礎部材と基礎杭の杭頭との間のクリアランスを調整可能な、杭基礎構造およびその構築方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る杭基礎構造の縦断面図である。
【
図2】
図1の第1実施形態に係る杭基礎構造のA-A断面図である。
【
図3】
図1の第1実施形態に係る杭基礎構造の部分拡大図である。
【
図4】第1実施形態に係る杭基礎構造の構築方法のフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係る杭基礎構造の構築方法の説明図(その1:基礎杭の杭頭に杭頭キャップを被せて捨てコンクリート層を形成した状態)である。
【
図6】第1実施形態に係る杭基礎構造の構築方法の説明図(その2:杭頭キャップの上にコンクリートを打設して蓋部材を構築した状態)である。
【
図7】第1実施形態に係る杭基礎構造の構築方法の説明図(その3:捨てコンクリート層の上にレベル調整材を配置した状態)である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る杭基礎構造の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、基礎杭とプレキャストコンクリート造の基礎部材とを接合する杭基礎構造である。具体的には、基礎杭の杭頭部にセメント系材料からなる蓋部材を構築し、このとき、蓋部材と後工程で設置する基礎部材の凹部との間に所定のクリアランスを確保できるようにしておき、その後、基礎部材を設置して、蓋部材と基礎部材の凹部と間に充填部を設けた。第1実施形態は、基礎杭の杭頭の側面と基礎部材の凹部(蓋部材)との間に隙間を設けることで、基礎杭と基礎部材とを半剛接合した杭基礎構造である。第2実施形態は、基礎杭の杭頭と基礎部材の凹部(蓋部材)との間には隙間を設けないことで、基礎杭と基礎部材とを剛接合した杭基礎構造である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る杭基礎構造1の縦断面図である。
図2は、
図1の杭基礎構造1のA-A断面図である。
図3は、
図1の杭基礎構造1の部分拡大図である。
杭基礎構造1は、プレキャストコンクリート造の既成杭である基礎杭10と、基礎杭10の上に設けられたプレキャストコンクリート造の基礎部材20と、を備える。
基礎杭10は、基礎杭10の杭頭11は、地盤面2から上方に突出している。この地盤面2の上には、砕石が敷設されており、この砕石の上にコンクリートが打設されて、捨てコンクリート層3が形成されている。
基礎杭10の杭頭11の上には、この杭頭11の上面および側面を覆う、セメント系材料としてのコンクリートからなる蓋部材30が設けられている。具体的には、基礎杭10の杭頭11には、杭頭キャップ31が被せられている。杭頭キャップ31は、杭頭11の上面を覆うキャップ本体32と、このキャップ本体32の周縁部から下方に延びて杭頭11の側面を覆うもので壁部33と、を備えている。この壁部33と杭頭11の側面との間には、隙間Sが形成されている。この杭頭キャップ31の上にセメント系材料であるコンクリートが打設されて、蓋部材30が形成されている。
【0014】
基礎部材20は、フーチングとなるものであり、この基礎部材20には、基礎梁4および柱5が取り付けられる。基礎部材20の下面21には、基礎杭10の杭頭11が収容される凹部22が形成されている。この凹部22は、底面(上面)23と、底面23の周囲の壁面24と、で構成されている。この基礎部材20には、外部から凹部22の底面23の中心部に至るグラウト注入管25と、凹部22の底面23の周縁部から外部に至るグラウト排出管26と、が設けられている。
捨てコンクリート層3の上には、上面の高さを調整可能なレベル調整材40が配置されている。このレベル調整材は、金属製の薄板を積層したものであり、積層する薄板の枚数を変更することで、上面の高さ位置を調整可能である。
また、捨てコンクリート層3の上で蓋部材30の周囲には、弾性変形可能な樹脂製のノロ止めガスケット41が配置されている。
【0015】
