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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125080
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】エラストマー組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20220819BHJP
   C08L 101/12 20060101ALI20220819BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20220819BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L101/12
B60C1/00 A
B60C11/00 B
B60C11/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099501
(22)【出願日】2022-06-21
(62)【分割の表示】P 2020187836の分割
【原出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】澤木 晴子
(72)【発明者】
【氏名】赤堀 友洋
(57)【要約】
【課題】温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができるエラストマー組成物及びタイヤを提供する。
【解決手段】スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含むエラストマー組成物であって、
前記エラストマー組成物は、10℃以上の温度差がある所定の2点温度において、低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90を満たし、
前記低温側の温度は25℃未満である、エラストマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含むエラストマー組成物であって、
前記エラストマー組成物は、10℃以上の温度差がある所定の2点温度において、低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90を満たし、
前記低温側の温度は25℃未満である、エラストマー組成物。
【請求項2】
前記温度応答性樹脂は、AとBとが結合した化合物であり、
Aは温度変化により親水性が変化する基を含み、
Bはテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、及び/又はオレフィン系樹脂を含む、請求項1記載のエラストマー組成物。
【請求項3】
前記基が、水中で下限臨界溶液温度を示す基である、請求項2記載のエラストマー組成物。
【請求項4】
前記温度応答性樹脂はブロック共重合体である、請求項1~3のいずれかに記載のエラストマー組成物。
【請求項5】
前記温度応答性樹脂中の、AとBとの割合(質量%)が50:50~98:2である、請求項2記載のエラストマー組成物。
【請求項6】
前記温度応答性樹脂の重量平均分子量が500以上80,000以下である、請求項1~5のいずれかに記載のエラストマー組成物。
【請求項7】
さらに、吸水性の繊維、エラストマー、及び/又は樹脂を含む、請求項1~6のいずれかに記載のエラストマー組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載のエラストマー組成物からなる温度応答性部材を備え、当該温度応答性部材の最大厚みが1mm以上である、タイヤ。
【請求項9】
前記温度応答性部材はタイヤの外層部材である、請求項8記載のタイヤ。
【請求項10】
前記温度応答性部材に隣接し、前記エラストマー組成物とは異なる材料からなる少なくとも1つの隣接部材を備え、当該隣接部材と前記温度応答性部材との25℃における硬度差が15以下である、請求項8又は9記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エラストマー組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からタイヤには、種々の性能が求められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-214377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タイヤの中でも、特にオールシーズンタイヤでは、大きな外気温の変化や路面の状況変化によって、タイヤ性能を変化させることが望ましい。
しかしながら、タイヤ業界では、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させる点についてこれまであまり着目されておらず、従来の技術では、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させるという点では改善の余地がある。
本発明は、上記課題を解決し、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができるエラストマー組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含むエラストマー組成物であって、上記エラストマー組成物は、10℃以上の温度差がある所定の2点温度において、低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90を満たし、上記低温側の温度は25℃未満である、エラストマー組成物に関する。
【0006】
上記温度応答性樹脂は、AとBとが結合した化合物であり、Aは温度変化により親水性が変化する基を含み、Bはテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、及び/又はオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。
【0007】
上記基が、水中で下限臨界溶液温度を示す基であることが好ましい。
【0008】
上記温度応答性樹脂はブロック共重合体であることが好ましい。
【0009】
上記温度応答性樹脂中の、AとBとの割合(質量%)が50:50~98:2であることが好ましい。
【0010】
上記温度応答性樹脂の重量平均分子量が500以上80,000以下であることが好ましい。
【0011】
上記組成物は、さらに、吸水性の繊維、エラストマー、及び/又は樹脂を含むことが好ましい。
【0012】
本発明はまた、上記エラストマー組成物からなる温度応答性部材を備え、当該温度応答性部材の最大厚みが1mm以上である、タイヤに関する。
【0013】
上記温度応答性部材はタイヤの外層部材であることが好ましい。
【0014】
上記温度応答性部材に隣接し、上記エラストマー組成物とは異なる材料からなる少なくとも1つの隣接部材を備え、当該隣接部材と上記温度応答性部材との25℃における硬度差が15以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含むエラストマー組成物であって、上記エラストマー組成物は、10℃以上の温度差がある所定の2点温度において、低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90を満たし、上記低温側の温度は25℃未満である、エラストマー組成物であるので、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のエラストマー組成物は、スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含むエラストマー組成物であって、上記エラストマー組成物は、10℃以上の温度差がある所定の2点温度において、低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90を満たし、上記低温側の温度は25℃未満である。これにより、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができる。
【0017】
上記エラストマー組成物は前述の効果が得られるが、このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
「低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90」は、高温よりも低温において、接触角が小さいこと、すなわち、親水性であること、低温よりも高温において、接触角が大きいこと、すなわち、疎水性であることを意味する。このように、温度変化により、エラストマー組成物の親水性が変化するため、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができる。
このような特性を有するエラストマー組成物は、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂を含有することにより達成できる。すなわち、温度応答性樹脂が温度変化により親水性が変化するため、該樹脂を配合することにより、上記特性を有するエラストマー組成物が得られる。
ここで、温度応答性樹脂ではなく、後述するような温度応答性高分子をエラストマー組成物に配合した場合は、温度応答性高分子とエラストマーとの相溶性が低く、また、温度応答性高分子が水に溶解すること等により、雨天時等に溶解してエラストマー組成物から流出するため、温度変化に応答したタイヤ性能を可逆的に変化させることができない。これに対して、温度応答性樹脂を配合することにより、温度応答性樹脂とエラストマーとの相溶性が比較的高く、また、温度応答性樹脂が水に溶解すること等によりエラストマー組成物から流出することもないため、温度変化に応答してタイヤ性能を可逆的に変化させることができる。
このように、本発明は、スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含み、上記接触角のパラメーターを満たすエラストマー組成物の構成にすることにより、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させるという課題(目的)を解決するものである。すなわち、当該パラメーターは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることであり、そのための解決手段として、エラストマー組成物を、スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含み、上記接触角のパラメーターを満たす構成にしたものである。つまり、上記接触角のパラメーターを満たすことが必須の構成要件である。
【0018】
特に、温度応答性樹脂が、水中で下限臨界溶液温度(LCST)を示す樹脂である場合、温度応答性樹脂は、LCSTよりも高温では疎水性を示し、LCSTよりも低温では親水性を示す。
よって、高温時、例えば、60℃では、温度応答性樹脂が疎水性であるため、スチレン系エラストマーとの相溶性が向上する。その結果、良好なドライグリップ性能が得られる。
