(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125021
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20220819BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
H02M3/28 Y
H01F30/10 J
H01F30/10 C
H01F30/10 H
H01F30/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022021504
(22)【出願日】2022-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2021022739
(32)【優先日】2021-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 康大
(72)【発明者】
【氏名】槇田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】内田 義孝
(72)【発明者】
【氏名】本城 純治
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730BB27
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE04
5H730EE05
5H730EE12
5H730ZZ01
5H730ZZ04
5H730ZZ07
5H730ZZ11
5H730ZZ12
5H730ZZ16
(57)【要約】
【課題】放熱性能を向上させる。
【解決手段】電力変換装置1は、導体パターン又は導体板からなる一次側コイル、及び一次側電子部品が実装される一次側実装部312を有する一次側基板31と、導体パターン又は導体板からなる二次側コイル、及び二次側電子部品が実装される二次側実装部322を有する二次側基板32とを備えており、一次側コイル及び二次側コイルが軸方向に対向して配置されて封止樹脂33により封止されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側コイル、及び一次側電子部品が実装される一次側実装部を有する一次側基板と、
二次側コイル、及び二次側電子部品が実装される二次側実装部を有する二次側基板とを備え、
前記一次側コイル及び前記二次側コイルが軸方向に対向して配置されて封止樹脂により封止された電力変換装置。
【請求項2】
前記一次側コイルが前記一次側基板のコイル形成部に形成された導体パターンからなり、
前記二次側コイルが軸方向に対向する一対の巻回部を有する導体板からなり、
前記一対の巻回部の間に前記一次側コイルが挿入されて配置された状態で、前記一次側コイル及び前記二次側コイルが封止樹脂により封止された請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記コイル形成部及び前記一対の巻回部に装着され、前記コイル形成部及び前記一対の巻回部を互いに対向した状態で支持するスペーサ部材を備え、
前記コイル形成部、前記二次側コイル及び前記スペーサ部材が封止樹脂により封止された請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記スペーサ部材には、前記コイル形成部の内周部が差し込まれた一次側差込部と、前記一対の巻回部の内周部が差し込まれた一対の二次側差込部とが前記軸方向に並んで形成されている請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記二次側コイルは、前記一対の巻回部と、前記二次側実装部に接続された複数の引出部とを一体に有しており、前記一対の巻回部及び前記複数の引出部が前記封止樹脂により封止された請求項2~4のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記一次側基板に実装され、前記封止樹脂の端部に沿って延在する一次側緩衝部材と、
前記二次側基板に実装され、前記封止樹脂の端部に沿って延在する二次側緩衝部材とを備える請求項1~5のいずれかに記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記一次側緩衝部材は、前記一次側基板の側端面まで延在しており、
前記二次側緩衝部材は、前記二次側基板の側端面まで延在している請求項6に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載されたトランスは、多層プリント基板に設けられた一次側コイルと、各々が導体板からなる一対の二次側コイルとを備えている。一次側コイルは一対の二次側コイルの間に配置されており、各二次側コイルと一次側コイルとの間にそれぞれ絶縁シートが介在されている。下記特許文献2にも上記同様のトランスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-4823号公報
【特許文献2】特開2020-10480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成のトランスが製造される際には、一次側コイルが設けられた多層プリント基板に対して、複数の絶縁シートや複数の二次側コイルなどの部品が組み付けられる。このような構成では、各コイルと絶縁シートとの間に僅かながら空気層が存在するため、各コイルから発生する熱を放熱し難くなる。その結果、例えば放熱対策のために追加の放熱部材が必要となったり、各部材の寸法精度を厳しく管理する必要が生じる等、製造コストが増加する原因となる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、放熱性能を向上させることができる電力変換装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電力変換装置は、一次側コイル、及び一次側電子部品が実装される一次側実装部を有する一次側基板と、二次側コイル、及び二次側電子部品が実装される二次側実装部を有する二次側基板とを備え、前記一次側コイル及び前記二次側コイルが軸方向に対向して配置されて封止樹脂により封止されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、一次側基板は、一次側コイルと、一次側電子部品が実装される一次側実装部とを有している。二次側基板は、二次側コイルと、二次側電子部品が実装される二次側実装部とを有している。一次側基板及び二次側基板は、一次側コイル及び二次側コイルが軸方向に対向して配置されて封止樹脂により封止されている。封止樹脂は一次側コイル及び二次側コイルに対して隙間なく密着するので、封止樹脂として熱伝導性を有する樹脂を用いれば、一次側コイルおよび二次側コイルから発生する熱が封止樹脂を介して効率良く放熱される。よって、放熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示す分解斜視図である。
【
図2】第1実施形態に係る電力変換装置の部分的な構成を示す断面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る電力変換装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係る電力変換装置が備える一次側基板、二次側基板及び封止樹脂を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態に係る電力変換装置が備える一次側基板及び二次側基板を示す斜視図である。
【
図7】
図5のVII-VII線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る電力変換装置が備える一次側基板を示す斜視図である。
【
図9】第1実施形態に係る電力変換装置が備える二次側基板を示す斜視図である。
【
図10】第1実施形態に係る電力変換装置が備えるブラケットを示す斜視図である。
【
図11】第1実施形態に係る電力変換装置が備える制御基板を示す斜視図である。
【
図12】一次側基板及び二次側基板の種類について説明するための説明図である。
【
図13】第1実施形態に係る電力変換装置が備える電力変換回路の第一例を示す回路図である。
【
図14】第1実施形態に係る電力変換装置が備える電力変換回路の第二例を示す回路図である。
【
図15】第1実施形態に係る電力変換装置が備える電力変換回路の第三例を示す回路図である。
【
図16】直列タイプの二次側コイルを示す斜視図である。
【
図17】並列タイプの二次側コイルを示す斜視図である。
【
図18】直列タイプの二次側コイルを展開して示す展開図である。
【
図19】並列タイプの二次側コイルを展開して示す展開図である。
【
図20】第1実施形態に係る電力変換装置の第1変形例が備える一次側基板及び二次側基板を示す分解斜視図である。
【
図21】第1実施形態に係る電力変換装置の第2変形例が備える一次側基板及び二次側基板を示す分解斜視図である。
【
図22】第2実施形態に係る電力変換装置が備える一次側基板、二次側基板、封止樹脂、一次側緩衝部材及び二次側緩衝部材を示す斜視図である。
【
図23】第2実施形態に係る電力変換装置が備える一次側基板、二次側基板、封止樹脂、一次側緩衝部材及び二次側緩衝部材を示す平面図である。
【
図24】一次側緩衝部材を上方側から見た斜視図である。
【
図25】一次側緩衝部材を下方側から見た斜視図である。
【
図26】二次側緩衝部材を上方側から見た斜視図である。
【
図27】二次側緩衝部材を下方側から見た斜視図である。