基礎部材20は、レベル調整材40の上に載置されており、これにより、基礎部材20は、レベル調整材40に支持されている。このとき、基礎部材20の凹部22には、蓋部材30が収容されるとともに、基礎部材20の下面21が、捨てコンクリート層3上のノロ止めガスケット41を押し潰している。
蓋部材30の上面と凹部22の底面23との間のクリアランスはd1であり、蓋部材30の側面と凹部22の壁面24との間のクリアランスはd2となっている。この蓋部材30と基礎部材20の凹部22との間には、グラウト注入管25およびグラウト排出管26を用いて無収縮グラウト材が充填されて、充填部42が形成されている。これにより、基礎部材20は、充填部42および蓋部材30を介して、基礎杭10に接合されている。
【0016】
以下、杭基礎構造1の構築方法について、
図4のフローチャートを参照しながら説明する。
初期状態として、基礎杭10が地盤面2から上方に突出しているものとする。
ステップS1では、
図5に示すように、基礎杭10の杭頭11に杭頭キャップ31を被せる。これにより、この壁部33と杭頭11の側面との間には、隙間Sが形成される。次に、地盤面2上に砕石を敷設し、その後、コンクリートを打設し、捨てコンクリート層3を形成する。ここで、捨てコンクリート層3を形成する際、杭頭キャップ31の壁部33を、砕石の敷設およびコンクリートの打設の側型枠(杭頭11側の型枠)として利用する。
【0017】
ステップS2では、
図6に示すように、この杭頭キャップ31を底型枠として、この杭頭キャップ31の上にコンクリートを打設して、蓋部材30を構築する。ここで、蓋部材30の上面および側面の位置を、後工程で設置する基礎部材20の凹部22との間に所定のクリアランスd
1、d
2を確保できるように決定する。そして、この決定した側面の位置に応じて、捨てコンクリート層3の上に側型枠34を建て込んで、側型枠34の内側に、決定した蓋部材30の上面の高さ位置までコンクリートを打設する。
【0018】
ステップS3では、
図7に示すように、捨てコンクリート層3の上に、基礎部材20の高さ位置を調整するためのレベル調整材40を配置する。また、捨てコンクリート層3の上で蓋部材30の周囲に、ノロ止めガスケット41を配置する。
ステップS4では、
図7中矢印で示すように、レベル調整材40の上に基礎部材20を載置する。これにより、
図1に示すように、基礎部材20の凹部22に基礎杭10の杭頭11に設けられた蓋部材30が収容され、蓋部材30と基礎部材20の凹部22との間のクリアランスd
1、d
2が確保される。また、基礎部材20の下面21は、捨てコンクリート層3上のノロ止めガスケット41を押し潰す。
【0019】
ステップS5では、
図1に示すように、蓋部材30と基礎部材20の凹部22との間に充填材としての無収縮グラウト材を充填して充填部42を形成する。具体的には、外部からグラウト注入管25を通して凹部22に無収縮グラウト材を注入する。この無収縮グラウト材の注入は、無収縮グラウト材がグラウト排出管26を通して外部に排出されるのを確認できるまで行う。これにより、充填部42および蓋部材30を介して、基礎部材20を基礎杭10に接合する。
【0020】
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)基礎杭10の杭頭11を覆うように蓋部材30を構築した。このとき、蓋部材30の上面や側面の位置を、基礎部材20の凹部22との間に所定のクリアランスd1、d2を確保できるように構築する。次に、基礎杭10の周囲の地盤面2上の捨てコンクリート層3の上にレベル調整材40を設置し、このレベル調整材40の上に基礎部材20を載置する。これにより、蓋部材30の上面および側面と基礎部材20の凹部22との間に所定のクリアランスd1、d2が確保される。その後、このクリアランスd1、d2の隙間に無収縮グラウト材を充填して充填部42を形成することで、充填部42および蓋部材30を介して、基礎部材20を基礎杭10に接合する。よって、施工誤差で基礎杭10の高さ位置や水平位置がずれた場合でも、蓋部材30で施工誤差を吸収して、プレキャストコンクリート造の基礎部材20と基礎杭10の杭頭11との間に所定のクリアランスd1、d2を確保できる。その結果、このクリアランスに充填する無収縮グラウト材の充填量を少なくでき、杭基礎構造1を低コストで構築できる。
