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特開2022-125272二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン構造を有する高強度ガラスセラミック
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022125272
(43)【公開日】2022-08-26
(54)【発明の名称】二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン構造を有する高強度ガラスセラミック
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/097 20060101AFI20220819BHJP
   C03C 10/12 20060101ALI20220819BHJP
【FI】
C03C3/097
C03C10/12
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109578
(22)【出願日】2022-07-07
(62)【分割の表示】P 2020171091の分割
【原出願日】2014-09-03
(31)【優先権主張番号】61/874,870
(32)【優先日】2013-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/970,566
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ハルセイ ビール
(72)【発明者】
【氏名】チアン フゥ
(72)【発明者】
【氏名】リサ アン ムーア
(72)【発明者】
【氏名】リンダ ルース ピンクニー
(72)【発明者】
【氏名】シャーリーン マリー スミス
(57)【要約】

【課題】従来の圧延及びフロートプロセスに適合し、高い機械的強度及び破壊耐性を有するガラスセラミックを提供する。
【解決手段】ガラスセラミックを形成するための前駆体ガラスであって、
イオン交換前に、重量%で:
SiO:70~82%;
Al:6~10%;
LiO:>10~15%;
NaO:>0~5%;
(NaO+KO):>0~5%;
(LiO+KO+NaO+RbO+CsO):10~20%;
:0.5~5%;および
ZrO:3~10%;
を含む。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換前に、重量%で:
SiO:70~82%;
Al:6~10%;
LiO:>10~15%;
NaO:>0~5%;
(NaO+KO):>0~5%;
(LiO+KO+NaO+RbO+CsO):10~20%;
:0.5~5%;および
ZrO:3~10%;
を含む、
ガラスセラミックを形成するための前駆体ガラス。
【請求項2】
>10~14重量%のLiOを含む、請求項1記載の前駆体ガラス。
【請求項3】
>0~1重量%のNaOを含む、請求項1または2記載の前駆体ガラス。
【請求項4】
1~4重量%のPを含む、請求項1から3いずれか1項記載の前駆体ガラス。
【請求項5】
>0~3%重量%のCaOを含む、請求項1から4いずれか1項記載の前駆体ガラス。
【請求項6】
>0~0.5重量%のSnOを含む、請求項1から5いずれか1項記載の前駆体ガラス。
【請求項7】
が0重量%である、請求項1から6いずれか1項記載の前駆体ガラス。
【請求項8】
>0~2重量%のKOを含む、請求項1から7いずれか1項記載の前駆体ガラス。
【請求項9】
(NaO+KO):>%0~<1%である、請求項1から8いずれか1項記載の前駆体ガラス。
【請求項10】
73~82%重量%のSiOを含む、請求項1から9いずれか1項記載の前駆体ガラス。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条の下で、2014年3月26日出願の米国仮特許出願第61/970566号の優先権の利益を主張するものであり、かつ2013年9月6日出願の米国仮特許出願第61/874870号の優先権の利益を主張するものであり、本出願は上記出願の内容に依存するものであり、参照によってその全体を援用する。
【技術分野】
【0002】
実施形態は、ガラス及びガラスセラミック組成物に関し、特に二ケイ酸リチウムと、従来の圧延、フロート及び吹込成形プロセスに適合するスポジュメン結晶相との組合せを有する、ガラスセラミック組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
SiO‐LiO‐KO‐ZnO‐P‐Al‐ZrO系中の二ケイ酸リチウムガラスセラミックが開発されており、歯冠、歯科用ブリッジ及び歯科用オーバレイとしての使用のために販売されている。上記二ケイ酸リチウムガラスセラミックの、連鎖管状結晶の微小構造は、高い機械的強度及び破壊靭性並びに優れた化学耐久性を提供する。この分野の組成物はCorning,Inc.が発明し、Beallらが特許文献1として特許を取得した。特許文献1の実施例3の組成物を、組成物Aとして表1に示す。
【0004】
【表1】
【0005】
組成物Aのような二ケイ酸リチウムガラスセラミックは優れた機械的特性を提供するが、その前駆体ガラスは流動性が高く、キャスティング以外の多数の成形プロセスに適合させるのが困難である。このようなガラスは、500~750ポアズ(50~75Pa・s)の液相粘度を有し得る。比較として、フロート、圧延、プレス又は吹込成形される典型的なソーダライムガラス、並びに(流し台上面に使用される)圧延されるβ‐石英系ガラスセラミックは、10000ポアズ(1000Pa・s)近い液相粘度を有する。主要相として二ケイ酸リチウムを有するガラスセラミックの良好な機械的特性を保持したまま、上記前駆体ガラスの粘度を上昇させることが極めて望ましい。
【0006】
更に、公知のガラス系材料は、本来的な脆性、及び割れの伝播に対する低い耐性を示す場合が多い。例えば、本来的に低い破壊靭性(例えば酸化物ガラス及びガラスセラミックに関して0.5~1.0MPa・m1/2)により、酸化物ガラスは、小さな欠陥及び傷の存在に対して敏感になる。比較点として、市販の単結晶基材は、約2.4~約4.5MPa・m1/2の破壊靭性値を示す。例えばイオン交換プロセスによる化学強化は、ガラス又はガラスセラミック内に、表面からある深さ(例えば50~100μm)までの圧縮応力層を付与することによって、ガラス又はガラスセラミックの表面における割れの貫入に対するある程度の耐性をもたらすことができるが、この割れ貫入耐性は限定的なものであり得、上記圧縮応力層を通ってガラス又はガラスセラミックの容積内へと割れが伝播してしまうともはや効果がなくなる。特に損傷耐性及び破壊靭性に関する、ガラス系材料の機械的特性の改善は、関心を集め続けている。従って、改善された損傷耐性及び破壊靭性をガラスセラミックにもたらすこともまた、極めて望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5219799号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、30~65重量%の二ケイ酸リチウムの第1の結晶相、及び20~60重量%のβ‐スポジュメンの第2の結晶相を含む、ガラスセラミックを含む。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミックは、40~55重量%の二ケイ酸リチウムの第1の結晶相、及び25~45重量%のβ‐スポジュメンの第2の結晶相を含む。いくつかの実施形態では、ガラスセラミック中の残部ガラス相は、25重量%未満である。
【0009】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、重量%で以下:
SiO:68~82%
Al:5~12.5%
LiO:8~15%
NaO:0~5%
O:0~5%
(NaO+KO):0~5%
:>0~4%
ZrO:0~10%
TiO2:0~4%
を含む組成物を有する。
【0010】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、重量%で以下:
SiO:75~80%
Al:6~9%
LiO:10~13%
NaO:0~2.5%
O:0~3%
(NaO+KO):1~3%
:1~3%
ZrO:0~5%
を含む組成物を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、重量%で以下:
SiO:68~82%
Al:5~12.5%
LiO:8~15%
:2~12%
NaO:0~5%
O:0~5%
(NaO+KO):0~5%
:>0~4%
ZrO:0~10%
を含む組成物を有する。
【0012】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、重量%で以下:
SiO:70~80%
Al:6~9%
LiO:10~13%
:2.5~7.5%
NaO:0~2.5%
O:0~3%
(NaO+KO):1~3%
:1~3%
ZrO:0~5%
を含む組成物を有する。
【0013】
いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物は更に、約2%~約12%のBを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミック組成物は、5ppm/℃超の熱膨張係数を有する。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミックは、約2Mpa・m1/2以上の破壊靭性を有する。破壊靭性は一般に、割れの伝播に対する材料の耐性を表す。いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミックは、約15kgf(約147.1N)以上のビッカース押込み割れ開始荷重を有する。
【0015】
いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミックは、1000P(100Pa・s)超の液相粘度を有するベースガラスから形成される。
【0016】
いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミックは更に、重量%で以下:
TiO:>0~3%、及び
ZrO:>0~4%
を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、上記ガラスセラミックは更に、着色成分を含む。着色成分は、V、Cr、TiO、MnO、NiO、ZnO、CuO、NiO、Co、希土類酸化物及びこれらの組合せを含んでよい。場合によっては、着色成分の合計重量%は>0~約4重量%である。
