(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022124998
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】ブレーキ制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/175 20060101AFI20220819BHJP
【FI】
B60T8/175
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182162
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0020325
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 蘇 ラ
(72)【発明者】
【氏名】李 浩 旭
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB02
3D246GC16
3D246HA08A
3D246HA13A
3D246HA64A
3D246HA72B
3D246HA81A
3D246HA95A
3D246JB03
3D246JB32
3D246JB33
(57)【要約】
【課題】車両旋回時に内側ホイールの制動量を調節してスリップを防止し、外側ホイールの駆動力を確保可能にするブレーキ制御システム及び制御方法を提供する。
【解決手段】本発明によるブレーキ制御方法は、機能活性化要請を受信する段階と、機能活性化要請に応答して、車両の旋回内側ホイールのブレーキ制御のための実行条件が満たされるか否かを判断する段階と、実行条件が満たされた場合、あらかじめ設定された因子に基づいて車両旋回時に内側ホイールのブレーキ圧力制御量を判断して調節するブレーキ圧力制御段階と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能活性化要請を受信する段階と、
前記機能活性化要請に応答して、車両の旋回内側ホイールのブレーキ制御のための実行条件が満たされるか否かを判断する段階と、
前記実行条件が満たされた場合、あらかじめ設定された因子に基づいて、車両旋回時に内側ホイールのブレーキ圧力制御量を判断して調節するブレーキ圧力制御段階と、
を含むことを特徴とするブレーキ制御方法。
【請求項2】
前記実行条件は、
前記車両が旋回中であるか否かを決定するように構成された旋回条件と、前記車両が加速中であるか否かを判断するように構成された加速条件と、前記旋回内側ホイール及び外側ホイール間のホイール速の差を判断するように構成されたスリップ条件と、が全て充足された場合に満たされたと判断されることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御方法。
【請求項3】
前記車両の操向角があらかじめ設定された基準操向角を超えており、前記車両の横加速度があらかじめ設定された基準横加速度を超えており、前記車両のヨーレートがあらかじめ設定された基準ヨーレートを超えている場合、前記旋回条件が満たされたと判断されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御方法。
【請求項4】
前記車両の前輪ホイール速があらかじめ設定された基準前輪ホイール速を超えており、前記車両の駆動トルクがあらかじめ設定された基準駆動トルクを超えており、前記車両の走行段があらかじめ設定された基準段である場合、前記加速条件が満たされたと判断されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御方法。
【請求項5】
前記スリップ条件は、前記旋回内側ホイールと外側ホイール間のスリップ差があらかじめ設定された基準スリップの差を超えた場合に達成されることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御方法。
【請求項6】
旋回時に内側ホイールであるか否かは、前記車両のヨーレートに基づいて決定されることを特徴とする請求項5に記載のブレーキ制御方法。
【請求項7】
前記ブレーキ圧力制御段階では、
前記車両旋回時に内側ホイールの目標スリップ及び目標ホイール速に基づいて目標制動量が算出されることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御方法。
【請求項8】
前記ブレーキ圧力制御段階は、
前記車両のタイヤ特性に基づいて前記目標スリップを決定する段階を含むことを特徴とする請求項7に記載のブレーキ制御方法。
【請求項9】
前記目標スリップに基づいて前記内側ホイールの目標ホイール速が算出される段階をさらに含むことを特徴とする請求項8に記載のブレーキ制御方法。
【請求項10】
前記算出された目標ホイール速及び現在ホイール速に基づいて前記車両の目標制動トルクを演算する段階をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載のブレーキ制御方法。
【請求項11】
前記目標制動トルクに基づいてブレーキの目標制動量が決定される段階をさらに含むことを特徴とする請求項10に記載のブレーキ制御方法。
【請求項12】
前記目標制動量に基づいて内側ホイールの油圧制動量が調節され、前記油圧制動量の調節は、車両の電子式安定性制御装置によって行われることを特徴とする請求項11に記載のブレーキ制御方法。