一方、氷上などの低温において、温度応答性樹脂が親水性であるため、スチレン系エラストマーと非相溶となり、更には親水性を示す温度応答性樹脂の存在によりエラストマー表面が親水性となる。
非相溶となることにより、ガラス転移温度、複素弾性率が低下し、アイスグリップ性能が向上する。
更には、エラストマー表面が親水性となる(接触角が低下する)ことにより、アイス路面(氷上路面ともいう)の表面に存在する水膜の水が好適に除去され、アイスグリップ性能が向上する。
更には、高温時、例えば、60℃では、温度応答性樹脂は疎水性を示し、可塑剤を周囲に引き寄せているものの、低温時、例えば、0℃では、温度応答性樹脂は親水性を示し、可塑剤をマトリクスエラストマー中に放出しやすいため、マトリクスエラストマー中の可塑剤濃度が高くなり、エラストマー組成物の複素弾性率が低下し、アイスグリップ性能が向上する。
以上の通り、上記エラストマー組成物は、アイス路面において、低温にさらされると、接触角の低下による高除水化、非相溶(相分離)によるガラス転移温度、複素弾性率の低下化、マトリクスエラストマー中への可塑剤の放出による複素弾性率の低下化によって、アイスグリップ性能が向上する。
よって、上記エラストマー組成物は、良好なアイスグリップ性能が得られ、また、アイスグリップ性能、ドライグリップ性能の総合性能にも優れる。
【0019】
上記エラストマー組成物は、10℃以上の温度差がある所定の2点温度において、低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90を満たし、上記低温側の温度は25℃未満である。
10℃以上差のある2点の温度において、上記関係式を可逆的に満たすことが好ましい。本明細書において、上記関係式を可逆的に満たすとは、温度変化を繰り返しても、水と接触しても、10℃以上差のある2点の温度において、接触角の温度依存性が上記関係式を満たすことを意味する。
また、本明細書において、接触角は、実施例に記載の方法により測定される。
なお、本明細書において、エラストマー組成物の接触角は、加硫(架橋)後のエラストマー組成物の接触角を意味する。
【0020】
10℃以上の温度差がある所定の2点温度は、低温側の温度が25℃未満であれば特に限定されず、タイヤの使用温度の範囲内に収まる温度であればよく、-80℃~80℃の範囲内に収まる温度が好ましく、温度範囲の下限は-50℃以上がより好ましく、-20℃以上が更に好ましく、温度範囲の上限は80℃以下がより好ましく、60℃以下が更に好ましい。
例えば、10℃以上差のある2点の温度として、5℃、60℃とすればよい。
【0021】
低温側の温度は、25℃未満であるが、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下であり、好ましくは0℃以上、より好ましくは1℃以上、更に好ましくは2℃以上である。
本明細書における接触角は、通常、水による接触角を意味するが、測定温度が0℃以下の場合には、不凍液による接触角とすればよい。
本明細書において、不凍液とは、メタノールと水からなる液体であって、水に対して体積基準で9倍量のメタノールを添加し、25℃で30分間混合することにより得られる液体である。
【0022】
低温側温度における接触角/高温側温度における接触角は、0.90以下であるが、好ましくは0.85以下、より好ましくは0.80以下、更に好ましくは0.77以下、特に好ましくは0.75以下、最も好ましくは0.70以下、より最も好ましくは0.65以下である。下限は特に限定されないが、好ましくは0.30以上、より好ましくは0.40以上、更に好ましくは0.50以上、特に好ましくは0.60以上である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0023】
低温側温度における接触角(°)は、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上、特に好ましくは50以上であり、好ましくは80以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0024】
次に、上記接触角のパラメーター、低温側温度における接触角を満たすための製造指針について説明する。
【0025】
「低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90」は、高温よりも低温において、接触角が小さいこと、すなわち、親水性であること、低温よりも高温において、接触角が大きいこと、すなわち、疎水性であることを意味する。このような特性を有するエラストマー組成物は、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂を含有することにより達成できる。
低温側温度における接触角が上記数値範囲内であることは、接触角が小さいこと、すなわち、親水性であることを意味する。このような特性を有するエラストマー組成物は、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂を含有することにより達成できる。
より具体的には、これらの特性を有するゴムは、水中で下限臨界溶液温度(LCST)を示す温度応答性樹脂を使用することにより製造できる。
なお、接触角(絶対値)は、組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、充填剤、可塑剤、シランカップリング剤)の種類や量によって調整することが可能である。例えば、親水性材料(例えば、シリカ)を増量すると小さくなる傾向があり、親水性材料を減量すると大きくなる傾向がある。また、疎水性材料を増量すると大きくなる傾向があり、疎水性材料を減量すると小さくなる傾向がある。
【0026】
以下、エラストマー組成物に使用可能な薬品について説明する。
上記エラストマー組成物は、スチレン系エラストマーを含む。
スチレン系エラストマーとしては、スチレンに基づく単位を有するエラストマーであれば特に限定されず、例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、スチレン系熱可塑性エラストマー、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-イソブチレンブロック共重合体(SIB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン・ブテン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン・エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン-ブタジエン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SBBS)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、SBRが好ましい。
【0027】
ここで、エラストマー成分(好ましくはゴム成分)は、重量平均分子量(Mw)が20万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のポリマー(ゴム)である。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
なお、本明細書において、Mw、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0028】
エラストマー成分100質量%(好ましくはゴム成分100質量%)中のジエン系ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0029】
エラストマー成分は、非変性ポリマーでもよいし、変性ポリマーでもよい。
変性ポリマーとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するポリマー(好ましくはジエン系ゴム)であればよく、例えば、ポリマーの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ポリマー(末端に上記官能基を有する末端変性ポリマー)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ポリマーや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ポリマー(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ポリマー)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ポリマー等が挙げられる。
【0030】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0031】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。また、該スチレン量は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、SBRのスチレン量は、H-NMR測定により算出される。
【0033】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0034】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ポリマーと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0035】
エラストマー成分100質量%(好ましくはゴム成分100質量%)中のスチレン系エラストマー(好ましくはSBR)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、100質量%でもよいが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0036】
スチレン系エラストマー以外に使用可能なエラストマーとしては、特に限定されず、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等、タイヤ用組成物のゴム成分として一般的に使用されるジエン系ゴム;ブチルアクリレートゴム、エチルアクリレートゴム、オクチルアクリレートゴムなどのアクリルゴム、ニトリルゴム、イソブチレンゴム、メチルメタクリレート-ブチルアクリレートブロック共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、クロロスルホン化ポリエチレン、シリコーンゴム(ミラブル型、室温加硫型)、ブチルゴム、フッ素ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、フッ素系熱可塑性エラストマー、等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ジエン系ゴムが好ましく、BRがより好ましい。
【0037】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性能が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法により測定できる。