【0021】
(2)杭頭キャップ31で杭頭11の側面に隙間Sを形成することにより、基礎杭10と基礎部材20とを半剛接合として、地震時の構造安定性を確保できる。よって、この杭頭キャップ31を底型枠として、杭頭キャップ31の上にコンクリートを打設することで、蓋部材30を効率良く構築できるうえに、基礎杭10と基礎部材20とを半剛接合として、地震時の構造安定性を確保できる。
【0022】
〔第2実施形態〕
図8は、本発明の第2実施形態に係る杭基礎構造1Aの縦断面図である。
本実施形態では、基礎杭10の杭頭11の周囲に隙間が設けられておらず、基礎杭10と基礎部材20とが剛接合される点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、基礎杭10の杭頭11には、杭頭キャップが設けられておらず、杭頭11の上に、図示しない捨て型枠である底型枠を建て込んで、この底型枠の上にセメント系材料であるコンクリートを現場打設することで、蓋部材30Aが設けられている。これにより、基礎杭10の杭頭11の側面に蓋部材30Aが密着した状態となる。
本実施形態によれば、上述の(1)の効果に加えて、以下のような効果がある。
(3)基礎杭10の杭頭11の周囲に隙間を設けることなく、蓋部材30および充填部42を介して、基礎杭10と基礎部材20と剛接合とすることで、優れた構造安定性を確保できる。
【0023】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
なお、上述の各実施形態では、基礎杭10と基礎部材20との間に鉄筋や鉄骨材を配置していないが、これに限らず、基礎杭10の引き抜き抵抗部材として鉛直鉄筋を設け、この鉛直鉄筋の一端側を基礎杭10の内部に定着し、他端側を基礎部材20に定着あるいは基礎部材20を貫通して上方まで突出させてもよい。
また、上述の各実施形態では、基礎部材20の内部に鉄筋や鉄骨材を埋設していないが、これに限らず、基礎部材20の内部に基礎梁の梁主筋や柱材の柱主筋に相当する鉄筋や鉄骨材を埋設してもよい
さらに、上述の各実施形態では、レベル調整材40を金属製の薄板を積層して構成したが、これに限らず、レベル調整材としてモルタル板を用いてもよいし、セメント系セルフレベリング材を建設現場で混練し、トンボやコテ等で均してレベル調整材を形成してもよい。
【0024】
また、上述の実施形態では、蓋部材30をコンクリートで形成したが、これに限らず、モルタルや繊維補強コンクリートで形成してもよい。
また、上述の各実施形態では、蓋部材30を、現場でコンクリートを打設して形成したが、これに限らず、プレキャストコンクリート造としてもよい。この場合、例えば、基礎杭10の杭頭11の位置ずれした寸法に応じて、工場にて蓋部材30を製造し、現場に運搬して基礎杭10の杭頭11に設置する。
また、上述の実施形態では、ステップS3において、
図7に示すように、捨てコンクリート層3の上に、ノロ止めガスケット41を配置した後、基礎部材20を載置したが、ノロ止めガスケットを配置することなく、基礎部材20の底面にノロ止めガスケット41またはノロ止めガスケット41に相当する突出部を設けておき、この状態で、基礎部材20を載置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
S…基礎杭周囲の隙間 d1…蓋部材の上面と凹部の底面との間のクリアランス
d2…蓋部材の側面と凹部の壁面との間のクリアランス
1、1A…杭基礎構造 2…地盤面 3…捨てコンクリート層 4…基礎梁 5…柱
10…基礎杭 11…杭頭
20…基礎部材 21…基礎部材の下面 22…凹部 23…凹部の底面
24…凹部の壁面 25…グラウト注入管 26…グラウト排出管
30、30A…蓋部材 31…杭頭キャップ 32…キャップ本体 33…壁部
34…側型枠
40…レベル調整材 41…ノロ止めガスケット 42…充填部