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特開2022-124983液体移送装置および液体入り容器の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124983
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】液体移送装置および液体入り容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/04 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
B67D1/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021068962
(22)【出願日】2021-04-15
(62)【分割の表示】P 2021022856の分割
【原出願日】2021-02-16
(71)【出願人】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】若林 貴宏
【テーマコード(参考)】
3E082
【Fターム(参考)】
3E082AA04
3E082BB05
3E082CC01
3E082DD01
3E082FF09
(57)【要約】
【課題】形状や大きさが異なる移送元容器に対応し、液体を移送させることのできる技術を提供する。
【解決手段】液体移送装置(10)は、ガス源(13)からのガスによって移送元容器(100)から移送先容器(200)へ液体を移送する機能を有している。液体移送装置(10)は、一方がガス源(13)へと通じて他方が移送先容器(200)へと通じるガス流路(21)、および一方が移送元容器(100)へと通じて他方が移送先容器(200)へと通じるガス流路(31)が通過する栓(20)を備える。また、液体移送装置(10)は、移送元容器(100)の口に差し込まれた栓(20)を抑え、移送元容器(100)を収容するバケット(55)を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス源からのガスによって第1容器から第2容器へ液体を移送する機能を有する液体移送装置であって、
一方が前記ガス源へと通じて他方が前記第1容器へと通じる第1流路、および一方が前記第1容器へと通じて他方が前記第2容器へと通じる第2流路が通過する栓と、
前記第1容器の口に差し込まれた前記栓を抑え、前記第1容器を収容するバケットと、
を備える、
ことを特徴とする液体移送装置。
【請求項2】
前記バケットが載せられる秤を備え、
前記バケットに収容された前記第1容器の質量の変化を前記秤で計測する機能を有する、
請求項1記載の液体移送装置。
【請求項3】
一方が前記ガス源へと通じて他方が前記第2流路の中途へ通じる第3流路を備え、
前記ガス源から前記第3流路を介して前記第2容器へガスを供給する機能を有する、
請求項1または2記載の液体移送装置。
【請求項4】
水平方向に移動可能なシャフトを有し、前記栓の上側と接するクランプ部を備え、
前記シャフトが前記バケットと接して前記クランプ部が前記栓を抑えている、
請求項1~3のいずれか一項に記載の液体移送装置。
【請求項5】
水平方向に欠けて鉛直方向に抜ける開放部を有する抑え部を備え、
前記第1流路および前記第2流路を前記開放部で回避して前記栓の上側に前記抑え部がセットされる、
請求項1~4のいずれか一項に記載の液体移送装置。
【請求項6】
前記バケットに鉛直方向に延在して設けられた一対のガイドと、
前記一対のガイドを移動可能な可動部と、を備え、
正面視において前記一対のガイドの間に前記栓が位置するように前記バケットに前記第1容器が収容され、
前記栓の上側に前記可動部がセットされる、
請求項1~5のいずれか一項に記載の液体移送装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の液体移送装置を用いる液体入り容器の製造方法において、
前記第1容器に入った液体を前記第2容器へ移送して、前記第2容器に液体を保管する工程を含む、
ことを特徴とする液体入り容器の製造方法。
【請求項8】
前記第2容器内に空気よりも重い不活性ガスを注入する工程を含む、
請求項7記載の液体入り容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体移送装置および液体入り容器の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2000-247395号公報(以下、「特許文献1」という。)には、日本酒小分売り装置が記載されている。この小分売り装置によれば、酒収容タンクからの酒の吐出を圧力差式によって行う。これにより、酒収容タンク内の酒が、注ぎ口装置に連結された案内チューブから小分容器である瓶内に注がれる。ここでは、小分容器が一升瓶の場合、容器受け棚を下段に移し替え、300ml瓶の場合、上段に移し替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国特開2000-247395号公報(段落0009等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような装置によれば、移送元容器(例えば酒収容タンク)から液体(例えば日本酒)が移送される移送先容器(例えば小分容器)の形状、大きさが異なったとしても、複数段設けられた棚を選択してそれに移送先容器を載せることができる。すなわち、移送先容器が載せられる棚の高さを変えたとしても、移送先容器の口の高さを大きく変えることなく液体を注ぐことができる。しかしながら、特許文献1に記載のような装置では、移送元容器がタンクという大型のものであるため、移送元容器の形状、大きさが異なることまでは考慮されていない。
【0005】
本発明の一目的は、形状や大きさが異なる移送元容器に対応し、液体を移送させることのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一解決手段に係る液体移送装置は、ガス源からのガスによって第1容器から第2容器へ液体を移送する機能を有している。
前記液体移送装置は、一方が前記ガス源へと通じて他方が前記第1容器へと通じる第1流路(ガス流路)、および一方が前記第1容器へと通じて他方が前記第2容器へと通じる第2流路(液体流路)が通過する栓を備えることが好ましい。また、前記液体移送装置は、前記第1容器の口に差し込まれた前記栓を抑え、前記第1容器を収容するバケットを備えることが好ましい。
前記液体移送装置は、前記バケットが載せられる秤を備えることが好ましい。また、前記液体移送装置は、前記バケットに収容された前記第1容器の質量の変化を前記秤で計測する機能を有することが好ましい。
前記液体移送装置は、一方が前記ガス源へと通じて他方が前記第2流路の中途へ通じる第3流路を備えることが好ましい。また、前記液体移送装置は、前記ガス源から前記第3流路を介して前記第2容器へガスを供給する機能を有することが好ましい。