【0018】
1つ以上の実施形態のガラスセラミックは、略白色又は略黒色を示してよい。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、イルミナントD65を用い、正反射率を除く、分光光度計を使用した分光反射率測定から決定された、以下の範囲:a*=約‐1~+約3;b*=約‐7~約+3;及びL*>85の、CIELAB色空間座標内で表される色を示す。
【0019】
第2の態様は、ガラス組成物を形成し、上記ガラス組成物をセラミック化することによって、上記ガラスセラミックのうちの1つを形成する方法を含む。
【0020】
ガラスセラミックの実施形態は、イオン交換されてよい。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも約10μmの層深さまでイオン交換される。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミックは、少なくとも約20μmの層深さまでイオン交換される。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、少なくとも約40μmの層深さまでイオン交換される。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、ガラスセラミックの表面から上記層深さまで延在する圧縮応力層を有し、上記圧縮応力層は、少なくとも約100MPa、少なくとも約200MPa又は少なくとも約300MPaの圧縮応力下である。他の実施形態では、ガラスセラミックは、ガラスセラミックの表面から上記層深さまで延在する圧縮応力層を有し、上記圧縮応力層は、少なくとも約500MPaの圧縮応力下である。他の実施形態では、ガラスセラミックは、ガラスセラミックの表面から上記層深さまで延在する圧縮応力層を有し、上記圧縮応力層は、少なくとも約750MPaの圧縮応力下である。いくつかの実施形態では、イオン交換されたガラスセラミックは、少なくとも約7kgf(約68.6N)のビッカース押込み割れ開始荷重を有する。本明細書において使用される場合、ビッカース押込み割れ開始荷重は、材料の、ある特定の荷重のビッカース圧子の先端の下における径方向割れ開始に耐えることができる能力を指す。更に他の実施形態では。イオン交換されたガラスセラミックは、少なくとも約15kgf(約147.1N)のビッカース押込み割れ開始荷重を有する。他の実施形態では、イオン交換されたガラスセラミックは、少なくとも約20kgf(約196.1N)のビッカース押込み割れ開始荷重を有する。
【0021】
これらの及びその他の態様、利点及び顕著な特徴は、以下の詳細な説明、付属の図面及び添付の請求項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】LiO‐Al‐SiO相の図。楕円は、二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン結晶相を含む安定したガラス及びガラスセラミックをもたらす組成範囲を示す。三角形は、図1Bに示す図の一部分を示す。
図1B】擬3元SiO‐LiO・SiO‐LiO・Al・4SiOを示す、LiO‐Al‐SiO相の図の一部。斜線付き範囲は、1150℃以下の液相温度を有し、かつ二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメンを含むガラスセラミックをもたらす安定したガラスに関する、組成範囲を示す。
図2】組成物A(表1)、組成物MX(表3)及び代表的なソーダライムガラスの高温粘度曲線。円は、各ガラスに関する液相温度を示す。
図3】組成物MX(表3)に関する、示差走査熱量測定(DSC)のトレース
図4】650℃で2時間及び850℃で4時間熱処理された組成物MXのX線粉体回折パターン。相の集合は、二ケイ酸リチウム、β‐スポジュメン固溶体、LiPO、及び少量の残部ガラスからなる。
図5A】ガラスセラミック組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像。図5Aは、750℃で2時間及び850℃で4時間熱処理された、二ケイ酸リチウム結晶相を有する組成物Aである。
図5B】ガラスセラミック組成物の走査電子顕微鏡(SEM)画像。図5Bは、750℃で2時間及び850℃で4時間熱処理された、二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン結晶相を有する組成物KN(表3)である。
図6A】研磨及びエッチングされたガラスセラミック表面のSEM画像。図6Aは、750℃で2時間及び850℃で4時間熱処理された、二ケイ酸リチウム結晶相を有する組成物Aである。
図6B】研磨及びエッチングされたガラスセラミック表面のSEM画像。図6Bは、750℃で2時間及び850℃で4時間熱処理された、二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン結晶相を有する組成物KN(表3)である。
図7】実施例24~29(表3)によるガラスセラミック中の微結晶相のX線回折(XRD)スペクトル。
図8A】1%HF水溶液で1分間エッチングした後の、実施例24(表3)によるガラスセラミックのSEM画像
図8B】1%HF水溶液で1分間エッチングした後の、実施例25(表3)によるガラスセラミックのSEM画像
図8C】1%HF水溶液で1分間エッチングした後の、実施例26(表3)によるガラスセラミックのSEM画像
図8D】1%HF水溶液で1分間エッチングした後の、実施例27(表3)によるガラスセラミックのSEM画像
図9】実施例24~33(表3)から形成された、選択されたガラスセラミックの11ホウ素NMRスペクトル
図10】ビッカース圧子を用いて3kgf(約29.4N)の荷重下で押込みを行った後の、実施例24(表3)によるガラスセラミックの断面の光学顕微鏡画像
図11】ビッカース圧子を用いて3kgf(約29.4N)の荷重下で押込みを行った後の、実施例25(表3)によるガラスセラミックの断面の光学顕微鏡画像
図12】ビッカース圧子を用いて3kgf(約29.4N)の荷重下で押込みを行った後の、実施例26(表3)によるガラスセラミックの断面の光学顕微鏡画像
図13】化学強化を施した後の、実施例26(表3)によるガラスセラミック及び実施例B(表3)によるガラスセラミックからの、Naイオンの濃度プロファイルの電子プローブマイクロ分析(EPMA)を示すグラフ
図14】化学強化を施した後の、実施例24~26(表3)によるガラスセラミックに関するビッカース押込み割れ開始閾値を示すグラフ
図15A】化学強化を施した後の、実施例24(表3)によるガラスセラミック上の、ビッカース圧子を用いた2kgf(約19.2N)の荷重下における押込みの光学顕微鏡画像
図15B】化学強化を施した後の、実施例24(表3)によるガラスセラミック上の、ビッカース圧子を用いた5kgf(約49.0N)の荷重下における押込みの光学顕微鏡画像
図15C】化学強化を施した後の、実施例24(表3)によるガラスセラミック上の、ビッカース圧子を用いた10kgf(約98.1N)の荷重下における押込みの光学顕微鏡画像
図15D】化学強化を施した後の、実施例26(表3)によるガラスセラミック上の、ビッカース圧子を用いた2kgf(約19.2N)の荷重下における押込みの光学顕微鏡画像
図15E】化学強化を施した後の、実施例26(表3)によるガラスセラミック上の、ビッカース圧子を用いた5kgf(約49.0N)の荷重下における押込みの光学顕微鏡画像
図15F】化学強化を施した後の、実施例26(表3)によるガラスセラミック上の、ビッカース圧子を用いた10kgf(約98.1N)の荷重下における押込みの光学顕微鏡画像
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下の詳細な説明では、本明細書において説明される実施形態の完全な理解を提供するために、多数の具体的詳細が明らかにされ得る。しかしながら当業者には、本開示の実施形態を実施する際、これらの具体的詳細のうちのいくつか又は全てを用いずに、本開示の実施形態を実施できることは明らかであろう。他の例では、本開示を不必要に不明瞭にしないよう、公知の特徴又はプロセスについては詳細に説明しない場合がある。更に、共通の又は同様の要素を識別するために、同様の又は同一の参照番号を使用する場合がある。更に、本明細書において使用される全ての技術的及び科学的用語は、異なる意味に定義されていない限り、本発明が属する技術分野の通常の技能を有する者が一般に理解している意味と同一の意味を有する。意味の衝突が生じる場合は、その定義を含む本明細書がそれを支配することになる。
【0024】
実施形態の実施又は試験において他の方法も使用できるが、本明細書では特定の好適な方法及び材料について説明する。
【0025】
本開示の方法及び組成物の実施形態のために使用できる、上記実施形態に関連して使用できる、上記実施形態の調製に使用できる、又は上記実施形態である、材料、化合物、組成物及び成分を開示する。これらの及びその他の材料が本明細書において開示され、これらの材料の組合せ、サブセット、相互作用、グループ等が、これらの化合物の様々な個々の及び包括的な組合せ及び並び替えそれぞれに関する具体的言及が明示的に開示されないまま、開示される場合、それぞれが本明細書において具体的に考慮及び説明されているものとして理解される。
【0026】
従って、置換基A、B及びCのクラスが開示され、その一方で置換基D、E及びFのクラス並びに組合せの実施形態の例A‐Dが開示されている場合、これらはそれぞれ、別個に及び包括的に考慮される。従ってこの例では、組合せA‐E、A‐F、B‐D、B‐E、B‐F、C‐D、C‐E及びC‐Fそれぞれが具体的に考慮され、A、B及び/又はC;D、E及び/又はF;並びに例示的組合せA‐Dの開示から開示されているものと見做されることになる。同様に、これらのいずれのサブセット又は組合せもまた具体的に考慮され、開示される。従って例えばA、B及び/又はC;D、E及び/又はF、並びに例示的な組合せA‐Dの開示から、A‐E、B‐F及びC‐Eのサブグループが具体的に考慮され、開示されているものと見做されることになる。この概念は、組成物のいずれの成分、並びに本開示の組成物を作製及び使用する方法のステップを含むがこれらに限定されない、本開示の全ての態様に適用される。より具体的には、本明細書において与えられる例示的組成物の範囲は、本明細書の一部と見做され、また更に、本文中において上記範囲が具体的に含むものとあらゆる点で等しい例示的な数値範囲の端点を提供するものと見做され、全ての組合せが具体的に考慮及び開示される。更に、実施できる様々な追加のステップが存在する場合、これらの追加のステップはそれぞれ、本開示の方法のいずれの具体的実施形態又は実施形態の組合せによって実施できること、及び上記組合せはそれぞれ具体的に考慮され、開示されているものと見做されることになることが理解される。