【0038】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ポリマーと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0039】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0040】
エラストマー成分100質量%(好ましくはゴム成分100質量%)中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0041】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、NRが好ましい。
【0042】
上記エラストマー組成物は、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂を含む。
温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂は、温度変化により親水性が変化する限り特に限定されない。温度応答性樹脂は、温度変化により親水性が変化する基(後述するA)を有する樹脂であれば特に制限なく使用できる。
なお、本明細書において、樹脂とは、0℃以上で固体の有機化合物、すなわち、容器とは異なる形状の有機化合物を1分間、当該容器内に静置しても容器に沿わない部分が生じる有機化合物を意味する。また、樹脂には、上記スチレン系エラストマーは含まれない。
【0043】
温度応答性樹脂は、AとBとが結合した化合物であることが好ましい。ここで、Aは温度変化により親水性が変化する基を含み、Bはテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、及び/又はオレフィン系樹脂を含む。AとBとが結合することにより、A(温度変化により親水性が変化する基)が水中に溶出することを抑制でき、温度変化に応答してタイヤ性能を可逆的に変化させることができる。
【0044】
まず、Aについて説明する。
本明細書において、温度変化により親水性が変化する基とは、温度の変化によって親水性が変化する基であればよく、温度の変化によって親水性が可逆的に変化する基であることが好ましい。
温度の変化によって親水性が可逆的に変化する基としては、温度応答性高分子(温度応答性高分子基)が挙げられる。すなわち、温度変化により親水性が変化する基を有するAとは、例えば、温度応答性高分子により形成された基を有するAを意味する。上記Aとしては、例えば、温度応答性高分子がグラフトされたA、主鎖中に温度応答性高分子単位を有するA、主鎖中に温度応答性高分子ブロックを有するA等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、Aが温度応答性高分子である(Aが温度応答性高分子からなる)ことが好ましい。
【0045】
温度応答性高分子は、水中で温度変化に応じて、水和と脱水和に伴うポリマー鎖のコンフォメーション変化を可逆的に生起し、温度の変化によって親水性、疎水性が可逆的に変化する材料である。この可逆変化は、一つの分子内に水素結合が可能な親水性基と、水とはなじみにくい疎水性基を有する分子構造に起因するものであることが知られている。
そして、本発明者は、温度応答性高分子は、水中だけではなく、樹脂及び/又はエラストマーを含む組成物中であっても、温度の変化によって親水性、疎水性が可逆的に変化することを見出した。
【0046】
温度応答性高分子としては、水中で下限臨界溶液温度(Lower Critical Solution Temperature;LCST、下限臨界共溶温度、下限臨界溶解温度とも言う)を示す高分子と、水中で上限臨界溶液温度(Upper Critical Solution Temperature;UCST、上限臨界共溶温度、上限臨界溶解温度とも言う)を示す高分子が知られている。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
LCSTを示す高分子は、LCSTを境にそれより高い温度ではその分子内、又は分子間の疎水結合が強まりポリマー鎖が凝集し、疎水性となる。一方、LCSTよりも低い温度では、ポリマー鎖が水分子を結合し水和し、親水性となる。このように、LCSTを境に可逆的な相転移挙動を示す。
逆にUCSTを示す高分子は、UCSTよりも低温で疎水性となって不溶となる一方、UCSTよりも高温で親水性となり溶解する。このように、UCSTを境に可逆的な相転移挙動を示す。これは、複数個のアミド基を側鎖に有しており、側鎖間の水素結合を駆動力として分子間力が働き、UCST型挙動を示すと考えられている。
【0048】
温度の変化によって親水性が可逆的に変化する基が、LCSTを示す高分子である場合、温度変化により、組成物中の他の成分と非相溶となることでガラス転移温度が変化し、温度変化に応答してタイヤ性能(例えば、ドライグリップ性能、アイスグリップ性能)を変化させることができる。
上記Aでは、温度の変化によって親水性が可逆的に変化する基が、LCSTを示す高分子であることが好ましい。すなわち、温度変化により親水性が変化する基が、水中で下限臨界溶液温度を示す基であることが好ましい。
ここで、本明細書において、水中で下限臨界溶液温度(LCST)を示す基とは、Aが有する基をAから切断し、又は温度応答性樹脂が有する基を温度応答性樹脂から切断し、切断した基(高分子)を水中に投入した場合に、水中で下限臨界溶液温度を示す基を意味する。
同様に、本明細書において、水中で上限臨界溶液温度(UCST)を示す基とは、Aが有する基をAから切断し、又は温度応答性樹脂が有する基を温度応答性樹脂から切断し、切断した基(高分子)を水中に投入した場合に、水中で上限臨界溶液温度を示す基を意味する。
【0049】
以下において、LCSTを示す基(高分子)について説明する。
LCSTを示す基(高分子)は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
LCSTを示す基(高分子)としては、LCSTを示す基(高分子)であれば特に限定されないが、ポリ(N-置換(メタ)アクリルアミド)が好ましく、ポリ(N-置換(メタ)アクリルアミド)のなかでも、下記式(I)で表される基が好ましい。
【化1】
(式中、nは1~1000の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表し、R及びRの少なくとも1つが水素原子ではなく、RとRとで環構造を形成してもよい。)
【0050】
nは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは20以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは150以下、特に好ましくは80以下、最も好ましくは40以下、より最も好ましくは30以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
及びRのヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは6以下、より最も好ましくは4以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
及びRのヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;メチルフェニル基、エチルフェニル基等のアリール基等があげられる。なかでも、アルキル基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0053】
とRとで形成する環構造の炭素数は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上であり、好ましくは7以下、より好ましくは5以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0054】
及びRのヒドロカルビル基は、分岐であっても非分岐であってもよいが、分岐が好ましい。
【0055】
及びRとしては、水素原子、アルキル基(特に、分岐のアルキル基)、シクロアルキル基、RとRとで形成する環構造が好ましく、表1に示す組み合わせがより好ましく、水素原子、アルキル基(特に、分岐のアルキル基)の組み合わせが更に好ましく、水素原子、プロピル基(特に、イソプロピル基)の組み合わせが特に好ましい。
【表1】
【0056】
のヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0057】
のヒドロカルビル基としては、R及びRのヒドロカルビル基と同様の基があげられる。なかでも、アルキル基が好ましい。
【0058】
のヒドロカルビル基は、分岐であっても非分岐であってもよい。
【0059】
としては、水素原子、アルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0060】
上記式(I)で表される基としては、例えば、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-エチルアクリルアミド)、ポリ(N-n-プロピルアクリルアミド)、ポリ(N-エチル,N-メチルアクリルアミド)、ポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピル,N-メチルアクリルアミド)、ポリ(N-シクロプロピルアクリルアミド)、ポリ(N-アクリロイルピロリジン)、ポリ(N-アクリロイルピペリジン)等のポリ(N-アルキルアクリルアミド)ポリマー;
ポリ(N-イソプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N-エチルメタクリルアミド)、ポリ(N-n-プロピルメタクリルアミド)、ポリ(N-エチル,N-メチルメタクリルアミド)、ポリ(N,N-ジエチルメタクリルアミド)、ポリ(N-イソプロピル,N-メチルメタクリルアミド)、ポリ(N-シクロプロピルメタクリルアミド)、ポリ(N-メタクリロイルピロリジン)、ポリ(N-メタクリロイルピペリジン)等のポリ(N-アルキルメタクリルアミド)ポリマー;等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(N,N-ジエチルアクリルアミド)が好ましく、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)がより好ましい。
【0061】
PNIPAMは、小さな温度変化に応答して、大きな表面エネルギーの変化を示す熱感受性材料である。例えば、N.Moriら、Temperature Induced Changes in the Surface Wettability of SBR+PNIPA Films、292、Macromol.Mater.Eng.917、917-22(2007)を参照。
PNIPAMは、側鎖に疎水性のイソプロピル基と、イソプロピル基の根元部分に親水性のアミド結合を有する。
32℃より低い温度では、親水性部分であるアミド結合と水分子が水素結合を形成し、水に溶解する一方、32℃以上の温度では、分子の熱運動が激しくなり、水素結合が切断され、側鎖の疎水性部分であるイソプロピル基によって、分子内、分子間において疎水結合が強まりポリマー鎖が凝集し、水に不溶となる。
このように、PNIPAMの親水性状態と疎水性状態のスイッチング温度であるLCSTは約32℃である。
