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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022012507
(43)【公開日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ふかし枠取付構造および建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/56 20060101AFI20220107BHJP
   E06B 1/18 20060101ALI20220107BHJP
   E06B 1/62 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
E06B1/56 A
E06B1/18 F
E06B1/62 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020114379
(22)【出願日】2020-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀江 ユカリ
(72)【発明者】
【氏名】小俣 貴寛
(72)【発明者】
【氏名】荒川 哲也
【テーマコード(参考)】
2E011
【Fターム(参考)】
2E011JA02
2E011KA02
2E011KB03
2E011KC07
2E011KD24
2E011KE03
2E011KE10
2E011KF01
2E011KH01
2E011LB02
2E011LB03
2E011LC01
2E011LD01
2E011LD07
2E011LE02
2E011LF01
2E011LF04
(57)【要約】
【課題】施工が容易であり意匠性に優れ、十分な強度を有するふかし枠取付構造。
【解決手段】ふかし枠取付構造10は、躯体14の開口部14aに設けられた第1枠である開口枠16に対して、室内側に増設枠21を設ける際にふかし枠22を取り付けるふかし枠取付構造であって、開口枠16において下方の横材となる開口下枠26には、枠内側見込み面から室内に延在するように連結具24が取り付けられ、該連結具24にはふかし枠22において下方の横材となるふかし下枠38が固定されている。連結具24は、開口枠16に固定される第1連結具60と、ふかし枠22に固定される第2連結具62とを有する。第2連結具62は見込方向に長い長孔74aを有し、第1連結具60は長孔74aに対応する取付孔66aを有する。第1連結具60と第2連結具62とは、長孔74aを通り取付孔66aに螺合するビスB4で固定される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体の開口部に設けられた開口枠である第1枠に対して、室内側に新たな開口枠である第2枠を設ける際にふかし枠を取り付けるふかし枠取付構造であって、
第1枠において下方の横材となる第1下枠には、枠内側見込み面から室内に延在するように連結具が取り付けられ、該連結具にはふかし枠において下方の横材となるふかし下枠が固定されていることを特徴とするふかし枠取付構造。
【請求項2】
前記第1下枠に沿って設けられる下方額縁を備え、
前記連結具は、前記下方額縁に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のふかし枠取付構造。
【請求項3】
前記下方額縁は前記開口部の四周に設けられる額縁の下方部であり、
前記ふかし枠は、前記ふかし下枠の両端から上方に延在して前記額縁に固定される一対のふかし縦枠を備え、
前記ふかし下枠と前記ふかし縦枠との間がビスを螺合することによって互いに固定されていることを特徴とする請求項2に記載のふかし枠取付構造。
【請求項4】
前記連結具は、
前記第1枠に固定される第1連結具と、
前記ふかし枠に固定される第2連結具と、
を備え、
前記第1連結具および前記第2連結具のうち一方は、見込方向に長い長孔を有し、他方は前記長孔に対応する丸孔を有し、
前記第1連結具と前記第2連結具とは、前記長孔を通り前記丸孔に螺合するビスによって固定されることを特徴とする請求項2または3に記載のふかし枠取付構造。
【請求項5】
前記第1連結具と前記第2連結具とがビスによって固定される部分は、前記下方額縁から離間していることを特徴とする請求項4に記載のふかし枠取付構造。