【
図28】
図23のX-X線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図29】
図23のY-Y線に沿った切断面を示す断面図である。
【
図30】
図23のZ-Z線に沿った切断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、
図1~
図19を参照して本発明の第1の実施形態について説明する。本実施形態では、説明の便宜上、
図1等に示す上下、左右及び前後の矢印に示す方向を、上下方向、左右方向及び前後方向と定義して構成要素の位置や向き等を説明する。また、各図中においては、図面を見易くするため、一部の符号を省略している場合がある。
図1に示すように、本実施形態に係る電力変換装置1は、ケース2と、トランス3と、入力コネクタ4と、平滑回路部5と、出力コネクタ6と、制御基板7と、カバー8とを備える。
【0010】
ケース2は、アルミニウムなどの熱伝導率が高い材料からなり、上下方向を厚さ方向とする板状に形成されている。
図1及び
図2に示すように、ケース2は、上側に向く載置面20を有する。載置面20には、トランス3を載置するための三つの載置領域21~23が設けられている。第一載置領域21、第二載置領域22及び第三載置領域23は、この順番で後方から前方に向かって並んで設けられている。第一載置領域21は、載置面20と略同じ高さの平面領域になっている。第二載置領域22は、第一載置領域21よりも一段高い平面領域になっている。第三載置領域23は、第二載置領域22よりも一段高い平面領域になっている。第一~第三載置領域21~23は、第一載置領域21が最も低く、第二載置領域22、第三載置領域23の順に一段ずつ高くなった段差状になっている。第二載置領域22には、後述するトランスコア34を載置するためのコア載置凹部24が形成されている。コア載置凹部24は、左右方向に延びる凹部であり、第二載置領域22の左右両端部まで延びて左右方向にも開口している。コア載置凹部24の底面は、載置面20及び第一載置領域21と略同じ高さの平面になっている。ケース2は、載置面20に載置されるトランス3等の熱を放散させて冷却するヒートシンクの機能を有している。ケース2は、空気の対流を利用した空冷式のヒートシンクであるが、水などの冷却媒体を利用した冷媒式のヒートシンクとしてもよい。
【0011】
ケース2の第一載置領域21には、一つの円筒状の基板支持部212が形成されている。基板支持部212は、上下方向に延びる円筒状であり、その上面にネジ孔211が形成されている。基板支持部212の上面の高さはそれぞれ、第二載置領域22と略同じ高さになっている。第二載置領域22の左端部には、コア載置凹部24よりも第一載置領域21に近い側の領域において、一つのネジ孔221が形成されている。基板支持部212のネジ孔211と第二載置領域22のネジ孔221とは、互いに前後方向にずれて配置されている。第二載置領域22の右端部には、コア載置凹部24よりも第一載置領域21に近い側の領域において、一つの凸状突起222が形成されている。第三載置領域23には、左右方向に間隔をあけて二つのネジ孔231(
図1では一つのみ図示)が形成されている。第三載置領域23の左端部には、ネジ孔231よりもコア載置凹部24から遠い側の領域において、一つの凸状突起232が形成されている。コア載置凹部24の左右方向の両側でケース2の上面には、二つのネジ孔241が形成されている。二つのネジ孔241は、互いに前後方向にずれて配置されている。
【0012】
トランス3は、一次側基板31と、二次側基板32と、封止樹脂33と、コアであるトランスコア34とを備える。以下の説明では、一次側基板31、二次側基板32の板厚方向を上下方向として説明する。
【0013】
図1、
図5~
図8に示すように、一次側基板31は、基板前方側に設けられた一次側コイル形成部311と、基板後方側に設けられた一次側実装部312とを有する。一次側コイル形成部311は、本発明における「コイル形成部」に相当する。一次側コイル形成部311及び一次側実装部312は一枚の基板に形成されている。一次側コイル形成部311には、帯状の導体パターンからなる一次側コイル3111が形成されている。一次側コイル3111は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に2ターン(2周)のコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に2ターンのコイルが一次側コイル形成部311の下面に形成されて、合計4ターンのコイルになっている。一次側コイル3111の軸方向は、板厚方向と一致している。一次側コイル3111は、渦状の2ターンのコイルが板厚方向に2層繋がって形成された構成になっている。一次側コイル形成部311の上面における一次側コイル3111の外周側の端部は、一次側実装部312まで延びて一次側実装部312に形成された導体パターン3125(配線パターン)に接続されている。一方、一次側コイル形成部311の上面における一次側コイル3111の内周側の端部は、板厚方向の2層目のコイルに繋がり、その2層目のコイルの端部が一次側実装部312まで延びて一次側実装部312に形成された導体パターン3126(配線パターン)に接続されている。なお、一次側コイル3111の2層目のコイルは、一次側コイル形成部311の内部において渦状に形成されてもよい。また、一次側基板31として4層以上の多層基板を用いることで、一次側コイル3111のターン数を増やす構成にしてもよい。
【0014】
一次側コイル形成部311には、一次側コイル3111の内側において上下方向に貫通する貫通孔3112が形成されている。一次側コイル形成部311の外形は、一次側コイル形成部311に形成された一次側コイル3111の外形に合わせた円形状になっている。なお、一次側基板31は、上記の一次側コイル形成部311の代わりに、導体板からなる一次側コイルを有するものでもよい。その場合、一次側実装部312が設けられた基板に対して、導体板からなる一次側コイルが接合される構成となる。またその場合、導体板からなる一次側コイルが、一次側基板31の一部を構成するものとなる。また、一次側基板31は、上記の一次側コイル形成部311の代わりに、α巻き線からなる一次側コイルを有するものでもよい。その場合、一次側実装部312が設けられた基板に対して、α巻き線からなる一次側コイルが接合される構成となる。またその場合、α巻き線からなる一次側コイルが、一次側基板31の一部を構成するものとなる。
【0015】
一次側実装部312は上下方向から見て矩形板状に形成されている。一次側実装部312の前方側の辺に、一次側コイル形成部311が繋がって一体になっている。一次側実装部312の下面には、一つのFETモジュール3121(一次側電子部品)が実装される。FETモジュール3121(
図12では不図示)は、一次側回路としてブリッジ回路を構成する四つのFET3122(電解効果トランジスタ)及び回路基板(
図13~
図15参照)と、それらのブリッジ回路を内部に収容する直方体状の封止樹脂と、ブリッジ回路に接続されて封止樹脂の外部まで延びる複数の接続端子とを有する。FETモジュール3121は、一次側実装部312に形成されたスルーホールに複数の接続端子を一次側実装部312の下面側から挿通させて半田付けされることにより、一次側実装部312の下面に実装される。このように実装されたFETモジュール3121は、一次側実装部312に形成された導体パターン3125,3126(配線パターン)を介して一次側コイル3111に接続され(
図4参照)、FETモジュール3121に入力された直流電流を交流電流に変換して一次側コイル3111に出力する。
【0016】
一次側実装部312の上面には、一次側基板31を制御基板7に電気的に接続するための複数の接続ピン3123が上方に延びて取り付けられている。複数の接続ピン3123はそれぞれ、一次側実装部312に形成された配線パターンに接続され、当該配線パターンを介して一次側実装部312に実装されるFETモジュール3121に電気的に接続される。
【0017】
一次側実装部312には、一次側実装部312を上下方向に貫通する二つの固定用孔3124a及び一つの位置決め孔3124bが形成されている。二つの固定用孔3124aはそれぞれ、一次側基板31をケース2に固定するためのネジ(不図示)を通す孔であり、ケース2の第一載置領域21及び第二載置領域22に形成されたネジ孔211、221に対応している。二つの固定用孔3124aは一次側実装部312の左右端部側にそれぞれ配置されている。位置決め孔3124bは、第二載置領域22に形成された凸状突起222に対応しており、一次側実装部312の右前端部側に配置されている。
【0018】
図1、
図5~
図7、
図8に示すように、二次側基板32は、基板後方側に設けられた二次側コイル321と、基板前方側に設けられた二次側実装部322とを有する。二次側コイル321は、一枚の導体板によって形成されており、二次側実装部322は基板に形成されている。二次側コイル321は、各々が1ターンである一対の巻回部3211,3212を有している。二次側コイル321の軸方向は、板厚方向と一致している。一対の巻回部3211,3212は、上下方向から見て前方側が開放された略C字状をなしている。一対の巻回部3211,3212の中央部には、上下方向から見て円形状の開口3213,3214が形成されている。一対の巻回部3211,3212は、互いに軸方向に間隔をあけて同軸上に配置されており、各々の周方向一端部同士が繋がることで直列に接続されている。一方(上側)の巻回部3211の周方向他端部からは、第一引出部3215が延出されており、他方(下側)の巻回部3212の周方向他端部からは、第二引出部3216が延出されている。一対の巻回部3211,3212は、第一引出部3215及び第二引出部3216とは反対側の端部が互いに直列に接続されている。この接続部の付近からは、第三引出部3218が延出されている。第一引出部3215、第二引出部3216及び第三引出部3218はそれぞれ、二次側実装部322まで延びて二次側実装部322に形成された配線パターン(不図示)に接続されている。第一引出部3215、第二引出部3216及び第三引出部3218は何れも、本発明における「引出部」に相当する。なお、二次側コイル321は、基板に形成された導体パターンからなるものでもよい。その場合、二次側コイル321と二次側実装部322とを一枚の基板に形成してもよい。
