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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125015
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】セラミドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 11/00 20060101AFI20220819BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALN20220819BHJP
   A61K 8/68 20060101ALN20220819BHJP
【FI】
C11B11/00
A61Q19/00
A61K8/68
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022018953
(22)【出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2021022279
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】599039887
【氏名又は名称】株式会社双葉紙器
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊川 喜仁
(72)【発明者】
【氏名】大隈 信行
【テーマコード(参考)】
4C083
4H059
【Fターム(参考)】
4C083AC641
4C083AC642
4C083CC01
4C083CC02
4C083FF01
4H059BA01
4H059BA12
4H059BA83
4H059BB03
4H059BC06
4H059CA05
4H059CA12
4H059CA19
4H059CA51
4H059CA72
4H059CA73
4H059EA21
(57)【要約】
【課題】セラミドの収量を増加させることができるセラミドの製造方法を提供する。
【解決手段】セラミドの製造方法は、原料となる魚肉を、ヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒中で撹拌し、セラミドとセラミドシリアチンとを該第1の混合溶媒中に抽出し、第1の混合溶媒を濾過して得られた濾液を減圧蒸留により乾固して、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を得る。得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物を亜臨界状態の溶媒で処理する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料となる魚肉を、ヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒中で撹拌し、セラミドとセラミドシリアチンとを該第1の混合溶媒中に抽出する工程と、
該第1の混合溶媒を濾過して濾液を得る工程と、
得られた濾液を減圧蒸留により乾固して、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を得る工程と、
該乾固により得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物を亜臨界状態の溶媒で処理する工程とを備えることを特徴とするセラミドの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のセラミドの製造方法において、
前記亜臨界状態の溶媒は、水、エタノール、水-エタノール混合溶媒からなる群から選択される1種の溶媒であることを特徴とするセラミドの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のセラミドの製造方法において、
前記セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を亜臨界水で処理して得られた処理物に、ヘキサンとエタノールと水とからなる第2の混合溶媒を加え、撹拌した後、静置することにより、該第2の混合溶媒をヘキサン相とエタノール-水相とに分離する工程と、
該ヘキサン相を乾固してセラミドを得る工程とを備えることを特徴とするセラミドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミド等のスフィンゴリン脂質は、皮膚の保湿効果を高めることが知られており、化粧品原料等の用途に用いられている。
【0003】
セラミドは、次式(1)で示される化合物である。一方、魚肉の場合には、次式(2)で示されるセラミドシリアチン又は、スフィンゴミエリン(式(2)における2-アミノエチルホスホン酸基の部分がホスホリルコリン基となっている化合物)として存在しており、セラミドシリアチン又はスフィンゴミエリンの一部がその遊離体としてのセラミドに変化していると考えられる。
【0004】
【化1】
【0005】
【化2】
【0006】
尚、式(1)、式(2)において、---は-(CH)-(nは整数)を示す。
【0007】