前記液体移送装置は、水平方向に移動可能なシャフトを有し、前記栓の上側と接するクランプ部を備えることが好ましい。また、前記液体移送装置では、前記シャフトが前記バケットと接して前記クランプ部が前記栓を抑えていることが好ましい。
前記液体移送装置は、水平方向に欠けて鉛直方向に抜ける開放部を有するプレートを備えることが好ましい。前記液体移送装置では、前記第1流路および前記第2流路を前記開放部で回避して前記栓の上側に前記プレートがセットされることが好ましい。
前記液体移送装置は、前記バケットに鉛直方向に延在して設けられた一対のガイドを備えることが好ましい。また、前記液体移送装置は、前記一対のガイドを移動可能な可動部を備えることが好ましい。前記液体移送装置では、正面視において前記一対のガイドの間に前記栓が位置するように前記バケットに前記第1容器が収容されることが好ましい。また、前記液体移送装置では、前記栓の上側に前記可動部がセットされることが好ましい。
前記液体移送装置を用いる液体入り容器の製造方法において、前記第1容器に入った液体を前記第2容器へ移送して、前記第2容器に液体を保管する工程を含むことが好ましい。また、液体入り容器の製造方法は、前記第2容器内に空気よりも重い不活性ガスを注入する工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一解決手段によれば、形状や大きさが異なる移送元容器に対応し、液体を移送させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る液体移送装置の流路系の構成図である。
図2図1での液体移送装置を模式的に示す斜視図である。
図3図2での液体移送装置を模式的に示す正面図である。
図4図2での液体移送装置の前筐体内部の説明図である。
図5図2での液体移送装置の後筐体内部の説明図である。
図6図2での使用状態の液体移送装置を模式的に示す正面図である。
図7図2での液体移送装置が備えるバケットを模式的に示す正面図である。
図8図7でのバケットを模式的に示す右側面図である。
図9図7でのバケットを模式的に示す背面図である。
図10図7でのバケットを模式的に示す上面図である。
図11図7でのバケットが備えるクランプ部の解除状態の説明図である。
図12図11でのクランプ部のロック状態の説明図である。
図13図1での液体移置送装置の制御系の構成図である。
図14図1での液体移送装置を用いた液体入り容器の製造工程のフロー図である。
図15】本発明の他の実施形態に係る液体移送装置の流路系の構成図である。
図16図15での液体移送装置を用いた液体入り容器の製造工程のフロー図である。
図17】本発明の他の実施形態に係るバケットを模式的に示す要部斜視図である。
図18図17でのバケットを模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0010】
(第1実施形態)
本実施形態に係る液体移送装置10について図面を参照して説明する。図1は液体移送装置10の流路系の構成図である。液体移送装置10は、ガス源13からのガス(ガス圧)によって移送元容器100(第1容器)から移送先容器200(第2容器)へ液体を移送(圧送)する機能を有している。
【0011】
液体移送装置10が備えるガス源13として、例えばガスボンベを用いることができる。ガス源13から供給されるガスとして、例えば不活性ガスのアルゴンガス(希ガス)を用いることができる。また、移送元容器100として、例えばワイン(液体)が保管されたワインボトルを用いることができる。また、移送先容器200として、例えばワインボトルよりも小さい小瓶を用いることができる。
【0012】
液体移送装置10によれば、ワインボトル(移送元容器100)に保管されたワイン(液体)を、順次交換された複数の小瓶に分配することができる。アルゴンガス(不活性ガス)を用いることで、ワインの酸化を防止し、味、香り、色が損なわれることを防止することができる。このため、移送先容器200に分配されたワインであってもワインの鮮度を保持した状態で保管することができる。
【0013】
液体移送装置10は、移送元容器100の口に差し込まれる栓20を備えている。例えば、移送元容器100としてのワインボトルには、コルクやスクリューキャップで封をされるもの、形状の異なるものなど種々のものがある。栓20(ボトルキャップ)として、例えば円錐台形のものを用いることができる。種々のボトルが有する口にも対応することができるよう、栓20を円錐台形としておけば、円錐台形の栓20を逆にして円錐台上面側からボトル口へ入れ込むことで、ボトル口を塞ぐことができる。
【0014】
また、栓20にフッ素部材を用いることで、栓20に液体の匂いや色が付着することを防止することができる。このため、栓20を洗浄して使い回しすることができる。また、栓20にゴム(弾性部材)を用いることで、その弾性力によって栓20と移送元容器100の口との間の気密性を確保することができる。また、移送元容器100の口と栓20との摩擦力を確保することで、栓20が抜けてしまうのを防止することができる。
【0015】
また、液体移送装置10は、一方が上流側のガス源13へと通じ、他方が下流側の移送元容器100へと通じるガス流路21を備えている。移送元容器100へは、ガス流路21が栓20を通過することとなる。ガス流路21を構成するため、液体移送装置10は、栓20に形成された貫通孔に挿入(圧入)されたパイプ22を備えている。パイプ22が通過する栓20が移送元容器100の口に差し込まれた状態では、パイプ22の一方端は移送元容器100の外にあり、他方端は移送元容器100の内にある。パイプ22は、液体による腐食防止される材質、例えばステンレスで構成されている。
【0016】
また、液体移送装置10は、ガス流路21において、ガスバルブ23、圧力計24、レギュレータ25、フィルタ26、および電磁バルブ27を備えている。このガス流路21には、上流側のガス源13から下流側のパイプ22まで順に、ガスバルブ23、圧力計24、レギュレータ25、フィルタ26、電磁バルブ27が設けられている。そして、パイプ22からガス源13までのガス流路21は、これらの他、チューブなどで構成されている。なお、圧力計24とレギュレータ25とは、一体となったものを用いてもよい。
【0017】
ガス源13であるガスボンベには、大気圧よりも高い14.7MPaのガスが充填されている。ガスバルブ23を開けることでガス源13からガス流路21にガスが供給される。また、圧力計24を設けることで、ガス源13内のガス残量(内圧)を把握(計測)することができる。また、レギュレータ25を設けることで、下流側へ安定した一定圧力(例えば0.02MPa)でガスを供給することができる。また、フィルタ26(種々のフィルタの組み合わせを含む。)を設けることで、オイル、塵埃、不純物などを除去することができる。また、電磁バルブ27を設けることで、その先の移送元容器100までのガス供給を制御することができる。なお、レギュレータ25として、例えば高圧側の減圧器25Aと低圧側の減圧器25Bとを組み合わせて構成することもできる(図5参照)。また、オイル、不純物などを無視できるのであれば、フィルタ26を設けなくともよい。
【0018】
