(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125225
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
B63B 11/04 20060101AFI20220819BHJP
B63B 27/00 20060101ALI20220819BHJP
B63B 25/00 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
B63B11/04 B
B63B27/00 B
B63B25/00 102A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108554
(22)【出願日】2022-07-05
(62)【分割の表示】P 2017033434の分割
【原出願日】2017-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹村 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】栗林 周平
(57)【要約】
【課題】車両の搭載スペースへの影響を抑制できる船舶を提供する。
【解決手段】船舶は、車両が自走して乗り込み可能な複数の甲板と、二重底を構成する外底板及び内底板と、上下に隣り合う考案同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイと、を備える船体と、液化ガスを燃料として駆動するガスエンジンと、前記燃料を貯蔵する複数の燃料タンクと、を備え、前記複数の燃料タンクは、前記船体の左舷側に隣接して配置される左側燃料タンクと、前記船体の右舷側に隣接して配置される右側燃料タンクと、前記左側燃料タンク及び前記右側燃料タンクをそれぞれ外側から覆うケーシングと、を備え、前記ケーシングにより覆われた前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとは、前記内底板のすぐ上の位置から上方に延びて、それぞれ複数の前記甲板を上下方向で貫くように配置され、前記ランプウェイは、船幅方向で前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとの間に配置されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が自走して乗り込み可能な複数の甲板と、二重底を構成する外底板及び内底板と、上下に隣り合う甲板同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイと、を備える船体と、
液化ガスを燃料として駆動するガスエンジンと、
前記燃料を貯蔵する複数の燃料タンクと、
を備え、
前記複数の燃料タンクは、
前記船体の左舷側に隣接して配置される左側燃料タンクと、
前記船体の右舷側に隣接して配置される右側燃料タンクと、
前記左側燃料タンク及び前記右側燃料タンクをそれぞれ外側から覆うケーシングと、を備え、
前記ケーシングにより覆われた前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとは、前記内底板のすぐ上の位置から上方に延びて、それぞれ複数の前記甲板を上下方向で貫くように配置され、
前記ランプウェイは、船幅方向で前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとの間に配置されている船舶。
【請求項2】
前記左側燃料タンクは、前記左舷側に沿う船首尾方向に複数並べて配置され、
前記右側燃料タンクは、前記右舷側に沿う船首尾方向に複数並べて配置され、
前記左側燃料タンクが並ぶ個数と前記右側燃料タンクが並ぶ個数とが同一とされている請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
前記ケーシングは、前記甲板に固定されている請求項1又は2に記載の船舶。
【請求項4】
前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとは、
それぞれ同一形状とされ、前記船体の船幅方向の中心線を基準にして左右対称な位置に配置されている請求項1から3の何れか一項に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が自走して乗り込み可能な船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