PNIPAMポリマー膜の上に置かれた水滴の接触角は、温度がLSCTより上および下で劇的に変化する。例えば、PNIPAM膜の上に置かれた水滴の接触角は、32℃未満で約60°(親水性)から、32℃を超える温度まで加熱すると、約93°を超える(疎水性)。
PNIPAM基を有する温度応答性樹脂は、PNIPAM基が約32℃で親水性/疎水性の表面物性が大きく変化するため、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができる。
【0062】
LCSTを示す基(高分子)としては、上記基も好適に使用できるが、ポリ(アルキルビニルエーテル)も好ましく、下記式(A)で表される基もより好ましい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化2】
(式中、mは1~1000の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【0063】
mは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは20以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは150以下、特に好ましくは80以下、最も好ましくは40以下、より最も好ましくは30以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0064】
のヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは6以下、より最も好ましくは4以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0065】
及びRのヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0066】
、R及びRのヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;メチルフェニル基、エチルフェニル基等のアリール基等があげられる。なかでも、アルキル基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0067】
がアルキル基、R及びRが、水素原子であることが好ましく、Rがエチル基、R及びRが、水素原子であることがより好ましい。
【0068】
上記式(A)で表される基としては、例えば、ポリ(メチルビニルエーテル)、ポリ(エチルビニルエーテル)、ポリ(プロピルビニルエーテル)、ポリ(ブチルビニルエーテル)、ポリ(ペンテニルエーテル)、ポリ(ヘキシルビニルエーテル)、ポリ(ヘプチルビニルエーテル)、ポリ(オクチルエーテル)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ポリ(エチルビニルエーテル)(PEVE)が好ましい。本発明者が鋭意検討を行った結果、PEVEは-20~+5℃においてLCSTを示すことがわかった。
【0069】
LCSTを示す基(高分子)としては、上記基も好適に使用できるが、下記式(B)で表される基も好ましい。これにより、効果がより好適に得られる傾向がある。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化3】
(式中、mは1~1000の整数を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はヒドロカルビル基を表す。)
【0070】
mは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは10以上、特に好ましくは20以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは300以下、更に好ましくは150以下、特に好ましくは80以下、最も好ましくは40以下、より最も好ましくは30以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0071】
のヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上、より好ましくは2以上であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは14以下、特に好ましくは10以下、最も好ましくは6以下、より最も好ましくは4以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0072】
及びRのヒドロカルビル基の炭素数は、特に限定されないが、好ましくは1以上であり、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、特に好ましくは1である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0073】
、R及びRのヒドロカルビル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、n-ヘキシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;メチルフェニル基、エチルフェニル基等のアリール基等があげられる。なかでも、アルキル基、シクロアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0074】
がアルキル基、R及びRが、水素原子であることが好ましく、Rがn-プロピル基又はイソプロピル基、R及びRが、水素原子であることがより好ましい。
【0075】
上記式(B)で表される基としては、例えば、ポリ(イソプロピルビニルアクリルアミド)(PNIPVM、Rがイソプロピル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(n-プロピルビニルアクリルアミド)(PNNPAM、Rがn-プロピル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(n-ブチルビニルアクリルアミド)(Rがn-ブチル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(tert-ブチルビニルアクリルアミド)(Rがtert-ブチル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(sec-ブチルビニルアクリルアミド)(Rがsec-ブチル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(メチルビニルアクリルアミド)(Rがメチル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(エチルビニルアクリルアミド)(Rがエチル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(n-ペンチルビニルアクリルアミド)(Rがn-ペンチル基、R及びRが、水素原子)、ポリ(イソペンチルビニルアクリルアミド)(Rがイソペンチル基、R及びRが、水素原子)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、PNIPVM、PNNPAM、ポリ(n-ブチルビニルアクリルアミド)、ポリ(tert-ブチルビニルアクリルアミド)が好ましく、PNIPVM、PNNPAMがより好ましい。本発明者が鋭意検討を行った結果、PNIPVMは39℃において、PNNPAMは32℃において、それぞれ、LCSTを示すことがわかった。
【0076】
上記式(I)で表される基、上記式(A)で表される基、上記式(B)で表される基以外のLCSTを示す基(高分子)としては、例えば、下記式(II)で表されるポリ(N-ビニル-カプロラクタム)(LSCT:約31℃)、下記式(III)で表されるポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)(LSCTは、Rがエチル基の場合には約62℃、Rがイソプロピル基の場合には約36℃であり、Rがn-プロピル基の場合には約25℃)、アルキル置換セルロース(例えば、下記式(IV)で表されるメチルセルロース(LSCT:約50℃)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリ(N-エトキシエチルアクリルアミド)(LSCT:約35℃)、ポリ(N-エトキシエチルメタクリルアミド)(LSCT:約45℃)、ポリ(N-テトラヒドロフルフリルアクリルアミド)(LSCT:約28℃)、ポリ(N-テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド)(LSCT:約35℃)、ポリビニルメチルエーテル、ポリ[2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]、ポリ(3-エチル-N-ビニル-2-ピロリドン)、ヒドロキシルブチルキトサン、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、2~6個のエチレングリコール単位を有するポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリエチレングリコール-co-ポリプロピレングリコール(好ましくは2~8個のエチレングリコール単位と2~8個のポリプロピレン単位とを有するもの、より好ましくは式(A)の化合物)、エトキシル化イソ-C1327-アルコール(好ましくは4~8のエトキシル化度を有するもの)、4~50個、好ましくは4~20個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコール、4~30個、好ましくは4~15個のプロピレングリコール単位を有するポリプロピレングリコール、4~50個、好ましくは4~20個のエチレングリコール単位を有するポリエチレングリコールのモノメチル、ジメチル、モノエチル、およびジエチルエーテル、4~50個、好ましくは4~20個のプロピレングリコール単位を有するポリプロピレングリコールのモノメチル、ジメチル、モノエチル、およびジエチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(A)HO-[-CH-CH-O]-[-CH(CH)-CH-O]-[-CH-CH-O]-H
(式中、y=3~10かつxおよびz=1~8であり、ここでy+x+zは5~18である)
【化4】
(式(II)~(IV)中、nは上記式(I)のnと同様である。式(III)中、Rは、n-プロピル基、イソプロピル基又はエチル基から選択されるアルキル基である。)
【0077】