また、液体移送装置10は、一方が上流側の移送元容器100へと通じ、他方が下流側の移送先容器200へと通じる液体流路31を備えている。移送元容器100からは、液体流路31が栓20を通過することとなる。液体流路31を構成するため、液体移送装置10は、栓20に形成された貫通孔に挿入(圧入)されたパイプ32を備えている。パイプ32が通過する栓20が移送元容器100の口に差し込まれた状態では、パイプ32の一方端は移送元容器100の内にあり、他方端は移送元容器100の外にある。パイプ32は、パイプ22と同様に、例えばステンレスで構成されている。パイプ32にステンレスを用いることで、パイプ32に液体の匂いや色が付着することを防止することができる。また、パイプ32を洗浄して使い回しすることができる。
【0019】
液体流路31は、チューブなどで構成されている。チューブにフッ素樹脂を用いることで、液体流路31に液体の匂いや色が付着することを防止することができる。また、チューブを洗浄して使い回しすることができる。
【0020】
液体流路31には、パイプ32の一方端と連通して接続される容器チューブ33が含まれている。このため、栓20で口が塞がれた状態では、容器チューブ33の一方端が移送元容器100の底部で開口し、他方端がパイプ32の一方端と接続されることとなる。液体移送装置10では、ガス源13からのガスで移送元容器100内を加圧する(内圧が上昇する)ことで、容器チューブ33の一方端(開口端)から液体流路31へ液体が押し出され、移送先容器100へ液体が移送(分配)される。
【0021】
また、液体移送装置10は、液体流路31の中途(上流側のパイプ32と下流側の移送先容器200との間)に設けられる電磁バルブ34を備えている。電磁バルブ34を設けることで、その先の移送先容器200までの液体供給を制御することができる。
【0022】
また、液体移送装置10は、液体流路31の下流側にストロー35を備えている。ストロー35を用いることで、移送先容器200の内部へ確実に液体を供給することができる。ストロー35は、液体による腐食防止する材質、例えばステンレスで構成されている。また、ストロー35を用いることで、チューブとは異なって形状を保持することができ、別の移送先容器200へも繰り返して液体を移送(注入)しやすくすることができる。
【0023】
また、液体移送装置10は、移送元容器100を収納するバケット55を備えている。バケット55は、座54を備えている。この座54に移送元容器100が鉛直方向に立てられた状態で載せられる。また、液体移送装置10は、移送元容器100の口に差し込まれた栓20の上側に載せてセットされる抑え部73を備えている。抑え部73は、鉛直方向に移動可能な可動部でもある。バケット55では、抑え部73によって栓20が抑えられて(抜け止めされて)移送元容器100が収容される。移送元容器100は、バケット55の座54と抑え部73との間で挟まれるように、バケット55に収容される。
【0024】
このため、バケット55に移送元容器100を収容できれば、形状や大きさが異なる移送元容器100に対応させることができる。すなわち、液体移送装置10では、形状や大きさが異なる移送元容器100に対応して液体を移送させることができる。このとき、移送元容器100が収容されたバケット55では移送元容器100の口に差し込まれた栓20が抑えられており、バケット55、移送元容器100および栓20を含んで計量することができる。
【0025】
そこで、液体移送装置10は、移送元容器100が収容されたバケット55の質量を計量するために、秤70を備えている。秤70として、例えばロードセルを用いることができ、質量を電気信号に変換して計測することができる。秤70の上にバケット55が組み付けて設けられるので、バケット55に収容された移送元容器100内の液体の質量変化を計測することができる。秤70の計測結果を基に電磁バルブ27、34の開閉を行うことで、移送元容器100から移送先容器200へ適切な量の液体を移送することができるようになる。
【0026】
このような液体移送装置10は、秤70にバケット55を介して移送元容器100を載せて、移送元容器100の質量の変化を秤70で計測する機能を有している。移送元容器100の質量を測りながら移送先容器200へ液体を移送することができるので、例えば、予め設定された質量の液体が移送されたときに停止させることで、移送元容器100から移送先容器200へ液体を分配(分注)することができる。
【0027】
また、液体移送装置10は、一方が上流側のガス源13へと通じ、他方が下流側の移送先容器200へと通じるガス流路41(第3流路)を備えている。また、液体移送装置10は、ガス流路41を構成する分岐管42、43を備えている。ガス流路41を構成するチューブは、一方端が分岐管42と接続され、他方端が分岐管43と接続されている。また、液体移送装置10は、ガス流路41の中途に設けられる電磁バルブ28を備えている。電磁バルブ28を設けることで、その先の移送先容器200までのガス供給を制御することができる。
【0028】
分岐管42、43は、例えば樹脂(フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂など)から成形されている。分岐管42は、ガス流路21(第1流路)の中途(フィルタ26と電磁バルブ27との間)に設けられている。また、分岐管43は、液体流路31(第2流路)の中途(電磁バルブ34より下流側であって移送先容器200の手前)に設けられている。分岐管43にフッ素樹脂を用いることで、分岐管43に液体の匂いや色が付着することを防止することができる。また、分岐管43を洗浄して使い回しすることができる。
【0029】
液体移送装置10は、ガス流路41を介して、ガス源13から移送先容器200へガスを供給する機能を有している。ガス源13のガスとして、大気中の空気よりも重い置換ガス(例えばアルゴンガス)を用いることで、移送先容器200内の空気をその口から追い出し、置換ガスで充満させることができる。
【0030】
このため、置換ガスが入ったスプレー缶のノズルにストローを取り付け、小瓶内に置換ガスを注入する手動式のやり方より、液体移送装置10のガス供給機能(自動制御)によれば、容易に、かつ時間を短縮してガス置換を行うことができる。また、移送元容器100から液体が移送された移送先容器200(すなわち、液体の入った移送先容器200)に対して、ガス源13のガスとして不活性ガス(例えばアルゴンガス)を入れることで、液体の酸化を抑制して移送先容器200に封する(保管する)ことができる。
【0031】
次に、液体移送装置10の具体的構成について図面を参照して説明する。図2は液体移送装置10を模式的に示す斜視図である。図3は液体移送装置10を模式的に示す正面図であり、フロントカバー53を開いた状態を示している。図4は、液体移送装置10の前筐体51の内部を正面側に向かって視た説明図である。図5は、液体移送装置10の後筐体52の内部を背面側に向かって視た説明図である。図6は使用状態の液体移送装置10を模式的に示す正面図である。図7は液体移送装置10が備えるバケット55を模式的に示す正面図である。図8はバケット55を模式的に示す右側面図である。図9はバケット55を模式的に示す背面図である。図10はバケット55を模式的に示す上面図である。図11はバケット55が備えるクランプ部71の解除状態の説明図である。図12はクランプ部71のロック状態の説明図である。なお、図7図10では、バケット55に移送元容器100が収容された状態が示されている。