従来、セラミドの製造方法として、動植物から有機溶剤によりセラミドを抽出する方法が知られており、本出願人により、魚肉からヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒によりセラミドとセラミドシリアチンとを抽出し、抽出されたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物にさらにヘキサンとエタノールと水とからなる第2の混合溶媒を加え、撹拌した後、静置して、該第2の混合溶媒をヘキサン相とエタノール-水相とに分離し、該ヘキサン相からセラミドを得る一方、該エタノール-水相からセラミドシリアチンを得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-137439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法では、魚肉から抽出されたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物からセラミドを単離することはできるものの、セラミドシリアチンをセラミドとすることが難しく、セラミドの収量を増加させることができないという不都合がある。
【0010】
本発明は、かかる不都合を解消して、セラミドの収量を増加させることができるセラミドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる目的を達成するために、本発明のセラミドの製造方法は、原料となる魚肉を、ヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒中で撹拌し、セラミドとセラミドシリアチンとを該第1の混合溶媒中に抽出する工程と、該第1の混合溶媒を濾過して濾液を得る工程と、得られた濾液を減圧蒸留により乾固して、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を得る工程と、該乾固により得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物を亜臨界状態の溶媒で処理する工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明のセラミドの製造方法では、まず、原料となる魚肉を、ヘキサンとエタノールとからなる第1の混合溶媒中で撹拌し、セラミドとセラミドシリアチンとを該第1の混合溶媒中に抽出する。次に、第1の混合溶媒を濾過して濾液を得る。前記濾過により、前記第1の混合溶媒に含まれる魚肉の残渣を除去し、セラミドとセラミドシリアチンとを含む濾液を得ることができる。
【0013】
次に、得られた濾液を減圧蒸留により乾固して、セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を得る。前記濾液は、減圧蒸留することにより、セラミド又はセラミドシリアチンが分解されることなく、前記第1の混合溶媒を留去することができる。
【0014】
次に、前記乾固により得られたセラミドとセラミドシリアチンとの混合物を、亜臨界状態の溶媒で処理する。このようにすると、前記セラミドシリアチンが前記亜臨界状態の溶媒により加水分解され、セラミドと、化学式HNCHCH(PO)(OH)で示される2-アミノエチルホスホン酸とが得られる。
【0015】
尚、前記亜臨界状態の溶媒とは、その溶媒の沸点以上臨界温度未満の温度域で加圧することにより液体状態を保っている溶媒を意味する。例えば、水の場合、前記亜臨界状態の水とは、水の沸点である100℃以上で、水の臨界温度である374℃未満の温度域で加圧することにより液体状態を保っている水を意味する。
【0016】
従って、本発明の製造方法によれば、従来セラミドシリアチンとして得られていた成分もセラミドとすることができ、十分な量のセラミドを得ることができる。
【0017】
本発明の製造方法において、前記亜臨界状態の溶媒は、水、エタノール、水-エタノール混合溶媒からなる群から選択される1種の溶媒であり、いずれの溶媒を用いても、セラミドシリアチンを加水分解することができる。
【0018】
本発明の製造方法で得られたセラミドは、例えば、前記セラミドとセラミドシリアチンとの混合物を前記亜臨界状態の溶媒で処理して得られた処理物に、ヘキサンとエタノールと水とからなる第2の混合溶媒を加え、撹拌した後、静置することにより、該第2の混合溶媒をヘキサン相とエタノール-水相とに分離する工程と、該ヘキサン相を乾固してセラミドを得る工程とにより回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の製造方法を示す工程図。
図2】本発明の製造方法で得られたリン脂質のガスクロマトグラム。
図3図2に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトル。
図4】本発明の製造方法で得られたリン脂質を亜臨界状態の水を用い200℃で90分間処理して得られた成分のガスクロマトグラム。
図5図4に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトル。
図6図4に示すガスクロマトグラムのピーク3のマススペクトル。
図7図4に示すガスクロマトグラムのピーク10のマススペクトル。
図8図4に示すガスクロマトグラムのピーク11のマススペクトル。
図9図4に示すガスクロマトグラムのピーク13のマススペクトル。
図10】本発明の製造方法で得られたリン脂質を亜臨界状態の水を用い200℃で60分間処理して得られた成分のガスクロマトグラム。
図11図10に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトル。
図12】本発明の製造方法で得られたリン脂質を亜臨界状態のエタノールを用い200℃で60分間処理して得られた成分のガスクロマトグラム。
図13図12に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトル。
図14】本発明の製造方法で得られたリン脂質を亜臨界状態の水-エタノール混合溶媒を用い200℃で60分間処理して得られた成分のガスクロマトグラム。
図15図14に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態のセラミドの製造方法では、まず、反応容器に収容された原料の魚肉1に、第1の混合溶媒2を添加して、撹拌、混合することにより、第1の混合液3を得る。