【請求項6】
前記ふかし下枠は、
前記下方額縁の枠内側見込面に当接する上面当接部と、
前記下方額縁の室内側見付面に当接する側面当接部と、
を備えることを特徴とする請求項2~5のいずれか1項に記載のふかし枠取付構造。
【請求項7】
前記連結具は、前記ふかし下枠の枠外側見込面を支持する下方支持部を備えることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のふかし枠取付構造。
【請求項8】
前記ふかし下枠の両端から上方に延在する一対のふかし縦枠と、
前記ふかし枠において上方の横材となるふかし上枠と、
前記ふかし下枠、前記ふかし上枠および前記ふかし縦枠の少なくとも1つについて室内側見付面および枠外側見込面を覆うふかし枠化粧板と、
を備え、
前記ふかし枠化粧板は、
前記室内側見付面から前記枠外側見込面の一部に亘って覆う室内側部分と、
前記室内側部分からさらに室外側に延在して前記枠外側見込面を覆う室外側延在部分と、
を備え、
前記室外側延在部分は、前記室内側部分から折り取り可能であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載のふかし枠取付構造。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載のふかし枠取付構造と、
前記ふかし枠に取り付けられる障子と、
を有することを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、躯体の開口部に設けられた開口枠である第1枠に対して、室内側に新たな開口枠である第2枠を設ける際にふかし枠を取り付けるふかし枠取付構造および建具に関する。
【背景技術】
【0002】
開口枠に設けられた既存の障子に対して、さらに別の新たな障子を設ける際に、取付のための見込み寸法が足りない場合には、既存の額縁に対してふかし枠を設けて取付スペースを確保するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ふかし枠は、例えば躯体の開口枠、および該開口枠に沿って設けられた額縁に対して取り付けられるが、それだけでは強度的に不十分な場合もありふかし枠を下から支える補強角パイプ、および該補強角パイプを下から支える補強ブラケットが付加されることがある。補強角パイプおよび補強ブラケットは躯体に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許5085884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような補強角パイプおよび補強ブラケットを設けることは施工に手間がかかるとともに意匠性の観点からも好ましくない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、施工が容易であり意匠性に優れ、しかも十分な強度を有するふかし枠取付構造および建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるふかし枠取付構造は、躯体の開口部に設けられた開口枠である第1枠に対して、室内側に新たな開口枠である第2枠を設ける際にふかし枠を取り付けるふかし枠取付構造であって、第1枠において下方の横材となる第1下枠には、枠内側見込み面から室内に延在するように連結具が取り付けられ、該連結具にはふかし枠において下方の横材となるふかし下枠が固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ふかし下枠を下方から支持する別途の補強角パイプおよび補強ブラケット等が不要であり、施工が容易である。また、連結具は十分に小さく構成可能であって目立たないため意匠性に優れる。さらに、ふかし下枠は連結具によって第1下枠に固定されており、障子の自重やその他の外力に対して十分な強度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る実施形態であるふかし枠取付構造および該ふかし枠取付構造を有する建具の斜視図である。
図2】建具の一部断面斜視図である。
図3】建具の縦断面図である。
図4】建具の横断面図である。
図5】ふかし枠取付構造の分解斜視図である。