車両が自走して乗り込み可能な船舶としては、カーフェリー、RO-RO船(roll-on/roll-off ship)、PCC(Pure Car Carrier)、PCTC(Pure Car & Truck Carrier)等が有る。このような船舶において、例えば、環境性能を向上するためにLNG(Liquefied Natural Gas)等の液化ガスを燃料とすることが要望される場合がある。
特許文献1には、LNG(Liquefied Natural Gas)等の液化ガスを燃料として駆動するガスエンジンを備えた船舶において、液化ガスを貯蔵する燃料タンクを、エンジンルームから船舶の外側まで延びるエンジンルームケーシングに沿わせて縦方向に配置する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載された船舶の燃料タンクのように液化ガスを貯蔵する燃料タンクは、ディーゼル燃料等を貯蔵する燃料タンクに比べて大型である。そのため、車両の搭載スペースに影響を与えてしまう場合がある。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、車両の搭載スペースへの影響を抑制できる船舶を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、車両が自走して乗り込み可能な複数の甲板と、二重底を構成する外底板及び内底板と、上下に隣り合う甲板同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイと、を備える船体と、液化ガスを燃料として駆動するガスエンジンと、前記燃料を貯蔵する複数の燃料タンクと、を備え、前記複数の燃料タンクは、前記船体の左舷側に隣接して配置される左側燃料タンクと、前記船体の右舷側に隣接して配置される右側燃料タンクと、前記左側燃料タンク及び前記右側燃料タンクをそれぞれ外側から覆うケーシングと、を備え、前記ケーシングにより覆われた前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとは、前記内底板のすぐ上の位置から上方に延びて、それぞれ複数の前記甲板を上下方向で貫くように配置され、前記ランプウェイは、船幅方向で前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとの間に配置されている。
このように構成することで、複数の燃料タンクが、それぞれ左舷側及び右舷側に隣接して配置されるため、甲板上に船幅方向に広い車両搭載スペース及び車両走行路を確保することができる。これにより、車両搭載スペース及び車両走行路の使い勝手を向上できる。その結果、液化ガスを貯蔵する燃料タンクを配置した場合であっても、車両の搭載スペースへの影響を抑制できる。
【0007】
この発明の第二態様によれば、第一態様に係る左側タンクは、前記左舷側に沿う船首尾方向に複数並べて配置され、右側燃料タンクは、前記右舷側に沿う船首尾方向に複数並べて配置され、前記左側燃料タンクが並ぶ個数と前記右側燃料タンクが並ぶ個数とが同一とされていてもよい。
このように構成することで、左側燃料タンクと右側燃料タンクとがそれぞれ同一の個数で配置されるため、船体の船幅方向にアンバランスが生じることを抑制できる。
【0008】
この発明の第三態様によれば、第一又は第二態様に係る船舶において、前記左側燃料タンク及び前記右側燃料タンクをそれぞれ外側から覆うケーシングを備え、前記ケーシングは、前記甲板に固定されていてもよい。
このように構成することで、左側燃料タンクと右側燃料タンクとを外側から覆うケーシングを、複数層の甲板を支える支持構造として利用できる。そのため、甲板を支える専用の支持構造を省略することができ、船体の重量増を抑制することができる。
【0009】
この発明の第四態様によれば、第一から第三態様の何れか一つの態様に係る船舶において、前記左側燃料タンクと前記右側燃料タンクとは、それぞれ同一形状とされ、前記船体の船幅方向の中心線を基準にして左右対称な位置に配置されていてもよい。
このように構成することで、左側燃料タンクと右側燃料タンクとの重量の違いや配置によって船体の船幅方向のアンバランスが生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0010】