また、二次側基板32は、上記の二次側コイル321の代わりに、α巻き線からなる二次側コイルを有するものでもよい。その場合、二次側実装部322が設けられた基板に対して、α巻き線からなる二次側コイルが接合される構成となる。またその場合、α巻き線からなる二次側コイルが、二次側基板32の一部を構成するものとなる。二次側コイル321については、後で詳述する。
【0019】
二次側実装部322は上下方向から見て矩形板状に形成されている。二次側実装部322の上面における後端部側に、二次側コイル321の第一引出部3215及び第二引出部3216が接続されており、二次側コイル321と二次側実装部322とが繋がって一体になっている。二次側実装部322の上面には、二つのFET3221(電解効果トランジスタ)と二つのダイオード3222と(何れも二次側電子部品)が実装されている。二つのFET3221及び二つのダイオード3222はそれぞれ、二次側実装部322に形成された配線パターンに接続され、これらの配線パターンと共に二次側回路(ブリッジ回路)を構成する。この二次側回路は、二次側コイル3211に接続され(
図4参照)、二次側コイル3211に流れる交流電流を直流電流に変換する整流回路である。二つのFET3221はブリッジ回路におけるロ―サイドの整流素子として使用され、二つのダイオード3222はブリッジ回路におけるハイサイドの整流素子として使用される(
図13参照)。この二次側回路では、FET3221とダイオード3222とを直列接続した組を二つ並列に接続しているため、高耐圧化により広範囲の入力電圧に対応可能である。また、これらの電子部品のいずれか一つにショートなどの故障が発生しても出力短絡を引き起こさないため、高い安全性を確保することができる。
【0020】
二次側実装部322の上面には、二次側基板32を制御基板7に電気的に接続するための複数の接続ピン3223が上方に延びて取り付けられている。複数の接続ピン3223一対の巻回部3211,3212は、第一引出部3215及び第二引出部3216とは反対側の端部が互いに直列に接続されている。この接続部の付近からは、第三引出部3218が延出されている。はそれぞれ、二次側実装部322に形成された配線パターンに接続され、当該配線パターンを介して二次側実装部322に実装される二つのFET3221及び二つのダイオード3222に電気的に接続されている。
【0021】
二次側実装部322には、二次側実装部322を上下方向に貫通する二つの固定用孔3224a及び一つの位置決め孔3224bが形成されている。二つの固定用孔3224aはそれぞれ、二次側基板32をケース2に固定するためのネジ(不図示)を通す孔であり、ケース2の第三載置領域23に形成された二つのネジ孔231に対応している。二つの固定用孔3224aは左右方向に間隔をあけて並んでいる。位置決め孔3224bは、第三載置領域23に形成された凸状突起232に対応しており、一次側実装部312の左端部に配置されている。また、二次側実装部322には、二次側実装部322を上下方向に貫通する一つの接続用孔3225が形成されている。接続用孔3225は、二次側実装部322における二次側コイル321と反対側の位置に形成されている。接続用孔3225は、二次側実装部322に形成された配線パターン(二次側回路)と平滑回路部5とを電気的に接続するためのバスバー(不図示)をネジ止め等により固定するための孔である。
【0022】
図1~
図3、
図5~
図7に示すように、封止樹脂33は、一次側基板31の一次側コイル311と二次側基板32の二次側コイル321とを封止している。一次側基板31及び二次側基板32は、互いに軸方向に対向して配置されている。具体的には、二次側コイル321の一対の巻回部3211,3212の間に一次側コイル形成部311が挿入されて配置された状態で、一次側コイル形成部311及び二次側コイル321が封止樹脂33により封止されている。この封止樹脂33は、例えばトランスファー成形により成形されたモールド樹脂であり、電気的な絶縁性を有する材料からなる。封止樹脂33を構成する樹脂は、一例として絶縁性及び熱伝導性を有する熱伝導性フィラーが添加された樹脂である。熱伝導性フィラーとしては、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。
【0023】
封止樹脂33は、一次側コイル形成部311及び二次側コイル321の全体を覆っている。前述したように、二次側コイル321は、一対の巻回部3211,3212と、二次側実装部322に接続された複数の引出部3215,3216,3218とを一体に有している。封止樹脂33は、一対の巻回部3211,3212を覆った環状被覆部331と、複数の引出部3215,3216,3218を覆った引出被覆部332,333,334とを有している。環状被覆部331の中央部には、円形の貫通孔336が形成されている。
【0024】
二次側コイル321の一対の巻回部3211,3212には、スペーサ部材36が装着されている。スペーサ部材36は、例えば射出成形によって製造されたものであり、樹脂によって構成されている。スペーサ部材36には、一次側コイル形成部311の内周部が差し込まれた一次側差込部361と、一対の巻回部3211,3212の内周部が差し込まれた一対の二次側差込部362とが、一次側基板31及び二次側基板32の板厚方向に並んで形成されている。
【0025】
このスペーサ部材36は、一次側基板31及び二次側基板32がトランスファー成形用の金型に装着される前に一次側コイル形成部311の内周部及び一対の巻回部3211,3212の内周部に装着される。このスペーサ部材36により、一次側コイル形成部311及び一対の巻回部3211,3212が互いに対向した状態で支持され、一対の巻回部3211,3212と一次側コイル形成部311との間の距離が一定に維持される。このスペーサ部材36は、一次側コイル形成部311及び二次側コイル321と共に、封止樹脂33により封止されている。封止樹脂33は、スペーサ部材36に対して上下両側に位置する部位が上下方向に突出した凸部337とされている。
【0026】
一次側実装部312は、一次側コイル形成部311側の一部が封止樹脂33に埋まっており、二次側実装部322は、二次側コイル321側の一部が封止樹脂33に埋まっている。一次側実装部312及び二次側実装部322において封止樹脂33の近傍の部位には、電子部品が実装されていない構成になっている。これらの部位は、トランスファー成形用の金型と接する部位である。なお、一次側実装部312及び二次側実装部322への電子部品の実装は、封止樹脂33のトランスファー成形の前に行われる。それにより、例えば電子部品の半田付けの作業が容易になる。上記の封止樹脂33が成形されることにより、一次側基板31と二次側基板32とが封止樹脂33を介して一体化されている。これにより、一次側基板31、二次側基板32及び封止樹脂33がアッセンブリ化されており、基板アッセンブリ35が構成されている。
【0027】
トランスコア34は、磁性材料からなるE型の第一コア部材341と、磁性材料からなるI型の第二コア部材342とを有する。第一コア部材341は、上下方向を板厚方向とする平板状の基部3411と、基部3411の下面中央から下方に延びる円柱状の挿通部3412と、基部3411の左右端部からそれぞれ下方に延びる二つの壁部3413とを有する。第二コア部材342は、上下方向を板厚方向とする平板状に形成されている。トランスコア34は、第一コア部材341における挿通部3412の下面及び左右の壁部3413の下面と、第二コア部材342の上面とを面接触させて組み合わせることにより構成される。
【0028】
このトランスコア34が基板アッセンブリ35に組み付けられ、トランス3が構成される。具体的には、前述したように同心状に配置された貫通孔3112及び開口3213,3214に対して第一コア部材341の挿通部3412が挿通され、一次側コイル形成部311、二次側コイル321及び封止樹脂33の左右方向の側方にそれぞれ第一コア部材341の左右の壁部3413が配置される。そして、第一コア部材341における挿通部3412の下面及び左右の壁部3413の下面と、第二コア部材342の上面とが面接触される。これにより、基板アッセンブリ35に対するトランスコア34の組み付け状態となる。この組み付け状態では、巻回部3212、第一封止樹脂331、一次側コイル形成部311、第二封止樹脂332及び巻回部3211が、第一コア部材341の基部3411と第二コア部材342との間に挟まれる。
【0029】
このように構成されるトランス3では、
図1~
図3に示すように、トランスコア34の第二コア部材342がケース2のコア載置凹部24内に上方から挿入されて載置される。第二コア部材342の板厚がコア載置凹部24の深さと略同じ寸法になっており、コア載置凹部24内に載置された第二コア部材342の上面とケース2の第二載置領域22をなす上面とが面一の状態となる。第二コア部材342の前後端部はそれぞれ内側にくびれた凹状になっており、それに対応してコア載置凹部24の前後壁が内側に凸状になっている。これらの凹凸の係合により、コア載置凹部24内に載置された第二コア部材342の左右方向の移動が規制されるようになっている。