【請求項13】
前記機能活性化要請が解除されると、前記ブレーキ圧力制御段階が終了することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御方法。
【請求項14】
前記ブレーキ圧力制御段階で前記旋回条件、前記加速条件、及び前記スリップ条件のうちの少なくとも一つが満たされない場合、前記ブレーキ圧力制御は終了し、
前記旋回条件、前記加速条件、及び前記スリップ条件が再び全て満たされた場合、前記ブレーキ圧力制御段階が行われることを特徴とする請求項2に記載のブレーキ制御方法。
【請求項15】
前記目標スリップと現在内側ホイールのスリップとのスリップ誤差を算出する段階をさらに含み、
前記スリップ誤差は、前記目標制動量の算出に反映されることを特徴とする請求項8に記載のブレーキ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御システム及び制御方法に関し、より詳しくは、車両旋回時に内側ホイールの制動量を調節することによって、スリップを防止し、外側ホイールの駆動力を確保可能にするブレーキ制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
差動ギアは、車両の旋回のための必須装置であり、内輪及び外輪に発生する回転数の差を補償することによって車両の旋回を可能にする。
【0003】
車両の旋回時に荷重移動によって駆動輪の内側ホイールにスリップが発生する。特に、内側ホイールと外側ホイールとの間に速度差が大きく発生する状況では、差動ギアによって、スリップが発生した駆動輪内側ホイールの反対側の輪である駆動輪外側ホイールには駆動力が十分に伝達されない現象が発生する。
【0004】
このような差動ギアの限界を補完するために、一般に、LSD(差動制限装置、Limited Slip Differential)のような機械的装置が適用されている。LSDのような装置は、スリップを抑制するのに効果があるが、クラッチなどの機械的な装置を利用しているため、コスト及び重さが増加し、車両レイアウト確保が必要であるという短所があり、車両別の特性を反映した研究にかかる開発費用及び労力も無視できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0930946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、車両旋回中に内側ホイールスリップが発生する時に外側ホイールに駆動力が伝達されない問題を、差動制限装置のような機械的装置の適用無しに解決できる、ブレーキ制御システム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の一態様によるブレーキ制御方法は、機能活性化要請を受信する段階と、前記機能活性化要請に応答して、車両の旋回内側ホイールのブレーキ制御のための実行条件が満たされたか否かを判断する段階と、前記実行条件が満たされた場合、あらかじめ設定された因子に基づいて、車両旋回時に内側ホイールのブレーキ圧力制御量を判断して調節するブレーキ圧力制御段階と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブレーキ制御を用いて旋回内側ホイールのスリップを抑制し、車両駆動力を最大限に活用できる方法を提供することができる。
また、本発明によれば、別個のシステム適用が不要であり、既存に適用されている電子式安定性制御装置(Electronic Stability Control,ESC)を用いて圧力制御方法及びシステムを具現可能である。
さらに、サーキット走行時に旋回脱出性能とドリフト機能を補助するようにし、運転者に車両運転の面白さを提供できるブレーキ制御システム及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態によるブレーキ制御システムの構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるブレーキ制御システムにおける実行条件判断部の動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態によるブレーキ制御システムの実行条件を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態によるブレーキ制御システムの旋回内外輪判断部の動作を示すフローチャートである。
【
図5】例示的な任意の車両のタイヤ特性を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるブレーキ制御方法を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態によるブレーキ制御方法を詳細に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態で提示される特定の構造又は機能的説明は、単に本発明の概念に基づく実施形態を説明する目的で例示されたものであり、本発明の概念に基づく実施形態は様々な形態で実施可能である。また、本発明は本明細書で説明された実施形態に限定されるものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるあらゆる変更物、均等物、又は代替物を含む。