【0032】
液体移送装置10は、筐体50を備えている。筐体50は、脚45を有し、例えば卓上でも設置可能なボックス型で構成されている。この筐体50は、前筐体51と、後筐体52とを備えている。前筐体51と後筐体52とは、ヒンジ46(図5参照)によって開閉可能に取り付けられている。
【0033】
図2に示すように、前筐体51と後筐体52とが接して、筐体50が閉じた状態では、前筐体51および後筐体52で挟まれる内部にある部材を保護することができる。他方、前筐体51と後筐体52とが離れて、筐体50が開いた状態(図4図5参照)では、例えば、内部に備え付けられたガス源13(ガスボンベ)を取り外すなどの処理を行うことができる。このような液体移送装置10によれば、ガス源13の交換処理などメンテナンスを容易に行うことができる。
【0034】
また、液体移送装置10は、覗き窓44を備えている。覗き窓44は、例えば筐体50(図2では後筐体52)の上部に設けられる。覗き窓44としては、例えばアクリル板を用いることができる。覗き窓44を設けることで、筐体50を開けなくとも、例えば圧力計24の表示(ガス残量)を読み取ることができる。ガス源13のガス残量が少なくなった場合には、適切な時期にガス源13の交換をすることができる。
【0035】
また、液体移送装置10は、フロントカバー53を備えている。フロントカバー53は、前筐体51の上側にヒンジ47によって開閉可能に取り付けられている。フロントカバー53が閉じた状態では、前筐体51の正面側に配置される部材(図3に示す電磁バルブ34、分岐管43など)を保護することができる。
【0036】
他方、フロントカバー53が開いた状態(図3)では、例えば、液体流路31を構成するストロー35、チューブなどを取り外すことができる。これにより、液体が付着したストロー35、チューブなどの清掃、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0037】
また、液体移送装置10は、バケット55を備えている。バケット55は、移送元容器100を収容する機能を有している。バケット55は、移送元容器100の大きさがある程度異なったとしても収容することができる容量(空間)を有している。バケット55は、前筐体51の正面側から窪んだ領域にセットされる。
【0038】
バケット55は、座54を有している。バケット55では、座54に移送元容器100が載せられて、収容される。また、移送元容器100の口に差し込まれた栓20は、その上側からバケット55にセットされた抑え部73によって拘束される。移送元容器100は、座54と抑え部73との間に挟まれてバケット55に収容される。なお、移送元容器100がバケット55に保持されるようになるため、バケット55は、いわゆるバケットシートの機能を有する。
【0039】
移送元容器100をバケット55が収容できれば、形状や大きさが異なる移送元容器100にも対応して、バケット55の座54と抑え部73との間で移送元容器100を保持することができる。すなわち、液体移送装置10では、形状や大きさが異なる移送元容器100に対応して液体を移送させることができる。このとき、移送元容器100が収容されたバケット55では移送元容器100の口に差し込まれた栓20が抑えられており、バケット55、移送元容器100および栓20を含んで計量することができる。液体移送装置10では、それらが秤70に載せられ、移送される液体の質量を把握することができる。
【0040】
バケット55は、例えばステンレス板を加工して正面側が開口するよう形成された筐体(フレーム)として構成される。この板加工によって座54もバケット55と一体に形成することができる。また、バケット55の座54をカップ状(図2では、升状)とすることで受け部を構成し、移送元容器100の周辺で液体がこぼれた場合であっても汚れが拡がるのを防止することができる。また、座54をカップ状とすることで、座54から外れ落ちることを防止することができる。
【0041】
また、液体移送装置10は、座56を備えている。座56には移送先容器200を載せることができる。座56も座54と同様にカップ状に構成されている。移送先容器200の周辺で液体がこぼれた場合であっても汚れが拡がるのを防止することができる。この座56は、前筐体51の正面側から窪んだ領域(移送先容器200が収容される空間)に組み付けられる。なお、移送先容器200の口には、塵埃などが入らぬよう液体移送の間だけ設けられるストロー35を通す孔が形成された保護キャップ201が被されてもよい(図6参照)。
【0042】
また、液体移送装置10は、操作パネル60を備えている。操作パネル60は、表示部61と、操作ボタン62~68を備えている。表示部61は、例えば液晶ディスプレイから構成され、移送させる液体の量を表示させることができる。操作ボタン62は、例えば処理開始のスタート/キャンセルを行うためのものである。また、操作ボタン63、64は、例えば液体量設定の増減ボタンである。また、操作ボタン65は、例えば「液体定量移送」を実行させるボタンである。また、操作ボタン66は、例えば「ガス注入液体定量移送」モードを実行するボタンである。また、操作ボタン67は、例えば「液体移送」モードを実行させるボタンである。また、操作ボタン68は、例えば「ガス注入」モードを実行させるボタンである。
【0043】
また、液体移送装置10は、秤70を備えている。秤70として、例えばロードセルを用いることができる。秤70にはバケット55が載せられる。秤70は、筐体50(前筐体51)の下部であってバケット55下に設けられる。この秤70によれば、バケット55の座54に載せられた移送元容器100の質量の変化を計測することができる。なお、秤70、表示パネル61、電磁バルブ27、28、34などを制御して処理を実行する制御基板59は、移送先容器200がセットされる後ろ側の筐体50(前筐体51)の内部に組み付けられる(図4参照)。
【0044】
また、液体移送装置10は、秤70での計測を基にして、ガス流路21に流れるガスを制御する機能を有している。具体的には、ガスが流れるようガス流路21を開状態とする前に、移送元容器100の質量を計測する。また、ガス流路21を開状態とするとガスによって移送元容器100から移送先容器200へ液体が移送(圧送)されるので、その際に移送元容器100の質量を計測する。そして、移送元容器100の質量が所定量変化したら、ガスが流れないようガス流路21を閉状態とする。なお、操作パネル60の表示部61には、質量を表示させたり、質量を変換して液量を表示させたりすることができる。
【0045】
また、液体移送装置10は、抑え部73を備えている。抑え部73として、例えばプレートが用いられる。抑え部73は、栓20の上側に載せられてセットされる。このため、栓20は、抑え部73の重みで拘束される。すなわち、抑え部73により栓20の動きが抑制される。液体移送装置10はガス圧送式で液体を移送するため移送元容器100の口が栓20で塞がれ、移送元容器100の内圧がガス供給によって上昇する。この場合であっても抑え部73によって栓20が抜けることを防止することができる。