【0030】
一次側実装部312の下面に実装されたFETモジュール3121の下面がケース2の第一載置領域21上に面接触するように、一次側基板31がケース2の載置面20に載置される。第一載置領域21に形成された二つの基板支持部212の上面は、一次側実装部312の下面に面接触し、二つの基板支持部212によっても一次側基板31が支持されるようになっている。このように載置された一次側基板31は、位置決め孔3214bに第二載置領域22の凸状突起222が挿入され、二つの固定用孔3124aにそれぞれ上方から挿入されたネジを、第一載置領域21及び第二載置領域22のネジ孔211、221に螺合させることにより、当該一次側基板31がケース2に固定される。
【0031】
二次側基板32は、二次側実装部322の下面がケース2の第三載置領域23上に面接触するように、ケース2の載置面20上に載置される。このように載置された二次側基板32は、位置決め孔3224bに第三載置領域23の凸状突起232が挿入され、二つの固定用孔3224aにそれぞれ上方から挿入されたネジを、第三載置領域23の二つのネジ孔231に螺合させることにより、当該二次側基板32がケース2に固定される。
【0032】
トランス3をケース2上に載置した後に、
図10に示すブラケット9によってトランスコア34がケース2に固定される。ブラケット9は、金属製の平板部材を折り曲げ加工等して形成されており、矩形状のベース部91と、ベース部91の左右端部から下方に延出された左右の側壁部92と、左右の側壁部92の下端部から左右方向の外方に延出された左右の固定部93と、ベース部91の内側に設けられた二つのコア押圧部94とを有する。左右の固定部93は、互いに前後方向にずれて配置されている。左右の固定部93には、上下方向に貫通したネジ挿通孔931が形成されている。
【0033】
二つのコア押圧部94はそれぞれ、ベース部91をコ字状に切り抜くことにより形成され、ベース部91の中央部から左右方向に斜め下方に延びる板状になっている。二つのコア押圧部94は、ベース部91と繋がる基端部を支点として上下方向に弾性変形可能な板バネになっている。
【0034】
上記のようにトランス3をケース2上に載置した後に、ブラケット9の左右の固定部93の下面が、コア載置凹部24の左右方向の両側でケース2の上面に面接触し、左右の固定部93のネジ挿通孔931とケース2に形成された左右二つのネジ孔241とが連通するように、ブラケット9が第一コア部材341上に載置される。このように載置されたブラケット9は、左右のネジ挿通孔931にそれぞれ上方から挿入されたネジを、ケース2の二つのネジ孔221へ螺合させることにより、当該ブラケット9がケース2に固定される。
【0035】
ブラケット9がケース2に固定されると、ベース部91がトランスコア34の上方に配置され、二つのコア押圧部94の先端部がそれぞれ第一コア部材341の上面に押し付けられて、二つのコア押圧部94がそれぞれ弾性変形する。これら二つのコア押圧部94の弾性力によって第一コア部材341が第二コア部材342押し付けられるとともに、第二コア部材342がケース2のコア載置凹部24に押し付けられることにより、トランスコア34がケース2に固定される。
【0036】
このようにケース2に固定されたトランス3では、
図1~
図3に示すように、ケース2の第一載置領域21の上方側に一次側基板31の一次側実装部312が配置される。一次側実装部312の下面に実装されたFETモジュール3121の下面が第一載置領域21上に面接触した状態で配置される。ケース2の第二載置領域22の上方側には、一次側コイル形成部311及び二次側コイル321を封止した封止樹脂33が配置される。封止樹脂33の下面が絶縁シート(不図示)を介して第二載置領域22上に面接触した状態で配置される。ケース2の第三載置領域23の上方側に二次側基板32の二次側実装部322が配置される。二次側実装部322の下面が絶縁シート(不図示)を介して第三載置領域23上に面接触した状態で配置される。なお、上記の絶縁シートの代わりに、熱伝導性を有するシートや熱伝導性グリースを用いる構成にしてもよい。
【0037】
図1に示すように、入力コネクタ4は、接続開口部を有するハウジング41と、ハウジング41内に設けられる複数の接続端子42とを有する。入力コネクタ4は、ケース2の後壁部の貫通孔にケース2の内側から挿通されて取り付けられ、一次側基板31の一次側実装部312が配置される第一載置領域21の近くに設けられる。ケース2に取り付けられた入力コネクタ4では、複数の接続端子42の端部側がハウジング41から突出してケース2の内側(前方)に延び、更にその先端側が上方に屈曲されて延びている。複数の接続端子42の当該先端側は、制御基板7に接続されるようになっている。
【0038】
平滑回路部5は、出力側チョークコイル51と、出力側コンデンサ52とを有する。平滑回路部5は、ケース2の載置面20における前端側に設けられる。出力側チョークコイル51は、二次側基板32の二次側実装部322の接続用孔3225を用いて固定されるバスバー(不図示)を介して二次側基板32の二次側回路に電気的に接続される。平滑回路部5は、二次側基板32の二次側回路から出力された電流の波形を平滑化するようになっている。出力コネクタ6は、ケース2の前端から前方に延びるように設けられ、平滑回路部5に電気的に接続されている(
図4参照)。
【0039】
図1、
図2及び
図11に示すように、制御基板7は、上下方向を板厚方向とする板状に形成されている。制御基板7の下面70には複数の制御用電子部品71が実装されている。複数の制御用電子部品71は、一次側基板31に実装されたFETモジュール3121、及び二次側基板32に実装された二つのFET3221の動作を制御する制御回路を構成する。制御基板7は、制御基板7の下面70がケース2の載置面20に対向するように、載置面20及び載置面20に配置されたトランス3の上方側に配置される。トランス3の上方側に配置された制御基板7には、一次側基板31の一次側実装部312に設けられた複数の接続ピン3123、二次側基板32の二次側実装部322に設けられた複数の接続ピン3223、及び入力コネクタ4の複数の接続端子42(
図1以外では不図示)がそれぞれ接続される。これらの接続により、入力コネクタ4、制御基板7、一次側基板31及び二次側基板32が電気的に接続される。複数の制御用電子部品71は、制御基板7の下面70において、トランス3と対向する領域701を除く領域に実装されている。これにより、ケース2の載置面20及びトランス3と制御基板7との間隔を小さく抑えることができ、電力変換装置1の薄型化を図ることができる。
【0040】
図1及び
図2に示すように、カバー8は、下方に開口する箱状に形成されている。カバー8は、ケース2の載置面20、載置面20に配置されたトランス3及び平滑回路部5、並びに、載置面20及びトランス3の上方側に配置された制御基板7を覆うように、ケース2に装着可能になっている。カバー8の後壁部には、カバー8をケース2に装着する際に入力コネクタ4との干渉を防ぐための切欠き81が形成されている。同様に、カバー8の前壁部にも、出力コネクタ6との干渉を防ぐための切欠き(不図示)が形成されている。
【0041】
図4に示すように、電力変換装置1では、所定の電圧の直流電流が、入力コネクタ4から制御基板7を通して一次側基板31のFETモジュール3121に入力されて交流電流に変換され、一次側コイル3111に出力される。一次側コイル3111に交流電流が流れると、電磁誘導によって二次側コイル321に交流電流が流れる。一次側コイル3111及び二次側コイル321のターン数が互いに異なることで、二次側コイル3211に流れる交流電流の電圧は、一次側コイル3111に流れる交流電流の電圧と異なる。例えば、二次側コイル321のターン数が一次側コイル3111のターン数よりも少ないと、二次側コイル321に流れる交流電流の電圧は、一次側コイル3111に流れる交流電流の電圧よりも低くなる。二次側コイル321に流れる交流電流は、二次側基板32のFET3221及びダイオード3222において直流電流に変換され、この直流電流の波形が平滑回路部5において平滑化される。平滑化された直流電流の電圧は、入力コネクタ4から入力された直流電流の電圧と異なる。平滑化された直流電流は出力コネクタ6から外部に出力される。
【0042】
上記のように電力変換装置1が動作する際には、一次側基板31の一次側コイル3111、FETモジュール3121、二次側基板32の二次側コイル321、FET3221及びダイオード3222、トランスコア34が発熱するが、これらの熱はトランス3を載置したケース2に逃がすことができる。特に、封止樹脂33が熱伝導性を有しているため、二次側コイル321の上側の巻回部3211や一次側コイル3111の発熱をケース2に伝達することができる。しかも、FETモジュール3121は一次側実装部312を介さずに第一載置領域21に直接面接触させているため、FETモジュール3121の熱を効率よくケース2に逃がすことができる。
【0043】
電力変換装置1では、トランス3における一次側基板31及び二次側基板32を、コイルのターン数や実装部品等が異なる複数種類の一次側及び二次側基板の中から選択して変更可能になっている。これらの選択及び変更は、入力電圧や出力電圧等の要求される仕様に応じて行い、様々な仕様に対応可能な電力変換装置1とすることができる。