上記以外のLCSTを示す基(高分子)としては、例えば、N-イソプロピルアクリルアミドとブチルアクリレートとの共重合体、N-イソプロピルアクリルアミドとポリエチレンオキサイドとのブロック共重合体、N-イソプロピルアクリルアミドとフッ素モノマーとの共重合体、ポリ-N-アセチルアクリルアミドとポリエチレンオキサイドとの高分子複合体、ポリ-N-アセチルアクリルアミドとポリアクリルアミドとの高分子複合体、N-アセチルアクリルアミドとアクリルアミドとの共重合体とポリアクリルアミドとの高分子複合体、N-アクリロイルグリシンアミドとN-アセチルアクリルアミドとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルとN,N-ジメチルアクリルアミドとの共重合体、下記式1で表す化合物とN,N-ジメチルアクリルアミドとの共重合体、ポリ(N,N-ジメチル(アクリルアミドプロピル)アンモニウムプロパンサルフェイト)、N,N-ジエチルアクリルアミドと無水マレイン酸との共重合体、N,N-ジエチルアクリルアミドとフマル酸ジメチルとの共重合体、N,N-ジエチルアクリルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体、N,N-ジエチルアクリルアミドとブタジエンとの共重合体、ポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールの加水分解物とポリアクリルアミドとの高分子複合体、N-アクリロイルアスパラギンアミド重合体、N-アクリロイルグルタミンアミド重合体、N-メタクリロイルアスパラギンアミド重合体、N-アクリロイルグリシンアミドとビオチンメタクリアミド誘導体との共重合体、N-アクリロイルグリシンアミドとN-アクリロイルアスパラギンアミドとの共重合体、ビオチン固定化温度応答性磁性微粒子(N-アクリロイルグリシンアミド、メタクリル化磁性微粒子及びビオチンモノマーを反応させることにより得られる微粒子)、ポリ(スルホベタインメタクリルアミド)、N-ビニル-n-ブチルアミドと無水マレイン酸との共重合体、N-ビニル-n-ブチルアミドとフマル酸ジメチルとの共重合体、N-ビニル-n-ブチルアミドとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体、N-ビニル-n-ブチルアミドとブタジエンとの共重合体、ポリエステルアミド、ポリエーテルアミド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体のモノアミン化物、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド-ポリエチレンオキサイドブロック共重合体、ポリエチレンオキサイドとポリビニルアルコールとの高分子複合体、マルトペンタオース修飾ポリプロピレンオキサイド、ポリ(ラクチド-コ-グリコライド)-ポリエチレンオキサイド-ポリラクチド トリブロック共重合体、アクリル酸2メトキシエチルとアクリロイルモルホリンとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルとN-ビニルピロリドンとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルと2-ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体、アクリル酸2メトキシエチルとメトキシトリエチレングリコールアクリレートとの共重合体、ポリ[2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート]、ポリ(2-(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート-コ-2-(メトキシエトキシ)エチルメタクリレート、ポリ(2-(N,N-ジメチルアミノエチル)メタクリレート)、N-ビニルカプロラクタムとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体、メチルビニルエーテルとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体、N-ビニルカプロラクタム重合体、N-ビニルカプロラクタムと無水マレイン酸との共重合体、N-ビニルカプロラクタムとフマル酸ジメチルとの共重合体、N-ビニルカプロラクタムとブタジエンとの共重合体、N-ビニルカプロラクタムとビニルピロリジンとメタクリル酸グリシジルとの共重合体、N-ビニルカプロラクタムとビニルピロリジンとメタクリル酸との共重合体、N-ビニルカプロラクタムとビニルピロリドンとα,α-ジメチル-メタ-イソプロペニルベンジルイソシアネートとの共重合体、N-ビニルカプロラクタムとビニルピロリドンとヒドロキシエチルメタクリレートとの共重合体、ポリ(1-エチル-3-ビニル-2-イミダゾリドン)、ポリ(1-メチル-3-ビニル-2-イミダゾリドン)、ポリ(1-n-プロピル-3-ビニル-2-イミダゾリドン)、ポリ(1-イソプロピル-3-ビニル-2-イミダゾリドン)、ポリ(1-アセチル-3-ビニル-2-イミダゾリドン)、ポリ(1-プロピオニル-3-ビニル-2-イミダゾリドン)、下記式2で示す共重合体、ポリ(N-ビニル-2-イミダゾリドン化合物)、2-ヒドロキシエチルビニルエーテルと酢酸ビニルとの共重合体、ジエチレングリコールモノビニルエーテルと酢酸ビニルとの共重合体、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、メチルビニルエーテルとフマル酸ジメチルとの共重合体、カルバモイル化したポリアミノ酸、下記式3で表す化合物の重合体、下記式4で表す化合物の重合体、ペンダント[N-(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン]基を有するポリ(オルトエステル)、ポリアセタール-ポリ[N-(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン]-ポリアセタールトリブロック共重合体、ポリ[N-(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン]-ポリ(オルトエステル)-ポリ[N-(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン]トリブロック共重合体、ポリ[N-(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン]-ポリアセタールジブロック共重合体、アミノ末端ポリ[N-(2-ヒドロキシエチル)-L-グルタミン]、アミノ末端ポリ(オルトエステル)、アミノ末端ポリアセタール、セルローストリアセテート、磁性ナノ粒子、アミノ基を有するポリスチレン、グリコルリル重合体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【化5】
【0078】
温度変化により親水性が変化する基(温度応答性高分子により形成された基)の重量平均分子量は、好ましくは330以上、より好ましくは560以上、更に好ましくは1130以上であり、好ましくは57000以下、より好ましくは34000以下、更に好ましくは17000以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0079】
温度応答性高分子の相転移温度(下限臨界溶液温度(LCST)又は上限臨界溶液温度(UCST))は、好ましくは-50℃以上、より好ましくは-40℃以上、更に好ましくは-30℃以上、特に好ましくは-20℃以上、最も好ましくは-10℃以上、より最も好ましくは0℃以上、更に最も好ましくは5℃以上であり、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、更に好ましくは40℃以下、特に好ましくは35℃以下、最も好ましくは30℃以下、より最も好ましくは25℃以下、更に最も好ましくは20℃以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
本明細書において、温度応答性高分子の相転移温度の測定は、温調機能付き分光光度計を用いて行う。10質量%に調整した温度応答性高分子水溶液をセルに入れ、蒸発を防ぐためにパラフィルムでふたをし、セル内温度センサをとりつけ、測定波長600nm、取り込み温度0.1℃、昇温速度0.1℃として、実験を行い、相転移温度は透過率が90%に達したときの温度とした。
ここで、温度応答性高分子は、温度応答性樹脂が有する温度応答性高分子基を温度応答性樹脂から切断した切断後の温度応答性高分子基(温度応答性高分子)を意味する。
【0080】
次に、Bについて説明する。
Bはテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、及び/又はオレフィン系樹脂を含む限り特に限定されないが、Bはテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、及び/又はオレフィン系樹脂であることが好ましい。これらは、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。なかでも、スチレン系エラストマーとの相溶性がよく、効果がより好適に得られるという理由から、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂がより好ましく、スチレン系樹脂が更に好ましい。
【0081】
上記樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0082】
上記テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
上記テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0085】
上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられるが、上記テルペン系樹脂において、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)とする樹脂は、本明細書では、ロジン系樹脂として扱う。
なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
上記スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーが好ましく、スチレン系単量体がより好ましい。
【0087】
上記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、不飽和カルボン酸類が好ましく、アクリル類、メタクリル酸がより好ましい。
【0088】
スチレン系樹脂のなかでも、スチレン単独重合体、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましく、スチレン単独重合体、α-メチルスチレン単独重合体がより好ましく、スチレン単独重合体がより好ましい。
【0089】
C5系樹脂としては、ナフサ分解によって得られるC5留分中のオレフィン、ジオレフィン類を主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)とする脂肪族系石油樹脂などが挙げられる。C9系樹脂としては、ナフサ分解によって得られるC9留分中のビニルトルエンを主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)とする芳香族系石油樹脂などが挙げられる。C5/C9系樹脂としては、C5留分中のオレフィン、ジオレフィン類及びC9留分中のビニルトルエンを主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)とする樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、上記他の単量体との共重合樹脂であってもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0090】