【0046】
ところで、液体移送装置10は、移送元容器100が収容されたバケット55の質量を計測し、移送元容器100から出て行った液体の質量によって制御をかけるものである。このため、外力で栓20を上側から押さえ付ける構成では、秤70の計測値に影響が生じてしまう。つまり、抑え部73は、バケット55と一体として取り扱われることが好ましい。抑え部73は、バケット55の座54との間で移送元容器100を挟むことで、バケット55と一体として取り扱われる。
【0047】
また、抑え部73は、図10図11に示すように、水平方向(第1方向)に欠けて鉛直方向(第1方向と直交する第2方向)に抜ける開放部72を有している。栓20を通過(貫通)して上方へ延在するガス流路21(同図では、パイプ22が対応する。)および液体流路31(同図では、パイプ32が対応する。)がある場合には、開放部72でガス流路21および液体流路31を回避して栓20の上側に抑え部73を載せてセットすることができる。なお、開放部72は、バケット55にセットされた状態で正面側に向かって開放されている。
【0048】
また、液体移送装置10は、ホルダ80を備えている(図7図10図11参照)。ホルダ80として、例えばボビン状のもの(筒部の両端に円形のフランジ板81、82が付いたもの)を用いることができる。ホルダ80は、ホルダ80には、栓20と同様に、パイプ22、32が貫通している。栓20とホルダ80とは接続部材83で一体化されている。液体移送装置10において使用される状態(例えば液体が移送される状態)では、栓20をこの上側から抑え部73で押さえ付けることになるが、栓20と抑え部73との間にホルダ80を挟んで押さえ付けることもできる(図10)。また、例えば使用前の準備の状態では、抑え部73の開放部72にホルダ80を固定する(ホルダ80の筒部を開放部にはめ込む)ことで、例えば、バケット55に移送元容器100を収容させるなどの準備を行い易くすることもできる(図11)。なお、抑え部73の開放部72にホルダ80を固定することで、抑え部73と栓20とが一体化されるので、移送元容器100の口に差し込まれた栓20を安定させた状態で液体を移送するなど液体移送装置10を動作させることもできる。
【0049】
また、抑え部73は、バケット55において鉛直方向に移動可動に構成されている(図7図8図9)。この構成のため、液体移送装置10は、固定シャフト74と、スライダ75と、ガイド76と、接続部材77と、を備えている。また、抑え部73は、水平方向に拡がる水平部73aと、鉛直方向に拡がる鉛直部73bとを有している。水平部73aには、正面側から背面側に向かって水平方向に欠けて鉛直方向に抜けるように、開放部72が形成されている。
【0050】
固定シャフト74は、鉛直方向と平行に延在してバケット55の背面側に設けられる。固定シャフト74は、バケット55の背面に設けられた上側支持部78と、下側支持部79との間に設けられる。固定シャフト74は、スライダ75を貫通している。また、スライダ75は、バケット55の背面に接し、固定シャフト74を伝って鉛直方向(上下方向)に移動することができる。スライダ75は、摺動性のある、例えばフッ素樹脂やエンジニアプラスチックを用いて構成することができる。また、ガイド76は、バケット55の正面側と背面側とを貫通し、鉛直方向に延在するスリットとしてバケット55に設けられている。
【0051】
また、接続部材77は、ガイド76を通して、バスケット55の正面側にある抑え部73の鉛直部73bと、バスケット55の背面側にあるスライダ75とを接続している。これにより、抑え部73の鉛直部73bおよびスライダ75はバスケット55に接することとなる。接続部材77として、例えばネジを用いることができる。接続部材76の締め付け具合が調整されることで、例えばバケット55に対して抑え部73を固定したり、移動可能に緩めたりすることができる。このように、抑え部73は可動部としてバケット55において、手動で鉛直方向に移動可能に構成されている。
【0052】
また、ガイド76は対をなして、鉛直方向に平行してバケット55に形成されている。それぞれのガイド76には接続部材77が通され、それぞれの接続部材77で抑え部73とスライダ75とを接続している。これにより、抑え部73が回り止めされるため、水平部73aが傾くことを防止し、鉛直方向に移動することができる。
【0053】
また、正面視において、一対のガイド76、76の間に、抑え部73の開放部72が位置するよう構成されている。すなわち、正面視において、移送元容器100の口を塞ぐ栓20が一対のガイド76、76の間に位置するようバケット55に収容される。このため、抑え部73(可動部)は、栓20に対して傾くのを防止され、鉛直方向下向きに抑えることができる。また、正面視において、栓20と接続部材77とが重ならず、接続部材77の調整を容易に行うことができる。
【0054】
また、液体移送装置10は、クランプ部71を備えている。クランプ部71は、水平方向(バケット55の正面側から背面側への方向)に移動可能なシャフト90を有している(図11図12)。シャフト90として、例えばレバー92を有するトグルクランプ91のものを用いることができる。トグルクランプ91のレバー92を動かすことによってシャフト90が水平方向に移動する。例えば、シャフト90の先端には、接触したものを抑えるために、ゴムが付けられている。
【0055】
トグルクランプ91は、抑え部73の水平部73aに設けられる。また、クランプ部71は、バケット55に収容された移送元容器100の口に差し込まれた栓20の上側と抑え部73を介して接するものである。すなわち、本実施形態では、クランプ部71は抑え部73(プレート)を含んで構成されている。また、シャフト90の先に位置する抑え部73の鉛直部73bには、貫通孔93が形成されている。このため、シャフト90が水平方向に進出し、貫通孔93を通過することで、シャフト90の先端がバケット55に突き当たった状態となる。
【0056】
このように構成されるクランプ部71は、進出させたシャフト90をバケット55に接させ、栓20を拘束する。液体移送装置10はガス圧送式で液体を移送するため移送元容器100の口が栓20で塞がれ、移送元容器100の内圧がガス供給によって上昇する。この場合であってもシャフト90を進出させ、シャフト90をバケット55に接触させることで、抑え部73の動きを拘束することができる。この抑え部73によって、移送元容器100の口に差し込まれた栓20を拘束させることができる。他方、シャフト90を退出させてバケット55から離すことで、栓20を解放することができる。すなわち、図10図12では、クランプ部71がロックされた状態であるが、レバー92を手前に引いた図11に示す状態となると、ロックが解除される。
【0057】
クランプ部71を用いることで、形状や大きさが異なる移送元容器100にも対応して、バケット55の座54と抑え部73との間で移送元容器100を保持することができる。すなわち、液体移送装置10によれば、形状や大きさが異なる移送元容器100に対応して液体を移送させることができる。このとき、移送元容器100が収容されたバケット55では移送元容器100の口に差し込まれた栓20が抑えられており、バケット55、移送元容器100および栓20を含んで計量することができる。液体移送装置10では、それらが秤70に載せられ、移送される液体の質量を把握することができる。