上記船舶によれば、車両の搭載スペースへの影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】この実施形態の船舶の概略構成を示す側面図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿う断面図である。
【
図4】この発明の実施形態の第一変形例における燃料タンクの拡大図である。
【
図5】この発明の実施形態の第二変形例における燃料タンクの拡大図である。
【
図6】この発明の実施形態の第三変形例における燃料タンクの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、この発明の実施形態における船舶を図面に基づき説明する。
図1は、この実施形態の船舶の概略構成を示す側面図である。
図2は、
図1のII-II船に沿う断面図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿う断面図である。
図1から
図3に示すように、この実施形態における船舶1は、船体2と、上部構造3と、を備えている。
【0013】
船体2は、舷側4A,4Bと、船底5と、複数の甲板10を有している。舷側4A,4Bは、左右舷側をそれぞれ構成する一対の舷側外板からなる。船底5は、これら舷側4A,4Bを接続する船底外板からなる。
図2に示すように、船体2は、これら一対の舷側4A,4B及び船底5により、その船首尾方向に直交する断面形状がU字状に形成されている。この船体2の内部には、複数の甲板10が上下に間隔をあけて設けられている。また、船体2は、2重底となっており、外底板5Aの上方に間隔をあけて内底板5Bが配置されている。
【0014】
船体2は、船尾2Aの下方にスクリュー7と舵8とを備えている。
スクリュー7は、船体2内に設けられた主機であるガスエンジン9によって回転駆動され、ガスエンジン9の回転エネルギーを船体2の推進力に変換する。舵8は、スクリュー7の後方に設けられており、船体2の進行方向を制御する。
ガスエンジン9は、液化ガスを燃料として駆動し、船体2の最下層における船尾2Aに近い側に区画された主機室11内に配置されている。なお、この実施形態における液化ガスは、LNG(Liquefied Natural Gas)である。
【0015】
船体2は、更に、車両等の貨物を搬入・搬出させるための2つのショアランプ12を備えている。この実施形態における船舶1は、船尾2Aと、舷側4Bの船首尾方向の中間位置にそれぞれショアランプ12(スターンランプ12A、センターランプ12B)が設けられている場合を例示している。これらショアランプ12は、階層状に形成された船体2の甲板10のうち、中間層に配置されたいわゆる乗り込み甲板である乾舷甲板10Aに繋がっている。これらショアランプ12を倒して展開させると、乗用車やトラック等の車両が岸壁からショアランプ12を通じて自走して乾舷甲板10Aに乗り込むことが可能となる。乗船した車両(図示せず)は、例えば、上下に隣り合う甲板10同士を繋ぐ傾斜路であるランプウェイ13を介して、それぞれ所定の階層の甲板10上の所定の搭載位置に停車して運搬される。ランプウェイ13は、例えば、昇降可能とされており、例えば、使用後に車両の搭載スペースとして利用できる。
【0016】
船体2は、更に、左右の舷側4A,4Bに複数の矩形部分横隔壁14(
図3参照)を備えている。これら矩形部分横隔壁14(骨ともいう)は、船首尾方向(図中、A-Fで示す方向)に間隔をあけて複数箇所に配置されている。左の舷側4Aに設けられている矩形部分横隔壁14は、左の舷側4Aの内側面4Ai(
図3参照)に沿う上下方向に延びるように形成されている。右の舷側4Bに設けられている矩形部分横隔壁14は、右の舷側4Bの内側面4Bi(
図3参照)に沿う上下方向に延びるように形成されている。この実施形態で例示する矩形部分横隔壁14は、船首尾方向に隣接するように配置された2本の矩形部分横隔壁14が一つの組となって、これら矩形部分横隔壁14の複数の組が、船首尾方向に間隔をあけて配置されている。なお、
図2においては、矩形部分横隔壁14を図示省略している。
【0017】
上部構造3は、船体2の上甲板10B(
図1参照)の上に形成されている。上部構造3は、船橋3Aと居住区3Bとを備えている。
なお、
図3において、符号「EC」は、主機室11からファンネルFに繋がるエンジンケーシングである。このエンジンケーシングECは、左の舷側4Aに沿って主機室11から上甲板10Bに向かって形成されている。このエンジンケーシングECを通じてガスエンジン9の排気管等がファンネルF(
