(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125115
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】エキソソーム標的DNAワクチン
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220819BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220819BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220819BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220819BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220819BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220819BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220819BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20220819BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20220819BHJP
A61K 47/69 20170101ALI20220819BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20220819BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220819BHJP
C07K 14/47 20060101ALN20220819BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20220819BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20220819BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C12N15/63 Z
C12N15/62
C07K19/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/00 H
A61K35/12
A61K47/69
A61K47/64
A61K9/127
C07K14/47
C07K14/705
C12N5/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022102635
(22)【出願日】2022-06-27
(62)【分割の表示】P 2020132877の分割
【原出願日】2016-04-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 9th VACCINE & ISV CONGRESS,PROGRAMME BOOKの表紙、目次頁、公開日:平成27年10月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 9th VACCINE & ISV CONGRESSのオンライン要旨集で公開された要旨、公開日:平成27年10月5日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 9th VACCINE & ISV CONGRESSの発表スライド、公開日:平成27年10月18日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第19回日本ワクチン学会学術集会の要旨集の表紙、116頁、公開日:平成27年10月31日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第19回日本ワクチン学会学術集会の発表スライド、公開日:平成27年11月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日本免疫学会総会・学術集会記録 第44巻のプログラムの表紙、92頁、奥付、公開日:平成27年10月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 日本免疫学会総会・学術集会記録 第44巻のプロシーディングス(要旨集)の表紙、168頁、奥付、公開日:平成27年10月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第44回日本免疫学会総会・学術集会の発表スライド、公開日:平成27年11月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第44回日本免疫学会総会・学術集会の発表ポスター、公開日:平成27年11月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第9回次世代アジュバント研究会のプログラム・講演要旨集の表紙、2、3、6、7、39頁、奥付、公開日:平成28年1月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 第9回次世代アジュバント研究会の発表ポスター、公開日:平成28年1月19日
(71)【出願人】
【識別番号】505314022
【氏名又は名称】国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100118371
【弁理士】
【氏名又は名称】▲駒▼谷 剛志
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】石井 健
(72)【発明者】
【氏名】小檜山 康司
(72)【発明者】
【氏名】神沼 智裕
(57)【要約】
【課題】DNAワクチンを提供すること。
【解決手段】本発明者らはヒト臨床に用いることができるDNAワクチンを提供するため、抗原性をさらに高めるために、DDSのツールとして注目を浴びているエキソソームに着目し、エキソソーム(細胞外微粒子)構成タンパク質とワクチン抗原の融合抗原を発現するエキソソームが細胞傷害性T細胞誘導能に優れることを見出した。したがって、本発明は、エキソソームマーカータンパク質をコードする核酸配列と、ワクチン抗原をコードする核酸配列とを含む核酸構成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規DNAワクチンに関する。より特定すると本発明は、エキソソーム標的DNAワクチンに関し、エキソソーム(細胞外微粒子)構成タンパク質とワクチン抗原の融合抗原を発現する細胞障害性T細胞誘導能に優れた新規DNAワクチンの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAワクチンは約20年前に開発されたが、未だヒトの臨床には使用されていない。その原因として、期待通りの免疫原性を得ることができない点、ゲノムへのインテグレートの危険性とそれに伴うガン化の危険性、DNAワクチン投与後に生じるゲノムに対する自己免疫疾患を引き起こす危険性、抗生物質の配列が組み込まれているプラスミドをDNAワクチン投与後に生じる薬剤耐性獲得の危険性があり、世界中でその改良が進められている。
【0003】
非特許文献1は抗原をエキソソームに内包し、そのエキソソームをマウスに投与することでTh1型のT細胞応答を誘導することを開示する。
【0004】
特許文献1はエキソソームを含む複合体とドラッグデリバリーに関する技術を開示する。
【0005】
非特許文献2は抗原(OVA)とHIV-1 Gagタンパク質を融合したプラスミドをDNAワクチン。DNAワクチン後に細胞からウイルス様粒子(細胞外微粒子)が放出されることを開示す
る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開WO 2014054588 A1公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Blood, 19 MARCH 2009, vol. 113, num. 12, 2673-2683.
【非特許文献2】Journal of Extracellular Vesicles, 2014, 3: 24646.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはヒト臨床に用いることができるDNAワクチンを提供するため、抗原性をさらに高めるために、DDSのツールとして注目を浴びているエキソソームに着目し、エキソソーム(細胞外微粒子)構成タンパク質とワクチン抗原の融合抗原を発現する細胞障害性T細胞誘導能に優れることを見出した。
【0009】
具体的には、エキソソームのマーカーとして一般的に知られ、使用されているテトラスパニンファミリータンパク質であるCD63と抗原(OVA:卵白アルブミン)を融合した抗原を発現するプラスミドDNAを作製した。このプラスミドDNAをマウスに免疫したところ、OVA単独を発現するDNAワクチン投与群に比べ、CD63との融合抗原を発現するDNAワクチン投与群においてT細胞応答の増強を認めることが出来た。また、抗原特異的なCTL(細胞傷害性T細胞)の数も増強していることも認められた。さらに、OVAを発現した腫瘍細胞をマウスに移植し、移植7日後に作製したプラスミドDNAを単回投与した。その結果、発現ベクター投与群と比較して腫瘍の増殖を有意に抑制した。以上のことより、エキソソームマーカータンパク質CD63とワクチン抗原の融合抗原を発現するDNAワクチンは、抗原特異的なCTL誘導能を増強するという、新規な予防・治療技術として有用であることを見出した。
(1)エキソソームマーカータンパク質をコードする核酸配列と、ワクチン抗原をコードする核酸配列とを含む核酸構成物。
(2)前記エキソソームマーカータンパク質はエキソソームの膜に存在するタンパク質である項目1に記載の核酸構成物。
(3)前記エキソソームマーカータンパク質はテトラスパニンファミリーに属する項目1または2に記載の核酸構成物。
(4)前記エキソソームマーカータンパク質はCD63、CD81、CD9、CD31、HLA-G、TSG101、Rab5bおよびALIXからなる群より選択される項目1~3のいずれか一項に記載の核酸構成物。
(5)前記エキソソームマーカータンパク質はCD63、CD81およびCD9からなる群より選択される項目1~4のいずれか一項に記載の核酸構成物。
(6)前記抗原は、がん抗原およびウイルス抗原から選択される項目1~5のいずれか一項に記載の核酸構成物。
(7)プラスミドDNAである項目1~6のいずれか一項に記載の核酸構成物。
(8)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物を含むDNAワクチン。
(9)Th1型の免疫誘導を改善するための項目8に記載のDNAワクチン。
(10)がんまたはウイルス疾患を対象とすることを特徴とする、項目8または9に記載のDNAワクチン。
(11)ワクチン抗原タンパク質とエキソソームマーカータンパク質とを融合した形態であるタンパク質。
(11A)さらに上記項目の1つまたは複数の特徴を備える、項目11に記載のタンパク質。
(12)ワクチン抗原タンパク質とエキソソームマーカータンパク質とを融合した形態で含む、エキソソーム。
(12A)さらに上記項目の1つまたは複数の特徴を備える、項目12に記載のエキソソーム。
(13)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物、項目8~10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームを含む免疫応答増強剤。
(14)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物、項目8~10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームを含むT細胞応答を増強するための組成物。
(15)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物、項目8~10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームを含む細胞傷害剤。
(16)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物、項目8~10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームを含む医薬。
(17)項目1~9のいずれかに記載の核酸構成物、項目10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームを含むがんを治療または予防するための医薬。
(18)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物、項目8~10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームの有効量を被験者に投与する工程を包含する、被験者における免疫応答を増強する方法。
(19)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物、項目8~10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームの有効量を被験者に投与する工程を包含する、T細胞応答を増強するための方法。
(20)項目1~7のいずれかに記載の核酸構成物、項目8~10に記載のDNAワクチン、項目11または11Aに記載のタンパク質または項目12または12Aに記載のエキソソームの有効量を被験者に投与する工程を包含する、がんを治療または予防するための方法。
(21)エキソソームマーカータンパク質をコードする核酸配列を含む、ワクチンDNAの免疫原性を改善するための組成物。
(22)前記エキソソームマーカータンパク質はエキソソームの膜に存在するタンパク質である項目21に記載の組成物。
(23)前記エキソソームマーカータンパク質はテトラスパニンファミリーに属する項目21または22に記載の組成物。
(24)前記エキソソームマーカータンパク質はCD63、CD81、CD9、CD31、HLA-G、TSG101、Rab5bおよびALIXからなる群より選択される項目21~23のいずれか一項に記載の組成物。
(25)前記エキソソームマーカータンパク質はCD63、CD81およびCD9からなる群より選択される項目21~24のいずれか一項に記載の組成物。
(26)前記ワクチンDNAに含まれる抗原は、がん抗原およびウイルス抗原から選択される項目21~25のいずれか一項に記載の組成物。
(27)前記ワクチンDNAはプラスミドDNAである項目21~26のいずれか一項に記載の組成物。
(27A)さらに上記項目1~11、11A、12、12A,13~20のいずれか一項または複数に記載の特徴をさらに含む項目21~27のいずれか一項に記載の組成物。 本発明において、上記1または複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、従前達成できなかった臨床応用可能なDNAワクチンを提供するという効果を奏する。例えば、本発明のDNAワクチン投与により、従来の抗原含有エキソソーム自体を投与したよりも強い抗原特異的CD8+T細胞応答などの強い抗原特異的なT細胞応答が誘導される。また、本発明のDNAワクチン投与により、より強い細胞傷害活性が認められる。また、本発明のDNAワクチン投与により、腫瘍に対する高い治療効果が認められる。以上から、DNAワクチンの抗原をエキソソームに標的化することで、DNAワクチンの免疫原性を改善することができることが判明した。
【0011】
本発明は、実施例でも示されるように、テトラスパニンファミリーのタンパク質を使用することで、IgG2(c)の発現がIgG1よりも増加しており、DNAワクチンについて、Th1タイプの免疫応答すなわち細胞性免疫(特に、CD8+T細胞応答)が強化されることが示された。
【0012】
本発明によって達成される結果は、DNAワクチンの抗原をエキソソームにターゲットさせることで、抗原特異的CD8+T細胞を強く誘導できる、臨床応用可能なDNAワクチンを提供することができることを示している。実施例で実証されるように、精製したOVA含有エキソソームで免疫化すると、ナイーブマウスにおいて、OVA-特異的CD4+およびCD8+T細胞の誘導を惹起することができた。他方、OVAタンパク質のみ、または小胞体を標的とするカルネキシン-OVA融合タンパク質をコードするコントロールプラスミドをトランスフェクトした細胞から精製したエキソソームによる免疫化ではその惹起が起きなかった。pCD63-OVAによるマウスのワクチン接種は、強力な抗原特異的T細胞応答、特にCD8+T細胞の応答を誘導した。加えて、CD63によるエキソソーム標的化は、カルネキシンによるER-標的化よりも良好なCD8+T細胞応答をもたらした。実施例で実証されるように、治療用ワクチンとしてのpCD63-OVAを評価するため、本発明者らがマウス腫瘍移植モデルを用いた際には、エキソソーム標的化DNAによるワクチン接種は、コントロールDNAワクチン接種と比較して、顕著に腫瘍成長を阻害した。本発明の結果から、DNAワクチン接種によるエキソソームへの抗原標的化が、コードされる抗原への強いCD8+T細胞応答の惹起のためのツールとなり得、そして、癌ワクチンとして有用であり得ることが示された。CD63と同様の効果は、テトラスパニン類である、CD9、CD81でも確認された。
【0013】
本発明は、実際の免疫方法等が優れている点で有利であり得る。理論に束縛されることを望まないが、エキソソーム自体よりもDNAワクチンの方が有利であるのは、臨床では自己 (例えば患者自身)のエキソソームを回収して投与する必要があるかもしれません。MHC class IやclassIIを発現していると言われているためである。
【0014】
本発明では、DNAワクチンの形態をとる場合において、容易に作製および基本的には誰にでも投与が可能であり、そこが一つのエキソソーム投与に比べての利点の一つであり、さらに本発明が奏する効果に関しても、用いたDNAplasmid量などを考えると、従来達成し得たレベルを超える程度に高いと言える。また、エキソソームを製造する場合に、従来方法では、抗原含有エキソソームを製造すること自体が困難であったが、DNAプラスミド(ワクチン)を用いることで、容易にエキソソームに抗原を発現させることができる点も一つの利点である。このように、様々な点でエキソソーム自体の投与と比べると優位性があるといえる。また、自己の細胞を使用するときにDNAワクチンにより容易に抗原をエキソソームに発現させることが可能であり、DNAワクチンとしても容易に投与が可能であり、異なるアプローチがすることが可能で、応用の幅が広がったことも利点として特筆すべきである。
【0015】