【0027】
更に、本明細書中に、上限値及び下限値を含む数値の範囲が挙げられている場合、具体的条件においてそうでないことが明記されている場合を除いて、上記範囲は、その端点、並びに上記範囲内の全ての整数及び分数を含むことを意図している。ある範囲が定義されている場合に、本発明の範囲を上記具体的な値に限定することは意図されていない。更に、ある量、濃度又は他の値若しくはパラメータが、ある範囲、1つ若しくは複数の好ましい範囲、又は好ましい上限値及び好ましい下限値のリストとして与えられている場合、これは、いずれの範囲上限又は好ましい上限値及びいずれの範囲下限又は好ましい下限値から形成される全ての範囲を、このようなペアが別個に開示されているかどうかにかかわらず具体的に開示しているものとして理解される。最後に、ある値又はある範囲の端点を説明するにあたって用語「約(about)」が使用される場合、この開示は、言及されている上記具体的な値又は端点を含むものとして理解されるものとする。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「約(about)」は、量、サイズ、処方、パラメータ並びにその他の数量及び特徴が正確でなくかつ正確である必要がなく、概算値であってよく、並びに/又は許容誤差、換算係数、四捨五入、測定誤差等、及び当業者に公知の他の因子を反映して、必要に応じてより大きく若しくはより小さくなってよいことを意味する。一般に、量、サイズ、処方、パラメータ又はその他の量若しくは特徴は、そのように明言されているかどうかにかかわらず「約」又は「およそ(approximate)」のものである。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「又は、若しくは(or)」は非排他的である。より具体的には、句「A又はB」は、「A、B、又はAとB両方」を意味する。排他的な「又は、若しくは」は、本明細書では例えば「A又はBのいずれか(either A or B)」及び「A又はBのうちの一方(one of A or B)」等の用語によって示される。
【0030】
名詞は、本発明の複数の要素及び成分を説明するために使用される。これらの名詞の使用は、これらの要素又は成分のうちの1つ又は少なくとも1つが存在することを意味する。
【0031】
実施形態を説明する目的で、ある変数が、あるパラメータ又は別の変数の「関数(function)」である、という本明細書における言及は、上記変数が、列挙されているパラメータ又は変数だけの関数であることを示すことを意図したものではないことに留意されたい。寧ろ本明細書において、列挙されているパラメータの「関数」である、ある変数に対する言及は、無制限的なものであることを意図しており、従って上記変数は、ある単一のパラメータ又は複数のパラメータの関数であり得る。
【0032】
本明細書において使用される場合、「好ましくは(preferably)」、「一般に(commonly)」及び「典型的には(typically)」等の用語は、請求対象の発明の範囲を制限するため、又は特定の特徴が、請求対象の発明の構造若しくは機能にとって決定的である、必須である若しくは単に重要であることを暗示するために使用されているものではないことに留意されたい。寧ろこれらの用語は単に、本開示のある実施形態の特定の態様を識別すること、又は本開示のある特定の実施形態において使用できる若しくは使用できない代替的な若しくは追加の特徴を強調することを意図したものである。
【0033】
請求項のうちの1つ以上が、移行句として用語「ここで(wherein)」を使用する場合があることに留意されたい。本発明を定義する目的で、この用語は、構造の一連の特徴の列挙を導入するために使用される無制限的な移行句として、請求項に導入され、より一般的に使用される無制限的な前置きの句「…を含む(comprising)」と同様に解釈されるべきものであることに留意されたい。
【0034】
本発明のガラス又はガラスセラミック組成物を製造するために使用される原料及び/又は設備により、最終的なガラス又はガラスセラミック組成物中に、特定の不純物又は故意に添加したものではない成分が存在する場合がある。このような材料はガラス又はガラスセラミック組成物中に少量存在し、本明細書では「混入物(tramp material)」と呼ばれる。
【0035】
本明細書において使用される場合、「ある化合物を0重量%有するガラス又はガラスセラミック組成物」は、上記化合物、分子又は元素が上記組成物に意図的に添加されなかったものの、上記組成物は典型的には混入量又は微量の上記化合物を含む場合があることを意味するものとして定義される。同様に「鉄非含有(iron‐free)」、「ナトリウム非含有(sodium‐free)」、「リチウム非含有(lithium‐free)」、「ジルコニウム非含有(zirconium‐free)」、「アルカリ土類金属非含有(alkali earth metal‐free)」、「重金属非含有(heavy metal‐free)」等は、上記化合物、分子又は元素が上記組成物に意図的に添加されなかったものの、上記組成物は鉄、ナトリウム、リチウム、ジルコニウム、アルカリ土類金属又は重金属等を、およそ混入量又は微量だけ含む場合があることを意味するものとして定義される。
【0036】
そうでないことが明記されていない限り本明細書中で挙げられる全ての構成要素の濃度は、重量パーセント(重量%)で表される。
【0037】
ガラス及びガラスセラミック
上述のように、二ケイ酸リチウムガラスセラミックの機械的特性を有しながら、圧延、鋳造及びフロートプロセスといった従来のガラス形成技術を用いて容易に形成される、ガラスセラミック組成物を得ることが極めて望ましい。本明細書に記載の組成物の1つの利点は、ガラスにリチウムアルミノシリケートを添加すること(これにより全体としてアルミナ成分が増大し、酸化リチウムが減少する)によって、前駆体ガラス及び最終的なガラスセラミックの特性に重要な利益がもたらされることである。思いがけず改善された特性としては、以下が挙げられる:1)ガラスは低融点(1500℃未満)を保持したまま、高い液相粘度(>2000ポアズ(200Pa・s))並びに従来の圧延、鋳造及びフロートプロセスに適合する広い作業範囲を提供する;2)バッチ材料として安価なスポジュメンを使用でき、高価なリチウムカーボネートの必要量が低減される;3)二ケイ酸リチウムが主要な結晶相として保持され、これによりガラスセラミックに、本来的な高い機械的強度及び破壊靭性がもたらされる;並びに4)β‐スポジュメン固溶体(これ以降は単にβ‐スポジュメンと呼ぶ)が第2の主要な結晶相として添加され、これによりガラスセラミックのバルク熱膨張が低下し、熱衝撃耐性が上昇し、またβ‐スポジュメンは更なる機械的強度のためにイオン交換できる。更に上記材料は、最小の変形で複数の形状へとセラミック化でき、従来のセラミック機械加工用工具を用いて、正確な形状への機械加工、切断、穿孔、面取り、分注、良好な光沢への研磨を容易に行うことができ、更には組成及び熱処理に応じて様々な度合いの透光性を呈することができる。また、未だによく分かっていない理由により、この種類のガラスセラミックは、音声周波数で機械的に駆動した場合に、優れた音声再生を生成する能力を呈する。これらの特性により、上記ガラスセラミックは:カウンタトップ及びその他の表面;ハンドヘルド型、デスクトップ型及び壁面設置型消費者向け電子デバイスの外被;機器用扉及び外装;床面タイル;壁面パネル;屋根タイル;ホワイトボード;飲料用ボトル、食品販売用及び保存用容器といった材料保存用コンテナ(中空容器);軽量性、良好な耐摩耗性及び正確な寸法が必要な機械部品;並びにオーディオスピーカといった音響素子等の、多数の用途に関して有用となる。ガラスセラミックは、粘度が比較的低いため、様々な方法を用いて3次元物品に形成できる。
【0038】
二ケイ酸リチウムLiSiは、{Si}四面体アレイの波状シードをベースとした斜方晶系結晶である。この結晶は典型的には、管状又はラス状形状であり、顕著な裂開平面を有する。二ケイ酸リチウム系ガラスセラミックは、ランダムな配向で連鎖した結晶の微小構造、即ちこれらの結晶の周囲の曲がりくねった経路を介して、材料を通して割れを伝播させる結晶構造により、高い本体強度及び破壊靭性を含む極めて望ましい機械的特性を提供する。
【0039】
二ケイ酸リチウムガラスセラミックには2つの大まかな種類が存在する。第1のグループは、セリア及び銀等の貴金属でドープされたものである。これらは、UV光によって光感受性核形成し、続いて熱処理することによって、Fotoceram(登録商標)のような強いガラスセラミックを製造できる。二ケイ酸リチウムガラスセラミックの第2の種類は、Pの添加によって核形成され、ここで核形成相はLiPOである。P核形成型二ケイ酸リチウムガラスセラミックは、高温密閉材料、コンピュータハードドライブ用ディスク、透明装甲及び歯科用用途といった様々な用途のために開発された。
【0040】
β‐スポジュメンは、角で接続されたSiO及びAlOの四面体の骨格構造を有し、これは連鎖リングを形成し、上記連鎖リングはLiイオンを含有するチャネルを生成する。β‐スポジュメンの化学式はLiAlSiとして与えられることが多いが、この結晶は、LiO・Al・nSiO(ただしnは4~9)又は60重量%未満~略80重量%のSiOを含むシリカにまで至る、幅広い範囲の固溶体を包含できる。β‐スポジュメン結晶は、温度が上昇するにつれてそのc軸が膨張し、一方でa及びb軸が収縮するため、極めて低い熱膨張を有する。その結果、β‐スポジュメン固溶体系ガラスセラミックは、調理器具等、良好な熱衝撃耐性を必要とする用途において技術的に有用である。更に、β‐スポジュメン相をベースとするガラスセラミック物品は、塩浴で化学強化でき、この化学強化中にβ‐スポジュメン構造中のNa(及び/又はK)がLiを置換し、これによって表面圧縮及び強化が引き起こされる。
【0041】