クマロン系樹脂としては、クマロンを主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)とする樹脂、インデン系樹脂としては、インデン、メチルインデンを主成分(50質量%以上、好ましくは80質量%以上)とする樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、上記他の単量体との共重合樹脂であってもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、クマロン系樹脂、インデン系樹脂には、クマロンインデン樹脂が含まれる。
【0091】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-ヘキセン共重合体、エチレン-オクテン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、塩素化ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、塩素化ポリプロピレン等のポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィンの共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0092】
AとBとを結合する方法は、特に限定されず、当業者なら両者を結合することが可能である。例えば、まずAを形成可能なモノマーを重合してAのブロックを形成し、次いで、当該反応系にBを形成可能なモノマーを添加し、Aのブロックに続いてBのブロックを形成することにより、AとBとが結合した化合物を製造できる。具体的には、例えば、特開2019-83761号公報の記載に沿って温度応答性樹脂を製造することができる。
【0093】
温度応答性樹脂中の、AとBとの割合(質量%)(A:B)は、好ましくは50:50~98:2である。下限は好ましくは60:40、より好ましくは65:35であり、上限は好ましくは95:5、より好ましくは90:10である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
AとBとの割合は、NMRにより測定できる。
【0094】
温度応答性樹脂はブロック共重合体であることが好ましく、Aにより形成されるブロックとBにより形成されるブロックを有するブロック共重合体であることがより好ましく、一方の末端にAにより形成されるブロックを有し、もう一方の末端にBにより形成されるブロックを有するブロック共重合体であることが更に好ましく、Aにより形成されるブロックとBにより形成されるブロックにより形成されるジブロック共重合体であることが特に好ましい。
【0095】
温度応答性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは5,000以上、特に好ましくは10,000以上、最も好ましくは20,000以上、より最も好ましくは30,000以上であり、好ましくは80,000以下、より好ましくは75,000以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0096】
エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対する温度応答性樹脂の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上、特に好ましくは15質量部以上であり、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下、特に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0097】
温度変化によって、温度応答性樹脂がより好適に親水性を変化するためには、水が存在していることが好ましい。そのため、エラストマー組成物は、吸水性の繊維、吸水性のエラストマー、及び/又は吸水性の樹脂などの吸水性の材料を含むことが好ましい。これにより、エラストマー組成物に水が好適に取り込まれて、温度応答性樹脂がより好適に温度変化によって親水性を変化させることが可能となる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
吸水性の材料としては、ヘテロ原子を有する材料(繊維、エラストマー、樹脂)が挙げられる。
【0098】
ヘテロ原子は、炭素原子、水素原子以外の原子を意味し、水に対して、水素結合、イオン結合などの可逆的な分子結合が可能な限り特に限定されないが、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、リン原子、及びハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の原子であることが好ましく、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。
【0099】
酸素原子を含む構造、基としては、エーテル基、エステル、カルボキシ基、カルボニル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等が挙げられる。なかでも、エーテル基が好ましく、オキシアルキレン基がより好ましい。
窒素原子を含む構造、基としては、アミノ基(第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基)、アミド基、ニトリル基、ニトロ基等が挙げられる。なかでも、アミノ基が好ましく、第三級アミノ基がより好ましい。
ケイ素原子を含む構造、基としては、シリル基、アルコキシシリル基、シラノール基等が挙げられる。なかでも、シリル基が好ましく、アルコキシシリル基がより好ましい。
硫黄原子を含む構造、基としては、スルフィド基、硫酸基、硫酸エステル、スルホ基等が挙げられる。
リン原子を含む構造、基としては、リン酸基、リン酸エステル等が挙げられる。
ハロゲン原子を含む構造、基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基などのハロゲノ基等が挙げられる。
【0100】
例えば、セルロース繊維は水酸基を有するため、吸水性の繊維としては、セルロース繊維が挙げられる。
セルロース繊維としては、セルロースミクロフィブリルが好ましい。セルロースミクロフィブリルとしては、天然物由来のものであれば特に制限されず、例えば、果実、穀物、根菜などの資源バイオマス、木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、及びこれらを原料として得られるパルプや紙、布、農作物残廃物、食品廃棄物や下水汚泥などの廃棄バイオマス、稲わら、麦わら、間伐材などの未使用バイオマスの他、ホヤ、酢酸菌等の生産するセルロースなどに由来するものが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
吸水性のエラストマーとしては、例えば、オキシアルキレン基を有するエラストマーが挙げられる。該エラストマーとしては、例えば、エポキシド・アリルグリシジルエーテル共重合体、アミン・アリルグリシジルエーテル共重合体、シリル・アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
吸水性の樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、エポキシ樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対する吸水性の繊維、吸水性のエラストマー、及び/又は吸水性の樹脂の含有量は、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、好ましくは40質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、吸水性の繊維、吸水性のエラストマー、及び/又は吸水性の樹脂として、2種以上を併用する場合は、上記含有量は合計含有量を意味する。
【0104】
上記組成物は、充填剤(補強性充填剤)として、シリカを含有することが好ましい。シリカは、水酸基を有する親水性の材料であるため、エラストマー組成物に水が好適に取り込まれて、温度応答性樹脂がより好適に温度変化によって親水性を変化させることが可能となる。
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0105】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0106】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは70m/g以上、より好ましくは140m/g以上である。また、該NSAは好ましくは300m/g以下、より好ましくは250m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準拠して測定できる。
【0107】
エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対するシリカの含有量は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上、最も好ましくは30質量部以上、より最も好ましくは50質量部以上であり、好ましくは200質量部以下、より好ましくは180質量部以下、更に好ましくは150質量部以下、特に好ましくは120質量部以下、最も好ましくは100質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0108】
上記組成物は、シリカを配合する場合、シリカと共にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフィド系シランカップリング剤が好ましい。
【0109】
シランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。
【0110】
シランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは6質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは12質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0111】
上記組成物は、カーボンブラックを含有することが好ましい。
【0112】
カーボンブラックとしては、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0113】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは5m/g以上、より好ましくは30m/g以上、更に好ましくは60m/g以上、特に好ましくは80m/g以上、最も好ましくは100m/g以上である。また、上記NSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは200m/g以下、更に好ましくは150m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0114】
カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量(DBP)は、好ましくは5ml/100g以上、より好ましくは70ml/100g以上、更に好ましくは90ml/100g以上である。また、該DBPは、好ましくは300ml/100g以下、より好ましくは200ml/100g以下、更に好ましくは160ml/100g以下、特に好ましくは120ml/100g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのDBPは、JIS K6217-4:2001に準拠して測定できる。
【0115】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0116】
エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対するカーボンブラックの含有量は、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上、特に好ましくは5質量部以上であり、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下、特に好ましくは20質量部以下、最も好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0117】
上記組成物は、硫黄を含むことが好ましい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0119】
硫黄の含有量は、エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0120】
上記組成物は、加硫促進剤を含有することが好ましい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)、ラインケミー社製等の製品を使用できる。
【0122】
加硫促進剤の含有量は、エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0123】
上記組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0124】
ステアリン酸の含有量は、エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0125】
上記組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0126】
酸化亜鉛の含有量は、エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0127】
上記組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、p-フェニレンジアミン系老化防止剤がより好ましい。
【0128】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0129】
老化防止剤の含有量は、エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0130】
上記組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0131】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0132】
ワックスの含有量は、エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0133】
上記ゴム組成物は、液体可塑剤を含むことが好ましい。
本明細書において、可塑剤とは、ゴムに可塑性を付与する有機化合物であり、液体可塑剤とは、0℃以上で液体の可塑剤、すなわち、容器とは異なる形状の有機化合物を1分間、当該容器内に静置した場合に、容器に沿った形状となる可塑剤を意味する。液体可塑剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0134】
液体可塑剤としては、具体的には、例えば、オイル、エステル系可塑剤、液状樹脂(まとめてオイル等とも言う)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、オイルが好ましい。
【0135】
液体可塑剤の含有量は、エラストマー成分100質量部(好ましくはゴム成分100質量部)に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0136】
上記オイルとしては、特に限定されず、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどのプロセスオイル、TDAE、MES等の低PCA(多環式芳香族)プロセスオイル、植物油脂、及びこれらの混合物等、従来公知のオイルを使用できる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アロマ系プロセスオイルが好ましい。上記アロマ系プロセスオイルとしては、具体的には、出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAHシリーズ等が挙げられる。
【0137】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0138】
エステル系可塑剤としては、前記植物油;グリセリン脂肪酸モノエステル、グリセリン脂肪酸ジエステル、グリセリン脂肪酸トリエステル等の合成品や植物油の加工品;リン酸エステル(ホスフェート系、これらの混合物等);が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0139】
エステル系可塑剤として、例えば、下記式で示される脂肪酸エステルを好適に使用できる。
【化6】
(式中、R11は、炭素数1~8の直鎖若しくは分枝状アルキル基、炭素数1~8の直鎖若しくは分枝状アルケニル基、又は1~5個のヒドロキシル基で置換された炭素数2~6の直鎖又は分枝状アルキル基を表す。R12は、炭素数11~21のアルキル基又はアルケニル基を表す。)
【0140】
11としては、メチル基、エチル基、2-エチルヘキシル基、イソプロピル基、オクチル基、これらの基が1~5個のヒドロキシル基で置換された基、等が挙げられる。R12としては、ラウリル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基、オレイル基等の直鎖又は分岐状アルキル基、アルケニル基が挙げられる。
【0141】
脂肪酸エステルとしては、オレイン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、リノール酸アルキル、パルミチン酸アルキル等が挙げられる。なかでも、オレイン酸アルキル(オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸オクチル等)が好ましい。この場合、脂肪酸エステル100質量%中のオレイン酸アルキルの含有量は、80質量%以上が好ましい。
【0142】
脂肪酸エステルとしては、脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、パルミチン酸等)と、アルコール(エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトール、イノシトール等)との脂肪酸モノエステル及び脂肪酸ジエステル等も挙げられる。なかでも、オレイン酸モノエステルが好ましい。この場合、脂肪酸モノエステル及び脂肪酸ジエステルの合計量100質量%中のオレイン酸モノエステルの含有量は、80質量%以上が好ましい。
【0143】
エステル系可塑剤として、リン酸エステルも好適に使用できる。
リン酸エステルは、炭素数が12~30の化合物であることが好ましく、なかでも、炭素数12~30のリン酸トリアルキルが好適である。なお、リン酸トリアルキルの炭素原子数は、3つのアルキル基の炭素原子の総数を意味し、当該3つのアルキル基は、同一の基でも、異なる基でもよい。アルキル基は、例えば、直鎖又は分岐状アルキル基が挙げられ、酸素原子などのヘテロ原子を含むものでも、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子で置換されたものでもよい。
【0144】
リン酸エステルとしては、リン酸と、炭素数1~12のモノアルコール又はその(ポリ)オキシアルキレン付加物とのモノ、ジ又はトリエステル;前記リン酸トリアルキルのアルキル基の1又は2個がフェニル基に置換された化合物;等、公知のリン酸エステル系可塑剤も挙げられる。具体的には、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、トリス(2-ブトキシエチル)ホスフェート等が挙げられる。
【0145】
液状樹脂としては、例えば、0℃で液状のテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、クマロン系樹脂、インデン系樹脂、オレフィン系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル系樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)等の0℃で液状のレジンが挙げられる。これらは、1種でも2種以上の混合物でもよく、また、樹脂自体が複数の由来のモノマー成分を共重合したものでもよい。
【0146】
更に別の液状樹脂としては、例えば、液状(0℃において液状を意味する、以下同様)のファルネセン単独重合体、液状ファルネセン-スチレン共重合体、液状ファルネセン-ブタジエン共重合体、液状ファルネセン-スチレン-ブタジエン共重合体、液状ファルネセン-イソプレン共重合体、液状ファルネセン-スチレン-イソプレン共重合体等の液状ファルネセン系ポリマー;液状ミルセン単独重合体、液状ミルセン-スチレン共重合体、液状ミルセン-ブタジエン共重合体、液状ミルセン-スチレン-ブタジエン共重合体、液状ミルセン-イソプレン共重合体、液状ミルセン-スチレン-イソプレン共重合体等の液状ミルセン系ポリマー;液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等の液状ジエン系ポリマー;ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂をハードセグメント(硬質相)とし、ゴム成分をソフトセグメント(軟質相)とする液状オレフィン系ポリマー;ハードセグメントとしてポリエステルと、ソフトセグメントとしてポリエーテルまたはポリエステルなどを含む液状エステル系ポリマー;等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0147】
上記液状樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、サートマー社、(株)クラレ等の製品を使用できる。
【0148】