また、IgG2cが上がりIgG1が下がっているため、細胞性免疫応答(Th1)が有意になったことが証明されており、Th1型の免疫応答の誘導が必要とされる感染症、がん等の処置においてより優位に使用され得ることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】CTL誘導性免疫原としての抗原発現エキソソームの評価。(A、B)293-F細胞および293T細胞に、空ベクター、pOVA、pCD63、pCD63-OVAまたはpCal-OVAを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトの48時間後、上清と細胞とを分離し、エキソソーム画分を精製した。(A)細胞、上清およびエキソソーム画分をイムノブロットによって分析した。(B)細胞および上清に対してELISAを使用してOVAタンパク質濃度を分析した。エラーバーはSDを表す。ラベルについて、それぞれ、aは細胞、bは上清、cはエキソソーム画分を示す。
【
図1B】CTL誘導性免疫原としての抗原発現エキソソームの評価。(A、B)293-F細胞および293T細胞に、空ベクター、pOVA、pCD63、pCD63-OVAまたはpCal-OVAを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトの48時間後、上清と細胞とを分離し、エキソソーム画分を精製した。(A)細胞、上清およびエキソソーム画分をイムノブロットによって分析した。(B)細胞および上清に対してELISAを使用してOVAタンパク質濃度を分析した。エラーバーはSDを表す。黒塗りのバーは細胞、白塗りのバーは上清を示す。
【
図1C】CTL誘導性免疫原としての抗原発現エキソソームの評価。(C)走査電子顕微鏡によるエキソソームの検出。左の走査電子顕微鏡は、空ベクターをトランスフェクトした293F細胞由来のエキソソームを示し、陰性対照である。右の走査電子顕微鏡は、pCD63-OVAトランスフェクト293F細胞由来のエキソソームである。スケールバーは100nmを表す。
【
図1D】CTL誘導性免疫原としての抗原発現エキソソームの評価。C57BL/6Jマウス(n=6)に、pOVAトランスフェクト細胞、pCD63-OVAトランスフェクト細胞またはpCal-OVAトランスフェクト細胞から単離した精製エキソソーム、あるいはOVAタンパク質を皮内経路で導入して免疫化した。0日目および7日目における免疫化後の14日目に、血清および脾臓を使用して、OVA特異的IgG価、OVA特異的血清IgG1価およびOVA特異的血清IgG2c価を測定した。縦軸はそれぞれの抗体価を対数表示で表す。データは2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。横軸のラベルについて、左からそれぞれ、OVAはpOVAをトランスフェクトした細胞、CD63-OVAはpCD63-OVAをトランスフェクトした細胞、Cal-OVAはpCal-OVAをトランスフェクトした細胞から単離した精製エキソソームを使用した場合を示し、OVA proteinはOVAタンパク質を使用した場合を示し、NCは陰性対照を示す。
【
図1E】CTL誘導性免疫原としての抗原発現エキソソームの評価。C57BL/6Jマウス(n=6)に、pOVAトランスフェクト細胞、pCD63-OVAトランスフェクト細胞またはpCal-OVAトランスフェクト細胞から単離した精製エキソソーム、あるいはOVAタンパク質を皮内経路で導入して免疫化した。0日目および7日目における免疫化後の14日目に、血清および脾臓を使用して、OVA、OVA
257-26
4、OVA
323-339または培地によって脾臓細胞において誘導されるIFN-γレベルを測定した。データは2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。バーのラベルは、それぞれ、aが培地、bがOVA
257-264、cがOVA
323-339、dがOVAを示す。横軸のラベルについて、左からそれぞれ、OVAはpOVAをトランスフェクトした細胞、CD63-OVAはpCD63-OVAをトランスフェクトした細胞、Cal-OVAはpCal-OVAをトランスフェクトした細胞から単離した精製エキソソームを使用した場合を示し、OVA proteinはOVAタンパク質を使用した場合を示し、NCは陰性対照を示す。
【
図1F】CTL誘導性免疫原としての抗原発現エキソソームの評価。C57BL/6Jマウス(n=6)に、pOVAトランスフェクト細胞、pCD63-OVAトランスフェクト細胞またはpCal-OVAトランスフェクト細胞から単離した精製エキソソーム、あるいはOVAタンパク質を皮内経路で導入して免疫化した。0日目および7日目における免疫化後の14日目に、血清および脾臓を使用して、OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合を測定した。上図は、CD44およびOVAクラスIテトラマーについてのFACS分析の結果であり、下図は、上図において囲われた領域中に存在する細胞の割合を示す。データは2つの独立した実験を代表している。
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。バーのラベルは、それぞれ、aが培地、bがOVA
257-264、cがOVA
323-339、dがOVAを示す。横軸のラベルについて、左からそれぞれ、OVAはpOVAをトランスフェクトした細胞、CD63-OVAはpCD63-OVAをトランスフェクトした細胞、Cal-OVAはpCal-OVAをトランスフェクトした細胞から単離した精製エキソソームを使用した場合を示し、OVA proteinはOVAタンパク質を使用した場合を示し、NCは陰性対照を示す。
【
図1G】C57BL/6Jマウス(n=5)に、pCD63トランスフェクト細胞、pOVAトランスフェクト細胞、pCD63-OVAトランスフェクト細胞またはpCalnexin-OVAトランスフェクト細胞から単離した精製エキソソーム、あるいはOVAタンパク質を皮内経路で導入して免疫化した。0日目、14日目および28日目における免疫化後の35日目に、脾臓を使用して、OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合を測定した。横軸のラベルについて、左からそれぞれ、CD63はpCD63をトランスフェクトした細胞、OVAはpOVAをトランスフェクトした細胞、CD63-OVAはpCD63-OVAをトランスフェクトした細胞、Calnexin-OVAはpCalnexin-OVAをトランスフェクトした細胞から単離した精製エキソソームを使用した場合を示す。
【
図2A】エキソームへの抗原標的化がDNAワクチンの免疫原性に及ぼす影響。(A-C)C57BL/6Jマウス(n=6)にpOVA、pCD63またはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目に、OVA特異的IgG価、OVA特異的血清IgG1価およびOVA特異的血清IgG2c価を測定し、OVA特異的血清IgG2cとOVA特異的血清IgG1との比をモニターした。データは、2つの独立した実験を代表している。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図2B】エキソームへの抗原標的化がDNAワクチンの免疫原性に及ぼす影響。C57BL/6Jマウス(n=6)にpOVA、pCD63またはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目に、OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合(B)、ならびにOVA、OVA
257-264、OVA
323-339または培地によって脾臓細胞において誘導されるIFN-γレベル(C)をモニターした。データは、2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図2C】エキソームへの抗原標的化がDNAワクチンの免疫原性に及ぼす影響。C57BL/6Jマウス(n=6)にpOVA、pCD63またはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目に、OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合(B)、ならびにOVA、OVA
257-264、OVA
323-339または培地によって脾臓細胞において誘導されるIFN-γレベル(C)をモニターした。データは、2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。バーのラベルは、それぞれ、aが培地、bがOVA
257-264、cがOVA
323-339、dがOVAを示す。
【
図2D】エキソームへの抗原標的化がDNAワクチンの免疫原性に及ぼす影響。C57BL/6Jマウス(n=10)にpCal-OVAまたはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目に、OVA特異的IgG価、OVA特異的血清IgG1価およびOVA特異的血清IgG2c価を測定し、OVA特異的血清IgG2cとOVA特異的血清IgG1との比をモニターした。一番左のグラフは総IgGについてOVA特異的IgG価(抗体OVA力価)を対数表示で表し、左から2番目および3番目は、同様の数値をIgG1およびIgG2cについて観測した結果を示す。一番右のグラフはOVA特異的血清IgG2cとOVA特異的血清IgG1との比(IgG2c/IgG1)を表す。
*はp<0.05を表す(Mann-WhitneyのU検定)。NSは統計学的有意差が見いだされなかったものを示す。
【
図2E】エキソームへの抗原標的化がDNAワクチンの免疫原性に及ぼす影響。C57BL/6Jマウス(n=10)にpCal-OVAまたはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目に、OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合(F)およびOVA、OVA
257-264、OVA
323-339または培地によって脾臓細胞において誘導されるIFN-γレベル(E)を、モニターした。データは、3つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。バーのラベルは、それぞれ、aが培地、bがOVA
257-264、cがOVA
323-339、dがOVAを示す。
【
図2F】エキソームへの抗原標的化がDNAワクチンの免疫原性に及ぼす影響。C57BL/6Jマウス(n=10)にpOVA、pCal-OVAまたはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目に、OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合(F)およびOVA、OVA
257-264、OVA
323-339または培地によって脾臓細胞において誘導されるIFN-γレベル(E)を、モニターした。データは、3つの独立した実験を代表している。
*はp<0.05を表す(Mann-WhitneyのU検定)(なお、pCD63-OVAのpCal-OVAに対するp値は0.023であった。)。
【
図3A】共投与したDNAワクチンに対する遺伝子アジュバントとしてのCD63発現プラスミドの評価。(A,B)C57BL/6Jマウス(n=5)にpOVA、pCD63、pOVA+pCD63、またはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。OVA、OVA
257-264、OVA
323-339または培地によって脾臓細胞において誘導されるIFN-γまたはIL-2レベル(A)およびOVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合(B)を、0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目にモニターした。データは2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。バーのラベルは、それぞれ、aが培地、bがOVA
257-264、cがOVA
323-339、dがOVAを示す。
【
図3B】共投与したDNAワクチンに対する遺伝子アジュバントとしてのCD63発現プラスミドの評価。(A,B)C57BL/6Jマウス(n=5)にpOVA、pCD63、pOVA+pCD63、またはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。OVA、OVA
257-264、OVA
323-339または培地によって脾臓細胞において誘導されるIFN-γまたはIL-2レベル(A)およびOVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合(B)を、0日目および14日目にこれらのプラスミドで免疫化した後の21日目にモニターした。データは2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図4A】エキソームへの抗原標的化が予防および治療用腫瘍ワクチンに及ぼす影響。(A)pOVA(n=5)、pCD63-OVA(n=5)またはpCD63(n=5)を用いたDNAワクチン化の7日後に、インビボCTLアッセイを実施した。データは2つの独立した実験を代表している。上図の横軸はCFSEの蛍光強度を対数表示し、縦軸は蛍光強度に対応する細胞の数を示す。下図では、細胞をCFSEで染色し、蛍光強度の強い細胞が細胞障害性T細胞により殺される実験を行った。殺された細胞の割合により、どのくらいマウスの中で細胞障害性T細胞が誘導されているかを評価するものである。下図は生き残った蛍光強度の強い細胞の割合を示す。エラーバーはSDを表す。
【
図4B】(B)C57BL/6Jマウス(n=10)にpOVA、pCD63またはpCD63-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。最後の免疫化の7日後に、マウスに1×10
6個のE.G7細胞を接種した。その後の28日間にわたって腫瘍の増殖をモニターした。データは2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSEMを表す。
【
図4C】(C)免疫化の10日前に、マウスに1×10
6個のE.G7細胞を接種した。群毎に10匹のマウスを、50μgのpOVA-FL抗原、pCD63-OVA-FL抗原または空ベクターで免疫化した。その後の25日間にわたって腫瘍の増殖をモニターした。データは3つの独立した実験を代表している。エラーバーはSEMを表す。
【
図4D】(D)OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合を、E.G7細胞の接種後25日目にモニターした。データは2つの独立した実験を代表している。エラーバーはSDを表す。
【
図5】エキソソーム画分中のCD63-OVA-EGFP(EGFPはエンハンストGFPを示す。)。293F細胞に、pCD63-OVA-EGFPベクターまたは空ベクターのいずれかを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトの48日後、それぞれの培養物の上清を収集した。エキソソーム画分を決定するためのゲーティング戦略は、PBS、100nmビーズおよび200nmビーズを使用することによるSSC対FCSに基づくものであった。フローサイトメトリーによる分析の結果を示す。上段は左から、それぞれ、PBS、100nmビーズ、200nmビーズを使用した場合である。下段の左は上清の分析であり、右はゲーティング後のエキソソーム画分である。
【
図6A】DNAワクチン化のためのOVAと融合させた他のエキソソームマーカーの免疫学的恩恵の評価。(A、B)293-F細胞および293T細胞に、空ベクター、pCD9-OVA-FL抗原またはCD81-OVA-FL抗原を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトの48日後、エキソソームを細胞上清から精製した。(A)細胞およびエキソソームをイムノブロットによって分析した。(B)細胞および上清のOVAタンパク質濃度をELISAによって分析した。ラベルについて、それぞれ、aは細胞、bエキソソーム画分を示す。
【
図6B】DNAワクチン化のためのOVAと融合させた他のエキソソームマーカーの免疫学的恩恵の評価。(A、B)293-F細胞および293T細胞に、空ベクター、pCD9-OVA-FL抗原またはCD81-OVA-FL抗原を一過性にトランスフェクトした。トランスフェクトの48日後、エキソソームを細胞上清から精製した。(A)細胞およびエキソソームをイムノブロットによって分析した。(B)細胞および上清のOVAタンパク質濃度をELISAによって分析した。黒塗りのバーは細胞、白塗りのバーは上清を示す。
【
図6C】C57BL/6Jマウス(n=6)に、pOVA、pCD9-OVA、pCD63-OVAまたはCD81-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。OVA特異的血清IgG2cとOVA特異的血清IgG1との比(C)、OVA、OVA
257~264、OVA
323~339または培地によって脾臓細胞において誘導されたIFN-γレベル(ng/ml)(D)、およびOVA
257~264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合を、モニターした。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。
【
図6D】C57BL/6Jマウス(n=6)に、pOVA、pCD9-OVA、pCD63-OVAまたはCD81-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。OVA特異的血清IgG2cとOVA特異的血清IgG1との比(C)、OVA、OVA
257~264、OVA
323~339または培地によって脾臓細胞において誘導されたIFN-γレベル(ng/ml)(D)、およびOVA
257~264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合を、モニターした。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。バーのラベルは、それぞれ、aが培地、bがOVA
257-264、cがOVA
323-339、dがOVAを示す。
【
図6E】C57BL/6Jマウス(n=6)に、pOVA、pCD9-OVA、pCD63-OVAまたはCD81-OVAを筋肉内エレクトロポレーションで導入して免疫化した(50μg/マウス)。OVA特異的血清IgG2cとOVA特異的血清IgG1との比(C)、OVA、OVA
257~264、OVA
323~339または培地によって脾臓細胞において誘導されたIFN-γレベル(ng/ml)(D)、およびOVA
257~264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合を、モニターした。
*はp<0.05を表し、
**はp<0.005を表す(Mann-WhitneyのU検定)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0018】
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0019】