【0011】
本明細書において、第1及び/又は第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用されるが、構成要素は、上記用語で限定されない。上記用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用され、例えば、本発明の概念に基づく技術範囲内で、第1構成要素は第2構成要素と命名され、同様に、第2構成要素も第1構成要素と命名されてもよい。
【0012】
ある構成要素が他の構成要素に「連結されて」いるか、又は「接続されて」いると記載された場合、その他の構成要素に直接連結されているか、又は接続されていてもよいが、中間にさらに他の構成要素が存在してもよい。一方、ある構成要素が他の構成要素に「直接連結されて」いるか、又は「直接接続されて」いると記載された場合には、中間にさらに他の構成要素が存在しない。構成要素間の関係を説明するための他の表現、すなわち、「~の間に」、と「直接~の間に」、又は「~に隣接する」と「~に直接隣接する」などの表現も同様に解釈される。
【0013】
本明細書全体を通じて同一の参照番号は同一の構成要素を示す。本明細書で使われた用語は、実施形態を説明するためのものであって、本発明を限定するためのものではない。本明細書において、単数形は、文章中で特に言及しない限り、複数形も含む。本明細書で使われる「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」とは、記載された構成要素、段階、動作、及び/又は素子が、一つ以上の他の構成要素、段階、動作、及び/又は素子の存在又は追加を排除しない。
【0014】
本発明によれば、LSDのような機械的装置に代えてブレーキ圧力調節を用いて、旋回時に内側ホイールにスリップが発生する時に外側ホイールに駆動力が伝達されない問題点を解決することができる。
【0015】
特に、本発明は、別個の新しいシステム構築無しに、車両に設けられるESCシステムを活用してブレーキ圧力を調節可能にする。特に、本発明は、内側ホイールスリップを判断し、ESCシステムを活用してブレーキ油圧でスリップを抑制することによって外側ホイールに駆動力が伝達されるようにする。
【0016】
これによって、本発明は、旋回脱出性能及びドリフト機能を向上させ、運転者にダイナミックな走行環境を提供することができる。
【0017】
また、従来の機械的装置が適用された車両に比べて、原価と重量を著しく低減させることができ、機械的装置の搭載のためのレイアウト確保を必要としない。
【0018】
しかも、従来の機械的装置の適用時にかかるシステム開発費用、労力などを節減することができる。
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明について詳しく説明する。
【0020】
図1に示すように、本発明の一実施形態によるブレーキ制御システムは、ESCユニット100を含み、本発明によるブレーキ制御のための制御部200を含む。制御部200は、ESCユニット100に統合された制御器であってもよく、ESCユニット100と通信するように構成された別個の制御器であってもよい。以下では、制御部200がESCユニット100に統合された制御器として説明する。
【0021】
ESCユニット100は、車両の各種センサーから測定情報を実時間で取り込むように構成される。特に、ESCユニット100は、操向角センサー10から車両の操向角情報を受信し、横加速度センサー20から横加速度情報を受信し、ヨーレートセンサー30からヨーレート(yaw rate)情報を収集する。また、ESCユニット100は、車両のホイール速センサー40からホイール速情報を収集する。また、ESCユニット100は、トルクセンサー50から駆動トルク情報を取得し、加速ペダルストロークセンサー60から加速ペダルストローク変化量情報を収集する。
【0022】
また、ESCユニット100は、機能要請部70からの入力を受信する。本発明の一実施形態によれば、機能要請部70は、車室内に設けられた機能活性化ボタンであり、運転者によってオン又はオフ入力が可能である。特に、運転者は、サーキット走行や、ドリフト走行を希望する場合に、機能要請部70を操作し、本発明によるブレーキ制御を行わせる。機能要請部70がオン入力になると、ESCユニット100は、本発明によるブレーキ制御を行い得る待機状態になり、後述する実行条件が満たされると、本発明の制御方法によってブレーキを制御するように構成される。すなわち、
図2に示すように、機能活性化後の待機状態において、実行条件が満たされるか否かが判断される(S40)。ブレーキ制御を行うための実行条件が満たされた場合にはブレーキ制御を行い(S42、制御進入)、実行条件を満たされなかった場合には待機状態に留まる(S30、制御進入待機)。
【0023】
ESCユニット100は実行条件判断部210を含む。実行条件判断部210は、ブレーキ制御の実行待機状態で実際にホイールスリップ抑制のためのブレーキ油圧制御が必要か否かを判断する。
図3に示すように、実行条件判断部210は、旋回条件C1、加速条件C2、及びスリップ条件C3を判断し、これらの条件C1、C2、C3が満たされた場合に、本発明によるブレーキ圧力制御段階を行う。
【0024】