図6】縦化粧板を示す図であり、(a)は縦化粧板の全体の斜視図であり、(b)は室外側延在部分を折り取った状態の縦化粧板の斜視図である。
図7】連結具およびその周辺部材の分解斜視図である。
図8】連結具およびその周辺部材の拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかるふかし枠取付構造および建具の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態であるふかし枠取付構造10および該ふかし枠取付構造10を有する建具12の斜視図である。図2は、建具12の一部断面斜視図である。図1図2では増設枠21および障子等を省略している。図3は、建具12の縦断面図である。図4は、建具12の横断面図である。図4では、連結具24を覆う一部の部品を省略している。
【0012】
本出願において、見込み方向とは建具12の室内外方向、つまり室内側から室外側に向かう方向又はその逆方向をいい、見込み面とは見込み方向に沿って延在する面をいう。見付け方向とは見込み方向に直交する方向であり、上下方向に長尺なふかし縦枠42a,42b等の場合はその長手方向に直交する左右方向をいい、左右方向に長尺なふかし下枠38等の場合はその長手方向に直交する上下方向をいう。見付面とは見付け方向に沿った面をいう。枠状部材の内側とは、例えば開口枠16の枠内部分をいう。枠状部材の外側とは、例えば開口枠16の建物躯体に固定される枠外部分をいう。また、枠状部材の外側から内側に向かう方向を枠内方向といい、枠状部材の内側から外側に向かう方向を枠外方向という。
【0013】
本出願において、ビス類については、特に区別しない場合には「ビスB」と記す。また、ビス類が取り付けられる部分について、枠体とともに押し出し成形される断面C字形状部分を「ビスホール」と呼び、板材が削孔されているものを「取付孔」と呼んで区別する。ビス類が挿入される「取付孔」は、特に断りのない限り丸孔である。
【0014】
まず、建具12の概要について図1図4を参照しながら説明する。建具12は、躯体14の開口部14aに設けられる第1枠である開口枠16と、開口枠16に設けられる既存の外窓である障子18a,18b(図3参照)と、開口枠16に沿って設けられ室内側に突出する額縁20と、増設される内窓である障子23a,23bを支持する増設枠(第2枠)21と、該増設枠21を設けるスペースを確保するためのふかし枠22と、開口枠16とふかし枠22とを固定する連結具24とを有する。このうち、ふかし枠取付構造10は、開口枠16、額縁20、ふかし枠22および連結具24に相当する。
【0015】
増設枠21は、開口枠16に対して室内側に設けられる新たな開口枠である。額縁20は、額縁は既存の外窓用に設けられたもので、内窓を設ける以前に既に躯体14に設けられている。ふかし枠22は、既存の額縁20では内窓を設けるための見込み寸法が十分でない場合に、スペースを確保する目的で取り付けられる。
【0016】
躯体14は、例えば建物の内装壁である。開口枠16は、開口部14aの下方部における横材である開口下枠(第1下枠)26と、開口部14aの上方部における横材である開口上枠28と、開口部14aの両端で上下方向に延在する開口縦枠30a,30bとを有する。開口下枠26、開口上枠28および開口縦枠30a,30bは、例えばアルミニウム合金であって、矩形枠を形成している。
【0017】
開口下枠26は枠内側見込面に2本のレール26a,26bを備える。開口上枠28は枠内側見込面に2本のレール28a,28bを備える。障子18a,18bは引き戸である。障子18aはレール26a,28aにガイドされ、障子188bはレール26b,28bにガイドされて互いに引き違い動作が可能となっているが、これ以外の形態、例えば障子18a,18bのいずれか一方が嵌め殺しの片引き窓構造としてもよい。
【0018】
開口縦枠30aは、障子18aの戸先框18aaが当接する当接材である。開口縦枠30bは、障子18bの戸先框18baが当接する当接材である。開口下枠26の室内側面上端には室内側へ向かって突出する突出片26cが形成されている。障子18aと障子18bとは召合せ框18abと召合せ框18bbとの部分が召し合わせ構造になっている。図4の符号31はクレセントである。
【0019】