本明細書中において「ワクチン」は、抗原を含む物質に対し能動免疫を提供するが、疾患は引き起こさない抗原を含有またはコードする物質を意味する。本明細書において「DNAワクチン」とは、ワクチン抗原をコードする核酸を意味し、主としてDNA(特に、プラスミドDNA)が使用されるためこのような一般名称が使用される。なお、核酸を使用した実施形態としては、ウイルスベクターなどに組み込んで生体内に送達する態様もあり、この場合、DNA以外の核酸形態での提供もされ得ることが理解される。このような場合は「核酸ワクチン」とも称する。通常、DNAワクチンはプラスミドDNAの形態をとるが、プラスミドDNAの形態でDNAワクチンを皮下に投与すると、プラスミドDNAは皮下細胞に取り込まれ、その細胞内で目的の抗原タンパク質を産生する。
【0020】
DNAワクチン接種は、感染性疾患のみではなく非伝染性疾患に対しても適用可能な、ヒト疾患のための予防方法および/または治療方法となり得る。DNAワクチンの臨床的利益は、それらのコストの低さ、安定性および高い生産性、ならびに高度に変異した病原体に対して働くようにそれらの抗原配列を容易に改変することができる点で有利である。獣医学の分野では、DNAワクチンは、ウマにおいて西ナイルウイルス、サーモンにおいて伝染性造血器壊死ウイルス、そしてイヌにおいてメラノーマについて既に認可されている。ヒトにおける早期臨床試験の結果は、DNAワクチンが安全かつ良耐容性であることを示していたが、DNAワクチンの免疫原性は、動物実験の結果に基づいて予期されていたよりもはるかに低い。例えば、抗原配列におけるプロモーターまたはコドン使用の変更、遺伝的アジュバントの挿入、ブーストワクチン接種の追加、外部アジュバントとのワクチンの混合、および経路またはデバイスの改良を通じたワクチンの投与などでは解決できていない。
【0021】
本明細書において「プラスミドDNA」とは、当該分野において通常使用される意味で用いられ、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子をいう。一般的に環状の2本鎖構造をとり、染色体のDNAからは独立して複製を行うため、ベクターとして用いることにより遺伝子を導入する目的で使用することができる。プラスミドには、薬剤に対する耐性を示す蛋白質の遺伝子を持つものやFプラスミドと呼ばれる細菌の接合を起こし他の細菌を形質転換させるものなど、さまざまな役割を持つものがあり、本発明において目的に応じて適宜選択し利用することができる。
【0022】
本明細書において「核酸構成物」とは核酸コンストラクトとも言われ、核酸を含む構成物または構築物(コンストラクト)をいう。核酸構成物としては、単なる核酸断片のほか、プラスミドDNAの形式をとるものや、DNAワクチンの機能を持つものなどが含まれる。
【0023】
本明細書において「抗原」(antigen;Agともいう。)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。本明細書において「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体またはリンパ球レセプターが結合する抗原分子中の部位をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。本発明の抗体としては、特定の実施例の抗体のみならず、エピトープが同じであれば、他の配列を有する抗体であっても同様に利用することができることが理解される。
【0024】
本明細書において「ワクチン抗原」とは、ヒトまたは動物に投与された場合に免疫系の応答を誘発する能力を有する抗原を意味する。この免疫系の応答は、抗体の産生またはある種の細胞(特に、抗原提示細胞(例えば、樹状細胞)、Tリンパ球、Bリンパ球)の活性化を引き起こすことができる。本発明では、例えば、がんを対象とする治療の場合は、がん抗原を例示できるがこれに限定されない。例えば、オボアルブミンはモデルワクチン抗原として用いることができ、モデル動物での試験により抗がん活性を試験することができる。そのような試験については、Onishi M. et al., J Immunol 194: 2673-2682などを参考に実施することができ、CTL活性等についても、Kobiyama K. et al., Proc Natl Acad Sci U S A 111: 3086-3091などを参考に試験することができる。本明細書において「ワクチン抗原」について、タンパク質のみを意味する場合「ワクチン抗原タンパク質」と称することがある。
【0025】
本明細書において「エキソソーム」とは、当該分野において通常使用される意味で用いられ、細胞で分泌される通常直径30nm~150nm、好ましくは30~100nm程度の膜小胞であり、様々なRNAを分解する多タンパク複合体であり、多小胞体の原形質膜との融合を通じて、全てのタイプの細胞から分泌される。エキソソームは、例えば、血漿、母乳、精液、唾液、および尿といった様々な体液に存在する。興味深いことに、DNA、RNA、miRNA、タンパク質、および脂質は多くはエキソソームの内部に含有される。これらの小胞は、細胞-細胞間のコミュニケーションを媒介し、そして免疫調節に密接に関連していることを示した(Poutsiaka, D. D., D. D. Taylor, E. M. Levy, and P. H. Black. 1985. J Immunol 134: 145-150.)。MHCクラスIおよびIIの両方、ならびにCD4+およびCD8+T細胞を刺激する共刺激分子を発現するAPCは、エキソソームを分泌する(Robbins, P. D., and A. E. Morelli. 2014. Nat Rev Immunol 14: 195-208、Bobrie, A., M. Colombo, G. Raposo, and C. Thery. 2011. Traffic 12: 1659-1668)。加えて、成熟樹状細胞(DC)由来のエキソソームは、未成熟樹状細胞を活性化し、それらの抗原提示能力を増大させることができる(Montecalvo, A., et al., 2012. Blood 119: 756-766.)。抗原含有エキソソームは、がん治療のためのワクチンとしても用いることができる(Raposo, G., et al., 1996. J Exp Med 183: 1161-1172.)。しかし、DNAワクチンの材料としてエキソソームを用いることは示唆されていない。
【0026】
エキソソームの表面マーカーとしてテトラスパニンファミリータンパク質が知られている。エキソソームは脂質が主成分とされるが、エキソソームには、様々なタンパク質や脂質、RNA(miRNAを含む)が含まれている。別の細胞に運搬されることによって機能的変化や生理的変化を引き起こすとされている。本明細書で使用される場合、エキソソームは、天然に存在するものにおいて、本発明のDNAワクチンを発現させたものが代表的に利用されるが、エキソソームにはさらに改変が加えられてもよい。そのような改変は、DNAワクチンとして使用することができる限りどのような改変を行ってもよいことが理解される。エキソソームは、感染性病原体や腫瘍に対する適応免疫応答の媒介、組織修復、神経伝達や病原性タンパク質の運搬などの役割を持つことが示唆されている。詳細は、例えば、Trends Mol Med. 2015 Jul 28. pii: S1471-49 14(15)00137-9.を参照に記載されており、本明細書においてその内容を援用する。
【0027】
本明細書において「エキソソームマーカータンパク質」とは、エキソソームに含まれる任意のタンパク質をいう。そのようなタンパク質としては、テトラスパニンファミリーのタンパク質(例えば、CD9、CD63、CD81等)、Alix、Tsg101、Hsp70等の熱ショックタンパク質等を挙げることができる(例えば、Trends Mol Med. 2015 Jul 28. pii: S1471-1491 4(15)00137-9.(Trends Mol Med. Volume 21, Issue 9, September 2015, Pages 533-542);J. Cell Biol. Vol. 200 No. 4,373-383など)を参照のこと)。
【0028】
本明細書において「テトラスパニンファミリー」とは、細胞膜を4回貫通する構造を持つ膜タンパクファミリーで、ヒトではCD9、CD63、CD81、CD82、CD151など少なくとも33種類のメンバーが知られている。テトラスパニンの機能は、概していうと、他の膜タンパクと結合してコンプレックスを形成するものである。そのためmolecular facilitatorまたはmolecular organizerとも呼ばれる。本発明では、実施例においてCD63と同様の効果は、テトラスパニン類である、CD9、CD81でも確認されていることから、テトラスパニンファミリーのタンパク質であれば、どのようなものでもDNAワクチンにおいて有利に使用され得ることが理解される。
【0029】
CD63は、テトラスパニンファミリーのメンバーである。CD63は、LAMP-3、ME491、MLA1、OMA81H、TSPAN30とも呼ばれる。ヒトCD63の核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれNCBI登録番号NM_001040034(配列番号1)およびNP_001244318(配列番号2)に開示されており、マウスの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、NM_001042580(配列番号3)およびNP_001036045(配列番号4)に開示されており、本明細書でもこれらの情報を援用する。CD63としては、OMIM: 155740 HomoloGene: 375267とのアクセッション番号で同定されうる。本明細書の目的で使用される場合は、「CD63」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。
【0030】
CD9は、テトラスパニンファミリーのメンバーである。CD9は、BTCC-1、DRAP-27、MIC3、MRP-1、TSPAN-29、TSPAN29とも呼ばれる。ヒトCD9の核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれNCBI登録番号NM_001769(配列番号5)およびNP_001760(配列番号6)に開示されており、マウスの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、NM_007657(配列番号7)およびNP_031683(配列番号8)に開示されており、本明細書でもこれらの情報を援用する。CD9としては、OMIM: 143030 MGI: 88348 HomoloGene: 20420 GeneCards: CD9 Geneとのアクセッション番号で同定されうる。本明細書の目的で使用される場合は、「CD9」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。
【0031】
CD81は、テトラスパニンファミリーのメンバーである。CD81は、CVID6、S5.7、TAPA1、TSPAN28とも呼ばれる。ヒトCD81の核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれNCBI登録番号NM_001297649(配列番号9)およびNP_001284578(配列番号10)に開示されており、マウスの核酸配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、NM_133655(配列番号11)およびNP_598416(配列番号12)に開示されており、本明細書でもこれらの情報を援用する。CD81としては、OMIM: 186845 MGI: 1096398 HomoloGene: 20915 ChEMBL: 1075180 GeneCards: CD81 Geneとのアクセッション番号で同定されうる。本明細書の目的で使用される場合は、「CD81」は、特定の配列番号またはアクセッション番号に記載されるアミノ酸配列を有するタンパク質(あるいはそれをコードする核酸)のみならず、機能的に活性なその誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシー条件または低ストリンジェンシー条件下で、このタンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、意味することが理解される。
【0032】
なお、本発明で挙げる他のタンパク質すべてにも同じことがあてはまる。従って、既定のタンパク質または核酸の名称は、本明細書に明示されるようなタンパク質または核酸を指すだけでなく、機能的に活性な誘導体、または機能的に活性なそのフラグメント、またはその相同体、または高ストリンジェンシーまたは低ストリンジェンシー条件下で、好ましくは上述のような条件下で、前記タンパク質をコードする核酸にハイブリダイズする核酸にコードされる変異体もまた、指す。本明細書で使用される「誘導体」または「構成要素タンパク質の類似体」または「変異体」は、好ましくは、限定を意図するものではないが、構成要素タンパク質に実質的に相同な領域を含む分子を含み、このような分子は、種々の実施形態において、同一サイズのアミノ酸配列にわたり、または当該分野で公知のコンピュータ相同性プログラムによってアラインメントを行ってアラインされる配列と比較した際、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または99%同一であるか、あるいはこのような分子をコードする核酸は、ストリンジェントな条件、中程度にストリンジェントな条件、またはストリンジェントでない条件下で、構成要素タンパク質をコードする配列にハイブリダイズ可能である。これは、それぞれ、アミノ酸置換、欠失および付加によって、天然存在タンパク質を修飾した所産であり、その誘導体がなお天然存在タンパク質の生物学的機能を、必ずしも同じ度合いでなくてもよいが示すタンパク質を意味する。例えば、本明細書において記載されあるいは当該分野で公知の適切で利用可能なin vitroアッセイによって、このようなタンパク質の生物学的機能を調べることも可能である。
【0033】
本明細書で使用される「機能的に活性な」は、本明細書において、本発明のポリペプチド、すなわちフラグメントまたは誘導体が関連する態様に従って、生物学的活性などの、タンパク質の構造的機能、制御機能、または生化学的機能を有する、ポリペプチド、すなわちフラグメントまたは誘導体を指す。本発明において、エキソソームマーカータンパク質やテトラスパニンファミリーに属するタンパク質のフラグメントとは、タンパク質または核酸の場合、エキソソームマーカータンパク質やテトラスパニンファミリーに属するタンパク質の任意の領域を含むポリペプチドであり、本発明の目的を達成し得る限り天然のエキソソームマーカータンパク質やテトラスパニンファミリーに属するタンパク質の生物学的機能を有していなくてもよい。
【0034】
CD63の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1または3に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1または3に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)~(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)~(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CD63の有する活性をいう。
【0035】
CD63のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1または3に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2または4に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)~(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CD63の有する活性をいう。
【0036】
CD9の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号5または7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)~(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)~(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CD9の有する活性をいう。
【0037】
CD9のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号5または7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号6または8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)~(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CD9の有する活性をいう。
【0038】
CD81の代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号9または11に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号10または12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号10または12に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号9または11に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号10または12に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)~(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)~(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CD81の有する活性をいう。
【0039】
CD81のアミノ酸配列としては、
(a)配列番号10または12に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号10または12に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号9または11に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号10または12に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)~(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。ここで、生物学的活性とは、代表的に、CD81の有する活性をいう。