実行条件判断部210は、現在車両の操向角、横加速度、及びヨーレートに基づいて旋回条件C1が満たされたか否かを判断する。操向角は操向角センサー10から、横加速度は横加速度センサー20から、ヨーレートはヨーレートセンサー30からそれぞれ実行条件判断部210に入力される。実行条件判断部210は、操向角があらかじめ設定された基準操向角F1を超える場合、横加速度があらかじめ設定された基準横加速度F2を超える場合、及びヨーレートがあらかじめ設定された基準ヨーレートF3を超える場合、すなわち、これら3つの条件が満たされた場合に旋回条件C1が満たされたと判断する。
【0025】
実行条件判断部210は、車両の前輪ホイール速、駆動トルク、及び走行段の情報に基づいて加速条件C2が満たされたか否かを判断する。すなわち、実行条件判断部210は、前輪ホイール速があらかじめ設定された基準前輪ホイール速F4を超え、駆動トルクがあらかじめ設定された基準駆動トルクF5を超え、走行段があらかじめ設定された基準走行段F6である場合、すなわち、3つの条件が満たされた場合に加速条件C2が満たされたと判断する。
【0026】
実行条件判断部210は、スリップ条件C3が満たされたか否かを判断するように構成される。駆動輪の内側ホイールと外側ホイールとのスリップ差があらかじめ設定された基準スリップの差F7を超える場合、実行条件判断部210は、スリップ条件C3が満たされたと判断する。
【0027】
この時、旋回時における内側ホイールと外側ホイールの区別が先行される。ESCユニット100は内外輪判断部220を備え、内外輪判断部220は、旋回時に内側ホイールが左側ホイールか右側ホイールかを判断する。
図4に示すように、本発明の一実施形態によれば、内外輪判断部220は、ヨーレートセンサー30から現在ヨーレート情報を収集し、ヨーレートが負の値か正の値かを判断する(S222)。収集されたヨーレートが0を超えると、内外輪判断部220は、内側ホイールが後輪左側ホイールRLであり、外側ホイールが後輪右側ホイールRRであると判断する(S224)。逆に、ヨーレートが0よりも小さい負数である場合には、内側ホイールが後輪右側ホイールRRと判断され、外側ホイールが後輪左側ホイールRLと判断される(S226)。ここで、左側は運転席の方を意味し、右側は補助席の方を意味する。設定によって、上記と反対の場合も可能である。
【0028】
旋回条件C1、加速条件C2、及びスリップ条件C3を含む実行条件が満たされた場合、ESCユニット100は、ブレーキ圧力制御のための一連の段階を行う。すなわち、ESCユニット100は、ブレーキ圧力制御量を判断し、それに基づいてブレーキの圧力を制御する。そのために、本実施形態では、ESCユニット100は、内側ホイール目標スリップ算出部230、内側ホイール目標ホイール速算出部240、スリップ誤差算出部250、目標制動トルク算出部260、及び目標制動量算出部270を含む。
【0029】
内側ホイール目標スリップ算出部230は、旋回内側ホイールの目標スリップを算出するように構成される。本発明によるブレーキ制御の目的は、最大駆動力の確保のために、旋回内側ホイールスリップを車両特性に合うように制限して制御することにある。最大駆動力は、スリップによるタイヤの摩擦力である車両タイヤ特性によって変化するので、最大駆動力の確保のためのスリップは、タイヤ特性値に基づいて決定される。タイヤ特性試験値がパラメータとして入力されると、内側ホイール目標スリップ算出部230は、現在走行速度に対応する最大スリップ率を判断して目標スリップλ
targetを決定する。例示的に、任意の車両のタイヤ特性が
図5のように与えられる場合、最大駆動力の確保のための適正目標スリップは、表1のように与えられる。
【0030】
【0031】
上記のように内側ホイール目標スリップ算出部230によって決定された内側ホイールの目標スリップλtargetから内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetを算出する。ホイールスリップ計算公式に基づいて、数式1のように内側ホイールの目標スリップλtargetに対する式が得られる。
【0032】
【0033】
内側ホイール目標ホイール速算出部240は、数式1を内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetに対して整理し、数式2を用いて内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetを算出する。
【0034】
【数2】
ここで、Vは、現在車速であり、時間当たりの走行距離(キロメートルなど)で与えられる。
【0035】
ESCユニット100は、スリップ誤差算出部250を含む。数式3のように、スリップ誤差算出部250は、現在内側ホイールのスリップλと数式1によって算出された目標スリップλtarget間のスリップ誤差eを演算する。計算された内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetと共に、スリップ誤差eはブレーキ圧力制御量に影響を及ぼす。
【0036】
【0037】
現在内側ホイールのスリップλは、数式4に基づいて計算される。
【0038】
【数4】
ここで、V
iwは、現在内側ホイールのホイール速である。
【0039】