本明細書に記載のガラス及びガラスセラミックは一般に、リチウム含有アルミノシリケートガラス又はガラスセラミックとして説明でき、SiO、Al及びLiOを含んでよい。LiO‐Al‐nSiOに関する3元系相図を図1Aに示す。楕円は、本開示において実現されるガラス組成物の、二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン結晶相を含む安定したガラス及びガラスセラミックをもたらす範囲を大まかに示す。図1A中の三角形は図1Bにおいて拡大されており、これは擬3元SiO‐LiO・SiO‐LiO・Al・4SiOを示す。斜線付き範囲は、1150℃以下の液相温度を有し、かつ二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン結晶相を含むガラスセラミックをもたらす安定したガラスに関する、1つの組成範囲を示す。SiO、Al及びLiOに加えて、本明細書において実現されるガラス及びガラスセラミックは更に、NaO、KO、RbO又はCsO、並びにP及びZrOといったアルカリ塩、並びに以下に記載する他の多数の成分を含有してよい。1つ以上の実施形態では、主要な微結晶相は二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメンssを含むが、前駆体ガラスの組成に応じて、β‐石英ss及びリン酸リチウムも少量の相として存在してよい。
【0042】
ガラスの形成に関与する酸化物であるSiOは、ガラス及びガラスセラミックのネットワーク形成構造を安定化させる機能を果たすことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、68~約82重量%のSiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、75~約80重量%のSiOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約68~約82重量%、約68~約80重量%、約68~約77重量%、約68~約75重量%、約68~約73重量%、69~約82重量%、約69~約80重量%、約69~約77重量%、約69~約75重量%、約69~約73重量%、約70~約82重量%、約70~約80重量%、約70~約77重量%、約70~約75重量%、約70~約73重量%、約73~約82重量%、約73~約80重量%、約73~約77重量%、約73~約75重量%、約75~約82重量%、約75~約80重量%、約75~約77重量%、約77~約82重量%、約77~約80重量%、又は約80~約82重量%のSiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、又は82重量%のSiOを含む。
【0043】
粘度及び機械的性能に関して、粘度及び機械的性能はガラス組成によって影響される。ガラス及びガラスセラミック中において、SiOは前駆体ガラスのための一次ガラス形成酸化物として働き、ガラス及びガラスセラミックのネットワーク形成構造を安定化させる機能を果たすことができる。SiOの濃度は、前駆体ガラスを熱処理してガラスセラミックに変換した場合に、二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン結晶相を形成するために十分に高くなければならない。純SiO又は高SiOガラスの融点は望ましくない程度に高いため、SiOの量を制限することによって、融点(200ポアズ温度)を制御してよい。
【0044】
Alもまた、ネットワークの安定化をもたらすことができ、β‐スポジュメン結晶相の必須構成要素である。しかしながら、Alの量が高過ぎると、二ケイ酸リチウム結晶の画分が、場合によっては連鎖構造を形成できない程度にまで減少する場合がある。Alの量を適合させることによって、粘度を制御してよい。更に、Alの量が高過ぎると、溶融物の粘度も一般的に上昇する。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約5~約12.5重量%のAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は約6~約9重量%のAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約5~約12.5重量%、約5~約10重量%、約5~約9重量%、約5~約8重量%、約6~約12.5重量%、約6~約10重量%、約6~約9重量%、約6~約8重量%、約8~約12.5重量%、約8~約10重量%、約8~約9重量%、約9~約12.5重量%、約9~約10重量%、又は約10~約12.5重量%のAlを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約5、5.5、6、6.5、7、8、9、9.5、10、10.5、11、11.5、12、又は12.5重量%のAlを含むことができる。
【0045】
本明細書のガラス及びガラスセラミック中では、一般に、LiOは、二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン両方の結晶相を形成するために有利であることが分かっている。実際には、支配的な結晶相として二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメンを得るために、少なくとも約8重量%のLiOを組成物中に有することが望ましい。更に、LiOが多くなり過ぎる、即ち約15重量%超となると、組成物は極めて流動性となり、抵抗が小さくなり、これにより溶融又は形成が困難になる。実現されるいくつかの組成物では、ガラス又はガラスセラミックは、約8重量%~約15重量%のLiOを含むことができる。他の実施形態では、ガラス又はガラスセラミックは約10重量%~約13重量%のLiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約8~約15重量%、約8~約14重量%、約8~約13重量%、約8~約12重量%、約8~約11重量%、約9~約15重量%、約9~約14重量%、約9~約13重量%、約9~約12重量%、約9~約11重量%、約9~約10重量%、約10~約15重量%、約10~約14重量%、約10~約13重量%、約10~約12重量%、又は約10~約11重量%のLiOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約8、9、10、11、12、13、14、又は15重量%のLiOを含むことができる。
【0046】
上述のように、LiOは一般に、実現されるガラスセラミックを形成するために有用であるが、他のアルカリ酸化物は、ガラスセラミック形成を低下させ、かつガラスセラミック中にアルミノシリケート残部ガラスを形成する傾向を有する。約5重量%超のNaO若しくはKO又はこれらの組合せは、望ましくない量の残部ガラスをもたらし、これは結晶化中の変形、及び機械的特性の観点から望ましくない微小構造につながり得る。従って一般に、本明細書に記載の組成物は、極めて少量の非リチウムアルカリ酸化物を有する。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は約0~約5重量%のROを含むことができ、ここでRは、アルカリカチオンNa及びKのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は約1~約3重量%のROを含むことができ、ここでRは、アルカリカチオンNa及びKのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、0~約5重量%、0~4重量%、0~3重量%、0~約2重量%、0~約1重量%、>0~約5重量%、>0~約4重量%、>0~約3重量%、>0~約2重量%、>0~約1重量%、約1~約5重量%、約1~約4重量%、約1~約3重量%、約1~約2重量%、約2~約5重量%、約2~約4重量%、約2~約3重量%、約3~約5重量%、約3~約4重量%、又は約4~約5重量%のNaO若しくはKO又はこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0、>0、1、2、3、4、又は5重量%のROを含むことができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、ガラス組成物は約8~約25重量%のMOを含むことができ、ここでMは、Li並びに任意にアルカリカチオンNa、K、Rb及びCsのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は約9~約16重量%のMOを含むことができ、ここでMは、Li並びに任意にアルカリカチオンNa、K、Rb及びCsのうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、MOは極微量のNaO又はKOしか含むことができない。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約8~約25重量%、約8~約20重量%、約8~約17重量%、約8~約13重量%、約8~約10重量%、約10~約25重量%、約10~約20重量%、約10~約16重量%、約10~約13重量%、約13~約25重量%、約13~約20重量%、約13~約16重量%、約16~約25重量%、約16~約20重量%、又は約20~約25重量%のMOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、又は25重量%のMOを含むことができる。
【0048】
ガラス及びガラスセラミック組成物は、Pを含む。Pは、バルク核形成を実施するための核形成剤として機能できる。Pの濃度が低過ぎると、前駆体ガラスは結晶化するものの、(比較的低い粘度のため)比較的高温においてのみ、かつ表面から内向きにしか結晶化せず、弱く、場合によっては変形した物体をもたらす。しかしながらPの濃度が高過ぎると、前駆体ガラス形成中の冷却時の失透を制御するのが困難になり得る。実施形態は>0~約5重量%のPを含むことができる。他の実施形態は、約0.5~約4重量%のPを含むことができる。更に他の実施形態は、約1~約3重量%、又は約1.5~約2.5重量%のPを含むことができる。実現される組成物は、0~約5重量%、0~4重量%、0~3重量%、0~約2重量%、0~約1重量%、>0~約5重量%、>0~約4重量%、>0~約3重量%、>0~約2重量%、>0~約1重量%、約0.5~約5重量%、約0.5~約4重量%、約0.5~約3重量%、約0.5~約2重量%、約0.5~約1重量%、約1~約5重量%、約1~約4重量%、約1~約3重量%、約1~約2重量%、約2~約5重量%、約2~約4重量%、約2~約3重量%、約3~約5重量%、約3~約4重量%、又は約4~約5重量%のPを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0、>0、0.5、1、2、3、4、又は5重量%のPを含むことができる。
【0049】