【0040】
これらはいずれも、当該分野で公知の手法を用いて同定することができる。そのような手法として参考にできる文献として本明細書において他に言及した文献等を挙げることができる。
【0041】
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされたものを包含し得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)が包含される。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。本明細書において、「アミノ酸」は、本発明の目的を満たす限り、天然のものでも非天然のものでもよい。
【0042】
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。これらの誘導体等は、DNAワクチンとして使用され得る限り任意の誘導体等が使用され得ることが理解される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’-O-メチル-リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’-P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC-5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC-5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’-O-プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’-メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzer et al., Nucleic Acid Res.19:5081 (1991);Ohtsuka et al., J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985);Rossolini et al., Mol. Cell. Probes 8:91-98(1994))。本明細書において「核酸」はまた、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。
【0043】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいい、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」をさすことがある。
【0044】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいい、一般に「相同性」を有するとは、同一性または類似性の程度が高いことをいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。従って本明細書において「相同体」または「相同遺伝子産物」は、本明細書にさらに記載する複合体のタンパク質構成要素と同じ生物学的機能を発揮する、別の種、好ましくは哺乳動物におけるタンパク質を意味する。こうような相同体はまた、「オルソログ遺伝子産物」とも称されることもある。本発明の目的に合致する限り、このような相同体、相同遺伝子産物、オルソログ遺伝子産物等も用いることができることが理解される。
【0045】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST2.2.28(2013.4.2発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。類似性は、同一性に加え、類似のアミノ酸についても計算に入れた数値である。
【0046】
本発明の一実施形態において「数個」は、例えば、10、8、6、5、4、3、または2個であってもよく、それらいずれかの値以下であってもよい。1または数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入、または他のアミノ酸による置換を受けたポリペプチドが、その生物学的活性を維持することは知られている(Mark et al., Proc Natl Acad Sci U S A.1984 Sep;81(18):5662-5666.、Zoller et al.,Nucleic Acids Res. 1982 Oct 25;10(20):6487-6500.、Wang et al., Science. 1984 Jun29;224(4656):1431-1433.)。欠失等がなされた抗体は、例えば、部位特異的変異導入法、ランダム変異導入法、または抗体ファージライブラリを用いたバイオパニング等によって作製できる。部位特異的変異導入法としては、例えばKOD-Plus- Mutagenesis Kit (TOYOBO CO., LTD.)を使用できる。欠失等を導入した変異型抗体から、野生型と同様の活性のある抗体を選択することは、FACS解析やELISA等の各種キャラクタリゼーションを行うことで可能である。
【0047】
本発明の一実施形態において「90%以上」は、例えば、90、95、96、97、98、99、または100%以上であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。上記「相同性」は、2つもしくは複数間のアミノ酸配列において相同なアミノ酸数の割合を、当該技術分野で公知の方法に従って算定してもよい。割合を算定する前には、比較するアミノ酸配列群のアミノ酸配列を整列させ、同一アミノ酸の割合を最大にするために必要である場合はアミノ酸配列の一部に間隙を導入する。整列のための方法、割合の算定方法、比較方法、およびそれらに関連するコンピュータプログラムは、当該技術分野で従来からよく知られている(例えば、BLAST、GENETYX等)。本明細書において「相同性」は、特に断りのない限りNCBIのBLASTによって測定された値で表すことができる。BLASTでアミノ酸配列を比較するときのアルゴリズムには、Blastpをデフォルト設定で使用できる。測定結果はPositivesまたはIdentitiesとして数値化される。
【0048】
本明細書において「ストリンジェント(な)条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7~1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1~2倍濃度のSSC(saline-sodiumcitrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。「ストリンジェントな条件」は、例えば、以下の条件を採用することができる。(1)洗浄のために低イオン強度および高温度を用いる(例えば、50℃で、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム)、(2)ハイブリダイゼーション中にホルムアミド等の変性剤を用いる(例えば、42℃で、50%(v/v)ホルムアミドと0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%のポリビニルピロリドン/50mMのpH6.5のリン酸ナトリウムバッファー、および750mMの塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム)、または(3)20%ホルムアミド、5×SSC、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハード液、10%硫酸デキストラン、および20mg/mlの変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、37℃で一晩インキュベーションし、次に約37-50℃で1×SSCでフィルターを洗浄する。なお、ホルムアミド濃度は50%またはそれ以上であってもよい。洗浄時間は、5、15、30、60、もしくは120分、またはそれら以上であってもよい。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに影響する要素としては温度、塩濃度など複数の要素が考えられ、詳細はAusubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience Publishers,(1995)を参照することができる。「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65~68℃、または0.015M塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、および50% ホルムアミド、42℃である。ハイブリダイゼーション、Molecular Cloning 2nd ed., Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1-38, DNA Cloning 1:Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。中程度のストリンジェントな条件は、例えば、DNAの長さに基づき、当業者によって、容易に決定することができ、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Vol.1、7.42-7.45 Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001に示され、そしてニトロセルロースフィルターに関し、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH8.0)の前洗浄溶液、約40-50°Cでの、約50%ホルムアミド、2×SSC-6×SSC(または約42°Cでの約50%ホルムアミド中の、スターク溶液(Stark’s solution)などの他の同様のハイブリダイゼーション溶液)のハイブリダイゼーション条件、および約60°C、0.5×SSC、0.1% SDSの洗浄条件の使用が含まれる。従って、本発明において使用されるポリペプチドには、本発明で特に記載されたポリペプチドをコードする核酸分子に対して、高度または中程度でストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドも包含される。
【0049】
本明細書において「精製された」物質または生物学的因子(例えば、DNAワクチン、核酸構築物、プラスミドDNAなどの核酸またはタンパク質など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。従って、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質または生物学的因子は、好ましくは「精製された」物質である。本明細書で使用される「単離された」物質または生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その物質または生物学的因子に天然に随伴する因子が実質的に除去されたものをいう。本明細書中で使用される用語「単離された」は、その目的に応じて変動するため、必ずしも純度で表示される必要はないが、必要な場合、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。本発明で用いられる物質は、好ましくは「単離された」物質または生物学的因子である。
【0050】
本明細書において「対応する」アミノ酸または核酸あるいは部分とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子(例えば、CD63、CD81、CD9等)において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドあるいは部分と同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいい、複合分子にあっては対応する部分(例えば、ヘパラン硫酸等)をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。対応するアミノ酸は、例えば、システイン化、グルタチオン化、S-S結合形成、酸化(例えば、メチオニン側鎖の酸化)、ホルミル化、アセチル化、リン酸化、糖鎖付加、ミリスチル化などがされる特定のアミノ酸であり得る。あるいは、対応するアミノ酸は、二量体化を担うアミノ酸であり得る。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。このような対応する領域またはドメインは、本発明において複合分子を設計する場合に有用である。
【0051】
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリヌクレオチド配列または分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。従って、ヒトのCD63等のテトラスパニンファミリータンパク質は、それぞれ、他の動物(特に哺乳動物)において、対応するCD63等のテトラスパニンファミリータンパク質を見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。従って、例えば、ある動物(例えば、マウス)における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等)は、配列番号1または配列番号2等の配列をクエリ配列として用いてその動物の配列を含むデータベースを検索することによって見出すことができる。
【0052】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1~n-1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、このようなフラグメントは、例えば、全長のものがマーカーまたは標的分子として機能する場合、そのフラグメント自体もまたマーカーまたは標的分子としての機能を有する限り、本発明の範囲内に入ることが理解される。
【0053】
本発明に従って、用語「活性」は、本明細書において、最も広い意味での分子の機能を指す。活性は、限定を意図するものではないが、概して、分子の生物学的機能、生化学的機能、物理的機能または化学的機能を含む。活性は、例えば、酵素活性、他の分子と相互作用する能力、および他の分子の機能を活性化するか、促進するか、安定化するか、阻害するか、抑制するか、または不安定化する能力、安定性、特定の細胞内位置に局在する能力を含む。適用可能な場合、この用語はまた、最も広い意味でのタンパク質複合体の機能にも関する。本明細書において「生物学的機能」とは、ある遺伝子またはそれに関する核酸分子もしくはポリペプチドについて言及するとき、その遺伝子、核酸分子またはポリペプチドが生体内において有し得る特定の機能をいい、これには、例えば、特異的な抗体の生成、酵素活性、抵抗性の付与等を挙げることができるがそれらに限定されない。本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリヌクレオチド、タンパク質など)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能(例えば、転写促進活性)を発揮する活性が包含され、例えば、ある分子との相互作用によって別の分子が活性化または不活化される活性も包含される。2つの因子が相互作用する場合、その生物学的活性は、その二分子の間の結合およびそれによって生じる生物学的変化であり得、そして、例えば、一つの分子を抗体を用いて沈降させたときに他の分子も共沈するとき、2分子は結合していると考えられる。従って、そのような共沈を見ることが一つの判断手法として挙げられる。例えば、ある因子が酵素である場合、その生物学的活性は、その酵素活性を包含する。別の例では、ある因子がリガンドである場合、そのリガンドが対応するレセプターへの結合を包含する。そのような生物学的活性は、当該分野において周知の技術によって測定することができる。従って、「活性」は、結合(直接的または間接的のいずれか)を示すかまたは明らかにするか;応答に影響する(すなわち、いくらかの曝露または刺激に応答する測定可能な影響を有する)、種々の測定可能な指標をいい、例えば、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに直接結合する化合物の親和性、または例えば、いくつかの刺激後または事象後の上流または下流のタンパク質の量あるいは他の類似の機能の尺度が挙げられる。
【0054】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様である。したがって、本明細書において「発現産物」とは、このようなポリペプチドもしくはタンパク質、またはmRNAを含む。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。好ましくは、抗原として作用するものであるため、ポリペプチドまたはタンパク質の形態が発現産物として好ましい。例えば、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等の発現レベルは、任意の方法によって決定することができる。具体的には、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等のmRNAの量、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等のタンパク質の量、そしてCD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等のタンパク質の生物学的な活性を評価することによって、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等の発現レベルを知ることができる。このような測定値はコンパニオン診断において使用し得る。CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質のmRNAやタンパク質の量は、本明細書の他の箇所に詳述したような方法あるいは他の当該分野において公知の方法によって決定することができる。
【0055】