額縁20は、開口部14aの下方部におる横材である下方額縁32と、開口部14aの上方部における横材である上方額縁34と、開口部14aの両端で上下方向に延在する縦額縁36a,36bとを有する。下方額縁32、上方額縁34および縦額縁36a,36bは、例えば中実の木材であって、矩形枠を形成している。下方額縁32の枠内側見込面32aの室外側略半分は、開口下枠26の突出片26cによって覆われている。下方額縁32の枠内側見込面32aと突出片26cとは少なくとも一部が当接している(図8参照)。
【0020】
ふかし枠22は、開口部14aの下方部における横材であるふかし下枠38と、開口部14aの上方部における横材であるふかし上枠40と、開口部14aの両端で上下方向に延在するふかし縦枠42a,42bとを有する。ふかし下枠38、ふかし上枠40およびふかし縦枠42a,42bは、例えばアルミニウム合金であって、矩形枠を形成している。
【0021】
増設枠21は、開口部14aの下方部における横材である増設下枠44と、開口部14aの上方部における横材である増設上枠46と、開口部14aの両端で上下方向に延在する増設縦枠47a,47bとを有する。増設下枠44、増設上枠46および増設縦枠47a,47bは、例えばアルミニウム合金であって、矩形枠を形成している。増設下枠44の枠内側見込面には2本のレール44a,44bが設けられている。増設上枠46の枠内側見込面には2本のレール46a,46bが設けられている。
【0022】
障子23a,23bは引き戸である。障子23aはレール44a,46aにガイドされ、障子23bはレール44b,46bにガイドされて互いに引き違い動作が可能となっているが、これ以外の形態、例えば障子23a,23bのいずれか一方が嵌め殺しの片引き窓構造としてもよい。
【0023】
ふかし縦枠42aは、障子23aの戸先框23aaが当接する当接材である。ふかし縦枠42bは、障子23bの戸先框23baが当接する当接材である。障子23aと障子23bとは召合せ框23abと召合せ框23bbとの部分が召し合わせ構造になっている。図4の符号47はクレセントである。
【0024】
図5は、ふかし枠取付構造10の分解斜視図である。図5では、ふかし枠取付構造10の上方部分については省略している。図5に示すように、ふかし下枠38は、矩形筒体48と、該矩形筒体48から室外側に突出する突出片(上面当接部)50とを有する。矩形筒体48の室内側見付面48aには、中央寄りの2つの取付孔48bと、該取付孔48bを挟む位置の2つの取付孔48cとが設けられている。矩形筒体48の内壁には2つのビスホール48dが形成されている。2つのビスホール48dは矩形筒体48の長尺方向、つまり横方向に延在している。ビスホール48dはビスB1が取り付けられる部分である。矩形筒体48の内部には縦方向の補強壁48eが設けられている。突出片50は矩形筒体48の室外側見付面48fの略中間高さ部分から突出している。室外側見付面48fにおける下端には室外側にやや突出する凸部(側面当接部)48gが設けられている。凸部48gは下方額縁32の室内側見付面に当接する。
【0025】
突出片50は、矩形筒体48の室外側見付面48fとつながる板片50aと、該板片50aから上方に突出する壁50bおよび壁50cとを備える。壁50b,50cは横方向に延在している。壁50bは板片50aの最も室外側から上方に突出している。壁50cは板片50aの略中央部分から上方に突出している。突出片50における略中央部分には、室外側に開いた切欠50dが形成されている。ふかし下枠38には室内側見付面および枠外側見込面を覆う下枠第2化粧板(ふかし枠化粧板)51が取り付けられる。
【0026】
ふかし縦枠42aは、矩形筒体52と、該矩形筒体52から室外側に突出する突出片54とを有する。矩形筒体52の室内側見付面52aには、2つの取付孔52bが設けられている。矩形筒体52の枠外側見込面52cにおける下端近傍には2つの取付孔52dが設けられている。2つの取付孔52dからは、それぞれビスB1が挿入されてふかし下枠38のビスホール48dに螺合する。ビスB1は矩形筒体52の内壁をふかし下枠38の端面に突き当てて、ふかし縦枠42aがふかし下枠38に固定される。突出片54は縦額縁36aの枠内側見込面に当接する。突出片54には2つの取付孔54aが設けられている。矩形筒体52には横方向の補強壁52eが設けられている。
【0027】