【0058】
次に、液体移送装置10の動作方法を含め、液体入り容器の製造方法について図面を参照して説明する。図13は液体移送装置10の制御系構成図である。図14は液体移送装置10を用いた液体入り容器の製造工程のフロー図である。なお、図1には、液体移送装置10の流路系の構成が示されている。
【0059】
液体移送装置10は、制御基板59を備えている。制御基板59は、液体移送装置10が種々の機能を処理できるよう、プログラムを実行して種々の機器の動きを制御するものである。制御基板59は、プログラムおよびデータを記憶する各種メモリと、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを備えている。各種機器としての電磁バルブ27、28、34、表示部61、操作ボタン62~68、ブザー69、秤70が、制御基板59に電気的に接続されている。プログラムとしては、例えば「ガス注入液体定量移送」モードがある。このモードは、開始時に移送先容器200へガスを注入し、設定された量の液体を移送先容器200へ移送するものである。
【0060】
液体移送装置10の「ガス注入液体定量移送」モードを用いて、移送元容器100(第1容器)に入った液体を移送先容器200(第2容器)へ移送して、移送先容器200に液体を保管する工程の一例を説明する。
【0061】
まず、液体移送装置10の準備を行う(工程S10)。準備にあたっては、ガス源13(例えばアルゴンガス入りガスボンベ)の設置はもちろん、ガス流路21(第1流路)、液体流路31(第2流路)、ガス流路41(第3流路)を構成するためチューブの接続などを行う。その際、液体移送装置10への電源供給が行われる。ガス源13のガスバルブ23を開けることで、ガス流路21、41へガス供給できる状態となる。なお、電磁バルブ27、28、34は平常状態において閉じられている。
【0062】
続いて、液体移送装置10への移送元容器100および移送先容器200のセットを行う(工程S20)。
【0063】
液体(例えばワイン)が入っている移送元容器100(例えばワインボトル)のセットでは、まず、移送元容器100の口に栓20を差し込む。このとき、栓20を貫通するパイプ32には容器チューブ33が取り付けられているので、容器チューブ33を移送元容器100の口から差し入れた後、栓20を差し込む。
【0064】
次いで、バケット55の座54に移送元容器100を載せ、抑え部73(可動部)を鉛直方向に移動させて栓20の上側に抑え部73をセットする。このとき、栓20からはガス流路21(パイプ22およびチューブ)、液体流路31(パイプ32およびチューブ)が延在しているので、開放部72でこれらを回避する。これにより、チューブに損傷を与えず、抑え部73は自重によって栓20に対して均等に抑えることができる。
【0065】
次いで、レバー92によってクランプ部71にロックをかける。これにより、抑え部73の動きを拘束することができる。このように、抑え部73やクランプ部71を用いることで、移送元容器100の口から栓20が抜けてしまうことを防止することができる。すなわち、バケット55に移送元容器100を収容できれば、形状や大きさが異なる移送元容器100に対応して栓20の抜け止めを行うことができる。
【0066】
また、液体が入っていない移送先容器200のセットでは、座56に移送先容器200(例えば小瓶)を載せ、移送先容器200の口に保護キャップ201を被せてセットする。このとき、保護キャップ201を予めストロー35に通しておき、ストロー35を移送先容器200に差し入れてから保護キャップ201を被せることができる。保護キャップ201を用いることで、移送先容器200に塵埃が入るのを防止する。
【0067】
続いて、液体移送装置10の「ガス注入液体定量移送」モードを選択するため、操作ボタン66を押下する(工程S30)。このモードでは、まず、移送先容器100から移送先容器200へ移送する液体の量、すなわち移送先容器200で保管する液体の量を操作ボタン63、64(増減ボタン)を押下して設定する(工程S40)。設定が終了したのち、操作ボタン62を押下して、液体移送を開始する(工程S50)。このとき、ブザー69によりユーザに開始されたことを報知させることができる。
【0068】
次いで、ガス流路41を介して移送先容器200内へガスを注入して、移送先容器200をガス洗浄する(工程S60)。具体的には、電磁バルブ28が開かれ、所定時間(例えば1~2秒程度)経過後、電磁バルブ28が閉じられる。ガスとして大気よりも重い不活性ガス(例えばアルゴンガス)を用いることで、液体の入っていない移送先容器200内から空気を押し出しつつ、移送先容器200内全体に不活性ガスを充填させ、容器内面に不活性ガスを接触させることができる。
【0069】
次いで、液体流路21を介して移送元容器100内へガスを注入し、液体流路31を介して移送元容器100に入っている液体を移送先容器200へ移送する(工程S70)。具体的には、秤70のゼロアジャストが行われた後、電磁バルブ27、34が開かれ、設定された量の液体が移送された後、電磁バルブ27、34が閉じられる。バケット55の質量が秤70によって計測されるが、バケット55に収容されている移送元容器100からガスによって液体が送り出されるため、液体の質量の変化を計測することができる。秤70で計量し、設定された量に達したところで、電磁バルブ27を閉じて移送元容器100へのガス供給が停止されるが、移送元容器100内に残ったガスの圧力により、液体が移送元容器100から移送先容器200へ流れてしまうおそれがある。そこで、電磁バルブ27の他に、電磁バルブ34も閉じることで、計量の値を正確なものとすることができる。すなわち、液体入り容器の内容量をより正確なものとすることができる。
【0070】
次いで、ガス流路41を介して移送先容器200内へガスを注入して、移送先容器200をガス充填する(工程S80)。具体的には、電磁バルブ28が開かれ、所定時間(例えば0.1~0.5秒程度)経過後、電磁バルブ28が閉じられる。ガスとして大気よりも重い不活性ガス(例えばアルゴンガス)を用いることで、移送先容器200内に入った液体を覆うように、移送先容器200内に不活性ガスを充填させることができる。不活性ガスで液体を覆うことで、液体が酸化してしまうのを防止することができる。また、液体流路31の中途である分岐管43にガス流路41が通じているので、分岐管43よりも下流のストロー35内に残存している液体をガス流路41からのガスによって押し出すことができる。
【0071】
次いで、移送先容器200に栓をして、液体入りの容器を完成させる(工程S90)。具体的には、移送先容器200から保護キャップ201を外し、ストロー35を抜き出した後、移送先容器200に栓(例えばコルク、スクリューキャップ)をする。これにより、移送元容器100から移送された液体を移送先容器200(小瓶)で保管することができる。
【0072】