本明細書において「機能的等価物」とは、対象となるもとの実体に対して、目的となる機能が同じであるが構造が異なる任意のものをいう。従って、「CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等」またはその抗体の機能的等価物は、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体自体ではないが、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体の変異体または改変体(例えば、アミノ酸配列改変体等)であって、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体の持つ生物学的作用を有するもの、ならびに、作用する時点において、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体自体またはこのCD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体の変異体もしくは改変体に変化することができるもの(例えば、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体自体またはCD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体の変異体もしくは改変体をコードする核酸、およびその核酸を含むベクター、細胞等を含む)が包含されることが理解される。本発明において、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体の機能的等価物は、格別に言及していなくても、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等またはその抗体と同様に用いられうることが理解される。機能的等価物は、データベース等を検索することによって、見出すことができる。
【0056】
本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al., J. Mol. Biol. 215:403-410(1990))、FASTA(Pearson& Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci., USA 85:2444-2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman, J.Mol.Biol.147:195-197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch, J.Mol.Biol.48:443-453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用される遺伝子には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
【0057】
本発明の機能的等価物としては、アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加されたものを用いることができる。本明細書において、「アミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸の挿入、置換もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加」とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の技術的方法により、あるいは天然の変異により、天然に生じ得る程度の複数個の数のアミノ酸の置換等により改変がなされていることを意味する。改変アミノ酸配列は、例えば1~30個、好ましくは1~20個、より好ましくは1~9個、さらに好ましくは1~5個、特に好ましくは1~2個のアミノ酸の挿入、置換、もしくは欠失、またはその一方もしくは両末端への付加がなされたものであることができる。改変アミノ酸配列は、好ましくは、そのアミノ酸配列が、CD63等のテトラスパニンファミリータンパク質等のアミノ酸配列において1または複数個(好ましくは1もしくは数個または1、2、3、もしくは4個)の保存的置換を有するアミノ酸配列であってもよい。ここで「保存的置換」とは、タンパク質の機能を実質的に改変しないように、1または複数個のアミノ酸残基を、別の化学的に類似したアミノ酸残基で置換えることを意味する。例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基によって置換する場合、ある極性残基を同じ電荷を有する別の極性残基によって置換する場合などが挙げられる。このような置換を行うことができる機能的に類似のアミノ酸は、アミノ酸毎に当該分野において公知である。具体例を挙げると、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、プロリン、トリプトファン、フェニルアラニン、メチオニンなどが挙げられる。極性(中性)アミノ酸としては、グリシン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミン、アスパラギン、システインなどが挙げられる。陽電荷をもつ(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、リジンなどが挙げられる。また、負電荷をもつ(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
【0058】
本明細書において「抗体」は、抗原上の特定のエピトープに特異的に結合することができる分子またはその集団を含む。また抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であってもよい。抗体は、様々な形態で存在することができ、例えば、全長抗体(Fab領域とFc領域を有する抗体)、Fv抗体、Fab抗体、F(ab’)2抗体、Fab’抗体、diabody、一本鎖抗体(例えば、scFv)、dsFv、多価特異的抗体(例えば、二価特異的抗体)、抗原結合性を有するペプチドまたはポリペプチド、キメラ抗体(例えば、マウス-ヒトキメラ抗体、ニワトリ-ヒトキメラ抗体等)、マウス抗体、ニワトリ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはそれらの同等物(または等価物)からなる群から選ばれる1種以上の形態であってもよい。また抗体は、抗体修飾物または抗体非修飾物を含む。抗体修飾物は、抗体と、例えばポリエチレングリコール等の各種分子が結合していてもよい。抗体修飾物は、抗体に公知の手法を用いて化学的な修飾を施すことによって得ることができる。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。本発明で用いられる抗体等は、その標的に結合すればよく、その由来、種類、形状などは問われない。具体的には、非ヒト動物の抗体(例えば、マウス抗体、ラット抗体、ラクダ抗体)、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体などの公知の抗体が使用できる。本発明においては、モノクローナル、あるいはポリクローナルを抗体として利用することができるが好ましくはモノクローナル抗体である。抗体の標的への結合は特異的な結合であることが好ましい。また抗体は、抗体修飾物または抗体非修飾物を含む。抗体修飾物は、抗体と、例えばポリエチレングリコール等の各種分子が結合していてもよい。抗体修飾物は、抗体に公知の手法を用いて化学的な修飾を施すことによって得ることができる。
【0059】
本明細書において「被験体(者)」とは、本発明の予防、治療等の対象となる対象をいい、ヒト、またはヒトを除く哺乳動物(例えば、マウス、モルモット、ハムスター、ラット、ネズミ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、マーモセット、サル、またはチンパンジー等の1種以上)を含む。
【0060】
本明細書において「薬剤」、「剤」または「因子」(いずれも英語ではagentに相当する)は、広義には、交換可能に使用され、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0061】
本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に」相互作用する(または結合する)「因子」(または、薬剤、検出剤等)とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
【0062】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害(例えば、脳マラリア)について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいい、患者の疾患、もしくは疾患に伴う1つ以上の症状の、症状改善効果あるいは予防効果を発揮しうることを含む。事前に診断を行って適切な治療を行うことは「コンパニオン治療」といい、そのための診断薬を「コンパニオン診断薬」ということがある。
【0063】
本明細書において「治療薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、がん等の疾患など)を治療できるあらゆる薬剤をいい、本発明が提供するような阻害剤(例えば、抗体)をいう。本発明の一実施形態において「治療薬」は、有効成分と、薬理学的に許容される1つもしくはそれ以上の担体とを含む医薬組成物であってもよい。医薬組成物は、例えば有効成分と上記担体とを混合し、製剤学の技術分野において知られる任意の方法により製造できる。また治療薬は、治療のために用いられる物であれば使用形態は限定されず、有効成分単独であってもよいし、有効成分と任意の成分との混合物であってもよい。また上記担体の形状は特に限定されず、例えば、固体または液体(例えば、緩衝液)であってもよい。
【0064】
本明細書において「予防」とは、ある疾患または障害(例えば、がん)について、そのような状態になる前に、そのような状態にならないようにすることをいう。特にワクチンとして使用される場合は予防効果も期待される。本発明の薬剤を用いて、診断を行い、必要に応じて本発明の薬剤を用いて例えば、がん等の予防をするか、あるいは予防のための対策を講じることができる。
【0065】
本明細書において「予防薬(剤)」とは、広義には、目的の状態(例えば、がん等の疾患など)を予防できるあらゆる薬剤をいう。
【0066】
本明細書において「免疫応答増強剤」とは、免疫作用、免疫応答等の免疫関連の応答の少なくとも1つを増強するための任意の薬剤をいう。免疫増強薬、免疫賦活剤ともいう。免疫応答の増強には、T細胞の増殖、T細胞応答の増強、マクロファージの活性の増強等が含まれる。ウイルスや癌で抑制された免疫反応を高める反応も含まれ、抗原とともに用いて正常な免疫能を増強させるアジュバントも定義上は免疫応答増強剤に包含される。
【0067】
本明細書において「T細胞応答の増強」とは、T細胞による免疫応答の増強をいい、これには、抗腫瘍免疫応答が包含される。T細胞活性化ともいう。T細胞応答の増強によって、例えば、記憶T細胞、エフェクターT細胞が生成したり増殖したりする。あるいは、制御性T細胞の活性が調節されたりする。あるいはT細胞によるサイトカイン分泌の誘導や、クローン拡大なども生じ得る。応答のエフェクター段階では、エフェクターCD4+T細胞は白血球の動員や活性化、あるいはB細胞の活性官殿種々の作用を有するサイトカインを生産することにより抗原に応答し、CD8+細胞傷害性Tリンパ球が他の細胞を殺傷する応答を行ったりする。
【0068】
本明細書において「細胞傷害剤」とは、細胞を傷害する任意の薬剤をいう。例えば、がん細胞等の他の細胞に対して細胞分裂時に作用したりして、細胞を破壊する。したがって、細胞傷害剤は抗がん剤としても用いられ得る。
【0069】
本明細書において「がん」とは、本発明のDNAワクチンまたは医薬で治療または予防可能な任意のがんをいい、例えば、肝細胞がん、食道扁平上皮がん、乳がん、膵がん、頭頸部の扁平細胞がんまたは腺がん、結腸直腸がん、腎がん、脳がん(腫瘍)、前立腺がん、小細胞および非小細胞肺がん、膀胱がん、骨または関節がん、子宮がん、子宮頸がん、多発性骨髄腫、造血器悪性腫瘍、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、皮膚がん、メラノーマ、扁平細胞がん、白血病、肺がん、卵巣がん、胃がん、カポジ肉腫、喉頭がん、内分泌がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、下垂体がん、副腎がん、胆管細胞がん、子宮内膜症、食道がん、肝がん、NSCLC、骨肉腫、膵がん、SCLC、軟部組織腫瘍、AML、およびCMLが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
本明細書において「細胞傷害性Tリンパ球」、「細胞傷害性T細胞」、および「CTL」という用語は本明細書において互換的に用いられ、特に別段の定めのない限り、非自己細胞(例えば、腫瘍/がん細胞、ウイルス感染細胞)を認識すること、およびそのような細胞の死滅を誘導することができるTリンパ球のサブグループを指す。
【0071】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、ワクチン、検査薬、診断薬、治療薬、抗体、標識、説明書など)が提供されるユニットをいう。安定性等のため、混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、検査薬、診断薬、治療薬をどのように使用するか、あるいは、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、ワクチン、検査薬、診断薬、治療薬、抗体等の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
【0072】
本明細書において「指示書」は、本発明を使用する方法を医師または他の使用者に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の検出方法、診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、経口、食道への投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0073】
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。また、本発明の以下の実施形態は単独でも使用されあるいはそれらを組み合わせて使用することができることが理解される。
【0074】
(概要)
DNAワクチンは、コードされた抗原への体液性および細胞性の免疫応答惹起することができる有力な剤形である。しかしながら、抗原特異的CD8+T細胞応答を達成するには、免疫原性には改善が必要である。本発明は、免疫原性の改善をもたらすものである。
【0075】
(エキソソーム-抗原の核酸構成物)
1つの局面において、本発明は、エキソソームマーカータンパク質をコードする核酸配列と、ワクチン抗原をコードする核酸配列とを含む核酸構成物(例えば、DNAコンストラクト)を提供する。本発明の核酸構成物の代表的な実施形態であるDNAワクチンは体液性免疫のみならず、細胞性免疫応答特に細胞傷害性T細胞(CTL)をも強く誘導することができることから、感染症の予防ワクチンやがん治療ワクチンとして期待されているが、従来はヒトにおいては安全性の問題やDNAワクチンの免疫原性が弱く臨床試験において期待された効果が得られていなかった。本発明では、実施例において実証されているように、エキソソームマーカータンパク質をコードする核酸配列と、ワクチン抗原をコードする核酸配列とを含む核酸構成物を提供することにより、エキソソーム標的DNAワクチンの免疫原性が臨床適用できる程度の低減されており、このワクチンを用いたエキソソームに抗原を搭載させたエキソソームワクチンの臨床上の効果も確認されていることから、DNAワクチンの臨床応用を可能する点で注目されるべきである。例えば、実施例に記載されているように、本発明の代表的な実施形態であるエキソソーム標的DNAワクチンを筋注エレクトロポレーション法によりマウスに投与した結果、エキソソームに抗原が発現しない群と比較して強いCTLの誘導が確認される。ここで、実施例で使用されるCD63、CD9、CD81等と融合したOVA抗原をコードするプラスミドDNA(例えば、pCD63-OVA)によるin vitroトランスフェクションは、エキソソームによるOVAの運搬をもたらした。また、この強いCTLの誘導は単に膜への局在だけではなくエキソソームにターゲットした結果得られたものである事が、小胞体の膜タンパクであるカルネキシン(CALNEXIN)とオボアルブミン(OVA)抗原を融合したプラスミドDNAを作製して比較したことから判明しており、本発明の優位な効果が実施例等で実証されている。また、本発明者らは、本発明の代表的な実施形態である実施例に示すようなDNAワクチンを用いてOVAを発現しているマウスの胸腺種であるE.G-7をマウス皮下に移植し、その後DNAワクチンの接種を行ったところ、コントロール群に比べて、エキソソーム標的DNAワクチンを接種した群では腫瘍の増殖を強く抑制することが確認されており、抗がん剤としても顕著な効果が奏されることが実証されている。
【0076】
本発明において用いられるエキソソームマーカータンパク質は、本発明の目的、例えば、DNAワクチンの機能増強が達成され得る限りいずれのタンパク質を用いてもよいが、1つの実施形態としては、エキソソームマーカータンパク質はエキソソームの膜に存在するタンパク質であることが好ましい。理論に束縛されることを望まないが、膜に存在するタンパク質を用いることによって、エキソソームに対する標的化がより有利に達成され、DNAワクチンとしての機能増強が有利に達成されるからである。
【0077】
好ましい実施形態では、本発明の核酸構成物において用いられるエキソソームマーカータンパク質はテトラスパニンファミリーに属するタンパク質である。テトラスパニンファミリーは、エキソソームの表面マーカーとして知られている。理論に束縛されることを望まないが、テトラスパニンは、細胞膜上でインテグリンや増殖因子受容体などと複合体を形成し, 機能を修飾することにより細胞運動や細胞の活性化にかかわると考えられており、それゆえエキソソームに対する標的化がより有利に達成され、DNAワクチンとしての機能増強が有利に達成されると考えられるからである。
【0078】
特定の実施形態では、本発明において使用され得るエキソソームマーカータンパク質はCD63、CD81、CD9、CD31、HLA-G、TSG101、Rab5bおよびALIX等を挙げることができ、これらはエキソソームに関するデータベース(例えば、ExoCarta、http://exocarta.org/browse_results?org_name=&cont_type=protein&tissue=&gene_symbol=)等に記載されている。ここに記載してあるタンパク質はエキソソームに含まれるタンパク質です。タンパク質だけで1万近い数が登録されている。特に、CD63、CD81、CD9、CD31などは、代表的なテトラスパニンとして知られている。CD63、CD9、CD81を用いた実験で抗がん作用および免疫増強作用が示されていることから、同様に他の膜に存在するメンバー、特にテトラスパニンの他のメンバーでも同様の抗がん作用および免疫増強作用が示されると理解される。特に好ましい実施形態の一つは、CD63、CD9、CD81、より好ましくはCD63であるがそれに限定されない。
【0079】
本発明の核酸構成物において含まれる核酸によってコードされる抗原は、ワクチンとして機能させることを目的とする限り、どのような抗原を用いてもよい。もちろん、核酸としてコードされるものであるから、抗原はペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質である。