図12に例示するように、一次側基板は、上述した一次側基板31を含む四種類の一次側基板の中から適宜選択することができる。これら四種類の一次側基板は、外形形状や寸法は互いに同じになっており、FETモジュール3121が実装されることも同じであるが、一次側コイル形成部311に形成される一次側コイルの構成が異なっている。
【0044】
第一の一次側基板31‐1は、上述した一次側基板31と同じ基板である。第二の一次側基板31‐2の一次側コイル3111‐2は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に2ターン(2周)のコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に2ターンのコイルが一次側コイル形成部311の内部及び下面に3層形成されて、合計8ターンのコイルになっている。一次側コイル3111‐2は、渦状の2ターンのコイルが板厚方向に4層繋がって形成された構成になっている。第三の一次側基板31‐3の一次側コイル3111‐3は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に3ターンのコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に2ターンの二つのコイルと3ターンのコイルとが一次側コイル形成部311の内部及び下面に3層形成されて、合計10ターンのコイルになっている。一次側コイル3111‐3は、渦状の3ターンの二つのコイルと2ターンの二つのコイルとが板厚方向に4層繋がって形成された構成になっている。第四の一次側基板31‐4の一次側コイル3111‐4は、一次側コイル形成部311の上面において渦状に4ターンのコイルが形成され、そのコイルに繋がって更に渦状に3ターンの三つのコイルが一次側コイル形成部311の内部及び下面に3層形成されて、合計13ターンのコイルになっている。一次側コイル3111‐4は、渦状の4ターンのコイルと3ターンの三つのコイルとが板厚方向に4層繋がって形成された構成になっている。
【0045】
二次側基板は、上述した二次側基板32を含む四種類の二次側基板の中から適宜選択することができる。これら四種類の二次側基板は、外形形状や寸法は互いに同じになっているが、二次側コイル321の構成や、二次側実装部322に実装される電子部品の種類が異なっている。第一の二次側基板32‐1は、上述した二次側基板32と同じ基板であり、2ターン構成の二次側コイルを有する。
【0046】
第二の二次側基板32‐2は、上述した二次側基板32‐1と比較して、二次側コイル321の構成だけが異なる。第二の二次側基板32‐2が有する二次側コイル321‐2では、一対の巻回部3211,3212が互いに並列に接続されて、合計1ターンのコイルになっている。このように1ターン構成の第二の二次側基板32‐2では、2ターン構成の第一の二次側基板32‐1と比較して、出力電圧を二分の一とすることができる。また、第二の二次側基板32‐2では、第一の二次側基板32‐1と同様に、広範囲の入力電圧に対応可能であり、かつ、高い安全性を確保することができる。
【0047】
第三の二次側基板32‐3は、上述した二次側基板32‐2と比較して、二次側実装部322に実装される電子部品の種類だけが異なる。第三の二次側基板32‐3の二次側実装部322の上面には、四つのFET3221が実装されている。
図14に示すように、これら四つのFET3221は、二次側回路としてブリッジ回路を構成している。四つのFET3221は、ブリッジ回路におけるロ―サイド及びハイサイドの両方の整流素子として使用される。第三の二次側基板32‐3では、二次側回路がFET3221だけを用いた同期整流型の回路となるため、第一及び第二の二次側基板32‐1,32‐2よりも高効率化を実現することができる。また、二次側回路が同期整流型の回路となることで、二次側を入力側とし、一次側を出力側とした双方向側のトランスを構成することができる。
【0048】
第四の二次側基板32‐4では、
図12及び
図15に示すように、二次側実装部322に構成される二次側回路がセンタータップ方式の回路になっている。第四の二次側基板32‐4が有する二次側コイル321‐1では、一対の巻回部3211,3212が互いに直列に接続されている。この接続部の付近からは、第三引出部3218が延出されている。第三引出部3218には、二次側回路の第一の出力端子3228が電気的に接続されている。二次側回路の第二の出力端子3229は、直列接続された一対の巻回部3211,3212の両端すなわち第一引出部3215及び第二引出部3216に電気的に接続されている。第一引出部3215及び第二引出部3216と第二の出力端子3229との間にはそれぞれ、二つのFET3221を並列接続したFETユニットが設けられている。第四の二次側基板32‐4では、二次側回路における電力損失を低減することができるため、高効率化を実現することができると共に、大電流出力にも対応することができる。なお、第四の二次側基板32‐4においては、各FETユニットにおけるFET3221の数を一つにすることができるため、また、二次側回路におけるFET3221をダイオードに変えることもできるため、第四の二次側基板32‐4の製造コストの削減を図ることができる。
【0049】
上記の二次側コイル321‐1,321‐2は、例えば銅板等の導体板がプレス成形されて製造されたものである。
図16及び
図18に示すように、直列タイプの二次側コイル321‐1では、一対の巻回部3211,3212は、互いに軸方向に間隔をあけて同軸上に配置されており、各々の周方向一端部同士が接続部CP1において一体に繋がっている。この接続部CP1においては、二次側コイル321‐1を構成する導電板が左右方向視でコ字状(略U字状)に曲げられている。上側の巻回部3211の他端部からは、右方側へ向けて第一引出部3215が延出されている。下側の巻回部3212の他端部からは、左方側へ向けて第二引出部3216が延出されている。つまり、第一引出部3215と第二引出部3216とは、各巻回部3211,3212の接線方向(ここでは左右方向)に沿って互いに逆向きに延出されている。
【0050】
二次側コイル321‐1を構成する導電板は、第二引出部3216の付近に設けられた曲げ部CP2において左右方向視でコ字状(略U字状)に曲げられている。第二引出部3216は、曲げ部CP2から後方側且つ左方側へ延びると共に、下方側へ屈曲した後に左方側へ延びている。また、上側の巻回部3211における接続部CP1の付近からは、前方側へ向けて第三引出部3218が延出されている。
【0051】
第一引出部3215、第二引出部3216及び第三引出部3218の各先端部の下面は、同一平面上に配置されており、二次側実装部322の上面に面接触して配置されている。第一引出部3215及び第二引出部3216は、二次側実装部322の上面に対して半田付け等の手段で接合され、二次側実装部322に形成された配線パターン(不図示)に対して電気的に接続される。なお、二次側実装部322の後端部には、
図6に示すように、二次側コイル321の一部(ここでは前端部の一部)を配置させた切欠部3227が形成されている。第三引出部3218は、二次側基板32‐1と32‐4とで、二次側実装部322の上面に対する接合状態(すなわち上記の配線パターンに対する電気的な接続の有無)を変更されている。具体的には、二次側基板32‐1では、第三引出部3218と上記の配線パターンとが電気的に非接続とされており、二次側基板32‐4では、第三引出部3218と上記の配線パターンとが電気的に接続されている。
【0052】
第一引出部3215、第二引出部3216及び第三引出部3218には、上記各先端部よりも基端部側において、クランク状の屈曲部BP1、BP2、BP3がそれぞれ形成されている。屈曲部BP1、BP2は、前後方向視でクランク状に屈曲しており、屈曲部BP3は、左右方向視でクランク状に屈曲している。これらの屈曲部BP1、BP2、BP3は、二次側実装部322の基板を一次側基板31の基板に対して同一平面上に配置させるために形成されている。
【0053】
図17及び
図19に示すように、並列タイプの二次側コイル321‐2は、外形形状や寸法が直列タイプの二次側コイル321-2と略同じになっており、一対の一対の巻回部3211,3212が、互いに軸方向に間隔をあけて同軸上に配置されている。これら一対の巻回部3211,3212は、各々の周方向一端部が接続部CP3において互いに接続されると共に、各々の周方向他端部が接続部CP4において互いに接続されている。これにより、一対の巻回部3211,3212が並列に接続されている。接続部CP3、CP4においては、二次側コイル321‐2を構成する導電板が左右方向視でコ字状(略U字状)に曲げられている。上側の巻回部3211の周方向両端部からは、第一引出部3215及び第二引出部3216が延出されている。第一引出部3215と第二引出部3216とは、左右方向において互いに逆向きに延出されている。
【0054】
二次側コイル321‐2においても、第一引出部3215及び第二引出部3216の各先端部の下面は、同一平面上に配置されており、二次側実装部322の上面に面接触している。第一引出部3215及び第二引出部3216は、二次側実装部322に形成された配線パターン(不図示)に対して電気的に接続される。また、二次側コイル321‐2においても、第一引出部3215及び第二引出部3216には、上記各先端部よりも基端部側に、クランク状の屈曲部BP1、BP2がそれぞれ形成されている。屈曲部BP1、BP2は、前後方向視でクランク状に屈曲している。これらの屈曲部BP1、BP2は、二次側コイル321‐1の場合と同様に、二次側実装部322の基板を一次側基板31の基板に対して同一平面上に配置させるために形成されている。