図1参照)まで延びている。
【0018】
図2に示すように、船体2は、その内部に、主機の燃料である液化ガスを貯蔵するための複数の燃料貯蔵部20を備えている。燃料貯蔵部20は、燃料タンク21と、ケーシング22と、燃料供給配管23と、を備えている。
【0019】
燃料タンク21は、液化ガスを高圧低温状態で収容する圧力容器である。燃料タンク21は、甲板10を上下方向に貫くように配置されている。つまり、燃料タンク21は、各甲板10と燃料タンク21の中心軸C1とが実質的に直交する縦置きの姿勢で配置されている。この実施形態における燃料タンク21は、上端部21aと、胴部21bと、下端部21cと、を備えている。
【0020】
上端部21aは、上方に凸となる半球状に形成されている。胴部21bは、その軸線(中心軸C1)方向が上下方向を向く円筒状に形成されている。下端部21cは、下方に凸となる半球状に形成されている。燃料タンク21は、上端部21aに燃料供給配管23等の配管が接続され、上端部21aから液化ガスを出し入れ可能となっている。なお、この実施形態における上下方向とは、船底5の基準面5Kに対して垂直な方向、言い換えれば、船体2の高さ方向と言うこともできる。
【0021】
図2、
図3に示すように、ケーシング22は、燃料タンク21を外側から覆っている。この実施形態で例示するケーシング22は、燃料タンク21の中心軸C1と直交する断面形状が四角形の角柱状に形成されている。ケーシング22の内側面22aは、燃料タンク21の外周面21Sから離間している。燃料タンク21は、例えば、ケーシング22の上部に支持されており、熱伸び等による配管接続部の変位を抑制している。なお、ケーシング22の内側面22a及び燃料タンク21の外周面21Sには、断熱材(図示せず)等を張り付けるようにしても良い。
【0022】
ケーシング22は、甲板10の各階層の間を支持する構造体としての機能を有している。ケーシング22は、各階層の甲板10に溶接等により固定されている。このようにケーシング22が甲板10を支持する構造体として機能するため、船首尾方向におけるケーシング22が配置されている範囲においては、上述した矩形部分横隔壁14を省略できる。
【0023】
図3に示すように、燃料タンク21は、左側燃料タンク21Aと、右側燃料タンク21Bと、を備えている。
左側燃料タンク21Aは、船体2の左の舷側4Aに隣接して配置されている。左側燃料タンク21Aは、左の舷側4Aに沿う船首尾方向に複数並べて配置されている。この実施形態における左側燃料タンク21Aは、左の舷側4Aに沿う船首尾方向に2つ並べて配置されている。これら2つの左側燃料タンク21Aは、一つのケーシング22によって覆われている。
【0024】
右側燃料タンク21Bは、船体2の右の舷側4Bに隣接して配置されている。右側燃料タンク21Bは、右の舷側4Bに沿う船首尾方向に複数並べて配置されている。この実施形態における右側燃料タンク21Bは、左側燃料タンク21Aと同様に、右の舷側4Bに沿う船首尾方向に2つ並べて配置されている。すなわち、左側燃料タンク21Aが並ぶ個数と右側燃料タンク21Bが並ぶ個数とが同一とされている。これら2つの右側燃料タンク21Bも、左側燃料タンク21Aと同様に、一つのケーシング22によって覆われている。なお、以下の説明において、左側燃料タンク21Aと右側燃料タンク21Bとを区別する必要が無い場合においては、単に燃料タンク21と称する場合がある。
【0025】
この実施形態における左側燃料タンク21Aと右側燃料タンク21Bとは、同一の大きさ及び形状となっており、2重底の内底板5B(
図2参照)の直ぐ上の位置から上甲板10Bの直ぐ下の位置に渡って配置されている。そして、これら燃料タンク21を覆うケーシング22は、内底板5Bから上甲板10Bの直ぐ上の位置に渡って配置されている。ケーシング22のうち、上甲板10Bよりも上方に突出している突出部分24が、燃料タンク21に対する配管の接続等を行うスペースとなっている。
また、この実施形態における左側燃料タンク21Aと右側燃料タンク21Bとは、船首尾方向の位置が、同一位置となるように配置されている。つまり、左側燃料タンク21Aと右側燃料タンク21Bとは、船幅方向の中心線C2を基準にして線対称に配置されている。
【0026】
さらに、この実施形態における燃料タンク21は、船首尾方向におけるセンターランプ12Bとスターンランプ12Aとの間に配置されている。より具体的には、燃料タンク21は、センターランプ12Bとスターンランプ12Aとの間のうち、センターランプ12Bに近い側に配置されている。