【0080】
具体的な実施形態では、本発明において用いられる抗原は、がん抗原ペプチド、ウイルス抗原ペプチド、ウイルス由来タンパク質、ウイルス抗原等の病原体の抗原、などを挙げることができる。CTLによる感染防御が期待される疾患の使用され得る抗原はいずれも使
用することができる。
【0081】
1つの実施形態では、本発明の核酸構成物は、プラスミドDNAであり得る。プラスミドDNAの形態をとることにより、被験者への投与が容易である等の効果があり得る。
【0082】
1つの局面において、本発明は、本発明の核酸構成物またはプラスミドDNAを含むDNAワクチンを提供する。本発明のDNAワクチンにおいて含まれる核酸構成物またはプラスミドDNAは、必要に応じて、本明細書において説明した任意の実施形態の核酸構成物およびプラスミドの特徴を1つまたは複数組み合わせて含んでいてもよい。
【0083】
別の局面において、本発明は、ワクチン抗原タンパク質とエキソソームマーカータンパク質とを融合した形態で含む、エキソソームを提供する。本発明の核酸構成物を使用すると、エキソソームマーカータンパク質がワクチン抗原タンパク質と融合した形態で生成される。このような融合タンパク質を含むエキソソーム自体も、ワクチン等の医薬として使用することができることから、本発明は、このようなエキソソーム自体をも提供することが理解される。このようなエキソソームは天然に存在するエキソソームと異なるものであり、本明細書において場合により本発明のエキソソームということがある。
【0084】
したがって、本発明はまた、ワクチン抗原タンパク質とエキソソームマーカータンパク質とを融合した形態であるタンパク質も提供する。本明細書において「融合」とは、タンパク質またはポリペプチドと他のタンパク質またはポリペプチドについて状態についていい、主に人工的に(遺伝子工学によって)作られたタンパク質またはポリペプチドで、2個以上の遺伝子が一体となって転写・発現し、一個のタンパク質またはポリペプチドを形成している状態をいう。したがって、本発明では、エキソソームマーカータンパク質と、ワクチン抗原とが一体となって転写・発現し一個のタンパク質またはポリペプチドを形成している状態を指し、これらは本発明のタンパク質と称することがある。
【0085】
(医薬等)
別の局面において、本発明はまた、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームを含む医薬を提供する。本発明の医薬等で使用される核酸構成物、DNAワクチン、タンパク質、エキソソームは、(エキソソーム-抗原の核酸構成物)の項等おいて詳述される本発明の任意の更なる特徴を1つまたは複数含んでいてもよいことが理解される。
【0086】
1つの実施形態では、本発明はまた、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームを含む免疫応答増強剤を提供する。
【0087】
別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームを含むT細胞応答を増強するための組成物を提供する。
【0088】
別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームを含む細胞傷害剤を提供する。
【0089】
さらに別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームを含むがんを治療または予防するための医薬。
【0090】
別の局面では、本発明は、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームの有効量を被験者に投与する工程を包含する、被験者における免疫応答を増強する方法を提供する。本発明の方法で使用される核酸構成物、DNAワクチン、タンパク質、エキソソームは、(エキソソーム-抗原の核酸構成物)の項等おいて詳述される本発明の任意の更なる特徴を1つまたは複数含んでいてもよいことが理解される。
【0091】
1つの実施形態では、本発明は、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームの有効量を被験者に投与する工程を包含する、T細胞応答を増強するための方法を提供する。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、本発明の核酸構成物、本発明のDNAワクチン、本発明のタンパク質または本発明のエキソソームの有効量を被験者に投与する工程を包含する、がんを治療または予防するための方法を提供する。
【0093】
このように、本発明は、上記種々の形態の医薬(治療薬または予防薬)として提供される。
【0094】
治療薬の投与経路は、治療に際して効果的なものを使用するのが好ましく、例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、または経口投与等であってもよい。投与形態としては、例えば、注射剤、カプセル剤、錠剤、顆粒剤等であってもよい。本発明の成分を投与する場合には、注射剤として用いることが効果的である。注射用の水溶液は、例えば、バイアル、またはステンレス容器で保存してもよい。また注射用の水溶液は、例えば生理食塩水、糖(例えばトレハロース)、NaCl、またはNaOH等を配合してもよい。また治療薬は、例えば、緩衝剤(例えばリン酸塩緩衝液)、安定剤等を配合してもよい。DNAワクチンとして適切な投与形態が好ましい。
【0095】
一般的に、本発明の組成物、医薬、治療剤、予防剤等は、治療有効量の治療剤または有効成分、および薬学的に許容しうるキャリアもしくは賦形剤を含む。本明細書において「薬学的に許容しうる」は、動物、そしてより詳細にはヒトにおける使用のため、政府の監督官庁に認可されたか、あるいは薬局方または他の一般的に認められる薬局方に列挙されていることを意味する。本明細書において使用される「キャリア」は、治療剤を一緒に投与する、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはビヒクルを指す。このようなキャリアは、無菌液体、例えば水および油であることも可能であり、石油、動物、植物または合成起源のものが含まれ、限定されるわけではないが、ピーナツ油、ダイズ油、ミネラルオイル、ゴマ油等が含まれる。医薬を経口投与する場合は、水が好ましいキャリアである。医薬組成物を静脈内投与する場合は、生理食塩水および水性デキストロースが好ましいキャリアである。好ましくは、生理食塩水溶液、並びに水性デキストロースおよびグリセロール溶液が、注射可能溶液の液体キャリアとして使用される。適切な賦形剤には、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脱脂粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩等が含まれる。組成物は、望ましい場合、少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤もまた含有することも可能である。これらの組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン、錠剤、ピル、カプセル、粉末、持続放出配合物等の形を取ることも可能である。伝統的な結合剤およびキャリア、例えばトリグリセリドを用いて、組成物を座薬として配合することも可能である。経口配合物は、医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン・ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的キャリアを含むことも可能である。適切なキャリアの例は、E.W.Martin, Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)に記載される。このような組成物は、患者に適切に投与する形を提供するように、適切な量のキャリアと一緒に、治療有効量の療法剤、好ましくは精製型のものを含有する。配合物は、投与様式に適していなければならない。これらのほか、例えば、界面活性剤、賦形剤、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含んでいてもよい。
【0096】
本発明の一実施形態において「塩」は、例えば、任意の酸性(例えばカルボキシル)基で形成されるアニオン塩、または任意の塩基性(例えばアミノ)基で形成されるカチオン塩を含む。塩類には無機塩または有機塩を含み、例えば、Berge et al., J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19に記載されている塩が含まれる。また例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩等が挙げられる。本発明の一実施形態において「溶媒和物」は、溶質および溶媒によって形成される化合物である。溶媒和物については例えば、J. Honig et al., The Van Nostrand Chemist’s Dictionary P650 (1953)を参照できる。溶媒が水であれば形成される溶媒和物は水和物である。この溶媒は、溶質の生物活性を妨げないものが好ましい。そのような好ましい溶媒の例として、特に限定するものではないが、水、または各種バッファーが挙げられる。本発明の一実施形態において「化学修飾」は、例えば、PEGもしくはその誘導体による修飾、フルオレセイン修飾、またはビオチン修飾等が挙げられる。
【0097】
本発明を医薬として投与する場合、種々の送達(デリバリー)系が知られ、そしてこのような系を用いて、本発明の治療剤を適切な部位(例えば、食道)に投与することも可能であり、このような系には、例えばリポソーム、微小粒子、および微小カプセル中の被包:治療剤(例えば、ポリペプチド)を発現可能な組換え細胞の使用、受容体が仲介するエンドサイトーシスの使用;レトロウイルスベクターまたは他のベクターの一部としての療法核酸の構築などがある。導入法には、限定されるわけではないが、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜外、および経口経路が含まれる。好適な経路いずれによって、例えば注入によって、ボーラス(bolus)注射によって、上皮または皮膚粘膜裏打ち(例えば口腔、直腸および腸粘膜など)を通じた吸収によって、医薬を投与することも可能であるし、必要に応じてエアロゾル化剤を用いて吸入器または噴霧器を使用しうるし、そして他の生物学的活性剤と一緒に投与することも可能である。投与は全身性または局所であることも可能である。本発明ががんに使用される場合、さらに、がん(病変部)に直接注入する等、適切な経路いずれかによって投与されうる。
【0098】
好ましい実施形態において、公知の方法に従って、ヒトへの投与に適応させた医薬組成物として、組成物を配合することができる。このような組成物は注射により投与することができる。代表的には、注射投与のための組成物は、無菌等張水性緩衝剤中の溶液である。必要な場合、組成物はまた、可溶化剤および注射部位での疼痛を和らげるリドカインなどの局所麻酔剤も含むことも可能である。一般的に、成分を別個に供給するか、または単位投薬型中で一緒に混合して供給し、例えば活性剤の量を示すアンプルまたはサシェなどの密封容器中、凍結乾燥粉末または水不含濃縮物として供給することができる。組成物を注入によって投与しようとする場合、無菌薬剤等級の水または生理食塩水を含有する注入ビンを用いて、分配することも可能である。組成物を注射によって投与しようとする場合、投与前に、成分を混合可能であるように、注射用の無菌水または生理食塩水のアンプルを提供することも可能である。
【0099】
本発明の組成物、医薬、治療剤、予防剤を中性型または塩型あるいは他のプロドラッグ(例えば、エステル等)で配合することも可能である。薬学的に許容しうる塩には、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸などに由来する遊離型のカルボキシル基とともに形成されるもの、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどに由来するものなどの遊離型のアミン基とともに形成されるもの、並びにナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、および水酸化第二鉄などに由来するものが含まれる。
【0100】
特定の障害または状態の治療に有効な本発明の治療剤の量は、障害または状態の性質によって変動しうるが、当業者は本明細書の記載に基づき標準的臨床技術によって決定可能である。さらに、場合によって、in vitroアッセイを使用して、最適投薬量範囲を同定するのを補助することも可能である。配合物に使用しようとする正確な用量はまた、投与経路、および疾患または障害の重大性によっても変動しうるため、担当医の判断および各患者の状況に従って、決定すべきである。しかし、投与量は特に限定されないが、例えば、1回あたり0.001、0.01、0.1、1、5、10、15、100、または1000mg/kg体重であってもよく、それらいずれか2つの値の範囲内であってもよい。投与間隔は特に限定されないが、例えば、1、7、14、21、または28日あたりに1または2回投与してもよく、それらいずれか2つの値の範囲あたりに1または2回投与してもよい。投与量、投与間隔、投与方法は、患者の年齢や体重、症状、対象臓器等により、適宜選択してもよい。また治療薬は、治療有効量、または所望の作用を発揮する有効量の有効成分を含むことが好ましい。悪性腫瘍マーカーが、投与後に有意に減少した場合に、治療効果があったと判断してもよい。有効用量は、in vitroまたは動物モデル試験系
から得られる用量-反応曲線から推定可能である。
【0101】
本発明の医薬等の薬剤または治療剤もしくは予防剤はキットとして提供することができる。
【0102】
特定の実施形態では、本発明は、本発明の組成物または医薬等の1以上の成分が充填された、1以上の容器を含む、薬剤パックまたはキットを提供する。場合によって、このような容器に付随して、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形で、政府機関による、ヒト投与のための製造、使用または販売の認可を示す情報を示すことも可能である。
【0103】
特定の実施形態において、本発明の成分を含む医薬等を、リポソーム、微小粒子、または微小カプセルを介して投与することができる。本発明の種々の実施形態において、このような組成物を用いて、本発明の成分の持続放出を達成することが有用である可能性もある。
【0104】
本発明の治療薬、予防薬等の医薬等としての製剤化手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、使用すべき量等の実施形態を決定することができる。
【0105】
(エキソソームマーカータンパク質およびこれをコードする核酸配列の新規用途)
別の局面では、本発明は、エキソソームマーカータンパク質およびこれをコードする核酸配列の新規用途を提供する。
【0106】
1つの局面では、本発明は、エキソソームマーカータンパク質をコードする核酸配列を含む、ワクチンDNAの免疫原性を改善するための組成物を提供する。別の局面では、本発明は、ワクチンDNAの免疫原性を改善するためのエキソソームマーカータンパク質をコードする核酸(または核酸配列を含む核酸分子)を提供する。本発明の組成物または核酸は、(エキソソーム-抗原の核酸構成物)の項等おいて詳述される本発明の任意の更なる特徴を1つまたは複数含んでいてもよいことが理解される。
【0107】
1つの実施形態では、本発明の組成物または核酸において、前記エキソソームマーカータンパク質はエキソソームの膜に存在するタンパク質である。
【0108】
別の実施形態では、本発明の組成物または核酸において、前記エキソソームマーカータンパク質はテトラスパニンファミリーに属する。
【0109】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物または核酸において、前記エキソソームマーカータンパク質はCD63、CD81、CD9、CD31、HLA-G、TSG101、Rab5bおよびALIX等ExoCarta等のデータべースに記載されている任意のタンパク質からなる群より選択される。より好ましくは、CD63、CD9、CD81である。CD63のみならず、pCD9-OVAまたはpCD81-OVAのいずれによるDNAワクチン接種も、対照pOVAによるワクチン接種より高い抗OVA IgG2c/G1比をもたらした。さらに、抗原特異的CD8+T細胞応答もまた増大しており、そのレベルはpCD63-OVAワクチン接種と同等であったことから、テトラスパニンはDNAワクチンにおいて、概して免疫学的に優れた効果を発揮することが理解される。
【0110】
さらなる実施形態では、本発明の組成物または核酸において、前記ワクチンDNAに含まれる抗原は、ウイルス抗原ペプチド、ウイルス由来タンパク質、ウイルス抗原等の病原体の抗原等を挙げることができる。
【0111】
さらなる実施形態では、本発明の組成物または核酸において、前記ワクチンDNAはプラスミドDNAである。
【0112】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J. et al.(1989). Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001); Ausubel, F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Ausubel, F.M.(1989). Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience; Innis, M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications, Academic Press; Ausubel, F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Ausubel, F.M. (1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates; Innis, M.A. et al.(1995).PCR Strategies, Academic Press; Ausubel, F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology, Wiley, and annual updates; Sninsky, J.J. et al.(1999). PCR Applications: Protocols for Functional Genomics, Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0113】