【0055】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る電力変換装置1では、入力コネクタ4に入力される直流電流がトランス3において異なる電圧の直流電流に変換される。変換された直流電流は、平滑回路部5において平滑化され、出力コネクタ6から外部に出力される。上記のトランス3は、一次側基板31と、二次側基板32と、封止樹脂33と、トランスコア34とによって構成されている。一次側基板31は、導体パターンからなる一次側コイル3111と、一次側電子部品(FETモジュール3121)が実装される一次側実装部312とを有している。二次側基板32は、導体板からなる二次側コイル321と、二次側電子部品(FET3221、ダイオード3222)が実装される二次側実装部322とを有している。
【0056】
一次側基板31及び二次側基板32は、一次側コイル3111及び二次側コイル321が互いに軸方向に対向して配置されて封止樹脂33により封止されている。封止樹脂33は、熱伝導性を有しており且つ一次側コイル3111及び二次側コイル321に対して隙間なく密着する。これにより、一次側コイル3111及び二次側コイル321から発生する熱を、封止樹脂33を介してケース2に効率良く伝達し、放熱することができる。よって、放熱性能を向上させることができる。
【0057】
しかも、本実施形態では、一次側基板31と二次側基板32とが封止樹脂33により一体化され、基板アッセンブリ35としてアッセンブリ化されている。このため、一次側基板31、二次側基板32及び封止樹脂33を一つの部品として取り扱うことができるので、製造管理が容易になる。
【0058】
また、本実施形態では、
図8及び
図12に示すように、一次側基板31の一次側コイル形成部311に、導体パターンからなる一次側コイル3111が形成されている。このような導体パターンからなる一次側コイル3111では、ターン数のバリエーションを増やすことが容易である。一方、二次側基板32の二次側コイル321は、
図9、
図12及び
図16に示すように、1枚の導体板がプレス成形されて製造されたものであり、一対の巻回部3211,3212を有している。一対の巻回部3211,3212は一次側基板31及び二次側基板32の板厚方向(上下方向)に対向しており、一対の巻回部3211,3212の間に一次側コイル形成部311が挿入された状態で、一次側コイル形成部311及び二次側コイル321が封止樹脂33により封止された構成となっている。これにより、二次側基板32の二次側実装部322と一次側基板31との上下方向の配置を揃え易くなる。その結果、例えば電力変換装置1の全体構成を上下方向に小型化し易くなる。
【0059】
また、本実施形態では、一次側基板31の一次側コイル形成部311及び二次側基板32の一対の巻回部3211,3212には、スペーサ部材36が装着されている。このスペーサ部材36は、一次側コイル形成部311及び一対の巻回部3211,3212を互いに対向した状態で支持しており、一次側コイル形成部311及び二次側コイル321と一緒に封止樹脂33により封止されている。このスペーサ部材36は、例えば一次側基板31及び二次側基板32がトランスファー成形用の金型に装着される前に一次側コイル形成部311及び一対の巻回部3211,3212に装着される。これにより、トランスファー成形時の樹脂注入圧によって一次側コイル形成部311と一対の巻回部3211,3212との距離がバラつくことが防止される。その結果、トランスファー成形を安定して行うことが可能となり、絶縁性や放熱性を安定させることができる。
【0060】
また、上記のスペーサ部材36には、一次側コイル形成部311の内周部が差し込まれた一次側差込部361と、一対の巻回部3211,3212の内周部が差し込まれた一対の二次側差込部362とが、一次側基板31と二次側基板32の板厚方向に並んで形成されている。このため、一次側コイル形成部311及び一対の巻回部3211,3212に対してスペーサ部材36を装着する際には、一次側コイル形成部311及び一対の巻回部3211,3212の各内周部を、各差込部361,362に差し込めばよいので、スペーサ36の装着作業が容易である。
【0061】
また、本実施形態では、二次側コイル321は、一対の巻回部3211,3212と、二次側実装部322に接続された複数の引出部3215,3216,3218とを一体に有している。これらの巻回部3211,3212及び引出部3215,3216,3218は封止樹脂33により封止されており、二次側コイル321の全体が封止樹脂33により封止されている。これにより、巻回部3211,3212のみならず、引出部3215,3216,3218から発生する熱を、封止樹脂33を介してケース2に効率良く伝達することができる。
【0062】
また、本実施形態では、一対の巻回部3211,3212を有する二次側コイル321は、1枚の導体板がプレス成形されて製造されたものである。このため、一対の巻回部(コイル部材)が結合されて二次側コイルが製造される場合と比較して、二次側コイルの導通抵抗を少なくすることができる。しかも、複数のコイル部材を結合するための結合工程が不要になるため、二次側コイルの製造が容易になる。
【0063】
また、本実施形態では、一対の巻回部3211,3212が直列に接続された二次側コイル321‐1(
図16及び
図18参照)と、一対の巻回部3211,3212が並列に接続された二次側コイル321‐2(
図17及び
図19参照)とが選択的に採用される。これらの二次側コイル3211,3212は、外径形状や寸法が互いに略同じになっている。これらの二次側コイル3211,3212の選択により、変換する電圧を容易に変更することができる。
【0064】
しかも、二次側コイル3211,3212においては、第一引出部3215と第二引出部3216とが、各巻回部3211,3212の接線方向(ここでは左右方向)に沿って互いに逆向きに延出されている。そして、第一引出部3215及び第二引出部3216が接続された二次側実装部322の後端部には、
図9に示すように、二次側コイル321の一部(ここでは前端部の一部)を配置させた切欠部3227が形成されている。これにより、二次側基板32の前後方向の寸法を縮小することができる。その結果、例えば電力変換装置1の全体構成を前後方向に小型化し易くなる。
【0065】
また、第一引出部3215及び第二引出部3216は、同一平面上に配置されており、何れも二次側実装部322の上面(片面)に接合されている。これにより、第一引出部3215及び第二引出部3216を半田付け等の手段で二次側実装部322に接合する際に、二次側実装部322の片面側だけで接合作業を行うことができる。その結果、接合作業が容易になる。
【0066】
さらに、直列タイプの二次側コイル321‐1には、センタータップ方式に対応する第三引出部3218が形成されている。この第三引出部3218の二次側実装部322への電気的な接続の有無を選択的に変更することにより、二次側基板32のバリエーションを容易に増やすことができる。
【0067】
しかも、第一引出部3215、第二引出部3216及び第三引出部3218には、二次側実装部322の上面(片面)に接合された先端部よりも基端部側に、クランク状の屈曲部BP1、BP2、BP3が形成されている。これらの屈曲部BP1、BP2、BP3の上下方向寸法を調整することにより、二次側実装部322の上下方向の配置を変更することができるので、二次側実装部322と一次側基板31との上下方向の配置を容易に揃えることができる。
【0068】
また、本実施形態では、
図12に示すように、一次側基板31及び二次側基板32はそれぞれ、一次側コイル3111及び二次側コイル321のターン数及び実装される電子部品の種類が異なり且つ基板外形寸法が同じである複数種類の基板31‐1,31‐2,31‐3,31‐4,32‐1,32‐2,32‐3,32‐4の中から選択可能となっている。そして、選択された一次側基板31及び二次側基板32が封止樹脂33により一体化され且つトランスコア34に組付けられてケース2に配置される。これにより、多様な仕様の電力変換装置1を容易に提供することができる。
【0069】
なお、上記第1実施形態では、一次側コイル3111が一次側基板31の一次側コイル形成部311に形成された導体パターンからなり、二次側コイル321が一対の巻回部3211,3212を有する導体板からなる構成にしたが、これに限るものではない。例えば
図20に示される第1変形例又は
図21に示される第2変形例のように構成してもよい。
【0070】
図20に示される第1変形例では、一次側基板31が導体板からなる一次側コイル311を有している。この一次側コイル311は、一例として、上記実施形態における二次側コイル321-1(
図16参照)と同様の構成である。この一次側コイル311は、二次側コイル321-1の一対の巻回部3211,3212に相当する一対の巻回部3111,3112を有している。この一次側コイル311は、一次側実装部312に形成された配線パターンに電気的に接続されている。二次側基板32は、上記実施形態と同様に導体板からなる二次側コイル321を有している。この二次側コイル321は、一例として、並列タイプの二次側コイル321-2とされている。この第1変形例では、導体板からなる一次側コイル311と導体板からなる二次側コイル321とが互いに軸方向に対向して配置される。その状態で、一次側コイル311及び二次側コイル321が封止樹脂33(
図20では図示省略)により封止される。この第1変形例においても、一次側コイル311及び二次側コイル321から発生する熱を封止樹脂33を介して効率良く放熱することができ、放熱性能を向上させることができる。
【0071】
なお、