本明細書において実現されるガラス又はガラスセラミックは、0~10重量%のZrOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、0~約10重量%のZrOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0~約5重量%のZrOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、>0~約5重量%のZrOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0~約10重量%、0~約8重量%、0~約6重量%、0~約5重量%、0~3重量%、0~約1重量%、>0~約10重量%、>0~約8重量%、>0~約6重量%、>0~約5重量%、>0~3重量%、>0~約1重量%、1~約10重量%、約1~約8重量%、約1~約6重量%、約1~約5重量%、約1~3重量%、約1~2重量%、約2~約10重量%、約2~約8重量%、約2~約6重量%、約2~約5重量%、約2~3重量%、約3~約10重量%、約3~約8重量%、約3~約6重量%、約3~約5重量%、約5~約10重量%、約5~約8重量%、約5~約6重量%、約6~約10重量%、約6~約8重量%、又は約8~約10重量%のZrOを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0、>0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10重量%のZrOを含むことができる。
【0050】
は、前駆体ガラスに低融点をもたらすために、伝導性である。例えば、1600℃未満のガラス融点を達成するために、ガラスは少なくとも約2.5重量%のBを含んでよい。更に、前駆体ガラス及びそれに伴ってガラスセラミックにBを添加することにより、連鎖型の結晶微小構造の達成、及びガラスセラミックの損傷耐性の改善が補助される。残部ガラス中のホウ素がアルカリ酸化物又は2価カチオン酸化物によって荷電平衡状態とならない場合、ホウ素は三方晶配位状態(即ち3配位ホウ素)となり(例えば図3を参照)、これはガラス及びガラスセラミックの構造を開状態とする。これら3配位ホウ素の周囲のネットワークは、四面体配位(即ち4配位)ホウ素ほど剛性ではない。理論に拘束されるものではないが、3配位ホウ素を含む前駆体ガラス及びガラスセラミックは、割れが形成されるまでにある程度の変形に耐えることができると考えられる。ある程度の変形に耐えることによって、ビッカース押込み割れ開始荷重が上昇する。3配位ホウ素を含む前駆体ガラス及びガラスセラミックの破壊靭性もまた上昇し得る。理論に拘束されるものではないが、ガラスセラミックの残部ガラス(及び前駆体ガラス)中にホウ素が存在することにより、残部ガラス(又は前駆体ガラス)の粘度が低下し、これが、二ケイ酸リチウム結晶、特に高いアスペクト比を有する大型の結晶の成長を促進すると考えられる。(4配位ホウ素に対して)3配位ホウ素の量が多いほど、より高いビッカース押込み割れ開始荷重を示すガラスセラミックが得られると考えられる。いくつかの実施形態では、(全Bの百分率としての)3配位ホウ素の量は、約40%以上、約50%以上、約%75以上、約85%以上、又は約95%以上でさえあってよい。一般に、ホウ素の量は、セラミック化したバルクガラスセラミックの化学耐久性及び機械的強度を維持するために、制御しなければならない。
【0051】
1つ以上の実施形態では、本明細書のガラス及びガラスセラミックは、0~約12重量%、約2重量%~約12重量%又は約2.5重量%~約7.5重量%のBを含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラス組成物は、0~約12重量%、0~約11重量%、0~約10重量%、0~約9重量%、0~約8重量%、0~約7重量%、0~約6重量%、0~約5重量%、0~約4重量%、0~約3重量%、>0~約12重量%、>0~約10重量%、>0~約8重量%、>0~約6重量%、>0~約5重量%、約1~約12重量%、約1~約10重量%、約1~約8重量%、約1~約6重量%、約1~約5重量%、約2~約12重量%、約2~約10重量%、約2~約8重量%、約2.5~約12重量%、約2.5~約10重量%、約2.5~約8重量%、約2.5~約6重量%、約5重量%~約7.5重量%、約3~約6重量%、約3~約5重量%、約4~約5重量%、約5重量%~約8重量%、約5重量%~約7.5重量%、約5重量%~約6重量%、又は約5重量%~約5.5重量%のBを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0、>0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12重量%のBを含むことができる。
【0052】
本明細書に記載のガラス及びガラスセラミック組成物は、限定的なアルカリ土類金属酸化物、MgO、CaO、SrO及びBaOを有する傾向がある。というのも、これらの成分、特にCaO、SrO及びBaOが残部ガラス相に入り易いため、あるいは、代わりの不必要な結晶相の成長を促進し易いためである。MgOは、β‐スポジュメン結晶相に入ることができ、従って他のアルカリ土類金属酸化物の不利な問題点を有する見込みが比較的低い。組成物は1つ以上のアルカリ土類金属酸化物、MgO、CaO、SrO及びBaOを含んでよい。いくつかの実施形態は、0~約15重量%の量の、1つ以上のアルカリ土類金属酸化物、MgO、CaO、SrO及びBaOを含んでよい。他の実施形態は、約0~約8重量%の、1つ以上のアルカリ土類金属酸化物、MgO、CaO、SrO及びBaOを含んでよい。1つのアルカリ土類金属酸化物が存在するいくつかの例では、上記アルカリ土類金属酸化物はMgOである。2つ以上のアルカリ土類金属酸化物が存在する他の例では、上記アルカリ土類金属酸化物は主にMgOである。本明細書において実現されるガラス及びガラスセラミック組成物は、0~約15重量%、0~約10重量%、0~約8重量%、0~約5重量%、0~約3重量%、>0~約15重量%、>0~約10重量%、>0~約8重量%、>0~約5重量%、>0~約3重量%、>0~約1重量%、約1~約15重量%、約1~約10重量%、約1~約8重量%、約1~約5重量%、約1~約3重量%、約3~約15重量%、約3~約10重量%、約3~約8重量%、約3~約5重量%、約5~約15重量%、約5~約10重量%、約5~約8重量%、約8~約15重量%、約8~約8重量%、又は約10~約15重量%の、1つ以上のアルカリ土類金属酸化物、MgO、CaO、SrO及びBaO、即ちR’Oを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミックは、0、>0、1、2、3、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15重量%の量の、1つ以上のアルカリ土類金属酸化物、MgO、CaO、SrO及びBaOを含む。
【0053】
本明細書において定義されているように、R’Oは、前記重量%のMgO、CaO、SrO及びBaOを含む。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、0~約15重量%のR’Oを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は、約0~約8重量%R’Oを含むことができる。本明細書において実現されるガラス及びガラスセラミック組成物は、0~約15重量%、0~約10重量%、0~約8重量%、0~約5重量%、0~約3重量%、>0~約15重量%、>0~約10重量%、>0~約8重量%、>0~約5重量%、>0~約3重量%、>0~約1重量%、約1~約15重量%、約1~約10重量%、約1~約8重量%、約1~約5重量%、約1~約3重量%、約3~約15重量%、約3~約10重量%、約3~約8重量%、約3~約5重量%、約5~約15重量%、約5~約10重量%、約5~約8重量%、約8~約15重量%、約8~約8重量%、又は約10~約15重量%のR’Oを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミック組成物は、約0、>0、1、2、3、4、4.5、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15重量%のR’Oを含むことができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、ガラス及びガラスセラミック組成物は、着色剤として追加の成分を含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラス又はガラスセラミックは、0~約4重量%、0~約3重量%、0~約2重量%、0~約1重量%、0~0.5重量%、>0~約4重量%、>0~約3重量%、>0~約2重量%、>0~約1重量%、>0~0.5重量%、約0.5~約4重量%、約0.5~約3重量%、約0.5~約2重量%、約0.5~約1重量%、約1~約4重量%、約1~約3重量%、約1~約2重量%、約2~約4重量%、約2~約3重量%、又は約3~約4重量%の着色剤を含む。着色剤は、FeO、Fe、SnO、SnO、V、Cr、TiO、MnO、NiO、ZnO、CuO、NiO、Co、及びこれらの組合せを含むが、これらに限定されない。例えば表2は、ガラス及びガラスセラミック中の着色剤の例、並びに研磨した表面に関して結果として得られる色を示す。使用される組成物はKYであり(表3)、ここでガラスセラミックは、650℃で2時間及び825℃で4時間セラミック化された。
【0055】
【表2】
【0056】
いくつかの実施形態では、前駆体ガラス及びガラスセラミックは、所望の色及び/又は不透明性を提供するために、1つ以上の着色剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラスに濃い白又はクリーム色及び特定の不透明性をもたらすために、TiOを添加してよい。TiOの量は最高約4重量%(例えば0.1~4重量%、0.5~4重量%、1~4重量%、2~4重量%又は3~4重量%)であってよい。TiOを使用する場合、得られるガラスセラミックは、少量のルチル結晶相も含んでよい。いくつかの実施形態では、上述の量でTiOが存在することにより、より不透明なガラスセラミックを得ることができ、これは、いずれのTiOを含まない又は本明細書に記載の範囲外の量のTiOを含むガラスセラミックとは異なる白色を呈する。他の実施形態では、黒色及び場合によっては特定の不透明性をガラスにもたらすために、NiO、Co及び/又はFeを含んでよい。NiO、Co及び/又はFeは、最高約3重量%(例えば0.1~3重量%、0.5~3重量%、1~3重量%、1.5~3重量%又は2~3重量%)の合計量で存在してよい。黒色を提供するためにこのような着色剤を使用する場合、このような着色剤は、β‐スポジュメン相中に存在し得るFe以外は、得られるガラスセラミックのガラス相中に存在する。