【0027】
この実施形態で例示する船体2は、2つのランプウェイ13として、第一ランプウェイ13Aと第二ランプウェイ13Bとを備えている。第一ランプウェイ13Aは、乾舷甲板10Aとその下層の甲板10との間で車両が自走して移動するための傾斜路である。第一ランプウェイ13Aは、船幅方向の中心線C2と左側燃料タンク21Aとの間に配置されている。この第一ランプウェイ13Aは、通常、スターンランプ12Aから乗降する車両が利用する。
【0028】
第二ランプウェイ13Bは、乾舷甲板10Aとその上層の甲板10との間で車両が自走して移動するための傾斜路である。第二ランプウェイ13Bは、船首尾方向でセンターランプ12Bよりも船首2F側に配置されている。この第二ランプウェイ13Bは、船幅方向で右の舷側4Bよりも船幅方向の中心線C2に近い位置に配置されている。この第二ランプウェイは、通常、センターランプから乗降する車両が利用する。
【0029】
また、
図2に示すように、この実施形態で例示する船体2は、バンカーステーション25を備えている。バンカーステーション25は、海上での燃料タンク21への燃料供給を可能とする接続部である。この実施形態における船体2は、左側燃料タンク21A近傍の左の舷側4Aと右側燃料タンク21B近傍の右の舷側4Bとに、それぞれバンカーステーション25が配置されている。なお、バンカーステーション25は、右舷、左舷の何れか一方のみに設けても良い。
【0030】
上述した燃料タンク21に貯蔵されている燃料は、燃料供給配管23を介してガスエンジン9に供給される。燃料供給配管23は、燃料タンク21のそれぞれの上端部21aからケーシング22の内側面に沿って内底板5Bに至り、中心線C2の左右側のケーシング22の間の内底板5B上で、主機室11に隣接したガス燃料調整室FPRに導かれている。このガス燃料調整室FPRでは、液化ガスが、例えば海水等を用いて気化処理される。この気化したガスは、主機室11内のガスエンジン9に供給されて、ガスエンジン9の駆動に供される。
【0031】
したがって、上述した実施形態によれば、複数の燃料タンク21が、それぞれ左の舷側4A及び右の舷側4Bに隣接して配置されるため、甲板10上に船幅方向に広い車両搭載スペース及び車両走行路を確保することができる。これにより、車両搭載スペース及び車両走行路の使い勝手を向上できる。その結果、液化ガスを貯蔵する燃料タンク21を配置した場合であっても、車両の搭載スペースへの影響を抑制できる。
【0032】
また、左側燃料タンク21Aが並ぶ個数と右側燃料タンク21Bが並ぶ個数とが同一となっている。そのため、船体2の船幅方向にアンバランスが生じることを抑制できる。また、左側燃料タンク21Aと右側燃料タンク21Bとが船幅方向の中心線C2を基準にして線対称に配置されているため、船体2の船幅方向にアンバランスが生じることを、より一層抑制できる。
【0033】
さらに、ケーシング22を複数層の甲板10を支える構造体として利用できる。そのため、ケーシング22を設けた分だけ甲板10を支え、船体の変形を抑制する矩形部分横隔壁14を省略することができる。その結果、船体2の重量増を抑制することができる。また、ケーシング22は、燃料タンク21を支える構造体であるため、通常の矩形部分横隔壁14と比較して剛性が高い。そのため、ケーシング22を船体2の甲板10を支える構造体として用いることで、矩形部分横隔壁14を用いる場合よりも船体2の剛性を高めることができる。
【0034】
次に、上述した実施形態の第一から第三変形例を図面に基づいて説明する。なお、第一から第三変形例は、上述した実施形態と燃料タンク21の数量、高さなどが異なるだけである。そのため、上述した実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複する説明を省略する。
【0035】
(第一、第二変形例)
図4は、この発明の実施形態の第一変形例における燃料タンクの拡大図である。
図5は、この発明の実施形態の第二変形例における燃料タンクの拡大図である。
上述した実施形態においては、燃料タンク21を内底板5Bの直ぐ上の位置から上甲板10Bの直ぐ下の位置に至る長さで形成する場合を例示した。しかし、燃料タンク21の長さは、上述した実施形態の長さに限られない。例えば、