2つの取付孔52bからは、それぞれビスB2が挿入されて縦額縁36aの図示しない下穴に螺合する。ビスB2は補強壁52eを縦額縁36aに対して押圧し、ふかし縦枠42aが縦額縁36aに固定される。2つの取付孔54aからは、それぞれビスB3が挿入されて縦額縁36aの図示しない下穴に螺合する。ビスB3は突出片54を縦額縁36aに対して押圧して、ふかし縦枠42aが縦額縁36aに対してさらに強固に固定される。
【0028】
ふかし縦枠42aには室内側見付面52aおよび枠外側見込面52cを覆う縦化粧板(ふかし枠化粧板)56が取り付けられる。ふかし縦枠42aの下部には下キャップ58が圧入されて開口部が塞がれる。ふかし縦枠42bはふかし縦枠42aと対称構造となっている。
【0029】
図6は、縦化粧板56を示す図であり、(a)は縦化粧板56の全体の斜視図であり、(b)は室外側延在部分56bを折り取った状態の縦化粧板56の斜視図である。縦化粧板56は、ふかし縦枠42a,42bを室内側見付面52aから枠外側見込面52cの一部に亘って覆う室内側部分56aと、該室内側部分56aからさらに室外側に延在してふかし縦枠42a,42bの枠外側見込面52cを覆う室外側延在部分56bとを有する。
【0030】
縦化粧板56は、ふかし縦枠42a,42bに係合する3つの係合片56c,56d,56eを備える。係合片56cは、室内側部分56aにおける最も枠内方向に形成されている。係合片56dは、室内側部分56aと室外側延在部分56bとの境に形成されている。係合片56eは室外側延在部分56bにおける最も室外側に形成されている。係合片56c~56eはそれぞれ縦方向に延在している。
【0031】
係合片56dの室外側根元部には該係合片56dに沿って浅い筋56fが形成されている。室外側延在部分56bは筋56fに沿って容易に折り取りが可能である。つまり、室外側延在部分56bは室内側部分56aに対して切り取ることができる。このとき、係合片56dは室内側部分56aに残る。図4に示すように、例えば柱59がふかし縦枠42bの近くに存在して、室外側延在部分56bを入隅収まりとしなければならない場合に、該室外側延在部分56bを折り取ることにより、縦化粧板56の取り付けが容易となる。図4では、折り取られた室外側延在部分56bを仮想線で示している。室外側延在部分56bが折り取られても、室内側部分56aには、両脇に係合片56c,56dが残っていることからふかし縦枠42aに対して適度に安定して固定される。
【0032】
なお、折り取り構造については縦化粧板56を例にして説明したが、ふかし下枠38の室内側見付面および枠外側見込面を覆う下枠第2化粧板51(図2参照)およびふかし上枠40室内側見付面および枠外側見込面を覆う化粧板80(図2参照)についても同様に適用可能である。換言すれば、ふかし下枠38、ふかし上枠40およびふかし縦枠42a,42bの少なくとも1つについて室内側見付面および枠外側見込面を覆うふかし枠化粧板について折り取り構造の適用が可能である。
【0033】
図7は、連結具24およびその周辺部材の分解斜視図である。図7におけるギリシャ文字を含む符号は、ビス類の螺合方向の基準線についての対応を示している。図8は、連結具24およびその周辺部材の拡大縦断面図である。図7および図8に示すように、連結具24は、開口下枠26の枠内側見込み面から室内に延在するように取り付けられる。連結具24は、開口枠16および額縁20に固定される第1連結具60と、ふかし枠22に固定される第2連結具62とからなる。第1連結具60および第2連結具62は、開口下枠26およびふかし下枠38よりも高強度の金属材であり、例えばスチール材が用いられ、補強材として好適である。
【0034】
第1連結具60は、第1室外側板64と、第1室内側板66とを備える。第1室外側板64には4つの取付孔64aが設けられている。第1室外側板64は開口下枠26の突出片26cに当接している。取付孔64aにはそれぞれビスBが挿入されて突出片26cおよび下方額縁32の図示しない下穴に螺合する。これにより第1連結具60は開口下枠26対して固定される。なお、突出片26cがビスBを取り付けるのに十分な板厚が確保されていない場合などには、ビスBが螺合するウェルナット65(図8参照)を突出片26cの下部に設けてもよい。ウェルナット65は必要に応じて他の箇所に設けてもよい。
【0035】