【0057】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは不透明性と、約380nm~約780nmの波長範囲に亘って0.8mmの厚さに関して≧85%の平均%不透明度とを呈する。いくつかの例では、ガラスセラミックは、約380nm~約780nmの波長範囲に亘って0.8mmの厚さに関して約100%の平均%不透明度を呈してよい。1つ以上の実施形態では、平均不透明度は、約380nm~約780nmの波長範囲に亘って0.8mmの厚さに関して、86%以上、87%以上、88%以上89%以上、約90%超、約91%超、約92%超、約93%超、約94%超、約95%超、約96%超、約97%超、約98%超、約99%超又は100%でさえある。
【0058】
1つ以上の実施形態では、ガラスセラミックは白色を呈してよく、又は略白色として特性決定され得る。本明細書において使用される場合、用語「略白色(substantially white)」は、ガラスセラミックが、イルミナントD65を用い、正反射率を除く、分光光度計を使用した分光反射率測定から決定された、約‐2~約8のCIE a*、約‐7~約30のCIE b*、及び約85~約100のCIE L*を含む、CIELAB色空間座標内で表される色を有することを意味する。更にガラスセラミックは、ガラスセラミックを形成するために使用される加工条件が変動した場合でさえも、略白色を呈する。例えばガラスセラミックは、1つ以上の熱処理温度が100℃も変動した場合でも、略白色を呈する。一変形例では、熱処理温度が5℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃及び95℃超だけ変化した場合に、ガラスセラミックは略白色を呈する。
【0059】
1つ以上の実施形態では、ガラスセラミックは略黒色を呈する。本明細書において使用される場合、用語「略黒色(substantially black)」は、ガラスセラミックが、イルミナントD65を用い、正反射率を除く、分光光度計を使用した分光反射率測定から決定された、約‐1.0~約1.5(例えば約‐0.2~約1.0)のCIE a*、約3.5~約1.5(例えば約‐2.5~約1.0)のCIE b*、及び約0~約18(例えば約0~約16又は約0~約14)のCIE L*を含む、CIELAB色空間座標内で表される色を有することを意味する。更にガラスセラミックは、ガラスセラミックを形成するために使用される加工条件が変動した場合でさえも、略黒色を呈する。例えばガラスセラミックは、1つ以上の熱処理温度が100℃も変動した場合でも、略黒色を呈する。一変形例では、熱処理温度が5℃、10℃、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃及び95℃超だけ変化した場合に、ガラスセラミックは略黒色を呈する。
【0060】
本発明のガラス又はガラスセラミック組成物を製造するために使用される原料及び/又は設備により、最終的なガラス又はガラスセラミック組成物中に、特定の不純物又は故意に添加したものではない成分が存在する場合がある。このような材料はガラス又はガラスセラミック組成物中に少量存在し、本明細書では「混入物(tramp material)」と呼ばれる。
【0061】
本明細書において使用される場合、「ある化合物を0重量%有するガラス又はガラスセラミック組成物」は、上記化合物、分子又は元素が上記組成物に意図的に添加されていないものの、上記組成物は典型的には混入量又は微量の上記化合物を含む場合があることを意味するものとして定義される。同様に「鉄非含有(iron‐free)」、「ナトリウム非含有(sodium‐free)」、「リチウム非含有(lithium‐free)」、「ジルコニウム非含有(zirconium‐free)」、「アルカリ土類金属非含有(alkali earth metal‐free)」、「重金属非含有(heavy metal‐free)」等は、上記化合物、分子又は元素が上記組成物に意図的に添加されていないものの、上記組成物は鉄、ナトリウム、リチウム、ジルコニウム、アルカリ土類金属又は重金属等を、およそ混入量又は微量だけ含む場合があることを意味するものとして定義される。本明細書において実現されるガラス又はガラスセラミック中に発見され得る混入化合物としては、限定するものではないが、NaO、TiO、MnO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、HfO、CdO、SnO、Fe、CeO、As、Sb、硫酸塩等の硫黄系化合物、ハロゲン類、又はこれらの組合せが挙げられる。
【0062】
あるいは、又は着色剤に加えて、ガラス又はガラスセラミック組成物に、抗菌成分を添加してよい。本明細書において実現されるガラスセラミックは、有害なバクテリアへの曝露が発生し易いキッチン又はダイニングカウンタトップ等の用途に使用できるため、これは特に有利である。ガラス又はガラスセラミックに添加してよい抗菌成分としては、限定するものではないが、Ag、AgO、Cu、CuO、CuO等が挙げられる。いくつかの実施形態では、抗菌成分の濃度は、約3、2、1又は0.5、>0重量%のレベルに維持される。いくつかの実施形態では、抗菌成分は>0~約3重量%である。いくつかの実施形態では、抗菌成分は>0~約1重量%である。
【0063】
一般的に、本明細書に記載のガラスは清澄剤を必要としない。しかしながら、ガラス又はガラスセラミックは、化学清澄剤を更に含んでよい。このような清澄剤としては、限定するものではないが、SnO、As、Sb、F、Cl及びBrが挙げられる。いくつかの実施形態では、化学清澄剤の濃度は、3、2、1又は0.5、>0重量%のレベルに維持される。いくつかの実施形態では、清澄剤の量は>0~約3重量%である。化学清澄剤はまた、CeO、Fe及び他の遷移金属の酸化物、例えばMnOを含んでもよい。これらの酸化物は、ガラス中におけるその1つ以上の最終的な価電子状態における可視光吸収により、ガラス又はガラスセラミックに不必要な色を導入する場合があるため、上記酸化物が存在する場合、これらの濃度は0.5、0.4、0.3、0.2、0.1又は>0重量%のレベルに維持されるのが普通である。
【0064】
ガラス又はガラスセラミックはまた、例えばSnO、SnO、SnCO、SnC等の錫含有材料のバッチ形成、又は様々な物理的属性、溶融属性、着色属性若しくは形成属性を調整するための作用剤としてのSnOの添加のいずれかを通した、酸化錫電極を用いたジュール溶融の結果として、SnOを含有することもできる。ガラスは0~約3重量%、0~約2重量%、0~約1重量%、0~0.5重量%又は0~0.1重量%のSnOを含むことができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、ガラスは、Sb、As又はこれらの組合せを実質的に含まないものとすることができる。例えばガラスは、Sb若しくはAs若しくはこれらの組合せを0.05重量%以下含むことができ、ガラスはSb若しくAs若しくはこれらの組合せを0重量%含んでよく、又はガラスは例えば、いかなる意図的に添加されたSb、As若しくはこれらの組合せを含まなくてよい。
【0066】
追加の成分をガラス組成物に組み込むことによって追加の利益を提供でき、あるいは追加の成分は、市販用に調製されたガラス中に典型的に見られる汚染物質を更に含み得る。例えば追加の成分を添加することによって、様々な物理的属性、溶融属性及び形成属性を調整できる。いくつかの実施形態によると、ガラスは、バッチ材料に関連する、並びに/又はガラスを製造するために使用される溶融、清澄及び/若しくは形成設備に導入される、様々な汚染物質(例えばZrO)も含み得る。いくつかの実施形態では、ガラスは、紫外線放射吸収剤として有用である1つ以上の化合物を含んでよい。いくつかの実施形態では、ガラスは、3重量%以下の、TiO、MnO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、HfO、CdO、Fe、CeO又はこれらの組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガラスは、0~約3重量%、0~約2重量%、0~約1重量%、0~0.5重量%、0~0.1重量%、0~0.05重量%、又は0~0.01重量%の、TiO、MnO、ZnO、Nb、MoO、Ta、WO、ZrO、Y、La、HfO、CdO、SnO、Fe、CeO、As、Sb又はこれらの組合せを含むことができる。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のガラスは、スロットドロー、フロート、圧延及び当業者に公知の他のシート形成プロセスを含むがこれらに限定されないプロセスによって、シート状に製造できる。あるいはガラス組成物は、当業者に公知のフロート又は圧延プロセスによって形成してよい。
【0068】
フロートタイプ形成プロセスに適合させるために、本明細書に記載のガラス組成物は高い液相粘度を有してよい。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は約1500P(約150Pa・s)~約3000P(約300Pa・s)の液相粘度を有することができる。いくつかの実施形態では、ガラス組成物は約1000P(約100Pa・s)、1200P(120Pa・s)、1500P(150Pa・s)、2000P(200Pa・s)、2500P(250Pa・s)又は3000P(300Pa・s)の液相粘度を有することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ガラスは、約50x10‐7以上、約50x10‐7以上、約60x10‐7以上、約61x10‐7以上、約62x10‐7以上、約63x10‐7以上、約64x10‐7以上、約65x10‐7以上、約66x10‐7以上、約67x10‐7以上、約68x10‐7以上、約69x10‐7以上、約70x10‐7以上、約71x10‐7以上、約72x10‐7以上、約73x10‐7以上、約74x10‐7以上、約75x10‐7以上、約76x10‐7以上、約77x10‐7以上、約78x10‐7以上、約79x10‐7以上、又は約80x10‐7以上の熱膨張係数を有することができる。
【0070】