ESCユニット100は、内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetと目標制動トルクτtargetに基づいてブレーキ圧力制御量を決定する。すなわち、決定された内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetに基づいて、目標制動トルクτtargetが決定され、決定された目標制動トルクτtargetに基づいて目標制動量Ptargetが決定される。そのために、ESCユニット100は、目標制動トルク算出部260及び目標制動量算出部270を含む。
【0040】
目標制動トルク算出部260は、数式5によって目標制動トルクτtargetを決定する。目標制動トルクτtargetは、目標速度を満たすための制動トルクを決定するための演算領域であり、エネルギーと速度との相関関係によって演算される。
【0041】
【数5】
ここで、Wは車両重量諸元値であり、revは車両のエンジン回転数(revolutions per minute,RPM)である。
【0042】
目標制動トルクτtargetが算出されると、目標制動量算出部270は、数式6によって目標制動量Ptargetを演算する。目標制動量Ptargetは、目標制動トルクτtargetを満たすための油圧制動量が決定される部分であり、ホイールトルク及びブレーキ圧力間の相関関係であるホイールダイナミックスに基づいて決定される。
【0043】
【数6】
ここで、rはタイヤの半径、μは摩擦材の摩擦係数、r’はブレーキの有効半径である。
【0044】
ESCユニット100は、決定された目標制動量Ptargetをスリップが発生する内側ホイールに加えることによって内側ホイールのスリップを抑制する。
【0045】
図6及び
図7を参照して、本発明によるブレーキ制御方法を説明する。
【0046】
段階S10で、本発明によるブレーキ制御方法が開始される。
【0047】
段階S20で機能活性化要請が入力される。機能活性化要請は、車室内に設けられた本発明によるブレーキ制御機能の活性化ボタンの操作によって行われる。非限定的な例として、活性化ボタンのオン入力は、車両をサーキット走行モードに進入させるボタンでもよい。他の非限定的な例として、活性化ボタンのオン入力は、車両がドリフト(drift)モードに進入するボタンであってもよい。
【0048】
機能活性化要請が入力されると、本発明によるブレーキ制御のための待機状態に進入する(S30)。続いて、待機状態で、本発明によるブレーキ制御の実行のための実行条件が満たされるか否かが判断される(S40)。機能活性化要請が入力された状態であっても、実際にホイールスリップ抑制のための油圧制御が必要か否かが判断され、実行条件を満たす場合に限って、本発明によるブレーキ制御が行われる。
【0049】
上述したように、実行条件は、旋回条件C1、加速条件C2、及びスリップ条件C3を含み、各条件が満たされた場合、ブレーキ油圧制御のために一連の段階が行われる(S60)。
【0050】
段階S62で、タイヤ特性値に基づいて、内側ホイールの目標スリップλtargetが決定される。決定された内側ホイールの目標スリップλtargetに基づいて、数式2によって内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetが算出される(S64)。
【0051】
内側ホイールの目標ホイール速Viw,targetが決定されると、数式5によって目標制動トルクτtargetが算出され、数式6に基づいて目標制動量Ptargetが演算される(S66)。
【0052】
ESCユニット100は、演算された目標制動量Ptargetに基づいて内側ホイールの油圧制動量を調節することによって、本発明によるブレーキ制御を行う(S70)。
【0053】
段階S80でブレーキ圧力制御終了のための条件が判断される。機能活性化要請が解除されると、ブレーキ圧力制御は終了する(S90)。上述したように、運転者によって活性化ボタンがオフ入力された場合、ブレーキ圧力制御は終了する。
【0054】
一方、旋回条件C1、加速条件C2、及びスリップ条件C3のいずれか一つでも条件を満たしていない場合、ブレーキ圧力制御は制御待機状態に進入する(S44)。例えば、操向角があらかじめ設定された基準操向角以下であれば、他の条件が満たされたか否かに関係なく制御待機状態に進入し、再び実行条件が全て満たされた場合にブレーキ圧力制御が行われる。
【0055】
本発明は、LSDのような機械的装置無しで、車両旋回時に発生する内側ホイールのスリップをブレーキ圧力によって制御することにより、旋回脱出性能を向上させ、ドリフトがより容易になるようにサポートし、よって、ダイナミックな走行環境を提供し、従来技術に比べて原価・重量の低減及び開発費・開発労力の節減を図ることができる。
【0056】
以上で説明した本発明は、上述した実施形態及び図面によって限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で様々な置換、変形、及び変更が可能であることは、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【符号の説明】
【0057】
10 操向角センサー
20 横加速度センサー
30 ヨーレートセンサー
40 ホイール速センサー
50 トルクセンサー
60 加速ペダルストロークセンサー
70 機能要請部
100 ESCユニット
200 制御部
210 実行条件判断部
220 内外輪判断部
230 内側ホイール目標スリップ算出部
240 内側ホイール目標ホイール速算出部
250 スリップ誤差算出部
260 目標制動トルク算出部
270 目標制動量算出部