【0022】
魚肉1としては、例えば、真イカ、ヤリイカ、剣先イカ等を2日間天日乾燥し、さらに温風乾燥機により40℃で48時間乾燥した乾燥品を裁断し、さらに粉砕した粉末を用いることができる。前記粉末は、例えば、約10質量%の水分を含み、500μm以下の粒子径を備えている。また、第1の混合溶媒2は、ヘキサンとエタノールからなり、例えば、エタノール100質量部に対し、ヘキサンを55~65質量部の範囲で含んでいる。
【0023】
次に、反応容器中で、10gの魚肉1に対し、第1の混合溶媒2を例えば60~120ml添加し、1~4時間撹拌、混合する。このようにすることにより、魚肉1に含まれるセラミドとセラミドシリアチンとが第1の混合溶媒2に抽出されて、第1の混合液3が得られる。
【0024】
本実施形態では、次に、第1の混合液3を濾過し、第1の混合液3に含まれる魚肉の残渣等を除去し、セラミドとセラミドシリアチンとを含む濾液4を得る。そして、濾液4を蒸発乾固させることにより、セラミドとセラミドシリアチンとをリン脂質(スフィンゴリン脂質)として含む固体5を得る。前記蒸発乾固は、例えば、ロータリーエバポレーター等を用いて濾液4を減圧蒸留し、第1の混合溶媒2を留去することにより行うことができる。
【0025】
次に、固体5に含まれる成分をGC/MSにより分析した。GC/MSは、固体5を試料として、日本電子株式会社製ガスクロマトグラフ飛行時間質量分析計(型式:JMS-T100GCV型)により、内径0.25mm、長さ30mの無極性カラム(商品名:InertCap1)を用い、100℃に10分間保持した後、10℃/分の昇温速度で300℃まで昇温し、300℃に25分保持する条件で行った。キャリアガスは1.0ml/分のヘリウムを用い、スプリット比10:1、注入口温度は310℃とし、イソブタンを反応試薬とする化学イオン化法により行った。
【0026】
固体5のガスクロマトグラムを図2に、図2に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトルを図3にそれぞれ示す。
【0027】
図3の質量電荷比(m/z)315.1のピークはスフィンゴミエリンと同定され、図2にガスクロマトグラムを示す固体5は、スフィンゴミエリンと同様のスフィンゴリン脂質であるセラミドシリアチンと、その一部が遊離してなるセラミドとの混合物であると推定される。
【0028】
本実施形態では、次に、固体5を亜臨界状態の水(亜臨界水)で処理する(図1に亜臨界水処理6として示す)。亜臨界水処理6は、所定量の固体5と所定量の水とを密封容器に収容し、水の沸点(100℃)以上臨界温度(374℃)未満の温度に加熱することにより行う。このようにすると、前記密封容器内で前記水が液相と気相とに分離する一方、気相の水により容器内が0.4~22MPaの圧力で加圧されることとなり、液相の水が亜臨界状態の水となる。
【0029】
本実施形態では、亜臨界水処理6を200℃で90分間行うことにより、前記セラミドシリアチンが前記亜臨界水中で処理されることにより加水分解され、セラミドと、化学式HNCHCH(PO)(OH)で示される2-アミノエチルホスホン酸とが得られた。
【0030】
次に、固体5に200℃で90分間の亜臨界水処理6を行うことにより得られた成分をGC/MSにより分析した。GC/MSは、固体5に200℃で90分間の亜臨界水処理6を行うことにより得られた成分を試料とする以外は、固体5を試料とする場合と全く同一にして行った。
【0031】
固体5の200℃で90分間の亜臨界水処理6を行うことにより得られた成分のガスクロマトグラムを図4に、図4に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトルを図5に、図4に示すガスクロマトグラムのピーク3のマススペクトルを図6に、図4に示すガスクロマトグラムのピーク10のマススペクトルを図7に、図4に示すガスクロマトグラムのピーク11のマススペクトルを図8に、図4に示すガスクロマトグラムのピーク13のマススペクトルを図9に、それぞれ示す。
【0032】
図5の質量電荷比(m/z)315.1のピークに対応する成分は、図3の質量電荷比(m/z)315.1のピークに対応する成分と同一であってスフィンゴミエリンと同定される。また、図4のピーク1は、図2のピーク1とほぼ同量であり、スフィンゴミエリンは200℃で90分間の亜臨界水処理6によっては加水分解を受けないものと推定される。
【0033】
一方、図6の質量電荷比(m/z)342.1のピークに対応する成分は、2-アミノエチルホスホン酸と同定され、図7の質量電荷比(m/z)564.5のピークに対応する成分は、セラミド(d16:1/16:0)、図8の質量電荷比(m/z)592.5のピークに対応する成分は、セラミド(d18:1/16:0)、図9の質量電荷比(m/z)602.5のピークに対応する成分は、セラミド(d19:3/16:0)と同定される。また、図4のピーク3、10、11、13は、図2にも見られ、固体5は前述のように、セラミドとセラミドシリアチンとを含むことが明らかである。
【0034】
また、図4のピーク3、10、11、13は、図2の対応するピークよりも増加していることが明らかである。従って、図2~9から、固体5に含まれるセラミドシリアチンが、亜臨界水処理6により加水分解を受け、2-アミノエチルホスホン酸とセラミドとが生成していることが明らかである。
【0035】
尚、セラミドは、次の一般式(3)(R、Rは不飽和であってもよい炭化水素基を示す)において、XがHである場合として表され、長鎖塩基(LCB)の炭素数をA、炭素-炭素二重結合数をB、不飽和脂肪酸(FA)の炭素数をC、炭素-炭素二重結合数をDとして、dA:B/C:D(A,B,C,Dは0以上の整数)のように記載することができる。