次いで、継続して別の移送先容器200で液体を保存するか判断する(工程S100)。具体的には、移送元容器100に液体が残存しているような場合には、別の移送先容器200で液体を保存するため、移送量の設定(工程S40)から繰り返して行うことができる。これにより、移送元容器100から複数の移送先容器200へ液体を分配することができる。他方、移送元容器100に液体が残存していない場合には、液体移送装置10を用いた処理を終了する。
【0073】
その後、新たな移送元容器100から複数の移送先容器200へ液体を移送、分配するに際し、前の移送元容器100と形状、大きさが異なっていたとしても、液体移送装置10に移送元容器100をセットすることができる。液体移送装置10を用いることで、例えば、ワインの試飲会やスクールなどにおいて開けた種々のワインボトル(移送元容器100)から、それぞれワインを分配して小瓶(移送先容器200)へと小分けにして保管することができ、複数のユーザーに種々のワインを提供することができる。
【0074】
また、液体移送装置10によれば、不活性ガスの入ったスプレー缶を用いて手動で行う場合よりも、時間を短縮して容易に不活性ガスで充填された液体入り容器(例えばボトル飲料など)を製造することができる。また、保管可能な移送先容器(小瓶)に不活性ガスをより正確に充填させることができるので、液体の酸化を防止し、風味が損なわれることを防止することができる。
【0075】
(第2実施形態)
前記第1実施形態では、移送先容器に不活性ガスを注入してから液体を移送させる場合について説明した。本実施形態では、移送先容器に不活性ガスを充填させずに、移送された液体をその場で処理させる場合について図面を参照し、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。図15は、本発明の実施形態に係る液体移送装置10Aの流路系の構成図である。
【0076】
図15に示す液体移送装置10Aは、図1に示す液体移送装置10と比較してガス流路41を構成する要素がない点のみ相違する。すなわち、液体移送装置10Aでは、移送先容器200に不活性ガスを充填させる構成になっていない。例えば、液体としてワインなどの飲料を、グラス(移送先容器200)へ移送したその場で飲用するのに用いる場合であれば、装置構成をシンプルにすることができる。
【0077】
次に、液体移送装置10Aの動作方法を含め、液体入り容器の製造方法について図面を参照して説明する。図16は、液体移送装置10Aを用いた液体入り容器200の製造工程のフロー図である。
【0078】
液体移送装置10Aの「液体定量移送」モードを用いて、移送元容器100(第1容器)に入った液体を移送先容器200(第2容器)へ移送して、移送先容器200に液体を保管する工程の一例を説明する。
【0079】
まず、液体移送装置10Aの準備を行う(工程S210)。準備にあたっては、ガス源13(例えばアルゴンガス入りガスボンベ)の設置はもちろん、ガス流路21(第1流路)、液体流路31(第2流路)を構成するためチューブの接続などを行う。その際、液体移送装置10Aへの電源供給が行われる。ガス源13のガスバルブ23を開けることで、ガス流路21へガス供給できる状態となる。なお、電磁バルブ27、34は平常状態において閉じられている。
【0080】
続いて、液体移送装置10Aへの移送元容器100および移送先容器200のセットを行う(工程S220)。この工程は、移送元容器100に関しては、液体移送装置10の動作の際に説明した工程S20と同様であるが、移送先容器200として例えばワイングラスを用いることができる。
【0081】
続いて、液体移送装置10Aの「液体定量移送」モードを選択するため、操作ボタン65を押下する(工程S230)。このモードでは、まず、移送先容器100から移送先容器200へ移送する液体の量を操作ボタン63、64(増減ボタン)を押下して設定する(工程S240)。設定が終了したのち、操作ボタン62を押下して、液体移送を開始する(工程S250)。このとき、ブザー69によりユーザに開始されたことを報知させることができる。
【0082】
次いで、ガス流路21を介して移送元容器100内へガスを注入し、液体流路31を介して移送元容器100に入っている液体を移送先容器200へ移送する(工程S260)。具体的には、秤70のゼロアジャストが行われた後、電磁バルブ27、34が開かれ、設定された量の液体が移送された後、電磁バルブ27、34が閉じられる。これにより、液体入りの容器が完成される。
【0083】
次いで、継続して別の移送先容器200へ液体を移送するか判断する(工程S270)。具体的には、移送元容器100に液体が残存しているような場合には、別の移送先容器200へ液体を移送するため、移送量の設定(工程S240)から繰り返して行うことができる。これにより、移送元容器100から複数の移送先容器200へ液体を分配することができる。他方、移送元容器100に液体が残存していない場合には、液体移送装置10Aを用いた処理を終了する。
【0084】
その後、新たな移送元容器100から複数の移送先容器200へ液体を移送、分配するに際し、前の移送元容器100と形状、大きさが異なっていたとしても、液体移送装置10Aに移送元容器100をセットすることができる。液体移送装置10Aを用いることで、例えば、ワインの試飲会やスクールなどにおいて開けた種々のワインボトル(移送元容器100)から、それぞれワインを分配してワイングラス(移送先容器200)へと小分けにして複数のユーザーに種々のワインを提供することができる。
【0085】
(第3実施形態)
前記第1実施形態では、移送元容器100の口に差し込まれた栓20を抑え、移送元容器100を収容するバケット55において、バケット55に設けられる抑え部73の自重やクランプ部71のロックで栓20を抑える場合について説明した。本実施形態では、抑え部73A自身をバケット55Aに固定させる構成とし、この抑え部73Aによって栓20を抑える場合について図面を参照し、前記第1実施形態と相違する点を中心に説明する。図17は、バケット55Aを模式的に示す要部斜視図である。図18は、バケット55Aを模式的に示す上面図である。なお、図17では、バケット55Aに移送元容器100が収容されて栓20が抑えられてる状態であるが、説明を容易にするために移送元容器100などの要素を省略している。
【0086】
図17に示すバケット55Aは、バケット55(図11)と比較してトグルクランプ91を用いておらず、バケット55Aに抑え部73Aが固定される点で相違する。液体移送装置10Bは、バケット55Aと、抑え部73Aとを備えている。バケット55Aは、バケット55と同様に移送元容器100を収容することができる。抑え部73Aとして、例えばプレートが用いられる。バケット55Aは、溝94、95(凹部)を備えている。他方、抑え部73Aは、突部96、97を備えている。抑え部73Aは、突部96、97がそれぞれ溝94、95に差し込まれて、バケット55Aと一体に構成される。
【0087】