図20では、一次側コイル311が上側で二次側コイル321が下側に並んで配置される例が図示されているが、一次側コイル311と二次側コイル321とが互いに嵌め合った状態で配置される構成にしてもよい。すなわち、一次側コイル311の巻回部3111,3112の間に二次側コイル321の巻回部3211が配置される構成にしてもよいし、或いは二次側コイル321の巻回部3211,3212の間に一次側コイル311の巻回部3111が配置される構成にしてもよい。そのように配置する方が特性的及び上下方向のスペース的に有利である。
【0072】
図21に示される第2変形例では、一次側基板31は、上記実施形態における一次側基板31と同様の構成である。二次側基板32は、導体パターンからなる二次側コイル321を有している。この二次側基板32は、基板後方側に設けられた二次側コイル形成部321と、基板前方側に設けられた二次側実装部322とを有している。二次側コイル形成部321及び二次側実装部322は一枚の基板に形成されている。二次側コイル形成部321には、帯状の導体パターンからなる二次側コイル3211が形成されている。二次側コイル3211は、二次側コイル形成部321の上面に形成された1ターン(1周)のコイルと、二次側コイル形成部321の下面に形成された1ターンのコイルとを有し、それらのコイルが並列に接続された構成となっている。二次側コイル3211の両端部はそれぞれ、二次側実装部322まで延びて二次側実装部322に形成された配線パターン(不図示)に接続されている。なお、二次側コイル3211は、二次側コイル形成部321の下面や内部に形成されてもよい。
【0073】
二次側コイル形成部321には、二次側コイル3211の内側において上下方向に貫通する貫通孔3212が形成されている。二次側コイル形成部321の外形は、二次側コイル形成部321に形成された二次側コイル3211の外形に合わせた円形状になっている。なお、
図21に示される例では、二次側実装部322に三つの固定用孔3224が形成されている。これらの固定用孔3224に対応して、ケース2の第三載置領域23に三つのネジ孔231が形成される。この第2変形例では、導体パターンからなる一次側コイル3111と導体パターンからなる二次側コイル3211とが互いに軸方向に対向して配置される。その状態で、一次側コイル3111及び二次側コイル3211が封止樹脂33(
図21では図示省略)により封止される。この第2変形例においても、一次側コイル3111及び二次側コイル3211から発生する熱を封止樹脂33を介して効率良く放熱することができ、放熱性能を向上させることができる。なお、一次側基板31及び二次側基板32として多層基板を用いることで、一次側コイル3111及び二次側コイル3211のターン数を増やす構成にしてもよい。
【0074】
また、上記第1実施形態では、スペーサ部材36には、一次側コイル形成部311の内周部が差し込まれた一次側差込部361と、一対の巻回部3211,3212の内周部が差し込まれた一対の二次側差込部362とが、一次側基板31及び二次側基板32の板厚方向に並んで形成された構成にしたが、これに限るものではない。例えばスペーサ部材36が一対の二次側差込部362を有しない構成にしてもよい。その場合、例えばスペーサ部材36は、一方の巻回部3211と一次側コイル形成部311との間に挟まる部分と、他方の巻回部3212との間に挟まる部分とを有する構成になる。
【0075】
また、上記第1実施形態では、二次側コイル321の一対の巻回部3211,3212と複数の引出部3215,3216,3218とが封止樹脂33により封止された構成にしたが、これに限るものではない。例えば複数の引出部3215,3216,3218のうちの全部又は一部が封止樹脂33により封止されない構成にしてもよい。
【0076】
次に、
図22~
図30を参照して本発明の第2の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と基本的に同様の構成及び作用については、第1実施形態と同符号を付与しその説明を省略する。
【0077】
図22には、本発明の第2実施形態に係る電力変換装置が備える一次側基板31、二次側基板32、封止樹脂33、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38が斜視図にて示されている。
図23には、
図22に示される構成が平面図にて示されている。本実施形態において、一次側基板31、二次側基板32及び封止樹脂33は、第1実施形態と基本的に同様の構成とされている。一次側実装部312は、一次側コイル形成部311側の一部が封止樹脂33に埋まっており、二次側実装部322は、二次側コイル321側の一部が封止樹脂33に埋まっている。一次側緩衝部材37は、一次側基板31に実装され、封止樹脂33の端部(ここでは後端部33R)に沿って延在している。二次側緩衝部材38は、二次側基板32に実装され、封止樹脂33の端部(ここでは前端部33F)に沿って延在している。一次側緩衝部材37は、一次側基板31の側端面(ここでは
図29に示される一次側実装部312の前端面312F)まで延在しており、二次側緩衝部材38は、二次側基板32の側端面(ここでは
図30に示される二次側実装部322の後端面322R)まで延在している。一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38は、樹脂によって構成されている。一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38を構成する樹脂材料としては、例えば熱可塑性エラストマー(TPE)、ナイロン(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が挙げられる。
【0078】
図22及び
図23に示されるように、一次側緩衝部材37は、封止樹脂33の後端部33Rと一次側実装部312の上面312Tとの間に介在している。一次側緩衝部材37は、封止樹脂33の一次側実装部312側の後端部33Rに沿って延在しており、上下方向から見て前方側が開放された略C字状(略コ字状)をなしている。二次側緩衝部材38は、封止樹脂33の前端部33Fと二次側実装部322の上面322Tとの間に介在している。二次側緩衝部材38は、封止樹脂33の二次側実装部322側の前端部33Fに沿って延在しており、上下方向から見て後方側が開放された略C字状(略コ字状)をなしている。
【0079】
図24及び
図25に示されるように、一次側緩衝部材37は、左右方向を長手とする長尺な長辺部371と、長辺部371の左右方向両端から前方側へ延出された左右の短辺部372と、左右の短辺部372の先端から下方側へ延出された左右の端面延出部373と、長辺部371の左右方向両端側から下方側へ円柱状に突出した左右の位置決め凸部375とを有している。長辺部371及び左右の短辺部372は、各々の下面が一次側実装部312の上面312Tに密着するように平面になっている。左右の位置決め凸部375は、一次側実装部312に形成された図示しない貫通孔に嵌合するようになっている。
【0080】
図26及び
図27に示されるように、二次側緩衝部材38は、左右方向を長手とする長尺な長辺部381と、長辺部381の左右方向両端部から後方側へ延出された左右の短辺部382と、左右の短辺部382の先端から下方側へ延出された左右の端面延出部383と、左右の短辺部382の先端側から左右方向両側へ突出した左右の突片384と、左右の突片384の下面から下方側へ円柱状に突出した左右の位置決め凸部385とを有している。長辺部381、左右の短辺部382及び左右の突片384は、各々の下面が二次側実装部322の上面322Tに密着するように平面になっている。左右の位置決め凸部385は、二次側実装部322に形成された図示しない貫通孔に嵌合するようになっている。長辺部381の左右方向中間部には、前方側へ突出した突出部3811が形成されている。この突出部3811は、上下方向から見て後方側が開放された略C字状(略コ字状)をなしており、封止樹脂33の引出被覆部334と二次側実装部322の上面322Tとの間に介在している。
【0081】
図22及び
図23に示されるように、一次側緩衝部材37は、上下方向から見て封止樹脂33の後端部33Rから後方側及び左右方向両側へ張り出した張出部37Pを有している。同様に、二次側緩衝部材38は、上下方向から見て封止樹脂33の前端部33Fから前方側及び左右方向両側へ張り出した張出部38Pを有している。一次側緩衝部材37の張出部37Pは、上下方向から見て封止樹脂33から露出した部分であり、二次側緩衝部材38の張出部38Pは、上下方向から見て封止樹脂33から露出した部分である。
【0082】
一次側緩衝部材37の張出部37Pは、長辺部371の略後半部、左側の短辺部372の略左半部、及び右側の短辺部372の略右半部によって構成されている。張出部37Pは、上下方向から見て外側(後端側及び左右端側)の上下方向の厚みが段付き状に薄くなっている(
図28参照)。この厚みが薄い外縁部(薄厚部)には、一次側実装部312とは反対側(上方側)へ突出した突条376が形成されている。この突条376は、
図24及び
図25に示されるように、一次側緩衝部材37の延在方向に沿って延在している。
【0083】
二次側緩衝部材38の張出部38Pは、長辺部381の略前半部、左側の短辺部382の略左半部、及び右側の短辺部382の略右半部によって構成されている。張出部38Pは、上下方向から見て外側(前端側及び左右端側)の上下方向の厚みが段付き状に薄くなっている。この厚みが薄い外縁部(薄厚部)には、二次側実装部322とは反対側(上方側)へ突出した突条386が形成されている。この突条386は、
図26及び
図27に示されるように、二次側緩衝部材38の延在方向に沿って延在している。