第1室内側板66は第1段差部68を介して第1室外側板64とつながっており、該第1室外側板64よりも僅かに高い位置に配置されている。第1室内側板66は開口下枠26の突出片26cよりも室内側で、下方額縁32の上方に配置されている。下方額縁32の枠内側見込面32aと第1室内側板66の下面との間にはわずかな隙間70が形成されている。第1室外側板64には、上からキャップ71が被せられる。キャップ71のさらに上には下枠第1化粧板72が設けられる。下枠第1化粧板72はキャップ71および突出片26cを覆う。
【0036】
第1室内側板66には中央寄りの2つの取付孔66aと、該取付孔66aを挟む位置の2つの取付孔66bとが設けられている。2つの取付孔66bには、それぞれビスBが挿入されて下方額縁32の図示しない下穴に螺合する。これにより第1連結具60は下方額縁32に対してさらに強固に固定される。枠内方向に寄った2つの取付孔66aには雌ねじが形成されている。
【0037】
第2連結具62は、ふかし下枠38における突出片50の切欠50dの位置に配置される。第2連結具62は、第2室外側板74と、第2室内側板76と、第2段差部78とを備える。第2室外側板74は第2段差部78の上端から室内側に突出する板片である。第2室外側板74はふかし下枠38の突出片50と見込寸法がほぼ等しい。第2室外側板74には2つの長孔74aが設けられている。長孔74aは見込方向に長い。長孔74aは第1連結具60の取付孔66aに対応して設けられている。第2室外側板74の下面は第1連結具60の第1室内側板66の上面に当接している。
【0038】
2つの長孔74aにはそれぞれビスB4が挿入されて、取付孔66aに螺合し、第1連結具60と第2連結具62とが固定される。ビスB4が長孔74aに挿入されることから、第2連結具62は見込方向に位置調整が可能となっている。ビスB4は第1連結具60の第1室内側板66の下面よりも僅かに下方に突出し得るが、該第1室内側板66と下方額縁32との間には隙間70が形成されていることからビスB4は下方額縁32には干渉することがない。したがって第2連結具62の位置調整が容易である。また、下方額縁32に設ける下穴の数を減らすことができる。
【0039】
第2段差部78は第2室外側板74と第2室内側板76とをつなぐ部分である。第2段差部78は鉛直方向の段差を形成する。第2段差部78はふかし下枠38の室外側見付面と少なくとも一部で当接している。第2段差部78には2つの取付孔78aが設けられている。
【0040】
第2室内側板76は第2段差部78の下端から室内側に突出している板片である。第2室内側板76はふかし下枠38の矩形筒体48と見込寸法がほぼ等しく、該矩形筒体48の枠外側見込面に対して少なくとも一部で当接している。第2室内側板76には取付孔76aが設けられている。取付孔76aにはビスBが挿入され、矩形筒体48の枠外側見込面の下孔に螺合することにより第2連結具62とふかし下枠38とが固定される。第2連結具62の第2室内側板76はふかし下枠38の枠外側見込面を支持する下方支持部として作用する。図7から了解されるように、連結具24は簡易で十分に小さく構成することができ、建具12の意匠性を低下させることがない。
【0041】
矩形筒体48の2つの取付孔48bにはビスB5が挿入される。ビスB5は矩形筒体48を貫通して、第2段差部78の取付孔78aに挿入され、さらに下方額縁32の図示しない下穴に螺合することにより第2連結具62と下方額縁32とが固定される。
【0042】
矩形筒体48の2つの取付孔48cにはビスB6が挿入される。ビスB6は下方額縁32の図示しない下穴に螺合するとともの補強壁48eを下方額縁32に対して押圧し、ふかし縦枠42aが縦額縁36aに固定される。
【0043】
図5に戻り、ふかし枠取付構造10の施工手順について説明する。まず、第1連結具60の第1室外側板64を開口下枠26の突出片26cおよび下方額縁32に対してビス留めする。
【0044】
次に、ふかし下枠38に対して両側のふかし縦枠42a,42bを固定する。つまり、取付孔52dからビスB1を挿入して、ビスホール48dに螺合させる。これによりふかし下枠38とふかし縦枠42a,42bとは強く固定され、障子23a,23bの重量はふかし下枠38だけでなくふかし縦枠42a,42bによって支持される。つまり、ふかし下枠38の耐荷重が一層向上することとなり高強度となる。ふかし縦枠42a,42bに上端にはふかし上枠40(図2参照)を取り付け、ふかし枠22を形成する。
【0045】