図4に示す第一変形例のように、燃料タンク121の上端部121Aが上甲板10Bよりも僅かに上方突出する長さで形成しても良い。そして、燃料タンク121の上端部121Aは、ケーシング22を貫通して船体2の外部に露出させてもよい。このようにした場合、燃料タンク21の容量を増加できるため、上述した実施形態の燃料タンク21よりも多くの液化ガスを搭載することが可能となる。なお、ケーシング22は、上端部121Aを外側から覆うようにしても良い。
【0036】
さらに、
図5に示す第二変形例のように、燃料タンク221の長さは、内底板5Bの直ぐ上の位置から、乾舷甲板10Aと上甲板10Bとの中間位置近傍に至る長さとしても良い。このようにした場合、船体2の上部に燃料タンク221が配置されないため、船体2の重心位置が高くなることを抑制できる。また、第二変形例のようにすることで、上記中間位置よりも上の階層に位置する甲板10の車両搭載スペースを拡大することができる。
【0037】
(第三変形例)
図6は、この発明の実施形態の第三変形例における燃料タンクの拡大図である。
上述した実施形態においては、右側燃料タンク21Bと左側燃料タンク21Aとをそれぞれ2つずつ配置する場合について説明した。しかし、右側燃料タンク21Bと左側燃料タンク21Aとを配置する個数は、2つずつに限られない。
例えば、
図6に示すように、右側燃料タンク321Bと左側燃料タンク321Aとを3つずつ配置したり、図示は省略するが4つ以上の同数ずつ配置したりしても良い。なお、
図6においては、右側燃料タンク321Bのみを示しているが、左側燃料タンク321Aも同様の構成である。
【0038】
この発明は上述した実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
例えば、上述した実施形態においては、一つのケーシング22に対して複数の燃料タンク21を収容する場合について説明した。しかし、燃料タンク21を一つずつケーシング22により覆うようにしても良い。このようにすることで、船体2の剛性をより一層高めることができる。
【0039】
また、上述した実施形態においては、ケーシング22が各階層の甲板10に固定される場合について説明したが、甲板10に直接的に固定されていなくても良い。また、ケーシング22は、全ての階層の甲板10に固定される場合に限られず、一部の階層の甲板10にのみ固定されるようにしても良い。
さらに、上述した実施形態においては、燃料タンク21の中心軸C1が船底5の基準面5Kに対して垂直な方向に延びている場合について説明した。しかし、中心軸C1は、基準面5Kに垂直に延びる直線に対して僅かに傾いていても良い。
【0040】
また、上述した実施形態では、階層状に甲板10が設けられている場合について説明したが、例えば、各甲板10の間に、車両を載せた状態で昇降可能なリフタブルデッキを設けても良い。
【0041】
また、上述した実施形態では、船舶1として自動車運搬船を一例にして説明したが、車両が自走して乗り込み可能な船舶であればよく、例えば、カーフェリー等の船舶であってもよい。
【0042】
さらに、上述した実施形態の船舶1においては、2つのショアランプ12を有する船舶について説明したが、ショアランプ12は1つだけ備えていても良い。また、船体2の内部におけるランプウェイ13の配置は、上述した実施形態で例示したランプウェイ13の配置に限られない。つまり、ランプウェイ13は、左側燃料タンク21Aと右側燃料タンク21Bとの間に配置されていなくても良い。
さらに、上述した実施形態においては、ガスエンジン9のみを駆動源とする船舶1を一例に説明したが、ガスエンジンと、他の内燃機関との両方を搭載した船舶であっても良い。また、ガスエンジンは従来の油燃料も使用できる2元燃料エンジンでもよい。
【0043】
図3の船首尾方向に隣接するように配置された2本の矩形部分横隔壁は2本である必要は無く、1本、又は3本以上でも良い。さらに、矩形部分横隔壁は1枚で、船体の横方向に矩形部分横隔壁よりも幅広い部分横隔壁でも良い。
【符号の説明】
【0044】
1 船舶
2 船体
3 上部構造
4A,4B 舷側
5 船底
5A 外底板
5B 内底板
7 スクリュー
8 舵
9 ガスエンジン
10 甲板
11 主機室
12 ショアランプ
12A スターンランプ
12B センターランプ
13 ランプウェイ
13A 第一ランプウェイ
13B 第二ランプウェイ
14 矩形部分横隔壁
20 燃料貯蔵部
21 燃料タンク
22 ケーシング
23 燃料供給配管(配管)
24 突出部分
25 バンカーステーション