【0084】
一次側緩衝部材37の左右の端面延出部373は、左右の短辺部372の先端(すなわち一次側緩衝部材37の延在方向両端)から、一次側実装部312の前端面312F側へ延びており、封止樹脂33と前端面312Fとの間に介在している。左右の端面延出部373は、左右方向外側の略半部が封止樹脂33の外側に露出している。左右の端面延出部373における前端面312Fとは反対側の面は、傾斜面373Sである。この傾斜面373Sは、各端面延出部373の先端側(下端側)へ向かうほど前端面312Fから離れるように傾斜している。
【0085】
二次側緩衝部材38の左右の端面延出部383は、左右の短辺部382の先端すなわち二次側緩衝部材38の延在方向両端から二次側実装部322の後端面322R側へ延びており、封止樹脂33と後端面322Rとの間に介在している。左右の端面延出部383は、左右方向外側の略半部が封止樹脂33の外側に露出している。左右の端面延出部383における後端面322Rとは反対側の面は、傾斜面383Sである。この傾斜面383Sは、各端面延出部383の先端側(下端側)へ向かうほど後端面322Rから離れるように傾斜している。
【0086】
本実施形態において、封止樹脂33がトランスファー成型によって成形される際には、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38が一次側実装部312及び二次側実装部322に実装された一次側基板31及び二次側基板32がトランスファー成形用の下型LM(
図28~
図30参照)に装着される。一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38は、位置決め凸部375,385が一次側実装部312及び二次側実装部322に形成された貫通孔に嵌合されることで一次側実装部312及び二次側実装部322に位置決めされて保持される。
【0087】
下型LMに一次側基板31及び二次側基板32が装着された状態では、下型LMの上面に一次側実装部312及び二次側実装部322の下面312B,322Bが接触する。この状態でトランスファー成形用の金型が閉じられると、該金型の上型UMと下型LMとの間に一次側基板31及び二次側基板32が挟まれる(
図28~
図30図示状態)。このように金型が閉じられた状態では、
図28に示されるように、一次側緩衝部材37の張出部37Pが上型UMと下型LMとの間に挟持される。これにより、張出部37Pの一部(
図28に二点鎖線で示される部分)が、
図28に実線で示されるように一次側実装部312側へ潰れ、一次側緩衝部材37が一次側実装部312の上面312Tに強く密着される。なお、
図28においてESは、上型UMに形成された電子部品逃がし空間である。また、図示は省略するが、上記のように金型が閉じられた状態では、二次側緩衝部材38の張出部38Pが上型UMと下型LMとの間に挟持される。これにより、張出部38Pの一部が二次側実装部322側へ潰れ、二次側緩衝部材38が二次側実装部322の表面322Tに強く密着される。
【0088】
上記のように一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38の張出部37P,38Pが上型UMと下型LMとの間で潰れる(変形する)ことにより、一次側実装部312及び二次側実装部322に加わる圧力が緩和される。その結果、一次側実装部312及び二次側実装部322のパターンや絶縁層の損傷が防止される。また、一次側実装部312及び二次側実装部322の基板の厚みに製造誤差がある場合でも、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38の変形によって上記の製造誤差が吸収されるので、一次側実装部312及び二次側実装部322と上型UM又は下型LMとの間に隙間が生じることが防止される。
【0089】
また、本実施形態では、張出部37P,38Pの外縁部に、各実装部312,322とは反対側へ突出した突条376,386が形成されており、これらの突条376,386が上型UMによって押し潰される。これらの突条376,386を含む張出部37P,38Pの一部が締め代となることにより、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38を各実装部312,322に良好に密着させることができる。その結果、各実装部312,322と上型UM又は下型LMとの間に隙間が生じることが効果的に防止される。
【0090】
さらに、本実施形態では、一次側緩衝部材37の延在方向両端部には、一次側実装部312の前端面312F側へ延出され、封止樹脂33と前端面312Fとの間に介在する端面延出部373が設けられている。同様に、二次側緩衝部材38の延在方向両端部には、二次側実装部322の後端面322R側へ延出され、封止樹脂33と後端面322Rとの間に介在する端面延出部383が設けられている。これらの端面延出部373,383は、上記のように金型が閉じられた状態では、
図29及び
図30に示されるように前端面312F及び後端面322Rに押し当てられる。これにより、前端面312F及び後端面322Rと上型UMとの間に隙間が生じることが防止される。なお、
図29及び
図30においてC1,C2は、端面延出部373,383を上型UMと下型LMとの間に噛み込むことを防止するための噛み込み防止クリアランスである。
【0091】
しかも、本実施形態では、端面延出部373,383における前端面312F及び後端面322Rとは反対側の面は、端面延出部373,383の先端側(下端側)へ向かうほど前端面312F及び後端面322Rから離れるように傾斜した傾斜面373S,383Sである。このため、上記のように金型が閉じられた状態では、
図29及び
図30に示されるように、上型UMに設けられた傾斜面(符号省略)が上記の傾斜面373S,383Sに押し当てられる。これにより、端面延出部373の一部(
図29に二点鎖線で示される部分)が、
図29に実線で示されるように一次側実装部312の前端面312F側へ潰れると共に、端面延出部383の一部(
図30に二点鎖線で示される部分)が、
図30に実線で示されるように二次側実装部322の後端面322R側へ潰れる。その結果、端面延出部373が一次側実装部312の前端面312Fに強く密着されると共に、端面延出部383の一部が二次側実装部322の後端面322Rに強く密着される。これにより、前端面312F及び後端面322Rと上型UMとの間に隙間が生じることが効果的に防止される。
【0092】
上記のように金型が閉じられた後、金型のキャビティ内に封止樹脂33の樹脂材料が注入され、封止樹脂33が成形される。この樹脂材料の注入の際には、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38が、一次側実装部312及び二次側実装部322の各上面312T,322Tと、前端面312F及び後端面322Rとに強く密着されることにより、各実装部312,322に実装された電子部品側に上記の樹脂材料が漏れることが防止される。特に、封止樹脂33の樹脂材料が熱硬化である場合、樹脂の流れが良いため、上記の漏れ防止効果が有効となる。
【0093】
なお、上記第2実施形態では、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38が各実装部312,322の上面312T,322Tと封止樹脂33との間に介在される構成にしたが、これに限るものではない。一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38が各実装部312,322の下面312B,322Bと封止樹脂33との間に介在される構成にしてもよい。
【0094】
また、上記第2実施形態では、端面延出部373,383における前端面312F及び後端面322Rとは反対側の面が傾斜面373S,383Sである構成にしたが、これに限るものではない。端面延出部373,383における前端面312F及び後端面322Rとは反対側の面が、前端面312F及び後端面322Rと平行に形成される構成にしてもよい。
【0095】
また、上記第2実施形態では、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38の延在方向両端部に端面延出部373,383が設けられた構成にしたが、これに限らず、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38が端面延出部373,383を有しない構成にしてもよい。
【0096】
また、上記第2実施形態では、一次側緩衝部材37及び二次側緩衝部材38の張出部37P,38Pに突条376,386が形成された構成にしたが、これに限らず、張出部37P,38Pに突条376,386が形成されない構成にしてもよい。
【0097】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記各実施形態に限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0098】
1 電力変換装置
31 一次側基板
311 一次側コイル形成部
3111 一次側コイル
312 一次側実装部
312R 後端面(側端面)
3121 FETモジュール(一次側電子部品)
32 二次側基板
321 二次側コイル
3211,3212 巻回部
3215,3216,3218 引出部
322 二次側実装部
322F 前端面(側端面)
3221 FET(二次側電子部品)
3222 ダイオード(二次側電子部品)
36 スペーサ部材
361 一次側差込部
362 二次側差込部
37 一次側緩衝部材
38 二次側緩衝部材