次いで、ふかし下枠38に対して第2連結具62を固定する。つまり、第2連結具62を切欠50dの所定位置に配置させ、取付孔76a(図7参照)からビスBを挿入してふかし下枠38の下穴に螺合させる。
【0046】
この後、ふかし枠22を開口枠16および額縁20に対して位置決めする。つまり、ふかし下枠38における矩形筒体48の凸部48gを下方額縁32の室内側見付面に当接させるとともに、ふかし縦枠42a,42bを縦額縁36a,36bに合わせる。
【0047】
また、第2連結具62の第2室外側板74の下面を第1連結具60の第1室内側板66の上面に当接させる。そして、長孔74aからビスB4を挿入して第1連結具60における第1室内側板66の取付孔66aに螺合させて第1連結具60と第2連結具62とを固定する。このように長孔74aによれば、額縁20の見込方向寸法の大小によらずふかし枠22を適切な位置に配置することができる。さらに、上記のビス類を所定位置に挿入および螺合させてふかし枠22を開口枠16および額縁20に対して固定する。さらにその後、増設枠21、縦化粧板56、下枠第1化粧板72、下枠第2化粧板51および下キャップ58を所定位置に取り付ける。
【0048】
このようなふかし枠取付構造10および建具12によれば、ふかし下枠38を下方から支持する別途の補強角パイプおよび補強ブラケット等が不要であり、施工が容易である。また、連結具24は小さい部品であって目立たず、しかも視認されないように配置されることから、ふかし枠取付構造10および建具12は意匠性に優れる。
【0049】
さらに、ふかし下枠38は連結具24によって開口下枠26および下方額縁32に固定されていることから、障子23a,23bの自重やその他の外力に対して十分な強度を有する。具体的には、図8に示すように、ふかし下枠38は、ビスB6によって下方額縁32に固定されているが、ビスB6の締結だけでは不測の外力等によってふかし下枠38が下降しまたは傾斜する懸念がある。
【0050】
しかしながら、ふかし枠取付構造10および建具12では、ふかし下枠38が連結具24を介して開口下枠26の枠内側見込面と固定されていることから、下降や傾斜を抑制することができる。また、ふかし下枠38は、下方額縁32の枠内側見込面に当接する突出片50と、下方額縁32の室内側見付面に当接する凸部48gとを備えていることから下方額縁32に対して安定している。
【0051】
なお、第1連結具60と第2連結具62との見込方向の位置調整を行うための長孔74aは、第1連結具60に設けられていてもよい。この場合、第1室内側板66が第2室外側板74の上に配置されるようにするとよい。
【0052】
連結具24はふかし下枠38と一体構成であってもよいが、別体とすることにより、ふかし下枠38をアルミニウム合金で形成して軽量化を図るとともに、連結具24をスチールで形成して強度の確保を図ることができる。また、連結具24は、ふかし下枠38と別体とすることにより寸法の自由度があり、小型化することができる。連結具24とふかし下枠38との固定手段はビス止めに限らず、例えばスナップフィットのような係合であってもよい。額縁20は省略されていてもよい。この場合、ふかし枠22は開口枠16に対して直接的に取り付ければよい。
【0053】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、躯体の開口部に設けられた開口枠である第1枠に対して、室内側に新たな開口枠である第2枠を設ける際にふかし枠を取り付けるふかし枠取付構造であって、第1枠において下方の横材となる第1下枠には、枠内側見込み面から室内に延在するように連結具が取り付けられ、該連結具にはふかし枠において下方の横材となるふかし下枠が固定されていることを特徴とする。
このようなふかし枠取付構造によれば、ふかし下枠を下方から支持する別途の補強角パイプおよび補強ブラケット等が不要であり、施工が容易である。また、連結具は十分に小さく構成可能であり、ふかし枠取付構造および建具は意匠性に優れる。さらに、ふかし下枠は連結具によって開口下枠および下方額縁に固定されていることから、障子の自重やその他の外力に対して十分な強度を有する。
【0054】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、前記第1下枠に沿って設けられる下方額縁を備え、前記連結具は、前記下方額縁に固定されていることを特徴とする。