上記組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤を配合することができ、硫黄以外の加硫剤(例えば、有機架橋剤、有機過酸化物)、炭酸カルシウム、セリサイトなどの雲母、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルク、アルミナ、酸化チタン等を例示できる。これら各成分の含有量は、エラストマー成分(好ましくはゴム成分)100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、好ましくは200質量部以下である。
【0149】
上記組成物は、例えば、上記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0150】
混練条件としては、架橋剤(加硫剤)及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。
【0151】
上記組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、クリンチ、インナーライナーなどタイヤの外層部材に好適に用いられ、トレッド(キャップトレッド)により好適に用いられる。
【0152】
本発明のタイヤは、上記組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合した組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、トレッド(キャップトレッド)などタイヤの外層部材)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造することができる。
【0153】
上記タイヤとしては、特に限定されず、例えば、空気入りタイヤ、ソリッドタイヤ、エアレスタイヤ等が挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。
【0154】
上記タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。なかでも、冬用タイヤ(スタッドレスタイヤ、スノータイヤ、スタッドタイヤ)、オールシーズンタイヤとしてより好適に用いられる。
【0155】
上記タイヤは、上記エラストマー組成物からなる温度応答性部材を備え、当該温度応答性部材の最大厚みが1mm以上であることが好ましい。
温度応答性部材の最大厚みは、好ましくは1mm以上、より好ましくは3mm以上、更に好ましくは5mm以上であり、上限は特に限定されないが、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下、更に好ましくは10mm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
ここで、温度応答性部材としては、上記外層部材であることが好ましく、トレッド(キャップトレッド)であることがより好ましい。
【0156】
上記温度応答性部材に隣接し、上記エラストマー組成物とは異なる材料からなる少なくとも1つの隣接部材を備え、当該隣接部材と上記温度応答性部材との25℃における硬度差が15以下であることが好ましい。
該硬度差は、より好ましくは13以下、更に好ましくは10以下、特に好ましくは8以下、最も好ましくは5以下、より最も好ましくは2以下、更に最も好ましくは0である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
温度応答性部材の25℃における硬度は、好ましくは55以上、より好ましくは60以上であり、好ましくは80以下、より好ましくは75以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
ここで、温度応答性部材としては、トレッド(キャップトレッド)、隣接部材としては、ベーストレッドであることが好ましい。
なお、隣接部材の配合としては、例えば、上記エラストマー組成物から温度応答性樹脂を省いた配合が挙げられる。
なお、本明細書において、硬度は、JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、測定されるJIS-A硬度である。
【実施例0157】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0158】
以下、以下の実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のNipol 1502(E-SBR、スチレン量:23.5質量%、ビニル量:20%未満)
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量:98質量%)
NR:TSR20(天然ゴム)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のシーストN220(NSA:111m/g、DBP:115ml/100g)
シリカ:エボニックテグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:エボニックテグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエースワックス
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
オイル:出光興産(株)製のPS-32
PNIPAM-b-Sty(1):特開2019-83761号公報に記載の重合法を参考に合成したN-イソプロピルアクリルアミド-スチレンジブロック共重合体(Mw:7万、NIPAM:Sty=90:10(質量%))
PNIPAM-b-Sty(2):特開2019-83761号公報に記載の重合法を参考に合成したN-イソプロピルアクリルアミド-スチレンジブロック共重合体(Mw:5万、NIPAM:Sty=70:30(質量%))
PNIPVM-b-Sty(1):特開2019-83761号公報に記載の重合法を参考に合成したPNIPVM-スチレンジブロック共重合体(Mw:7万、NIPVM:Sty=90:10(質量%))
PNIPVM-b-Sty(2):特開2019-83761号公報に記載の重合法を参考に合成したPNIPVM-スチレンジブロック共重合体(Mw:5万、NIPVM:Sty=70:30(質量%))
PNIPAM-b-AMS:特開2019-83761号公報に記載の重合法を参考に合成したN-イソプロピルアクリルアミド-α―メチルスチレンジブロック共重合体(Mw:7万、NIPAM:AMS=90:10(質量%))
エポキシド・アリルグリシジルエーテル共重合体:WO2020/022325号公報の製造例2に記載のエポキシド・アリルグリシジルエーテル共重合体
セルロース繊維:(株)スギノマシン製のバイオマスナノファイバー(製品名「BiNFi-s セルロース」、ミクロフィブリル化セルロース繊維)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
【0159】
(実施例及び比較例)
表2、3に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で12分間プレス加硫し、厚みが2mmの加硫ゴム組成物シートを得た。
また、表4にしたがい、得られた未加硫ゴム組成物を用いて、キャップトレッドの形状に合わせて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃で15分間加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。
なお、ベーストレッドゴムの配合は、比較例1の配合とし、硬度を変化させるために、適宜オイル量、フィラー量を調整した。
また、キャップトレッドにベーストレッドがタイヤ半径方向において隣接するようにタイヤを作製した。
【0160】
得られた加硫ゴム組成物、試験用タイヤについて、室温暗所で三ヶ月保管した後、下記の評価を行った。結果を表2~4に示した。
【0161】
(水による接触角の測定)
厚みが2mmの加硫ゴム組成物シートを用いて、水による接触角を測定した。
具体的には、厚みが2mmの加硫ゴム組成物シートを測定温度に10分間保温してから、水滴20μLをシート表面に滴下し、15秒後の液滴の接触角を接触角測定機を用いて測定した。
なお、測定は、まず測定温度5℃で実施し、その後測定温度60℃で実施した。この結果を1回目の測定結果とした。1回目の測定を行った後、測定後の加硫ゴム組成物シートを1時間、測定面が水と接触する状態で水に浸漬した。水に浸漬した後、加硫ゴム組成物シートを60℃で、24時間乾燥した。そして、乾燥後の加硫ゴム組成物シートを室温まで冷却した後、2回目の測定を、測定温度5℃で実施し、その後測定温度60℃で実施した。この結果を2回目の測定結果とした。2回目の測定結果を表2、3に示す。
【0162】
(ゴム硬度(Hs))
各試験用タイヤのキャップトレッド、ベーストレッドから切り出したゴムを試験片として硬度を測定した。具体的には、JIS K6253-3(2012)の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ」に従って、タイプAデュロメータにより、試験片の硬度を測定した(JIS-A硬度)。測定は25℃で行った。
【0163】
(アイスグリップ性能)
試験用タイヤを国産2000ccのFR車に装着し、氷上を実車走行し、アイスグリップ性能を評価した。アイスグリップ性能評価としては、具体的には、上記車両を用いて氷上を走行し、時速30km/hでロックブレーキを踏み、停止させるまでに要した停止距離(氷上制動停止距離)を測定し、比較例5を100としたときの指数で表示した(アイスグリップ性能指数)。指数が大きいほど、氷上での制動性能(アイスグリップ性能)に優れることを示す。
【0164】
(ドライグリップ性能)
試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、ドライアスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、比較例5を100としたときの指数で表示した(ドライグリップ性能指数)。指数が大きいほど、制動距離が短く、ドライグリップ性能に優れることを示す。
【0165】
【表2】
【0166】
【表3】
【0167】
【表4】
【0168】
表2、3より、スチレン系エラストマーと、温度変化により親水性が変化する温度応答性樹脂とを含むエラストマー組成物であって、上記エラストマー組成物は、10℃以上の温度差がある所定の2点温度において、低温側温度における接触角/高温側温度における接触角 ≦0.90を満たし、上記低温側の温度は25℃未満である、実施例のエラストマー組成物は、温度変化により親水性(接触角)が変化することで、組成物中の他の成分との相溶性が変化し、温度変化に応答してタイヤ性能を変化させることができることが分かった。
また、表4より、実施例のタイヤは、アイスグリップ性能、ドライグリップ性能の総合性能(アイスグリップ性能、ドライグリップ性能の2つの指数の総和で表す)に優れることが分かった。
また、比較例2と実施例の比較より、スチレン系エラストマーは、天然ゴムと比較して、親油性であり、LCSTを有する材料と、LCSTよりも高温側では相溶しやすく、かつ、LCSTよりも低温側では非相溶となりやすいため、タイヤ性能を低温・高温で変化させやすいものと推測される。