バケット55Aの溝94は、バケット55Aの背面部84に鉛直方向に2列(1列、または3列以降の複数列であってもよい。)で平行に並んで複数設けられている。また、バケット55Aの溝95は、バケット55Aの右側面部85、左側面部86のそれぞれに鉛直方向に1列に並んで複数設けられている。この溝95は、バケット55Aの正面側から切り欠かれたように開放されている。また、抑え部73Aの突部96は、バケット55Aに形成されている溝94に合わせて背面側の端部に設けられている。また、抑え部73Aの突部97は、バケット55Aに形成されている溝95に合わせて右側面側、左側面側のそれぞれの端部に設けられている。
【0088】
抑え部73Aは、移送元容器100の口に差し込まれた栓20の上側にセットされるよう、バケット55Aの鉛直方向に並ぶ適切な溝94、95の高さに合わせられる。そして、抑え部73Aは、バケット55Aの正面側から背面側に向かって突部96、97が溝94、95に差し込まれて、バケット55に組み付けられる。
【0089】
ここで、液体移送装置10Bは、スペーサ98を備えてもよい。バケット55Aの溝94、95は、それぞれ鉛直方向に所定間隔を開けて複数設けられている。このため、移送元容器100の口に差し込まれた栓20の高さ(座54からの高さ)によっては、栓20と抑え部73Aとの間に間隙101が生じてしまう場合がある。このような場合、スペーサ98を間隙101に差し込むことで、栓20が動いてしまうことを抑制することができる。また、スペーサ98は、くさび状に形成される(背面側に向かってテーパ状に形成される)ことで、間隙101の鉛直方向寸法に合わせて調整して、間隙101に差し込むことができる。なお、第1実施形態の抑え部73は、鉛直方向に移動可能な構成であるため、スペーサ98のようなものがなくとも、高さ方向の微調整が容易である。
【0090】
また、抑え部73Aは、水平方向に欠けて鉛直方向に抜ける開放部72Aを有している。栓20を通過して上方へ延在するガス流路21(パイプ22が対応する。)および液体流路31(パイプ32が対応する。)がある場合には、開放部72Aでガス流路21および液体流路31を回避して栓20の上側に抑え部73Aをセットすることができる。開放部72Aがバケット55Aにセットされた状態で背面側に向かって開放されているので、パイプ22、32に干渉することなく抑え部73Aをバケット55Aに組み付けることができる。
【0091】
また、スペーサ98は、水平方向に欠けて鉛直方向に抜ける開放部99を有している。栓20を通過して上方へ延在するガス流路21(パイプ22が対応する。)および液体流路31(パイプ32が対応する。)がある場合には、開放部99でガス流路21および液体流路31を回避して栓20と抑え部73Aとの間に差し込むことができる。開放部99がバケット55Aにセットされた状態で背面側に向かって開放されているので、パイプ22、32に干渉することなくスペーサ98を隙間101に差し込むことができる。
【0092】
このようにして、抑え部73Aは、栓20の上側にセットされる。移送元容器100の口に差し込まれた栓20は、その上側からバケット55Aにセットされた抑え部73Aによって拘束される。液体移送装置10Bはガス圧送式で液体を移送するため移送元容器100の口が栓20で塞がれ、移送元容器100の内圧がガス供給によって上昇するが、抑え部73Aによって栓20が抜けることを防止することができる。また、移送元容器100をバケット55Aが収容できれば、形状や大きさが異なる移送元容器100にも対応して、バケット55Aの座54と抑え部73Aとの間で移送元容器100を保持することができる。すなわち、液体移送装置10Bでは、形状や大きさが異なる移送元容器100に対応して液体を移送させることができる。
【0093】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0094】
前記実施形態では、液体が入った移送元容器として、ワインが入ったワインボトル(容量750ml)を用いた場合について説明した。これに限らず、ワインが入ったマグナムボトル(容量1500ml)、日本酒が入った一升瓶(容量1800ml、高さ400mm程度、JIS S2350:2014 「容量表示付きガラス製びん(壜)」の「JS-52 1.8リットル丸正びん」を参照)や4合瓶(容量720ml、高さ295mm程度)を用いる場合であってもよい。液体としてはワイン、日本酒、ウイスキー、焼酎といったアルコール飲料の他に、ジュースといったノンアルコール飲料、醤油やみりんといった調味料を用いる場合であってもよい。また、移送元容器としてはワインボトルや一升瓶といったガラス瓶に限らず、例えばPET(ポリエチレンテレフタラート)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)などのプラスチックボトルを用いる場合であってもよい。なお、液体を保管可能な移送先容器には、ガラス瓶、プラスチックボトルの他、缶ボトル、パウチ(小袋充填包装)、パックなどを用いる場合であってもよい。本発明の液体移送装置を用いることで、移送された液体を保管可能な液体入り容器(移送先容器)を製造することができる。
【0095】
前記実施形態では、ガスとして、アルゴンガス(不活性ガス)を用いた場合について説明した。これに限らず、不活性ガスとして、アルゴンガスの他、窒素ガス、ヘリウムガス、これらを配合した混合ガスなどを用いる場合であってもよい。特に、酸素を含まないガスを用いることで、液体(例えばワイン、日本酒)の酸化を防止することができる。なお、酸素や炭酸ガスを排除するものではなく、これらも適用することができる。
【0096】
前記実施形態では、一つの移送元容器からの液体を一つの移送先容器に移送し、移送先容器を取り替えて、順次液体を分配することができる構成について説明した。これに限らず、一つの移送元容器から二つといった複数の移送先容器へ同時に液体を分配することができる構成であってもよい。
【0097】
前記実施形態では、可動部としての抑え部を手動で鉛直方向に移動させることができる場合について説明した。これに限らず、抑え部(可動部)を自動で移動制御できるように構成してもよい。移動機構として例えばボールネジを用いることができる。この場合、前記実施形態で示した固定シャフトに対してネジ軸、スライダに対してナットを適用し、ネジ軸をモータ制御すればよい。
【0098】
前記実施形態では、栓を抑えるクランプ部として、水平方向に移動可能なシャフトを有する場合について説明した。これに限らず、抑え部(可動部)に上側から力が加わるように構成してもよい。例えば、シャフトを用いず、バネに前記実施形態で示した固定シャフトを通してバネの一端を上側支持部、バネの他端をスライダに取り付ける。スライダには抑え部が接続されている。これによれば、栓の上側に抑え部をセットした際に、抑え部へはバネによって上側から力が加えられることとなる。このように栓を抑えるクランプ部を構成することもできる。
【0099】
前記実施形態では、バケットをステンレス板を加工して筐体(フレーム)として構成する場合について説明した。これに限らず、バケットを樹脂成形して移送元容器を収容する形に構成してもよい。
【符号の説明】
【0100】
10:液体移送装置
13:ガス源
20:栓
21:ガス流路(第1流路)
31:液体流路(第2流路)
55:バケット
100:移送元容器(第1容器)
200:移送先容器(第2容器)
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