このように、連結具が下方額縁に対しても固定されていると、ふかし枠の固定強度が一層向上する。
【0055】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、前記下方額縁は前記開口部の四周に設けられる額縁の下方部であり、前記ふかし枠は、前記ふかし下枠の両端から上方に延在して前記額縁に固定される一対のふかし縦枠を備え、前記ふかし下枠と前記ふかし縦枠との間がビスを螺合することによって互いに固定されていることを特徴とする。
このように、ふかし下枠とふかし縦枠とがビスによって固定されていると、ふかし下枠の耐荷重が一層向上する。
【0056】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、前記連結具は、前記第1枠に固定される第1連結具と、前記ふかし枠に固定される第2連結具と、を備え、前記第1連結具および前記第2連結具のうち一方は、見込方向に長い長孔を有し、他方は前記長孔に対応する丸孔を有し、前記第1連結具と前記第2連結具とは、前記長孔を通り前記丸孔に螺合するビスによって固定されることを特徴とする。
このように、長孔と丸孔とを含む構成によれば、額縁などの見込方向寸法の大小によらずふかし枠を適切な位置に配置することができる。
【0057】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、前記第1連結具と前記第2連結具とがビスによって固定される部分は、前記下方額縁から離間していることを特徴とする。
これにより、ビスが下方額縁に当接することを防止できる。
【0058】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、前記ふかし下枠は、前記下方額縁の枠内側見込面に当接する上面当接部と、前記下方額縁の室内側見付面に当接する側面当接部と、を備えることを特徴とする。
このように、ふかし下枠が、下方額縁に当接する上面当接部および側面当接部を備えていると、該下方額縁に対して安定する。
【0059】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、前記連結具は、前記ふかし下枠の枠外側見込面を支持する下方支持部を備えることを特徴とする。
このような下方支持部によりふかし下枠が一層安定する。
【0060】
本発明にかかるふかし枠取付構造は、前記ふかし下枠の両端から上方に延在する一対のふかし縦枠と、前記ふかし枠において上方の横材となるふかし上枠と、前記ふかし下枠、前記ふかし上枠および前記ふかし縦枠の少なくとも1つについて室内側見付面および枠外側見込面を覆うふかし枠化粧板と、を備え、前記ふかし枠化粧板は、前記室内側見付面から前記枠外側見込面の一部に亘って覆う室内側部分と、前記室内側部分からさらに室外側に延在して前記枠外側見込面を覆う室外側延在部分と、を備え、前記室外側延在部分は、前記室内側部分から折り取り可能であることを特徴とする。
これにより、室内側延在部分を入隅収まりとしなければならない場合に、該室内側延在部分を折り取ることにより、ふかし枠化粧板の取り付けが容易となる。
【0061】
本発明にかかる建具は、上記のふかし枠取付構造と、前記ふかし枠に取り付けられる障子と、を有することを特徴とする。
【0062】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0063】
10 ふかし枠取付構造、12 建具、14 躯体、16 開口枠(第1枠)、20 額縁、21 増設枠(第2枠)、22 ふかし枠、24 連結具、26 開口下枠(第1下枠)、26c 突出片、30a,30b 開口縦枠、32 下方額縁、32a 枠内側見込面、36a,36b 縦額縁、38 ふかし下枠、42a,42b ふかし縦枠、48 矩形筒体、48a 室内側見付面48d ビスホール、48f 室外側見付面、48g 凸部、50 突出片(上面当接部)、51 下枠第2化粧板(ふかし枠化粧板)、56 縦化粧板(ふかし枠化粧板)、60 第1連結具、62 第2連結具、64 第1室外側板、66 第1室内側板、68 第1段差部、70 隙間、74 第2室外側板、74a 長孔、76 第2室内側板、78 第2段差部、80 化粧板(ふかし枠化粧板)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8