【0036】
【化3】
【0037】
本実施形態では、次に、固体5に200℃で60分間の亜臨界水処理6を行うことにより得られた成分をGC/MSにより分析した。GC/MSは、固体5に200℃で60分間の亜臨界水処理6を行うことにより得られた成分を試料とする以外は、図2に示す、固体5を試料としてGC/MSにより分析する場合と全く同一にして行った。
【0038】
固体5に亜臨界水処理6を200℃で60分間行うことにより得られた成分のガスクロマトグラムを図10に、図10に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトルを図11に、それぞれ示す。
【0039】
本実施形態では、次に、亜臨界水処理6における溶媒を100%エタノールに代えた以外は亜臨界水処理6と同様にして、固体5を亜臨界状態の100%エタノール中、200℃で60分間処理することにより得られた成分をGC/MSにより分析した。GC/MSは、固体5に亜臨界水状態の100%エタノールによる処理を200℃で60分間行うことにより得られた成分を試料とする以外は、図2に示す、固体5を試料としてGC/MSにより分析する場合と全く同一にして行った。
【0040】
固体5に亜臨界水状態の100%エタノールによる処理を200℃で60分間行うことにより得られた成分のガスクロマトグラムを図12に、図12に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトルを図13に、それぞれ示す。
【0041】
本実施形態では、次に、亜臨界水処理6における溶媒をエタノール-水混合溶媒(100%エタノール:水=2:1(容積比))に代えた以外は亜臨界水処理6と同様にして、固体5を亜臨界状態のエタノール-水混合溶媒中、200℃で60分間処理することにより得られた成分をGC/MSにより分析した。GC/MSは、固体5に亜臨界水状態のエタノール-水混合溶媒による処理を200℃で60分間行うことにより得られた成分を試料とする以外は、図2に示す、固体5を試料としてGC/MSにより分析する場合と全く同一にして行った。
【0042】
固体5に亜臨界水状態のエタノール-水混合溶媒による処理を200℃で60分間行うことにより得られた成分のガスクロマトグラムを図14に、図14に示すガスクロマトグラムのピーク1のマススペクトルを図15に、それぞれ示す。
【0043】
図11及び図15から、固体5に亜臨界水状態の水又は100%エタノールによる処理を200℃で60分間行うことにより得られた成分は、質量電荷比(m/z)=564のピークに対応する成分を含んでいることが明らかである。図11及び図15における質量電荷比(m/z)=564のピークに対応する成分は、図7における質量電荷比(m/z)=564.5のピークに対応する、すなわちセラミド(d16:1/16:0)に相当すると考えられる。
【0044】
一方、図13から、固体5に亜臨界水状態のエタノール-水混合溶媒による処理を200℃で60分間行うことにより得られた成分は、質量電荷比(m/z)=593のピークに対応する成分を含んでいることが明らかである。図13における質量電荷比(m/z)=593のピークに対応する成分は、図8における質量電荷比(m/z)=592.5のピークに対応する成分、すなわちセラミド(d18:1/16:0)に相当すると考えられる。
【0045】
以上のように、亜臨界水状態の溶媒として、水又は100%エタノールを用いる場合と、エタノール-水混合溶媒を用いる場合とで検出される成分は異なるものの、いずれも図4に示すガスクロマトグラムのピークのマススペクトルを構成する成分である。従って、本実施形態の製造方法では、臨界状態の溶媒として、水、100%エタノール、水-エタノール混合溶媒のいずれの溶媒を用いても、セラミドシリアチンを加水分解することができることが明らかである。
【0046】
本実施形態では、次に、固体5に対する亜臨界水処理6により得られた処理物を分液ロートに収容し、第2の混合溶媒を添加して、第2の混合液7を得る。第2の混合溶媒11は、ヘキサンとエタノールと水とからなり、例えば、エタノール100質量部に対し、ヘキサンを100~200質量部、水を3~50質量部の範囲で含んでいる。
【0047】
次いで、第2の混合液7を、撹拌した後、静置する。このようにすると、第2の混合液7は分液ロート中で有機相8としてのヘキサン相と、エタノール-水相9とに分離する。
【0048】
ここで、有機相8にはセラミドが含まれており、エタノール-水相9には微量のセラミドと2-アミノエチルホスホン酸とが含まれている。そこで、有機相8とエタノール-水相9とを分離し、有機相8を蒸発乾固することによりセラミド10を得ることができる。有機相8の蒸発乾固は、濾液4の蒸発乾固と同様にして行うことができる。
【0049】
一方、エタノール-水相9には、微量のセラミドと2-アミノエチルホスホン酸とが含まれているので、エタノール-水相9にヘキサンを加え、撹拌した後、静置し、再び有機相8としてのヘキサン相とエタノール-水相9とに分離し、有機相8を蒸発乾固する操作を少なくとも1回行うことが好ましい。このようにすることにより、エタノール-水相9中に含まれるセラミドを回収することができ、全体としてのセラミドの収率をさらに向上させることができる。
【0050】
尚、本実施形態では、有機相8とエタノール-水相9との分離を分液ロートにより行っているが、工業的に行う場合には、例えば、向流多段抽出法等の方法により行うことができる。
【符号の説明】
【0051】
1…魚肉、 2…第1の混合溶媒、 3…第1の混合液、 4…固体(リン脂質)、 6…亜臨界水処理、 7…第2の混合液、 8…有機相、 10…セラミド。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15