本明細書に記載のガラス及びガラスセラミックから形成されたガラスは、適度に有用ないずれの厚さとすることができる。ガラスシート及び/又はガラスセラミックの実施形態は、約0.8mm~約10mmのいずれの厚さを有してよい。いくつかの実施形態は、約6mm以下、約5mm以下、約3mm以下、約1.0mm以下、約750μm以下、約500μm以下、又は約250μm以下の厚さを有する。いくつかのガラスシートの実施形態は、約200μm~約5mm、約500μm~約5mm、約200μm~約4mm、約200μm~約2mm、約400μm~約5mm、又は約400μm~約2mmの厚さを有してよい。いくつかの実施形態では、厚さは約3mm~約6mm又は約0.8mm~約3mmであってよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、100MPa超の等二軸曲げ強度を有する。このROR強度は、ASTM:C1499‐05に記載された手順に従って測定される。いくつかの実施形態はまた、曲げ強度の上昇につながる、化学強化可能なβ‐スポジュメン相を含む。
【0072】
ガラスセラミックのいくつかの実施形態は、高い破壊靭性及び本来的な損傷耐性を示す。上述のように、ガラスセラミックのいくつかの実施形態は、連鎖型二ケイ酸リチウム結晶を含み、これが高い破壊靭性をもたらす。1つ以上の実施形態のガラスセラミックはホウ素を含んでよく、このホウ素は、ガラスセラミックの残部ガラス相中に、3配位ホウ素として存在してよい。このような実施形態では、上記3配位ホウ素は、前駆体ガラス中にBを含めることによって提供される。3配位ホウ素は、ガラス又はガラスセラミックに押込み荷重を与えた場合に、高密度化機序を提供する。
【0073】
1つ以上の実施形態では、B含有残部ガラスの存在により、(形成中及び熱処理プロセス中に)前駆体ガラスの粘度が低下し、これにより二ケイ酸リチウム結晶の成長が可能となる。他の実施形態では、B含有残部ガラスの存在により、β‐スポジュメン結晶のサイズも低下する。二ケイ酸リチウム結晶の成長及びβ‐スポジュメン結晶のサイズの低下は、破壊靭性値及び/又はビッカース押込み割れ開始値が、残部ガラスの組成と、特に組成物中及びガラス相中の3配位ホウ素の存在とによって上昇するという点で、機械的性能の上昇をもたらす。
【0074】
1つ以上の実施形態では、ガラスセラミックは、約2.0MPa・m1/2以上、約2.1MPa・m1/2以上、2.2MPa・m1/2以上、2.3MPa・m1/2以上、2.4MPa・m1/2以上の破壊靭性を示す。いくつかの実施形態では、破壊靭性は、約2.2~約3.5MPa・m1/2、約2.4~約3.5MPa・m1/2、約2.4~約3.4MPa・m1/2、約2.4~約3.3MPa・m1/2、約2.4~約3.2MPa・m1/2、約2.4~約3.1MPa・m1/2、約2.4~約3.0MPa・m1/2、約2.6~約3.5MPa・m1/2、約2.8~約3.5MPa・m1/2、約3.0~約3.5MPa・m1/2、約2.4~約2.6MPa・m1/2、約2.6~約3.0MPa・m1/2、又は約3.2~約3.5MPa・m1/2である。ガラスセラミックの破壊靭性値は、二ケイ酸リチウム結晶とβ‐スポジュメンの不規則な結晶との連鎖ブレード(又はロッド)の独特の微小構造の形成による。破壊靭性は、ASTM C1421‐10「環境温度におけるファインセラミックの破壊靭性を決定する標準試験方法」に従って、当該技術分野において公知の方法を用いて、例えばシェブロンノッチ、ショートバー、ノッチ付きビーム等を用いて、測定してよい。
【0075】
1つ以上の実施形態では、ガラスセラミックは、約15kgf(約147.1N)~約30kgf(約294.2N)のビッカース押込み割れ開始荷重を示すことにより、高い割れ耐性を有する。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、約16~約30kgf(約156.9~約294.2N)、約18~約30kgf(約176.5~約294.2N)、約20~約30kgf(約196.1~約294.2N)、約22~約30kgf(約215.7~約294.2N)、約15~約28kgf(約147.1~約274.6N)、約15~約26kgf(約147.1~約255.0N)、約15~約24kgf(約147.1~約235.4N)、約15~約22kgf(約147.1~約215.7N)、約15~約20kgf(約147.1~約196.1N)、又は約15~約18kgf(約147.1~約176.5N)のビッカース押込み割れ開始荷重を示す。ビッカース押込み割れ開始荷重は、ASTM C1326及びC1327(及びその下位;これらは全て参照により本明細書に援用される)「ファインセラミックのビッカース押込み硬度に関する標準試験方法」、ASTM International(米国ペンシルバニア州コンショホッケン)を用いて測定してよい。いくつかの実施形態では、ガラスセラミックは、イオン交換による化学強化後に、上述のようなビッカース押込み割れ開始荷重を示す。より詳細な実施形態では、ガラスセラミックは、NaNO塩浴中でのイオン交換後に、約15~約20kgf(約147.1~約196.1N)のビッカース押込み割れ開始荷重を示す。実施例において例示するように、ガラスセラミックが示す高いビッカース押込み割れ開始荷重は、ビッカース圧子がガラスセラミックに適用された際の高密度化(又は圧縮)機序によるものであってよい。
【0076】
更に、全ての組成物並びにガラス及び/又はガラスセラミックは、当該技術分野において広く知られた方法でイオン交換可能である。典型的なイオン交換プロセスでは、ガラス中の比較的小さい金属イオンを、ガラス及び/又はガラスセラミックの外側表面付近の層内の、同一原子価の比較的大きい金属イオンで置換又は「交換」する。比較的大きなイオンによる比較的小さなイオンの置換は、ガラス及び/又はガラスセラミックの上記層内に圧縮応力を生成する。一実施形態では、金属イオンは1価アルカリ金属イオン(例えばNa、K、Rb等)であり、イオン交換は、ガラス及び/又はガラスセラミックを、ガラス中の上記比較的小さなイオンを置換することになる上記比較的大きなイオンの少なくとも1つの溶融塩を含む浴中に浸漬することによって、達成される。あるいは、Ag、Tl、Cu等の他の1価イオンを、1価イオンと交換してよい。ガラス及び/又はガラスセラミックを強化するために使用される1つ以上のイオン交換プロセスとしては、限定するものではないが、単一回の浴への浸漬、又は浸漬と浸漬との間の洗浄及び/若しくはアニーリングステップを伴う同様の若しくは異なる組成物の複数回の浴中への浸漬が挙げられる。1つ以上の実施形態では、ガラス及び/又はガラスセラミックは溶融NaNOへの曝露によってイオン交換してよい。このような実施形態では、Naイオンはガラスセラミック中のLiイオンの一部を置換し、これによって表面圧縮応力層を形成して、高い割れ耐性を示す。得られた圧縮応力層は、ガラスの表面上に少なくとも20μmの深さ(「層深さ」とも呼ばれる)を有してよく、また少なくとも約100MPa、少なくとも約200MPa、少なくとも約300MPa又は少なくとも約350MPaの最大圧縮応力を有してよい。他の例では、実施形態は、溶融KNOに410℃で8時間曝露することによってイオン交換でき、これによって少なくとも約20μmの層厚さを有する圧縮応力層を生成できる。他の実施形態では、ガラスをイオン交換することによって、少なくとも10MPaの中央張力を達成する。いくつかの実施形態の、化学強化されたガラスセラミックは、ガラス表面が含有するLiを、比較的大きいイオン半径を有するNaで置換することによって生成された、表面圧縮層を含む。このような実施形態では、ガラスセラミックは、NaO濃度プロファイルから決定される、60~100μmの層深さを示し得る。一実施形態では、溶融塩浴の温度は約390℃であり、上記所定の期間は約1~4時間である。この表面圧縮層の形成は、非イオン交換材料に比べて良好な割れ耐性及び高い曲げ強さを達成でき、有益である。
【0077】
1つ以上の実施形態では、ガラスセラミックを作製するためのプロセスは、前駆体ガラスを、1つ以上の事前に選択された温度において、1つ以上の事前に選択された時間だけ熱処理することによって、(例えば1つ以上の組成、量、形態、サイズ又はサイズ分布等を有する)1つ以上の結晶相の結晶化(即ち核形成及び成長)を誘発するステップを含む。1つ以上の具体的実施形態では、上記熱処理は:(i)前駆体ガラスを、1~10℃/分の速度で、約600℃~約810℃(例えば630℃~725℃)の核形成温度(Tn)まで加熱するステップ;(ii)結晶化可能なガラスを、上記核形成温度に、約1/4時間~約4時間の時間だけ維持することによって、核形成された結晶化可能なガラスを生成するステップ;(iii)上記核形成された結晶化可能なガラスを、約1℃/分~約10℃/分の速度で、約675℃~約1000℃(例えば約700℃~約850℃)の結晶化温度(Tc)まで加熱するステップ;(iv)上記核形成された結晶化可能なガラスを、上記結晶化温度に、約1/4時間~約4時間の時間だけ維持することによって、本明細書に記載のガラスセラミックを生成するステップ;及び(v)形成されたガラスセラミックを室温まで冷却するステップを含むことができる。本明細書において使用される場合、用語「結晶化温度(crystallization temperature)」は、「セラミック化温度(ceram temperature又はceramming temperature)」と相互交換可能に使用してよい。更に用語「セラミック化(ceram又はceramming)」は、ステップ(iii)、(iv)及び任意に(v)をまとめて呼ぶために使用され得る。
【0078】
以下の所望の属性:ガラスセラミックの1つ以上の結晶相;1つ若しくは複数の主要な結晶相及び/又は1つ若しくは複数の少量の結晶相及び残部ガラスの割合;1つ若しくは複数の支配的な結晶相及び/又は1つ若しくは複数の少量の結晶相及び残部ガラスの結晶層集合;並びに1つ若しくは複数の主要な結晶相及び/又は1つ若しくは複数の少量の結晶相内での粒子サイズ又は粒子サイズ分布(これらは、結果として形成されるガラスセラミックの最終的な完全性、品質、色及び/又は不透明度に影響し得る)のうちの1つ以上を生成するために、前駆体ガラスの組成に加えて、熱処理ステップ(iii)及び(iv)の温度‐時間プロファイルを熟考して規定する。
【0079】
得られるガラスセラミックはシートとして提供でき、このシートは続いて、プレス、ブロー、屈曲、サギング、真空形成又は他の手段によって、厚さが均一な、湾曲した又は屈曲した部品へと再形成できる。再形成は熱処理前に実施でき、又は上記形成ステップが熱処理ステップとしても機能でき、この場合形成及び熱処理の両方が略同時に実施される。
【0080】
更に他の実施形態では、ガラスセラミックを形成するために使用される前駆体ガラス組成物は、例えば、上記ガラスセラミックが、1つ以上のイオン交換技術を用いて化学強化可能となるように、処方できる。これらの実施形態では、イオン交換は、このようなガラスセラミックの1つ以上の表面を、ある特定の組成物及び温度を有する1つ以上のイオン交換浴に、1つ以上の圧縮応力層を上記1つ以上の表面に付与するために指定された期間だけ曝露することによって発生できる。圧縮応力層は、1つ若しくは複数の平均表面圧縮応力(CS)及び/又は1つ若しくは複数の層深さを含むことができる。