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait, M.J.(1985). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Gait, M.J.(1990). Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, IRL Press; Eckstein, F.(1991). Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach, IRL Press; Adams, R.L. et al.(1992). The Biochemistry of the Nucleic Acids, Chapman &H all; Shabarova, Z. et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids, Weinheim; Blackburn, G.M. et al.(1996). Nucleic Acids in Chemistry and Biology, Oxford University Press; Hermanson, G.T.(I996). Bioconjugate Techniques, Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
【0114】
例えば、本明細書において、当該分野に知られる標準法によって、例えば自動化DNA合成装置(Biosearch、Applied Biosystems等から市販されるものなど)の使用によって、本発明のオリゴヌクレオチドを合成することも可能である。例えば、Steinら(Stein et al., 1988,Nucl. Acids Res. 16:3209)の方法によって、ホスホロチオエート・オリゴヌクレオチドを合成することも可能であるし、調節孔ガラスポリマー支持体(Sarinet al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:7448-7451)等の使用によって、メチルホスホネート・オリゴヌクレオチドを調製することも可能である。
【0115】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値の範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0116】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0117】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0118】
以下に実施例を記載する。必要な場合、以下の実施例で用いる動物の取り扱いは、全ての動物実験は、医薬基盤研究所の機関ガイドラインに従って実施した。また、ヘルシンキ宣言に基づいて行った。試薬類は具体的には実施例中に記載した製品を使用したが、他メーカー(Sigma-Aldrich、和光純薬、ナカライ、R&D Systems、USCN Life Science INC等)の同等品でも代用可能である。
【0119】
(実施例1)
本実施例では、本発明者らは、エキソソームマーカータンパク質の例として、エキソソームを含む様々な原形質膜上に発現されるテトラスパニンタンパク質であるCD63に焦点を当て、CD63と融合した抗原をコードするDNAワクチンはエキソソームを標的とすることができるのか、そしてワクチンの免疫原性を改善することができるのかについて試験した。本発明者らは、CD63と融合したOVA抗原を発現するプラスミドを構築し、抗原にエキソソームを標的とさせた。本発明者らはまた、CD63融合抗原を介したDNAワクチンのエキソソームへの標的化によって、誘導または促進される免疫応答のタイプを同定しようと試み、そして、抗がんワクチンとしての有用性を評価した。
【0120】
(材料および方法)
DNAコンストラクト
全長のCD63(aa 1~238;配列番号3~4)、CD9(aa 1~226;配列番号7~8)、CD81(aa 1~236;配列番号11~12)、およびカルネキシン(aa 1~591;マウスNM_001110499およびNP_001103969。配列番号13~14(いずれもマウス)のcDNAを、C57BL/6J由来のマウス肺cDNAライブラリーをテンプレートとして用いるPCRによって増幅した。cDNAフラグメントをシーケンシングによって検証し、次いで、pCI哺乳動物発現ベクター(Promega)、pCIneo-FLAG(Promega)またはpEGFP-N1(Clontech)に、以前に記載されたように導入した(Jounai, N., K. Kobiyama, M. Shiina, K. Ogata, K. J. Ishii, and F. Takeshita. 2011. J Immunol 186: 1646-1655.)。全長OVA(aa 1~386)をコードするcDNA(V00383.1 ;CAA23682.1配列番号15~16)を、pCI OVA(pOVA)から、PCRによって増幅した(Nagata, T., T. Higashi, T. Aoshi, M. Suzuki, M. Uchijima, and Y. Koide. 2001. Vaccine 20: 105-114.)。OVA cDNAフラグメントをシーケンシングによって検証し、次いで、pCIneo-FLAGに導入し、pOVA-FLAGと名付けた。全長OVAタンパク質を、CD63、CD9、CD81、またはカルネキシンと、N末端の位置で融合した。リンカーとして、グリシンヘキサマー(6×グリシン)を、OVAと融合遺伝子との間に挿入した。融合遺伝子をシークエンシングによって検証し、次いで、pCIベクター、pCIneo-FLAGベクターまたはpEGFP-N1ベクターに導入し、pCD63-FLAG(pCD63)、pCD63-6×Gly-OVA-FLAG(pCD63-OVA)、pCD9-6×Gly-OVA-FLAG(pCD9-OVA)、pCD81-6×Gly-OVA-FLAG(pCD81-OVA)、pCalnexin-6×Gly-OVA-FLAG(pCal-OVA)、またはpCD63-6×Gly-OVA-EGFP(pCD63-OVA-EGFP)と名付けた。全てのプラスミドを、Escherichia coli DH5αに形質転換し、製造者のプロトコルに従って、Qiagen Plasmid Endo-free Maxiprep kits(Qiagen)を用いて精製した。
【0121】
細胞
293T細胞およびE.G7-OVA細胞(E.G7)細胞を、American Type Culture Collectionから購入した。FreeStyleTM 293-F細胞(293F細胞)を、Life Technologiesから購入した。293T細胞を、10%のFCSおよび50μg/mlのペニシリン-ストレプトマイシンを補充したDMEM中で、5% CO2下37℃で培養した。293F細胞を、FreeStyleTM 293Expression medium(Life Technologies)(動物血清由来のエキソソーム非含有である)中、8% CO2下37℃で培養した。E.G7細胞を、10%のFCS、50μg/mlのペニシリン-ストレプトマイシン、0.05mMの2-メルカプトエタノール、1mMのピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPES、および1×非必須アミノ酸を補充したRPMI-1640(Life Technologies)中、5% CO2下37℃で培養した。
【0122】
細胞培養培地からのエキソソーム単離
血清(エキソソーム)非含有293F細胞を、様々なDNAコンストラクトで、48~72時間トランスフェクトした。次いで、培地上清を回収し、2000×gで30分間遠心分離した。製造者のプロトコルに従ってTotal Exosome Isolation kit(Life Technologies)を用いて、培養培地からエキソソームを単離した。簡潔に述べると、1.5mlのTotal Exosome Isolation reagentを3mlの細胞培養培地に添加し、そして、4℃で一晩インキュベートし、その後、10,000×g、4℃で1時間遠心分離した。エキソソームのペレットを、100μlのPBSで再懸濁した。回収したエキソソームを、電子顕微鏡、ウェスタンブロッティング、およびフローサイトメトリーアッセイによって、以下で記載されるように定性的および定量的に特性評価した。
【0123】
細胞トランスフェクションおよびウェスタンブロッティング
細胞トランスフェクションを以前に記載されたように行った(Jounai, N., K. Kobiyama, M. Shiina, K. Ogata, K. J. Ishii, and F. Takeshita. 2011. J Immunol 186: 1646-1655.)。一過性のトランスフェクションを、製造者のプロトコルに従ってLipofectamine2000(Life Technologies)で行った。293F細胞(1×106/ml)を、それぞれの発現プラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの48時間後に採取した。トランスフェクトした細胞を含む培養培地を、2000×gで30分間遠心分離した。細胞をRIPAバッファーで溶解し、氷上で15分間インキュベートした。上清および単離したエキソソーム試料を、3×SDSバッファー(125mMのTris-HCl:pH6.8、4%のSDS、20%のグリセロール、および0.01%のブロモフェノールブルー)で希釈し、95℃で5分間ボイルした。イムノブロッティング分析を、抗CD63Ab(R5G2、MEDICAL&BIOLOGICAL LABORATORIES CO.,LTD)、抗カルネキシンAb(ab22595、Abcam)、または抗FLAG M2-ペルオキシダーゼ(HRP)Ab(A8592、Sigma)を用いて、以前に記載されたように行った(Jounai, N., K. Kobiyama, M. Shiina, K. Ogata, K. J. Ishii, and F. Takeshita. 2011. J Immunol 186: 1646-1655.)。
【0124】
免疫金電子顕微鏡法
免疫金電子顕微鏡アッセイを、以前に記載されたように行った(Thery, C., S. Amigorena, G. Raposo, and A. Clayton. 2006. Current protocols in cell biology / editorial board, Juan S. Bonifacino ... [et al.] Chapter 3: Unit 3.22.)。単離したエキソソームを、1次Abとしてマウス抗FLAG Ab(Sigma)と、2次Abとして金標識した抗マウスIgG(10nm Gold)(Abcam)とを用いて免疫標識した。
【0125】
フローサイトメトリー分析
293F細胞(1×10
6/ml)を、pCD63-OVA-EGFPでトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を含む培養培地を、トランスフェクション後48時間で回収し、遠心分離した。得られた上清を、INFLUX (BD Bioscience)によって特性評価した(18)。100nmベーズおよび200nmビーズ(Polysciences, Inc.)を用いて、エキソソーム画分のための適切なゲーティングを決定した(
図5)。
【0126】
動物および免疫化
6週齢雌性C57BL/6Jマウスを、CLEA Japan, Incから購入した。マウスを、ヌクレアーゼ非含有食塩水中、対照または融合タンパク質(OVA、CD63、CD63-OVA、CD9-OVA、CD81-OVA、またはCal-OVA)をコードするプラスミドDNA(50μg)を用いた筋肉内エレクトロポレーション(imEPT)によって免疫化した(50μl/筋肉)。
【0127】
エキソソーム免疫化のために、マウスを、PBS中600μgのエキソソームタンパク質(OVA 40ng)またはOVAタンパク質(40ng)(Hyglos Gmbh)(総体積:100μl/マウス)で、第1の免疫化の後7日目に、テールベースで2度免疫化した。マウスを免疫化するために用いた精製エキソソームは、pOVA-、pCD63-OVA-、またはpCal-OVAでトランスフェクトした細胞から単離した。精製エキソソームタンパク質および細胞培養上清の濃度を、製造者のプロトコルに従って、RC DC Protein Assay (BIO-RAD)を用いて試験した。最後のワクチン接種の1週間後、マウスを屠殺し、マウスの抗原特異的免疫応答を測定した。
【0128】
全ての動物実験は、国立医薬基盤・健康・栄養研究所の動物施設の組織ガイドラインに従って行った。
【0129】
細胞性免疫応答の評価
細胞性免疫応答を評価するため、脾細胞(2×106/ウェル)を調製し、20μg/mlのOVAペプチド(OVA257-264、H-2Kb制限OVAクラスIエピトープ、またはOVA323-339、I-A(d)-制限OVAクラスIIエピトープ)またはOVA抗原(Calbiochem)を含有する完全RPMI-1640培地でインキュベートした。細胞性免疫応答は、以前に記載されたように測定した(Onishi, M., et al., 2015. J Immunol 194: 2673-2682.)。
【0130】
ELISA
293T細胞(1×106/ml)を、各発現プラスミドでトランスフェクトした。細胞を、トランスフェクション後48時間インキュベートし、細胞および細胞培養上清におけるOVA発現の濃度を、製造者のプロトコルに従ってELISA(Institute of Tokyo Environmental Allergy)により測定した。OVA特異的血清Ab力価を、以前に記載されたように測定した(Onishi, M., et al., 2015. J Immunol 194: 2673-2682.)。
【0131】
テトラマーアッセイ
テトラマーアッセイを、以前に記載されたように行った(Kobiyama, K., et al., 2014. Proc Natl Acad Sci U S A 111: 3086-3091.)。簡潔に述べると、脾細胞を、PE標識H-2Kb OVAテトラマー(SIINFEKL)(MEDICAL&BIOLOGICAL LABORATORIES CO.,LTD.)を用いて、室温で20分間染色した。次に、細胞を、PBS中の、FITC標識抗CD8α(KT15、BioLegend)、PC標識抗TCRβ鎖(H57-597、BioLegend)、BrilliantViolet421TM標識抗CD62L(MEL-14、BioLegend)、およびAPC/Cy7標識抗CD44(IM7、BioLegend)Abによって染色した。フローサイトメトリーにより、OVAテトラマー+CD44+CD8a+TCRb+細胞数を決定した。
【0132】
in vivoCTLアッセイ
in vivoCTLアッセイを、以前に記載されたように行った(Kobiyama, K., et al., 2014. Proc Natl Acad Sci U S A 111: 3086-3091.)。簡潔に述べると、6週齢C57BL/6Jマウスに、DNAワクチンでワクチン接種した。21日目に、ナイーブC57BL/6Jマウス由来の脾細胞を、2または0.2μMのいずれかのCFSEにより、37℃で10分標識した。CFSEで標識した細胞を、それらを、OVA257-264(10μg/ml)と37℃で90分間インキュベートすることによりペプチドパルシングに供した。次いで、細胞を洗浄し、各処置群からの同数を、血管内経路を介して免疫化マウスに送達した。送達の24時間後に脾細胞を単離し、フローサイトメトリーによりCFSE標識細胞を分析した。
【0133】
腫瘍チャレンジ
マウスの背中の毛を剃り、そして100μlのPBS中1×106のE.G7細胞をマウスの皮下に注入した。平均腫瘍体積が1cm3に達したとき、pOVA、pCD63-OVA、pCal-OVA、またはpCIneo-FLAG(陰性対照として)によって1次免疫化をマウスに施した。腫瘍予防実験では、マウスをこれらのプラスミドDNAワクチンで免疫化し、E.G7細胞を、10日後に100μlのPBS中1×106細胞で注入した。腫瘍体積は、デジタルキャリパーを用いて定期的な間隔で測定し、長さ×幅×高さで計算した。
【0134】
統計分析
群間の差異の統計的有意性は、Mann-Whitney U検定を用いて決定した。
【0135】
(結果)
エキソソームに捕捉されたCD63融合抗原はワクチンとして作用する
以前の報告は、抗原含有エキソソームワクチン接種が、Th1応答およびCTL活性化を誘導することに触れている(Wolfers, J., et al., 2001. Nat Med 7: 297-303.、Qazi, K. R., et al., 2009. Blood 113: 2673-2683)。細胞における抗原と融合したCD63の発現が、抗原のみの単純な発現より、高効率な抗原分泌をもたらすのかを調べるため、本発明者らは、CD63およびOVAの融合タンパク質をコードするプラスミドDNA(pCD63-OVA)を構築した。本発明者らは、CD63がエキソソーム膜上に発現され、既に一般的なエキソソームマーカーとして使用されていることから(Pols, M. S., and J. Klumperman. 2009. Experimental cell research 315: 1584-1592.)、CD63を介してOVA抗原をエキソソームに標的化することを策定した。加えて、対照として、本発明者らは、カルネキシン-OVA融合タンパク質をコードする1つの対照プラスミドDNA(pCal-OVA)を調製した。pCal-OVAは、コードされた抗原を小胞体膜に標的化する(Baietti, M. F., Z. et al., 2012. Nat Cell Biol 14: 677-685.;Gross, J. C., V. Chaudhary, K. Bartscherer, and M. Boutros. 2012. Nat Cell Biol 14: 1036-1045.;Lasser, C., V. S. Alikhani, K. Ekstrom, M. Eldh, P. T. Paredes, A. Bossios, M. Sjostrand, S. Gabrielsson, J. Lotvall, and H. Valadi. 2011. J Transl Med 9: 9.)。
【0136】
血清(外因性エキソソーム)非含有293-F細胞を、上記のプラスドDNAのそれぞれでトランスフェクトし、上清中のエキソソームを回収し、エキソソーム単離試薬を用いて細胞培養培地から精製した。次いで、本発明者らは、ウェスタンブロットアッセイを用いて、細胞溶解物、上清、およびエキソソーム画分におけるコードされた融合タンパク質の発現を分析した(
図1A、1B)。全ての群のエキソソーム画分は、他のエキソソームマーカーであるCD81を含有していたが、上清は含有しておらず、さらに、細胞性画分のみがカルネキシンを含有しており、それぞれの画分の純度が確認された(
図1A)。これらの条件下で、pOVAトランスフェクションの後、上清においてOVAタンパク質が検出された(
図1A、1B)。対照的に、CD63も、CD63-OVA融合タンパク質も上清では検出されなかったが、それらは両方とも細胞溶解物およびエキソソーム画分から検出された(