【実施例0081】
数字(例えば量、温度等)に関する精度を保証するために努力しているが、ある程度の誤差及び偏差を想定しなければならない。温度は℃であるか、又は環境温度であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。組成自体は、酸化物ベースの重量%で与えられ、100%に標準化されている。反応条件、例えば成分濃度、温度、圧力及び他の反応範囲、並びに記載されているプロセスから得られる産物純度及び収率を最適化するために使用できる条件には、多数の変形及び組合せが存在する。このようなプロセス条件を最適化するため必要なのは、合理的かつ慣例的な実験のみである。
【0082】
(重量%での)例示的なガラス及びガラスセラミックの組成並びに特性を表3に挙げ、これらは、ガラス分野で慣用の技術に従って決定された。ガラスは1400~1500℃で溶融され、450~500℃でアニールされる。線形熱膨張係数(CTE)は、25~300℃の温度範囲に亘って、ASTM E228‐85を用いて測定され、x10‐7/℃で表されている。グラム/cm密度は、アルキメデス法(ASTM C693)によって測定された。(ガラス溶融物が400ポアズ(40Pa・s)の粘度を示す温度として定義される)溶融温度(℃)は、回転シリンダ粘度法(ASTM C965‐81)によって測定された高温粘度データに対して適応させたフルチャー方程式を用いて算出した。
【0083】
liq(℃)は、液相温度、即ち標準勾配ボート液相線測定(ASTM C829‐81)において最初の結晶が観察される温度である。これは:白金ボートに破砕したガラス粒子を配置するステップ;勾配温度のある範囲を有する炉に上記ボートを配置するステップ;適切な温度範囲においてボートを24時間加熱するステップ;及び結晶がガラスの内部に発生する最も高い温度を、顕微鏡検査によって決定するステップを伴う。より詳細には、ガラス試料をPtボートから取り出し、偏光顕微鏡を用いて検査して、Pt‐空気境界に対して及び試料の内部において形成された結晶の位置及び性質を識別する。炉の勾配は極めてよく知られているため、温度対位置は5~10℃の範囲内で良好に推定できる。試料の内部に結晶が観察される温度を、(対応する試験期間に対する)ガラスの液相線を表すものとする。よりゆっくり成長する相を観察するために、より長時間(例えば72時間)試験を実施する場合もある。液相粘度(ポアズ)を、液相温度及びフルチャー方程式の係数から決定した。
【0084】
熱処理スケジュールは典型的には、600~780℃の核形成保持又は緩やかな傾斜、及び725~975℃の結晶温度を含んでいた。そうでないことが明記されていない限り、傾斜率は約5℃/分であった。実施例1~23では、術語「650‐2」は、650℃で2時間の核形成保持を示し、術語「725‐4」、「825‐4」及び「850‐4」は、それぞれ725℃、825℃又は850℃で4時間の結晶化を示す。実施例Bでは、術語「780‐2」は780℃で2時間の核形成保持を示し、術語「975‐4」は975℃で4時間の結晶化を示す。実施例24‐33では、術語「700‐2」は700℃で2時間の核形成保持を示し、術語「825‐4」は825℃で4時間の結晶化を示す。温度が上昇する際、結晶化する第1の相は、核形成剤リチウムメタホスフェートLiPOであり、これはその後リチウムメタシリケートLiSiOの核となる(図4)。
【0085】
【表3-1】
【0086】
【表3-2】
【0087】
【表3-3】
【0088】
【表3-4】
【0089】
【表3-5】
【0090】
【表3-6】
【0091】
組成物11に関するX線回折パターンを図4に示す。このガラスセラミックは、二ケイ酸リチウム、β‐スポジュメン、リチウムメタホスフェート及びアルカリアルミノシリケート残部ガラスを含有する。組成物11の規範算出は、組成物11が:
二ケイ酸リチウム:47重量%
β‐スポジュメン:34%
LiPO:3.3%
ナトリウムアルミノシリケート残部ガラス:15.7%
の相集合をもたらすことを示唆する。この値は、XRDパターンにおいて観察される相集合と一致する。
【0092】
ガラスセラミック微小構造‐図5A及び5Bに見られるように、組成物A(二ケイ酸リチウムのみ)並びに7(二ケイ酸リチウム及びβ‐スポジュメン)の破壊表面は、二ケイ酸リチウム相の破壊平面が優位であるため、極めて類似した外見である。一方で、図6A及び6Bに見られる研磨及びエッチングした表面は、組成物A及び7の微小構造の有意な相違を強調している。これらはいずれも、少量のLiPO核形成相を含有する。
【0093】
実施例40~42及び44は、NiO、Co及び/又はFeを含み、黒色を呈していた。実施例37~39及び43はTiOを含み、白色を呈していた。
【0094】
実施例24~29は、0重量%~約10.9重量%のB含有量を含んでいた。表3に示す核形成保持及び結晶化条件に供された後の、実施例24~29のガラスセラミックの結晶相に関するX線回折スペクトルを、図7に示す。理論に拘束されるものではないが、本明細書に記載のガラス及びガラスセラミック中のBの含有量を約5重量%に制限することにより、耐久性の高いガラスセラミックが提供されると考えられる。
【0095】
図8A~8Dは、ガラスセラミックを1%HF溶液で1分間エッチングした後の、実施例24~27それぞれのSEM画像を示す。図8A~8Dの黒色の領域は、HF溶液によってエッチングされた残部ガラスを示す(白色の部分は結晶相である)。ガラスセラミックの連鎖型二ケイ酸リチウム及び不規則なβ‐スポジュメン結晶は、図8Aに比べて図8B~8Dにおいて確認できる。得られた二ケイ酸リチウム微結晶の粒子サイズは、約1μm以上であり、高いアスペクト比を有すると考えられる。このような微結晶は、(図2に示すようにガラスセラミック(及び前駆体ガラス)が少なくとも約2重量%、又は少なくとも約2.4重量%のBを含む場合に形成される。実施例25~27は、連鎖型結晶を含んでおり、従って、割れ変形及び曲がりくねった割れ経路(これは、観察される高い破壊靭性に寄与する)を含む、強靭化機序を呈した。対照的に、実施例24は、比較的低い破壊靭性(約1.6MPa・m1/2)を呈し、これは(図8Aにも示すように)連鎖型の大きな結晶の欠如によるものであると考えられる。前駆体ガラス組成物へのホウ素の添加は、二ケイ酸リチウム結晶の成長を増大させることが観察され、これは連鎖型構造の形成を促進する。
【0096】
図9は、3配位及び4配位両方のホウ素が残部ガラス中に検出される実施例25~29から形成された、選択されたガラスセラミックの11ホウ素NMRスペクトルを示す。図9に示すように、約2.8ppmにおける急峻なピークは、結晶相中でのBOの形成を示し、約0.1重量%~約0.15重量%の範囲のBOの量を示す。ガラスセラミック中の3配位ホウ素(これは全ホウ素の約42重量%である)の絶対量は、前駆体ガラス中のホウ素濃度の上昇に比例する。全てのガラスセラミック試料に関して、BO/BO比の検出可能な変化は存在しない。3配位ホウ素の存在(これは二ケイ酸リチウム結晶の成長を促進するように見えた)によって、ビッカース押込み割れ開始荷重値が上昇することが観察された。
【0097】
図10~12は、実施例24~26それぞれによるガラスセラミックの断面の光学撮像を示す。これらの画像は、ビッカース圧子を用いた3kgf(29.4N)の荷重下での押込みの後のガラスセラミックを示す。これらの実施例は化学強化されていなかった。図11~12は、割れでなく、増大した圧縮又は高密度化を示し、これは、3配位ホウ素の存在によるものであると考えられる。具体的には、残部ガラス中のホウ素は、押込み下での本来的な損傷耐性を導入できる。ガラスセラミック中のホウ素の増大によって高密度化/圧縮の度合いがより高くなるのに伴う、剪断破損及び側方割れの有意な減少は、図10~12に示す断面図において可視化されている。
【0098】
実施例B及び26は、イオン交換プロセスによって化学強化され、上記イオン交換プロセスでは、各実施例のガラスセラミックを、約390℃の溶融NaNO浴中に3.5時間浸漬した。図13は、実施例B及び26のガラスセラミックの表面から内部への、NaOとしてのNaイオンの濃度を示す。少なくとも部分的に、図13に示す曲線の形状に基づいて、Naイオンを、β‐スポジュメン相中のより小さいイオンで交換した。実施例26は、比較的高い濃度のNaイオンを示し、これは前駆体組成物中のNaOの存在によるものであり得る。イオン交換時間、浴の温度及び浴の組成を修正することによって、イオン交換プロセスによって得られる圧縮応力層の深さを修正し、より深い又はより浅い深さを提供できる。
【0099】
Instronから入手できるModel5948マイクロテスタを用いて、化学強化されていない実施例24~26のガラスセラミックを試験し、ビッカース押込み割れ開始荷重値を決定した。図14は、各実施例24~26に関するビッカース押込み割れ開始荷重値を示す。図14に示すように、4.7重量%のBを含む実施例26(なお実施例24及び25は0重量%又は2.4重量%のBを含む)は、有意に高いビッカース押込み割れ開始荷重値を示した。
【0100】
実施例24及び26のガラスセラミックを、390℃の温度を有する溶融NaNO中に3.5時間浸漬することによって化学強化した。実施例24及び26それぞれの3つの試料を、2kgf(約19.2N)、5kgf(約49.0N)及び10kgf(約98.1N)の荷重のビッカース圧子を用いて押し込んだ。図15A~15Fは、(0重量%のBと4.7重量のBとを比較する)実施例24及び26のビッカース押込みの光学顕微鏡画像を示す。図15A~Cはそれぞれ、実施例24の2kgf(約19.2N)、5kgf(約49.0N)及び10kgf(約98.1N)でのビッカース押込みを示す。図15D~Fはそれぞれ、実施例26の2kgf(約19.2N)、5kgf(約49.0N)及び10kgf(約98.1N)でのビッカース押込みを示す。各試料に関するビッカース押込み割れ開始荷重値は、Instronから入手できるModel5948マイクロテスタを用いて測定した。図15A~15Fに示すように、実施例26は、実施例24を大幅に上回るビッカース押込み割れ開始荷重値を示した。
【0101】
例示を目的として典型的な実施形態を明らかにしたが、以上の説明を、本開示又は添付の請求項の範囲に対する限定であると考えてはならない。従って、本開示又は添付の請求項の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正例、適合例及び代替例が当業者に想起され得る。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F