図1A、1B)。小胞体(ER)標的化カルネキシン-OVA融合タンパク質は、細胞溶解物中で検出されたが、エキソソーム画分では検出されなかった(
図1A、1B)。次に、本発明者らは、CD63-OVAタンパク質が、エキソソーム中/エキソソーム上に局在化されるのかを調べた。EGFP-またはFLAG-融合タンパク質をコードするプラスミドを用いて、フローサイトメトリーならびに電子顕微鏡によって、本発明者らはCD63発現を分析した。両方の分析の結果は、CD63-OVA融合タンパク質が、実際にエキソソームを標的化していることを示唆している(
図1Cおよび
図5)。
【0137】
次に、本発明者らは、CD63-OVAタンパク質で一過的にトランスフェクトした細胞の血清非含有細胞培養上清に由来する精製エキソソームが、十分なOVA特異的免疫応答を誘導するワクチンとして作用するのかを調べた。本発明者らは、細胞をpOVA、pCD63-OVA、またはpCalnexin-OVAでトランスフェクトした後、細胞培養上清からエキソソームを回収し、これらの精製エキソソームにより、テールベースで、C57/BL6ナイーブマウスを皮内で免疫化した。1次免役化の1週間後、抗原特異的な体液性および細胞性免疫応答の両方を評価した。CD63-OVA含有エキソソーム免疫化は、試験した他の免疫化のいずれよりも高い抗原特異的抗体応答を誘導した(
図1D)。より興味深いことに、CD63-OVA含有エキソソームによる免疫化は、抗原特異的IFN-γ酸性CD8
+T細胞を誘導したが、他の試験した免疫化はそのような誘導はしなかった(
図1E、
図1F)。これらの結果は、エキソソームの画分由来のCD63-OVAが、エキソソームの画分に由来するOVA単独またはカルネキシン-OVAより強いCD8
+T細胞応答を誘導することを、強く示唆している。
【0138】
なお、
図1Fと同様の実験を繰り返した。すなわち、C57BL/6Jマウス(n=5)に、pCD63トランスフェクト細胞、pOVAトランスフェクト細胞、pCD63-OVAトランスフェクト細胞またはpCalnexin-OVAトランスフェクト細胞から単離した精製エキソソーム、あるいはOVAタンパク質を皮内経路で導入して免疫化した。0日目、14日目および28日目における免疫化後の35日目に、脾臓を使用して、OVA
257-264特異的テトラマーによって認識されるCD8
+T細胞の割合を測定した結果を
図1Gに示す。
図1Gでは
図1Fと同様の結果が示された。
【0139】
抗原のエキソソームへの標的化は、DNAワクチンの免疫原性を改善する
上記結果に基づいて、本発明者らは、エキソソームを標的化する抗原を組み込んだDNAワクチンは、増大した免疫原性を有しているのではないかと仮説を立てた。pCD63-OVAを有するDNAワクチンが、他の対照DNAワクチンと比較して増大した免疫原性を有するのかについて調べるため、本発明者らは、imPETによりプラスミドDNAで2回マウスを免疫化し、in vivoで効率的なトランスフェクションを誘導した。ブースト免疫化の1週間後、pCD63-OVA免疫化マウスは、pOVA免疫化マウスより、血清中抗OVA IgG1の力価が顕著に低かったが、これらの2群間で抗OVA総IgGおよびIgG2cには差が無かった(
図2A)。pCD63-OVAおよびpOVAの間で抗OVA IgG2c/G1比を比較すると、pOVAと比較して、pCD63-OVA免疫化マウスにおいて、高い値の抗OVA IgG2c/G1が観察された(
図2A)。次に、本発明者らは、これらの免疫化マウスにおけるOVA
257-264特異的テトラマー
+CD44
+CD8
+T細胞の頻度を確認した。pCD63-OVA免疫化マウスでは、pOVA免疫化マウスと比較して、OVA
257-264特異的テトラマー
+CD44
+CD8
+T細胞の高い頻度が観察された(
図2B)。本発明者らはまた、クラスI(OVA
257-264)またはクラスII(OVA
323-333)OVAペプチドのいずれかで脾細胞をex vivoで刺激し、次いで、これらの脾細胞から得られたサイトカイン産生をELISAによって測定した。pCD63-OVAワクチン接種では、pOVAと比較して、各ペプチド刺激について、顕著に高いレベルのIFN-γ産生が検出された(
図2C)。
【0140】
CD63ベースの融合タンパク質に加えて、本発明者らは、CD9-OVA(pCD9-OVA)またはCD81-OVA(pCD81-OVA)融合タンパク質をコードするプラスミドDNAも製作した。これらプラスミドDNAもまた、コードされた抗原をエキソソームに標的化する(Thery, C., L. Zitvogel, and S. Amigorena. 2002. Nat Rev Immunol 2: 569-579)(Fujita, Y., N. Kosaka, J. Araya, K. Kuwano, and T. Ochiya. 2015. Trends in molecular medicine.)。本発明者らは、CD9-OVAタンパク質およびCD81-OVAタンパク質が、両方ともエキソソーム内で発現されることを確認した(
図6A、
図6B)。pCD9-OVAまたはpCD81-OVAのいずれによるDNAワクチン接種も、対照pOVAによるワクチン接種より高い抗OVA IgG2c/G1比をもたらした。さらに、抗原特異的CD8
+T細胞応答もまた増大しており、そのレベルはpCD63-OVAワクチン接種と同等であった(
図6C~E)。
【0141】
これらの結果は、DNAワクチン接種の間の抗原のエキソソームへの標的化が、DNAワクチンの免疫原性、特にそのCD8+T細胞応答を改善することを示している。
【0142】
抗原のエキソソーム標的化が、DNAワクチンの免疫原性の改善に重要である
次に、本発明者らは、エキソソームへのコードされた抗原の標的化の戦略が、DNAワクチン接種によるT細胞活性化を促進するための代替の戦略(例えば、小胞体のような他の原形質膜への抗原の標的化)に対して利点を有するのかについて調査した。この目的のために、本発明者らは、異なる融合タンパク質をコードする2つのプラスミドDNA:エキソソームを標的とするpCD63-OVA、およびERを標的とするpCal-OVA、の免疫原性の規模およびタイプを比較した。pCD63-OVAまたはpCal-OVAのいずれかによるimEPTを介した2つのDNAワクチン接種を受けたマウスは、類似する抗OVA Ab力価および抗OVA IgG2c/G1比を生じさせた(
図2D)。しかしながら、pCal-OVAによってワクチン接種されたマウスは、pCD63-OVAによってワクチン接種されたマウスより、OVA
257-264特異的テトラマー
+CD44
+CD8
+T細胞の高い頻度を示した(
図2E)。加えて、pCD63-OVAでワクチン接種したマウス由来の脾細胞は、pCal-OVAによって免疫化したマウスに由来する脾細胞より、刺激に際して顕著に高い量のIFN-γを産生した(
図2F)。これらの結果は、抗原の、他の膜ではなく、エキソソーム膜への標的化が、DNAワクチンの免疫原性を改善するのに十分であることを示している。
【0143】
CD63は、共投与されたDNAワクチンについてジェネティックアジュバントとしては作用しない
pCD63-OVAワクチンは強力なCD8
+T細胞応答を誘導する(
図2)ことから、本発明者らは、CD63を発現するプラスミドDNAが、OVAを発現するDNAワクチンについてジェネティックアジュバントとして作用するのかについて調べた。CD63の潜在的なアジュバント効果を評価するために、マウスを、pOVA、pCD63、pOVAおよびpCD63の混合物、またはpCD63-OVAによって免疫化した。2次免役化の1週間後、pCD63およびpOVAを一緒に受けたマウスにおいて、pOVA単独を受けたマウスと比較して、OVA特異的CD4
+およびCD8
+T細胞応答の促進はなかった;しかしながら、pCD63-OVAでワクチン接種したマウスは、OVA特異的CD4
+およびCD8
+T細胞応答において、顕著な増加を示した(
図3A、
図3B)。これらの結果は、CD63が、融合タンパク質としてOVA抗原とコンジュゲートしない限り、それ自体はジェネティックアジュバントとして機能しないことを示している。したがって、抗原のエキソソーム中またはエキソソーム上への送達は、DNAワクチンの免疫原性を改善し得る。
【0144】
抗原のエキソソームへの標的化は、腫瘍ワクチンに有用である
最後に、本発明者らは、pCD63-OVAワクチンが癌ワクチンおよび/または免疫療法に適用可能であるのかについて調べた。CTL応答は癌ワクチンの有効性に重要であるため、in vivo CTL細胞毒性アッセイを行い、機能的CD8+T細胞活性のレベルを評価した。pCD63-OVAによるマウスの免疫化は、pOVA単独による免疫化によって誘導されるものと比較して、OVA特異的CD8
+T細胞媒介機能的細胞毒性を顕著に増大させた(
図4A)。pCD63-OVAが腫瘍成長を抑制することができるかを調べるため、OVA過剰発現マウスリンパ腫細胞であるE.G-7細胞を有する外殖同系腫瘍モデルを用いた。E.G-7腫瘍細胞の播種の前に、マウスを、pCD63-OVAまたは他の対照プラスミドDNAワクチンによって免疫化した。腫瘍播種の後、pCD63-OVA免疫化マウスにおいては、対照プラスミドDNA免疫化マウスと比較して、腫瘍成長が顕著に抑制された(
図4B)。
【0145】
治療用ワクチンとして作用するためのpCD63-OVAの潜在能力をさらに評価するために、同一のE.G-7腫瘍モデルにおいて、腫瘍播種の10日後に、マウスをDNAワクチンで免疫化した。pCD63-OVAによって免疫化したマウスは、他のDNAワクチン接種群のマウスより、顕著に低い腫瘍成長を示した(
図4C)。腫瘍抑制の点からはpOVAとpCD63-OVAワクチン接種との間で統計的有意な差異はなかった(p=0.0749)ものの、pOVAワクチン接種と比較してpCD63-OVAワクチン接種によって、より良い腫瘍成長の制御の傾向を明らかに見ることができた。pCD63-OVAワクチン接種によって、OVA特異的CD8
+T細胞の数が増大した(
図4D)。これらの結果は、DNA免疫化の間の抗原のエキソソームへの標的化が、抗原特異的CD8
+T細胞応答の惹起のための新しい戦略になり得ることを示している。加えて、この戦略は、癌ワクチンにおける使用についても適用可能であり得る。
【0146】
(考察)
体液性および細胞性の両方の免疫応答が、動物モデルにおいてDNAワクチン接種によって誘導された。しかしながら、ヒトでは、DNAワクチンに対する免疫学的応答が、予期されたよりも弱い場合が多数存在する。本発明者らの研究において、pCD63-OVA DNAワクチン接種の有効性が実証され、DNAワクチンの免疫原性が、エキソソームへの抗原の標的化によって改善され得ることが示唆された。本実施例の結果は、1)pCD63-OVAワクチン接種が、コードされるOVA抗原を分泌されたエキソソームに成功裡に標的化すること;2)pCD63-OVAワクチン接種が、例えば、抗原特異的および機能的細胞毒性CD8+T細胞応答のような、強力なI型免疫応答をin vivoで誘導すること;および3)pCD63-OVAワクチン接種が、同系外殖E.G-7細胞由来腫瘍の成長を、予防的および治療的の両方の様式で抑制することを示唆している。
【0147】
DNAワクチン接種の後、注入部位におけるストローマ細胞およびDCを、プラスミドDNAで直接トランスフェクトした(Herrada, A. A., et al.,. 2012. Hum Vaccin Immunother 8: 1682-1693.)。次いで、トランスフェクトした細胞は、コードされた抗原を転写および翻訳し、抗原は、続いて、DCによって直接的に、またはストローマ細胞を介して間接的に、T細胞に提示された。これは、コードされた抗原に特異的なCD4+Th1細胞の誘導のみではなく、交差提示の間接的な機構を介してCD8+T細胞の誘導ももたらす(Liu, M. A. 2003. 253: 402-410.)。同時に、プラスミドDNAは、細胞内DNAセンサーによって検知され、コードされる抗原に対するDNAワクチン誘導性の体液性および細胞性免疫応答についての外因性アジュバントとして作用する(Thery, C., et al., 2002. Nat Immunol 3: 1156-1162.、Zitvogel, L., et al., 1998. Nat Med 4: 594-600.)。DNAワクチン接種の細胞免疫学的機構と、エキソソームの免疫学的機能との両方について近年広範に研究されている(Gentili, M., et al. 2015. Science(New York, N.Y.) 349: 1232-1236.)が、DNAワクチン誘導性の免疫応答におけるエキソソームの役割については、十分に研究されていない。免疫応答の誘導におけるエキソソームの役割について調べているいくつかの以前の報告がある(Qazi, K. R., et al., 2009. Blood 113: 2673-2683.、Cheng, Y., and J. S. Schorey. 2013. Eur J Immunol 43: 3279-3290)ものの、本発明者らのデータは、CD63と融合した抗原タンパク質をコードするプラスミドDNAが、ワクチンの免疫原性を増大させることを初めて明確に実証したものである。
【0148】
CD63-OVA融合タンパク質抗原をコードするプラスミドDNAの最も注目すべき特徴は、強力なCD8+T細胞応答を誘導する能力である。コードされた抗原に対するこの増大したCD8+T細胞応答は、CD63を介したコードされる抗原のエキソソーム標的化に帰するものであり得る。しかしながら、エキソソームを介した抗原のCD8+T細胞への交差提示が存在するのか、そしてそれがDNAワクチン誘導性CD8+T細胞応答のために重要であるのかを確認するためには、さらなる研究が必要である。CD63および他の試験したテトラスパニンが、エキソソームを排他的に標的化せず、コードされた抗原を他の原形質膜にも同様に方向づけているということもまた考えられる。DNAワクチンがCD8+T細胞応答を誘導するために必要とされる交差提示の詳細な機構を明らかにするためにはさらなる証拠が必要である。
【0149】
本発明者らの腫瘍モデルにおいては、腫瘍抗原としてOVAタンパク質を発現させるE.G-7腫瘍細胞を用いた。以前の報告においては、OVAを発現する腫瘍細胞の成長は、OVAタンパク質およびアジュバントによる、またはOVA発現プラスミドDNAから構成されるDNAワクチンによる免疫化によって減少することが示唆されていた(Chamoto, K., et al., 2006. Cancer Res 66: 1809-1817.、Teramoto, K., et al.,, 2003. Cancer Res 63: 7920-7925.)。他の報告において、エキソソームはCD4+およびCD8+T細胞依存性抗腫瘍効果を媒介し得ることが既に示されている(Wolfers, J., et al., 2001. Nat Med 7: 297-303.)。他方、本発明者らの結果は、それらの知見を確認し、そして、E.G-7腫瘍細胞の成長が、コードされた抗原をエキソソームに標的化するpCD63-OVAによるDNAワクチン接種によってさらに抑制することができることを、本発明者らの知る限りにおいては初めて実証するものである。
【0150】
腫瘍を移植したマウスにおけるOVA-特異的テトラマー
+CD8
+T細胞の数は、pCD63-OVAによるDNAワクチン接種によって顕著に増加した(
図4D)。このことは、腫瘍抗原と、CD63、CD9またはCD81のようなエキソソーム標的化分子との融合タンパク質をコードするDNAによるワクチン接種によって、腫瘍抗原特異的CD8
+T細胞の耐性または消耗状態を打破することが可能であり得ることを示している。しかしながら。これらのテトラスパニンエキソソームマーカータンパク質は、他の原形質膜においても発現されることに注意すべきである。したがって、他の原形質膜の増大した免疫原性への潜在的な寄与は排除することができない。このエンドソーム特異性が低いことはまた、テトラスパニンを有する融合タンパク質がオフターゲット効果をもたらし得るため、臨床適用について安全性の懸念を生じさせる。
【0151】
DNAワクチンは、獣医学的適用においては認可され使用されており(Redding, L., and D. B. Weiner. 2009. Expert review of vaccines 8: 1251-1276.)、そして、ヒトでは多数の感染性疾患または癌治療のためのDNAワクチンが現在臨床試験中である(Escudier, B., et al., 2005. J Transl Med 3: 10.; Morse, M. A., et al., 2005. J Transl Med 3: 9.; Viaud, S., et al., 2009. DPLoS One 4: e4942.; Viaud, S., et al., 2010. Cancer Res 70: 1281-1285.38~41)。これらのワクチンおよびワクチン候補は、DNAワクチンの低い免疫原性を改善するために様々な戦略を利用している。本発明者らの結果は、抗原とエキソソームマーカー(例えば、CD63)との間の融合を通じた、コードされる抗原のエキソソームへの標的化の戦略が、DNAワクチンの免疫原性を改善するための、もう1つの実行可能な方法となり得ることを示唆している。この戦略は、特に、コードされる抗原に対するCD8+T細胞応答を増大させるのに適切である。本発明者らの発見は、どのようにDNAワクチンの免疫原性および有効性を改善するかについての洞察を提供する。さらに本発明者らの発見は、DNAワクチンにおけるDNAにコードされた抗原が免疫系によってどのように送達・プロセスされ抗原特異的免疫応答を提供するのかについての生物学的および免疫学的な理解を深めるものである。
【0152】
(結論)
以上のように、本発明の核酸構成物は、ワクチンDNAの免疫原性の改善、免疫応答の増強、T細胞応答の増強、がんを治療および予防などの効果を達成することができることが示された。
【0153】
(実施例2:製剤例)
製剤化する場合には、以下のような製法によって製造することができる。
【0154】
(例1)凍結乾燥したワクチンDNAの適宜の量に適宜の容積の生理食塩水を直接加えて注射用溶液製剤とすることができる。
【0155】
(例2)凍結乾燥したワクチンDNAの適宜の量に適宜の容積の等張液5%ブドウ糖液を加えて注射用溶液製剤とすることができる。
【0156】
(例3)水に溶解されたワクチンDNAの適宜の量に適宜の容積の電解質補正液大塚食塩注10%などを加え0.9% NaCl濃度に調製し注射用溶液製剤とすることができる。
【0157】
(例4)水に溶解されたワクチンDNAの適宜の量を凍結乾燥し、ワクチンDNAナトリウム塩の凍結乾燥製剤とすることができる。
【0158】
例1、3および4が好ましく、例2も投与方法によって実施可能である。
【0159】
(参考文献)
以下は、実施例において参照される文献である。以下の文献の列挙は、本発明に対して先行技術であることを認めるものではない。
【0160】
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【0161】
(注記)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。